第9章 事業者団体

第1 概   説

 我が国には事業者団体が多数存在し,政府等の公の機関との連絡,会員間
の親睦活動,国内市場の調査,広報宣伝活動等,多様な活動を行っている。
 これらの活動には競争を活発化させる側面があるものの,事業者団体は事
業者としての共通の利益の増進を図ることを目的とする主として同業者の結
合体であることから,事業者団体を通じた競争制限的行為が行われやすい側
面もある。
 このため,独占禁止法第8条は,事業者団体による競争の実質的な制限,
一定の事業分野における事業者の数の制限,構成事業者の機能又は活動の不
当な制限,事業者に不公正な取引方法を用いさせること等の行為を禁止する
とともに(同条第1項),事業者団体に対して,その成立,変更及び解散の
届出義務を課している(同条第2項から第4項まで)。

第2 事業者団体の届出状況

 本年度において,独占禁止法第8条第2項から第4項までの規定に基づく
事業者団体からの届出件数は,成立届255件,変更届2,004件,解散届64件,
合計2,323件であった(第1図,第1表,附属資料5-1表)。
 届出件数は,平成元年度以降約3,000件ないし4,000件と高い水準で推移し
ていたが,その後,成立届及び解散届の減少に伴い,全体の届出件数は減少
してきたが,本年度においては,事業者団体届出制度の周知を行った結果,
昨年度と比較してやや増加している。
 また,平成6年度までに当委員会に対し,成立届出を行って現存している
事業者団体は,全体で15,315団体となっている(第1表)。




第3 協同組合の届出状況

 中小企業等協同組合法(以下「中協法」という。)に基づいて設立された事
業協同組合及び信用協同組合(以下「協同組合」という。)は,当該組合が同
法第7条第1項各号の一に該当するものである限り,独占禁止法第24条第1
号の要件を備える組合とみなされ(中協法第7条第1項),他の所要の要件
を充足している場合には,その行為について原則として独占禁止法の適用が
除外されている。
 しかしながら,資本の額又は出資の総額が原則として1億円を超え,か
つ,常時使用する従業員の数が原則として300人を超える大規模な事業者を
組合員に含む場合には,その協同組合が独占禁止法第24条第1号の要件を備
えているかどうかを判断する権限が当委員会に与えられており(中協法第7
条第2項),これらの協同組合に対しては,当該組合員が加入している旨,
当委員会に届け出る義務が課されている(中協法第7条第3項)。
 本年度における中協法第7条第3項の規定に基づく届出件数は,414件で
あった。また,平成6年度までに当委員会に対し,届出があった組合数は,
全体で3,874組合となっている(第1図,第2表,附属資料5-2表)。


 これらの組合について,組合が届出の原因となった大規模な事業者である
組合員を加入させている理由を見ると,「共同事業の成果を上げるため」,
「組合の信用を高め,イメージアップが図られるため」,「従来から中小企業
者として加入していたが規模が大きくなったため」等が挙げられている。ま
た,届出の原因となった当該組合員の組合への加入理由は,「組合員との関
係を強化することができるため」,「組合の持っている情報を得ることができ
るため」,「組合の事業を利用することにより,合理化を図ることができるた
め」等が挙げられている。

第4 事業者団体の活動に関する相談状況

 当委員会は,事業者団体による独占禁止法違反行為の未然防止を図り,
その適切な活動に役立てるため,昭和54年8月に「事業者団体の活動に関
する独占禁止法上の指針」(以下「団体ガイドライン」という。)を,昭和56
年8月に「医師会の活動に関する独占禁止法上の指針」(以下「医師会ガイ
ドライン」という。),さらに,平成6年7月に「公共的な入札に係る事業
者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」(以下「入札ガイド
ライン」という。)などを作成・公表するとともに,事業者団体が実施しよ
うとする具体的な活動の適否について,電話・来庁等による相談に応じ,
業界の実態に即した個別具体的な回答(指導)を行っているほか,各種事
業者団体に対し説明会を開催し,事業者団体が独占禁止法に違反すること
のないように未然防止を図っている。
 本年度においては,相談の件数は647件であった。このうち,特徴的な
相談としては,以下のようなものが挙げられる。
(1)  製造物責任法(PL法)の制定を踏まえ,製品そのものの欠陥のみな
らず,使用方法等に関する表示上の欠陥についても責任を問われること
から,注意表示についての関心が高まり,消費者被害の未然防止の観点
から業界共通の注意マーク等を作成することなどについての相談
(2)  食品の日付表示制度が改正され,従来の製造年月日表示から期限表示
に移行することになったことに伴い,食品メーカーの団体や流通業者に
おいて,日付表示に関する自主基準等の作成が進められており,団体と
して日付表示の併記を制限し期限表示への一本化を図ることや,表示名
称の統一を図ることに関する相談
(3)  過積載に対する規制強化,高速道路料金の引上げなどにより,物流コ
ストの改善が各業界の課題となっており,これらの問題について団体と
して取引先に理解を求めること,会員の物流取引に関する契約条項のモ
デルを作成することなどに関する相談
 このほか,引き続き価格に係る活動として中小企業団体における原価計
算指導や積算資料の作成に関する相談,廃棄物の適正な処理に関する相
談,入札ガイドラインの作成を受けて団体の会費徴収に関する相談が多
く,また,阪神・淡路大震災に関連しての相談も見受けられた。
 また,相談事例については,事業者団体の独占禁止法に対する理解を一
層深めるため,相談のあった事例のうち,他の事業者団体にも参考となる
と思われるものの概要を主要相談事例集として取りまとめ,公表するとと
もに,事業者団体及び関係官公庁に対し説明会を実施した。