第1部 総  論

第1 概  説

1 我が国を取り巻く経済環境

 平成7年度における我が国経済は,当初,緩やかな回復基調をたどって
いたが,阪神・淡路大震災等の社会的不安,急激な円高,アメリカ経済の
減速等の外的要因が輸出や消費・企業マインドに悪影響を及ぼし,平成7
年半ばには足踏み状態に入った。こうした経済情勢に対して,政府は,4
月に緊急円高・経済対策を,9月には過去最大規模の経済対策を決定し
た。また,金融面では日本銀行が,公定歩合の引下げ等の金融緩和措置を
採った。これらの政策的対応に加え,年央以降,円高是正が進んだことな
どから,平成8年に入ると,公共投資主導で,景気は緩やかながら再び回
復の動きを示すようになったが,雇用情勢など懸念すべき点も見られる状
況が続いた。
 このように民間需要主導の自律的景気回復への移行が遅れる中,経済の
グローバル化の進展等経済社会の大きな変化の流れに我が国が十分対応し
切れていないため,産業の空洞化,雇用不安,生活における豊かさの実感
の欠如等の構造問題が顕在化してきている。こうした状況の下で,これら
構造問題に適切に対応する方策として,市場原理に立脚し,我が国市場を
内外に一層開かれたものとする経済構造の改革を推し進めて,事業者の創
意工夫が最大限発揮される活力のある経済社会を創造するとともに,高コ
スト構造・内外価格差を是正して国民生活の質の向上を図っていくことが
求められてきている。

2 規制緩和の推進と競争政策の積極的展開

 政府は,経済構造の改革を図る一環として,規制緩和の推進を重要課題
として位置づけて,平成7年3月31日に規制緩和推進計画を閣議決定した
ところであるが,本格的な景気回復への移行を確実なものとするため「緊
急円高・経済対策」(平成7年4月14日経済対策閣僚会議決定)におい
て,規制緩和推進計画を平成11年度末までから平成9年度末までに前倒し
することとした。また,同年12月1日に閣議決定された「構造改革のため
の経済社会計画」において,「高コスト構造是正・活性化のための行動計
画」を策定した。さらに平成8年3月29日に規制緩和推進計画の改定を閣
議決定し,規制緩和への取組を強化している。
 我が国市場をより競争的かつ開かれたものとするには,こうした規制緩
和の推進とともに,我が国経済における公正かつ自由な競争を一層促進す
ることが必要とされており,こうした観点から規制緩和推進計画及び改定
された規制緩和推進計画並びに「構造改革のための経済社会計画」におい
て,規制緩和と一体のものとして競争政策の積極的展開を図ることとされ
ている。
 また,規制緩和とともに競争政策の徹底を図るには,私的独占の禁止及
び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)を運用す
る公正取引委員会の機能強化が必要であるとの内外の意見を受けて,改定
された規制緩和推進計画において公正取引委員会の事務局を事務総局に改
組することとされた。政府は,平成8年度予算案に当委員会の機能整備を
盛り込むとともに,組織強化等に係る私的独占の禁止及び公正取引の確保
に関する法律の一部を改正する法律案を第136回国会に提出し,同法案
は,平成8年6月7日に可決され,成立し,同月14日に公布,施行され
た。これにより,公正取引委員会の事務を処理する組織として,従来の事
務局に代えて事務総局が置かれることになった。

3 平成7年度において講じた施策の概要

 公正取引委員会は,こうした状況を踏まえ,独占禁止法の厳正かつ積極
的な運用により,独占禁止法違反行為を排除し,また,政府規制制度及び
独占禁止法適用除外制度を見直し,経済環境の変化に即応した公正な競争
条件の整備を進めるとともに,経済のグローバル化が進む中,競争政策の
国際的展開に適切に対処するよう努めた。
 平成7年度においては,次のような施策に重点を置いて競争政策の運営
に積極的に取り組んだ。

(1) 独占禁止法違反行為の積極的排除
 市場原理が有効に機能することを阻害する価格カルテル,入札談合,
再販売価格維持行為,輸入制限等の市場アクセス阻害行為などの独占禁
止法違反事件に対し,当委員会では,従来から厳正に対処してきている
ところであり,平成7年度においても違反事件の積極的な処理に努め
た。
 主な事件についてみると,日本下水道事業団が発注する電気設備工事
に係る入札談合事件,化粧品の再販売価格維持事件,輸入食器の並行輸
入阻害事件等において勧告等の法的措置を採った。
 また,日本下水道事業団が発注する電気設備工事に係る入札談合事件
について,(株)日立製作所ほか8社の受注業務従事者及び日本下水道事
業団の発注業務従事者を平成7年6月に告発した。
(2) 独占禁止法運用の透明性の確保と違反行為の未然防止
 独占禁止法の効果的な運用を図り,違反行為を未然に防止するために
は,事業者や消費者が独占禁止法の目的,規制内容及び法運用の方針を
十分に理解することが必要である。このため,当委員会は,従来から独
占禁止法の運用基準を作成・公表することによって,どのような行為が
独占禁止法上問題となるのかを明らかにし,事業者及び事業者団体によ
る独占禁止法違反行為の禾然防止とその適切な活動の維持に役立ててい
る。
 平成7年度においては,昭和54年8月に公表した「事業者団体の活動
に関する独占禁止法上の指針」(事業者団体ガイドライン)に関して,
その公表以降,16年以上が経過し,社会経済状況の変動の中で事業者団
体の活動内容も変化しており,事業者団体に係る独占禁止法上の問題に
も新しい形のものが出てきていることから,事業者団体ガイドラインを
全面的に改定した新しい事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針
を平成7年10月に公表した。
 また,平成3年7月に作成・公表した「流通・取引慣行に関する独占
禁止法上の指針」等の一層の理解を深めるため,流通・取引慣行に関連
して当委員会に寄せられた相談事例の中から13件を選んでまとめた「不
公正な取引方法に関する相談事例集」を平成7年10月に公表した。
(3) 政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度の見直し
 規制緩和の推進と競争政策の積極的展開を一体的に進めるべきとの立
場から,政府規制制度及び独占禁止法適用除外制度について実態調査を
行い,その見直しについて検討を行った。
 このうち,政府規制制度については,政府規制分野のウェイトの試算
を行い,平成7年6月に公表した。また,「政府規制等と競争政策に関
する研究会」を開催し,同研究会は,流通分野における政府規制につい
て検討を行い,同研究会がその結果を取りまとめた報告書「流通分野に
おける政府規制の見直しについて」を平成7年6月に公表した。さら
に,「情報通信分野競争政策研究会」を開催し,同研究会は,電気通信
分野における競争政策上の課題について検討を行い,同研究会がその結
果を取りまとめた報告書「電気通信分野における競争政策上の課題につ
いて」を平成7年11月に公表した。
 独占禁止法適用除外制度のうち個別法による独占禁止法適用除外カル
テル等制度(28法律47制度)については,規制緩和推進計画において,
平成10年度末までに原則廃止する観点から見直しを行い,平成7年度末
までに具体的結論を得ることとされたのを受けて,見直しを行った結
果,平成10年度末までに33制度について廃止・法整備を行い,4制度に
ついて範囲の限定を図り,残りの10制度については引き続き検討を行う
こととされた。
 また,再販売価格維持行為に対する独占禁止法の適用除外制度(以
下,「再販適用除外制度」という。)に関して,独占禁止法第24条の2第
4項の規定に基づき再販適用除外が認められている著作物(書籍,雑
誌,新聞,レコード盤,音楽用テープ及び音楽用CD)の取扱いを明確
化するために,政府規制等と競争政策に関する研究会の下に学識経験者
からなる「再販問題検討小委員会」を設け,同小委員会は,主に法律・経
済の理論的側面から検討を行い,同小委員会が取りまとめた中間報告書
及び当委員会が実施した各品目の流通実態調査報告書を公表した。当委
員会では,これらの報告書に基づき,国民各層から広く意見を求め,議
論を深めていくこととしている。
(4) 独占禁止法第4章の見直し
 独占禁止法第4章については,近時,経済界を中心に事業者負担の軽
減等の観点から見直すべきであるとの要請があり,規制緩和推進計画に
おいても,持株会社規制,合併・営業譲受等の届出制度等についての見
直しを行うことが盛り込まれた。
 これを受けて平成7年度においては,持株会社規制及び合併等の届出
制度・株式保有の報告制度等について全般的に検討を行うために,平成
7年11月に「独占禁止法第4章改正問題研究会」を設け,同研究会は,
持株会社規制から検討を開始し,同研究会がその結果を取りまとめた報
告書を同年12月に公表した。
 当委員会は,同報告書等の趣旨を踏まえ,持株会社に係る独占禁止法
改正法案の作成作業を進めた。
(5) 下請法による中小企業の競争条件の整備
 当委員会は,中小企業の自主的な事業活動が阻害されることのないよ
う,下請代金支払遅延等防止法(以下「下請法」という。)の厳正かつ
きめ細かな運用により,下請取引の公正化及び下請事業者の利益の確保
に努めた。
 平成7年度からは,大規模小売業者と納入業者の取引のうち,下請法
に規定する物品の製造委託に該当する下請取引(プライベート・ブラン
ド商品の納入取引等)を書面調査の対象に加え,こうした書面調査等か
ら下請法違反行為が認められた親事業者に対し,警告等の措置を採っ
た。また,下請取引適正化のための都道府県との協力体制を推進すると
ともに,下請法の周知徹底に努めた。
 さらに,経済環境の変化を踏まえて,公正な取引を推進するため,平
成7年度においては,円高等の影響が下請事業者にしわ寄せされること
のないよう,円高等の影響が特に大きいと思われる業種の下請事業者を
対象とする調査を特別に実施し,この調査結果に基づき,親事業者等に
対し下請法の遵守を要請した。
(6) 景品表示法による消費者行政の推進
 当委員会は,消費者向けの財・サービスの種類や販売方法が多様化す
る中で,消費者の適正な商品選択が妨げられることのないよう,不当景
品類及び不当表示防止法(以下「景品表示法」という。)の厳正な運用
により,不当な顧客誘引行為の排除に努めた。
 平成7年度においては,宝石貴金属等の販売業者による不当な二重価
格表示,紳士服販売業者による背広等の不当な二重価格表示及びミシン
販売業者によるおとり広告表示に対して排除命令を行った。
また,当委員会では,景品規制の見直し・明確化について,平成7年
3月に公表した「景品規制の見直し・明確化に関する研究会」の報告書
を踏まえ,同年6月に景品規制の見直し・明確化についての改正原案
(骨子)を公表して,各方面から意見・要望の提出を受ける等の過程を
経た上で,具体的に改正案を示して,同年12月に公聴会を開催した。
 当委員会は,公聴会での意見を慎重に検討した結果,平成8年2月に
景品類提供の上限金額の引上げ等を内容とする景品規制の見直し・明確
化のための関係告示の改廃及び関係する運用基準の改正を行い,同年4
月1日から施行した。
(7) 経済のグローバル化に対応した競争政策の展開
 経済のグローバル化の進展により,競争政策の国際的調和の推進を図
ることが重要になってきている。このため,緊密化している二国間及び
多国間の競争政策に関する協力,調整等が円滑に進められるよう,海外
の競争当局との意見交換,国際会議の主催・会議への参加等により,競
争当局の協力関係の一層の充実を図った。
 また,平成7年度においては,11月19日に大阪で開催されたアジア太
平洋経済協力(APEC)の非公式首脳会議において「行動指針」が採
択され,個別15分野の行動の1つとして競争政策が取り上げられた。
 さらに,平成6年度に引き続き国際協力事業団(JICA)を通じ
て,アジア・東欧諸国における競争当局等の職員を対象として「独占禁
止法と競争政策」をテーマとする技術研修を実施したのを始め,発展途
上国や旧社会主義国における競争法・競争政策に関する技術協力を行っ
た。

第2 業務の大要

 業務別にみた平成7年度の業務の大要は,次のとおりである。

 公正取引委員会の機能を強化する観点から,同委員会の事務を処理する
組織として事務局に代えて事務総局を置くこと,委員長及び委員をより幅
広い範囲から人選するとの観点から,その定年年齢を引き上げること等を
内容とする独占禁止法改正法案が平成8年2月に国会に提出された。同法
案は,同年6月7日に可決され成立し,同月14日に公布・施行された。
 独占禁止法と他の経済法令との調整に関する業務としては,容器包装に
係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律案,木材の安定供給の確
保に関する特別措置法案等について,関係行政機関が立案するに当たり,
所要の調整を行った。
 独占禁止法違反被疑事件として平成7年度中に審査を行った事件は,
198件であり,そのうち平成7年度内に審査を完了したものは,130件で
あった。平成7年度中に処理した審査事件の内訳は,独占禁止法第48条の
規定に基づく勧告26件,違反行為がなくなった日から1年を経過していた
ため,勧告を行わず課徴金納付命令のみを行った事件5件,警告13件,注
意60件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切った事件26件で
あった。これらを行為類型別にみると,価格カルテル18件,入札談合32
件,不公正な取引方法49件,その他の行為31件となっている。勧告等の法
的措置を採った事件は,31件であり,この内訳は,価格カルテル4件,入
札談合20件,不公正な取引方法4件,その他の行為3件となっている。
 また,価格カルテル事件及び入札談合事件24件について,計741名に対
し,総額64億4640万円の課徴金の納付を命じた。
 さらに,日本下水道事業団発注の電気設備工事における入札談合事件に
おいて,独占禁止法第73条の規定に基づき,平成7年3月に(株)日立製
作所ほか8社を検事総長に告発した件について,同年6月には,これら9
社の受注業務に従事していた者17名及び日本下水道事業団の発注業務に従
事していた者1名について追加告発を行った。
 審判中の事件は,平成6年度から引き継いだ12件を含めた計15件であっ
たが,これら事件はすべて独占禁止法違反事件であり,平成7年度中に,
2件について審決(うち1件は,同意審決)を行った。
 独占禁止法の運用の透明性を確保し,違反行為を未然に防止するための
取組として,平成7年度においては,「事業者団体の活動に関する独占禁
止法上の指針」を全面的に改定し,平成7年10月に公表した。
 政府規制の見直しについては,「政府規制等と競争政策に関する研究
会」を開催し,同研究会が流通分野における政府規制の見直しに関して取
りまとめた報告書を平成7年6月に公表した。また,「情報通信分野競争
政策研究会」を開催し,同研究会が電気通信分野における競争政策上の課
題に関して取りまとめた報告書を平成7年11月に公表した。
 独占禁止法適用除外制度については,これまでの累次の閣議決定に基づ
き,個別法による適用除外カルテル等制度(28法律47制度)について見直
しが行われた結果,改定された規制緩和推進計画において,平成10年度末
までに,33制度について廃止・法整備を行い,4制度について範囲の限定
を図り,10制度について引き続き検討等を行うこととされた。
 独占禁止法第18条の2の規定に基づく価格の同調的引上げに関する報告
徴収については,平成7年度上期においてインスタントコーヒーについて
価格引上げ理由の報告を徴収した。また,同規定の運用基準の見直しを行
い,「取引の基準として用いる価格」について,その定義の改定を行うと
ともに,同規定の市場構造要件に該当する品目を改定し,運用基準別表に
掲載した(平成7年7月1日より実施)。
 競争政策の適切な運営に資するため,平成7年度においては,建設機械
及びアルミニウム圧延品の企業間取引の実態に関する調査,一般集中度調
査,生産・出荷集中度調査,ベンチャー・キャピタルに関する実態調査,
独立系企業グループに関する実態調査等を行った。
 独占禁止法第9条から第16条までの規定に基づく企業結合に関する業務
については,金融機関の株式保有について82件の認可を行い,また,事業
会社の株式所有状況について8,281件の報告を,競争会社間の役員兼任に
ついて5,897件の届出を,会社の合併・営業譲受け等について3,987件の届
出をそれぞれ受理し,これらについて所要の審査を行った。
 また,「独占禁止法第4章改正問題研究会」を開催し,同研究会が持株
会社規制に関して取りまとめた報告書を平成7年12月に公表するとともに,
同報告書等の趣旨を踏まえ,持株会社に係る独占禁止法改正法案の作成作
業を進めた。
 独占禁止法第8条の規定に基づく事業者団体の届出件数は,成立届166
件,変更届2,108件,解散届91件であった。また,独占禁止法に関する理
解を深め,違反行為を未然に防止するための措置の一環として事業者団体
の活動に関する相談・指導業務を行った。平成8年7月に平成7年度の事
業者団体の活動に関する相談・指導事例集を公表した。
10  独占禁止法第6条の規定に基づく国際契約の届出件数は,921件であ
り,このうち,不当な取引制限又は不公正な取引方法に該当するおそれが
ある事項を含む14件の国際契約について指導等を行った。
11  不公正な取引方法に関する業務については,独占禁止法違反行為を未然
に防止するための措置の一環として,事業者等からの相談に積極的に応じ
るとともに,適切な指導に努めたほか,平成7年10月に不公正な取引方法
に関する相談事例集を公表した。
 また,クレジットカード業界の実態調査を行い,平成7年7月に公表し
た。
 このほか,「流通問題研究会」を開催し,同研究会は,国産品及び輸入
品の低価格販売に関する調査を行い,同研究会がその結果を取りまとめた
報告書を平成7年6月に公表した。
12  独占禁止法第24条の3に基づく不況に対処するためのカルテル及び同法
第24条の4の規定に基づく企業合理化のためのカルテルについては,平成
7年度において実施されたものはなかった。
 個別法に基づき,当委員会に協議等を行った上で主務大臣が認可等を行
うカルテルの平成7年度末における現存数は41件であり,その大半を環境
衛生関係営業の運営の適正化に関する法律及び輸出入取引法に基づくカル
テルが占めている。
13  平成7年度における再販契約に関する届出受理件数は,変更届57件であ
り,成立届はなかった。
 再販適用除外制度については,累次の閣議においてその見直しが決定さ
れており,指定再販制度については,改定された規制緩和推進計画に基づ
き,平成8年度末までにすべての指定商品について,取消しを行うことと
している。
 また,著作物(書籍,雑誌,新聞,レコード盤,音楽用テープ及び音楽
用CD)に関する再販適用除外制度については,政府規制等と競争政策に
関する研究会の再販問題検討小委員会の中間報告書及び当委員会が行った
各品目の流通実態調査報告書を公表した。
14  下請法に関する業務としては,下請取引の公正化及び下請事業者の利益
保護を図るため,親事業者12,261社及びこれらと取引している下請事業者
75,202社を対象に書面調査を行ったほか,資本金1000万円超3000万円未満
の製造業者1,000社に対して書面調査を実施した。また,平成7年度か
ら,大規模小売業者と納入業者との取引のうち下請法に規定する物品の製
造委託に該当する下請取引(プライベート・ブランド商品の納入取引等)
を書面調査の対象に加えた。調査の結果,下請法違反行為が認められた
1,571件につき,警告等の措置を採った。
 このほか,円高や長引く景気低迷が下請取引にどのような変化・影響が
生じているか等を把握するため,親事業者及び下請事業者にアンケート調
査を実施し,平成7年7月に調査結果を公表した。
15  景品表示法第6条の規定に基づき排除命令を行ったものは3件であり,
警告を行ったものは,景品関係284件及び表示関係325件の計609件であっ
た。
 都道府県における景品表示関係の業務の処理状況は,注意を行ったもの
が2,134件(景品488件,表示1,646件)であった。
 景品提供に関しては,経済社会情勢の変化,各方面からの要望等を踏ま
え,景品規制の見直し・明確化を行うため,平成8年2月に告示・運用基
準の改正を行い,同年4月から実施した。
16  国際関係の業務としては,各国共通の競争政策上の問題について,フラ
ンス,韓国,EU,アメリカの競争当局との間で二国間意見交換を行った
ほか,経済協力開発機構(OECD),アジア太平洋経済協力(APE
C),国際連合貿易開発会議(UNCTAD)等の国際機関における多国
間会議に積極的に参加した。
 また,貿易摩擦問題への対応に関しては,競争政策の観点から,外国企
業の我が国市場への参入に当たり,反競争的行為があった場合にはこれに
厳正に対処することとし,また,日米包括経済協議の規制緩和・競争政策
部会に積極的に対応するとともに,同協議の他の関係部会,個別業種に関
する二国間協議などの会合に必要に応じ対応した。
 さらに,平成6年度に引き続き国際協力事業団(JICA)を通じて,
アジア・東欧諸国における競争当局等の職員を対象として「独占禁止法と
競争政策」をテーマとする技術研修を実施したのを始め,発展途上国や旧
社会主義国に対する競争法・競争政策に関する技術協力を行った。