第2 勧告等の法的措置

 平成7年度は勧告26件及び勧告を行っていない課徴金納付命令5件を行っ
た。勧告26件のうち,2件について審判手続を開始し,うち1件については
同意審決を行い,その他については勧告審決を行った。また,勧告を行って
いない課徴金納付命令はすべて審判手続を経ずに課徴金納付命令が確定し
た。平成7年度に法的措置を採った31件のうち,審判手続継続中である1件
を除く30件について違反法条をみると,独占禁止法第3条後段(不当な取引
制限)違反22件,第8条第1項第1号(事業者団体による競争の実質的制
限)違反1件,第8条第1項第4号及び第5号(事業者団体による構成員の
機能活動の制限等)違反3件,及び第19条(不公正な取引方法)違反4件と
なっている。
 法的措置を採った上記31件の概要は,以下のとおりである。

1 独占禁止法第3条後段違反事件

(1) 愛豊土建砂利(株)ほか72名に対する件,愛知県東部建築業協同組合ほ
か69名に対する件,青山建設(株)ほか8名に対する件及び青山建設(株)
ほか26名に対する件(平成7年(勧)第8号,平成7年(勧)第9号,平成
7年(勧)第10号及び平成7年(勧)第11号)
関係人










違反事実等
(ア) 関係人は,遅くとも平成5年4月1日以降,豊橋市,同市水道局
及び同市下水道局(以下「豊橋市等」という。)が指名競争入札の
方法により発注する土木一式工事(工事施工場所が「豊橋市内一
円」と定められている道路修繕工事及び維持整備工事並びに共同施
工方式により施行される工事を除く。以下「市特定土木工事」とい
う。),建築一式工事(共同施工方式により施行される工事を除く。
以下「市特定建築工事」という。),舗装工事(以下「市特定舗装工
事」という。),又は,愛知県豊橋土木事務所が指名競争入札の方法
により発注する土木一式工事(道路維持補修工事(一般)及び河川
環境対策工事を除く。以下「県特定土木工事」という。)につい
て,受注機会の均等化及び受注価格の低落防止を図るため,豊橋市
等又は愛知県豊橋土木事務所から指名競争入札の参加の指名を受け
た場合は、「打合せ」と称する会合における話合い等(市特定土木
工事及び市特定建設工事),電話による話合い(市特定舗装工事及
び県特定土木工事)を行い
当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」とい
う。)が1名のときは,その者を受注予定者とする(市特定土木
工事,市特定建設工事及び県特定土木工事)
受注希望者が複数のときは
(a) 市特定土木工事及び県特定土木工事については,既発注工事
との継続性又は関連性,工事場所等を勘案し,受注希望者の間
の話合いにより当該工事の受注予定者を決定し,これらの者に
よる話合いにより受注予定者を決定することができないとき
は,指名業者の間の話合い等により受注予定者を決定する
(b) 市特定建築工事については,受注希望者の間の過去における
受注予定者の決定に関するいわゆる「貸し借り」を基に,受注
希望者の間の話合いにより受注予定者を決定する
(c) 市特定舗装工事については,舗装工事の前年度における受注
実績を勘案して受注予定者を決定する
受注希望者がいないときは,指名業者の間の話合い等により受
注予定者を決定する(市特定土木工事,市特定建築工事及び県特
定土木工事)
受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注することができるように
協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し受注予定者が受注できるよう
にしていた。
(イ) 本件関係人は,前記(ア)により,豊橋市等又は愛知県豊橋土木事務
所発注の本件違反行為の対象工事の大部分を受注していた。
(ウ) 本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,平成6年8月24日,豊橋市所在の東三建設業協会の会
議室で本件関係人の大部分の者等が出席して開催された会合におい
て,前記(ア)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注
できるようにする行為を行わない旨の申合せが行われたこと等によ
り,本件関係人は,事実上,同日以降,同合意に基づき受注予定者
を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめてい
る。
排除措置
関係人に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア) 遅くとも平成5年4月1日以降行っていた,豊橋市等又は愛知県
豊橋土木事務所が指名競争入札の方法により発注する本件違反行為
の対象工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注でき
るようにしていた行為を取りやめていることを確認すること。
(イ) 次の事項を豊橋市等又は愛知県豊橋土木事務所に通知すること
遅くとも平成5年4月1日以降行っていた,豊橋市等又は愛知
県豊橋土木事務所が指名競争入札の方法により発注する本件違反
行為の対象工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受
注できるようにしていた行為を取りやめている旨
今後,共同して,豊橋市等又は愛知県豊橋土木事務所が指名競
争入札の方法により発注する本件違反行為の対象工事について受
注予定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ) 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,豊橋市等又
は愛知県豊橋土木事務所が競争入札の方法により発注する本件違反
行為の対象工事について受注予定者を決定しないこと。
(2) (株)日立製作所ほか8名に対する件(平成7年(納)第541号~第549号)
関係人
違反事実等
(ア)
 関係人9社は,平成4年5月中旬ころ,日本下水道事業団(以
下「事業団」という。)職員から,事業団が平成4年度に発注す
る電気設備工事の件名及び同工事の発注予定金額の教示を受ける
などした上,同年6月16日ころの三菱電機(株)会議室で開催され
た各社の部長級又は課長級の者による会合等において,あらかじ
め定めた比率等に基づいて,各社が,順次,受注希望物件を選択
していくなどの方法により,前記教示を受けた平成4年度発注電
気設備工事の新規工事(以下「平成4年度特定電気設備工事」と
いう。)の受注予定者を決定するとともに,相指名業者は,受注
予定者が受注できるように入札することとした。
関係人9社は,平成5年5月中旬ころ,事業団職員から,事業
団が平成5年度に発注する電気設備工事の件名及び同工事の発注
予定金額の教示を受けるなどした上,同年6月15日ころの富士電
機(株)会議室で開催された各社の部長級又は課長級の者による会
合等において,あらかじめ定めた比率等に基づいて,各社が,順
次,受注希望物件を選択していくなどの方法により,前記教示を
受けた平成5年度発注電気設備工事の新規工事(以下「平成5年
度特定電気設備工事」という。)の受注予定者を決定するととも
に,相指名業者は,受注予定者が受注できるように入札すること
とした。
(イ)  事業団が平成4年度及び平成5年度において執行した平成4年度
特定電気設備工事及び平成5年度特定電気設備工事の指名競争入札
において,相指名業者間で相互に入札価格を連絡することにより,
前記(ア)a及びbによる受注予定者が受注していた。
(3) (株)田中組ほか22名に対する件(平成7年(勧)第12号)
関係人

違反事実等
(ア)  関係人23社は,遅くとも平成2年5月以降(一部の者にあっては
平成6年6月以降),小田原市が指名競争入札の方法により発注す
る上水道配管工事(以下「小田原市発注の上水道配管工事」とい
う。)について,受注機会の均等化及び受注価格の低落防止を図る
ため
 小田原市から指名競争入札の参加の指名を受けた場合は,次の
方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」とい
う。)を決定する
(a)  受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1名の
ときは,当該受注希望者を受注予定者とする
(b)  受注希望者が複数のときは,受注希望者による話合いにより
受注予定者を決定する
(c)  前記(b)により受注予定者を決定することができないときは,
受注希望者以外の指名を受けた者による話合いにより受注予定
者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注することができるように
協力する
旨の合意の下に,指名を受けた者が参加する研究会等と称する会合
を開催するなどして,受注予定者を決定し,受注予定者が受注でき
るようにしていた。
(イ)  関係人23社は,前記(ア)により,小田原市発注の上水道配管工事の
大部分を受注していた。
(ウ)  本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,平成7年2月8日,23社のうち22社は,小田原市内で
開催した会合において,前記(ア)の合意に基づき受注予定者を決定
し,受注予定者が受注できるようにする行為を行わない旨を決定
し,会合に出席していなかった1社はその通知を受け,これを了承
したことにより,23社は,同日以降,同合意に基づき受注予定者を
決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめてい
る。
排除措置
 関係人23社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア) 次の事項を小田原市に通知すること
 遅くとも平成2年5月以降(一部の者にあっては平成6年6月
以降)行っていた,小田原市発注の上水道配管工事について,受
注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取
りやめている旨
 今後,共同して,小田原市発注の上水道配管工事について,
受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う
(イ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,小田原市が
競争入札の方法により発注する上水道配管工事について,受注予定
者を決定しないこと。
(4) 横河電機(株)ほか3名に対する件(平成7年(納)第550号~553号)
関係人
違反事実等
(ア)  関係人5社は,遅くとも平成元年1月以降,地方公共団体が指名
競争入札の方法により発注する浄水場等の水道施設に係るプロセス
用監視制御システムを専らデジタル計装制御システムにより構成す
る計装設備の工事(以下「特定計装設備工事」という。)につい
て,受注価格の低落防止を図るため
 5社の部長級又は課長級の者が出席する山手会と称する会合を
原則として毎水曜日に開催し,同会合において入札の指名を受け
た工事を報告するとともに,当該工事について受注希望の有無を
表明する
 当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」とい
う。)が1名の場合はその者を受注すべき者(以下「受注予定
者」という。)とし,受注希望者が複数の場合は,当該工事に関
し,発注者等に対する営業活動の程度又は過去の工事実績を勘案
して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する
 受注予定者以外の相指名業者は,受注予定者の入札価格よりも
高い価格で入札することにより,受注予定者が受注できるように
協力する
 5社の取引先の代理店が指名を受けた場合は,5社のうち当該
代理店に対しデジタル計装制御システム等を供給する者が指名を
受けたものとして,前記aないしcの方法により受注予定者を決
定し,受注予定者が受注できるようにする
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにしていた。
(イ)  5社は,前記(ア)により,地方公共団体が指名競争入札の方法によ
り発注する特定計装設備工事の大部分を,自ら受注し,又は代理店
をして受注させていた。
(ウ)  本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,5社は平成6年3月25日以降,前記(ア)の合意に基づき
受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取
りやめている。
(注)  違反行為者のうち(株)島津製作所は,実行期間内において対象役務
の受注実績がないことから,課徴金の納付を命じていない。
(5) 日本上下水道設計(株)ほか8名に対する件(平成7年(勧)第13号)
関係人
違反事実等
(ア)  関係人9社は,遅くとも昭和62年10月1日以降,九州地区に所在
する県,市町村及び下水道組合(以下「九州地区内の地方公共団
体」という。)が指名競争入札又は指名見積り合わせ(以下「指名
競争入札等」という。)の方法により発注する公共下水道及び流域
下水道に係るコンサルタント業務のうち,基本構想の策定,全体計
画の策定,認可設計並びに終末処理場及びポンプ場の実施設計の業
務(以下「九州地区内の地方公共団体発注の特定下水道コンサルタ
ント業務」という。)について,受注価格の低落防止を図るため
 九州地区内の地方公共団体から指名競争入札等の参加の指名を
受けた場合は,指名を受けた者による会合の開催,電話連絡等を
通じて,次の方法により,当該業務を受注すべき者(以下「受注
予定者」という。)を決定する。
(a)  当該業務が新たな基本構想の策定の場合又は指名業者の中に
当該業務に先行する他の業務について受注している者がいない
場合については,
 受注を希望する者が1名のときは,その者を受注予定者と
する
 受注を希望する者が複数のときは,発注者に対する当該業
務に関する仕様書,見積書等の提出状況等の営業活動の程
度,受注意欲の強弱等を勘案し,受注に最も積極的であると
認められる者を受注予定者とする
(b)  当該業務が前記(a)以外の場合については,当該業務に先行す
る他の業務について受注している者を受注予定者とする
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにしていた。
(イ)  9社は,前記(ア)により,昭和62年10月1日以降,九州地区内の地
方公共団体の特定下水道コンサルタント業務の大部分を受注してい
た。
(ウ)  平成6年9月8日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定
に基づき審査を開始したところ,9社は,同日以降,前記(ア)の規定
に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにして
いた行為を取りやめている。
排除措置
 関係人9社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも昭和62年10月1日以降行っていた,九州地区内の地方公
共団体発注の特定下水道コンサルタント業務について受注予定者を
決定し,受注予定者が受注できるようにしていた行為を取りやめて
いることを確認すること。
(イ)  次の事項を九州地区内の地方公共団体に通知すること。
 遅くとも昭和62年10月1日以降行っていた,九州地区内の地方
公共団体発注の特定下水道コンサルタント業務について受注予定
者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた行為を取り
やめている旨
 今後,共同して,九州地区内の地方公共団体発注の特定下水道
コンサルタント業務について受注予定者を決定せず,各社がそれ
ぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,九州地区内
の地方公共団体が競争入札又は見積り合わせの方法により発注する
特定下水道コンサルタント業務について受注予定者を決定しないこ
と。
(6) ナカダ産業(株)ほか2名に対する件
関係人
違反事実等
(ア)  関係人3社は,かねてから,東北地区内の官公庁(以下単に「官
公庁」という。)が指名競争入札又は指名見積り合わせ(以下「指
名競争入札等」という。)の方法により発注するダム流木・塵芥止
施設(以下「網場施設」という。)の設置工事について,受注機会
の均等化及び受注価格の低落防止を図るため,その方策について検
討してきたところ,平成2年8月20日,東北地区の営業担当責任者
による会合(以下単に「会合」という。)において,官公庁が指名
競争入札等の方法により発注する東北地区内の新設ダムに係る網場
施設の設置工事(ダム建設業者等から下請け発注されることとなる
場合の同施設設置工事を含む。以下「官公庁発注の特定網場施設設
置工事」という。)について,あらかじめ,3社間で受注予定者を
定めることとし,次いで開催された同年10月29日の会合において,
受注予定者の決定に当たっては,3社に公平に配分するいわゆる均
等配分を原則とすることを決定した。
(イ)  3社は,前記(ア)の決定に基づき,3回にわたり,官公庁発注の特
定網場施設設置工事について受注予定者を決定するとともに
a 官公庁から指名競争入札等の参加の指名を受けた場合は,受注
予定者の入札価格が最低入札価格となるよう受注予定者以外の者
の入札価格を調整する
 ダム建設業者等から見積依頼を受けた場合は,受注予定者の見
積価格が最低見積価格となるよう受注予定者以外の者の見積価格
を調整する
 受注予定者以外の者は,受注予定者とならなかった物件に関す
る受注活動を自粛する
等の措置を講ずることとし,これにより,受注予定者が受注できる
ようにしていた。
(ウ)  3社は,前記(イ)により,官公庁発注の特定網場施設設置工事の大
部分を受注していた。
(エ)  平成6年12月13日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定
に基づいて審査を開始したところ,3社は,同日以降,前記(イ)の決
定に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにし
ていた行為を取りやめ,その後,平成7年5月18日に開催した会合
において,前記(イ)の決定を破棄した。
排除措置
関係人3社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  次の事項を東北地区内の新設ダムに係る網場施設の設置工事を指
名競争入札等の方法により発注する官公庁及び平成2年12月13日か
ら平成6年12月13日までの間に官公庁発注の特定網場施設設置工事
を受注した土木工事業者に通知すること
 平成2年8月20日から平成5年12月17日までの間に行った,官
公庁発注の特定網場施設設置工事の受注予定者の決定に関する決
定を破棄した旨
 今後,共同して,官公庁発注の特定網場施設設置工事について
受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う
(イ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,官公庁発注
の特定網場施設設置工事について,受注予定者を決定しないこと。
(7) 日和崎ガス(株)ほか6名及び高知日商プロパン(株)ほか7名に対する
件(平成7年(勧)第17号及び平成7年(勧)第18号)
関係人
違反事実等
日和崎ガス(株)ほか6名に対する件(平成7年(勧)第17号)
(ア)
 関係人7社は,かねてから,各社のオートガスの営業責任者で
構成する「みのり会」と称する会合において,オートガスの販売
価格等に関する情報交換等を行ってきた。
 7社は,平成6年10月以降のオートガスの仕人価格の値上がり
に対処するため,平成6年12月22日,高知市所在の(財)高知県中
央地域地場産業振興センター(以下「地場産業センター」とい
う。)で開催したみのり会において,高知市及び高知県南国市の
区域におけるオートガスの販売価格の引上げについて検討した結
果,オートガスの販売価格を平成7年2月1日充てん分から1
リットル当たり3円引き上げることを決定し,その後,7名のう
ち高知スタンダード石油(株)を除く6社は,平成7年1月9日,
地場産業センターで開催したみのり会において,前記決定内容の
引上げ額3円を4円に修正することを決定した。
 また,高知スタンダード石油(株)は,同日,日和崎ガス株式会
社から前記決定内容の通知を受け,これを了承した。
(イ)  7社は,前記bの決定に基づき,おおむね,オートガスの販売価
格を引き上げていた。
(ウ)  平成7年4月18日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定
に基づき審査を開始したところ,7社は,平成7年5月16日,地場
産業センターで開催したみのり会において,前記bの決定を破棄す
ること及びみのり会を解散することを決定した。
高知日商プロパン(株)ほか7名に対する件(平成7年(勧)第18号)
(ア)
 関係人8社は,かねてから,各社のプロパンガスの営業責任者
で構成する「高知県LPガス卸売協議会」と称する会合(以下
「卸協議会」という。)において,小売業者向けプロパンガスの
販売価格等に関する情報交換等を行ってきた。
 8社のうち岩谷産業(株)を除く各社は,平成6年12月及び平成
7年1月のプロパンガスの仕入価格の値上がりに対処するため,
平成6年12月27日,地場産業センターで開催した卸協議会におい
て,小売業者向けプロパンガスの販売価格の引上げについて検討
した結果,同販売価格を平成7年2月1日から1キログラム当た
り3円引き上げることを決定した。
 また,岩谷産業(株)は,平成6年12月28日ごろ,高知日商プロ
パン(株)から前記決定内容の通知を受け,これを了承した。
 次いで,8社は,平成7年2月のプロパンガスの仕入価格の値
上がりに対処するため,平成7年2月3日,地場産業センターで
開催した卸協議会において,小売業者向けプロパンガスの販売価
格を同年3月1日から1キログラム当たり4円引き上げることを
決定した。
 さらに,8社は,平成7年3月のプロパンガスの仕入価格の値
上がりに対処するため,平成7年2月22日,地場産業センターで
開催した卸協議会において,小売業者向けプロパンガスの販売価
格を同年4月1日から1キログラム当たり3円引き上げることを
決定した。
 高知日商プロパン(株)は,平成7年4月5日,地場産業セン
ターで開催した卸協議会において,プロパンガスの仕入価格の値
下がり等を理由に前記(エ)の合意から離脱した。
(イ)  8社は,前記(ア)の各決定に基づき,おおむね,小売業者向けプロ
パンガスの販売価格を引き上げていた。
(ウ)  平成7年4月18日,当委員会が独占禁止法の規定に基づきオート
ガスの販売業者に対する審査を開始したところ,当該審査の対象に
8社のうち大部分の者が含まれていたことから,8社は,同年5月
以降のプロパンガスの販売価格を共同して決定する行為を取りやめ
ている。
排除措置
日和崎ガス(株)ほか6名に対する件(平成7年(勧)第17号)
 関係人7社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  次の事項を高知市及び高知県南国市の区域におけるオートガスの
需要者に周知徹底させること。
 平成7年1月9日に行ったオートガスの販売価格の引上げに関
する決定を破棄した旨
 今後,共同して,オートガスの販売価格を決定せず,各社がそ
れぞれ自主的に決める旨
 高知日商プロパン(株)ほか7名に対する件(平成7年(勧)第18号)
 関係人8社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  平成6年12月27日,平成7年2月3日及び同月22日に行った小売
業者向け家庭用・業務用プロパンガスの販売価格の引上げに関する
決定に基づく行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  次の事項を高知県の区域における小売業者向け家庭用・業務用プ
ロパンガスの取引先販売業者に周知徹底させること。
 平成6年12月27日,平成7年2月3日及び同月22日に行った前
記製品の販売価格の引上げに関する決定に基づく行為を取りやめ
ている旨
 今後,共同して,前記製品の販売価格を決定せず,各社がそれ
ぞれ自主的に決める旨
(8) ニチモウ(株)ほか2名に対する件,函館製網船具(株)に対する件及び
泰東製綱(株)に対する件(平成8年(納)第4号~第6号,平成8年(納)
第7号及び平成8年(納)第8号)
ニチモウ(株)ほか2名に対する件(平成8年(納)第4号~第6号)
関係人
違反行為等
(ア)  関係人3社は,遅くとも平成2年4月1日以降,(財)海外漁業協
力財団(以下「財団」という。)が指名見積り合わせの方法により
発注する研修課及び開発協力課所管の漁業資機材(以下「財団発注
の特定漁業資機材」という。)について,受注価格の低落防止を図
るため,次の合意の下に,共同して,受注予定者を決定し,受注予
定者が受注できるようにしていた。
 財団から指名見積り合わせの参加の指名を受けた者の中に3社
のうち2社以上が含まれている場合には,指名を受けた者の間の
話合いにより,受注すべき者を決定する。
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注することができるように
協力する。
 受注した前記資機材に係る業務については,指名を受けた者の
間において,受注予定者となって受注した者から他の者に順次発
注する「回し」と称する方法を用いることにより,各社の売上及
び利益が確保できるようにする。
(イ)  3社は,前記(ア)により,財団発注の特定漁業資機材の大部分を受
注していた。
(ウ)  3社は,平成6年1月26日以降,財団発注の特定漁業資機材の指
名見積合わせの参加の指名状況が変化したことにより,前記(ア)の合
意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにす
ることが困難になったことから,当該行為を取りやめている。
函館製網船具(株)に対する件(平成8年(納)第7号)
関係人
違反行為等
(ア)  関係人3社は,遅くとも平成3年4月1日以降,全国近海かつ
お・まぐろ漁業協会(以下「全近かつ協」という。)が指名見積り
合わせの方法により発注する漁業資機材(以下「全近かつ協発注の
特定漁業資機材」という。)について,受注価格の低落防止を図る
ため,次の合意の下に,共同して,受注予定者を決定し,受注予定
者が受注できるようにしていた。
 全近かつ協から指名見積り合わせの参加の指名を受けた者の中
に3社のうち2社以上が含まれている場合には,指名を受けた者
の間の話合いにより,受注すべき者を決定する。
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注することができるように
協力する。
 受注した前記資機材に係る業務については,指名を受けた者の
間において,受注予定者となって受注した者から他の者に順次発
注する「回し」と称する方法を用いることにより,各社の売上及
び利益が確保できるようにする。
(イ)  函館製網船具(株)は,前記(ア)により,全近かつ協発注の特定漁業
資機材の大部分を受注していた。
(ウ)  3社は,平成5年4月1日以降,全近かつ協発注の特定漁業資機
材の指名見積り合わせの参加の指名状況が変化したことにより,前
記(ア)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できる
ようにすることが困難になったことから,当該行為を取りやめてい
る。
(注)  違反行為者のうち,泰東製綱(株)及びヒラボウ(株)の2社について
は,実行期間内において対象商品の受注実績がなかったことから,課
徴金の納付を命じていない。
黍東製綱(株)に対する件(平成8年(納)第8号)
関係人
違反行為等
(ア)  関係人3社は,遅くとも平成4年11月24日以降,(社)沖合いかつ
り漁業協会(以下「沖合いかつり協」という。)が指名見積り合わ
せの方法により発注する漁業資機材(以下「沖合いかつり協発注の
特定漁業資機材」という。)について,受注価格の低落防止を図る
ため,次の合意の下に,共同して,受注予定者を決定し,受注予定
者が受注できるようにしていた。
 受注予定者は,泰東製綱(株)とする。
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注することができるように
協力する。
 受注した前記資機材に係る業務については,指名を受けた者の
間において,受注予定者となって受注した者から他の者に順次発
注する「回し」と称する方法を用いることにより,各社の売上及
び利益が確保できるようにする。
(イ)  泰東製綱(株)は,前記(ア)により,沖合いかつり協発注の特定漁業
資機材のすべてを受注していた。
(ウ)  3社は,平成6年9月22日以降,沖合いかつり協が特定漁業資機
材の発注を行わなくなったことから,前記(ア)の合意に基づき受注予
定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめ
ている。
(注)  違反行為者のうち,ニチモウ(株)及び函館製網船具(株)の2社につ
いては,実行期間内において対象商品の受注実績がなかったことか
ら,課徴金の納付を命じていない。
(9) (株)飯尾組ほか144名に対する件,(株)亜興ほか99名に対する件,
(株)飯田組ほか54名に対する件,(株)飯尾組ほか97名に対する件,(株)
亜興ほか48名に対する件及び(株)飯田組ほか23名に対する件(平成8年
(勧)第4号,平成8年(勧)第5号,平成8年(勧)第6号,平成8年(勧)
第7号,平成8年(勧)第8号及び平成8年(勧)第9号)
関係人




















違反事実等
(ア)  関係人は,平成5年11月17日以降,浜松市又は静岡県浜松土木事
務所(以下「浜松市等」という。)が指名競争入札の方法により発
注する土木一式工事,建築一式工事及び舗装工事(以下「浜松市等
発注の建設工事」という。)について,受注機会の均等化及び受注
価格の低落防止を図るため,浜松市等から指名競争入札の参加の指
名を受けたときは,指名業者間で電話等により相互に連絡するなど
して
 当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」とい
う。)が1名のときは,その者を受注予定者とする
 受注希望者が複数のときは,既受注工事との継続性又は関連
性,工事場所等を勘案し,受注希望者の間の話合いにより当該工
事の受注予定者を決定する
 前記bにより受注予定者を決定できないときは,指名業者の間
の話し合い等により受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにしていた。
(イ)  関係人は,前記(ア)により,浜松市等発注の建設工事の大部分を受
注していた。
(ウ)  本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,平成7年8月23日,浜松市所在の浜松建設会館の会議
室で関係人の大部分の者等が出席して開催された会合において,前
記(ア)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できる
ようにする行為を行わない旨の申合せが行われたこと等により,本
件関係人は,事実上,同日以降,同合意に基づき受注予定者を決定
し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
排除措置
 関係人に対し,次の措置を採るよう命じた
(ア)  それぞれ関係する浜松市等発注の建設工事について,平成5年11
月17日以降行っていた,受注予定者を決定し,受注予定者が受注で
きるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ) 次の事項を浜松市等に通知すること。
 平成5年11月17日以降,浜松市等発注の建設工事について受注
予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取り
やめている旨
 今後,共同して,浜松市等発注の建設工事について受注予定者
を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ) 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,浜松市等発
注の建設工事について受注予定者を決定しないこと。
(10) (株)東急百貨店ほか12名に対する件(平成8年(勧)第10号)
関係人


違反事実等
(ア)  関係人13社は,遅くとも平成4年4月1日以降,東京都,(財)東
京都福利厚生事業団,特別区及び特別区職員互助組合(以下「東京
都等」という。)が百貨店業者を主たる対象として指名競争入札の
方法により発注する贈答品,被服,什器・備品,防災品等の物件
(以下「特定物件」という。)について,受注価格の低落防止を図
るため,次の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注
できるようにしていた。
 東京都等から指名競争入札の参加の指名を受けたときは,原則
として,次の方法により,当該物件を受注すべき者(以下「受注
予定者」という。)を決定する。
(a)  当該物件に関して受注を希望する者(以下「受注希望者」と
いう。)が1名のときは,その者を受注予定者とする。
(b)  受注希望者が複数のときは,指名競争入札に参加する指名業
者の間の話合いにより,受注予定者を決定する。
(c)  上記(b)の話合いに当たっては営業活動の実積,受注予定者以
外の指名業者へ提供する利益の額等を勘案する。
 受注予定者は,自己の入札価格等を他の指名業者へ連絡し,他
の指名業者は,受注予定者が受注できるように協力する。
 受注予定者となって受注した者は,他の指名業者へ当該物件を
順次発注する「回し」と称する方法を用いることなどにより,他
の指名業者の売上げ及び利益が確保できるようにする。
(イ)  関係人13社は,前記(ア)の合意の下で,東京都等発注の特定物件の
ほとんどすべてを受注していた。
(ウ)  平成7年7月28日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定
に基づき審査を開始したところ,13社は,同日以降,前記(ア)の合意
に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする
行為を取りやめている。
排除措置
 関係人13社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  次の事項を東京都等に通知すること。
 遅くとも平成4年4月1日以降行っていた,東京都等発注の特
定物件について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できる
ようにしていた行為を取りやめている旨
 今後,共同して,東京都等発注の特定物件について,受注予定
者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(イ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,東京都等が
競争入札の方法により発注する特定物件について,受注予定者を決
定しないこと。
(11) 舞鶴設備工業(株)ほか8名に対する件(平成8年(勧)第11号)
関係人
違反事実等
(ア)  関係人9名及び新栄工業(株)(以下「新栄工業」という。)は,
遅くとも平成3年4月以降,千歳市及び同市ガス水道局(以下「千
歳市等」という。)が指名競争入札又は指名見積り合わせの方法に
より発注するガス水道配管等工事(以下「千歳市等発注のガス水道
配管等工事」という。)について,受注機会の均等化を図るため
 次の方法により,千歳市等発注のガス水道配管等工事を受注す
べき者(共同施工方式により施行する場合にあっては,受注すべ
き共同企業体の構成員となるべき者。以下「受注予定者」とい
う。)を決定する
(a) 千歳市等から指名競争入札等の参加の指名を受けた場合には
 千歳市等発注のガス水道配管等工事について受注を希望す
る者(以下「受注希望者」という。)が1名のときは,その
者を受注予定者とする
 受注希望者が複数のときは,これらの者の間の話合いによ
り受注予定者を決定する
 受注希望者がいないときは,指名を受けた者の間の話合い
により受注予定者を決定する
(b) 千歳市等から共同企業体の構成員として選定された場合には
 千歳市等発注のガス水道配管等工事について受注希望者が
1名のときは,その者を受注予定者とし,当該受注予定者が
共同企業体を構成する相手方事業者を決定する
 受注希望者が複数のときは,これらの者の間の話合いによ
り受注予定者を決定する
 受注希望者がいないときは,共同企業体の構成員として選
定された者の間の話合いにより受注予定者を決定する
(c)  前記(a)及び(b)の話合いにより受注予定者を決定することがで
きないときは,あらかじめ選定した調整者3名の協議により決
定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注することができるように
協力する
旨の合意の下に,あらかじめ,受注予定者を決定し,受注予定者が
受注できるようにしていた。
(イ)  関係人9名及び新栄工業は,平成3年4月以降,前記(ア)により,
千歳市当発注のガス水道配管等工事の大部分を受注していた。
(ウ)  新栄工業は,平成6年10月15日以降,前記(ア)の合意から離脱し,
受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を
行っていない。
(エ)  本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,平成7年4月12日,9名のうち8名は,千歳市内で開
催した会合において,前記(ア)の合意に基づき受注予定者を決定し,
受注予定者が受注できるようにする行為を行わない旨を決定し,同
会合に出席していなかった1名はその通知を受け,これを了承した
ことにより,9名は,同日以降,同合意に基づき受注予定者を決定
し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
排除措置
 関係人9名に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア) 次の事項を千歳市等に通知すること。
 遅くとも平成3年4月以降行っていた,千歳市等発注のガス水
道配管等工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注
できるようにしていた行為を取りやめている旨
 今後,共同して,千歳市等発注のガス水道配管等工事につい
て,受注予定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を
行う旨
(イ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,千歳市等が
競争入札又は見積り合わせの方法により発注するガス水道配管等工
事について,受注予定者を決定しないこと。

2 独占禁止法第8条第1項第1号違反事件

千葉県石油商業組合野田支部に対する件(平成7年(勧)第6号)
関係人
違反事実等
(ア)  千葉県石油商業組合野田支部(以下「野田支部」という。)は,
かねてから,千葉県野田市における石油製品の市況について情報交
換を行ってきたところ,普通揮発油の市況が低下していることに対
処するため,平成6年10月21日に開催した支部会において
 支部員の普通揮発油の現金フリー客向け販売価格を1リットル
当たり115円に,現金会員向け販売価格を1リットル当たり110円
に,平成6年11月1日からそれぞれ引き上げること
 前記販売価格の引上げの実効を確保するため
(a) 同年10月25日までに安値看板を撤去し,同年11月1日から
115円と表示した看板を掲示すること
(b) 同年11月1日以降,支部員の給油所において試し買いを行
い,支部員の販売価格の引上げの状況を調査すること
 を決定した。
野田支部は,前記決定事項を,欠席した支部員のうち主要な支部
員に伝達した。
(イ)  野田支部は,前記(ア)a(b)の決定に基づき,支部員の給油所におい
て試し買いを行い,販売価格を前記決定価格に引き上げていなかっ
た支部員に対し,前記決定価格に引き上げるよう要請した。
(ウ)  野田支部の支部員は,前記決定に基づき,おおむね,普通揮発油
の現金売り販売価格を引き上げた。
(エ)  本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,野田支部は,平成7年4月16日に開催した支部会にお
いて,前記の(ア)の決定を破棄することを決定した。
排除措置
野田支部に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア) 次の事項を支部員及び千葉県野田市の区域における普通揮発油の
需要者に周知徹底させること。
 平成6年10月21日に行った普通揮発油の現金売りの販売価格の
引上げに関する決定を破棄した旨
 今後,支部員の普通揮発油の現金売りの販売価格を決定せず,
支部員がそれぞれ自主的に決める旨

3 独占禁止法8条第1項4号違反事件

(1) 石川県水晶米販売事業協同組合に対する件(平成7年(勧)第20号)
関係人
違反事実等
(ア)  石川県水晶米販売事業協同組合(以下「水販協」という。)は,
遅くとも,平成6年9月上旬以降,水晶米の卸売価格が改定される
都度,理事会等を開催して,卸売価格の変動額等を勘案して組合員
の販売する水晶米の小売価格設定の基準となる価格(以下「小売基
準価格」という。)を決定してきたところ,平成7年9月7日こ
ろ,水晶米の卸売価格が改定されることになったため,水販協事務
所の所在する食糧会館会議室で開催した理事会において,水晶米の
小売基準価格を決定した上,同年9月から適用する価格表を作成
し,組合員にこれを配布し,同価格で販売させることとした。
(イ)  水販協の組合員は,水晶米を,おおむね,上記決定の小売基準価
格で販売していた。
(ウ)  本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,水販協は,平成7年10月以降,組合員の販売する水晶
米の小売基準価格を決定し,同価格で販売させる行為を取りやめる
とともに,同年11月21日,前記食糧会館で開催した役員会におい
て,今後,組合員の販売する水晶米の小売基準価格を決定する行為
を行わないことを決定した。
排除措置
 水販協に対し,次の措置を採るよう命じた。
 平成7年10月以降,組合員の販売する水晶米の小売基準価格を決定
し,同価格で販売させる行為を取りやめた旨を組合員及び一般消費者
に周知徹底させること。
(2) (社)福島トラック協会に対する件(平成8年(勧)第1号)
関係人
違反事実等
(ア)  (社)福島県トラック協会(以下「福島県トラック協会」とい
う。)は,会員の一般貨物自動車運送事業に係る諸費用の上昇に対
処するため,かねてから同事業に係る運賃等の届出に関する規制緩
和措置を要望していたところ,同措置に対する東北運輸局長公示第
4号(「原価計算書等の添付を省略できる範囲について」)が行わ
れ,運賃等の設定又は変更の届出を容易に行うことができるように
なったことから,平成6年3月28日,福島県トラック協会研修セン
ターで開催した理事会・監事・支部長合同会議において,会員の積
合せ貨物運送事業,貸切貨物運送事業及び引越貨物運送事業(以下
「積合せ貨物運送事業等」という。)に係る運賃等の引上げを図る
ため,
 会員の積合せ貨物運送事業等に係る運賃等を引き上げ,会員に
当該運賃等の届出を行わせること
 会員の積合せ貨物運送事業等に係る新運賃等その他届出書に記
載すべき内容は,同協会事務局をして確定させること
 会員に対し,前記公示の内容,届出書の作成要領及び提出方法
等を周知するとともに,会員の届出を容易にするため,説明会を
開催し,同協会事務局が作成する届出に必要な届出書一式を配布
すること
を決定した。
(イ)  福島県トラック協会事務局は,前記(ア)の決定に基づき,平成6年
4月中旬ころ,積合せ貨物運送事業等に係る新運賃等については,
前記東北運輸局長公示第4号において原価計算書等の添付を省略す
ることができる上限の額とすることとし,当該運賃等の適用方法を
定めた「運賃料金適用方」については,おおむね現行のとおりとす
ることとして,同月下旬ごろ
 前記公示の内容を含む運賃等の届出に関する規制緩和の内容を
説明する書類
 記入例を記載した当該新運賃等の届出書のひな型
 会員の当該新運賃等の届出に必要な届出書一式
を作成した。
(ウ)  福島県トラック協会は,平成6年4月以降,説明会を開催し,会
員に対し,前記(イ)の説明書類,届出書のひな型及び届出書一式の必
要提出部数を配布するとともに,届出書提出の必要性,届出書の記
載方法等について説明し,各会員が積合せ貨物運送事業に係る運賃
等を同協会事務局が配布した届出書記載の新運賃等に引き上げた
上,当該新運賃等の届出書を同協会を経由して運輸大臣に提出する
よう指示した。
(エ)  福島県トラック協会の会員のうち大部分の者は,この指示を受け
て,積合せ貨物運送事業等に係る運賃等を引き上げ,説明会の開催
日からおおむね2か月以内に,同協会事務局から配布された届出書
一式をそのまま利用して,当該新運賃等の届出書を同協会経由で運
輸大臣に提出した。
(オ)  前記届出を行った者のうち,荷主に対し,新運賃等に基づき実際
に収受する運賃等の改定交渉を行い,これを引き上げた者は,一部
にとどまっている。
排除措置
 福島県トラック協会に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  平成6年3月28日に行った,会員の積合せ貨物運送事業等に係る
運賃等の引上げに関する決定を破棄するとともに,同決定に基づき
同協会事務局をして同年4月中旬ころ確定させた同事業等に係る新
運賃等に基づいて,会員に運輸大臣に対する届出を行わせる行為を
取りやめること。
(イ)  次の事項を,会員及び会員の取引先荷主に周知徹底させること。
 前項に基づいて採った措置
 今後,会員の前記事業等に係る運賃等を決定せず,会員がそれ
ぞれ自主的に決める旨
(ウ)  今後,会員の前記事業等に係る運賃等を決定し,これに基づいて
会員に運輸大臣に対する届出を行わせる行為をしないこと。
(3) 愛媛県歯科医師会宇摩支部会に対する件(平成8年(勧)第3号)
関係人
違反事実等
(ア)  愛媛県歯科医師会宇摩支部会(以下「宇摩支部会」という。)
は,昭和41年5月ころ開催した総会において,宇摩地区における歯
科医療機関の間の競争の激化が予想されたことから,愛媛県歯科医
師会宇摩支部会医療管理規定(以下「医療管理規定」という。)を
決定した。
 その後,医療管理規定は3度にわたって改正され,名称も宇摩歯
科医師会道義規定(以下「道義規定」という。)と改められている
が,その内容は,次のとおりである。
 歯科医療機関を分設しないこと。
 歯科医療機関を開設又は移転する場合は,宇摩支部会の承認を
受けること。
 既設医療機関と新設医療機関との距離を200メートル以上とす
ること。
 歯科医師を原則として雇用しないこと。
(イ)  宇摩支部会は,前記医療管理規定又は道義規定に基づき,会員の
歯科医療機関の分設,移転又は歯科医師の雇用の可否について,例
会において審議・決定してきた。
 宇摩支部会は,前記決定に基づき,会員が分設した歯科医療機関
を廃止させ,また,会員が雇用している歯科医師を解雇させてい
る。
(ウ)  本件について,当委員会が審査を開始したところ,宇摩支部会
は,平成8年1月25日に開催した臨時総会において,道義規定を破
棄する旨の決定を行い,会員の行う歯科医療機関の分設,移転又は
歯科医師の雇用を制限する行為を取りやめている。
排除措置
 宇摩支部会に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  会員の行う歯科医療機関の分設,移転又は歯科医師の雇用を制限
する行為を取りやめている旨を同支部会の地区内の歯科医師に周知
徹底させること。
(イ)  今後,会員の行う歯科医療機関の分設,移転又は歯科医師の雇用
を制限する行為をしないこと。

4 独占禁止法第19条違反事件

(1) (株)資生堂に対する件(平成7年(勧)第7号)
(2) 旭電化工業(株)に対する件及びオキシラン化学(株)に対する件(平成
7年(勧)第15号及び平成7年(勧)第16号)

関係人
違反事実等
 旭電化工業(株)に対する件(平成7年(勧)第15号)
(ア)  旭電化工業(株)(以下「旭電化」という。)が全株式を所有する
アデカ・アーガス化学(株)(以下「アデカ・アーガス」という。)
は,昭和56年4月28日,台湾台北市に本店を置き石油化学製品の製
造販売業を営む長春石油化學股分有限公司(以下「長春石油化学」
という。)との間に,契約期間を10年とするエポキシ系可塑剤(エ
ポキシ化亜麻仁油を除く。以下「エスボ等」という。)製造に係る
ノウハウの供与に関する国際的契約(以下「エスボ等ライセンス契
約」という。)を締結するとともに,ライセンス契約に関連して覚
書を締結した。
(イ)  アデカ・アーガスは同覚書第2条において,エスボ等ライセンス
契約終了後,直接又は間接を問わず,アデカ・アーガスによる事前
の書面の同意がない限り,長春石油化学は我が国におけるエスボ等
の製造又は販売をしてはならない旨規定することにより,エスボ等
ライセンス契約終了後における長春石油化学のエスボ等の我が国向
けの供給を制限していた。
(ウ)  本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,旭電化は,平成7年8月28日,長春石油化学に対し
て,上記覚書第2条の規定の破棄の申入れを行い,長春石油化学
は,この申入れに同意した。
オキシラン化学(株)に対する件(平成7年(勧)第16号)
(ア)  オキシラン化学(株)(以下「オキシラン化学」という。)は,平
成5年4月12日,長春石油化学との間に,契約期間を10年とするエ
ポキシ化亜麻仁油(以下「エルソ」という。)製造に係るノウハウ
の供与に関する国際的契約(以下「エルソライセンス契約」とい
う。)を締結するとともに,エルソライセンス契約に関連して覚書
を締結した。
(イ)  オキシラン化学は,同覚書第4条において,エルソライセンス契
約終了後,長春石油化学はエルソの我が国における販売又は市場に
出すための供給をしてはならない旨規定することにより,エルソラ
イセンス契約終了後における長春石油化学のエルソの我が国向けの
供給を制限することとしていた。
(ウ)  本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,オキシラン化学は,平成7年8月28日,長春石油化学
に対して,上記覚書第4条の規定の破棄の申入れを行い,長春石油
化学は,この申入れに同意した。
排除措置
旭電化工業(株)に対する件(平成7年(勧)第15号)
 旭電化に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア) 次の事項を取引先販売業者及び需要者に周知徹底させること。
 昭和56年4月28日付けで長春石油化学との間に締結したエスボ
等ライセンス契約において,契約終了後におけるエスボ等の我が
国向けの供給制限を定めた覚書第2条の規定を破棄した旨
 今後,ノウハウの供与に関する国際的契約において,契約終了
後におけるエスボ等の我が国向けの供給を制限しない旨
(イ)  今後,ノウハウの供与に関する国際的契約において,契約終了
におけるエスボ等の我が国向けの供給を制限しないこと。
オキシラン化学(株)に対する件(平成7年(勧)第16号)
 オキシラン化学に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア) 次の事項を取引先販売業者及び需要者に周知徹底させること。
 平成5年4月12日付けで長春石油化学との間に締結したエルソ
ライセンス契約において,契約終了後におけるエルソの我が国向
けの供給制限を定めた覚書第4条の規定を破棄した旨
 今後,ノウハウの供与に関する国際的契約において,契約終了
後におけるエルソの我が国向けの供給を制限しない旨
(イ)  今後,ノウハウの供与に関する国際的契約において,契約終了後
におけるエルソの我が国向けの供給を制限しないこと。
(3) 星商事(株)に対する件(平成8年(勧)第2号)
関係人
違反事実等
(ア)  星商事(株)(以下「星商事」という。)は,平成4年秋ころ以
降,ヘレンド・ポーセライン・マニュファクトリー・リミティッド
(以下「ヘレンド社」という。)が製造する磁器製の食器等(以下
「ヘレンド製品」という。)の並行輸入品が希望小売価格を相当程
度下回る価格で大量に販売されるようになり,小売価格の維持,そ
の他自己の営業活動等に影響を及ぼすおそれが生じてきたことか
ら,並行輸入品対策について検討した結果,平成5年3月ころ,並
行輸入品が希望小売価格を相当程度下回る価格で大量に販売された
場合には,当該並行輸入品について店頭調査を行い,当該製品に付
された国番号により輸出国を突き止めてへレンド社に通報し,同社
をして,並行輸入業者に対するへレンド製品の供給を止めさせる旨
の方針を決定した。
(イ)  星商事は,この方針に基づき,以下の3並行輸入業者延べ4事例
について,その仕入先との取引を妨害している。
(a)  浦和市所在の並行輸入業者は,平成5年4月~5月,インドの
華の紅茶茶碗を希望小売価格の30パーセント引きの価格で販売
し,この旨を新聞広告により広告した。星商事は,国番号から当
該製品が香港からの並行輸入品であることを突き止め,同年4月
15日,ヘレンド社に対し,この並行輸入業者に対する香港からの
供給を止めさせるよう要請した。へレンド社が香港所在の総代理
店に対し,香港から日本の並行輸入業者に対する供給について遺
憾の意を表明したところ,同総代理店は,同月以降,この並行輸
入業者に対する供給を停止した。
(b)  また,この並行輸入業者は,平成6年10~11月,ヘレンド製品
を希望小売価格の30~40パーセント引きの価格で販売し,この旨
を新聞折り込みビラにより広告した。星商事は,国番号からこれ
らの製品のうちウィーンのバラの絵柄の製品がオーストリアから
の並行輸入品であることを突き止め,同年11月,ヘレンド社に対
し,同国から日本の並行輸入業者に対する供給を止めさせるよう
要請した。
 へレンド社がオーストリア所在の総代理店に対し,同国からの
日本の並行輸入業者に対する供給について遺憾の意を表明したと
ころ,同総代理店は,平成7年1月以降,この並行輸入業者に対
する供給を停止した。
 広島市所在の並行輸入業者は,平成6年9月,ヘレンド製品を
希望小売価格の40パーセント引きの価格で販売し,この旨を新聞
折り込みビラにより広告した。
 星商事は,国番号からこれらの製品のうちウィーンのバラ及び
インドの華の絵柄の製品がフランスからの並行輸入品であること
を突き止め,同年11月,ヘレンド社に対し,同国から日本の並行
輸入業者に対する供給を止めさせるよう要請した。
 へレンド社は,平成7年3月ころ,フランス所在の総代理店か
ら受注していたへレンド製品のうち日本の並行輸入業者向けと思
われるものの発注を取り消させるとともに,以後,同総代理店の
発注品のうち,日本の並行輸入業者に供給されることが明らかな
ものは受注を断ることとした。
 東京都品川区所在の並行輸入業者は,平成6年12月以降,アポ
ニーグリーンの絵柄の紅茶茶碗を希望小売価格の50パーセント引
きの価格で販売し,この旨を新聞折り込みビラにより広告した。
 星商事は,国番号からこれらの製品がイタリアからの並行輸入
品であることを突き止め,平成7年1月,ヘレンド社に対し,日
本の並行輸入業者に対する供給を止めさせるよう要請した。
 へレンド社が,イタリア所在の総代理店に対して,同総代理店
から受注している製品の中に日本の並行輸入業者に対して供給さ
れるおそれがある製品が含まれている旨を指摘したところ,同総
代理店は,同月,この発注を取り消した。
(ウ)  星商事の前記行為により,前記の3並行輸入業者は,ヘレンド製
品を総代理店等から並行輸入し,国内において販売することが困難
になっている。
排除措置
 星商事に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  平成5年3月ころに決定した,ヘレンド製品の並行輸入品が,自
己が国内において供給する同製品について定めた希望小売価格を相
当程度下回る価格で大量に販売されている場合に,製品に付された
国番号により輸出国を突き止めてへレンド社に通報し,同社をし
て,並行輸入業者に対する同社製品の供給をやめさせる旨の方針を
破棄するとともに,同方針に基づき供給を止めさせている行為を取
りやめること。
(イ)  (ア)に基づいて採った措置を上記並行輸入業者に周知徹底させるこ
と。

5 審判開始決定事件

(社)日本冷蔵倉庫協会に対する件(平成7年(勧)第19号)
関係人
審判開始決定の内容
(ア)  (社)日本冷蔵倉庫協会(以下「冷蔵倉庫協会」という。)は,会
員事業者の冷蔵倉庫業に関する経営収支の改善を図るため,かねて
から,会員事業者の保管料の引上げについて検討してきたところ
 平成4年4月23日に開催した幹部会において,会員事業者の冷
蔵倉庫保管料を引き上げるため,F級室の重量に係る基本料率
を,会員事業者が運輸大臣に届け出ていた料率から約8.8パーセ
ント引き上げ,26円60銭とすること
 運輸省の担当官から冷蔵倉庫保管料について多様化を図ること
が望ましい旨の意向が示されたことから,平成4年6月9日に開
催した幹部会において,会員事業者の基本料率を,会員事業者が
運輸大臣に届け出ていた料率から約8.8パーセント引き上げるこ
とを基準とした5種類の料率とするよう前記決定内容を修正する
こと。
 平成4年7月15日に開催した幹部会において,会員事業者に設
備能力による区分に応じ,原則として当該区分に対応する引上げ
率を基に算出した料率による届出を行わせること,最初に変更の
届出を行わせるべき事業者として特定の会員事業者を指名し,そ
の届け出るべき基本料率を当該事業者が運輸大連に届け出ていた
料率から約8.8パーセント引き上げた料率とすること,届け出る
期日を同月31日とすること及びその他の会員事業者の届け出るべ
き期日を,上記の期日から1週間を経過した日以降とすること
を決定した。
(イ)  会員事業者は,前記(ア)の決定に基づき,平成4年7月31日以降,
おおむね,保管料を変更することとし,その旨を運輸大臣に届け
出て,保管料を引き上げている。この場合において,実際の取引に
おいて収受していた冷蔵倉庫保管料が運輸大臣に届け出ていた冷
蔵倉庫保管料と異なるときは,当該引上げ率又はこれに相当する
引上げ額を目途に実際の取引において収受する保管料を引き上げて
いる。