ア |
大阪バス協会は,大阪府を事業区域とし,その区域内において一般
貸切旅客自動車(以下「貸切バス」という。)等の運送事業を営む者
を会員とする社団法人であり,会員のうち貸切バス事業者(以下「会
員」という。)が保有する貸切バスの車両数は,地区内における貸切
バスのほぼ全部を占めている。 |
イ |
大阪バス協会には,総会,理事会の外8つの専門委員会が設置され
ているが,その1つである貸切バス委員会は,貸切バスの運賃及び料
金(以下「運賃等」という。)に関する事項等を分掌しており,下部
組織として貸切バス小委員会を置いている。同小委員会は,同委員会
の分掌事項のうち事業経営の基本に係るものを除いた事項を審議する
こととされ,重要な事項について同委員会に対し報告,承認を要する
とされた外は,同小委員会での審議決定をもって同委員会の決定とみ
なすこととされている。また,大阪バス協会は,大阪府を5つのブ
ロックに分けてブロック会を組織している。 |
ウ |
貸切バス事業者が貸切バスの運賃等を変更しようとするときは,道
路運送法第9条第1項の規定により運輸大臣の認可を受ける必要があ
り,貸切バスの運賃は,従来,認可された基準の運賃率によって計算
した金額(以下「標準運賃」という。)の上下それぞれ10パーセント
の範囲内で事業者が自由に設定できることとされていたが,昭和63年
5月24日の認可以降はこれが上下それぞれ15パーセントに拡大されて
いる。 |
エ |
大阪府の貸切バス市場では,かねてから,取引上の力関係,旅行
シーズンの需給関係,事業者間の競争等の理由により,旅行業者又は
貸切バス事業者が旅行を主催して旅行者を募集して行うバス旅行(以
下「主催旅行」という。)向けの輸送を中心とし,認可された運賃等
(以下「認可運賃等」という。)を大幅に下回る運賃等による取引が
大規模かつ経常的に行われていた。しかし,個々の会員が運賃等の引
上げを図ることは困難であった。 |
オ |
このような状態の中で,昭和62年8月4日,当時大阪バス協会に置
かれていた貸切バス部会において,制裁を用意して会員に認可運賃等
を収受させ,旅行の類型ごとに最低運賃等を決定すべきことが提案さ
れ,大阪バス協会の他の委員会,会議の場でも同様の協議検討がされ
た。その後,貸切バス委員会,貸切バス小委員会の設置を経て,同小
委員会に貸切バスの運賃等の引上げ額の算定,その収受に関する方策
等に関する検討をさせることが決定された。他方,昭和63年7月21
日,貸切バス部会最後の部会が開かれ,主催旅行の運賃等の最低額に
関し,標準運賃からの割引率をシーズン別に決定するなどの方針がま
とめられ,次に開かれる会合で早急に検討するよう話合いがされた。 |
カ |
貸切バス小委員会委員である甲は,大手旅行業者中特に運賃等の低
かった乙会社と取引のある会員らに運賃等の引上げを図る会議を呼び
かけ,昭和63年7月,8月に2回にわたる会議が開かれた。甲から,
シーズンを3分割し,乙会社に限らず各旅行業者共通に主催旅行向け
輸送の運賃等の最低額として,貸切バス輸送の需要の多いAシーズン
は標準運賃の30パーセント引き,需要の少ないCシーズンは50パーセ
ント引き,その他のBシーズンは40パーセント引きとし,これに認可
された料金を加算することが提案され,出席者の間で検討された。 |
キ |
昭和63年8月30日,第1回貸切バス小委員会が開催され,甲から前
記カとほぼ同様の案が提案された。この提案に基づいて主催旅行向け
輸送の貸切バスの運賃等について検討された結果,A,B及びCシー
ズンの期間設定及び各期間における大型車1両当たりの最低運賃等を
決定し,これを昭和64年(平成元年)4月1日から実施することが決
定された。この決定と併せて,小冊子を作成し新たに認可された貸切
バスの運賃等を登載し,会員の担当者に周知徹底させた上,担当者が
各旅行業者を訪問し,確実な運賃等の収受を依頼することも決定され
た。 |
ク |
昭和63年9月8日,貸切バス小委員会の委員らが出席して粁程地図
の校正作業会が開かれ,前記キの決定のうち期間の一部の修正を予定
する話がまとまった。同月下旬には,会員の営業担当者を集めて営業
担当者研修会が開かれたが,甲は,その研修会の場で,前記キの決定
(ただし,期間は修正を予定されたもの)を説明した。そして,同月
26日貸切バス小委員会の委員が集まり,各委員が手分けし前記の小冊
子等を持参して各旅行業者に説明することを合意した。 |
ケ |
その合意に従った説明の後説明の結果を踏まえて,昭和63年10月12
日,第2回貸切バス小委員会が開かれた。旅行業者の多くから寄せら
れた意見に従いCシーズンの最低運賃を変更し,また,各シーズンの
期間を前記クの修正予定どおり修正して,第1回貸切バス小委員会の
決定を修正することが決定された。 |
コ |
昭和63年12月8日,第4回貸切バス小委員会が開催され,旅行業者
から主催旅行向け長距離輸送において最低運賃等と実勢運賃等とが大
きく乖離しているという意見が寄せられていることが紹介され,この
部分について決定を見直すことが提案された。この提案に基づき,同
月19日,急拠第5回貸切バス小委員会が開かれ,第2回貸切バス小委
員会の決定のうち運行距離900キロメートル以上の運賃等についての
み変更することが決定された。 |
サ |
平成元年2月から4月にかけて,大阪バス協会のブロック長会議等
の会議が開かれたが,これらの会議の場で平成元年度春季の幼稚園,
小学校,中学校及び高等学校の遠足向け(以下「学校遠足向け」とい
う。)輸送の最低運賃等に関し検討が行われ,成案が作成された。こ
の検討を踏まえて,同年4月24日,第8回貸切バス小委員会が開か
れ,学校遠足向け輸送の運賃等に関し検討がされた結果,右の成案を
若干修正し,平成元年度春季の学校遠足向けの輸送の大型車1両当た
りの最低運賃等が決定された。 |
シ |
その後,各ブロック会議が開かれ,平成2年度の主催旅行向け輸送
の最低運賃等,そのシーズン期間の設定等について検討され,意見が
取りまとめられて大阪バス協会事務局に連絡された。その結果,平成
元年5月19日,第9回貸切バス小委員会が開かれ,平成2年度の主催
旅行向け輸送の各シーズン期間及び各シーズン期間における大型車1
両当たりの最低運賃等を決定し,平成元年度冬季の社会見学及び冬山
耐寒登山向け輸送の大型車1両当たりの最低運賃等を4万5000円から
5万円までの範囲内とし,さらに,平成元年度秋季の学校遠足向け輸
送の大型車1両当たりの最低運賃等が決定された。 |
ス |
平成元年9月26日,第12回貸切バス小委員会が開かれ,平成元年度
の冬山耐寒登山向け輸送の貸切バスの運賃等について再検討された結
果,同年度冬季の冬山耐寒登山向け輸送の大型車1両当たりの最低運
賃等を4万5000円と修正することが決定された。 |
セ |
前記最低運賃等を取り決めた各決定の実効性を確保するため,
(ア) |
第5回貸切バス小委員会において会員から最低運賃等を遵守する
との趣旨の誓約書を貸切バス委員会委員長に提出させることが決定
され, |
(イ) |
第9回貸切バス小委員会において,旅行業者から低価格の運賃等
による運送申込みを受けるなどした会員は所定の様式文書によりブ
ロック長に連絡し,調査の結果他の会員が低運賃等で運送契約を締
結したことが判明した場合,貸切バス小委員会委員長がその会員に
出席を求めて説明させることができ,措置が必要なときは貸切バス
委員会の議を経て改善勧告すること,会員は低価格の運賃等の情報
を入手した場合大阪バス協会に連絡し,大阪バス協会はその情報を
各ブロック長に通知するとともに会員にその運送を引き受けないよ
うに求めることなどを内容とする,文書による申合せが承認され
た。 |
|
ソ |
会員は,本件各決定に基づき,主催旅行向け輸送等各旅行向け輸送
の貸切バスの運賃等を旅行業者らと交渉し,収受するための努力をし
ていた。 |
タ |
ところが,当委員会から立入検査を受けたため,大阪バス協会は,
平成2年10月18日,理事会において,直ちに本件各決定を含む独占禁
止法違反の疑いのある協定,申合せ等の一切を破棄する決議をした
が,会議,書面により会員に対し右の破棄決議があったことが報告,
通知されその趣旨が周知徹底されるように図られている。 |