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政府規制制度等と競争政策に関する研究会における検討
当委員会は,従来から競争政策の観点から政府規制制度について中長期
的に見直しを行ってきている。昭和63年7月以降,政府規制制度の見直し
及び関連分野における競争確保・促進政策の検討を行うため,「政府規制
等と競争政策に関する研究会」(座長 鶴田俊正 専修大学教授)を開催
し,平成元年2月及び10月には,同研究会が,物流関連分野(貨物運送,
流通等),消費者向け財・サービス供給分野(旅客運送,金融関連,LP
ガス販売)及び 農業関連分野(生産資材,農業生産,農作物流通,食品
加工)を対象に検討を行って取りまとめた報告書を公表した。
その後,各方面において,政府規制の見直しの気運が高まっていること
等を踏まえ,同研究会は,前回の報告書を基に再度,政府規制の現状,問
題点及びその見直しの在り方について検討を行い,同研究会が,その検討
結果を取りまとめた「競争政策の観点からの政府規制の問題点と見直しの
方向」を平成5年12月に公表した。
同研究会では,この報告書の基本的考え方に基づき,個別の分野につい
て,規制の弊害に関する調査,分析を行い,改めて規制見直しのための具
体的な指摘を順次行っていくこととし,まず,物流分野における政府規制
について検討を行い,同研究会がその結果を取りまとめた報告書「物流分
野における政府規制の見直しについて」を平成6年8月に公表した。平成
7年度においては,同研究会は,流通分野における政府規制について検討
を行い,同研究会がその結果を取りまとめた報告書「流通分野における政
府規制の見直しについて」を平成7年6月に公表した。その概要は,以下
のとおりである。 |
(1) |
流通分野における政府規制の見直しの必要性
我が国における流通分野においては,情報化の一層の進展,消費者
ニーズの多様化,円高下での国際化の著しい進行等新たな状況への対応
を図り,国内外に向かって開かれた流通システムを構築することが求め
られている。とりわけ最近では,円高基調下で円高差益の還元や内外価
格差の是正を求める声が従来にも増して強まっており,経済発展の成果
を国民生活の質的向上に結び付けていくためにも,流通分野における政
府規制の見直しが急務となってきている。 |
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(2) |
個別の流通分野における政府規制の評価
ア |
大規模小売店舗における小売業の事業活動の調整に関する法律(以
下「大店法」という。)については,競争政策の観点からは,廃止も
含め,その在り方について抜本的に見直すべきである。少なくとも,
出店調整手続の透明性・公平性を確保する措置を速やかに講じるとと
もに,営業方法に関する規制は速やかに廃止すべきである。また,競
争政策の観点からは,大店法による規制の枠を超えた地方自治体によ
る独自規制は行われるべきではない。 |
イ |
酒類小売業における免許制については,競争政策の観点からは,そ
の在り方について抜本的に見直すべきであり,特に,需給調整的要件
は廃止すべきである。 |
ウ |
たばこ販売業における許可制については,競争政策の観点からは,
その在り方について抜本的に見直すべきであり,特に,需給調整的要
件は廃止すべきである。また,競争政策の観点からは,小売定価販売
制度を廃止し,たばこ小売販売価格の自由化を図るべきである。 |
エ |
主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律については,出荷取扱
業者及び販売業者の登録要件の基準や運用等によっては,事実上需給
調整的参入規制と同様の機能を果たすおそれがあることから,このよ
うな登録要件はできる限り緩やかなものとすべきである。
また,自主流通米価格形成センターにおいて自主流通米の価格形成
のための業務が行われることとなっているが,同センターが実施する
入札による米の価格についても可能な限り市場の実勢を反映したもの
として形成されるべきである。 |
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2 |
情報通信分野競争政策研究会における検討
当委員会は,電気通信分野における競争上の課題について,「情報通信
分野競争政策研究会」(座長 実方謙二 北海道大学教授)を開催し,昭
和61年以降,同研究会が検討し,取りまとめた報告書を逐次公表してい
る。同研究会では,平成元年にも,電気通信分野における競争政策上の課
題についての報告書を取りまとめているが,その後の政府措置の推進状
況,電気通信分野を取り巻く状況の変化も踏まえ,再度,検討を行い,同
研究会が検討結果を報告書として取りまとめた「電気通信分野における競
争政策上の課題について」を平成7年11月に公表した。その概要は,以下
のとおりである。 |
(1) |
電気通信分野の現状
電気通信分野においては,昭和60年の制度改革以降,多くの新規参入
がみられるものの,日本電信電話株式会社(以下「NTT」という。)
の占める地位は大きく,特に地域通信分野においては,いまだ競争が十
分に機能しているとはいえない状況にある。 |
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(2) |
競争促進のための基本的考え方
電気通信分野においては,今後とも一層の効率化を図ることが重要で
あるが,特に地域通信分野における競争促進策を中心として各種の措置
を採ることにより,電気通信分野全体の競争をより一層活性化させる必
要がある。今後採り得る競争促進のための方策としては,政府規制の見
直し,競争条件の整備,NTTの経営形態の検討,独占禁止法の厳正な
運用等が挙げられ,これらの措置に関する総合的な検討が必要である。 |
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(3) |
政府規制の在り方
ア |
参入・退出規制
第一種電気通信事業等において,参人に当たっての許可要件とされ
ている需給調整要件は撤廃すべきである。また,事業者の業務範囲が
長距離通信(県間通信)と地域通信(県内通信),国際通信と国内通
信などに区分されてきたが,その合理性は失われており,事業者の判
断で自由に電気通信役務を提供する範囲を決定できるようにすべきで
ある。なお,事業者間で相互の業務範囲・業務区域等について制限す
ることは,独占禁止法に違反する行為であるので,この点について監
視を行っていく必要がある。 |
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イ |
料金・サービス規制
NTTによる事実上の独占状態が続いている地域通信網に係る基本
サービス(電話)以外の料金・サービスに関する規制の必要性は失わ
れており,また,NTTに対する料金規制を行う場合においても,現
行の総括原価主義に基づく認可制度ではなく,より柔軟性を備えた規
制方法を採用すべきである。なお,今後,料金規制が緩和・撤廃され
ていくにつれて,独占禁止法に違反する行為が行われることのないよ
う監視を行っていく必要がある。仮にNTTが略奪的価格設定を行う
場合には,独占禁止法によって厳正に対処すべきである。 |
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ウ |
事業分野規制(第一種電気通信事業者と第二種電気通信事業者の区
分)
第一種電気通信事業と第二種電気通信事業との間で料金・サービス
に関する規制に格差を設ける合理性は認められず,第一種電気通信事
業に対する規制レベルを第二種電気通信事業に対する規制と同等のも
のとすべきである。
また,特別第二種電気通信事業と一般第二種電気通信事業の区別は
速やかに撤廃すべきである。 |
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エ |
日本電信電話株式会社法,国際電信電話株式会社法による規制
ユニバーサルサービスの維持については,別途補助措置を講ずるこ
とにより対処可能であり,NTTにのみこのような規制を課す合理性
はない。また,NTTに対する過剰な規制は原則として撤廃すべきで
ある。国際電信電話株式会社法については廃止を含め抜本的に見直す
べきである。 |
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(4) |
NTTとその他の事業者の競争条件の整備
NTT地域通信網をオープン化し,すべての事業者に対して,NTT
地域通信網に対する接続等について,社内外で平等な扱いにすべきであ
る。このため,NTT網との接続の方法等に関して,公的な中立機関が
具体的な接続ルールを設定し,その遵守を監視していく必要があるとと
もに,接続協議が整わない場合には裁定を行う必要がある。
また,事業者の新規参入や新たなサービスの提供を阻止する等の目的
からNTTが接続を拒否しているなどの行為が行われた場合には,不公
正な取引方法あるいは私的独占に該当し,独占禁止法違反を構成するこ
ととなるため,このような行為が行われることのないよう監視していく
必要がある。 |
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(5) |
NTTの経営形態の在り方に関する検討
競争が十分に機能していないという現状では,上記(3)及び(4)で提言し
た措置は,電気通信分野における競争を促進するために必要不可欠な措
置である。
他方,NTTを分離・分割する方策も競争促進のために有効な手段と
なり得ることから,競争政策の観点からもNTTの経営の在り方につい
て検討することは必要であると考えられる。
なお,NTTの分離・分割を検討する場合には,それに伴って研究開
発等に影響しないか,あるいは分割の費用がその効果に比べて過大とな
らないか等,最終的にユーザーの利益につながるものかどうかを見極め
る必要がある。
いずれにせよ,NTTの分離・分割を検討する際には,規制緩和及び
競争条件の整備(接続の円滑化等)を行うことが必要不可欠の前提であ
り,これらの措置を採らずに分離・分割のみを先行させるべきではな
い。
なお,NTTの経営形態の在り方に関する検討とともに,市場におけ
る競争が十分に機能するようにするためには,今後,NTTが独占禁止
法に規定する「独占的状態」にあると判断される場合には,独占禁止法
の規定に基づき厳正に対応する必要がある。
また,NTTが独占的地位にあることを背景として不公正な取引方法
や私的独占に該当する行為を行う場合には,独占禁止法により厳正に対
処すべきである。 |
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3 |
政府規制分野等のウェイト試算
当委員会は,政府規制制度の見直しに資する観点から,総務庁が5年ご
とに公表している産業連関表を基に,昭和55年以来,過去3回にわたり,
我が国の全産業に占める政府規制分野のウェイトの試算を行い,公表して
きているが,平成7年度においては,「平成2年産業連関表」を基に,法
律により規制の対象となっている産業分野の生産額及び付加価値額を業種
ごとに積み上げ,その割合を計算し,その結果を平成7年6月21日に公表
した。試算結果は下表のとおりである。 |
今回の試算による政府規制分野のウェイトが前回の試算の数値より増加
している主な理由としては,産業連関表の対象期間である平成2年当時の
建設・不動産ブームを背景に建設業等の我が国経済に占めるウェイトが大
幅に上昇したことによるものであり,特に規制の内容に変化があったため
ではない。
なお,今回,従来から行ってきた政府規制分野のウェイト試算のほか
に,規制緩和が行われた分野のウェイト及び独占禁止法適用除外分野の
ウェイトについても試算を行い,併せて公表した。 |
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4 |
政府規制及び独占禁止法適用除外に関する合同検討会議の開催
当委員会は,昭和55年4月以来,行政事務の簡素化・合理化の観点から
許認可等の見直しを行っている総務庁との間で,「政府規制及び独占禁止
法適用除外に関する合同検討会議」及び実務担当者会議を開催し,政府規
制制度の見直しの基本方針,方法等について連絡・調整を行ってきてい
る。
平成7年度においても,平成8年3月に同会議を開催し,政府規制制度
の見直しの実施状況,規制が緩和された分野における競争政策上の課題等
について連絡及び意見交換を行った。 |
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5 |
水道・下水道指定工事店制度に係る調査
規制緩和推進計画においては,規制緩和後において,規制に代わって競
争制限的な行政指導が行われることのないよう,関係省庁は当委員会が平
成6年6月に策定・公表した「行政指導に関する独占禁止法上の考え方」
の趣旨を踏まえ,委員会と事前に所要の調整を図ることが決定されてい
る。
水道・下水道指定工事店制度の運用に当たっては,地方公共団体が工事
店の指定や工事価格に関連して行政指導を行っている場合もみられること
から,当委員会は,平成7年度において,同制度の趣旨及び実態を把握
し,同制度及びその運用の在り方等について調査を行うこととし,全国の
主要な地方公共団体に対し,アンケート調査及びヒアリング調査を実施し
た。
これらの調査結果を踏まえ,主として「行政指導に関する独占禁止法上
の考え方」に照らして問題となるような行政指導等が行われていないかど
うかを中心に検討を行い,平成8年1月,その内容を「競争政策の観点か
らみた水道・下水道指定工事店制度の運用の在り方について」として公表
した。
同報告書において問題点を指摘した主な事項は以下のとおりである。
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① |
過去5年間,指定工事店の新規指定が全く行われていない地方公共団
体の割合は,水道・下水道ともに20%以上であった。 |
② |
指定工事店の指定に関しては,20%以上の地方公共団体が,指定工事
店の団体又は既存の指定工事店の同意又は保証を得ることを指定要件と
し,あるいは同趣旨の行政指導を行っていた。 |
③ |
標準単価表の配布に関しては,60%強の地方公共団体が標準単価表を
作成し,それを指定工事店に配布しており,そのうちの90%以上が標準
単価表の作成・配布に併せて工事価格に関する行政指導を行っていた。 |
④ |
このような行政指導等は,新規参入を阻害したり,指定工事店間の自
由な価格形成を阻害するおそれがあり,独占禁止法との関係において問
題を生じさせるおそれがあることから,当該地方公共団体においては見
直しを検討すべきである。
なお,水道法の一部改正(平成8年6月13日に可決,成立,同年6月
26日公布)により,給水装置工事事業者の指定要件が明確化され,市町
村等の水道事業者は,指定要件を満たす申請者については指定しなけれ
ばならないこととされた。 |
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