ア |
業界の概要
建設機械には,その用途等により多種多様なものがあり,商品特性
として,安全性や耐久性等を確保するために高い技術力が要求される
こと,過酷な条件下で使用され故障が生じやすいためにメンテナンス
が重要視されていること等が挙げられる。
我が国においては,建設機械の中でも油圧ショベルを中心とする掘
削機械が最も多く使用されている。平成5年における建設機械の生産
額は約1兆3300億円であり,輸出金額は4100億円,輸入金額は155億
円となっている。我が国の建設機械メーカーは,現在,90社を超える
とみられるが,メーカーの多くはある程度特定の機械に特化してい
る。建設機械の流通経路は,機種や大きさによってユーザー層が異な
るが,販売業者を経由する流通が全体の77%を占めている。 |
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イ |
メーカーと販売業者の取引
販売業者には大きく分けて代理店と商社がある。メーカーと代理店
との間では取引基本契約書が締結されている場合がほとんどであり,
契約内容は,代金決済条件,引渡条件等の取引条件のほか,主たる販
売担当地域,競争品の取扱いに関する条項を設けている例もある。な
お,基本契約書の内容は,資本関係の有無にかかわらず同じ内容と
なっているものがほとんどである。
販売業者は,1社平均7.2社のメーカーと取引しているが,同一機
種について複数メーカーの製品を取り扱っているとするものは3分の
1である。
メーカーと販売業者の取引年数は,5年以上継続して取引している
ものが80.6%を占めており,このうち20年以上が17.5%を占めてい
る。取引が継続的になる理由として,メーカーは販売業者の販売能
力,資金力,積極的な販路拡大,メンテナンス能力等を挙げており,
販売業者は即時納入,メンテナンスの面で融通が利くことを挙げるも
のが多い。特に代理店では株式所有関係等の存在を挙げるものが多い
が,これは代理店の多くがメーカーから分離,独立等により設立され
た経緯があるためである。
販売業者の仕入先の見直し状況をみると,見直しはほとんどしてい
ないとするものが特に代理店に多い。これに対し,商社は新規に売り
込みがあった場合に,既存の仕入先も含めて見直しをしている。 |
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ウ |
販売業者(又はメーカー)とユーザー間の取引
販売業者は,販売価格を決めるに当たって取引の都度ユーザーと交
渉しており,競合品の販売価格やユーザーとのこれまでの取引関係,
売買差額を重視して価格交渉を行っている。一方,ユーザーは,前回
の購入価格や同業者の購入価格等の情報を参考に交渉を行っている。
メーカー10社とユーザーとの取引年数をみると,5年以上取引して
いるユーザーが85.6%あり,このうち20年以上が29.7%である。
ユーザーのうち毎年建設機械を購入する傾向の強いレンタル業者
は,購入先との取引を継続している理由として「即時納入,メンテナ
ンスの面で融通が利くようになる」「購入価格が安くなる」を挙げる
ものが多い。 |
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エ |
メーカーと販売業者間の資本,人的関係
(ア) |
資本関係
メーカー10社のうち販売業者の株式を所有しているものは9社で
あり,これらのメーカーが株式を所有している代理店等の販売業者
数は,1社平均11社である。販売業者の株式を所有している理由・
経緯は,自社から分離独立,取引先との関係の維持・強化が多い。 |
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(イ) |
人的関係
メーカー10社のうち販売業者へ役員派遣等を行っているものは8
社であり,これらのメーカーが役員派遣等を行っている代理店等の
販売業者数は1社平均11.0社である。 |
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オ |
輸入の状況
我が国市場における輸入品の割合は余り高くない。この背景には,
①我が国市場で最も多く販売されている油圧ショベルについては,生
産している海外メーカーが少ないこと,②一般に,国産品は輸入品と
比較して,コンピュータ制御等の採用による作業スピードの高速化と
優れた操作性能など,品質・機能面で優れていると言われてお
り,また,掘削機等の販売価格は欧米よりも安いという状況がみられ
ること,③ユーザーが建設機械を購入する際には,メンテナンス体制
の充実度合いが重要視されており,ユーザーの中には,メンテナンス
の点で輸入品の使用には不安があるとするものがあること等がある。
我が国市場へは大規模な建設工事など特定の工事現場に使用されて
いる大型機械等,国産品と競合しないような建設機械を中心に輸入さ
れている傾向にある。 |
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