第3 独占的状態調査

 独占禁止法第8条の4は,独占的状態に対する措置について定めている
が,当委員会は,独占禁止法第2条第7項に規定する独占的状態の定義規定
のうち,事業分野に関する考え方について,ガイドラインを公表しており,
その別表には,独占的状態の国内総供給価額要件及び市場占拠率要件(国内
総供給価額が1,000億円超でかつ,上位1社の市場占拠率が50%超又は上位
2社の市場占拠率の合計が75%超)に該当すると認められる事業分野並びに
今後の経済事情の変化によってはこれらの要件に該当することとなると認め
られる事業分野が掲げられている。
 平成7年度においては,国内総供給価額及び市場占拠率に関する平成4年
の調査結果を踏まえガイドライン別表の改定を行い,平成7年7月1日から
実施した。
 この結果,新たにブランデー製造業,換気扇類製造業,医療用X線装置製
造業及びダストコントロール業の4事業分野を別表に掲載し,インスタント
コーヒー製造業,ビデオディスクプレーヤ製造業,磁気ヘッド製造業及びク
ラッチ装置製造業の4事業分野を別表から削除することとなった。改定後の
別表掲載事業分野数は,商品に係る23事業分野及び役務に係る4事業分野で
ある(第1表)。
 これらの別表掲載業種については,公表資料及び通常業務で得られた資料
の整理・分析を行うとともに,特に集中度の高い業種については,生産,販
売,価格,製造原価,技術革新等の動向,分野別利益率等について,関係企
業から資料の収集,事情聴取等を行うことにより,独占禁止法第2条第7項
第2号(新規参入の困難性)及び第3号(価格の下方硬直性,過大な利益
率,過大な販売管理費の支出)の各要件に則し,企業の動向の監視に努め
た。





第4 一般集中度調査

概説
(1) 意義
 「一般集中」とは,国民経済又はその特定分野(例えば製造業)全体
における我が国企業の経済力の集中の程度に関するものであり,通常,
総資産,資本金,売上高,付加価値,従業員数等を指標として上位100
社等をとらえ,その上位企業の合計が法人企業全体に対して占める割合
によって示され,その割合を「一般集中度」と称している。
 一般集中度は,生産・出荷集中度のように個別市場の競争の程度を直
接表すものではなく,産業全体における経済力集中の状況を表すもので
ある。現在,我が国には極めて大規模な企業が存在し,これら企業のほ
とんどが,多くの個別市場に多角的に進出している。このため,個別市
場の集中度をみるほか,一般集中度を継続的に調査し,我が国経済全体
に占める大企業の地位の動向を把握しているものである。
(2) 調査の方法
 調査指標は,昭和54年度の調査以降,大企業の総合的な経済力を最も
的確に表していると考えられる総資産を基本的指標としており,今回も
それによった。
 調査対象は,従来どおり,金融業を除く全法人企業とし,併せて非金
融業のうち,製造業のみについても調査した。また,上位企業の選定
も,従来どおり,各指標ごとに上位100社とした。
 調査対象時点は,平成元年度から平成4年度までの各企業の決算期と
し,平成4年度を中心に調査した。調査資料は,母数については「法人
企業統計」(大蔵省)を,各企業については「有価証券報告書」を中心
に使用したほか,内部資料も使用した。
 産業分類は,日本標準産業分類によった。数種の事業を兼営している
場合は,売上高の最も多い事業が含まれる業種を当該企業の業種とし
た。
調査の概要
(1) 非金融業における一般集中度の現状と動向
一般集中度の現状
 非金融業における総資産順位による上位100社(以下「総資産上位
100社」という。)の全法人企業に占める地位は第1表のとおりであ
り,企業数では全法人企業の0.004%を占めるにすぎないが,総資産
の合計額が全法人企業の総資産の合計額に占める割合(以下「総資産
集中度」という。)は19.2%となっている。
一般集中度の推移
 総資産上位100社の総資産集中度の推移は第1図のとおりであり,
昭和60年度,同63年度及び平成元年度には上昇したものの,全体とし
ては,昭和42年度以降低下傾向にあり,昭和42年度から平成4年度ま
でに6.4ポイント低下している。
一般集中度の低下要因
 我が国の一般集中度は,低下傾向で推移してきたが,その要因とし
て次のことが考えられる。
(ア) 企業数の増加
 企業数の推移をみると,第2図のとおりであり,全法人企業数
は,昭和42年度の約73万社から,昭和55年度には約156万社,平成
4年度には約223万社となっており,このような大幅な増加が一般
集中度の低下をもたらしていると考えられる。
(イ) 総資産伸び率の差
 全法人企業及び総資産上位100社の企業規模の変化を1社当たり
の総資産の伸び率の差(以下「企業規模格差」という。)によって
みると第3図のとおりであり,総資産上位100社の1社当たりの総
資産の伸び率は,昭和58年度以前は全法人企業の総資産の伸び率を
上回り,総資産上位100社とそれ以外の法人企業との企業規模格差
は拡大していた。昭和59年度,同61年度及び同62年度には企業規模
格差は縮小したが,同63年度以降は,企業規模格差は再び拡大して
いる。
(ウ) 両要因の総合評価
 昭和58年度までは,企業規模格差の拡大が一般集中度の低下の相
殺要因として機能したため,一般集中度の低下は緩やかであった
が,同59年度から同62年度までは,昭和60年度において旧公社の民
営化の影響から企業規模格差は拡大しているものの,総じて企業規
模格差が縮小しており,企業数の増加に企業規模格差の縮小が加わ
り,一般集中度の低下幅が大きくなっている。なお,昭和63年度以
降は同58年度までの状況とほぼ同様に企業規模格差の拡大が影響し
ているため,一般集中度の低下は再び緩やかとなっている。
総資産上位100社の産業別分布状況とその動向
 総資産上位100社の産業別分布状況は第4図のとおりであり,上位
100社のうち,製造業が39社を占め,次いでサービス業(15社),卸
売・小売業(12社),電気・ガス・水道業(11社),建設業(10社)の
順になっている。また,その動向をみると,製造業に属する企業の数

が全体の4割以下までに低下している。他方でサービス業,建設業,
不動産業(5社)に属する企業数が増加している。
 また,昭和42年度と平成4年度までの間に,全法人企業の総資産の
産業別構成比と総資産上位100社の産業別企業数の変化の状況をみる
と,第5図のとおり,ほぼ同様な動きを示しており,総資産上位100
社の産業別分布状況の動向は,全法人企業の動向を反映したものと
なっている(第6図参照)。
国内子会社を含めた場合の総資産上位100社の状況
 国内の子会社を含めた場合の総資産上位100社が全法人企業に占め
る地位は第2表のとおりであり,総資産集中度は24.3%となってい
る。また,その動向をみると,第7図のとおりであり,昭和63年度ま
ではおおむね緩やかな低下傾向であるが,平成4年度には上昇に転じ
ている。


(2) 製造業における一般集中度の現状と動向
製造業における一般集中度の現状
 製造業における総資産順位上位100社(以下「製造業上位100社」と
いう。)が全製造業に占める地位は第3表のとおりであり,平成4年
度では,全製造業の0.022%を占めるにすぎないが,総資産では全製
造業の30.5%を占め,全法人企業における総資産上位100社の総資産
集中度19.2%に比し,11.3ポイント高い状況にある。
製造業における一般集中度の動向
 製造業上位100社の総資産集中度の推移は,第8図のとおりであ
り,全法人企業の総資産上位100社の総資産集中度とおおむね同様に
低下傾向にある。
製造業上位100社の業種別分布状況とその動向
 製造業上位100社の業種別分布状況は第9図のとおりであり,企業
数では,化学及び電気機器がそれぞれ18社と最も多く,次いで輸送用
機器が15社となっており,これら3業種で51社と過半を占めている。
また,その動向をみると電気機器,一般機械器具等に属する企業数が増加
し,鉄鋼,非鉄金属,化学,窯業・土石製品等の業種に属する企業数が減少
している。

第5 生産・出荷集中度調査

概説
 当委員会は,我が国産業の経済力集中の実態を把握し,競争政策運営の
基礎的な資料とするため,定期的に主要産業における生産集中度及び出荷
集中度について,調査を実施している。
 平成7年度は,平成6年度に引き続き,平成3年及び同4年を調査対象
期間として調査を実施し,出荷規模,市場構造,調査の継続性等を勘案し
て,生産集中度に関しては593品目(製造業558品目,非製造業35品目),
出荷集中度に関しては453品目(製造業428品目,非製造業25品目)につい
て集計を行い,分析を行った。
(注)
1. 個別企業の生産集中度及び出荷集中度の計算方法は,次のとお
りである。
生産集中度=個別企業の国内生産量(額)/国内生産量(額)
の全国合計
(国内生産量(額)には自己消費,自家使用及び輸出を含む。)
出荷集中度=個別企業の国内向け出荷量(額)/国内向け出荷
量(額)の全国合計
(国内向け出荷量(額)には輸入を含む。)
2. 産業別の集中度の状況を示す指標としては,次のものがある。
(1) 上位累積集中度=上位X社の生産(出荷)の合計/全国合計
(2)
Ci:i番目の企業の集中度(%)
n:企業数
調査の概要
(1) 生産・出荷集中度の動向
 平成4年の生産集中度については,上位3社累積集中度(以下「生
産CR3」という。)は製造業558品目平均62.2,ハーフィンダール指
数(以下「HI」という。)は同2082.8となっている。
 平成4年の出荷集中度については,上位3社累積集中度(以下「出
荷CR3」という。)は製造業428品目平均67.0,上位3社についての
HIは同2060.7となっている。
 昭和58年から平成4年の10年間の集中度の推移についてみると,生
産CR3(10年間調査継続品目:製造業338品目平均)は昭和58年か
ら昭和63年まではほぼ横ばいでそれ以降は緩やかに上昇しているが,
総体としては安定的に推移している(第1図参照)。
 出荷CR3(同226品目平均)については,昭和58年から昭和63年
までは低下しているがそれ以降は緩やかに上昇している(第2図参
照)。総体としては生産・出荷ともに集中度は安定的に推移してい
る。

 10年間で出荷規模が拡大している品目と縮小している品目に区分し
て,生産集中度(338品目)及び出荷集中度(226品目)の推移をみる
と,おおむね次のとおりである(第3図及び第4図参照)。

(ア) 市場規模の拡大が著しい品目では,生産集中度・出荷集中度はと
もに一時的な上昇はあるものの総体としては低下傾向にあった。
(イ) 市場規模が安定的に推移している品目では,生産集中度はほぼ横
ばいに推移している一方,出荷集中度は緩やかな低下傾向がみられ
た。
(ウ) 市場規模が縮小している品目では,生産集中度・出荷集中度はと
もに上昇傾向がみられた。
(2) 市場規模及び輸入の動向と市場構造
 昭和58年から平成4年の間においては,昭和60年以降の急速な円高
の進展,昭和62年以降の急速な景気の拡大等大幅な経済変動を経験
し,分析対象品目(226品目)についても出荷規模や輸入規模の大幅
な伸びがみられた。
 10年間の出荷規模,輸入規模及び上位3社出荷集中度のデータを用
いて,市場規模及び輸入規模の変動が上位3社シェアに与えた影響に
ついて回帰分析を行った結果は,次のとおりである。
(ア) 出荷規模及び輸入規模の変動は上位3社シェアの動きと密接な関
係があり,出荷規模が拡大すれば上位3社シェアは上昇し,輸入規
模が拡大すれば上位3社シェアは低下する傾向がみられた。
(イ) また,出荷集中度の高い品目では輸入規模が出荷規模よりも上位
3社シェアに大きな影響を及ぼし,出荷集中度が低い品目では出荷
規模が輸入規模よりも上位3社シェアに大きな影響を及ぼすが,出
荷集中度の高い品目では総じて市場規模や輸入規模の変動にもかか
わらず上位3社シェアは安定的に推移する傾向がみられた。
(3) まとめ
 昭和58年から平成4年までの生産集中度及び出荷集中度の動きをみる
と,品目により変動はあるものの全体としてみれば集中度合いが高まる
傾向にはなく,安定的に推移している。
 特に,輸入を含む国内市場における集中度合いを示す出荷集中度につ
いては,全般的な輸入拡大もあって10年の間に低下しており,我が国市
場において競争が活発に行われたものとして評価することができる。
 なお,輸入については出荷集中度を引き下げて競争を促進する要因と
して考えられるが,輸入の形態も多様化してきていることから,輸入の
競争に与える影響を考察するに当たっては,輸入の量的動向のみならず
その形態も含めて注視していく必要がある。

第6 ベンチャー・キャピタルの実態調査

 近年,我が国においても中小企業の活性化,なかでもエレクトロニクス,
バイオテクノロジー,新材料技術などの研究開発型ベンチャー・ビジネス育
成の必要性が高まっているといわれている。今後,ベンチャー・ビジネスの
店頭登録基準等の緩和等の制度の改正の進展に伴い,ベンチャー・ビジネス
の育成を図る上でベンチャー・キャピタルの果たす役割は一層増大していく
ものと考えられる。
 当委員会は,我が国におけるベンチャー・キャピタルの実態を把握すると
ともに,平成6年8月23日に「ベンチャー・キャピタルに対する独占禁止法
第9条の規定の運用についての考え方」(以下「新基準」という。)を公表し
てから1年が経過したため新基準の評価,ベンチャー・キャピタルの運営上
の支障の有無等について明らかにすることを目的として調査を実施し,その
結果を取りまとめ,平成7年12月に公表した(調査期間平成7年8月25日~
平成7年10月31日)。

 ベンチャー・キャピタルの実態等について

(1) ベンチャー・キャピタル数
 平成6年度の我が国のベンチャー・キャピタル数は121社であるとい
われているが,その大半は,銀行・証券・生損保を設立母体とする金融
系ベンチャー・キャピタルである。これは,米国のベンチャー・キャピ
タル(約600社)の多くが個人(複数)の出資による独立系ベンチャー・
キャピタルであるのと対照的である。
(以下の分析は,調査回答企業72社の回答に基づくものである。)
(2) 資本金
 ベンチャー・キャピタルの資本金別構成をみると,資本金2億円未満
のベンチャー・キャピタルが35社(49%)存在し,そのうち資本金1億
円以上2億円未満のものが22社(31%)と全体の約3分の1を占める。
一方,資本金10億円以上のベンチャー・キャピタルも12社(17%)存在
し,資本金10億円以上の比較的大規模なべンチャー・キャピタルと,資
本金1億円程度の比較的小規模のベンチャー・キャピタルの2極に分化
している。
(3) 総資産
 ベンチャー・キャピタルの総資産別構成をみると,総資産100億円未
満のベンチャー・キャピタルが32社(44%)存在する一方,総資産1,000
億円以上のベンチャー・キャピタルも8社(11%)存在しており,一部
の大規模ベンチャー・キャピタルと,大半の小規模ベンチャー・キャピ
タルの2極に分化している。
(4) 所有株式額
所有株式額別ベンチャー・キャピタル数
 ベンチャー・キャピタルの所有株式額別構成をみると,全体の約半
分(35社(49%))のベンチャー・キャピタルの所有株式額は20億円
未満で,そのうち26社(36%)の所有株式額は10億円未満である。ま
た,所有株式額200億円以上のベンチャー・キャピタルも4社(6%)
存在する。
総資産に占める所有株式額
 総資産に占める所有株式額比率をみると,所有株式価額の割合が
50%超のベンチャー・キャピタルは14社であるが,これらのベン
チャー・キャピタルの支配株式比率はすべて25%以下(最高8.6%,
最低0%,平均1.1%)(注)であった。また,総資産に占める所有株
式価額の割合が25%超50%以下のベンチャー・キャピタルは16社であ
るが,これらのベンチャー・キャピタルの支配株式比率はすべて25%
以下(最高0.01%,最低0%,平均0%)であった。
(注) 新基準では,総資産の額に占める被支配会社の株式の価額の合
計の割合が25%以下の場合には,持株会社ではないものとして取
り扱うこととしている。
 ベンチャー・キャピタルが発行済株式総数の10%超を所有している
会社
 発行済株式総数の10%超を所有している会社数をみると,10%超を
所有している会社のないベンチャー・キャピタルが27社(38%),1
社~10社というものが37社(51%)であり,89%のベンチャー・キャ
ピタルが,発行済株式総数の10%超を所有している会社がない,ある
いは数社という状況である。
発行済株式総数の10%超を所有している会社の営業品目
 ベンチャー・キャピタルが発行済株式総数の10%超を所有している
会社の営業品目をみると,機械関連産業,情報関連,建設・不動産,
サービス関連が多く,新材料技術,バイオ等の研究開発型のベン
チャー・ビジネスに対する投資は低調である。これは,研究開発型の
ベンチャー・ビジネスへの投資が大半を占める米国のベンチャー・
キャピタルとは対照的である(図1)。
(5) 投融資
 ベンチャー・キャピタルごとの投融資残高に占める投資残高(注)割
合をみると,100%(融資を一切行っていない)のベンチャー・キャピ
タルが21社(30%),10%未満のベンチャー・キャピタルが13社(19%)
と投資中心のベンチャー・キャピタルと融資中心のベンチャー・キャピ
タルの2極に分化しているといった傾向がみられる。
 これは,米国のベンチャー・キャピタルが投資を中心としているのと
対照的である。
(注) 投資残高=公開株式残高+非公開株式残高+転換社債残高+ワラ
ント債残高+普通社債残高
(6) 投資事業組合
投資事業組合
 投資事業組合は,米国のベンチャー・キャピタルが投資資金の調達
と安定収入の確保のために開発したリミテッド・パートナーシップに
範をとり,民法上の任意組合をベンチャー・キャピタル・ファンドと
して開発・利用しているものである。
 このため,米国のリミテッド・パートナーシップがゼネラル・パー
トナー(無限責任を負う業務執行者)とリミテッド・パートナー(有
限責任に限定された出資者)で構成されるのに対し,我が国の投資事
業組合は組合員全員が無限責任を負う,といった違いがある。
投資事業組合数
 ベンチャー・キャピタルの運営・管理している投資事業組合の合計
は130組合あり,1社平均1.8組合を運営しているが,半数を超える
57%のベンチャー・キャピタルが,運営・管理している投資事業組合
は「ない」と回答している。これは,米国のベンチャー・キャピタル
が平均3~5のリミテッド・パートナーシップを管理しており,投資
資金の大半がファンドを通じて調達されるのと比較して対照的であ
る。
投資事業組合に対する出資源
 投資事業組合に対する出資源についてみると,事業会社及び銀行か
らの出資が多く,年金基金からの出資が約半分を占める米国のリミ
テッド・パートナーシップとは対照的である(図2)。

2 新基準に対する評価等について

(1) 新基準についての全般的な印象
 新基準の全般的な印象については,ベンチャー・キャピタルの58社
(81%)が肯定的に評価しており,ほとんどのベンチャー・キャピタ
ルが,現在のところ新基準でベンチャー・キャピタルの運営には支障
はないと考えている。
 新基準を評価するベンチャー・キャピタルは,「役員派遣・兼任の
規制がなくなったこと」(22社(38%)),「既存株式の取得が可能に
なったこと」(27社(46%))と,上記2点を評価しているベンチャー・
キャピタルが多くなっている。
(2) ベンチャー・キャピタルの運営について
 ベンチャー・キャピタルの運営上の支障については,「税制」を挙げ
たベンチャー・キャピタルが57社(40%)と最も多く,次いで「店頭登
録基準の厳しさ等」(28%)となっており,「独占禁止法による純粋持
株会社の禁止」を挙げたベンチャー・キャピタルもあった(1社,
1%)。
(注) 上記調査結果は,調査期間(平成7年8月25日~平成7年10月
31日)に当委員会が予め予備ヒアリング等により作成した項目を2
つ選択するアンケート形式により,回答を集計したもの。

3 まとめ

(1) ベンチャー・キャピタルの支援を受けてベンチャー・ビジネスが我が
国市場で成長することになれば,①新しい市場を創造する原動力となる
こと②既存市場に新製品又は新技術による製品をもって新規参入をする
ことにより,市場における競争を活発化させることにつながることか
ら,競争政策上も積極的に評価できるものである。
(2) 本調査においては,現在,独占禁止法第9条が持株会社の設立等を禁
止していることがベンチャー・キャピタルの活動の障害となっている実
態は認められなかった。
(3) しかし,今後,我が国市場の成熟化に伴い,市場の活性化に向けて,
ベンチャー・キャピタルによる①初期段階や研究開発型のベンチャー・
ビジネスへの投資の活発化,②ベンチャー・ビジネスへの技術援助・経
営指導の活発化が求められているが,この過程において,ベンチャー・
キャピタルによるベンチャー・ビジネスの株式取得が進むことによっ
て,持株会社規制がベンチャー・キャピタル及びベンチャー・ビジネス
の発展の障害になる可能性があり,この観点からは,今後,我が国にお
けるベンチャー・キャピタルの発展を図るため環境面の整備を行う必要
があると考えられる。