第10章 国際契約等

第1 概 説

 独占禁止法第6条は,国内事業者と外国事業者との国際的協定又は国際的
契約(以下「国際契約」という。)について,不当な取引制限又は不公正な
取引方法に該当する事業者に対し,契約成立の日から30日以内に公正取引委
員会に届け出ることを義務付けている。
 なお,国際契約届出制度については,改定された規制緩和推進計画におい
て,経済のグローバル化,事業者の負担軽減の観点から,原則廃止する方向
で見直しを行い,平成8年度末までに結論を得ることとされた。

第2 国際契約の届出状況

 国際契約は,①我が国の事業者が外国事業者から資本投下若しくは技術の
提供を受け,又は製品・原材料を購入する契約(以下「対内契約」とい
う。)と,②我が国の事業者が外国事業者に対して資本投下若しくは技術の
提供を行い,又は製品・原材料を販売する契約(以下「対外契約」とい
う。)とに大別される。
 平成7年度における国際契約の届出件数は924件であり,前年度に比べて
15.1%(121件)の増加となった(第1表)。
 これを種類別にみると,対内契約は,141件(全届出件数の15.3%)であ
り,また,対外契約は783件(全届出件数の84.7%)である。
 対内契約の届出件数の内訳をみると,種類別では,技術導入契約が64件
で,次いで合弁事業契約が50件と続いており,この2種類の契約で対内契約
の80.9%を占めている。これを業種別にみると,対内契約全体においては,
化学製品,サービス,電気機械器具関係が上位を占めており,技術導入契約
においては,化学製品,電気機械器具,一般機械器具関係が上位を占め,ま
た,合弁事業契約においては,運輸・通信,サービス,化学製品関係が上位

を占めている。(附属資料7-1表)。
 対外契約の届出の内訳をみると,種類別では,合弁事業契約が505件で最
も多く,次いで輸出代理店契約が169件と続いており,この2種類の契約で
対外契約の86.1%を占めている。これを業種別にみると,対外契約全体にお
いては,化学製品,輸送用機械器具,一般機械器具関係が上位を占めてお
り,合弁事業契約においては,電気機械器具,輸送用機械器具関係がそれぞ
れ上位を占め,また,輸出代理店契約においては,化学製品,輸送用機械器
具関係が上位を占めている。
 契約の相手国・地域別にみると,まず対内契約では,アメリカが最も多
く,対内契約全体で63件(対内契約全体の44.7%)となっており,その内訳
をみると,技術導入契約が31件(技術導入契約全体の48.4%),合弁事業契
約が21件(合弁事業契約全体の42.0%)等となっている。以下,対内契約全
体においては,ドイツ,イギリス,フランスが,技術導入契約においては,
ドイツ,フランス,イギリスが,合弁事業契約においては,イギリス,ドイ
ツ,フランスがそれぞれ上位を占めている。また,対外契約においては,中
国が最も多く,対外契約全体で258件(対外契約全体の33.0%)となってお
り,その内訳をみると,合弁事業契約が245件(合弁事業契約全体の
48.5%)等となっている。以下,対外契約全体においては,タイ,韓国,ア
メリカが,合弁事業契約においては,タイ,インドネシア,アメリカがそれ
ぞれ上位を占めている。また,輸出代理店契約においては,韓国,アメリ
カ,スイスが上位を占めている。(附属資料7-2表)。

第3 国際契約の指導等の状況

 届け出られた国際契約については,その内容を審査し,不当な取引制限
又は不公正な取引方法に該当するおそれがある事項を含むものについて
は,当該事項を修正又は削除するよう指導(以下「指導」という。)して
いる。また,当該契約事項の具体的な実施状況によっては法違反となる旨
の注意を促し,法違反の発生の未然防止を図る措置(以下「問題点指摘」
という。)も講じている(以下,これらの措置を含めて「指導等」とい
う。)。
 平成7年度末における国際契約の指導等の件数は,契約件数で14件,指
導等の内容別件数で18件となっている(附属資料7-3表)。
指導等の内容別件数について,指導を行ったものと,問題点指摘を行っ
たものとに分けてみると,第2表のとおりである。
 主要な契約の種類別に指導等の状況をみると,技術契約の指導等の件数
は,契約件数では,6件で,代理店契約の指導等の件数は,契約件数で
は,3件で合弁事業契約の指導等の件数は,契約件数では,5件となって
いる。

第4 海上運送事業者間の協定等

 船舶運航事業者が他の船舶運航事業者とする運賃及び料金その他の運送条
件,航路,配船並びに積取りに関する事項を内容とする協定,契約又は共同
行為(以下「協定等」という。)については,海上運送法第28条の規定によ
り原則として独占禁止法の適用が除外されている。しかし,同条ただし書に
より,不公正な取引方法を用いる場合又は一定の取引分野における競争を実
質的に制限することにより不当に運賃及び料金を引き上げることとなる場合
には,適用除外とはならない。海運業に係る不公正な取引方法については,
独占禁止法第2条第9項に基づく特殊指定でその内容が定められている。
 海上運送法第29条は,同法第28条に規定する協定等に関し,その締結,変
更についてあらかじめ運輸大臣に届け出なければならない旨規定し,同法施
行規則第26条第4項では,運輸大臣は,協定等に関する届出書のうち1通を
当委員会に送付する旨規定している。
 当委員会が本年度において運輸大臣から受理した届出の件数は,241件で
あり,その内訳(1届出について,2以上にわたる場合の重複分を含む。)
は,締結19件,変更181件,参加11件,脱退24件,その他6件であった。