第16章 国際関係業務
第1 二国間関係
1 海外競争当局との二国間意見交換
(1) |
二国間意見交換
近年,各国共通の競争政策上の課題について意見交換等の国際的提携
が重要になってきている。このため,当委員会は,我が国との経済交流
が特に活発であるアメリカ,EU,韓国等の競争当局との間で定期的に
競争政策に関する意見交換を行っている
1995年度における意見交換開催状況は,次のとおりである。 |
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(2) |
日・EU競争政策セミナー
EUでは,1993年1月の市場統合以来,競争政策の重要性が一層大き
くなり,積極的な法運用が進められてきた。このような状況を踏まえ
日・EU間における競争政策に対する一層の理解を図るため,1993年か
ら日・EU競争政策セミナーが毎年開催されている。1995年度において
も,1995年11月22日に東京において,公正取引委員会と欧州委員会の主
催により同セミナーが開催された。
同セミナーには,日本・EU双方の競争当局関係者のほか,学識経験
者,産業界代表,消費者代表等が出席し,「グローバル化経済における
競争政策の課題」及び「適用除外の縮小について(競争政策の適用範囲
の拡大)」の2つの議題について,双方より報告が行われた後,出席者
の間で質疑応答が行われた。 |
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2 貿易摩擦問題への対応
(1) |
日米包括経済協議
1993年7月に東京において行われた宮澤総理(当時)とクリントン大
統領との間の日米首脳会談において,日米間の新たなパートナーシップ
のための枠組みを設置することが合意された。
上記枠組みの中で,セクター別・構造面での障壁を除去するための協
議及び交渉の対象分野として,5つのバスケット(政府調達,規制緩和
及び競争力,その他の主要セクター,経済的調和,既存のアレンジメン
ト)が設けられた。
1995年度現在,当委員会と関係する事項としては,競争政策一般につ
いて「規制緩和・競争政策」の作業部会において検討が行われているほ
か,「自動車・同部品」作業部会,「金融サービスフォローアップ会合」
等においても競争政策に関連する項目が取り扱われ,当委員会も協議に
参加している。 |
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(2) |
個別業種に関する二国間協議
個別品目に関する貿易摩擦問題を解決すべく,これまでにコンピュー
タ,スーパーコンピュータ,衛星,建設,紙,保険等についての会合が
開催されてきている。
当委員会は,競争政策の観点から,外国企業の我が国市場への参入に
当たり反競争的行為があった場合にはこれに厳正に対処することとし,
これらの協議に必要に応じて対応している。 |
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第2 多国間関係
1 経済協力開発機構(OECD)
(1) |
競争政策委員会
ア |
競争政策委員会(Committee on
Competition Lawand Policy)
は,OECDに設けられている各種委員会のうちの一つで,1961年12
月に設立された。我が国は,1964年のOECD加盟以来,その活動に
参加してきている。競争政策委員会は,原則として年2回本委員会を
開催し,また,その下に各種の作業部会を設けて,随時会合を行って
いる。本委員会では,加盟各国の競争政策に関する年次報告が行われ
ているほか,各作業部会の報告書の検討,その時々の重要問題につい
て討議が行われている。
1995年度における会議の開催状況は,次のとおりである。
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イ |
1995年5月の第67回本委員会においては,ベルギー,フィンラン
ド,ギリシャ,アイルランド,日本,オランダ,スウェーデン,スイ
ス,イギリス,アメリカ及び韓国の年次報告が行われたほか,チェコ
及びスロバキアの年次報告に対する国別審査(審査担当国として選出
された国が,審査対象国の年次報告をあらかじめ受け取り,事前に準
備した上で質問する。)が,チェコに対してはフランス及びギリシャ
を審査担当国とし,また,スロバキアに対してはスウェーデン及びア
メリカを審査担当国として行われた。 |
ウ |
1995年11月の第68回本委員会においては,オーストラリア,オース
トリア,カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,ニュージーランド,
メキシコ,ノルウェー及びEUの年次報告が行われたほか,ポルトガ
ルの年次報告に関する国別審査が,アイルランド及びニュージーラン
ドを審査担当国として行われた。 |
エ |
競争政策委員会に属する各作業部会の1995年度における主要な活動
は,次のとおりである。
(ア) |
第1作業部会では,引き続き,「競争政策とアンチダンピング」
に関する検討が行われたほか,競争政策と貿易政策との相互連関に
ついて検討を行うために開催されている同作業部会と貿易委員会作
業部会の合同会合では,競争法及び競争政策の適用範囲及び執行等
に関する検討が行われるとともに,1996年の閣僚理事会に提出され
る合同報告書の準備作業が行われた。 |
(イ) |
第2作業部会では,電気通信分野に係るミニラウンドテーブル討
議等を通じて,競争と規制に関する検討作業が進められた。 |
(ウ) |
第3作業部会では,1986年理事会勧告(国際通商に影響を及ぼす
制限的商慣行についての加盟国間の協力に関する改訂理事会勧告)
改訂案について検討が行われた。当該改訂案については,7月に開
催された理事会において採択された。 |
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(2) |
消費者政策委員会
ア |
消費者政策委員会(Committee on
Consumer Policy)は,加盟
国の消費者行政についての情報交換及び調査・検討のための国際協力
の場として,1969年11月に期限付き(1972年末まで)で設置すること
とされた。この期限は,その後,5回の延長決議を経て1997年末まで
となっている。消費者政策委員会は,年2回本委員会を開催するほ
か,各種の作業部会を設けて随時会合を行っている。
1996年3月現在,活動している作業部会は,「消費者安全」作業部
会及び「消費者市場」作業部会の2部会である。 |
イ |
1995年4月6日~7日には,基準認証プロジェクト等を議題とし
て,第49回本委員会が開催された。 |
ウ |
1995年12月5日~6日には,持続的消費パターン等を議題として,
第50回本委員会が開催された。 |
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2 国際連合貿易開発会議(UNCTAD)
UNCTADでは,極めて多岐にわたる南北問題の討議が行われている
が,特に当委員会に関係があるものとして,「制限的商慣行」の問題があ
る。
(1) |
1980年の第35回国連総会において,「制限的商慣行規制のための多国
間の合意による一連の衡平な原則と規則」(以下「原則と規則」とい
う。)が,国連加盟国に対する勧告として採択された。この「原則と規
則」は,国際貿易,特に発展途上国の国際貿易と経済発展に悪影響を及
ぼす制限的商慣行を識別し,規制することにより,国際貿易と経済発展
に資することを目的としており,その主な内容は次のとおりである。
ア |
国際貿易,特に発展途上国の国際貿易と経済発展に悪影響を及ぼす
ことになり,市場アクセスを制限し,又は競争を不当に制限すること
となる場合に,
(ア) |
競争企業間の協定,取決めによる次のような行為を行わないこ
と。
①価格協定,②入札談合,③市場・顧客分割,④販売・生産数量
割当など |
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(イ) |
市場支配力の優越的地位を濫用することにより,次のような行
為・行動を行わないこと。
①競争者を排除するための原価以下の価格付け等競争者に対する
略奪的行為,②価格差別,③合併・取得,④輸出商品の再販売価格
維持,⑤並行輸入の阻止など |
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イ |
事業が行われている国の所管官庁が制限的商慣行の規制を行うに際
し,企業はその所管官庁と協議・協力し,情報を提供すること。
「原則と規則」の規定に関する制限的商慣行についての調査研究,
情報収集等を行うために制限的商慣行政府間専門家会合が設置されて
いる。
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(2) |
制限的商慣行政府間専門家会合とは別に,「原則と規則」をレビュー
するための国連会議が1985年以降,5年毎に開催されている。
1995年度においては,ジュネーブにおいて,1995年11月13日~21日に
「原則と規制」の見直しのための第3回国連会議が開催され,「原則と
規則」の運用の評価について議論が行われるとともに,競争政策に関す
る技術協力の強化等を内容とする決議が採択された。 |
3 アジア太平洋経済協力(APEC)
(1) |
APEC競争法・競争政策会合
APECでは1995年から競争政策に関する検討が行われている。
1995年度においては,ニュージーランドのオークランドにおいて,
1995年7月24日~26日にAPECの発足以来初めて,競争法・競争政策
会合が開催され,「競争政策及び競争法の目的と運用」,「技術協力」,
「競争当局間の協力」,「競争政策と貿易政策の連関」及び「アンチダン
ピング」をテーマとして活発な意見交換が行われた。 |
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(2) |
大阪行動指針と行動計画の策定
ア |
1994年のインドネシア・ボゴールでの非公式首脳会議において,ア
ジア太平洋地域の貿易・投資の自由化を図るため,「先進国経済は
2010年までに,開発途上経済は2020年までに,アジア太平洋における
自由で開かれた貿易及び投資という目標の達成を完了する」こと等を
内容とする「ボゴール宣言」が採択された。 |
イ |
1995年には,主として,「ボゴール宣言」の目標を具体化するため
の「行動指針」の策定作業が行われ,1995年11月19日に開催された大
阪非公式首脳会議において,「行動指針」が採択された(大阪行動指
針)。「行動指針」のうち個別分野(全部で15分野)の行動の1つとし
て,競争政策が取り上げられており,技術支援の実施,対話の促進,
競争政策と他の政策との相互関係の研究等の項目が掲げられている。 |
ウ |
1996年からは「行動指針」で示された枠組に基づいて,これを具体
化するための「行動計画」の策定のための取組が行われている。 |
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4 アジア・大洋州の独占禁止当局との協力
アジア・大洋州独占禁止政策情報センターは,アジア・大洋州地域の15
か国(注)が,その競争政策に関する情報を交換することを通して参加各国
の競争政策を発展させることを目的として,1980年,9月に当委員会事務局
内に設けられたものであり,1995年度においても,競争政策に関する資料
を参加各国に配布した。
(注)15か国は,オーストラリア,中国,インド,インドネシア,韓国,
マレイシア,モンゴル,ニュージーランド,パキスタン,フィリピ
ン,シンガポール,スリランカ,タイ,ヴィトナム及び日本である。
5 その他
当委員会は,上記以外に,WTO,国連多国籍企業委員会等で行われて
いる討議に対しても,競争政策の観点から積極的に対応することとしてい
る。
第3 海外競争当局に対する技術協力
近年,競争法・競争政策の重要性が認識されるにしたがって,発展途上国
や旧社会主義諸国においても,既存の競争法制を強化する動きや,市場経済
化の一環として新たに競争法制を導入しようという動きが活発になってきて
おり,競争法・競争政策に関する技術協力の必要性が高まっている。このた
め当委員会としては,これら諸国の競争当局に対し,研修等による技術協力
を行っている。
1995年度においては,1995年10月23日~11月18日に国際協力事業団(JI
CA)を通じて,アジア・東欧諸国等10か国10名(注)の競争当局等の中堅職
員を対象として,「独占禁止法と競争政策」をテーマとした技術研修を実施
した。
また,1995年11月30日~12月17日にはロシアの競争当局(独占禁止政策・
新経済構造推進国家委員会(以下「独占禁止委員会」という。)等の職員12
名に対し,「独占禁止法と競争政策」をテーマとした技術研修を実施した。
このほか,外国政府が実施する競争政策に関するセミナー(香港消費者委
員会主催・公正取引に関するセミナー,ロシア独占禁止委員会主催・移行経
済における競争政策国際会議等)への講師の派遣等を行った。
(注)10か国は,中国,インド,韓国,マレイシア,モンゴル,タイ,ブ
ルガリア,ポーランド,スロバキア及びトリニダード・トバゴであ
る。
第4 海外調査
我が国の競争政策の運用に資するため,諸外国の独占禁止法制及びその運
用状況についての情報収集や調査研究を行っている。
1995年度においては,アメリカ・EUその他主要なOECD加盟諸国を中
心として,独占禁止当局の政策動向及び議会における独占禁止関係の立法活
動等について調査を行い,その内容の分析と紹介に努めた(諸外国の競争政
策の動向については,付属資料12参照。)。