(1) |
調査対象・方法 |
|
今回,欧米に対して2倍程度の内外価格差が存在するといわれ,国民
生活における豊かさの実現のために当該内外価格差の解消が特に必要と
考えられる住宅関連分野を取り上げ,競争政策の観点から実態調査を実
施することとした。住宅関係団体等から内外価格差があるのではないか
との指摘がなされた住宅用資材及び設備機器のうち,輸入品があまり使
用されていない住宅用アルミサッシ(以下「アルミサッシ」という。),
タイル,システムキッチン及び衛生陶器(水洗便器をいう。以下同
じ。)を対象として,メーカー,流通業者,ユーザー(工事施工業者
等)間の取引を取り上げ,企業間取引など取引慣行の実態,輸入品の取
扱状況などについて調査を実施したものであり,アンケート調査及びヒ
アリング調査によって調査を行った。
また,今回の調査においては,補足的な調査として,当委員会の消費
者モニターの住宅の購買行動及び住宅メーカーの価格表示状況等につい
て調査を行った。 |
(2) |
アルミサッシ(出荷額3441億円,ビル用を含めたアルミサッシの上位
3社集中度67.0%) |
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ア |
アルミサッシ製造業界の概要 |
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我が国の木造住宅に合ったアルミサッシは,昭和40年に商品化さ
れ,軽くてさびにくい上,気密性,遮音性に優れた建材であり,低価
格で,取付工事も容易であったこと等から,その後急速に普及した。
アルミサッシの生産量は,昭和40年代に急増したが,昭和54年の349
千トンをピークに減少し,最近では210~250千トンで推移している。
我が国のアルミサッシメーカーの数は,昭和43年に28社を教えたが,
石油危機後減少しており,昭和60年末以降6社となっている。 |
イ |
アルミサッシの流通経路 |
|
アルミサッシは,メーカーが半完成品の状態で出荷し,流通業者が
これを組み立て,ガラスを入れた上で,工務店等に販売するという形
で流通するが,このアルミサッシの組立やガラスのはめ込みを行う販
売店までの流通については,一般の建材問屋を経由するもの(特約店
ルート)と,メーカーから直接流通するもの又はメーカーが設立した
販売会社を経由するもの(直販ルート)とに大別できる。メーカーと
特約店の間には,人的・資本的なつながりがないのが一般的である。
また,アルミサッシの品種が増えたことや,メーカーの物流体制が
整備されたことなどにより,特約店が在庫を持つことは例外的なもの
となり,商流では特約店を通す取引についても,物流はメーカーが販
売店に直接納入していることが多い。 |
ウ |
メーカー間等の競争の実態 |
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(ア) |
特約店の取引先メーカーの状況 |
|
アルミサッシ業界では,昭和40年代において,メーカーの新規参
入が盛んであり,メーカーでは,まず,販路を確保することを重視
したため,昭和40年代中頃には,流通業者は既に併売店的なものと
なっていたといわれており,現在においても,ほとんどの特約店が
併売店となっている。 |
(イ) |
販売店の取引先メーカーの状況 |
|
メーカーによりアルミサッシの組立方法に異なる点があるため,
一般的には,販売店では特定のメーカーの製品のみを取り扱おうと
する傾向があるが,どのメーカーの製品を使用するかは販売店の取
引先である工務店等が決定することから,販売店の中には,主たる
取扱メーカーがあるものの,複数のメーカーの製品を取り扱ってい
るものも多くなっている。 |
|
エ |
輸入品の取扱状況 |
|
最近の輸入品のほとんどは,アルミニウムと木材で製造された複合
サッシにペアガラスを入れたものである。このような複合サッシにつ
いては,国内ではほとんど生産されておらず,生産する場合は,特注
品となることが多いので,輸入品より高くなり,内外価格差が生じる
といわれている。 |
オ |
競争政策上の評価 |
|
(ア) |
メーカーと特約店等の取引について |
|
a |
メーカーと特約店等との取引については,継続的なものとなっ
ているものの,主要な取引先メーカーが変化することがあるな
ど,必ずしも固定的なものとはなっていない。 |
b |
アルミサッシ業界においては,昭和40年代における需要の急増
という背景もあり,後発メーカーが販売店に直接販売するなどに
より新たな流通経路を構築したことが,その後のメーカー間及び
流通業者間の競争を促進した一因となったものと考えられる。 |
c |
今回の調査では,競争政策上特に問題となる取引慣行等は認め
られなかった。
なお,先発メーカーの古い取引基本契約書の一部に,競合他社
製品を取り扱う場合や需要先が競合した場合にメーカーとの協議
を要請する条項が設定されている例がみられたことについては,
メーカーでは,今回の調査を契機として,既存の契約書を見直
し、当該条項が残っていた契約書については、これを削除してい
る。 |
|
(イ) |
メーカー間の競争関係について |
|
近年におけるアルミサッシの価格については,コストの変化に対
して下方硬直的な面がみられるようになっている。
このような変化がもたらされた原因は必ずしも明確ではないが,
メーカー数の減少とともに,メーカー間の競争関係がいわゆる寡占
的なものへと変化しつつあると考えられるので,当委員会として
は,今後とも,アルミサッシ業界の動向を注視していくこととす
る。 |
(ウ) |
内外価格差について |
|
アルミサッシについて内外価格差があるとされる場合,その主た
る理由は,国産品と海外製品で仕様等が異なることによるものであ
り,一般に内外価格差があるとされているアルミと木材の複合サッ
シについては,これを取り扱う住宅メーカーも増加している。
したがって,このような複合サッシについて内外価格差があるこ
とをもって,アルミサッシの輸入を阻害したり,内外価格差を生じ
させるような取引慣行が存在するとはいえず,また,木製サッシや
複合サッシの場合を含め,今回の調査においては,そのような企業
間の取引慣行が存在するとは認められなかった。 |
|
|
(3) |
タイル(出荷額1902億円,上位3社集中度約60%) |
|
ア |
タイル製造業界の概要 |
|
我が国のタイルメーカーは,約160社で,その大部分が愛知県及び
岐阜県に集中している。一般に,内装タイルを主体に製造している
メーカーは,企業規模が大きいのに対し,外装タイル及びモザイクタ
イルについては,中小メーカーにより製造されるものが多くなってい
る。
国内のタイルメーカーは,国内生産の4割以上を占める株式会社イ
ナックス(以下「イナックス」という。)など一部の大手メーカーを
除けば,そのほとんどが中小メーカーであり,中小メーカーの中に
は,タイル生産の安定化を目的に大手メーカーの受託生産を行ってい
るところが多い。 |
イ |
タイルの流通経路 |
|
タイルの流通経路は,おおむね下図のとおりである。
タイル工事については,ゼネコンや住宅メーカーから施工業者が材
工一式で受注することが多く,その場合,タイルの直接のユーザーは
施工業者である。一般に流通業者は売れ筋のタイルのみを在庫に持
ち,施工業者へ多頻度小口配送を行っており,大量の発注があった場
合には,メーカーが物流センターから施工現場に配送することが多く
なっている。 |
ウ |
メーカー間等の競争の実態 |
|
(ア) |
流通業者の取引先メーカーの状況 |
|
産地問屋は,中小メーカーから購入したタイルや,中小メーカー
に委託生産させたタイルを都市部の消費地問屋等へ販売している。
また,消費地問屋の多くは大手メーカーの特約店となっており,複
数のメーカーの特約店となっているところも多い。 |
(イ) |
メーカーの競争手段の変化 |
|
従前のタイルの流通においては,タイルの種類もそれほど多くな
かったため,流通業者が在庫を持ち,施工業者に売り込むことに
よって使用するタイルが決定されていたが,近年においては,タイ
ルの種類が増加するにつれ,流通業者が在庫を持ち切れなくなると
ともに,メーカー側としても,流通業者のみに商品の売り込みや説
明を任せられず,自ら設計事務所,施主などのユーザー側へPRや
売り込みを行うようになっている。 |
|
エ |
輸入品の取扱状況 |
|
タイルの輸入比率はあまり高くない(平成7年で3%弱)。その理
由としては,欧州製の内装タイルについては,需要が限定されるこ
と,また,台湾等から輸入される外装タイルについては,品質面で国
産品に劣る点があることなどが挙げられている。 |
オ |
競争政策上の評価 |
|
(ア) |
大手メーカーと中小メーカーとの生産受委託について |
|
a |
タイルの製造業界においては,住宅等に使用されるタイルにつ
き設計事務所,施主等が指定するようになったことから,販売す
るタイルの品ぞろえを充実し自己の競争力を強化するため,大手
メーカーを中心として,他のメーカーに委託生産を行う動きが増
加している。
大手メーカーの中でもイナックスは,自社製品に対する需要の
増加に対して,主として中小メーカーに積極的に委託生産を行う
ことで対応しており,これにより我が国のタイル市場において高
い地位を占めるに至っている。 |
b |
しかし,イナックスと受託メーカーとの間の取引をみると,受
託メーカーの多くは,同社からの受託生産を行うことにより我が
国のタイル市場への参入が可能となったり,タイルの生産量を大
幅に増加させることが可能となったものであるので,同社の生産
委託行為が直ちに競争政策上問題であるとまではいえないもので
ある。
今後,当委員会では,同社の生産委託行為によりタイル市場に
おける競争が制限されることのないよう,同社の動向を注視する
こととした。 |
c |
なお,イナックスでは,生産受委託契約において,生産委託の
対象タイルが受託メーカーの独自開発品であるなど,同社の技
術,ノウハウ等が使用されていない商品についても,他への販売
を制限する条項を設けているが,同社のような市場における地位
の高いメーカーがこのような条項を設けること自体,競争政策上
の問題があるほか,その運用いかんによっては独占禁止法上の問
題も生じかねないものである。
今回の調査においては,上記条項が問題となるような運用はな
されていなかったが,当委員会が当該条項の問題点を指摘したと
ころ,同社では,受託メーカーの開発品など同社の技術,ノウハ
ウ等が使用されていない商品の他への販売は自由である旨を各受
託メーカーに通知するとともに,契約書の改定を行っている。 |
|
(イ) |
メーカーと特約店との取引について |
|
大手メーカーの中には,特約店契約の中で,競合品の取扱いを制
限する条項を設けていたものもあったが,メーカー側では当該条項
には実効性がないとしており,今回の調査を契機に自主的に当該条
項を削除することとしている。 |
(ウ) |
輸入品の取引について |
|
タイルの輸入については,輸入品の価格メリットをいかすための
需要者側の関心は高くなりつつあるといわれており,平成7年には
輸入量は急増している。
輸入タイルについては,デザイン,品質,価格等に種々のものが
あり,現地価格ベースで比較した場合に大きな内外価格差が存在す
るものもみられるが,流通業者の在庫経費などが必要となるため
ユーザー渡し価格ではほとんど差がないものも多くなっている。
しかし,外装タイルなど,輸入品との競争により国産品の価格が
長期的に下落傾向となっているものもあり,今回の調査において
は,内外価格差の観点から特に問題となる点や輸入品の流通を阻害
するような取引慣行も認められなかった。 |
|
|
(4) |
システムキッチン(出荷額,推計約1兆円,上位3社集中度49.7%) |
|
ア |
システムキッチン製造業界の概要 |
|
システムキッチンが普及する以前は,セクショナルキッチン(流し
台,コンロ台等の色,デザインは統一されているものの,各パーツが
独立しているもの)が中心で,ステンレス流し台の専業メーカーが主
要な地位を占めていたが,システムキッチンの普及とともに,システ
ムキッチンの部材や機器等の関連から,家庭用電気機器,住宅設備・
資材,給湯機器,家具等多様な業種のメーカーがシステムキッチンの
市場へ参入しており,システムキッチンの主要メーカーは,現在25社
程度存在するといわれている。 |
イ |
システムキッチンの流通経路 |
|
システムキッチンの流通経路は,一般的には,①代理店(卸),販
売店,工務店等を経て流通するもの(一般流通部門),②メーカーか
ら直接住宅メーカー,ゼネコン,ディベロッパーへ流通するもの(直
需部門)とがある。それらの割合は,都市部でほぼ5割ずつ,地方で
は前者が約6割となっている。物流については,メーカーから直接工
務店,住宅メーカー等の建設現場へと配達されるものがほとんどであ
る。
|
ウ |
メーカー間等の競争の実態 |
|
(ア) |
流通業者の取引先メーカーの状況 |
|
システムキッチンの各大手メーカーは,一般に全国で200店前後
の住宅関連資材・設備機器の一次間屋を代理店として取引を行って
おり,他方,代理店は,少ないところで3社,多いところで6社程
度のメーカーの製品を取り扱っている。また,代理店と経常的に取
引を行っている販売店は,全国で2~3千店あり,これらの販売店
で専門店となっているものは皆無に近いといわれている。 |
(イ) |
システムキッチンに係る競争の実態 |
|
システムキッチンは,住宅の新築,リフォーム等における建築資
材・設備の中で最終ユーザーである施主の意向が強く反映されるも
のといわれており,住宅にどのメーカーのシステムキッチンが選択
されるかについては,使用する製品の決定権も販売店や工務店から
最終ユーザーへと移ってきているといわれている。 |
|
エ |
輸入品の取扱状況等 |
|
(ア) |
輸入品の特徴取扱状況 |
|
システムキッチンの輸入については,主として欧米の高級品が輸
入されているが,その輸入数量は我が国出荷量の1%未満とみられ
ている。 |
(イ) |
内外価格差の状況等 |
|
a |
欧米の一般家庭で使用されているシステムキッチンについて
は,価格的には国産品に比べて安いといわれているが,日本の市
場にあった製品とするためのコストが必要であり,国内で流通す
る段階では,国産の製品よりも高額なものになるといわれてい
る。 |
b |
また,我が国においては,国内メーカーは,高額な輸入システ
ムキッチンに対抗するためにデザイン等を日本人の好みに合うよ
うにした廉価なシステムキッチンを開発し,販売してきたことか
ら,輸入品は,使い勝手のよい国産品に取って替わられており,
例えば,国内メーカー品の普及品である100万円前後のシステム
キッチンに対応する輸入品の日本国内での価格は国産同等品の2
~3倍の水準にあるといわれている。 |
|
|
オ |
競争政策上の評価 |
|
(ア) |
メーカーと代理店等の取引について |
|
a |
システムキッチン業界においては,市場の急激な拡大に伴い,
多様な業種からメーカーの参入が相次いでおり,代理店や販売店
も複数のメーカーの製品を取り扱っている。 |
b |
今回の調査においては,システムキッチンの取引について競争
政策上特に問題となる点は認められなかった。 |
|
(イ) |
輸入品の取引について |
|
輸入システムキッチンが,住宅設備機器として我が国の一般家庭
での使用が定着しているといい難いが,これは,主として,国内
メーカーが輸入システムキッチンと同等の機能を有し,かつ廉価な
システムキッチンを開発,販売し,我が国システムキッチン市場に
おける地位を獲得したためであり,輸入品の取引について,企業間
の取引慣行で競争政策上特に問題となるおそれのある点は認められ
なかった。 |
|
|
(5) |
衛生陶器(出荷額774億円,上位3社集中度92.5%) |
|
ア |
衛生陶器製造業界の概要 |
|
我が国の衛生陶器メーカーは,東陶機器株式会社(以下「東陶機
器」という。),イナックスなど7社であり,平成4年における上位3
社累積生産集中度は92.5%となっており,特に東陶機器のシェアは
6~7割と高いものになっている。 |
イ |
衛生陶器の流通経路 |
|
衛生陶器の一般的な流通経路のほとんどは特約店経由になってい
る。メーカーは,量のまとまったものについては直接現場に納入する
ケースがあるが,基本的には特約店に納入し,特約店の物流機能に任
せている。特に,水道工事業者など小規模な施工業者向けに販売され
るものについては,その納期が短いため,特約店や販売店の物流機能
が重視されている。 |
ウ |
メーカーと販売業者の取引 |
|
(ア) |
メーカーと特約店の間の取引は継続的なものとなっており,特約
店が直接取引しているメーカーは,特定メーカー1社の場合がほと
んどであるが,他のメーカーの製品についても当該メーカーの特約
店を通じて取引を行っている。特に,東陶機器以外のメーカーの特
約店の中には,東陶機器の販売店として,同社の製品も販売してい
るところも多くなっている。
メーカーと特約店の間には,人的・資本的な関係がないのが一般
的である。
特約店と販売店の間においては,各販売店が取引する特約店はあ
る程度固定的なものとなっている。 |
(イ) |
東陶機器では,特約店を対象に,特約店の営業所,倉庫などの配
送先ごとに,最低基準金額以上のストック注文(在庫のための早目
の注文)を毎月継続して行った場合に値引きをするストック注文値
引制度を設けている。この値引率は,発注金額に応じて5~8%と
かなり高率なものとなっている。
実際の注文額に占めるストック注文の割合は,衛生陶器の種類が
あまり多くなく,需要も戸建て住宅向けなど小口のものが多かった
ころはかなり高かったといわれているが,現在では,個別に仕入価
格の交渉が行われる大口物件の割合が大きくなったことなどから,
10%以下と低いものになっている。
また,東陶機器では,販売店のうち一定の売上高を維持し,将来
とも同社製品を主力に営業を行うところを選んで,特約店に対する
ストック注文値引制度とほぼ同様のリベート制度を設けている。 |
|
エ |
輸入品の取扱状況 |
|
(ア) |
海外メーカーの中には,我が国の生活様式・生活習慣や法的制約
を解決するために日本向けの製品を生産しているところもあるが,
その製品は,特別に製造ラインを設け,特別な検品をするなどコス
トが高くなり,国産品とあまり変わらない価格で販売されている。 |
(イ) |
我が国に実際に輸入されている衛生陶器の輸入価格(CIF価
格)をみると,タイなど東南アジアから輸入されているものは国産
品(メーカー出荷価格)の半額以下となっているが,欧米から輸入
されているものは国産品より高くなっている。 |
(ウ) |
輸入品については,一般的に,寸法の許容差が大きい,日本の団
地サイズには大きすぎる,給水圧力が小さいといった問題点の指摘
がなされている。また,我が国においては,衛生陶器の価格面や品
質面のほか,メンテナンスやデリバリー体制についても重視されて
おり,輸入品については,この面からの問題も指摘されている。 |
(エ) |
メーカーは,海外の合弁会社などで製造したものを自社の生産能
力の補完部分として,あるいは用途を限定して直接輸入したり,欧
米のメーカーの製品を商社経由で仕入れているが,売上高に対する
輸入品の割合は小さい。 |
|
オ |
競争政策上の評価 |
|
(ア) |
メーカーと特約店等の取引について |
|
メーカーと特約店との取引が継続的なものとなっている要因につ
いては,①メーカーの数が少ないこと,②特約店では,同じような
製品を複数のメーカーから幅広く仕入れるよりも特定のメーカーに
絞った方が品ぞろえがよく,在庫も効率的であることなどが挙げら
れており,それ自体では問題となるものではない。
また,特約店は,特約店となっているメーカーの製品を主力商品
として取り扱う傾向があるが,他のメーカーの製品も取り扱ってお
り,その取引を阻害するような事実は特段認められなかった。 |
(イ) |
メーカー間の競争関係について |
|
衛生陶器業界においては,東陶機器が非常に高いシェアを有して
おり,その理由としては,同社の製品の品質が優れていること,同
社の企業としての実績や知名度などから同社の製品を使えば安心で
あると一般に考えられていることなどのほか,同社製品の流通段階
での在庫量が他社製品に比べ各段に多いことが挙げられている。
このように,東陶機器製品の流通段階での在庫量が多くなってい
ることについては,在庫スペースの関係から流通業者が複数のメー
カーの製品の在庫を行うことが難しいため,流通業者が在庫しよう
とする製品は商品回転率の速い東陶機器の製品が中心となっている
ことが挙げられるが,同社が特約店及び販売店を対象に設けている
ストック注文値引制度が流通段階における同社製品の在庫を確保す
る機能を有することとなる可能性があるものと考えられる。
しかしながら,現在では,このストック注文値引制度の対象とな
るものの割合はかなり低くなっており,ストック注文以外でも取引
量により値引きが行われるため在庫を保有する場合でもストック注
文値引制度のメリットはないとする特約店等も存在するなど,現在
の同制度の内容や同社製品の流通在庫に及ぼす影響からみて,独占
禁止法上特に問題となるものではないと考えられる。 |
(ウ) |
内外価格差について |
|
衛生陶器については,内外価格差があるものも存在するが,この
内外価格差は,それぞれの現地価格ベースのものであり,輸入費用
やメンテナンス費用などを考慮すると必ずしも問題のあるものでは
ないといわれており,また,今回の調査においては,輸入品の流通
を阻害するような企業間の取引慣行も存在するとは認められなかっ
た。 |
|
|
(6) |
消費者モニターの商品選択行動,住宅メーカーの価格表示状況等から
みた注文住宅市場の特徴について |
|
ア |
注文住宅を購入した消費者モニターの取引先選択行動 |
|
(ア) |
建築依頼先選定に当たり重視した事項 |
|
依頼先の住宅メーカーの規模や住宅の工法のいかんにかかわらず
「丈夫な基礎や構造材を使用していること」を重視して建築依頼先
や建築する住宅を決定したとする消費者モニターが多く,頑丈さや
耐久性といった住宅の構造面での品質を重視した商品選択が行われ
ている。 |
(イ) |
建売住宅等を購入した消費者モニターが重視した事項との相違 |
|
戸建て住宅を入手するに当たっては,土地を購入するなどして注
文住宅を建築する方法と建売住宅を購入する方法とがあるが,建売
住宅を購入した者が購入する住宅を決定するに当たり重視した事項
(住宅の立地条件,間取りや用意できる資金の制約以外のもの)と
しては,住宅価格を重視した者が最も多く,「丈夫な基礎や構造材
を使用していること」を重視した者は1割程度にすぎず,住宅の工
法についてもあまり重視されていない。 |
|
イ |
住宅価格についての消費者モニターの認識及び表示状況 |
|
(ア) |
住宅価格についての消費者モニターの認識 |
|
消費者モニター調査によれば,住宅メーカーから提示された見積
価格や実際の支払額と見積依頼を行う前の想定額との異同について
は,地元の工務店に依頼した者では異同はなかったとする者が多い
のに対し,大手住宅メーカーに依頼した者では,事前に考えていた
価格より高かったとして,購入しようとした住宅の価格について十
分な事前知識(相場感)がなかった者が多くなっている。 |
(イ) |
住宅の価格表示をめぐる最近の動き |
|
最近においては,輸入住宅メーカーやフランチャイズ方式により
店舗展開を行っているメーカーを中心として,低価格であることを
セールスポイントとして営業する住宅メーカーも現れており,その
中には,実際に購入者が支払うこととなる価格を事前に把握できる
ような広告活動を行っているところもみられる。 |
|
ウ |
戸建て住宅価格の状況 |
|
戸建て住宅(住宅金融公庫融資個人住宅)の価格は,全体としては
毎年上昇しているが,平成6年には上昇幅が縮小したほか,プレハブ
住宅についてはわずかに価格が低下している。さらに,かつては高級
住宅として販売されていた輸入住宅の価格は低下傾向にある。 |
エ |
競争政策上の評価 |
|
(ア) |
注文住宅の購入者が在来木造注文住宅の主たる供給者である小規
模な住宅メーカーと取引するに当たり,購入者側が知人からの紹介
等の当該住宅メーカーの事業者としての信頼性を重視しているとす
ると,価格による建築依頼先の選択が行われにくく,住宅メーカー
間において競争が活発に行われることもあまり期待できない。
また,大手住宅メーカーと取引する場合においては,価格を重視
した取引先の選択を行うことも比較的容易となっているが,住宅
メーカーの広告活動が価格面以外の事項を中心として行われている
など,住宅購入者が各社の実際の販売価格を事前に把握することは
必ずしも容易ではなく,住宅メーカー間で価格による競争が活発に
行われているとまではいえない。 |
(イ) |
住宅メーカー間の価格競争が活発に行われない場合には,住宅の
価格が高くなりがちであるだけでなく,住宅メーカーが資材や設備
機器を調達するに当たっても,できるだけ安く購入しようとする誘
因も働きにくくなる。
また,我が国においては,注文住宅の購入者が住宅用資材や設備
機器を選択する際に,デザインや使いやすさなど価格以外の要素を
重視する傾向が強いので,この面からも住宅メーカーができるだけ
安い資材や設備機器を使用しようとする誘因が働きにくくなる可能
性がある。 |
(ウ) |
住宅市場及び住宅用資材・設備機器市場における価格競争を促進
するためには,住宅の購入者が価格により取引先を選択し得る環境
を整備することが必要であり,中小住宅メーカーが積極的な広告活
動を行っていない現状の下では,まず,活発な広告活動を行ってい
る大手住宅メーカーが自己の供給する住宅について,その価格面に
ついても正確な情報を積極的に提供することが期待される。 |
|
|