(1) |
販売価格への関与(清涼飲料水,食肉加工品,婦人服及び婦人下着) |
|
小売業者の販売価格に関しては,清涼飲料水,食肉加工品,婦人服及
び婦人下着のいずれについても,この1年間にメーカー等から販売価格
について要請されたことがあると回答した小売業者がみられた。
このような回答の割合は,調査3品目では食肉加工品で高くなってい
るほか,婦人服及び婦人下着では,特売の際に同様の要請を受けるとの
回答比率が高かった。また,飲料メーカーから貸与された自動販売機に
よる缶入り清涼飲料水の販売においては,メーカー希望小売価格より安
い価格で販売することがない理由として,メーカー等から販売価格につ
いて要請されることを挙げる小売業者もみられた。
メーカーが小売業者に販売価格や値引き限度額を示し,当該価格で販
売するよう要請し,両者間で当該価格で販売するよう合意する,あるい
は要請に従わない場合には出荷停止を行う等により,小売業者がメー
カーの示した価格で販売するよう拘束されている場合には,再販売価格
の拘束として独占禁止法上問題となる。また,食肉加工品,婦人服及び
婦人下着について,賞味期限の迫った商品又は色やサイズ等がふぞろい
となった商品がメーカーの求めにより返品されることがある。この点に
ついては,品質保持を行う,品ぞろえをした上で再出荷する等の理由か
ら返品されることが多いとされているが,仮に,メーカーが小売業者に
安売りをさせないために返品させている場合には,独占禁止法上問題と
なる。
今回の調査においてみられた事例が直ちに独占禁止法違反であると断
定することはできないが,清涼飲料水,食肉加工品,婦人服及び婦人下
着に関して,メーカー等が小売業者の販売価格に関与しているとみられ
る事例が多くみられることから,メーカー等において流通・取引慣行に
関する独占禁止法上の指針の趣旨を更に徹底する必要があると考えられ
る。したがって,各品目の関係団体等に対して,同指針の内容が会員各
社内で周知徹底されるよう要請するとともに,当委員会としても,今後
とも実態を注視し,独占禁止法に違反する行為があれば,厳正に対処す
ることとする。
表2 |
この1年間に小売業者における通常の販売価格を理由とする要請等が
あった事例(食肉加工品) |
|
 |
表3 |
この1年間に小売業者における販売価格を理由とする要請等があった
事例(婦人衣料品) |
|
 |
|
 |
|
(2) |
メーカーのチャネル政策(婦人服及び婦人下着) |
|
婦人服及び婦人下着のメーカーの中には,百貨店,専門店,チェーン
ストア等,販路に応じて,その取引対象となる商品に差異を設ける販売
政策を採っているものがある。
このような販売政策に基づいて,メーカーが取引先小売業者を選択す
ることについては,基本的にはメーカーの取引先選択の自由の問題であ
り,品質,サービス等の要因を考慮して,独自の判断によって,小売業
者を選択しても,基本的には独占禁止法違反となるものではない。しか
し,メーカーが取引先小売業者を決定するに際して,安売りを行わない
ことを条件として取引する場合には独占禁止法上問題となる。
また,派遣店員が小売価格を監視できる立場にあることを利用して,
メーカーが価格維持を図っている場合には独占禁止法上問題となる。
当委員会は,今後とも実態を注視し,独占禁止法に違反する行為があ
れば,厳正に対処することとする。 |
(3) |
自動販売機による販売における制限(清涼飲料水) |
|
ア |
中身商品の制限 |
|
飲料メーカーから貸与されている自動販売機について,「当該自動
販売機では当該メーカーの商品以外を販売しないよう要請される」な
どとする小売業者がみられた。しかし,当該飲料メーカー以外の飲料
メーカーから小売業者が自動販売機の貸与を受けることまで制約して
いる実態はみられなかった。
今回の調査によれば,少数ではあるが,小売業者等の中には,自動
販売機の所有者である飲料メーカーと交渉するなどにより,当該飲料
メーカーの商品以外の商品を当該自動販売機で販売しているとするも
のもみられる。このような事例が今後増加すれば小売業者のPB商品
や輸入品にとって,販路を更に拡大することが可能となり,清涼飲料
水市場における競争も一層活発化するものと期待される。 |
イ |
自動販売機の入手 |
|
自動販売機を所有している小売業者はほとんどなく,小売業者が自
動販売機を入手するのは困難であるとされているが,今回の調査で
は,飲料メーカー等が小売業者の自動販売機の入手を妨害している等
の事実は認められなかった。
しかしながら,市場における有力な飲料メーカー等が,取引先であ
る自動販売機メーカーに対し,自動販売機による缶入り清涼飲料水の
販売分野における競争者である小売業者と取引しない条件又はその販
売先を制限する条件を付けて取引をし,それにより小売業者の取引の
機会が減少し,他に替わり得る取引先を容易に見いだすことができな
くなるおそれがある場合には,不公正な取引方法に該当し,違法とな
ると考えられることから,当委員会としては,今後ともこのようなこ
とが行われないよう監視していくこととする。 |
|
(4) |
関税制度(食肉加工品) |
|
食肉加工品の原料である豚肉及び一定の食肉加工品については,昭和
46年の輸入自由化以降,安い海外産豚肉から国産豚肉を守り国内生産の
安定を図ることを目的として,国内の価格安定制度を前提とした差額関
税制度が採られていた。その後,平成5年のガット・ウルグァイ・ラウ
ンド(新多角的貿易交渉。以下「UR」という。)合意により関税化さ
れ,基準輸入価格は国内の安定基準価格及び安定上位価格からは切り離
される等の変更が加えられたが,基本的には現在も同様の制度が採られ
ている。
これらの制度はガット上認められたものであり,UR合意を受けて基
準輸入価格は漸次引き下げられることになっているが,食肉加工品の内
外価格差の要因の一つとなっているとする声が多く聞かれるところであ
る。また,緊急措置の発動については,今回の調査において,「価格が
高騰し,食肉加工品の安定供給に支障を来す」,「価格高騰がかえって国
内農家の生産性向上の努力に水を差す」という意見がみられた。
平成12年まで基準輸入価格が漸次引き下げられることに伴い,輸入豚
肉の競争圧力が増していくものとみられ,また他方で,国産豚肉の生
産・流通コストの低減努力が更に進められることが期待される。こうし
た競争条件の変化が国内の豚肉価格に適正に反映されるよう既存の諸制
度が運用されることが望まれる。 |