(1) |
事業者団体への加入の有無 |
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平成4年時の調査と比べて今回の調査では,事業者団体に加入してい
る外資系企業の割合が67.6%から73.8%に増加する一方,加入していな
い外資系企業の割合が33.8%から26.2%に減少しており,何らかの形で
事業者団体に加入している外資系企業が増えてきていることがうかがわ
れる。
外資系企業の属する業種によって事業者団体への加入状況にどのよう
な違いがみられるかを示しているのが表1である。
表1 |
事業者団体への加入の有無 |
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(2) |
事業者団体への加入理由 |
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平成4年時の調査と比べて今回の調査では,事業者団体への加入理由
として「関係行政機関の通達などの行政情報が入手できるから」
(66.1%→55.3%)と「関係行政機関への申請業務などがスムーズにな
るから」(28.0%→18.4%)を挙げた者の割合が大幅に減少している。
他方,今回の調査で選択肢として新たに設けた「同業他社の多くが加入
しているから」(33.0%)と「団体が行う調査研究に参加できるから」
(22.3%)という理由を挙げてきた者がかなりの割合に達する。 |
(3) |
事業者団体の加入に伴うデメリット等の有無及びその内容 |
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事業者団体に加入していることに伴うデメリットや事業者団体内部で
の不公平な取扱いを感じるとした外資系企業の割合は,平成4年時の調
査と比べて34.9%から8.3%へと大幅に減少している。そして,デメ
リット等と感ずるものの内容は,いずれの調査においても,多い順に,
「会費,負担金,賦課金などの金銭的負担が大きい」,「団体の活動のた
めに割かなければならない自社の人的負担が大きい」というものであ
り,経済的又は人的側面での負担を挙げる外資系企業が多い。また,今
回の調査では,「会員であっても団体の非公式な会合に参加できない」,
「会員であっても団体の重要な意思決定に参加できない」等の事業者団
体内部における差別的な取扱いの可能性を示すような回答が目立つ(表
2)。
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(4) |
事業者団体に加入しない理由 |
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平成4年時の調査に比べて今回の調査では,「自社が団体の加入資格
条件を満たしていないから」(9.3%→3.6%)と「団体があることを知
らないから」(22.7%→14.3%)との回答が顕著な減少をみせる一方,
「団体が有益な活動を行っていないから」(11.3%→20.2%)と「会費,
負担金,賦課金などが高いから(12.4%→23.8%)との回答が増加し
ている。こうしたことから,従来は,外資系企業の意思とは直接的な関
係のない原因(団体の存在を知らない,加入資格要件を満たしていな
い)に基づいて事業者団体に加入しないケースが多かったが,最近で
は,事業者団体の活動内容や対費用効果を吟味した上で事業者団体に加
入するか否かを決める外資系企業が多くなってきている様子かうかがわ
れる。 |
(5) |
事業者団体に加入しないことに伴うデメリット |
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事業者団体に加入しないことによるデメリットを感じるとした外資系
企業の割合は,平成4年時の調査と比べて18.0%から4.2%へと大幅に
減少している。 |
(6) |
事業者団体への加入を断られた経験の有無 |
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過去に事業者団体への加入を申請したにもかかわらず,その団体から
加入を断られた経験がある外資系企業の数は5社(全体の1.8%)と極
めて少なく,事業者団体が外資系企業の加入を断るというケースは多く
ない状況がうかがわれる。事業者団体から加入を断られた経験のある5
社に対して加入を断られた理由を聞いたところ,5社のうち3社までが
「自社が日本国内に製造や販売のための設備を有していなかったから」
と回答している。この点について3社から補足ヒアリングを行った結果
では,3社のうち2社は,一度は加入を断られたもののその後に国内に
製造設備等を保有することになって当該団体に加入できたとのことであ
り,残る1社についても加入を断られた事業者団体に加入しなくても事
業上特段の不利益はない旨回答しており,いずれも独占禁止法上問題と
なるようなケースではなかった。国内での製造設備の保有を事業者団体
の加入資格要件とすることは,事業者団体に加入しなければ事業活動を
行うことが困難な状況においては独占禁止法上問題となることから,関
係する事業者団体に対しては個別にその旨注意喚起を行った。
次に集計結果では,「既にその団体のメンバーとなっていた自社の同
業者が自社の加入に難色を示したから」との回答が1社から寄せられて
いる。当該事業者団体にはその後も加入できてはいないものの,当該事
業者団体と既に同社が加入している別の事業者団体が合併して発足する
新たな事業者団体に加入できることとなり,また,加入を断られた事業
者団体に加入しなくても事実上多少不利になる程度で事業の遂行自体に
支障はなかったとのことであり,これが直ちに独占禁止法上問題となる
事例ではなかった。
なお,補足ヒアリングの結果,会員会社の推薦を加入資格要件の一つ
としている事業者団体が見受けられた。多くの場合,事業者団体に新規
に加入を申請する事業者と当該事業者団体の会員会社とは直接的な競合
関係にあると考えられるところ,このような加入資格要件は,上記のよ
うに,事業者団体に加入しなければ事業活動を行うことが困難な状況に
おいては独占禁止法上問題となることから,そのような加入資格要件を
設定していた事業者団体に対しては,その旨の注意喚起を行った。
また,今回の調査においては,事業者団体への加入を拒否された理由
として「外資系企業だから」との理由を挙げた外資系企業は存在しな
かった。事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針の参考例5-
1-3-④においては,事業者団体が「『日本国法人』や『日本国籍を
有する者』等国籍による制限を内容とする加入資格要件を設定するこ
と」は,事業者団体に加入しなければ事業活動が困難な状況においては
独占禁止法上問題になるとされており,当委員会としては,今後とも,
国籍による制限を内容とする加入資格要件の設定に関しても注視してい
くこととしている。 |
(7) |
事業者団体と行政機関との関係について |
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外資系企業が,我が国事業者団体と行政機関との関係をどのようにみ
ているかについては,回答の多い順に,「団体は,行政機関に対して,
もっと積極的に意見表明や政策提案を行うべきである」(34.5%),「行
政機関は,業界の自主基準・自主ルールの作成を団体に委託することが
多い」(33.5%),「行政機関は,団体を通じてのみ行政情報を提供する
ことが多い」(32.0%),「日本においては,団体は行政機関の末端とし
ての役割を担っている」(29.9%)等となっている。 |
(8) |
事業者団体に加入しないことによる不利益の程度 |
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「事業者団体に加入しなくても事業上特段の影響はない」と「事業者
団体に加入しないと事業上多少不利になるが,事業に支障はない」と回
答してきた外資系企業の割合は,平成4年時の調査と比べて69.5%から
71.2%へと若干増加している。また,「事業者団体に加入しないと事業
上かなり不利になり,事業が困難である」と「事業者団体に加入しない
と事業は事実上不可能になる」と回答してきた外資系企業の割合は,
11.7%から10.5%に若干減少している。これらのことから,事業者団体
に加入しなければ事業活動が困難となったり,それに近い状況がもたら
されるという実態は,大局的にみれば,わずかではあるが減少傾向にあ
るという状況がみて取れる。 |