第15章 景品表示法に関する業務
第1 概 説
1 | 景品表示法の概要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
景品表示法は,独占禁止法の不公正な取引方法の一類型である不当な顧 客誘引行為のうち過大な景品類の提供と不当な表示をより効果的に規制す ることにより,公正な競争を確保し,一般消費者の利益を保護することを 目的として昭和37年に制定された。 景品表示法は,不当な顧客の誘引を防止するため,景品類の提供につい て必要と認められる場合に,公正取引委員会告示により,景品類の最高 額,総額,種類,提供の方法等について制限又は禁止し(第3条),ま た,商品又は役務の品質,規格その他の内容又は価格その他の取引条件に ついて一般消費者に誤認される不当な表示を禁止している(第4条)。こ れらの規定に違反する行為に対し,当委員会は排除命令を,都道府県知事 は指示を行い,これを是正させることができる(第6条及び第9条の 2)。 さらに,公正競争規約の制度が設けられており,事業者又は事業者団体 は,過大な景品類の提供や不当な表示を防止するため,一定の自主的な ルールを当委員会の認定を受けて設定することができる(第10条)。 |
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2 | 告示,運用基準の制定・変更 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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第2 違反被疑事件の処理
平成8年度において当委員会で違反被疑事件として処理した事件のうち,
排除命令は6件(平成7年度3件)であり,警告を行ったものは,景品関係
211件,表示関係318件の合計529件である(第1表)。
平成8年度中に処理した事件の特徴についてみると,景品の事件では,海
外旅行等を景品類として提供した違反事件が多く,高額の賞品が提供される
事件については,事業者が景品規制の対象には当たらないと誤解して企画し
た場合が多かった。
第1表 | 違反事件の処理状況 |
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表示の事件では,不当な二重価格表示が最も多いほか,商品の品質・内容
に関する不当表示,商品・役務の効能効果に関する不当表示事件があった。
また,これらの事件処理に当たっては,過大な景品付販売や不当な表示が
競争事業者に波及することが多い点に留意し,当該事業者を規制するだけで
なく,必要に応じ関係業界団体を通じて他の事業者もこれと同種の違反行為
を行わないよう要望を行っている。
1 | 排除命令 | ||||||||||||||||||||||||
平成8年度における排除命令は6件で,すべて表示関係である。その内 訳は,牛乳の品質に関する不当表示事件1件,中古自動車の走行距離に関 する不当表示事件1件,電磁界変換方式によるネズミ撃退器の効果に関す る不当表示事件4件である(第2表)。
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2 | 警 告 | ||||||||||||||||||||||||
平成8年度において,警告を行ったものは529件で,そのうち過大な景 品類の提供に関するものは211件,不当な表示に関するものは318件であ る。 その主なものは,次のとおりである。
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3 | 要 望 | ||||||||||||||||||||||||
平成8年度において行った要望は次のとおりである。
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第3 景品規制の見直し
当委員会は,景品規制について,懸賞景品告示に係る上限金額の引上げ,
総付景品告示に係る上限金額の撤廃,事業者景品告示の廃止,百貨店業にお
ける特定の不公正な取引方法第8項の削除,オープン懸賞告示に係る上限金
額の引上げ及び規制対象範囲の縮減・明確化を行うための景品規制の一般規
定に係る関係告示及び運用基準を改正し,平成8年4月1日から施行した
(告示官報公告及び運用基準通達日は,平成8年2月16日)。この一般規定
の見直し・明確化に引き続いて,業種別告示・公正競争規約(業種別ルー
ル)についても,改正後の一般規定の内容に則して見直しを図ることとして
おり(「規制緩和推進計画の再改定について」),平成9年8月末までに,29
の業種別告示のうち28業種の告示について所要の見直しを終え,24業種の告
示の廃止及び4業種の告示の変更を行った。また,公正競争規約について
も,業種別告示の廃止等に合わせて所要の見直しを行った。
第4 公正競争規約の制度
1 | 概 要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
公正競争規約(以下「規約」という。)は,事業者又は事業者団体が, 景品表示法第10条の規定に基づき,景品又は表示に関する事項について, 当委員会の認定を受けて,不当な顧客の誘引を防止し,公正な競争を確保 するために自主的に設定するルールである。 また,規約の認定に当たっては,一般消費者及び関連事業者の利益を害 するものであってはならないので,当該業界の意見だけでなく,関連事業 者,一般消費者及び学識経験者等の意見がこれに十分反映されるよう努め ている。 平成9年3月末現在における規約の認定件数は,景品関係50件,表示関 係68件,計118件となっている(附属資料12-2表,12-3表)。 また,業界における取引実態の変化,消費者の意識の変化,関係法規の 改正等を踏まえ,現行の規約の内容について適宜見直しの指導を行ってい る。 |
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2 | 新たに認定した規約 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成8年度において新たに認定した規約はなかった。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3 | 規約の変更 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成8年度において変更の認定を行った規約は36件(景品規約12件,表 示規約24件)である。これらの多くは景品規制の見直し・明確化に係るも のである。
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4 | 規約の廃止 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
規約の見直しを行った結果,景品について一般規定と異なる別途の制限 を設けておく必要がないとの理由により,精麦製造業における景品類の提 供の制限に関する公正競争規約について規約運用機関から廃止する旨の報 告があった(平成9年3月12日廃止 平成9年4月25日告示官報公告)。 |
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5 | 公正取引協議会等に対する指導 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
当委員会は,公正取引協議会(規約の運用を目的として,規約に参加す る事業者及び事業者団体により結成されている。以下「協議会」とい う。)に対し,規約の適正な運用を図るため,協議会の行う事業の遂行, 事業の処理等について指導を行っている。 平成8年度においては,協議会が行った規約の遵守状況調査,商品の試 買検査会,審査会等について必要な指導を行うとともに,各都道府県の 行った規約対象商品の試買検査の結果について,協議会に対し,問題点の 処理,改善等について指導を行った。 また,協議会は,規約の実施上必要な事項について,規約の定めるとこ ろにより,施行規則,運用基準等を設定し,規約の円滑な運用を期してい るが,これら施行規則等の設定・変更に当たっても,当委員会は積極的に 指導を行っている。 なお,各協議会の業務の推進及び連携・協力を密接にし,規約の適正か つ円滑な施行を図るため,社団法人全国公正取引協議会連合会に対して, ①規約遵守状況調査,②協議会等の会員に対する研修業務,③規約制度の 普及・啓発業務及び④強調表示に関する実態調査についてそれぞれ調査等 を委託した。 また,平成9年1月31日に公正取引協議会事務局長会議を開催し,各協 議会共通の問題点の検討,事務処理の改善の検討等を行った。 |
第5 都道府県における運用状況
1 | 概 要 |
平成8年度において都道府県が処理した景品表示法違反事件は1,353件 である。違反行為の未然防止に大きな役割を果たしている事前相談の件数 は2,658件であり,その内容をみると,景品関係では,提供できる景品類 の限度額に関する相談が多く,表示関係では,二重価格表示や食品などの 表示に関する相談が多かった。 |
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2 | 違反事件の処理状況 |
平成8年度においては,都道府県知事が景品表示法第9条の2の規定に 基づいて行った指示はなかった。また,注意の件数は,1,353件(景品313 件,表示1,040件)となっており,このうち過大な景品関係では,懸賞景 品告示及び総付景品告示違反事案が,不当表示関係では,価格表示に関す る事案が相当数を占めている。 |
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3 | その他の活動 |
公開試買検査会については,すべての都道府県が開催しており,その対 象となった品目は,食品類が中心となっている。これを品目別にみると表 示の公正競争規約が設定されているものでは,食肉,観光土産品,ハム・ ソーセージ類等が,また,設定されていないものでは,乾めん・即席めん 類,レトルトパウチ食品等が取り上げられている。 また,各都道府県は,広報用パンフレットの作成,一般消費者,事業者 等に対する説明会の開催等景品表示法に関する普及・啓発活動に力を入れ るとともに,市町村等関係公的機関との協力体制の整備に努めている。 |
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4 | 都道府県に対する指導 |
当委員会は,都道府県における景品表示法の円滑・適正な運用を確保す るために,運用解釈の明確化,全国都道府県景品表示法主管課長会議及び ブロック別都道府県景品表示法担当者連絡会議の開催,初任者研修会の開 催,都道府県が行う公開試買検査会及び景品表示法の説明会への出席その 他経常的に連絡・指導を行っている。 |