第17章 国際関係業務

第1 二国間関係

1 海外独占禁止当局との二国間意見交換
 近年,各国共通の競争政策上の課題について意見交換等の国際的提携が
重要になってきている。このため,当委員会は,我が国との経済交流が特
に活発であるアメリカ,EU,韓国等の競争当局との間で定期的に競争政
策に関する意見交換を行っている。
 1996年度における意見交換開催状況は,次のとおりである。
2 貿易摩擦問題への対応
(1) 日米包括経済協議
 1993年7月に東京において行われた宮澤総理(当時)とクリントン大
統領との間の日米首脳会談において,日米間の新たなパートナーシップ
のための枠組みを設置することで一致を見た。
 上記枠組みの中で,セクター別・構造面での障壁を除去するための協
議及び交渉の対象分野として,5つのバスケット(政府調達,規制緩和
及び競争力,その他の主要セクター,経済的調和,既存のアレンジメン
ト)が設けられた。
 1996年度現在,当委員会と関係する事項としては,競争政策一般につ
いて「規制緩和・競争政策」の作業部会において検討が行われており,
当委員会も協議に参加している。
(2) 個別業種に関する二国間協議
 個別品目に関する貿易摩擦問題を解決すべく,これまでにコンピュー
タ,スーパーコンピュータ,衛星,建設,紙,保険等についての会合が
開催されてきている。当委員会は,競争政策の観点から,外国企業の我
が国市場への参入に当たり反競争的行為があった場合にはこれに厳正に
対処することとし,これらの協議に必要に応じて対応している。
(3) フィルム問題に対する対応
 1996年6月13日,米国政府は,イーストマン・コダック社が日本の写
真用フィルム及び印画紙産業に関して措置を採るよう通商法301条に基
づき申し立てた件(日米フィルム問題)に関して,WTO協定に基づき
日本との間で次の3つの協議を要請した。
ア GATT23条1に基づく協議
 米国側は,輸入された消費者用写真フィルム及び印画紙の販売と流
通を阻害する日本政府の法令措置(資本自由化対策,大店法,景品表
示法等)は,GATT3条(内国民待遇),GATT10条(貿易規則
の公表及び施行),GATT23条1(b)(GATTの規定に抵触するか
否かを問わず,右措置により米国の利益を無効化・侵害)に違反する
としている。本協議については,1996年9月20日に米国側より小委員
会(パネル)設置要請が行われ,同年10月16日の紛争処理機関(DS
B)会合においてパネルの設置が決定された。
 現在,WTOのパネルによる紛争手続に沿って手続が進められると
ころであり,当委員会としても,景品表示法がGATTの規定に違反
しているとの米国の主張は根拠がないこと等上記の協議の場等を通じ
て反論しているところである。
イ GATS23条1に基づく協議
 米側は,大店法等に基づき日本政府が講じている措置が流通サービ
スに影響を与えており,これがGATSの条項に違反しているとして
いる。GATS23条1協議に関しては,1996年7月10日,11日及び11
月 7日,8日に二国間協議が行われて以降,現段階まで特段の動きは
ない。
ウ 制限的商慣習についての協議に関する1960年GATT決定に基づく
協議
 米国側は,日本の消費者用写真フィルム及び印画紙の製造業者,卸
売業者及び小売業者が,流通経路の閉鎖,価格競争の制限により国際
貿易における競争制限的な慣習に従事していると主張している。我が
国政府の立場は国際商品であり世界的に企業数も限られたフィルム
市場についてバランスのとれた建設的な議論を行うとの観点から,同
要請に応じて日本のフィルム・印画紙市場について両国間で協議を行
うと同時に,米国のフィルム・印画紙市場の問題も協議すべきという
ものであるが,この点について米国政府からは正式な回答を未だ得て
いない。

第2 多国間関係

1 経済協力開発機構(OECD)
(1) 競争政策委員会
ア  競争政策委員会(Committee on Competition Law and Policy)
は,OECDに設けられている各種委員会のうちの一つで,1961年12
月に設立された。我が国は,1964年のOECD加盟以来,その活動に
参加してきている。競争政策委員会は,原則として年2回本委員会を
開催し,また,その下に各種の作業部会を設けて,随時会合を行って
いる。本委員会では,加盟各国の競争政策に関する年次報告が行われ
ているほか,各作業部会の報告書の検討,その時々の重要問題につい
て討議が行われている。
 本年度における会議の開催状況は,次のとおりである。
イ  1996年4月の第69回本委員会においては,競争政策委員会と貿易委
員会の合同会合の設置について合意が得られたほか,ファックス用感
熱紙の国際価格カルテルの事例を紹介しつつ米国及びカナダの執行協
力に関する説明が行われた。デンマーク,フィンランド,ギリシャ,
アイルランド,日本,スウェーデン,スイス,イギリス,アメリカ,
チェコ及びスロバキアの年次報告が行われた。
ウ  1996年10月の第70回本委員会においては,韓国,オーストラリア,
オーストリア,カナダ,フランス,ドイツ,イタリア,ニュージーラ
ンド,ノルウェー,ポルトガル,スペイン及びEUの年次報告が行わ
れたほか,韓国の年次報告に関する国別審査が,イギリス及びオース
トラリアを審査担当国として行われた。
エ  1997年2月の第71回本委員会においては,チェコ,デンマーク,イ
ギリス,ギリシャ,米国,アイルランド,スイス,スロバキア及び日
本の年次報告が行われた。
オ  競争政策委員会に属する各作業部会の本年度における主要な活動
は,次のとおりである。
(ア)  競争と貿易合同会合では,「競争と貿易」の問題を今後WTOが
いかに取り扱っていくかの問題を議論する上で,OECDが何らか
の貢献を行い得るか否かを探るための意見交換を中心に議論が行わ
れた。
(イ)  第2作業部会では,5月に開催された閣僚理事会に提出された規
制制度改革報告書案について議論が行われた。
(ウ)  第3作業部会では,合併届出の統一様式及び国内・国際カルテル
の分野における協力について議論が行われた。
(2) 消費者政策委員会
ア  消費者政策委員会(Committee on Consumer Policy)は 加盟
国の消費者行政についての情報交換及び調査・検討のための国際協力
の場として,1969年11月に期限付き(1972年末まで)で設置すること
とされた。この期限は,その後,5回の延長決議を経て1997年末まで
となっている。消費者行政委員会は,年2回本委員会を開催するほ
か,各種の作業部会を設けて随時会合を行っている。
 1996年3月現在,活動している作業部会は,「消費者の安全性」作
業部会及び「消費者市場」作業部会の2部会である。
イ  1996年10月2日~3日には,規制制度改革,国際パーセルデリバ
リー,電子商取引等を議題として,第52回本委員会が開催された。
ウ  1997年3月 6日には,電子商取引,年次報告等を議題として,第53
回本委員会が開催された。
(3) OECD・公正取引委員会共催セミナー
 公正取引委員会は,従来からOECDの活動に積極的に参加している
ところである。現在,OECD全体で取り組んでいる規制制度改革の推
進力としての競争当局の在り方,改革後における競争政策の役割につい
て議論する場として,1996年12月 3日に東京において,OECD・公正
取引委員会共催セミナー「規制制度改革における競争当局の役割」が外
務省の後援により開催された。
 同セミナーには,各国の競争政策関係者のほか,学識経験者,我が国
政府関係者等が出席し,「競争政策,競争当局及び規制制度改革のプロ
セス」,「規制制度改革のプロセスの要素及び結果としての競争法の執
行」の議題について議論がおこなわれた。
2 アジア太平洋経済協力(APEC)
(1) 競争政策・規制緩和ワークショップ
 APECでは1995年から競争政策に関する検討が行われている。
 1996年度においては,フィリピンのダヴァオにおいて,1996年8月17
日~18日に競争政策・規制緩和ワークショップが開催され,「競争政策
と競争法」,「規制緩和」,「競争政策へのアプローチとしての開かれた市
場」及び「技術協力」をテーマとして活発な意見交換が行われた。
(2) 大阪行動指針とマニラ行動計画の策定
ア  1994年のインドネシア・ボゴールでの非公式首脳会議において,ア
ジア太平洋地域の貿易・投資の自由化を図るため,「先進国経済は201
0年までに,開発途上経済は2020年までに,アジア太平洋における自
由で開かれた貿易及び投資という目標の達成を完了する」こと等を内
容とする「ボゴール宣言」が採択された。
イ  続く1995年に大阪で開催された第7回閣僚会議(11月16日,17日)
において,「ボゴール宣言」の目標を具体化するための「行動指針」
が採択された(大阪行動指針)。
ウ  1996年は,主として「大阪行動指針」に基づく具体的な分野別の行
動計画の策定作業が行われ,フィリピンのマニラで開催された第8回
閣僚会議(11月22日,23日)において,「マニラ行動計画」が採択さ
れた。「マニラ行動計画」は,APEC加盟国・地域が協調して取り
組む「共同行動計画」と各国・地域が自主的に取り組む「個別行動計
画」とがあり,競争政策分野では「共同行動計画」として技術協力や
政策対話,情報交換の実施等が掲げられている。また,「個別行動計
画」として,我が国は独占禁止法違反行為に対する厳正な対処等競争
政策のより一層積極的な展開や技術支援の実施等を掲げている。
(3) APEC/PFP競争政策セミナーの開催
ア  APECにおける経済・技術協力を一層効果的に推進するためのメ
カニズムである「前進のためのパートナー(PFP:Partners for
Progress)」の一環として,日本とタイとの共催で競争政策に関する
研修プログラムが1996年度から5か年計画で実施されることとなっ
た。
イ  このプログラムの第1回目として,1996年度は,1997年3月18日~
21日にタイのバンコクにおいてAPECの開発途上国・地域の競争当
局等の局長・局次長クラスを主たる対象としたセミナーを開催した。
3 国際連合貿易開発会議(UNCTAD)
 UNCTADでは,開発途上国の貿易と開発に関する多岐にわたる討議
が行われているが,特に当委員会に関係があるものとして,「制限的商慣
行」の問題がある。
(1)  1980年の第35回国連総会において,「制限的商慣行規制のための多国
間の合意による一連の衡平な原則と規則」(以下「原則と規則」とい
う。)が,国連加盟国に対する勧告として採択された。この「原則と規
則」は,国際貿易,特に開発途上国の国際貿易と経済発展に悪影響を及
ぼす制限的商慣行を識別し,規制することにより,国際貿易と経済発展
に資することを目的としており,その主な内容は次のとおりである。
ア  国際貿易,特に開発途上国の国際貿易と経済発展に悪影響を及ぼす
ことになり,市場アクセスを制限し,又は競争を不当に制限すること
となる場合に,
(ア)  競争企業間の協定,取決めによる次のような行為を行わないこ
と。
 ①価格協定,②入札談合,⑧市場・顧客分割,④販売・生産数量
割当など
(イ)  市場支配力の優越的地位を濫用することにより,次のような行
為・行動を行わないこと。
 ①競争者を排除するための原価以下の価格付け等競争者に対する
略奪的行為,②価格差別,③合併・取得,④輸出商品の再販売価格
維持,⑤並行輸入の阻止など
イ  事業が行われている国の所管官庁が制限的商慣行の規制を行うに際
し,企業はその所管官庁と協議・協力し,情報を提供すること。
(2)  「原則と規則」の規定に関する制限的商慣行についての調査研究,情
報収集等を行うために制限的商慣行政府間専門家会合が設置されていた
が,1996年4月27日~5月11日に開催されたUNCTAD第9回総会に
おいてUNCATD全体の機構改革が行われた結果,当会合は競争法・
政策専門家会合に名称変更された。
 1996年度においては,ジュネーブにおいて,1996年11月13日~15日に
第1回競争法・政策専門家会合が開催され,「原則と規則」に係る研究
を含む競争法・政策についての協議が行われた。
(3)  専門家会合とは別に,「原則と規則」をレビューするための国連会議
が1985年以降,5年毎に開催されている。
4 世界貿易機関(WTO)
 1996年12月にシンガポールにおいて,1995年1月のWTO発足以来初め
ての閣僚会議が開催された。この会議において,WTOの枠組みにおいて
更なる検討に値し得る分野を特定するため,反競争的慣行を含め,貿易と
競争政策の間の相互作用について加盟国が提起する問題を検討するための
作業部会が設置されることとなった。この作業部会の作業については一般
理事会が検討し,二年後に更なる作業をどのように進めるかを決定するこ
ととなった。
5 アジア・大洋州の独占禁止当局との協力(アジア・大洋州独占禁止政策
情報センター)
 アジア・大洋州独占禁止政策情報センターは,独占禁止政策担当者間の
意見交換を目的としてアジア・大洋州地域の15か国(注)が参加し,1979年
からほぼ5年に1回開催されているアジア・大洋州独占禁止政策会議での
決定により,1980年9月に当委員会事務局内に設置されたものである。セ
ンターの目的は,競争政策に関する情報を交換することを通して参加各国
の競争政策を発展させることであり,1996年度においても,競争政策に関
する資料を参加各国に配布した。
(注) 15か国は,オーストラリア,中国,インド,インドネシア,韓国,
マレイシア,モンゴル,ニュージーランド,パキスタン,フィリピ
ン,シンガポール,スリランカ,タイ,ヴィエトナム及び日本であ
る。

第3 海外競争当局に対する技術協力

 近年,競争法・競争政策の重要性が認識されるにしたがって,開発途上国
や旧社会主義圏においても,既存の競争法制を強化する動きや,市場経済化
の一環として新たに競争法制を導入しようという動きが活発になってきてお
り,競争法・競争政策に関する技術協力の必要性が高まっている。このため
当委員会としては,これら諸国の競争当局に対し,研修等による技術協力を
行っている。

1 開発途上国競争政策研修
 1996年8月26日~9月21日に国際協力事業団(JICA)を通じて,ア
ジア・旧ソ連諸国8か国8名(注)の競争当局等の中堅職員を対象として,
「独占禁止法と競争政策」をテーマとした技術研修を実施した。
(注) 8か国は中国,韓国,マレイシア,インドネシア,タイ,モンゴ
ル,スリランカ,アゼルバイジャンである。
2 ロシア競争政策研修
 1996年11月28日~12月14日にはロシアの競争当局(独占禁止政策・新経
済構造推進国家委員会(以下「独占禁止委員会」という。))の職員10名に
対し,「独占禁止法と競争政策」をテーマとした技術研修を実施した。
3 専門家・講師派遣
 外国政府が実施する競争政策に関するセミナー(中国国家工商行政管理
局主催・公正取引促進のための国際セミナー,ロシア独占禁止委員会主
催・移行経済における競争政策第2回国際会議,世銀等共催・グローバル
経済における競争政策会議)への講師の派遣等を行った。
4 その他
 当委員会は,上記以外に,WTO,国連多国籍企業委員会等で行われてい
る討議に対しても,競争政策の観点から積極的に対応することとしている。

第4 海外調査

 我が国の競争政策の運用に資するため,諸外国の独占禁止法制及びその運
用状況についての情報収集や調査研究を行っている。
 1996年度においては,アメリカ・EUその他主要なOECD加盟諸国を中
心として,独占禁止当局の政策動向及び議会における独占禁止関係の立法活
動等について調査を行い,その内容の分析と紹介に努めた(諸外国の競争政
策の動向については,附属資料13参照。)。