第2部 各 論
第1章 独占禁止法制の動き
第1 独占禁止法の改正
合併,株式保有等に関する企業結合規制について,制度の趣旨・目的に照
らしたより効率的かつ機動的な運用,企業の負担軽減等の観点から,届出・
報告対象範囲の縮減,審査手続の整備等を内容とする平成10年独占禁止法改
正法案は,平成10年5月22日に可決・成立し,同月29日に公布され,平成11
年1月1日から施行することとされた(ただし,役員兼任届出制度及び会社
以外の者の株式所有報告書制度の廃止については,公布の日から施行す
る。)。改正の経緯,国会における審議状況及び改正の内容は次のとおりであ
る。
1 | 改正の経緯 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
「規制緩和推進計画について」等の累次の閣議決定において,合併・営 業譲受け等の届出制度,株式所有の報告制度及び役員兼任の届出制度につ いて,制度の趣旨・目的,企業の負担軽減,国際的整合性の確保等の観点 から,裾切り要件の導入,引上げ等を含め,見直しを図ることとされたこ とを受けて,当委員会は,平成7年11月以降,「独占禁止法第4章改正問 題研究会」(座長 館龍一郎 東京大学名誉教授)を開催した。同研究会 においては,経済団体からのヒアリングを含め現行制度の問題点及び見直 しについて検討を行い,さらに,平成8年6月からは,「企業結合規則の 見直しに関する小委員会」(座長 正田彬 上智大学法学部教授(現神奈 川大学短期大学部教授))を開催して検討を行ったところ,当委員会は, 平成9年7月,同研究会が取りまとめた「企業結合規則の手続規定の在り 方に関する報告書」を公表した。同報告書は,①現行の事業年度ごとの株 式所有報告書制度を廃止し,一定の株式所有比率を超えて取得した後に届 出を行う制度とすべきこと及び届出対象会社を縮減すること,②役員兼任 届出制度を廃止すべきこと,③会社以外の者の株式所有報告書制度を廃止 すべきこと,④合併及び営業譲受け等の届出の対象範囲を縮減すべきこ と,⑤合併審査手続の改善を図ることなどを内容とするものである。 また,再改定された規制緩和推進計画においては,これらについて見直 しを行い,平成9年度末までに所要の措置を講ずることとされ,「経済構 造と創造のための行動計画」(第1回フォローアップ:平成9年12月24日 閣議決定)においては,独占禁止法改正法案を平成10年通常国会に提出す ることとされた。 当委員会は,これらの累次の閣議決定や上記報告書を受けて更に検討を 進め,独占禁止法改正法案を取りまとめた。 |
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2 | 独占禁止法改正法案の国会審議 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成10年独占禁止法改正法案は,平成10年2月24日に閣議決定が行わ れ,同日,第142回国会に提出された。同改正法案は,衆議院においては 5月7日に商工委員会に付託され,同月12日に同委員会で,同月14日に本 会議でそれぞれ可決され,参議院に送付された。参議院においては,同月 15日に経済産業委員会に付託され,同月21日に同委員会で可決,同月22日 に本会議でそれぞれ可決・成立した。 |
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3 | 改正の内容 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
主な改正の内容は次のとおりである。
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第2 独占禁止法改正に伴う政令の制定・改正
1 | 平成9年独占禁止法改正法の施行期日を定める政令(平成9年政令第 359号。平成9年6月18日公布,同年12月17日施行。) 平成9年独占禁止法改正法は,平成9年12月17日から施行することとし た。 |
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2 | 独占禁止法施行令の一部を改正する政令(平成9年政令第360号。平成 9年12月12日公布,同月17日施行。)
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3 | 独占禁止法施行令の一部を改正する政令(平成10年政令第236号。平成 10年6月24日公布,平成11年1月1日施行。)
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第3 その他の所管法令の改正
1 | 所管法令 | ||||||||||||
当委員会が所管する法令には,独占禁止法のほか,適用除外法,下請 法,景品表示法及び独占禁止法施行令等の政令がある。また,当委員会 は,独占禁止法第76条の規定に基づき,内部規律,事件の処理手続,届 出,認可又は承認の申請その他の事項に関する必要な手続について規則を 定めることができることとされており,この規定に基づいて公正取引委員 会の審査及び審判に関する規則等が定められている。 |
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2 | 公正取引委員会事務総局組織令の改正 | ||||||||||||
独占禁止法の改正に伴い,公正取引委員会事務総局組織令が次のとおり 改正されている。
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3 | その他の政令の改正 | ||||||||||||
公正取引委員会の審判費用等に関する政令(昭和23年政令第332号)の 改正に伴い,当委員会に出頭を命ぜられた参考人及び鑑定人に支払われる 日当額の上限が引き上げられた(平成10年政令第208号。平成10年6月12 日公布,同年7月1日施行。) |
第4 独占禁止法と他の経済法令等との調整
1 | 法令調整 | ||||||||||||||||||||||||||||
当委員会は,関係行政機関が特定の政策的必要性から経済法令の制定又 は改正を行おうとする際に,これら法令に独占禁止法の適用除外や競争制 限的効果をもたらすおそれのある行政庁の処分に係る規定を設けるなどの 場合には,その企画・立案の段階で,当該行政機関からの協議を受け,独 占禁止法及び競争政策との調整を図っている。 平成9年度において調整を行った主なものは,次のとおりである。
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2 | 行政調整 | ||||||||||||||||||||||||||||
当委員会は,関係行政機関が特定の政策目的により行う行政上の措置等 について,独占禁止法及び競争政策上の問題が生じないよう,当該行政機 関と調整を行うこととしている。 平成9年度において調整を行った主なものは,次のとおりである。
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