第3章 審判及び訴訟

第1  審   判

 平成9年度における審判件数は,平成8年度から引き継いだもの8件,平
成9年度中に審判開始決定を行ったもの7件の合計15件であり,平成9年度
中に,4件(うち,審判審決3件,課徴金納付を命ずる審決1件)について
審決を行い,1件について審判開始決定を取り消す決定を行った(本章第
2,第3及び第4参照)。平成9年度末現在において審判手続係属中の事件
は,下表の10件である。


第2 審判審決

平成6年(判)第2号広島県石油商業組合広島市連合会に対する審決
(1) 被 審 人
(2) 事件の経過
 本件は,当委員会が広島県石油商業組合広島市連合会(以下「市連合
会」という。)に対し独占禁止法第48条第1項の規定に基づき勧告を
行ったところ,市連合会はこれを応諾しなかったので,市連合会に対し
同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審
判手続を行わせたものである。
 当委員会は,平成9年3月31日付けの担当審判官の作成した審決案に
対し市連合会が異議の申立てを行ったので,審決案を調査の上,審決案
の内容と同じ審決を行った(なお,本件は,平成9年6月26日に審決の
取消しの訴えが提起され,平成9年度末現在,東京高等裁判所において
係属中である。)。
(3) 認定した事実の概要
 市連合会は,中小企業団体の組織に関する法律に基づいて設立され
た広島県石油商業組合(以下「県石商」という。)の広島市及びその
周辺地区に所在する11の支部で構成される連合体であり,県石商とは
別に規約を定め,独自の活動を行っており,広島市,広島県廿日市
市,同佐伯郡(大柿町,能美町及び沖美町の地区を除く。),同安芸郡
(江田島町,倉橋町,音戸町,下蒲刈町及び蒲刈町の地区を除く。),
同山県郡は(千代田町及び大朝町の地区を除く。)及び同高田郡向原町
の区域(以下これらの区域を併せて「広島地区」という。)を地区と
し,地区内において石油製品の販売業を営む者を会員としている。
 市連合会には,総会のほか,会長,副会長,支部長及び副支部長で
構成される執行役員会が置かれ,支部ごとに支部総会が置かれてい
る。また,各支部内に所在する会員の給油所が数個の班に編成された
上,班長が置かれて班会が開催されている。
 このほか,市連合会は,必要に応じて,執行役員会の構成員から副
支部長を除いた者により構成される執行部会(「正副会長,支部長
会」と呼ばれることもある。),全体役員会,正副会長会,支部役員
会,店主会等の会合を開催している。
 執行役員会又は執行部会で決定された事項,その他の伝達事項は,
支部,斑会の組織を通じて末端の会員にまで周知徹底が行われてい
る。
 市連合会は,平成4年8月18日,県石商の会議室で開催した執行部
会(以下「本件執行部会」という。)において,同年春以降の普通揮
発油の仕切価格の上昇分の累積額1リットル当たり3円分と同年8月
10日過ぎころ通告された間接経費の増加による仕切価格の上昇額1
リットル当たり1円分を小売価格に転嫁するために,同年9月1日か
ら会員の小売価格を1リットル当たり4円引き上げること及びその価
格引上げの周知徹底を図る決定(以下「本件決定」という。)を行っ
た。また,本件執行部会では,併せて,市連合会の全店主会が同年8
月27日に開かれること,支部の中で活動が最も弱いとみられた東支部
の店主会が同年8月21日に開かれることが確認され,これらの会が本
件決定の周知徹底の場と位置付けられ,これらの会合で,本件決定の
実施についての周知徹底が図られた。
 さらに,市連合会において,上記会合とは別に,本件決定を受けて
支部総会,支部役員会,班会等の諸会合が逐次開かれるなどして,平
成4年9月1日から普通揮発油の小売価格を1リットル当たり4円引
き上げることが会員に周知徹底され,価格改訂の通知書と価格改訂用
掲示ポスターのひな形がファックス通信で送付された。
 市連合会の会員は,大部分の給油所において,本件決定に従い,平
成4年9月1日から一斉に普通揮発油の小売価格を1リットル当たり
4円引き上げている。
(4) 法令の適用
 市連合会は,独占禁止法第2条第2項所定の事業者団体に該当すると
ころ,会員の普通揮発油の小売価格の引上げを決定することにより,広
島地区の普通揮発油の小売分野における競争を実質的に制限しているも
のであって,これは,独占禁止法第8条第1項第1号の規定に違反する
ものである。
(5) 命じた主な措置
 市連合会は,平成4年8月18日に行った普通揮発油(特需と称する
大口需要者向けを除く。)の小売価格の引上げに関する決定を破棄し
なければならない。
 市連合会は,次の事項を会員及び市連合会の地区内の前記製品の需
要者に周知徹底させなければならない。
(ア) 前項に基づいて採った措置
(イ) 今後,会員の前記製品の小売価格を決定せず,その価格は会員が
それぞれ自主的に決める旨
 市連合会は,今後,会員の普通揮発油の小売価格を決定してはなら
ない。
平成6年(判)第6号水田電工株式会社に対する審決
(1) 被 審 人
(2) 事件の経過
 本件は,当委員会が水田電工株式会社(以下「水田電工」という。)
を含む95名に対し独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行った
ところ,水田電工を除く94名はこれを応諾したので,平成6年10月28
日,94名に対し同条第4項の規定に基づき当該勧告と同趣旨の審決を
行ったが,水田電工は勧告を応諾しなかったので,同社に対し,同法第
49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続
を行わせたものである。
  当委員会は,平成9年7月11日付けの担当審判官の作成した審決案
に対し水田電工が異議の申立てを行ったので,審決案を調査の上,審決
案の内容と同じ審決を行った。
(3) 認定した事実の概要
 水田電工及び94名は,いずれも建設業法の規定に基づき建設大臣又
は滋賀県知事の許可を受け,滋賀県の区域において電気工事業を営む
者である。
 滋賀県は,電気工事の大部分を指名競争入札の方法により発注して
おり,指名競争入札に当たっては あらかじめ,指名競争入札に参加
しようとする者のうち,一定の資格要件を満たす者を登録し,この登
録を受けた者の中から指名競争入札の参加者を指名している。
 また,滋賀県が出捐している滋賀県道路公社,滋賀県住宅供給公社
及び財団法人滋賀県下水道公社は,いずれも,電気工事の大部分を指
名競争入札の方法により発注しており,指名競争入札に当たっては,
あらかじめ,滋賀県が前記のとおり登録した者の中から指名競争入札
の参加者を指名している。
 水田電工,94名のうち4社を除く90名及び他の5名(うち4名は個
人事業者で,会社設立された前記4社がそれぞれ営業を承継した。)
は,遅くとも平成2年4月以降,滋賀県,滋賀県道路公社,滋賀県住
宅供給公社及び財団法人滋賀県下水道公社(以下「滋賀県等」とい
う。)が指名競争入札の方法により発注する電気工事(共同施工方式
により施工される工事を除く。以下「滋賀県等発注の特定電気工事」
という。)について,受注機会の均等化及び受注価格の低落防止を図
るため
(ア) 滋賀県等から指名競争入札の参加の指名を受けた者は,幹事役の
連絡員を通じて指名されたことを相互に連絡し合った上,次の方法
により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)
を決定する
 当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」とい
う。)が1名の場合は,その者を受注予定者とする
 受注希望者が複数の場合は,受注希望者の話合いにより受注予
定者を決定する
 前記bにより受注予定者を決定することができないときは,あ
らかじめ構成員間の特殊事情,過去の指名回数等により定められ
た優先順位等に基づき受注予定者を決定する
(イ) 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,
受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
との合意の下に,通常は大津市瀬田町所在のブラザビル内の会議室で
開かれた,水田電工,90名及び5名を主たる構成員とするびわ湖同好
会(以下「同好会」という。)の場において,従前の受注実績を熟知
した同好会幹事役が立ち会う研究会と称する会合を開催するなどし
て,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 なお,94名のうち残りの4社も,それぞれ,前記ウの営業の承継と
ともに上記合意を引き継ぎ,以降,受注予定者を決定し,受注予定者
が受注できるようにしていた。
 平成5年4月6日,同好会は解散されたが,同好会の解散後も,水
田電工及び94名は,同好会の旧幹事役が調整役となって会合を開き,
引き続き,前記ウの合意に基づき受注決定者を決定し,受注予定者が
受注できるようにしていた。
 平成5年6月3日,水田重工及び94名を主たる構成員として近江電
設会(以下「電設会」という。)が設立され,以降,水田電工及び94
名は,電設会の場において,電設会の幹事役が立ち会う研究会と称す
る会合を開催するなどして,引き続き,前記ウの合意に基づき受注予
定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 5名のうち1社は,同好会の運営に異を唱えて前記ウの合意から離
脱し,遅くとも同好会の解散された日の翌日である平成5年4月 7日
以降は,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行
為を行っていない。
 水田電工,94名及び5名のうち1社は,前記ウないしオにより,滋
賀県等発注の特定電気工事の大部分を受注していた。
 本件について,当委員会が独占禁止法に基づき審査を開始したとこ
ろ,水田電工及び94名は,平成5年12月20日,電設会を解散するなど
して,同日以降,前記ウの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予
定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(4) 法令の適用
 水田電工は,94名と共同して,滋賀県等発注の特定電気工事につい
て,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることによ
り,公共の利益に反して,滋賀県等発注の特定電気工事の取引分野にお
ける競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第
2条第6項の不当な取引制限に該当し,同法第3条に違反する。
(5) 命じた主な措置
 水田電工は,次の事項を滋賀県等に通知しなければならない。
(ア) 遅くとも平成2年4月以降94名と共同して行っていた,滋賀県等
が指名競争入札の方法により発注する電気工事について,受注予定
者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた行為を取りや
めている旨
(イ) 今後,滋賀県等が指名競争入札の方法により発注する電気工事に
ついて,94名と共同して受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を
行う旨
 水田電工は,今後,94名と相互に又は他の事業者と共同して,滋賀
県等が競争入札の方法により発注する電気工事について,受注予定者
を決定してはならない。
平成6年(判)第7号水田電工株式会社に対する審決
(1) 被 審 人
(2) 事件の経過
 本件は,当委員会が水田電工を含む30名に対し独占禁止法第48条第2
項の規定に基づき勧告を行ったところ,水田電工を除く29名はこれを応
諾したので,平成6年10月28日,29名に対し,同条第4項の規定に基づ
き,当該勧告と同趣旨の審決を行ったが,水田電工は勧告を応諾しな
かったので,同社に対し,同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決
定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,平成9年7月11日付けの担当審判官の作成した審決案に
対し水田電工が異議の申立てを行ったので,審決案を調査の上,審決案
の内容と同じ審決を行った。
(3) 認定した事実の機要
 水田電工及び29名は,いずれも建設業法の規定に基づき建設大臣又
は滋賀県知事の許可を受け,大津市の区域において電気工事業を営む
者である。
 大津市は,電気工事の大部分を指名競争入札の方法により発注して
おり,指名競争入札に当たっては,あらかじめ,指名競争入札に参加
しようとする者のうち,一定の資格要件を満たす者を登録し,この登
録を受けた者の中から指名競争入札の参加者を指名している。
 水田電工,29名のうち1社を除く28名及び他の2名(2名は個人事
業者で,会社設立された前記1社がそのうち1名の営業を承継し
た。)は,遅くとも平成2年4月以降,大津市が指名競争入札の方法
により発注する電気工事(共同施工方式により施工される工事を除
く。以下「大津市発注の特定電気工事」という。)について,受注機
会の均等化及び受注価格の低落防止を図るため
(ア)  大津市から指名競争入札の参加の指名を受けた者は,運営委員長
と称する幹事役を通じて指名されたことを相互に連絡し合った上,
次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」と
いう。)を決定する
 当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」とい
う。)が1名の場合は,その者を受注予定者とする
 受注希望者が複数の場合は,受注希望者の話合いにより受注予
定者を決定する
 前記bにより受注予定者を決定することができないときは,あ
らかじめ構成員間の特殊事情,過去の指名回数等により定められ
た優先順位等に基づき受注予定者を決定する
(イ)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,
受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
との合意の下に,通常は大津市所在の社団法人滋賀県電業協会会議室
で開かれた,水田電工,28名及び2名を主たる構成員とする大津睦会
(以下「睦会」という。)の場において,従前の受注実績を熟知した
睦会幹事役が立ち会う研究会と称する会合を開催するなどして,受注
予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 なお,29名のうち残りの1社も,前記ウの営業の承継とともに上記
合意を引き継ぎ,以降,受注予定者を決定し,受注予定者が受注でき
るようにしていた。
 水田電工,29名及び個人事業者2名のうち他の1名は,前記ウによ
り,大津市発注の特定電気工事の大部分を受注していた。
 本件について,当委員会が独占禁止法に基づき審査を開始したとこ
ろ,水田電工,29名及び前記エの1名は,平成5年11月 5日,睦会を
解散するなどして,同日以降,前記ウの合意に基づき受注予定者を決
定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
 なお,上記1名は,平成5年12月6日に電気工事業を廃業した。
(4) 法令の適用
 水田電工は,29名と共同して,大津市発注の特定電気工事について,
受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,
公共の利益に反して,大津市発注の特定電気工事の取引分野における競
争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第
6項の不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反する。
(5) 命じた主な措置
 水田電工は,次の事項を大津市に通知しなければならない。
(ア) 遅くとも平成2年4月以降29名と共同して行っていた,大津市が
指名競争入札の方法により発注する電気工事について,受注予定者
を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた行為を取りやめ
ている旨
(イ)  今後,大津市が指名競争入札の方法により発注する電気工事につ
いて,29名と共同して受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を
行う旨
 水田電工は,今後,29名と相互に又は他の事業者と共同して,大津
市が競争入札の方法により発注する電気工事について,受注予定者を
決定してはならない。

第3 課徴金納付命令審決

平成9年(判)第2号協業組合カンセイに対する審決

(1) 被 審 人
(2) 事件の経過
 本件は,当委員会が協業組合カンセイ(以下「カンセイ」という。)
並びに舞鶴設備工業株式会社,株式会社高橋管機工業,北栄工業株式会
社,株式会社千歳水道設備,株式会社フジプラ,株式会社千歳工機,共
同配管工業株式会社及び株式会社長崎工業の8社(以下「8社」とい
う。)が,共同して,千歳市等発注のガス水道配管等工事について,受
注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為が独占禁止
法第3条の規定に違反するとして,平成8年4月23日に審決を行い,平
成9年3月12日,独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納
付命令を行ったところ,カンセイは,これを不服として審判手続の開始
を請求したので,カンセイに対し,独占禁止法第49条第2項の規定に基
づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものであ
る。
 当委員会は,平成10年1月9日付けの担当審判官の作成した審決案に
対し,カンセイが異議の申立てを行ったので,審決案を調査の上,審決
案と同じ内容の審決を行った(本件は,平成10年4月 8日に審決の取消
しの訴えが提起された。)。なお,本審決には少数意見が付記された。
(3) 認定した事実等の概要
課徴金に係る違反行為
 カンセイは,8社と共同して,千歳市等発注のガス水道配管等工事
について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする
ことにより,千歳市等発注のガス水道配管等工事の取引分野における
競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第3
条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2に規定する役
務の対価に係る行為である。
課徴金の計算の基礎
(ア)  カンセイは,水道施設工事業及び管工事業を営む者である。
(イ)  カンセイが違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成
4年4月12日以前であると認められる。
 また,カンセイは,平成7年4月12日,前記違反行為を取りやめ
ており,その後は,その実行としての事業活動はなくなっているも
のと認められる。
 したがって,カンセイについては,前記違反行為の実行としての
事業活動を行った日から当該行為の実行としての事業活動がなくな
る日までの期間が3年を超えることとなるため,独占禁止法の一部
を改正する法律(平成3年法律案42号。以下「平成3年改正法」と
いう。)附則第3項の規定により,実行期間は,平成4年4月13日
から平成7年4月12日までの3年間とみなされる。
(ウ)  力ンセイの前記実行期間における千歳市等発注のガス水道配管等
工事の売上額は,独占禁止法施行令第6条に基づき算定すると,39
件の契約により定められた対価の額を合計した3億2234万3650円で
ある。
 よって,カンセイが国庫に納付しなければならない課徴金の額
は,1934万円である(独占禁止法第7条の2第1項の規定により前
記3億2234万3650円に100分の6を乗じて得た額。ただし,同条第
4項の規定により1万円未満の端数を切り捨てたもの。)。
(4) 法令の適用
 カンセイの行為は,平成3年改正法附則第3項により適用を受ける独
占禁止法第7条の2第1項所定の課徴金の対象となる役務の対価に係る
ものであるから,独占禁止法第7条の2第1項,第4項,独占禁止法
施行令第6条を適用し,カンセイが国庫に納付しなければならない課
徴金の額は,前記(3)イ(ウ)のとおりである。
(5) 命じた措置
 カンセイは,課徴金として1934万円を平成10年5月12日までに国庫に
納付しなければならない。

第4 決   定

 アイジー会に対する審判開始決定の取消しの決定

(1) 被 審 人
(2) 本件の概要
 当委員会は,平成8年4月8日,アイジー会に対し,独占禁止法第48
条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,アイジー会は勧告を応諾
しなかったので,アイジー会に対し,同法第49条第1項の規定に基づき
審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせてきたところ,平
成9年10月 9日,本件審判開始決定を取り消す決定を行った。
(3) 決定の内容
主文
 本件審判開始決定を取り消す。
理由
(ア)  公正取引委員会は,平成8年6月10日,審判開始決定書記載の事
実に基づき審判開始決定を行うとともに,審判官を指定してその後
の審判手続を行わせたところ,被審人は,同手続において,岩手県
防護柵協会は,平成6年6月23日に解散しており,アイジー会に名
称を変更したものでもないから,アイジー会は存在しないと主張し
た。当委員会は,審理の結果,本件全証拠に照らして,アイジー会
の存在を認めるに至らなかった。
(イ)  よって,当委員会は,本件審判開始決定を取り消すことが相当で
あると認める。