第14章 景品表示法に関する業務
第1 概 説
景品表示法は,独占禁止法の不公正な取引方法の一類型である不当な顧客
誘引行為のうち過大な景品類の提供と不当な表示をより効果的に規制するこ
とにより,公正な競争を確保し,一般消費者の利益を保護することを目的と
して,昭和37年に制定された。
景品表示法は,不当な顧客の誘引を防止するため,景品類の提供につい
て,必要と認められる場合に,公正取引委員会告示により,景品類の最高
額,総額,種類,提供の方法等について制限又は禁止し(第3条),また,
商品又は役務の品質,規格その他の内容又は価格その他の取引条件について
一般消費者に誤認される不当な表示を禁止している(第4条)。これらの規
定に違反する行為に対し,当委員会は排除命令を,都道府県知事は指示を行
い,これを是正させることができる(第6条及び第9条の2)。
さらに,公正競争規約の制度が設けられており,事業者又は事業者団体
は,過大な景品類の提供や不当な表示を防止するため,一定の自主的なルー
ルを当委員会の認定を受けて設定することができる(第10条)。
第2 告示・運用基準の改正
1 | 景品関係 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
景品類の提供の制限は,景品付販売の実態が複雑多岐であり,法律で画 一的にこれを定めることは不適当であることから,当委員会が,取引の実 態に合わせ,必要に応じて告示により制限又は禁止することができるとさ れている。 現在,当委員会が景品表示法第3条の規定に基づいて景品類の提供の制 限又は禁止を行っているものとしては,一般的なものとして,「懸賞によ る景品類の提供に関する事項の制限」(昭和52年公正取引委員会告示第3 号。以下「懸賞景品告示」という。)及び「一般消費者に対する景品類の 提供に関する事項の制限」(昭和52年公正取引委員会告示第5号。以下 「総付景品告示」という。)がある。また,特定業種についての景品類の堤 供に関する事項の制限(以下「業種別告示」という。)が定められてお り,平成10年4月末現在,「新聞業」,「雑誌業」,「家庭電気製品業」,「不 動産業」及び「医療用医薬品業及び衛生検査所業」について業種別告示が 定められている。 また,独占禁止法に基づくものとして,「広告においてくじの方法等に よる経済上の利益の提供を申し出る場合の不公正な取引方法」(昭和46年 公正取引委員会告示第34号。以下「オープン懸賞告示」という。)がある。 当委員会は,景品規制について,懸賞景品告示に係る上限金額の引上 げ,総付景品告示に係る上限金額の撤廃,事業者景品告示の廃止,百貨店 業における特定の不公正な取引方法第8項の削除,オープン懸賞告示に係 る上限金額の引上げ及び規制対象範囲の縮減・明確化を行うための景品規 制の一般規定に係る関係告示及び運用基準の改正を,平成8年4月1日か ら実施した。この一般規定の見直し・明確化に引き続いて,29の業種別告 示についても見直しを行い,平成10年4月までに,24業種について告示を 廃止し,5業種について告示を改正した。 平成9年4月以降,廃止・改正を行った業種別告示は,以下のとおりで ある。 |
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2 | 表示関係 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
景品表示法第4条第1号及び第2号の規定は,品質・規格等又は取引条 件に関して,実際のもの又は競争関係にある他の事業者に係るものよりも 著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される表示を禁止してい る。このほか,これらの規定によっては的確に律しきれず,かつ,一般消 費者の適正な商品選択を阻害するおそれのある表示については,当委員会 が同条第3号の規定に基づいて告示により不当な表示を指定し,これを禁 止することができるとしている。 現在,当委員会が景品表示法第4条第3号の規定に基づいて指定してい る不当な表示は,「無果汁の清涼飲料水等についての表示」(昭和48年公正 取引委員会告示第4号),「商品の原産国に関する不当な表示」(昭和48年 公正取引委員会告示第34号)等5件である。 |
第3 違反被疑事件の処理
平成9年度において当委員会で違反被疑事件として処理した事件のうち,
排除命令を行ったものは,景品関係4件,表示関係4件の合計8件(平成8
年度は6件)であり,警告を行ったものは,景品関係166件,表示関係293件
の合計459件である(第1表)。
平成9年度中に処理した事件についてみると,景品に関する事件として
は,海外旅行等を景品類として提供した違反事件が多く,特に,高額の賞品
が提供される事件については,事業者が景品規制の対象には当たらないと誤
解して企画した場合が多かった。表示に関する事件としては,不当な二重価
格表示が最も多かったほか,商品の品質・内容及び商品・役務の効能効果に
関する不当表示事件があった。
また,これらの事件処理に当たっては,過大な景品付販売や不当な表示が
競争事業者に波及することが多い点に留意し,当該事業者を規制するだけで
なく,必要に応じて関係業界団体を通じ,他の事業者に対してもこれと同種
の違反行為を行わないよう要望を行っている。
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1 | 排除命令 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成9年度において行った8件の排除命令の内訳は,新聞販売業者によ る過大な景品提供事件4件,痩身効果を標榜するいわゆる健康食品に関す る不当表示事件4件である(第2表)。 ![]() |
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2 | 警 告 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成9年度において行った459件の警告の内訳は,過大な景品類の提供 に関するもの166件,不当な表示に関するもの293件であった。 その主なものは,次のとおりである。 |
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3 | 要 望 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成9年度において行った要望は次のとおりである。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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第4 公正競争規約制度
1 | 概 要 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
公正競争規約(以下「規約」という。)は,事業者又は事業者団体が, 景品表示法第10条の規定に基づき,景品類又は表示に関する事項につい て,当委員会の認定を受けて,不当な顧客の誘引を防止し,公正な競争を 確保するために自主的に設定するルールである。規約の認定に当たって は,一般消費者及び関連事業者の利益を害するものであってはならないこ とから,当該業界の意見だけでなく,関連事業者,一般消費者及び学識経 験者等の意見がこれに十分反映されるよう努めている。 平成10年3月末現在における規約の認定件数は,景品関係48件,表示関 係68件,計116件となっている(附属資料11-2表及び11-3表)。 また,業界における取引実態の変化,消費者の意識の変化,関係法規の 改正等を踏まえ,現行の規約の内容について適宜見直すよう,その運用機 関に対し指導を行っている。 |
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2 | 新たに認定した規約 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成9年度において新たに認定した規約はなかった。 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
3 | 規約の改正 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
平成9年度において改正の認定を行った規約は45件(景品規約32件,表 示規約13件)である。これらはすべて景品規制の見直し・明確化に係るも のである。 |
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4 | 規約の廃止 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
規約の見直しを行った結果,景品について一般規定と異なる別途の制限 を設けておく必要がないとの理由により,平成9年度は,以下の2規約に ついて,規約運用機関から廃止する旨の報告があった。 |
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5 | 公正取引協議会等に対する指導 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
当委員会は,公正取引協議会(規約の運用を目的として,規約に参加す る事業者及び事業者団体により結成されているもの。以下「協議会」とい う。)に対し,規約の適正な運用を図るため,協議会の行う事業の遂行, 事業の処理等について指導を行っている。 平成9年度においては,協議会が行った規約の遵守状況調査,商品の試 買検査会,審査会等について必要な指導を行うとともに,各部道府県の 行った規約対象商品の試買検査の結果について,協議会に対し,問題点の 処理,改善等について指導を行った。 また,協議会は,規約の実施上必要な事項について,規約の定めるとこ ろにより,施行規則,運用基準等を設定し,規約の円滑な運用を期してい るが,これら施行規則等の設定・変更に当たっても,当委員会は積極的に 指導を行っている。 なお,各協議会の業務の推進及び連携・協力を密接にし,規約の適正か つ円滑な施行を図るため,社団法人全国公正取引協議会連合会に対して, ①規約遵守状況調査,②協議会等の会員に対する研修業務,③規約制度の 普及・啓発業務及び④強調表示に関する実態調査について委託を行った。 また,平成10年1月28日に公正取引協議会事務局長会議を開催し,各協 議会共通の問題点の検討,事務処理の改善の検討等を行った。 |
第5 都道府県における運用状況
1 | 概 要 |
平成9年度において都道府県が処理した景品表示法違反事件は801件で ある。違反行為の未然防止に大きな役割を果たしている事前相談の件数は 2,350件であり,その内容をみると,景品関係では,提供できる景品類の 限度額に関する相談が多く,表示関係では,二重価格表示や食品などの表 示に関する相談が多かった。 |
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2 | 違反事件の処理状況 |
平成9年度においては,都道府県知事が景品表示法第9条の2の規定に 基づいて行った指示はなかった。また,注意の件数は801件(景品229件, 表示572件)となっており,このうち過大な景品関係では,懸賞景品告示 及び総付景品告示違反事案が,不当表示関係では,価格表示に関する事案 が相当数を占めている。 |
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3 | その他の活動 |
公開試買検査会については,すべての都道府県が開催しており,その対 象となった品目は,食品類が中心となっている。これを品目別にみると表 示の公正競争規約が設定されているものでは,食肉,観光土産品 チュー インガム等が,また,設定されていないものでは,キャンデー,マカロニ 類,レトルトパウチ食品等が取り上げられている。 また,各都道府県は,広報用パンフレットの作成,一般消費者・事業者 等に対する説明会の開催等景品表示法に関する普及・啓発活動に力を入れ るとともに,市町村等関係公的機関との協力体制の整備に努めている。 |
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4 | 都道府県に対する指導 |
当委員会は,都道府県における景品表示法の円滑・適正な運用を確保す るために,運用解釈の明確化,全国都道府県景品表示法主管課長会議及び ブロック別都道府県景品表示法担当者連絡会議の開催,初任者研修会の開 催,都道府県が行う公開試買検査会及び景品表示法の説明会への出席その 他経常的に連絡・指導を行っている。 |