1 |
経済協力開発機構(OECD) |
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(1) |
競争政策委員会 |
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ア |
競争政策委員会(Committee on
Competition Law and Policy)
は,OECDに設けられている各種委員会の一つで,1961年12月に設
立された。我が国は,1964年のOECD加盟以来,その活動に参加し
てきている。競争政策委員会は,原則として年2回本委員会を開催
し,また,その下に各種の作業部会を設けて,随時会合を行ってい
る。本委員会では,加盟各国の競争政策に関する年次報告が行われて
いるほか,各作業部会の報告書の検討,その時々の重要問題について
討議が行われている。
本年度における会議の開催状況は,次のとおりである。
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イ |
平成9年10月の第72回本委員会においては,ハンガリー,ポルトガ
ル,オランダ,フランス,EU,オーストリアが年次報告に基づいて
説明を行ったほか,我が国及びイタリアを審査担当国としてスイスの
年次報告に対する国別審査が行われた。また,知的所有権と競争政策
に関するラウンドテーブルが開催された。 |
ウ |
平成10年2月の第73回本委員会においては,規制改革フォローアッ
プについて検討が行われた。 |
エ |
競争政策委員会に属する各作業部会の本年度における主要な活動
は,次のとおりである。 |
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(ア) |
競争と貿易に関する合同会合では,競争政策委員会の作業部会と
貿易政策委員会の作業部会が,合同で,競争政策と貿易政策の連関
についての検討を行っている。平成9年6月会合においては,垂直
的取引制限,適用除外,競争法の下における企業の権利などについ
て検討が行われた。平成10年の2月会合においては,垂直的取引制
限,適用除外,競争法下の外国事業者の権利などについて検討が行
われた。 |
(イ) |
第2作業部会では,規制制度改革について議論が行われた。平成
9年6月会合においては空港発着枠の配分及び空港サービスにおけ
る競争について,同年10月会合においては鉄道について,平成10年
の2月会合においては銀行業について,それぞれミニラウンドテー
ブル討議が開催された。 |
(ウ) |
第3作業部会では,価格カルテルや入札談合等ハードコア・カル
テルに対する取組を強化する観点から,競争当局間の協力の推進が
取り上げられ,その結果,平成10年3月25日,「ハードコア・カル
テルに対する効果的な措置に関する理事会勧告」が採択された。理
事会勧告は,「法律の収れん及び有効化」及び「国際協力及び礼
譲」の2部から構成されており,それぞれの骨子は次のとおりであ
る。

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(2) |
消費者政策委員会 |
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ア |
消費者政策委員会(Committee on Consumer
Policy)は,加盟
国の消費者行政についての情報交換及び調査・検討のための国際協力
の場として,昭和44年11月に期限付き(昭和47年末まで)で設置する
こととされた。この期限は,その後,6回の延長決定を経て平成10年
末までとなっている。消費者政策委員会は,通例年2回本委員会を開
催するほか,各種の作業部会等を設けて随時会合を行っている。
平成10年3月現在は,電子商取引における消費者保護に関するプロ
ジェクトチームが結成されている。 |
イ |
平成9年9月11日には,規制制度改革,電子商取引等を議題として
第54回本委員会が開催されたほか,平成10年3月18日には,電子商取
引における消費者保護に関するプロジェクトチームによる会合が開催
された。 |
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2 |
世界貿易機関(WTO) |
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平成7年4月のマラケッシュ閣僚会議議長サマリーでは,貿易とその他
の分野(競争,投資等)との相互関係を分析することの重要性が強調され
た。その後,これらの問題についてはシンガポール閣僚会議で議論され,
貿易と競争については,①貿易と競争政策の相互作用についての問題を検
討するための作業部会を設置すること,②2年間の期限で(すなわち平成
10年末まで)検討を行った上で,その後の進め方について決定すること,
③この分野における多数国間の規律に関し,将来の交渉を行うかどうかは
WTO加盟国における明示的なコンセンサスによる決定が必要であること
等が決まった。
これを踏まえ,平成9年5月には貿易と競争政策の相互作用に関する作
業部会が設置された。その後,具体的な作業内容に関して議論が行われ,
結果として,同年7月に,競争政策が貿易に与える影響及び貿易措置が競
争に与える影響の双方の観点からの作業内容について意見の一致をみた。
これに基づき,平成9年度においては,次の4回の作業部会が開催されて
いる。
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3 |
アジア太平洋経済協力(APEC) |
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(1) |
競争政策・規制緩和ワークショップ |
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APECでは,平成7年から競争政策に関する検討が行われている。
平成9年度においては,カナダのケベックにおいて,平成9年5月18
日及び19日に競争政策・規制緩和ワークショップが開催され,「規制緩
和へのアプローチ」,「自然独占」,「専門職規制」,「効果的で適切な競争
法には何が必要か」及び「競争政策と貿易・投資関連との連関」をテー
マとして活発な意見交換が行われた。 |
(2) |
大阪行動指針とマニラ行動計画の策定 |
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ア |
平成6年のインドネシア・ボゴールでの非公式首脳会議において,
アジア太平洋地域の貿易・投資の自由化を図るため,「先進経済は
2010年までに,開発途上経済は2020年までに,アジア太平洋における
自由で開かれた貿易及び投資という目標の達成を完了する」こと等を
内容とする「ボゴール宣言」が採択された。 |
イ |
続く平成7年に大阪で開催された第7回閣僚会議(11月16日,17
日)において,「ボゴール宣言」の目標を具体化するための「行動指
針」が採択された(大阪行動指針)。 |
ウ |
平成8年は,主として「大阪行動指針」に基づく具体的な分野別の
行動計画の策定作業が行われ,フィリピンのマニラで開催された第8
回閣僚会議(11月22日,23日)において,「マニラ行動計画」が採択
された。「マニラ行動計画」は,APEC参加国・地域が協調して取
り組む「共同行動計画」と各国・地域が自主的に取り組む「個別行動
計画」とがあり,競争政策分野では,「共同行動計画」として技術協
力や政策対話,情報交換の実施等が掲げられている。また,「個別行
動計画」として,我が国は独占禁止法違反行為に対する厳正な対処等
競争政策の一層積極的な展開や技術支援の実施等を掲げている。 |
エ |
平成9年には個別行動計画の改定を行い,新たに競争政策支援のた
めのAPECメンバーに対する専門家派遣の実施等が掲げられた。 |
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(3) |
APEC/PFP競争政策セミナーの開催 |
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ア |
APECにおける経済・技術協力を一層効果的に推進するためのメ
カニズムである「前進のためのパートナー(PFP:Partners
for
Progress)」の一環として,日本とタイとの共催で競争政策に関する
研修プログラムが平成8年度から5か年計画で実施されている。 |
イ |
平成9年度においては,第1回(平成8年度)に続く第2回目の試
みとして,2月9日~14日,タイのバンコク及びパタヤにおいて,
APECの開発途上国・地域の課長・課長補佐クラスを主な対象とし
たセミナーを開催した。 |
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4 |
国際連合貿易開発会議(UNCTAD) |
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UNCTADでは,開発途上国の貿易と開発に関する多岐にわたる討議
が行われているが,特に当委員会に関係があるものとして,「制限的商慣
行」の問題がある。 |
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(1) |
昭和55年の第35回国連総会において,「制限的商慣行規制のための多
国間の合意による一連の衡平な原則と規則」(以下「原則と規則」とい
う。)が,国連加盟国に対する勧告として採択された。この「原則と規
則」は,国際貿易,特に開発途上国の国際貿易と経済発展に悪影響を及
ぼす制限的商標行を特定して,規制することにより,国際貿易と経済発
展に資することを目的としており,その主な内容は次のとおりである。
ア |
国際貿易,特に開発途上国の国際貿易と経済発展に悪影響を及ぼす
ことになり,市場アクセスを制限し,又は競争を不当に制限すること
となる場合に,
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(ア) |
競争企業間の協定,取決めによる次のような行為を行わないこ
と。 |
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①価格協定,②入札談合,③市場・顧客分割,④販売・生産数量割
当など |
(イ) |
市場支配力の優越的地位を濫用することにより次のような行為・
行動を行わないこと。 |
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①競争者を排除するための原価以下の価格付け等による競争者に対
する略奪的行為,②価格差別,③合併・取得,④輸出商品の再販売
価格維持,⑤並行輸入の阻止など |
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イ |
事業が行われている国の所管官庁が制限的商慣行の規制を行うに際
し,企業はその所管官庁と協議・協力し,情報を提供すること。 |
「原則と規則」の規定に関する制限的商慣行についての調査研究,
情報収集等を行うために制限的商慣行政府間専門家会合が設置されて
いたが,平成8年4月27日~同年5月11日に開催されたUNCTAD
第9回総会においてUNCTAD全体の機構改革が行われた結果,当
会合は競争法・政策専門家会合に名称変更された。
平成9年度においては,ジュネーブにおいて,平成9年11月24日~
26日に第2回競争法・政策専門家会合が開催され,「原則と規則」に
係る研究を含む競争法・政策についての協議が行われた。 |
(2) |
専門家会合とは別に,「原則と規則」をレビューするための国連会
議が,1985年以降,5年ごとに開催されている。 |
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5 |
アジア・大洋州の競争当局との協力(アジア・大洋州独占禁止政策情報
センター) |
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アジア・大洋州独占禁止政策情報センターは,競争政策担当者間の意見
交換を目的としてアジア・大洋州地域の15か国(注)が参加し,昭和54年
からほぼ5年に1回開催されているアジア・大洋州独占禁止政策会議の決
定により,昭和55年9月に当委員会事務局内に設置されたものである。セ
ンターの目的は,競争政策に関する情報を交換することを通して参加各国
の競争政策を発展させることであり,平成9年度においても,競争政策に
関する資料を収集し,参加各国に配布した。 |
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(注) |
15か国は,オーストラリア,中国,インド,インドネシア,韓
国,マレイシア,モンゴル,ニュー・ジーランド,パキスタン,
フィリピン,シンガポール,スリ・ランカ,タイ,ヴィエトナム
及び日本である。 |
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