(1) |
オーストラリア |
|
オーストラリアの競争法である取引慣行法は1974年に制定されたもの
であるが,1995年に全面的な改正が行われた。この改正により,連邦政
府と州・準州政府の競争法の統一が図られ,同国内のすべての事業者が
同一の競争法規の下に服することとなった。当該改正に併せて,同法の
施行機関である取引慣行委員会の競争・消費者委員会への改組,取引裁
判所の競争裁判所への名称変更,諮問機関である国家競争評議会の設
置,州政府企業(準州を含む。)に対する適用などが盛り込まれたほ
か,適用除外規定の整理,再販売価格維持の禁止対象としてのサービス
の追加等の改正が行われた。
取引慣行法は,1997年7月からの電気通信事業に対する規制制度の廃
止に伴う改正が行われ,電気通信事業に係る反競争的行為規制及び電気
通信事業へのアクセスに関する規定が盛り込まれた。 |
(2) |
インド |
|
インドの競争法は,1969年独占及び制限的取引慣行法である。同法
は,資源の広範囲な分配と,富と権力が分散した経済体制の確立を基本
方針とし,独占的・制限的取引慣行,不公正な取引慣行を規制してい
る。施行機関である独占・制限的慣行委員会は,被疑事件を調査し,公
共の利益に反する行為が存在する場合,独占的取引慣行については政府
に対して改善を求める答申を提出し,制限的取引慣行と不公正な取引慣
行については当該行為の禁止を命じることができる。このほか,被害者
の申立てにより損害賠償を命じることができる。 |
(3) |
モンゴル |
|
モンゴルは,1992年に新憲法を採択し,市場経済への移行に伴う競争
促進政策の一環として,1993年に不公正競争禁止法を制定・施行した。
同法は,市場原理の下での経済主体の競争を原則として,国の経済活動
に対する監督権限を制限している。具体的には,市場支配的地位を有す
る経済主体による濫用行為を禁止するとともに,同様に経済主体による
競争制限的協定(入札談合など)等を禁止している。施行機関である大
蔵省は,違反被疑行為を調査し,必要な排除措置を命じることができ
る。 |
(4) |
ニュー・ジーランド |
|
ニュー・ジーランドの競争法である商業法は1975年に制定されたもの
であるが,1986年に全面的な改正が行われ,さらに,1996年には,国内
市場に影響を及ぼす海外での合併規制等に関する改正が行われた。同法
は,カルテル,再販売価格維持行為,市場支配的地位の濫用等の制限的
取引慣行,競争制限的な企業結合等を規制している。施行機関である商
務委員会は,違反被疑事件を調査して違反行為が認められた場合,裁判
所に提訴する。裁判所は,違反行為の差止めを命じることができるほ
か,法人に対し最高500万ニュー・ジーランド・ドル,個人に対しては
最高50万ニュー・ジーランド・ドルの過料を科すことができる。 |
(5) |
パキスタン |
|
パキスタンの競争法である1970年に制定された独占及び制限的取引慣
行法は,過度の経済力の集中,不当な独占力及び不当な制限的取引慣行
を規制している。施行機関である独占規制庁は,同法の施行に必要な調
査・情報収集を行い,公共の利益に反する行為が存在する場合には,当
該行為の中止,所有株式の売却など必要な措置を命じることができる。 |
(6) |
スリ・ラン力 |
|
スリ・ランカの競争法である1987年に制定された公正取引委員会法
は,独占状態,企業結合及び反競争的行為を規制している。施行機関で
ある公正取引委員会は,調査・情報収集を行い,公共の利益に反する行
為が存在する場合には,当該行為の差止め,契約の修正,所有株式の売
却等必要な措置を命じることができる。 |
(7) |
タイ |
|
タイの競争法である1979年に制定された価格統制及び独占禁止法は,
不公正な価格統制を規制する消費者保護規定と,独占及び制限的取引慣
行による不当利得の排除を目的とした禁止規定等から構成されている。
施行機関である価格統制及び独占禁止委員会は,監視対象商品及び監視
対象事業の指定・公表とそれらに対する監視・監督等の権限を有してい
る。
なお,タイにおいては,価格統制及び独占禁止法に代わるカルテル規
制,市場支配的地位の濫用規制,合併規制,新しい施行機関の設置を含
む本格的な競争法案が審議されている。 |
(8) |
インドネシア |
|
インドネシアでは,現在,経済諸制度の大改革が行われており,反競
争的行為の禁止,合併規制等を含む本格的な競争法の導入が検討されて
いる。
なお,インドネシアは,経済政策として公正競争の創出,有害な経済
活動の防止のための措置を採っている。また,競争政策に関係する制度
としては,原産地に関する虚偽表示等が刑法の処罰対象となるほか,計
量法,産業法等による不公正な取引慣行の規制が実施されている。 |
(9) |
マレイシア |
|
マレイシアは,1983年以降,国有企業の民営化と規制緩和を積極的に
推進しており,競争政策を担当する国内取引消費者問題省は不公正な取
引方法や市場構造規制を内容とする競争法の策定を準備中である。ま
た,個別法規によって競争政策上の問題に対処しており,例えば,産業
調整法では,政府が特定産業の競争に有害な影響を及ぼすと予見される
行為を排除できると規定しているほか,取引表示法は不当表示を禁止
し,年割賦購入取引における不公正な取引を規制している。 |
(10) |
フィリピン |
|
フィリピンにおいては,改正刑法により,カルテル,自由競争を制限
する独占及び合法的な通商を阻害する行為を規制している。告発,提
訴,賠償請求等の手続については,独占及び結合に関する法律に規定さ
れている。現在,専門の施行機関はなく,司法省が刑事事件として対処
しているが,関税委員会を組織変更して施行機関とすることが検討され
ている。 |
(11) |
シンガポール |
|
シンガポールには,体系的な競争法はないが,消費者保護法の中に虚
偽表示を規制する規定がある。施行機関は,貿易産業省内の消費者保護
長官である。 |
(12) |
中国 |
|
中国では,社会主義市場経済の導入に伴う施策として,1993年に不当
競争禁止法が制定された。同法は本格的な競争法とはいえないが,国家
工商行政管理局公平交易局を施行機関として,入札談合,不公正取引
(不当廉売,抱き合わせ販売,不当表示等),競争制限的行為(政府機
関による行為を含む。)等,11類型の行為を「不当競争行為」と定め,
禁止している。 |
(13) |
ヴィエトナム |
|
ヴィエトナムは,競争法を有していないが,1986年以降,市場経済の
導入を図っており,国営企業の改革,民間企業の活性化等の施策を実施
している。
なお,ヴィエトナム政府は,現在,法的・組織的な整備を行うことを
検討している。 |