第2 勧告等の法的措置

 平成10年度は勧告27件を行った。勧告27件のうち,1件については審判手
続を開始し(関係人の1社について手続を開始した1件を除く。),その他に
ついては勧告審決を行った。平成10年度に法的措置を採った27件のうち,審
判手続継続中である1件を除く26件について違反法条をみると,独占禁止法
第3条前段(私的独占)違反1件,第3条後段(不当な取引制限)違反18
件,第8条第1項第4号(事業者団体による構成員の機能活動の制限)違反
1件及び第19条違反(不公正な取引方法)違反6件となっている。
 法的措置を採った上記26件の概要は,以下のとおりである。

独占禁止法第3条前段違反事件
 
関係人
違反事実等
(ア)
(a)  エム・ディ・エス・ノーディオン・インコーポレイテッド
(以下「ノーディオン」という。)に放射性同位元素であるモ
リブデン99の原料を供給しているカナダ所在のアトミック・エ
ナジー・オブ・カナダ・リミテッド(以下「AECL」とい
う。)の原子炉が老朽化していることから,これに代わる新規
原子炉の建設等が計画されていたところ,平成7年1月ころま
でに,ノーディオンは,AECLとの間で,当該計画につい
て,次の事項について合意する見込みとなった。
(ⅰ)  AECLは,放射性同位元素製造専用の原子炉2基等を建
設すること
(ⅱ)  ノーディオンは,前記原子炉等の所有権を取得するととも
に,同原子炉の建設等に要する資金の大部分を負担すること
(b)  このため,ノーディオンは,当該計画の実現と投資資金回収
のための方策を検討し,平成7年1月ころから3月ころまでの
間に開催したエグゼクティブ・マネージメント会議において,
そのための方策としてモリブデン99の販売数量を確保すること
とし,そのため世界のすべての主要な顧客との間で,顧客が必
要とするモリブデン99の全量をノーディオンから排他的に購入
する旨の規定を含む長期間の契約(以下「排他的購入契約」と
いう。)を締結することを決定した。
(c)  ノーディオンは,平成7年6月ころ,AECLと,前記(a)(i)
及び(ⅱ)の内容で合意した。
(a)  ノーディオンは,前記a(b)の決定に基づき,平成7年9月こ
ろ,日本メジフィジックス株式会社(以下「日本メジフィジッ
クス」という。)及び株式会社第一ラジオアイソトープ研究所
(以下「第一ラジオ」という。)に対して,それぞれ,モリブ
デン99について,10年間の排他的購入契約を締結することを提
案し,両社と契約締結交渉を開始した。
(b)  ノーディオンは,日本メジフィジックスから,ノーディオン
が提案した契約書案のうち「日本メジフィジックスが取得,使
用,消費又は加工するモリブデン99の全量をノーディオンから
排他的に購入しなければならない」旨の規定が独占禁止法の規
定に違反することが懸念されるので,同契約書案から「排他的
に」の意味をもつ「exclusively」の文言を削除するよう要請
を受けた。ノーディオンは,当該文言を削除しても日本メジ
フィジックスがモリブデン99の全量をノーディオンから購入す
る義務を負うことに変わりはないことから,当該要請を受け入
れ,日本メジフィジックスとの間で,平成8年8月26日に,東
京都に所在する日本メジフィジックスの東京本部において,
「日本メジフィジックスが取得,使用,消費又は加工するモリ
ブデン99の全量をノーディオンから購入しなければならない」
旨の規定を含む平成17年末までの10年間の契約を締結した。
(c)  第一ラジオは,従来,ノーディオンによるモリブデン99の価
格の大幅な引上げを受け入れざるを得なかったため,モリブデ
ン99を複数の供給先から購入することを検討し,平成6年ころ
からノーディオンに次ぐモリブデン99の製造販売業者であるベ
ルギー王国所在のアンスティテュ・ナシオナル・デ・ラディオ
エレマン(以下「IRE」という。)との間で取引契約締結の
ための交渉を行い,平成7年7月ころ,IREに対し,一定の
条件が満たされればモリブデン99の長期購入契約を締結する用
意がある旨を伝えた。
 その後,同年9月ころ,ノーディオンから排他的購入契約の
締結の提案が行われたことから,第一ラジオは,ノーディオン
に対し,購入契約を非排他的なものとするよう繰り返し要請し
た。しかし,ノーディオンは,前記aの計画を実現するために
は世界のすべての主要な顧客との間に10年間の排他的購入契約
を締結する必要があるとして,当該要請を受け入れなかった。
このため,第一ラジオは,排他的購入契約の締結に応じない場
合,ノーディオンから購入するモリブデン99の取引条件におい
て不利益を被るおそれがあること等を懸念して,平成8年2月
ころ,ノーディオンとモリブデン99の排他的購入契約を締結す
ることとした。
 第一ラジオは,同年3月ころ,ノーディオンとモリブデン99
の排他的購入契約を締結することとした旨をIREに伝え,I
REとの間のモリブデン99の取引契約締結のための交渉を取り
やめた。
 ノーディオンは,第一ラジオとの間で,同年8月27日に,東
京都に所在する第一ラジオの本社において,「第一ラジオが取
得,使用,消費又は加工するモリブデン99の全量をノーディオ
ンから排他的に購入しなければならない」旨の規定を含む平成
17年末までの10年間の契約を締結した。
(イ)  ノーディオンの前記(ア)bの行為により,IREを始めとする他の
モリブデン99の製造販売業者は,平成17年末まで,日本メジフィ
ジックス及び第一ラジオとモリブデン99の取引ができない状況と
なった。
(ウ)  本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,ノーディオンは,平成10年3月24日付けで第一ラジオ
との間で前記契約を修正し,同社に対し,その取得,使用,消費又
は加工するモリブデン99の全量をノーディオンから排他的に購入す
る義務を課すことを取りやめ,また,同年6月18日付けで日本メジ
フィジックスとの間で前記契約を修正し,同社に対し,その取得,
使用,消費又は加工するモリブデン99の全量をノーディオンから購
入する義務を課すことを取りやめた。
排除措置
 ノーディオンに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  次のa及びbの事項をIREに,次のbの事項を日本メジフィ
ジックス及び第一ラジオに,それぞれ通知すること。
 平成8年8月に日本メジフィジックス及び第一ラジオとそれぞ
れ締結したモリブデン99の取引に関する契約を修正し,これらの
者に対し,その取得,使用,消費又は加工するモリブデン99の全
量をノーディオンから購入する義務を課すことを取りやめた旨
 今後,日本メジフィジックス又は第一ラジオに対し,その取
得,使用,消費又は加工するモリブデン99の全量をノーディオン
から購入する義務を課すことにより,他の事業者のモリブデン99
の販売に関する事業活動を排除しない旨
(イ)  ノーディオンは,今後,我が国におけるモリブデン99の需要者に
対し,その取得,使用,消費又は加工するモリブデン99について,
他の事業者から購入させないようにすることにより,他の事業者の
モリブデン99の販売に関する事業活動を排除しないこと。
独占禁止法第3条後段違反事件
(1) 株式会社アスムコンストラクションほか140名に対する件(平成10年
(勧)第9号)

関係人





違反事実等
(ア)  関係人141名のうち,有限会社宮崎を除く140名及び宮崎組こと宮
崎久信(以下「宮崎組」という。)は,遅くとも平成6年4月1日
以降(株式会社池田工業にあっては平成6年7月12日ころ以降,株
式会社平田組にあっては平成6年7月18日ころ以降,有限会社三興
建設工業にあっては平成6年10月25日ころ以降,有限会社丸吉建設
にあっては平成7年5月30日ころ以降,株式会社山村組にあっては
平成7年6月30日ころ以降,株式会社谷内組にあっては平成7年12
月6日ころ以降,清次建設こと岡本聰にあっては平成8年5月29日
ころ以降,有限会社ミヤジマ工務店にあっては平成8年5月30日こ
ろ以降,株式会社北星土木にあっては平成8年6月3日ころ以降,
有限会社泉野建設及び有限会社小野組にあっては平成9年7月4日
ころ以降。以下同じ。),金沢市が指名競争入札の方法により発注す
る下水道部所管の土木一式工事(共同施工方式により施行される工
事を除く。以下「金沢市発注の特定土木工事」という。)につい
て,受注価格の低落防止を図るため,
 金沢市から指名競争入札の参加の指名を受けた場合は,次の方
法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」とい
う。)を決定する
(a)  当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」と
いう。)が1名のときは,その者を受注予定者とする
(b)  受注希望者が複数のときは,既受注工事との継続性又は関連
性,工事場所等を勘案し,受注希望者の間の話合い等により,
受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注することができるように
協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにしていた。
 有限会社宮崎は,宮崎組の営業を承継するとともに前記合意を引
き継ぎ,以後,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよう
にしていた。
(イ)  141名は,前記aにより,平成6年4月1日以降,金沢市発注の
特定土木工事のほとんどすべてを受注していた。
(ウ)  平成9年9月10日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定
に基づき審査を開始したところ,141名は,同日以降,前記aの合
意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにす
る行為を取りやめている。
排除措置
 141名に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成6年4月1日以降行っていた(有限会社宮崎にあっ
ては平成8年7月10日ころ以降行っていた),金沢市発注の特定土
木工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにしていた行為を取りやめていることを確認すること。
(イ) 次の事項を金沢市に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,金沢市発注の特定土木工事について,受注予
定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,金沢市が競
争入札の方法により発注する土木一式工事について,受注予定者を
決定しないこと。
(2) 浅野建設こと浅野雄幸ほか112名に対する件(平成10年(勧)第10
号)

関係人




違反事実等
(ア)  関係人113名のうち,日伸建設有限会社及び有限会社黒田ハウス
を除く111名並びに日伸建設こと後信次(以下「日伸建設」とい
う。)及び黒田組こと黒田保(以下「黒田組」という。)は,遅くと
も平成6年4月1日以降(株式会社池田工務店にあっては平成6年
11月21日ころ以降,キューシィー・サンワ建設株式会社にあっては
平成7年7月19日ころ以降,株式会社下橋建工にあっては平成7年
8月8日ころ以降,ヤマザキ建設株式会社にあっては平成8年2月
8日ころ以降,村中工務店こと村中武司にあっては平成8年2月28
日ころ以降,株式会社ハヤシ創建にあっては平成8年6月7日ころ
以降,株式会社中善工務店にあっては平成8年6月12日ころ以降,
袖野建設株式会社にあっては平成9年1月8日ころ以降,株式会社
広容建設にあっては平成9年2月7日ころ以降。以下同じ。),金沢
市が指名競争入札の方法により発注する建築一式工事(共同施工方
式により施行される工事を除く。以下「金沢市発注の特定建築工
事」という。)について,受注価格の低落防止を図るため,
 金沢市から指名競争入札の参加の指名を受けた場合は,次の方
法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」とい
う。)を決定する
(a)  当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」と
いう。)が1名のときは,その者を受注予定者とする
(b)  受注希望者が複数のときは,既受注工事との継続性又は関連
性,工事場所等を勘案し,受注希望者の間の話合い等により,
受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注することができるように
協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにしていた。
 日伸建設有限会社は,日伸建設の営業を,また,有限会社黒田ハ
ウスは,黒田組の営業を,それぞれ,承継するとともに前記合意を
引き継ぎ,以後,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにしていた。
(イ)  113名は,前記(ア)により,平成6年4月1日以降,金沢市発注の
特定建築工事のほとんどすべてを受注していた。
(ウ)  平成9年9月10日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定
に基づき審査を開始したところ,113名は,同日以降,前記(ア)の合
意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにす
る行為を取りやめている。
排除措置
 113名に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成6年4月1日以降行っていた(日伸建設有限会社に
あっては平成8年5月14日以降,有限会社黒田ハウスにあっては平
成8年10月17日以降行っていた),金沢市発注の特定建築工事につ
いて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしてい
た行為を取りやめていることを確認すること。
(イ) 次の事項を金沢市に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,金沢市発注の特定建築工事について,受注予
定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,金沢市が競
争入札の方法により発注する建築一式工事について,受注予定者を
決定しないこと。
(3) 石川舗道株式会社ほか13名に対する件(平成10年(勧)第11号)

関係人
違反事実等
(ア)  関係人14社は,遅くとも平成6年4月1日以降,石川県金沢土木
事務所(以下「金沢土木事務所」という。)が指名競争入札の方法
により発注する舗装工事(以下「金沢土木事務所発注の特定舗装工
事」という。)について,受注価格の低落防止を図るため,
 金沢土木事務所から指名競争入札の参加の指名を受けた場合
は,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定
者」という。)を決定する
(a)  当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」と
いう。)が1名のときは,その者を受注予定者とする
(b)  受注希望者が複数のときは,既受注工事との継続性又は関連
性,工事場所等を勘案し,受注希望者の間の話合い等により,
受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注することができるように
協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにしていた。
(イ)  14社は,前記(ア)により,平成6年4月1日以降,金沢土木事務所
発注の特定舗装工事のほとんどすべてを受注していた。
(ウ)  平成9年9月10日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定
に基づき審査を開始したところ,14社は,同日以降,前記のの合意
に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする
行為を取りやめている。
排除措置
 14社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成6年4月18以降行っていた,金沢土木事務所発注
の特定舗装工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注
できるようにしていた行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  14社は,次の事項を金沢土木事務所に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,金沢土木事務所発注の特定舗装工事につい
て,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を
行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,金沢土木事
務所が競争入札の方法により発注する舗装工事について,受注予定
者を決定しないこと。
(4) 株式会社新学社はか14社に対する件(平成10年(勧)第12号)

関係人
違反事実等
(ア)
 関係人15名は,中学校において使用される図書教材(以下「図
書教材」という。)を取引先販売業者を通じて中学校に納入し,
有償で生徒に供給しており,取引先販売業者との間で,それぞ
れ,再販売価格維持契約を締結し,同契約に基づき,取引先販売
業者に対し,自己の設定した図書教材の「学校納入定価」と称す
る小売価格(以下「学校納入価格」という。)を遵守させてい
る。
 図書教材は,教科書の補助教材として使用されており,これに
は,授業の進行に沿って使用されることを予定して,教科別,学
年別に一の教科書に対応して編集された教科書参考版又は複数の
教科書に対応して編集された標準版のテスト,ドリル及びワーク
と称される教材(以下それぞれを「教科書参考テスト」,「教科書
参考ドリル」及び「教科書参考ワーク」といい,これらを総称し
て「教科書参考テスト等」という。)がある。
 また,教科書参考テスト等には,多種類の商品があるところ,
教科書参考テストのうち国語の漢字及び文章読解に関するもの並
びに英語のリスニングに関するものを除く教材(以下「特定教科
書参考テスト」という。),教科書参考ドリルのうち国語の漢字及
び文法に関するもの,数学の計算及び図形に関するもの並びに英
語の単語及び文型に関するものを除く教材(以下「特定教科書参
考ドリル」という。)並びに教科書参考ワークのうち国語の漢字
及び語句に関するもの並びに音楽,美術,保健体育及び技術・家
庭の各教科のものを除く教材(以下「特定教科書参考ワーク」と
いい,これらを総称して「特定教科書参考テスト等」という。)
が大部分を占めている。
(イ)
 15名は,かねてから,中学校の生徒数の減少傾向による図書教
材の売上部数の減少等に対処するため,各々の代表者織の者で構
成する会合(以下「代表者会合」という。)等において,特定教
科書参考テスト等の学校納入定価の引上げ等について,検討を
行ってきた。
(a)  15名は,中学校の生徒数の減少傾向による教科書参考テスト
等の売上部数の減少,平成9年度に実施される教科書の改定に
伴う教科書参考テスト等の改定による原価の上昇及び消費税率
の引上げ等に対処するため,平成8年3月8日ころに代表者会
合を開催するなどして,平成9年度に使用される特定教科書参
考テスト等(以下「平成9年度版特定教科書参考テスト等」と
いう。)の学校納入定価の最終的な検討を同年7月ころに行う
こととした。
(b)  15名は,平成8年5月31日ころに代表者会合を開催するなど
して,平成9年度版特定教科書参考テスト等のうち主要な教材
の学校納入定価について検討し,平成8年度の学校納入定価が
460円であった特定教科書参考テストについては20円から30円
程度,同定価が330円であった特定教科書参考ドリルについて
は20円程度及び同定価が560円であった特定教科書参考ワーク
については30円から40円程度,それぞれ引き上げることを基本
として平成9年度版特定教科書参考テスト等の学校納入定価を
設定する方向で対応することとし,同年6月下句までに,平成
8年度に使用されている特定教科書参考テスト等の学校納入定
価が記載された図書教材のカタログに各自の予定学校納入定価
(以下「予定定価」という。)を記入してこれを相互に交換す
ることとした。
(c)  15名は,平成8年6月下旬以降,前記(b)の図書教材のカタロ
グに記入された各自の予定定価に基づき作成された15名の平成
9年度版特定教科書参考テスト等の予定定価が記載されている
一覧表等を基に,平成9年度版特定教科書参考テスト等の学校
納入定価について更に検討を重ね,同年7月17日ころ,東京都
新宿区所在の日本出版クラブ会館の会議室で開催した代表者会
合において,前記一覧表等に基づき各自の予定定価を相互に表
明し合うことにより,各々自らの予定定価を大勢を占めた予定
定価に近づけるなどして,平成9年度版特定教科書参考テスト
等の最低学校納入定価又は平成8年度の特定教科書参考テスト
等の学校納入定価からの最低引上げ額(以下「最低学校納入定
価等」という。)について共通の意思を形成し,もって,平成
9年度版特定教科書参考テスト等について,共同して,最低学
校納入定価を設定し,又は学校納入定価を引き上げることとし
た。
(ウ)  15名は,大部分の平成9年度版特定教科書参考テスト等につい
て,前記(イ)b(c)に基づき,学校納入定価を設定していた。
(エ)  なお,15名は,平成10年度に使用される特定教科書参考テスト等
について,各自の予定定価に関する情報を交換すること等により学
校納入定価に関する共通の意思を形成する行為を取りやめている。
排除措置
 15名に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア) 15名は,中学校において使用される図書教材のうち,教科書参考
テスト等の取引先販売業者,中学校及び一般消費者に次の事項を周
知徹底させること。
 平成9年度に使用される特定教科書参考テスト等について,各
自の予定する小売価格に関する情報を交換すること等により小売
価格に関する共通の意思を形成する行為を行っていた旨
 今後,前記aの教材について,各自の予定する小売価格に関す
る情報を交換すること等により小売価格に関する共通の意思を形
成する行為を行わず,各自がそれぞれ自主的に決める旨
(イ)  今後,前記教材について,各自の予定する小売価格に関する情報
を交換すること等により小売価格に関する共通の意思を形成するな
ど相互に又は他の事業者と共同して小売価格を決定する行為を行わ
ないこと。
(5) アサヒ道路施設株式会社ほか7名に対する件(平成10年(勧)第13
号)

関係人
違反事実等
(ア)  関係人8社は,遅くとも平成7年4月1日以降,岡山県が指名競
争入札の方法により発注する岡山県警察本部所管の道路標識設置工
事及び道路標示設置工事(以下「岡山県発注の特定道路標識等設置
工事」という。)について,受注価格の低落防止及び受注の均等化
を図るため,
 岡山県から指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,道路
標識設置工事及び道路標示設置工事の別に,各社の受注実績を基
にあらかじめ算出した持ち点を用いて,次の方法により,当該工
事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(a)  受注予定者を決定すべき工事が1件のときは,指名業者間に
おいて持ち点の最も多い者を受注予定者とする
(b)  受注予定者を決定すべき工事が複数のときは,指名業者間に
おいて持ち点の多い者の順に工事物件を選択し,それぞれの者
を当該物件の受注予定者とする
(c) 前記(a)及び(b)において,持ち点が同点のときは,直近に受注
した工事物件の入札日からの期間がより長くなっている者を優
先する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにしていた。
(イ)  8社は,前記(ア)により,岡山県発注の特定道路標識等設置工事の
ほとんどすべてを受注していた。
(ウ)  平成9年9月25日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定
に基づき審査を開始したところ,8社は,同日以降,前記(ア)の合意
に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする
行為を取りやめている。
排除措置
 8社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成7年4月1日以降行っていた,岡山県発注の特定道
路標識等設置工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受
注できるようにしていた行為を取りやめていることを確認するこ
と。
(イ)  次の事項を岡山県に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,岡山県発注の特定道路標識等設置工事につい
て,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を
行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,岡山県が競
争入札の方法により発注する岡山県警察本部所管の道路標識設置工
事又は道路標示設置工事について,受注予定者を決定しないこと。
(6) 後藤工業株式会社ほか16名に対する件(平成10年(勧)第15号)

関係人
違反事実等
(ア)  関係人17社は,遅くとも平成6年4月1日以降(株式会社渡邊舗
装工業にあっては平成6年4月26日ころ以降,仙舗建設株式会社に
あっては平成7年11月28日ころ以降。以下同じ。),仙台市が指名競
争入札の方法により発注する舗装工事(単価契約の方式によるもの
を除く。以下「仙台市発注の特定舗装工事」という。)について,
受注価格の低落防止を図るため,
 仙台市から指名競争入札の参加の指名を受けた場合は,次の方
法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」とい
う。)を決定する
(a)  当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」と
いう。)は,あらかじめ定められた受注希望を取りまとめる者
(以下「幹事役」という。)に対し,受注希望を表明し,受注
希望者が1名のときは,その者を受注予定者とする
(b)  受注希望者が複数のときは,既受注工事との継続性又は関連
性,工事場所等を勘案し,受注希望者の間の話合いにより,受
注予定者を決定する
(c)  前記(a)又は(b)により受注予定者が決定しない場合には,幹事
役が調整して受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注することができるように
協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにしていた。
 17社は,仙台市が,入札の結果落札者が決定しなかった舗装工事
(以下「入札不調物件」という。)については,当該入札の最低価
格入札者と随意契約を締結していたが,平成9年1月1日以降,す
べての入札参加者に見積り合わせへの参加を依頼し,最低の見積り
価格を提示した者と契約を締結することと変更したことに伴い,入
札不調物件について同市から見積り合わせへの参加希望の打診が
あった場合には,当該物件の受注予定者以外の者が見積り合わせへ
の参加を辞退することにより,受注予定者が受注できるようにして
いた。
(イ)  17社は,前記(ア)により,平成6年4月1日以降,仙台市発注の特
定舗装工事の大部分を受注していた。
(ウ)  本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,17社は,平成10年2月6日以降,前記(ア)の合意に基づ
き受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を
取りやめている。
排除措置
 17社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成6年4月1日以降行っていた,仙台市発注の特定舗
装工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにしていた行為を取りやめていることを確認すること。
(イ) 次の事項を仙台市に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,仙台市が競争入札の方法により発注する舗装
工事(単価契約の方式によるものを除く。)について,受注予定
者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,仙台市が競
争入札の方法により発注する舗装工事について,受注予定者を決定
しないこと。
(7) 亀井建設株式会社ほか17名に対する件(平成10年(勧)第19号)

関係人

違反事実等
(ア)
 関係人18社は,遅くとも平成7年4月1日以降,座間市が指名
競争入札,意向尊重型指名競争入札又は競争見積り合わせ(以下
「指名競争入札等」という。)の方法により発注する土木一式工
事(送配水管布設工事を除く。以下同じ。)及び舗装工事(以下
「座間市発注の特定建設工事」という。)について,受注価格の
低落防止及び受注機会の均等化を図るため,
(a) 座間市から指名競争入札等の参加の指名を受けた場合は,次
の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」
という。)を決定する
(i)  当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」
という。)が1名のときは,その者を受注予定者とする
(ⅱ)  受注希望者が複数のときは,工事場所,既受注工事との継
続性,受注実績等を勘案し,受注希望者の間の話合いによ
り,受注予定者を決定する
(ⅲ)  前記(ⅱ)により受注予定者を決定できないときは,受注希望
者を除く当該工事の指名業者の間の話合いにより,受注予定
者を決定する
(b) 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できる
ようにしていた。
 18社は,前記a(a)(ⅱ)の方法により受注予定者を決定できない場
合において採ることとされていた前記a(a)(ⅲ)の方法では受注予定
者が偏るとの不満が生じたことから,これを解消するため,平成
9年3月6日ころに座間市所在の座間市建設業会館の会議室で開
催した会合において,当該決定方法を改め,座間市所在の建設業
者を会員とする座間市建設業協会の会長及び副会長の職にある者
の裁定により決定する方法に変更することを決定し,前記決定以
降,前記a(a)(ⅱ)の方法により受注予定者を決定できないときは,
同決定方法により受注予定者を決定し,受注予定者が受注できる
ようにしていた。
 石井建設株式会社(以下「石井建設」 という。)は,平成9年
11月4日ころ以降,前記aの合意及びbの決定から離脱し,受注
予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っ
ていない。
(イ)  18社は,前記(ア)a及びbにより,平成7年4月1日以降,座間市
発注の特定建設工事の大部分を受注していた。
(ウ)  平成10年2月に前記(ア)a及びbの行為に関する新聞報道がなされ
たこと等から,18社のうち石井建設を除く17社は,同年3月3日,
座間市建設業会館の会議室で開催した会合において,前記(ア)aの合
意及びbの決定に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注で
きるようにする行為を行わない旨の申合せを行い,同日以降,前記
(ア)aの合意及びbの決定に基づき受注予定者を決定し,受注予定者
が受注できるようにする行為を取りやめている。
排除措置
 18社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  次の事項を座間市に通知すること。
 遅くとも平成7年4月1日以降行っていた,座間市発注の特定
建設工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注でき
るようにしていた行為を取りやめている旨
 今後,共同して,座間市発注の特定建設工事について,受注予
定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(イ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,座間市が競
争入札又は見積り合わせの方法により発注する土木一式工事(送配
水管布設工事を除く。)及び舗装工事について,受注予定者を決定
しないこと。
(8)  ダイソー株式会社ほか9名に対する件,ダイソー株式会社ほか6名に
対する件,ダイソー株式会社ほか9名に対する件及びダイソー株式会社
ほか8名に対する件(平成10年(勧)第22号,平成10年(勧)第23号,
平成10年(勧)第24号及び平成10年(勧)第25号)

関係人

違反事実等
(ア) 大阪市発注の10下水処理場向け低食塩次亜塩素酸ソーダ関係(平
成10年(勧)第22号)
(a)  大阪市は,平成元年ころから,津守下水処理場,市岡下水処
理場,千島下水処理場,中浜下水処理場,大野下水処理場,此
花下水処理場,住之江下水処理場,放出下水処理場,平野下水
処理場及び今福下水処理場の10下水処理場(以下「10下水処理
場」という。)において殺菌剤として使用する薬品について,
液体塩素から低食塩次亜塩素酸ソーダ(含有塩化ナトリウムが
4パーセント以下の次亜塩素酸ソーダをいい,低食塩次亜塩素
酸ナトリウムとも呼ばれている。以下「低食塩次亜」とい
う。)に順次転換し,遅くとも平成6年3月ころまでには転換
を完了しているところ,10下水処理場においてそれぞれ転換が
行われる都度,10下水処理場に液体塩素を供給していたダイ
ソー株式会社(以下「ダイソー」という。),三菱瓦斯化学株式
会社(以下「三菱瓦斯」という。)及び南海化学工業株式会社
(以下「南海化学」という。)の3社(以下「3社」という。)
が,液体塩素に替えて10下水処理場に低食塩次亜を引き続き供
給することを意図したことに対し,旭硝子株式会社(以下「旭
硝子」という。),三井東庄無機薬品株式会社(以下「三井無
機」という。),株式会社トクヤマ(徳山曹達株式会社が平成6
年4月1日に商号変更したもの。以下「トクヤマ」という。),
鐘淵化学工業株式会社(以下「鐘淵化学」という。),東亞合成
株式会社(東亞合成化学工業株式会社が平成6年7月1日に商
号変更したもの。以下「東亞合成」という。),関東電化工業株
式会社(以下「関東電化」という。)及び東ソー株式会社(以
下「東ソー」という。)の7社(以下この項において「7社」
という。)から3社に対し,10下水処理場に低食塩次亜を供給
したい旨の要求がなされた。
(b)  関係人10社は,前記(a)の転換が行われる都度なされた要求を
契機として,営業担当者の会合等において,10下水処理場向け
低食塩次亜の供給について検討を行ってきており,その後,営
業担当者の会合に出席しなくなったトクヤマ及び旭硝子に対し
ては,ダイソーらが同会合等における内容を連絡するなどして
いたところ,10社は,遅くとも平成6年3月25日以降,大阪市
が指名競争入札又は地方公共団体の物品等又は特定役務の調達
手続の特例を定める政令の規定が適用される指名競争入札(以
下これらを「指名競争入札等」という。)の方法により発注す
る10下水処理場向け低食塩次亜について,供給価格の低落防止
を図るため
(i)  津守下水処理場については,あらかじめ,3社及び7社の
間においては,交互に供給するなどの方法により,3社及び
7社の間で均等に供給することとし,3社間及び7社間にお
いては,あらかじめ定めた順番に従い供給すべき者(以下
「供給予定者」という。)を決定する
(ⅱ)  津守下水処理場以外の下水処理場については,3社が供給
すべき数量の合計と7社が供給すべき数量の合計との比率を
定め,3社間及び7社間においては,当該比率に対応する数
量をそれぞれ均等に供給することとして,あらかじめ話合い
により供給予定者を決定する
(ⅲ)  指名競争入札等の都度,供給予定者(供給予定者が2以上
の場合には,供給予定者間の話合いにより定められた落札す
べき窓口商社(主に自社が直接又は販売代理店等を介して供
給する低食塩次亜を販売する者をいう。以下同じ。)に対し
単価を指示する供給予定者をいう。以下この項において同
じ。)は,自社の窓口商社に対し単価を指示し,供給予定者
以外の者は,自社の窓口商社に対し当該単価より高い単価を
それぞれ指示することなどにより,供給予定者の窓口商社が
落札できるように協力する旨の合意の下に,納入期間及び下
水処理場ごとに供給予定者を決定し,供給予定者が供給でき
るようにしていた。
 10社は,平成6年4月以降,前記aにより,10下水処理場向け
低食塩次亜のほとんどすべてを供給していた。
 平成10年1月20日,本件について,当委員会が独占禁止法の規
定に基づき審査を開始したところ,10社は,平成10年度以降大阪
市が指名競争入札等の方法により発注する10下水処理場向け低食
塩次亜について,供給予定者を決定し,供給予定者が供給できる
ようにする行為を取りやめている。
(イ) 大阪市水道局発注の豊野浄水場向け低食塩次亜塩素酸ソーダ関係
(平成10年(勧)第23号)
 大阪市水道局が,平成6年12月ころ,豊野浄水場において殺菌
剤として使用する薬品について,液体塩素から低食塩次亜に転換
したことを契機として,豊野浄水場について,低食塩次亜の供給
を意図した関係人7社は,豊野浄水場向け低食塩次亜の供給につ
いて営業担当者の間で連絡を取り合うなどしていたところ,遅く
とも平成8年4月5日以降,大阪市水道局が指名競争入札の方法
により発注する豊野浄水場向け低食塩次亜について,供給価格の
低落防止を図るため,
(a)  7社があらかじめ定める順番に従い供給予定者を決定する
(b)  指名競争入札の都度,供給予定者は,自社の窓口商社に対し
単価を指示し,供給予定者以外の者は,自社の窓口商社に対し
当該単価より高い単価をそれぞれ指示することにより,供給予
定者の窓口商社が落札できるように協力する旨の合意の下に,
納入期間ごとに供給予定者を決定し,供給予定者が供給できる
ようにしていた。
 7社は,平成8年4月5日以降,前記aにより,豊野浄水場向
け低食塩次亜のすべてを供給していた。
 平成10年1月20日,本件について,当委員会が独占禁止法の規
定に基づき審査を開始したところ,7社は,平成10年度以降大阪
市水道局が指名競争入札の方法により発注する豊野浄水場向け低
食塩次亜について,供給予定者を決定し,供給予定者が供給でき
るようにする行為を取りやめている。
(ウ) 大阪府水道企業管理者発注の三島浄水場向け低食塩次亜塩素酸
ソーダ関係(平成10年(勧)第24号)
(a)  大阪府水道企業管理者は,平成2年ころ,三島浄水場におい
て殺菌剤として使用する薬品について,液体塩素から低食塩次
亜に転換したところ,三島浄水場に液体塩素を供給していた旭
硝子が,液体塩素に替えて三島浄水場に低食塩次亜を引き続き
供給することを意図したことに対し,ダイソー,東亞合成,ト
クヤマ,南海化学,三井無機,関東電化,三菱瓦斯,鐘淵化学
及び東ソーの9社(以下「9社」という。)から旭硝子に対
し,三島浄水場に低食塩次亜を供給したい旨の要求がなされ
た。
(b)  9社及び旭硝子の10社(以下「10社」という。)は,前記(a)
の要求を契機として,営業担当者の会合等において,三島浄水
場向け低食塩次亜の供給について検討を行ってきており,その
後,営業担当者の会合に出席しなくなったトクヤマ及び旭硝子
に対しては,ダイソーらが同会合等における内容を連絡するな
どしていたところ,10社は,遅くとも平成6年4月7日以降,
大阪府水道企業管理者が指名競争入札の方法により発注する三
島浄水場向け低食塩次亜について,供給価格の低落防止を図る
ため
(i)  9社を3社ごとに編成した3グループのうちいずれかのグ
ループ及び旭硝子が順番に供給することとし,前記3グルー
プのうち,いずれかのグループが供給することとなる場合
は,供給するグループ内の話合い等により供給予定者を決定
し,それ以外の場合は旭硝子を供給予定者とする
(ⅱ)  指名競争入札の都度,供給予定者(供給予定者が2以上の
場合には,供給予定者間の話合いにより定められた落札すべ
き窓口商社に対し単価を指示する供給予定者。以下この項に
おいて同じ。)は,自社の窓口商社に対し単価を指示し,供
給予定者以外の者は,自社の窓口商社に対し当該単価より高
い単価をそれぞれ指示することにより,供給予定者の窓口商
社が落札できるように協力する
旨の合意の下に,納入期間ごとに供給予定者を決定し,供給予
定者が供給できるようにしていた。
 10社は,平成6年4月7日以降,前記aにより,三島浄水場向
け低食塩次亜の大部分を供給していた。
 平成10年1月20日,本件について,当委員会が独占禁止法の規
定に基づき審査を開始したところ,10社は,平成10年度以降大阪
府水道企業管理者が指名競争入札の方法により発注する三島浄水
場向け低食塩次亜について,供給予定者を決定し,供給予定者が
供給できるようにする行為を取りやめている。
(エ) 京都市上下水道事業管理者発注の4浄水場向け及び4下水処理場
向け低食塩次亜塩素酸ソーダ関係(平成10年(勧)第25号)
(a)  京都市上下水道事業管理者は,平成2年ころまでには,蹴上
浄水場,松ケ崎浄水場,新山科浄水場及び山ノ内浄水場の4浄
水場(以下「4浄水場」という。)並びに吉祥院下水処理場,
伏見下水処理場,石田下水処理場及び鳥羽下水処理場の4下水
処理場(以下「4下水処理場」という。)において殺菌剤とし
て使用する薬品について,液体塩素から低食塩次亜に順次転換
を完了しているところ,4浄水場及び4下水処理場においてそ
れぞれ転換が行われる都度,4浄水場及び4下水処理場に液体
塩素を供給していたダイソー及び旭硝子の2社(以下「2社」
という。)が,液体塩素に替えて4浄水場及び4下水処理場に
低食塩次亜を引き続き供給することを意図したことに対し,東
亞合成,トクヤマ,三井無機,東ソー,三菱瓦斯,鐘淵化学及
び南海化学から2社に対し,4浄水場及び4下水処理場に低食
塩次亜を供給したい旨の要求がなされた。
(b)  関係人9社は,前記(a)の転換が行われる都度なされた要求を
契機として,営業担当者の会合等において,4浄水場及び4下
水処理場向け低食塩次亜の供給について検討を行ってきてお
り,その後,営業担当者の会合に出席しなくなったトクヤマ及
び旭硝子に対しては,ダイソーらが同会合等における内容を連
絡するなどしていたところ,9社は,遅くとも平成6年5月20
日以降,京都市上下水道事業管理者が見積り合わせ又は地方公
共団体の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令の
規定が適用される一般競争入札(以下これらを「見積り合わせ
等」という。)の方法により発注する4浄水場及び4下水処理
場向け低食塩次亜について,供給価格の低落防止を図るため,
(i)  4浄水場については,2社が供給することとし,2社の話
合いにより供給予定者を決定する
(ⅱ)  4下水処理場については,鳥羽下水処理場はダイソーを供
給予定者とし,鳥羽下水処理場以外の下水処理場は2社以外
の者があらかじめ供給したい旨の希望を出し合うなどして話
合いにより供給予定者を決定する
(ⅲ)  見積り合わせ等の都度,供給予定者(供給予定者が2以上
の場合には,供給予定者間の話合いにより定められた落札す
べき窓口商社に対し単価を指示する供給予定者。以下この項
において同じ。)は,自社の窓口商社に対し単価を指示し,
供給予定者以外の者は,自社の窓口商社に対し当該単価より
高い単価をそれぞれ指示することなどにより,供給予定者の
窓口商社が落札できるように協力する
旨の合意の下に,浄水場又は下水処理場ごとに供給予定者を決
定し,供給予定者が供給できるようにしていた。
 9社は,平成6年5月20日以降,前記aにより,4浄水場及び
4下水処理場向け低食塩次亜の大部分を供給していた。
 平成10年1月20日,本件について,当委員会が独占禁止法の規
定に基づき審査を開始したところ,9社は,平成10年度以降京都
市上下水道事業管理者が見積り合わせ等の方法により発注する4
浄水場及び4下水処理場向け低食塩次亜について,供給予定者を
決定し,供給予定者が供給できるようにする行為を取りやめてい
る。
排除措置
(ア)
 大阪市発注の10下水処理場向け低食塩次亜塩素酸ソーダ関係
10社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 大阪市が指名競争入札等の方法により発注する10下水処理場向
け低食塩次亜について,前記競争入札に参加していた販売業者を
介して供給するに当たって,遅くとも平成6年3月25日以降行っ
ていた,供給予定者を決定し,供給予定者が供給できるようにし
ていた行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を,10下水処理場向け低食塩次亜の指名競争入札等に
参加していた販売業者のうち自社が供給する低食塩次亜を販売す
るもの及び大阪市に周知徹底させること。
(a) 大阪市が指名競争入札等の方法により発注する10下水処理場
向け低食塩次亜について,前記競争入札に参加していた販売業
者を介して供給するに当たって,遅くとも平成6年3月25日以
降行っていた,供給予定者を決定し,供給予定者が供給できる
ようにしていた行為を取りやめている旨
(b)  今後,共同して,大阪市が指名競争入札等の方法により発注
する10下水処理場向け低食塩次亜について,前記競争入札に参
加していた販売業者を介して供給するに当たって,供給予定者
を決定せず,各社がそれぞれ自主的に供給活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,大阪市が
競争入札の方法により発注する下水処理場向け低食塩次亜につい
て,供給予定者を決定しないこと。
(イ)  大阪市水道局発注の豊野浄水場向け低食塩次亜塩素酸ソーダ関係
7社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 大阪市水道局が指名競争入札の方法により発注する豊野浄水場
向け低食塩次亜について,指名競争入札に参加していた販売業者
を介して供給するに当たって,遅くとも平成8年4月5日以降
行っていた,供給予定者を決定し,供給予定者が供給できるよう
にしていた行為を取りやめていることを確認すること。
次の事項を,豊野浄水場向け低食塩次亜の指名競争入札に参加
していた販売業者のうち自社が供給する低食塩次亜を販売するも
の及び大阪市水道局に周知徹底させること。
(a) 大阪市水道局が指名競争入札の方法により発注する豊野浄水
場向け低食塩次亜について,指名競争入札に参加していた販売
業者を介して供給するに当たって,遅くとも平成8年4月5日
以降行っていた,供給予定者を決定し,供給予定者が供給でき
るようにしていた行為を取りやめている旨
(b)  今後,共同して,大阪市水道局が指名競争入札の方法により
発注する豊野浄水場向け低食塩次亜について,指名競争入札に
参加していた販売業者を介して供給するに当たって,供給予定
者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に供給活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,大阪市水
道局が競争入札の方法により発注する豊野浄水場向け低食塩次亜
について,供給予定者を決定しないこと。
(ウ) 大阪府水道企業管理者発注の三島浄水場向け低食塩次亜塩素酸
ソーダ関係
 10社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 大阪府水道企業管理者が指名競争入札の方法により発注する三
島浄水場向け低食塩次亜について,指名競争入札に参加していた
販売業者を介して供給するに当たって,遅くとも平成6年4月7
日以降行っていた,供給予定者を決定し,供給予定者が供給でき
るようにしていた行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を,三島浄水場向け低食塩次亜の指名競争入札に参加
していた販売業者のうち自社が供給する低食塩次亜を販売するも
の及び大阪府水道企業管理者に周知徹底させること。
(a)  大阪府水道企業管理者が指名競争入札の方法により発注する
三島浄水場向け低食塩次亜について,指名競争入札に参加して
いた販売業者を介して供給するに当たって,遅くとも平成6年
4月7日以降行っていた,供給予定者を決定し,供給予定者が
供給できるようにしていた行為を取りやめている旨
(b)  今後,共同して,大阪府水道企業管理者が指名競争入札の方
法により発注する三島浄水場向け低食塩次亜について,指名競
争入札に参加していた販売業者を介して供給するに当たって,
供給予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に供給活動を行
う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,大阪府水
道企業管理者が競争入札の方法により発注する三島浄水場向け低
食塩次亜について,供給予定者を決定しないこと。
(エ) 京都市上下水道事業管理者発注の4浄水場向け及び4下水処理場
向け低食塩次亜塩素酸ソーダ関係
 9社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 9社は,京都市上下水道事業管理者が見積り合わせ等の方法に
より発注する4浄水場及び4下水処理場向け低食塩次亜につい
て,前記見積り合わせ等に参加していた販売業者を介して供給す
るに当たって,遅くとも平成6年5月20日以降行っていた,供給
予定者を決定し,供給予定者が供給できるようにしていた行為を
取りやめていることを確認すること。
 次の事項を,4浄水場及び4下水処理場向け低食塩次亜の見積
り合わせ等に参加していた販売業者のうち自社が供給する低食塩
次亜を販売するもの及び京都市上下水道事業管理者に周知徹底さ
せること。
(a)  京都市上下水道事業管理者が見積り合わせ等の方法により発
注する4浄水場及び4下水処理場向け低食塩次亜について,前
記見積り合わせ等に参加していた販売業者を介して供給するに
当たって,遅くとも平成6年5月20日以降行っていた,供給予
定者を決定し,供給予定者が供給できるようにしていた行為を
取りやめている旨
(b)  今後,共同して,京都市上下水道事業管理者が見積り合わせ
等の方法により発注する4浄水場及び4下水処理場向け低食塩
次亜について,前記見積り合わせ等に参加していた販売業者を
介して供給するに当たって,供給予定者を決定せず,各社がそ
れぞれ自主的に供給活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,京都市上
下水道事業管理者が見積り合わせ等の方法により発注する浄水場
及び下水処理場向け低食塩次亜について,供給予定者を決定しな
いこと。
(9) 金秀アルミ工業株式会社ほか6名に対する件及び金秀アルミ工業株式
会社ほか6名に対する件(平成11年(勧)第3号及び平成11年(勧)第
4号)

関係人
違反事実等
(ア) 公共物件用アルミサッシ関係(平成11年(勧)第3号)
(a)  金秀アルミ工業株式会社(以下「金秀アルミ」という。),株
式会社ワイケイケイエーピー沖縄(以下「YKKAP沖縄」と
いう。),沖縄三協アルミ株式会社(以下「沖縄三協アルミ」と
いう。),株式会社名護鉄工所(以下「名護鉄工所」という。),
株式会社大建商事(以下「大建商事」という。)及び株式会社
沖縄不二サッシ(以下「沖縄不二」という。)の6社(以下
「6社」という。)は,かねてから,公共物件用アルミサッシ
(沖縄県,沖縄県内の別表1記載の市町村及び沖縄県住宅供給
公社(以下「沖縄県等」という。)が発注する建築物の建築工
事(以下「公共物件」という。)を受注した建設業者が購入す
るアルミニウム合金製の普通サッシ(以下「アルミサッシ」と
いう。)(アルミサッシの取付工事並びにアルミサッシとともに
発注されるその他の金属製建具及びその取付工事を含む。以下
同じ。))の販売価格の低落を防止するための方策を検討してき
たところ,平成6年8月10日ころ,沖縄県サッシ商工組合の会
議室で開催した,6社及びトステム株式会社(以下「トステ
ム」という。)がアルミ形材を販売している二次店(金秀アル
ミ,YKKAP沖縄又はトステムの3社のいずれか1社からア
ルミニウム合金製の形材(以下「アルミ形材」という。)を購
入してアルミサッシの製造販売業を営んでいる者は平成10年6
月30日現在23社あり,このうち,別表2記載のグループに属し
ていない1社を除く22社をいう。以下同じ。)である有限会社
日光アルミ工業の代表者級の者による会合において,公共物件
用アルミサッシに関し,次のとおり決定した。
(i)  6社及び二次店を,アルミ形材の取引関係を踏まえて,い
くつかのグループに分けること。
(ⅱ)  前記(i)の各グループには,それぞれのグループに属する者
の平成3年度から平成5年度までの売上高,従業員数等を勘
案して定めた持ち点を配分し,当該持ち点については,配分
後に各グループに属する二次店の数に増減があった場合で
あっても,これを変更しないこと。
(ⅲ)  6社及びトステムの7社(以下「7社」という。)は,各
社の営業責任者級の者による会合(以下「作業部会」とい
う。)を設け,作業部会における話合いにおいて,建設業者
の意向及び各グループに配分する持ち点を勘案して,公共物
件を受注した建設業者にアルミサッシを優先的に販売すべき
者(以下「クォーター」という。)の属するグループ(以下
「クォーターグループ」という。)を定めること。
(ⅳ)  前記(i)及び(ⅲ)のグループ分け,クォーターグループの決定
方法等の詳細については,作業部会で定めること。
 平成6年8月10日ころ以降,トステムは,名護鉄工所及び有
限会社日光アルミ工業から前記決定について連絡を受け,二次
店に販売するアルミ形材の価格の低落を防止する等のため,前
記決定を了承し,作業部会に参加することとした。
(b)  7社は,前記(a)の決定に基づき,平成6年8月18日ころ以
降,作業部会を開催し,遅くとも同年10月ころまでに,7社及
び二次店のグループ分け,クォーターグループの決定方法等に
ついて次のとおり決定した。
(ⅰ)  前記(a)(i)のグループ分け及び前記(a)(ⅱ)の各グループの持ち
点は,別表2のとおりとすること。
(ⅱ)  公共物件を受注した建設業者から引き合いを受けた公共物
件用アルミサッシの見積価額が200万円以上の場合は,その
物件名及び見積価額を作業部会に報告すること。
(ⅲ)  前記(ⅱ)により報告のあった物件及び作業部会の席上で,見
積価額が200万円以上となると見込まれる公共物件用アルミ
サッシを建設業者が購入することが予定される旨が報告され
た物件について,その販売を希望する者が属するグループが
一である場合にはそのグループをクォーターグループとし,
販売を希望する者が属するグループが二以上である場合に
は,建設業者の意向及び公共物件用アルミサッシのシェアと
して各グループにそれぞれ配分する持ち点の残高を勘案し
て,販売を希望するグループ間の話合いによりクォーターグ
ループを決定すること。
(ⅳ)  7社は,クォーターグループとなった場合は,当該クォー
ターグループ内においてクォーターの決定を行うこと。
(v)  クォーターグループとなった場合は,当該クォーターグ
ループの持ち点から見積価額2000万円を1点に換算して算出
した点数を差し引くこと。
(ⅵ)  クォーター以外の者は,アルミサッシの販売活動を行わ
ず,建設業者から引き合いがあった場合は,クォーターと
なった者の見積価額より高い価額を提示すること。
(ⅶ)  クォーターグループ以外のグループに属する者が公共物件
用アルミサッシを販売した場合は,当該販売者が属するグ
ループの持ち点から前記(v)により算出した点数の2倍の点数
を差し引くとともに,クォーターグループの持ち点に当該点
数を加えること。
(ⅷ)  3社は,それぞれ,取引先二次店に対し,作業部会の決定
を順守させること。
(c)  7社は,沖縄県内のアルミサッシ製造販売業者がアルミサッ
シの販売に係る見積価額の積算方法を変更したことに伴い,前
記(b)(v)の換算方法について,遅くとも平成7年8月ころまでに
開催した作業部会において,見積価額1000万円を1点に換算す
るよう変更することを決定した。
(d)  7社は,前記(b)及び(c)の決定に基づくクォーターグループの
決定により各グループの持ち点の残高が少なくなったことか
ら,平成7年8月ころ,平成8年8月ころ及び平成9年11月こ
ろ,それぞれ,作業部会を開催し,各グループの持ち点につい
て,別表2記載の各グループの持ち点をそれぞれの持ち点の残
高に加えることを決定した。
 7社は,平成6年10月ころ以降,前記aの各決定に基づき,作
業部会を開催してクォーターグループを決定し,さらに各クォー
ターグループにおいてクォーターを決定し,ほとんどすべての公
共物件用アルミサッシについて,クォーターとなった者が販売で
きるようにしていた。
 なお,沖縄不二は,平成8年4月ころから平成10年4月ころま
での間,作業部会に出席しておらず,公共物件用アルミサッシに
ついて,クォーターグループ及びクォーターを決定し,クォー
ターとなった者が販売できるようにする行為を行っていないが,
平成10年5月26日ころ開催された作業部会において,作業部会に
再び参加し,当該行為を行うことを了承した。
 平成10年6月16日,本件について,当委員会が独占禁止法の規
定に基づき審査を開始したところ,7社は,同日以降,前記aの
決定に基づき作業部会を開催して,クォーターグループ及び
クォーターを決定し,クォーターとなった者が販売できるように
する行為を取りやめている。
(イ) 防衛物件用アルミサッシ関係(平成11年(勧)第4号)
(a)  金秀アルミ,YKKAP沖縄,名護鉄工所,沖縄三協アルミ
及び大建商事の5社(以下「5社」という。)並びに合資会社
沖繩豊和(以下「沖繩豊和」という。)及び不二サッシ株式会
社(以下「不二サッシ」という。)の7社(以下「7社」とい
う。)は,かねてから,防衛物件用アルミサッシ(防衛施設庁
那覇防衛施設局(以下「防衛施設局」という。)発注の自衛隊
及び米国軍が使用する建築物の建築工事(以下「防衛物件」と
いう。)に使用されるアルミサッシをいう。以下同じ。)の販売
価格の低落を防止するため,各社の営業責任者級の者による
「月曜会」又は「防衛部会」と称する会合(以下「防衛部会」
という。)を設け,防衛部会の話合いにおいて,防衛物件を受
注した建設業者に対しアルミサッシを優先的に販売すべき者
(以下「クォーター」という。)を定めてきたところ,平成7
年2月13日ころ,沖縄県サッシ商工組合の会議室で開催した防
衛部会において,クォーターの決定方法等について次のとおり
決定した。
(ⅰ)  防衛物件用アルミサッシの見積価額を防衛施設局に提出す
る場合には,その物件名及び見積価額を防衛部会に報告する
こと。
(ⅱ)  前記(i)により報告のあった物件及び防衛部会の席上で,防
衛物件用アルミサッシを建設業者が購入することが予定され
る旨が報告された物件について,その販売を希望する者が1
社である場合にはその者をクォーターとし,販売を希望する
者が2社以上である場合には,建設業者の意向及び防衛物件
用アルミサッシのシェアとして7社にそれぞれ配分する持ち
点の残高を勘案して,販売を希望する者の間の話合いにより
クォーターを決定すること。
(ⅲ)  前記(ⅱ)の7社の持ち点を別表3のとおりとし,クォーター
となった場合には,その者の持ち点から,見積価額1000万円
を1点に換算して算出した点数を差し引くこと。
(ⅳ)  クォーター以外の者は,アルミサッシの販売活動を行わ
ず,建設業者から引き合いがあった場合は,クォーターと
なった者の見積価額より高い価額を提示すること。
(v)  クォーター以外の者が防衛物件用アルミサッシを販売した
場合は,その者の持ち点から前記(ⅲ)により算出した点数の2
倍の点数を差し引くこと。
 さらに,7社は,沖縄県内のアルミサッシ製造販売業者
が,アルミサッシに係る見積価額の積算方法を変更したこと
に伴い,平成7年3月ころ,沖縄県サッシ商工組合が,アル
ミサッシ製造販売業者等の見積価額の積算に供するため「参
考資料」と称する価格表(以下「参考資料」という。)を作
成して配布したことから,前記決定と合わせ,クォーターが
できるだけ高い価額でアルミサッシを販売できるようにする
ため,同年4月18日ころ,同商工組合の会議室で開催した防
衛部会において,防衛物件用アルミサッシについて,防衛施
設局に提出する見積価額に係る積算基準を別表4のとおりと
することを決定した。
(b)  7社は,前記aの決定に基づくクォーターの決定により各社
の持ち点の残高が少なくなったことから,平成10年3月17日こ
ろ,防衛部会において,各社の持ち点について,別表3記載の
各社の持ち点をそれぞれの持ち点の残高に加えることを決定し
た。
 7社は,前項(a)の各決定に基づき,平成7年4月ころ以降,防
衛施設局に見積価額を提出するとともに,防衛部会を開催して
クォーターを決定し,ほとんどすべての防衛物件用アルミサッシ
について,クォーターとなった者ができるだけ高い価額で販売で
きるようにしていた。
 平成10年6月16日,本件について,当委員会が独占禁止法の規
定に基づき審査を開始したところ,7社は,同日以降,前記aの
決定に基づき防衛部会を開催して,クォーターを決定し,クォー
ターとなった者ができるだけ高い価額で販売できるようにする行
為を取りやめている。
排除措置
(ア) 公共物件用アルミサッシ関係
 7社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 平成6年10月ころ以降行っていた,公共物件用アルミサッシに
ついて,優先的に販売すべき者を決定し,その者が販売できるよ
うにしていた行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を公共物件用アルミサッシの販売先建設業者に周知徹
底させること。
(a)  平成6年10月ころ以降行っていた,公共物件用アルミサッシ
の販売について,優先的に販売すべき者を決定し,その者が販
売できるようにしていた行為を取りやめている旨
(b)  今後,共同して,公共物件用アルミサッシの販売について,
優先的に販売すべき者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に販
売活動を行う旨
 今後,共同して,公共物件用アルミサッシの販売について,優
先的に販売すべき者を決定しないこと。
(イ) 防衛物件用アルミサッシ関係
 7社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 7社は,平成7年4月ころ以降行っていた,防衛物件用アルミ
サッシについて,優先的に販売すべき者を決定し,その者ができ
るだけ高い価額で販売できるようにしていた行為を取りやめてい
ることを確認すること。
 次の事項を防衛施設局及び防衛物件用アルミサッシの販売先建
設業者に周知徹底させること。
(a)  平成7年4月ころ以降行っていた,防衛物件用アルミサッシ
の販売について,優先的に販売すべき者を決定し,その者がで
きるだけ高い価額で販売できるようにしていた行為を取りやめ
ている旨
(b)  今後,共同して,防衛物件用アルミサッシの販売について,
優先的に販売すべき者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に販
売活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,防衛物件
用アルミサッシの販売について,優先的に販売すべき者を決定し
ないこと。






(10) 三好塗装工業株式会社ほか115名に対する件及び第一塗工株式会社ほ
か67名に対する件(平成11年(勧)第5号及び平成11年(勧)第6号)

関係人





違反事実等
(ア) 愛知県等発注の塗装工事関係(平成11年(勧)第5号)
 関係人116名及び合資会社平岩塗装工業所(以下「平岩塗装工
業所」という。)の117名(以下「117名」という。)は,遅くとも
平成7年4月1日以降(株式会社後藤塗装及び株式会社シンワに
あっては平成7年6月16日ころ以降,株式会社シンエイライフに
あっては平成7年7月26日ころ以降,有限会社東海塗装店にあっ
ては平成7年7月9日ころ以降,株式会社幸栄塗装及び株式会社
サントにあっては平成7年7月10日ころ以降,株式会社杉村塗装
にあっては平成8年8月6日ころ以降,中電工事株式会社にあっ
ては平成8年9月26日ころ以降,株式会社キョウドーにあっては
平成8年11月21日ころ以降,三建塗装工業株式会社及び有限会社
にしきみ塗装にあっては平成9年7月10日ころ以降,杉山塗装株
式会社にあっては平成9年7月23日ころ以降,株式会社外村塗装
工業所及び株式会社日本塗工にあっては平成9年10月30日ころ以
降。以下同じ。),後表記載の9土木事務所及び2港務所並びに愛
知県道路公社(以下これらを「愛知県等」という。)が指名競争
入札又は指名見積り合わせ(以下「指名競争入札等」という。)
の方法により発注する塗装工事(落札金額が100万円未満の工事
を除く。以下「愛知県等発注の特定塗装工事」という。)につい
て,受注価格の低落防止等を図るため,
(a)  愛知県等から指名競争入札等の参加の指名を受けた場合は,
次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定
者」という)を決定する
(i)  当該工事の落札予想金額を,あらかじめ定めたランク(落
札金額に応じた区分をいう。以下同じ。)に当てはめ,指名
業者のうち,当該ランクの持ち点(指名を受けた回数を基に
あらかじめ定めた一定の算定方法により算出した点数をい
う。以下同じ。)が最も多い者を受注予定者とする
(ⅱ)  前記(ⅰ)において,持ち点が最も多い者が複数のときは,そ
のうち,当該ランクの工事について直近の受注から経過した
期間が最も長い者等を受注予定者とする
(b)  受注すべき価格は受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できる
ようにしていた。
 平岩塗装工業所は,平成8年3月31日ころ以降,愛知県等発注
の特定塗装工事に係る事業活動を取りやめており前記合意に基づ
く行為を行っていない。
 l17名は,前記aにより,愛知県等発注の特定塗装工事のほと
んどすべてを受注していた。
 平成10年9月1日,本件について,当委員会が独占禁止法の規
定に基づき審査を開始したところ,116名は,同日以降,前記b
の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにする行為を取りやめている。
(イ) 名古屋市発注の塗装工事関係(平成11年(勧)第6号)
 関係人68社及び平岩塗装工業所の69社(以下「69社」とい
う。)は,遅くとも平成7年4月1日以降(大南工業株式会社に
あっては平成9年9月19日ころ以降。以下同じ。),名古屋市が指
名競争入札の方法により発注する土木局所管の塗装工事(以下
「名古屋市発注の特定塗装工事」という。)について,受注価格
の低落防止等を図るため,
(a)  名古屋市から指名競争入札の参加の指名を受けた場合は,次
の方法により,受注予定者を決定する
(i)  当該工事の落札予想金額を,あらかじめ定めたランクに当
てはめ,指名業者のうち,当該ランクの持ち点が最も多い者
を受注予定者とする
(ⅱ)  前記(i)において,持ち点が最も多い者が複数のときは,そ
のうち,当該ランクの工事について直近の受注から経過した
期間が最も長い者等を受注予定者とする
(b)  受注すべき価格は受注予定者が定め,受注予定者以外の者
は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できる
ようにしていた。
 平岩塗装工業所は,平成9年3月31日ころ以降,名古屋市発注
の特定塗装工事に係る事業活動を取りやめており,前記合意に基
づく行為を行っていない。
 69社は,前記aにより,名古屋市発注の特定塗装工事のほとん
どを受注していた。
 平成10年9月1日,本件について,当委員会が独占禁止法の規
定に基づき審査を開始したところ,68社は,同日以降,前記aの
合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよう
にする行為を取りやめている。
排除措置
(ア) 愛知県等発注の塗装工事関係
 116名に対し,次の措置を採るように命じた。
 遅くとも平成7年4月1日以降行っていた愛知県等発注の特定
塗装工事について受注予定者を決定し,受注予定者が受注できる
ようにしていた行為を取りやめていることを確認すること。
次の事項を愛知県等に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,愛知県等発注の特定塗装工事について,受
注予定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,愛知県等
が競争入札又は指名見積り合わせの方法により発注する塗装工事
(落札金額が100万円未満の工事を除く。)について,受注予定者
を決定しないこと。
(イ) 名古屋市発注の塗装工事関係
 68社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも平成7年4月1日以降行っていた名古屋市発注の特定
塗装工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注でき
るようにしていた行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を名古屋市に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,名古屋市発注の特定塗装工事について,受
注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,名古屋市
が競争入札の方法により発注する土木局所管の塗装工事につい
て,受注予定者を決定しないこと。

(11) 株式会社クボタほか2名に対する件(平成11年(勧)第7号)

関係人
違反事実等
(ア)  関係人3社は,かねてから,我が国におけるダクタイル鋳鉄管直
管の総需要数量に対する各社の受注すべき数量の基本的な割合を,
株式会社クボタ(以下「クボタ」という。)については63パーセン
ト,株式会社栗本鐵工所(以下「栗本鐵工所」という。)について
は27パーセント,日本鋳鉄管株式会社(以下「日本鋳鉄管」とい
う。)については10パーセント(以下この割合を「基本配分率」と
いう。)とすることとし,これに基づき各年度ごとに前年度までの
各社の受注数量等を勘案した当該年度の総需要数量に対する各社の
受注すべき数量の割合(以下「年度配分率」という。)を決定して
いたところ,
 3社は,平成9年5月上旬ころ,北海道地区,東北地区,東京
地区,中部地区,大阪地区及び九州地区と称する全国を区分した
6地区(以下「6地区」という。)における平成9年度のダクタ
イル鋳鉄管直管の需要見込数量を把握した上,平成9年6月10日
ころから同月20日ころまでの間,日本鋳鉄管の本店会議室又は栗
本鐵工所が借用した東京都港区に所在する貸会議室において,3
社の東京地区の営業担当課長級の者による会合を数度にわたり開
催し,
(a)  ダクタイル鋳鉄管直管の前記6地区における需要見込数量に
基づいて平成9年度の我が国におけるダクタイル鋳鉄管建管の
総需要見込数量を算出し,6地区のうち東京地区を除く5地区
における各社の受注すべき数量の割合(以下6地区の地区ごと
の各社の受注すべき数量の割合を「地区配分率」という。)を
取りまとめ,
(b)  前記(a)の総需要見込数量に各社の基本配分率をそれぞれ乗じ
て算出した数量に各社の平成7年度及び平成8年度の受注数量
等を勘案した数量を加減して算出した平成9年度の各社の受注
見込数量の前記(a)の総需要見込数量に対する割合,すなわち,
クボタについては62.91パーセント,栗本鐵工所については
26.95パーセント,日本鋳鉄管については10.14パーセントを平
成9年度の年度配分率とするとともに,
(c)  前記(b)の各社の受注見込数量から,東京地区を除く5地区の
地区配分率に基づく各社の受注見込数量の合計を差し引いた残
余に占める各社の受注見込数量の割合を東京地区の地区配分率
とした上で,平成9年度の年度配分率,6地区における地区配
分率等を内容とする計画案を作成した。
 3社は,平成9年7月9日ころ,東京都新宿区所在の日本水道
協会会議室で開催した各社の営業担当部長級の者及び東京地区の
営業担当課長級の者の会合において,平成9年度の年度配分率を
前記aの計画案に基づくものとすることを決定し,平成9年度末
までに各社においてそれぞれの受注数量の総需要数量に対する割
合を前記決定に係る平成9年度の年度配分率に合致させるよう受
注数量の調整を行うことを合意した。
(イ)  3社は,前記(ア)bの合意に基づき,ダクタイル鋳鉄管直管に係る
3社と販売業者との間及び販売業者と建設業者との間のそれぞれの
取引関係が固定的であることを利用し,これを維持しつつ,毎月の
受注数量を相互に連絡して,各社の年度当初からの受注数量と年度
配分率に基づく数量との差異を確認した上で,水道事業又は水道用
水供給事業を経営する地方公共団体等(以下「水道事業者」とい
う。)が競争入札の方法により発注するダクタイル鋳鉄管直管につ
いて,物件ごとの受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
うにするなど,各社のダクタイル鋳鉄管直管の受注数量の調整を行
うことにより,平成9年度の年度配分率にほとんど一致する割合で
ダクタイル鋳鉄管直管を受注していた。
(ウ)  平成10年5月13日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定
に基づき審査を開始したところ,3社は,平成10年度以降は前記(ア)
記載の行為と同様の行為を行っていない。
排除措置
 3社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  共同して,平成9年度における我が国のダクタイル鋳鉄管直管の
総需要数量に対する各社の受注すべき数量の割合を決定して,同年
度末までに総需要数量に対する各社の受注数量の割合が前記決定し
たものとなるよう受注数量の調整を行う旨を合意し,競争入札の方
法により発注されるダクタイル鋳鉄管直管について受注予定者を決
定し受注予定者が受注できるようにするなどにより各社の受注数量
を調整していた行為と同様の行為を行っていないことを確認するこ
と。
(イ)  次の事項をダクタイル鋳鉄管直管の販売業者及び需要者並びに自
社の従業員に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,ダクタイル鋳鉄管直管の総需要数量に対する
各社の受注すべき数量の割合を決定して,その受注数量の割合と
なるよう競争入札の方法により発注されるダクタイル鋳鉄管直管
について受注予定者を決定し受注予定者が受注できるようにする
などにより各社の受注数量の調整を行わず,各社がそれぞれ自主
的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,ダクタイル
鋳鉄管直管の総需要数量に対する各社の受注すべき数量の割合を決
定してはならず,その受注数量の割合となるよう競争入札の方法に
より発注されるダクタイル鋳鉄管直管について受注予定者を決定
し,受注予定者が受注できるようにするなどにより各社の受注数量
の調整を行わないこと。
(12) タカラスタンダード株式会社ほか6社に対する件及びトーヨー工業株
式会社ほか5名に対する件(平成11年(勧)第8号及び平成11年(勧)
第9号)

関係人
違反事実等
(ア) 住宅・都市整備公団関係(平成11年(勧)第8号)
 関係人7社は,かねてから,住宅・都市整備公団が茨城県,埼
玉県,千葉県,東京都及び神奈川県の区域において新築及び建替
えにより建設する集合住宅(賃貸用特定分譲住宅を除く。)に設
置されるキッチン(取付工事を伴う場合は,当該工事を含む。以
下「首都圏における公団住宅用キッチン」という。)の販売方策
を検討してきたところ,遅くとも平成9年4月以降,首都圏にお
ける公団住宅用キッチンについて,販売価格の低落防止等を図る
ため,
(a)  各社の部長級及び課長級の者による会合を開催し,年度ごと

(ⅰ)  首都圏における公団住宅用キッチンの総販売数量に占める
各社の販売すべき数量の割合(以下「販売比率」という。)
を定め
(ⅱ)  建設業者又は販売業者から見積り依頼が見込まれる首都圏
における公団住宅用キッチンの物件の一覧表を作成し,販売
比率により各社に配分する数量(以下「配分数量」とい
う。)を算定し
(ⅲ)  配分数量に基づき,販売希望の有無,建設業者との取引の
継続性等を勘案して前記(ⅱ)の一覧表に記載された物件を各社
に割り振り
当該物件の割り振りを受けた者を優先的に販売すべき者(以下
「チャンピオン」という。)とする
(b)  前記(a)によりチャンピオンとされた者以外の者が,建設業者
の意向等により自社が販売することに関し当該チャンピオンの
了解を得るなどした物件については,その者を新たなチャンピ
オンとする
(c)  チャンピオン以外の者は,他の者がチャンピオンとなった物
件について,販売活動を自粛し,建設業者又は販売業者から見
積り依頼があったときはチャンピオンから連絡を受けた当該
チャンピオンの見積価格より高い価格を提示するなどの方法に
より,チャンピオンが販売できるように協力する
(d)  チャンピオン以外の者が,チャンピオンの見積価格より低い
価格を提示するなどにより販売した物件があったときは,ペナ
ルティーとして,次年度の各社の配分数量を定める際に,当該
物件に係る数量をその者の配分数量から差し引くとともに,当
該数量をチャンピオンの配分数量に加える
旨の合意の下に,チャンピオンを決定し,チャンピオンが販売で
きるようにしていた。
 7社は,前記aにより,首都圏における公団住宅用キッチンの
大部分を販売していた。
 クリナップ株式会社は,平成10年4月15日,各社の部長級及び
課長級の者による総会と称する会合において,前記aの合意から
離脱した。
 平成10年6月19日,本件について,当委員会が独占禁止法の規
定に基づき審査を開始したところ,7社のうちクリナップ株式会
社を除く6社は,同日以降,前記aの合意に基づきチャンピオン
を決定し,チャンピオンが販売できるようにする行為を取りやめ
ている。
(イ) 東京都関係(平成11年(勧)第9号)
 関係人6社は,かねてから,東京都が新築及び建替えにより建
設する都営住宅(戸数が20戸以下のものを除く。)に設置される
集合住宅用キッチン(取付工事を伴う場合は,当該工事を含む。
以下「都営住宅用キッチン」という。)の販売方策を検討してき
たところ,遅くとも平成9年4月以降,都営住宅用キッチンにつ
いて,販売価格の低落防止等を図るため
(a)  各社の部長級及び課長級の者による会合を開催し,年度ごと

(ⅰ)  都営住宅用キッチンの総販売数量に占める各社の販売すべ
き数量の割合(以下「販売比率」という。)を定め
(ⅱ)  建設業者又は販売業者から見積り依頼が見込まれる都営住
宅用キッチンの物件の一覧表を作成し,販売比率により各社
に配分する数量(以下「配分数量」という。)を算定し
(ⅲ)  配分数量に基づき,販売希望の有無,建設業者との取引の
継続性等を勘案して前記(ⅱ)の一覧表に記載された物件を各社
に割り振り
当該物件の割り振りを受けた者を優先的に販売すべき者(以下
「チャンピオン」という。)とする
(b)  前記(a)によりチャンピオンとされた者以外の者が,建設業者
の意向等により自社が販売することに関し当該チャンピオンの
了解を得るなどした物件については,その者を新たなチャンピ
オンとする
(c)  チャンピオン以外の者は他の者がチャンピオンとなった物
件について,販売活動を自粛し,建設業者又は販売業者から見
積り依頼があったときはチャンピオンから連絡を受けた当該
チャンピオンの見積価格より高い価格を提示するなどの方法に
より,チャンピオンが販売できるように協力する
(d)  チャンピオン以外の者が,チャンピオンの見積価格より低い
価格を提示するなどにより販売した物件があったときは,ペナ
ルティーとして,次年度の各社の配分数量を定める際に,当該
物件に係る数量をその者の配分数量から差し引くとともに,当
該数量をチャンピオンの配分数量に加える
旨の合意の下に,チャンピオンを決定し,チャンピオンが販売で
きるようにしていた。
 6社は,前記aにより,都営住宅用キッチンの大部分を販売し
ていた。
 クリナップ株式会社は,平成10年4月15日,各社の部長級及び
課長級の者による総会と称する会合において,前記aの合意から
離脱した。
 平成10年6月19日,本件について,当委員会が独占禁止法の規
定に基づき審査を開始したところ,6社のうちクリナップ株式会
社を除く5社は,同日以降,前記aの合意に基づきチャンピオン
を決定し,チャンピオンが販売できるようにする行為を取りやめ
ている。
排除措置
(ア) 住宅・都市整備公団関係
 7社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも平成9年4月以降行っていた,首都圏における公団住
宅用キッチンについて,建設業者又は販売業者から見積り依頼が
見込まれる物件ごとに優先的に販売すべき者を決定し,その者が
販売できるようにしていた行為を取りやめていることを確認する
こと。
 次の事項を首都圏における公団住宅用キッチンの取引先に周知
徹底させること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,首都圏における公団住宅用キッチンについ
て,優先的に販売すべき者を決定せず,各社がそれぞれ自主的
に販売活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,首都圏に
おける公団住宅用キッチンについて,優先的に販売すべき者を決
定しないこと。
(注)  クリナップ株式会社については,勧告を応諾しなかったの
で,審判開始決定が行われた。
(イ) 東京都関係
 6社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも平成9年4月以降行っていた,都営住宅用キッチンに
ついて,建設業者又は販売業者から見積り依頼が見込まれる物件
ごとに優先的に販売すべき者を決定し,その者が販売できるよう
にしていた行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を都営住宅用キッチンの取引先に周知徹底させるこ
と。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,都営住宅用キッチンについて,優先的に販
売すべき者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に販売活動を行
う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,都営住宅
用キッチンについて,優先的に販売すべき者を決定しないこと。
(注)  クリナップ株式会社については,勧告を応諾しなかったの
で,審判開始決定が行われた。
独占禁止法第8条第1項第4号違反事件
社団法人浜北市医師会に対する件(平成10年(勧)第26号)

関係人
違反事実等
(ア)  社団法人浜北市医師会(以下「浜北市医師会」という。)は,か
ねてから,全体会等において,医療機関相互の広告活動による患者
の争奪を防止する等のため,会員の広告方法等について検討してき
たところ,平成7年2月25日ころ,静岡県浜北市所在の浜北市保健
センター(以下「保健センター」という。)で開催した総会におい
て,
 看板以外の広告については,その媒体を原則として定期刊行物
の新聞,雑誌及びチラシのみに限定し,バス,電車等の車内にお
いて行う広告等を禁止するとともに,広告する時期は医療機関の
新規開業,移転等の場合に限る
 看板については,自己の医療機関の所在地点から1,000メート
ルを超える場所に設置することを禁止し,1,000メートル以内に
設置する場合においては,その数を10箇所以内とする
 健康相談については,その実施に係る広告を行わない
 前記bの規定に違反する看板を既に設置している会員は,当該
看板を平成9年3月31日までに撤去する
こと等を内容とする浜北市医師会広告自粛規程(以下「広告自粛規
程」という。)を決定し,平成7年4月1日から実施することと
し,その旨を会報等を通じて会員に周知した。
 広告自粛規程は,平成8年5月11日ころ及び平成9年2月22日こ
ろ保健センターで開催された浜北市医師会の総会における決定に基
づき一部変更され,当該変更は会報等を通じて会員に周知されてい
る。
(イ)  浜北市医師会は,平成8年8月8日ころ,静岡県浜北市所在の浜
名湖ブルワリーで開催した理事会において,会員に対し,広告自粛
規程に違反する広告について,平成9年3月31日までに改めるよう
要請することを決定し,その旨を会報等を通じて会員に周知した。
 その後,浜北市医師会は,平成8年9月27日付けの文書により,
会員に対し,看板の設置状況を報告させる等して,広告自粛規程に
違反する看板(以下「違反看板」という。)を設置していた会員に
対して,広告自粛規程を遵守するよう要請し,違反看板をおおむね
撤去させている。
 また,浜北市医師会は,違反看板を新規に設置しようとする会員
に対して,広告自粛規程を遵守するよう要請し,違反看板を新規に
設置させないようにしている。
(ウ)  浜北市医師会の会員は,広告自粛規程をおおむね遵守している。
排除措置
 浜北市医師会に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  平成7年2月25日ころに決定し,平成8年5月11日ころ及び平成
9年2月22日ころに変更した広告自粛規程を破棄するとともに,同
規程に基づいて行っている会員の広告活動を制限する行為を取りや
めること。
(イ)  前記(ア)に基づいて採った措置を会員に周知徹底させること。
(ウ)  同医師会は,今後,前記(ア)と同様の方法により,会員の広告活動
を制限する行為を行わないこと。
独占禁止法第19条違反事件
(1) グランドデュークス株式会社に対する件(平成10年(勧)第14号)

関係人
違反事実等
(ア)  グランドデュークス株式会社(以下「グランドデュークス」とい
う。)は,米国所在のゼネラル・エコロジー・インコーポレイテッ
ド(以下「ゼネラル・エコロジー社」という。)の製造に係る,
シーガルフォー・ブランドの据置型浄水器(以下「シーガル
フォー」という。)等の日本国内における輸入総代理店である。グ
ランドデュークスは,かねてから,ゼネラル・エコロジー社に対し
て,シーガルフォーの並行輸入品(以下「並行輸入浄水器」とい
う。)の我が国への流入について懸念を表明していたところ,平成
6年ころ,海外販売業者からグランドデュークスの取引先販売業者
に対し,同社の卸売価格を大幅に下回る価格で注文に応じる旨の引
き合いがあったとの情報に接し,並行輸入浄水器が国内において廉
価で供給されるおそれが生じたため,平成6年10月6日ころ,ゼネ
ラル・エコロジー社に対し,並行輸入品対策について質したとこ
ろ,ゼネラル・エコロジー社から,我が国において並行輸入浄水器
の存在が判明した場合には,グランドデュークスが当該並行輸入浄
水器に付されたシリアルナンバーを調査してこれをゼネラル・エコ
ロジー社に通報することにより,ゼネラル・エコロジー社が当該並
行輸入浄水器の供給元である販売代理店を突き止め,当該販売代理
店に対し日本向けに供給しないよう警告を行い,これに従わない場
合には,当該販売代理店に対するシーガルフォーの供給を中止する
旨の回答を得た。
 グランドデュークスは,前記回答を得たことから,我が国におい
て並行輸入浄水器の存在が判明した場合には,当該並行輸入浄水器
に付されたシリアルナンバーを調査し,これをゼネラル・エコロ
ジー社に通報することにより,同社をして,シーガルフォーを我が
国の輸入販売業者に供給しないようにさせることとした。
(イ)  グランドデュークスの前記行為により,前記の輸入販売業者は,
前記販売代理店の供給に係るシーガルフォーについて,海外販売業
者からの並行輸入を行い,国内において販売することが困難となっ
ている。
排除措置
 グランドデュークスに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  ゼネラル・エコロジー社が製造する並行輸入浄水器の存在が判明
した場合に,当該浄水器に付されたシリアルナンバーを調査し,こ
れを同社に通報することにより,同社をして,同社製のシーガル
フォーを国内においてその並行輸入品を取り扱う輸入販売業者に供
給しないようにさせている行為を取りやめること。
(イ)  グランドデュークスは,前記(ア)に基づいて採った措置を前記輸入
販売業者に通知すること。
(2) 株式会社ナイキジャパンに対する件(平成10年(勧)第17号)

関係人
違反事実等
(ア)
(a)  株式会社ナイキジャパン(以下「ナイキジャパン」とい
う。)は,米国所在のナイキ・インコーポレイテッド(以下
「ナイキ社」という。)から,同社の有する商標について我が
国における独占的な使用許諾を受けて,ナイキ社の有する商標
を付したスポーツシューズ(以下「ナイキシューズ」とい
う。)を輸入し,自ら又は卸売業者を通じて小売業者に販売し
ている。
 ナイキジャパンは,かねてから,ナイキシューズの小売価格
の水準を維持する旨の方針を有しており,このため,ナイキ
シューズの販売に関し,小売業者に対し,ナイキジャパンが定
めた希望小売価格(以下「希望小売価格」という。)で販売す
ること及び並行輸入品を取り扱わないことを要請するなどの施
策を講じていたところ,平成7年の中ころから,ナイキシュー
ズの人気が高まり,その需要が増大してきた状況の下で,引き
続き,展示受注会等の際に,自ら又は卸売業者を通じて,小売
業者に対し,希望小売価格で販売すること,並行輸入品を取り
扱わないこと及び希望小売価格を下回る価格を表示した新聞折
り込み広告等を行わないことを要請するとともに,同方針を徹
底するため,平成7年12月ころまでに,キー・アカウント(ナ
イキジャパンが重点的に販売促進活動を行う小売業者の店舗を
いう。以下同じ。)の選定基準として,希望小売価格で販売す
る店舗であること及び並行輸入品を取り扱わない店舗であるこ
とを含む基準を設定し,同基準を満たすキー・アカウントから
のみトップモデルの製品(一般消費者の間において高い人気を
有しているステイトメント及びパフォーマンスに分類されてい
る製品をいう。以下同じ。)の注文を受け付けることとした。
 ナイキジャパンは,前記基準に基づき,キー・アカウントを
選定し,平成8年1月ころに開催した展示受注会等の際に,自
ら又は卸売業者を通じて,小売業者に対し,同基準を周知する
とともに,同月ころに開催した展示受注会のときから,キー・
アカウントからのみトップモデルの製品の注文を受け付けてい
る。
 ナイキジャパンは,平成8年7月ころ及び平成9年7月ころ
に開催した展示受注会に向けてキー・アカウントの見直しを
行っており,その際にも,前記内容を含む基準に基づいてキー
・アカウントを選定していた。
(b)  さらに,ナイキジャパンは,登録すべき小売業者の店舗の業
態について見直しを図ってきたところ,一般店のうち,ナイキ
ジャパンの前記(a)の要請を受け入れないディスカウント業態の
店舗が存在したことから,平成8年5月ころ,前記(a)の方針を
徹底するため,今後,ディスカウント業態の店舗については,
登録の対象外とし,ナイキシューズを販売しないようにするこ
ととした。
 その後,ナイキジャパンは,自らディスカウント業態の店舗
との取引を中止するとともに,平成8年11月ころから,取引先
卸売業者に対し,その取引先小売業者について見直しを指示
し,ディスカウント業態の店舗にはナイキシューズを販売しな
いようにさせていた。
(c)  ナイキジャパンは,ナイキシューズの小売業者における在庫
が増えてきたことを受けて,平成9年4月ころ,ナイキシュー
ズの販売に関し,シーズン中及びシーズン終了後1か月以内に
販売するものについては希望小売価格で販売すること及びシー
ズン終了後1か月を経過した後に販売するものについては希望
小売価格から3割引,シーズン終了後2か月を経過した後に販
売するものについては希望小売価格から5割引の価格(以下
「シーズン終了後の値引き限度価格」という。)まで,それぞ
れ値引き販売を認めるものの,希望小売価格を下回る価格を表
示した新聞折り込み広告等を行わないことを小売業者に対し要
請することとし,同年7月ころ,自ら又は卸売業者を通じて,
小売業者に対し,同要請を行った。
 ナイキジャパンは,前記aの実効を確保するため,小売業者の
店舗に対する同社の営業部員の巡回活動による情報及び他の小売
業者等からの苦情に基づき,前記aの要請を遵守していない小売
業者に対しては,自ら又は卸売業者を通じて,希望小売価格で,
また,シーズン終了後1か月を経過した後に販売するものについ
ては,シーズン終了後の値引き限度価格以上の価格で販売するこ
と,並行輸入品を取り扱わないこと又は希望小売価格を下回る価
格を表示した新聞折り込み広告等を行わないことを要請し,希望
小売価格若しくはシーズン終了後の値引き限度価格を下回る価格
での販売,並行輸入品の取扱い又は希望小売価格を下回る価格を
表示した新聞折り込み広告等をやめさせたほか,同要請に従わな
い場合は,キー・アカウントとしての登録の抹消,出荷停止等の
措置を講じていた。
(イ)  ナイキジャパンの前記(ア)の行為により,小売業者は,おおむね,
希望小売価格で,また,シーズン終了後1か月を経過した後に販売
するものについては,シーズン終了後の値引き限度価格以上の価格
でナイキシューズを販売していた。
(ウ)  平成9年11月26日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定
に基づき審査を開始したところ,ナイキジャパンは,ナイキシュー
ズについて,自ら又は卸売業者を通じて,小売業者に対し,希望小
売価格で,また,シーズン終了後1か月を経過した後に販売するも
のについては,シーズン終了後の値引き限度価格以上の価格で販売
するようにさせる行為を取りやめている。
排除措置
 ナイキジャパンに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  ナイキシューズの販売に関し,自ら又は卸売業者を通じて,小売
業者に対し,ナイキジャパンが定めた希望小売価格で,また,シー
ズン終了後1か月を経過した後に販売するものについては,同社が
平成9年4月ころに定めたシーズン終了後の値引き限度価格以上の
価格で販売すること,並行輸入品を取り扱わないこと及び同希望小
売価格を下回る価格を表示した新聞折り込み広告等を行わないこと
を要請するとともに,次の措置を講ずることによって,小売業者に
対し,ナイキシューズを同希望小売価格で,また,シーズン終了後
1か月を経過した後に販売するものについては,同値引き限度価格
以上の価格で販売するようにさせる行為を取りやめていることを確
認すること。
 ナイキジャパンがキー・アカウントの選定基準として,前記希
望小売価格で販売する店舗であること及び並行輸入品を取り扱わ
ない店舗であることを含む基準を定め,同基準を満たすキー・ア
カウントからのみ,ナイキシューズのうち,トップモデルの製品
の注文を受け付けること。
 ディスカウント業態の店舗については,ナイキシューズを販売
する小売業者の店舗としての登録の対象外とし,同製品を販売し
ないようにすること。
 小売業者の店舗の巡回活動による情報等に基づき,ナイキ
シューズの販売に関し,前記希望小売価格若しくは前記値引き限
度価格を下回る価格での販売,並行輸入品の取扱い又は同希望小
売価格を下回る価格を表示した新聞折り込み広告等を行っている
小売業者に対し,当該行為を取りやめるよう要請すること等によ
り,同希望小売価格で,また,シーズン終了後1か月を経過した
後に販売するものについては,同値引き限度価格以上の価格で販
売するようにさせること。
(イ)  前記(ア)に基づいて採った措置を,取引先卸売業者,取引先小売業
者及び一般消費者に対し,それぞれ周知徹底させること。
(ウ)  今後,前記(ア)の行為と同様の行為により,小売業者の販売価格を
制限しないこと。
(3) 株式会社ローソンに対する件(平成10年(勧)第18号)
関係人
違反事実等
(ア)
 株式会社ローソン(以下「ローソン」という。)は,かねてか
ら,日用品納入業者の「LAWSON」との店舗名称,商標,
サービスマーク等統一的な営業上の標章の下に,食品,飲料,日
用雑貨品の小売等を行ういわゆるコンビニエンス・ストアの
チェーン店(以下「ローンンチェーン店」という。)に対する納
入高又は納入数量(以下「納入高等」という。)を基準とする仕
入割戻しに関する制度を設け,前記日用品納入業者のうちローソ
ンチェーン店に対する納入高等が比較的多い者(以下「主要日用
品納入業者」という。)との間で,年間の仕入割戻しに関して
「割戻に関する約定書(A)」と称する書面による契約(以下「A契
約」という。)及び3か月以内の仕入割戻しに関して「割戻に関
する約定書(B)」と称する書面による契約(以下「B契約」とい
う。)を締結しているが,A契約及びB契約に基づく仕人割戻金
について,その収受すべき額の年間の予算(以下「割戻予算」と
いう。)を作成し,当該予算を達成するよう努めてきたところ,
(a)  平成9年8月ころ,平成9年度における割戻予算を達成する
ため,大部分のB契約について,主要日用品納入業者ごとに,
B契約の名目で契約するものの実際にはB契約の制度本来の基
準から離れて特段の算出根拠を設けることなく設定した金銭の
収受計画を策定し,
(b)  さらに同年11月ころ,ローソンチェーン店に対する日用品の
納入高等が年度当初の予想を下回ることとなったため,A契約
に基づく仕人割戻金が不足する見込みとなったことから,この
不足分をB契約の名目による金銭を増額して収受することに
よって割戻予算を達成することを企図し,前記(a)の収受計画
を,特段の算出根拠を設けることなく増額修正して,B契約の
名目による前年度の金銭の収受実績を約3億円上回る約10億円
とする「+α計画」と称する増収計画(以下「プラスアルファ
計画」という。)を策定した。
 ローソンは,プラスアルファ計画及びこれに対応する主要日用
品納入業者の対応状況を踏まえてプラスアルファ計画を適宜修正
した計画等に基づき,同社の決算期である平成10年2月ころ,主
要日用品納入業者約60名に対し,特段の算出根拠のない一定額の
金銭を提供するよう要請した。
 前記bの要請を受けた主要日用品納入業者の大部分は,当該金
銭を提供すべき合理的理由がなく,かつ,その金額について特段
の算出根拠が明確になされていないにもかかわらず,要請の時期
が次期において取り扱われる商品の選定時であり,また,ローソ
ンとの納入取引を継続して行う立場上,同要請に従うことを余儀
なくされ,おおむね,この要請に従っていた。
(イ)
(a)  ローソンは,日用品について,ローソンチェーン店の売上げ
の増大を図るため,ローソンチェーン店の取扱い優先度が高い
ものとして選定したいわゆる標準棚割商品(以下単に「標準棚
割商品」という。)の統一的な陳列を行うこととし,平成10年
1月23日ころ,千葉県船橋市所在の株式会社野村商事の会議室
で開催した会合において,主要日用品納入業者約70名に対し,
すべての標準棚割商品の一定個数をローソンチェーン店に無償
で納入するよう要請し,同会合の席上,この要請に応ずるか否
かを書面により回答させた。
(b)  ローソンは,前記(a)の会合以後,会計処理の便宜上,前記(a)
の無償での納入の要請を1円での納入(以下「1円納入」とい
う。)の要請に変更するとともに,この要請を行うことによっ
て,ローンンチェーン店が標準棚割商品以外の在庫商品を処分
するための費用として,約13億円を日用品納入業者に負担させ
ることとし,前記(a)の会合において要請に応じないと回答した
日用品納入業者及び同会合に招集しなかった日用品納入業者に
対しても再三にわたり1円納入の要請を行った。
 前記aの要請を受けた日用品納入業者の大部分は,統一的な陳
列の実現に要する費用は本来ローソン又はローソンチェーン店が
負担すべきであり,1円納入の要請に応じるべき合理的理由がな
いにもかかわらず,要請の時期が次期において取り扱われる商品
の選定時であり,また,ローソンとの納入取引を継続して行う立
場上,同要請に従うことを余儀なくされ,日用品納入業者の一部
は平成10年2月25日ころ1円納入を実施し,また,その他の日用
品納入業者の多くも1円納入を順次約定しつつあった。
(ウ)  本件について,平成10年4月16日,当委員会が独占禁止法の規定
に基づき審査を開始したところ,ローソンは,前記(ア)bの金銭の提
供の要請並びに前記(イ)の1円納入の要請及び約定を取りやめてい
る。
排除措置
 ローソンに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  次のa及びbの事項を日用雑貨品の納入業者に,次のbの事項を
自己の仕入担当の従業員に,それぞれ周知徹底させること。
 日用雑貨品の納入業者に対して,ローソンの決算期である平成
10年2月ころ,特段の算出根拠がなく,かつ,同納入業者にとっ
て提供すべき合理的理由がない金銭を提供するよう要請していた
行為並びに同年1月ころ以降,同社が本部機能を有するフラン
チャイズ・システムにおける加盟店及び直営店に対し日用雑貨品
を1円で納入するよう要請していた行為を取りやめている旨
 今後,納入業者に対し,前記aと同様の方法により,経済上の
利益を提供させる行為を行わない旨
(4) マイクロソフト株式会社に対する件(平成10年(勧)第21号)

関係人
違反事実等
(ア)
(a)  マイクロソフト株式会社(以下「マイクロソフト社」とい
う。)は,遅くとも平成4年ころ以降,我が国のワードプロ
セッサ用ソフトウェア(以下「ワープロソフト」という。)の
市場において,同社が供給する日本語ワープロソフトである
「ワード」の市場占拠率を高めることに力を注いでいた。
(b)  主要なパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」とい
う。)製造販売業者の一つである富士通株式会社(以下「富士
通」という。)は,平成6年11月,ワープロソフトとして株式
会社ジャストシステムが供給していた「一太郎」を搭載したパ
ソコンを発売したところ,同機は一般消費者の人気を博し,さ
らに,平成7年2月には,ワープロソフトとして「一太郎」,
表計算用ソフトウェア(以下「表計算ソフト」という。)とし
て「ロータス1-2-3」を搭載したパソコンを発売した。
(a)  マイクロソフト社は,当初,パソコン製造販売業者が自社の
応用ソフトウェアをパソコン本体に搭載して出荷することに否
定的であったが,「ワード」に競合する「一太郎」のみがパソ
コン本体に搭載されて販売されることは,「ワード」の市場占
拠率を高める上で重大な障害となるものと危惧し,パソコン製
造販売業者の出荷するパソコンについて,表計算ソフトの市場
において有力な「エクセル」とともに「ワード」を搭載させる
こととし,「ワード」のパソコン製造販売業者向けの供給を拡
大することとした。
(b)  マイクロソフト社は,平成7年1月ころ,富士通に対し,
「エクセル」と「ワード」を併せてパソコン本体に搭載して出
荷する権利を許諾する契約の締結を申し入れた。この申入れに
対し,富士通は,当時表計算ソフトとして最も人気があった
「エクセル」と当時ワープロソフトとして最も人気があった
「一太郎」を併せて搭載したパソコンを発売することを希望
し,「エクセル」のみをパソコン本体に搭載して出荷する権利
を許諾する契約の締結を要請した。
 しかしながら,マイクロソフト社は,この要請を拒絶し,
「エクセル」をパソコン本体に搭載するためには「ワード」を
併せて搭載せざるを得ないと考えた富士通に対し,「ワード」
を併せてパソコン本体に搭載して出荷する権利を許諾する契約
を締結することを受け入れさせ,平成7年3月1日付けで,富
士通との間で,「エクセル」と「ワード」を併せてパソコン本
体に搭載して出荷する権利を許諾する契約(以下「プレインス
トール契約」という。)を締結した。
 この契約の締結により,富士通は,平成7年3月,「エクセ
ル」と「ワード」を併せて搭載したパソコンを発売した。
(c)  マイクロソフト社は,平成7年8月ころ,主要なパソコン製
造販売業者の一つである日本電気株式会社(以下「日本電気」
という。)に対し,プレインストール契約を締結することを提
案した。日本電気は,当時搭載する表計算ソフトとワープロソ
フトの種類を検討していたところ,マイクロソフト社が「エク
セル」と「ワード」とを分離してパソコン本体に搭載して出荷
する権利を許諾しないであろうと考えたこと等から,この提案
を受け入れ,マイクロソフト社との間で,プレインストール契
約を締結した。
 この契約の締結により,日本電気は,平成7年11月,「エク
セル」と「ワード」を併せて搭載したパソコンを発売した。
(d)  マイクロソフト社は,平成8年1月以降,「エクセル」及び
「ワード」のいわゆるバージョンアップ(同一のソフトウェア
が改良されることをいう。以下同じ。)に伴い,富士通及び日
本電気との間で,プレインストール契約を更新するとともに,
その他のパソコン製造販売業者との間で,順次,プレインス
トール契約を締結した。
 マイクロソフト社は,この契約の締結交渉の際に,一部のパ
ソコン製造販売業者から「エクセル」のみを対象とした契約を
締結することを要請されたが,これを拒絶し,プレインストー
ル契約を受け入れさせた。
 マイクロソフト社とプレインストール契約を締結したこれら
パソコン製造販売業者は,平成8年2月以降,「エクセル」と
「ワード」を併せて搭載したパソコンを販売した。
(e)  マイクロソフト社は,平成8年7月,一部のパソコン販売業
者から「エクセル」のみを対象とした契約を締結することを要
請されたが,これを拒絶した。
(f)  マイクロソフト社は,平成8年8月,パソコン製造販売業者
である日本アイ・ビー・エム株式会社(以下「日本アイ・ビー・
エム」という。)から契約締結業務について委託を受けてい
る同社の子会社との間で,また,平成8年10月には,パソコン
製造販売業者であるコンパック株式会社(以下「コンパック」
という。なお,同社は,平成10年1月1日,コンパックコン
ピュータ株式会社に商号変更している。)との間で,それぞ
れ,「エクセル」と「ワード」を併せてパソコン本体に同梱し
て出荷する権利を許諾する契約を締結した。
 この契約の締結により,日本アイ・ビー・エムは平成8年9
月,コンパックは平成8年10月,それぞれ,「エクセル」と
「ワード」を併せて同梱したパソコンを発売した。
(a)  マイクロソフト社は,平成9年3月,「アウトルック」と称
するスケジュール管理ソフトウェアの供給を開始したところ,
これに先立ち,「アウトルック」の供給を拡大するために,パ
ソコン製造販売業者に対し,「エクセル」及び「ワード」に加
えて「アウトルック」を併せてパソコン本体に搭載又は同梱さ
せることを企図し,平成8年12月以降,「エクセル」及び
「ワード」のいわゆるバージョンアップに伴う契約更新の際
に,パソコン製造販売業者に対し,「エクセル」,「ワード」及
び「アウトルック」を併せてパソコン本体に搭載又は同梱して
出荷する権利を許諾する契約を締結することを提案し,平成9
年3月以降,パソコン製造販売業者との間で,プレインストー
ル契約等を更改し,あるいは,新たに締結した。
(b)  マイクロソフト社は,この契約交渉の際に,一部のパソコン
製造販売業者から,従来どおり「エクセル」及び「ワード」の
みを対象とした契約を締結することを要請されたが,これを拒
絶し,契約交渉を行ったパソコン製造販売業者すべてに,「エ
クセル」,「ワード」及び「アウトルック」を併せてパソコン本
体に搭載又は同梱して出荷する権利を許諾する契約の締結を受
け入れさせた。
(c)  この契約の更改又は締結により,パソコン製造販売業者は,
平成9年3月以降,「エクセル」,「ワード」及び「アウトルッ
ク」を併せて搭載又は同梱したパソコンを発売した。
 マイクロソフト社の前記行為に伴い,平成7年以降,ワープロ
ソフトの市場における「ワード」の市場占拠率が拡大し,平成9
年度には第1位を占めるに至っている。また,平成9年度には,
スケジュール管理ソフトの市場において,「アウトルック」が第
1位を占めるに至っている。
排除措置
 マイクロソフト株式会社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  取引先パソコン製造販売業者に対し,同製造販売業者が「エクセ
ル」をパソコン本体に搭載又は同梱して出荷する権利を許諾する際
に,「ワード」を併せて搭載又は同梱させている行為,さらに,「エ
クセル」及び「ワード」をパソコン本体に搭載又は同梱して出荷す
る権利を許諾する際に,アウトルックを併せて搭載又は同梱させて
いる行為を取りやめること。
(イ)  取引先パソコン製造販売業者と締結している「エクセル」,「ワー
ド」及び「アウトルック」を併せてパソコン本体に搭載又は同梱し
て出荷する権利を許諾する契約について,このうち1又は2のソフ
トウェアを搭載又は同梱して出荷する権利を許諾する契約に変更す
るよう取引先パソコン製造販売業者から申出を受けた場合には,当
該申出に応じること。
(ウ)  今後,取引先パソコン製造販売業者に対し,同製造販売業者が
「エクセル」又は「ワード」をパソコン本体に搭載又は同梱して出
荷する権利を許諾する際に,当該ソフトウェア以外のパソコン用ソ
フトウェアを併せて搭載又は同梱させる行為を行わないこと。
(エ)  次の事項を取引先パソコン製造販売業者及び一般消費者に周知徹
底させること。
 前記(ア)及び(イ)に基づいて採った措置
 今後,前記(ウ)と同様の行為を行わない旨
(5) 日本ハム株式会社に対する件(平成11年(勧)第1号)

関係人
違反事実等
(ア)
 日本ハム株式会社(以下「日本ハム」という。)は,同社が製
造販売している「ニッポンハム」の商標を付したハム・ソーセー
ジ類等(以下「ニッポンハムブランド製品」という。)のうち
「シャウエッセン」の商標を付したウインナーソーセージ(以下
「シャウエッセン」という。)について,昭和60年2月に販売を
開始して以降,一般消費者の人気が高まり,その需要が増大した
ことから,主力商品として販売し,その利益を確保するため,取
引先小売業者に対し,希望売価(日本ハムが,シャウエッセンの
販売に当たり,その内容量等が異なる商品ごとに,取引先小売業
者の販売活動の態様に対応して設定した,当該小売業者が一般消
費者に対する廉売広告(以下「廉売広告」という。)を行わない
場合における最低の小売価格,廉売広告を小売店舗内のみで行う
場合における最低の小売価格及び新聞折り込み広告により広く廉
売広告を行う場合における最低の小売価格の総称をいう。以下同
じ。)以上の価格で販売させる意図を有していたところ,平成6
年1月ころ,希望売価及びこれを取引先小売業者に厳守させ,値
崩れを起こさせないようにする旨が記載された「商品情報マニュ
アル」を作成し,同年1月から2月ころまでの間に,これを同社
が50パーセント以上の出資をし,役員の兼任又は派遣を行ってい
る製造販売会社3社及び同社が100パーセントの出資をし,役員
の全員を兼任又は派遣している販売会社14社(以下これらの製造
販売会社及び販売会社を「販社」と総称する。)の従業員に配布
するとともに,取引先小売業者との商談において,「商品情報マ
ニュアル」に記載された希望売価を取引先小売業者に厳守するよ
う要請する旨を同従業員に指示した。この指示に基づき同社及び
販社の従業員は,取引先小売業者との商談の際に,当該小売業者
に対し,希望売価以上の価格でシャウエッセンを販売するよう要
請した。
 その後,日本ハムは,毎年1月から2月ころ前記と同様の行為
を行うことにより,取引先小売業者に対し,希望売価以上の価格
でシャウエッセンを販売するよう要請してきた。
 また,日本ハムは,平成8年6月28日ころ,営業本部長,マー
ケティング本部部長等の役員などが出席する商品戦略会議加工品
部会において,原料価格の高騰に対処するため,シャウエッセン
の価格体系の改定を検討した結果,内容量の減量で対応し,希望
売価は据え置くことを決定するとともに,取引先小売業者に対
し,引き続き希望売価以上の価格でシャウエッセンを販売するよ
う要請することを確認し,この確認事項の実施を同社及び販社の
従業員に指示した。この指示に基づき,日本ハム及び販社の従業
員は,取引先小売業者に対し,引き続き希望売価以上の価格で
シャウエッセンを販売するよう要請してきた。
 日本ハムは,前記aの要請の実効を確保するため,自ら,及び
販社を通じて,
(a)  取引先小売業者が希望売価を下回る価格でシャウエッセンを
販売することを当該小売業者との商談の際に察知したときは,
当該小売業者に対し,希望売価以上の価格でシャウエッセンを
販売する旨,廉売する商品をシャウエッセン以外のニッポンハ
ムブランド製品に変更し,シャウエッセンについては希望売価
以上の価格で販売する旨又はシャウエッセンの廉売についての
新聞折り込み広告をやめる旨を要請する
(b)  他の取引先小売業者からの苦情等により取引先小売業者が希
望売価を下回る価格でシャウエッセンを販売していることが判
明したときは,当該小売業者に対し,希望売価以上の価格で
シャウエッセンを販売する旨を改めて要請する
(c)  前記(a)又は(b)の日本ハムの要請に応じなかった取引先小売業
者に対しては,シャウエッセンについて,出荷を制限し,当該
小売業者の利益率(日本ハムがあらかじめ定めた取引先小売業
者の粗利益の率をいう。以下同じ。)を引き下げることにより
卸売価格を引き上げ,又は当該小売業者の店頭において希望売
価を下回る価格で販売されているシャウエッセンを買い占める
(d)  巾着袋品(全国の量販店,食料品店等の小売業者によって販
売されている巾着袋型の商品及び同型の商品2個を一体にした
商品。以下同じ。)を希望売価を下回る価格で販売しようとす
る有力な取引先量販店等に対しては,当該量販店等の周辺の小
売業者に希望売価を下回る価格での販売が波及しないように,
当該量販店等の特売時等における販売において,巾着袋品に代
えて,当該量販店等のみにおいて販売する包装や内容量の仕様
が異なるシャウエッセンをその希望売価を提示して提供する
こと等の措置を講じていた。
(イ)  日本ハムの前記(ア)の行為により,取引先小売業者は,おおむね,
希望売価以上の価格でシャウエッセンを販売していた。
(ウ)  本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始
したところ,日本ハムは,平成10年11月以降,シャウエッセンにつ
いて,取引先小売業者に対し,希望売価以上の価格で販売するよう
にさせる行為を取りやめている。
排除措置
 日本ハムに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  シャウエッセンの販売に関し,自ら,並びに製造販売会社及び販
売会社を通じて,取引先小売業者に対し同社が定めた小売価格で販
売するようにさせていた行為を取りやめていることを確認するこ
と。
(イ)  前記(ア)に基づいて採った措置及び同社が定めているシャウエッセ
ンの小売価格は単なる参考価格であって,取引先小売業者の自由な
販売価格の決定を拘束するものではない旨を,取引先小売業者及び
一般消費者に対し,周知徹底させること。
(ウ)  前記(ア)及び(イ)に基づいて採った措置,同社が定めているシャウ
エッセンの小売価格は単なる参考価格であって,取引先小売業者の
自由な販売価格の決定を拘束するものではない旨及び商談の際に同
社が定めているシャウエッセンの小売価格を取引先小売業者に対し
て提示するときは,同小売価格は単なる参考価格であって取引先小
売業者の自由な販売価格の決定を拘束するものではないことを説明
する必要がある旨を,同社の従業員(専ら製造に従事する者を除
く。)並びに前記製造販売会社及び前記販売会社の役員及び従業員
(専ら製造に従事する者を除く。)に周知徹底させること。
(エ)  今後,(ア)の行為と同様の行為により,取引先小売業者の自由な販
売価格の決定を拘束しないこと。
(6) 鳥取中央農業協同組合に対する件(平成11年(勧)第2号)

関係人
違反事実等
(ア)
  鳥取県倉吉市及び東伯郡のうち東伯町を除く8町村においてそ
れぞれ経済事業等を行っていた農業協同組合(以下「9農業協同
組合」という。)の合併により設立された鳥取中央農業協同組合
(以下「鳥取中央農協」という。)は,設立に伴い,従来,9農
業協同組合に農薬,肥料,各種ビニール等の農業用生産費材(以
下「農業用生産資材」という。)を販売していた販売業者と農業
用生産資材の取引を行うに当たり,平成10年3月中旬ころ,組合
員の農業用生産資材の購入数量に占める自己の供給比率を引き上
げ,手数料収入の増加を図る等のため,同販売業者に対し農業用
生産資材を原則として組合員に直接販売しないようにさせ,さら
に,同販売業者のうち小売店舗を有するものが同店舗において農
業用生産資材を販売する場合であっても,当該農業用生産資材に
ついて組合員向けに配布するチラシ広告等に自己の供給価格より
低い価格を表示しないようにさせることとし,同販売業者にその
旨の取引契約の締結を求めることとした。
  鳥取中央農協は,前記aの方針に基づき,9農業協同組合への
農業用生産資材の販売額の多い主要な販売業者16社に対し,平成
10年3月26日ころ,鳥取中央農協の会議室において,農業用生産
資材を組合員に直接販売しないこと及び組合員向けに農業用生産
資材のチラシ広告等を配布するときは,事前に鳥取中央農協に相
談し,了解を得ることを要請した。
 また,鳥取中央農協は,前記aの方針に基づき,前記要請に併
せて,前記16社に対し,
(a)  販売業者は,農業用生産資材について,組合員から購入の申
込みを受けた場合は,鳥取中央農協に当該農業用生産資材を販
売したとの帳票類を作成することにより,鳥取中央農協が同組
合員に供給したこととすること
(b)  販売業者は,農業用生産資材について,組合員向けにチラシ
広告等を独自に配布しないこと
を内容とする条項を含む取引契約の各条項について説明し,同取
引契約の締結を求めた。
 鳥取中央農協は,前記16社のうち1社が鳥取中央農協の出資会
社であったことから,同社を前記取引契約の締結対象から除外
し,他の販売業者1社を加えた16社(以下「16社」という。)と
取引契約を締結することとし,当該販売業者に対しても前記と同
様の要請を行い,同取引契約の締結を求めた。
 なお,鳥取中央農協は,16社との間で前記取引契約を締結した
後に他の販売業者との間においても同様の内容の取引契約を締結
することとした。
 鳥取中央農協は,平成10年4月16日までに,16社との間で,前
記b(a)及び(b)を内容とする条項を含む取引契約を締結した。
(イ)  鳥取中央農協は,前記(ア)bの要請及び取引契約に基づき,16社に
対し,おおむね農業用生産資材を組合員に直接販売しないようにさ
せており,また,16社が組合員向けに農業用生産資材のチラシ広告
等を配布する場合は,鳥取中央農協に事前に了解を得るようにさ
せ,同チラシ広告等に記載する農業用生産資材の販売価格が自己の
供給価格より低いときは,自己の供給価格と同一となるよう表示価
格を引き上げさせている。
排除措置
 鳥取中央農協に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  農業用生産資材について取引契約を締結している購入先販売業者
16社に対し,同組合の組合員に原則として直接販売しないようにさ
せ,また,同16社が農業用生産資材について同組合の組合員向けの
チラシ広告等を配布する場合は 同組合に事前に了承を得るように
させ,同チラシ広告等に自己の供給価格より低い価格を表示しない
ようにさせている行為を取りやめること。
(イ)  前記16社と締結している取引契約のうち,次の内容の条項を削除
すること。
 購入先販売業者は,農業用生産資材について,鳥取中央農協の
組合員から購入の申込みを受けた場合は,同組合に当該農業用生
産資材を販売したとの帳票類を作成することにより,同組合が当
該組合員に供給したこととすること。
 購入先販売業者は,農業用生産資材について,鳥取中央農協の
組合員向けにチラシ広告等を独自に配布しないこと。
(ウ)  前記(ア)及び(イ)に基づいて採った措置を同組合の組合員及び購入先
販売業者に周知徹底させること。

5 審判開始決定事件

 公正取引委員会は,独占禁止法違反の疑いで審査を行い,同法に違反す
る事実があると認めて排除措置を採るよう勧告し(第48条第1項及び第2
項),勧告を受けたものが当該勧告を応諾しなかった場合において,事件
を審判手続に付することが公共の利益に適合すると認めたときは,当該事
件について事件の要旨を記載した文書をもって審判開始決定を行っている
(第49条第1項及び第50条第1項)。

 株式会社東芝ほか1名に対する件(平成10年(判)第28号)
関係人
審判開始決定書の概要
 株式会社東芝及び日本電気株式会社の2社(以下「2社」という。)
は,国の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令(昭和55年
政令第300号。)の規定が適用される指名競争入札又は一般競争入札の方
法により郵政省の発注する郵便番号自動読取区分機類のうち,郵便物自
動選別取りそろえ押印機,選別台付自動取りそろえ押印機,郵便物あて
名自動読取区分機,新型区分機,新型区分機用情報入力装置,バーコー
ド区分機及び区分機用連結部について,2社は,あらかじめ受注予定者
を決定し,受注予定者が受注できるようにしていたことにより,それぞ
れ,同省の全発注量のおおむね半分ずつを安定的に受注してきた。
 このため,公正取引委員会は,上試行為が独占禁止法第3条の規定に
違反したとして平成10年11月12日,2社に対し,勧告(平成10年(勧)
第20号)を行ったところ,2社が応諾しなかったため,同年12月4日,
審判開始決定を行い,審判係属中である(審判開始決定書は,附属資料
4-4参照)。