| (ア) | 対抗的価格設定による競争者との取引の制限 | 
                      
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                              | a | 基本的考え方 |  
                              |  | 一般的に,競争者の価格に対抗して価格を引き下げることは, 価格競争そのものであり,独占禁止法上問題となるものではない
 が,市場における有力な事業者が,継続的な取引関係にある取引
 の相手方に対し,その取引関係を維持するための手段として,自
 己の競争者から取引の申込みを受けたときには必ずその内容を自
 己に通知し,自己が対抗的に販売価格を引き下げれば,相手方は
 当該競争者とは取引しないこと等を約束させて取引し,これに
 よって当該競争者の取引の機会が減少する等のおそれがある場合
 には,当該行為は不公正な取引方法に該当し,違法となる(一般
 指定11項(排他条件付取引)又は13項(拘束条件付取引)。流
 通・取引慣行ガイドライン第1部第6の1(2)。)。
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                              | b | 調査結果による評価 |  
                              |  | 特約店,ユーザー等は,従来取引のない国内メーカー若しくは 輸入代理店から売り込みを受けた場合又は従来から複数の仕入先
 を有している場合,それぞれから見積りを取った上で,その価格
 を勘案して購入先を決定している。また,従来の取引先国内メー
 カーと価格交渉を行う際,他の供給者から示された価格を当該国
 内メーカーに提示して,交渉を有利に進めようとすることもある
 とされる。これは,価格交渉に当たっての当然のバーゲニング行
 為であると考えられる。一方,特約店等に対し,他の供給者から
 売り込みを受けたことを通知するよう要請している国内メーカー
 はなく,仕入先が特定の供給者に固定されるとか,特定の供給者
 が排除されることはないことが認められた。さらに,国内メー
 カーが特約店との間で一度決定した仕切価格を事後的に値引きす
 ることはないことが認められた。
 このように,対抗的価格設定について,独占禁止法上問題とな
 る事例はみられなかったが,国内メーカーにおいては,自己が市
 場における有力な事業者に該当することを十分に認識し,引き続
 き,独占禁止法上問題となるような対抗的価格設定を行うことの
 ないよう留意する必要がある。
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                        | (イ) | 取引先事業者の株式所有を手段又は理由とする排他的行為 | 
                      
                        |  | 
                          
                            
                              | a | 基本的考え方 |  
                              |  | 国内メーカーが取引先特約店の株式を取得し,その結果,一定 の取引分野における競争が実質的に制限されることとなる場合に
 は,独占禁止法第10条第1項に違反する。また,市場における有
 力な製造業者が,自己が株式を所有している取引先事業者に対
 し,株主としての地位を利用して,自己の商品のみを取り扱う旨
 の同意を取り付け,これによって競争者の取引の機会が減少する
 等のおそれがある場合には,当該行為は不公正な取引方法に該当
 し,違法となる(一般指定11項(排他条件付取引)。流通・取引
 慣行ガイドライン第1部第7の3(1)②。)。
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                              | b | 調査結果による評価 |  
                              |  | 国内メーカーの特約店に対する資本参加が増加する動きがみら れるが,国内メーカーの特約店に対する出資については,その目
 的(経営不振の救済),各特約店の規模,国内メーカーの出資を
 受けている特約店(以下「メーカー出資特約店」という。)の特
 約店全体に占める割合等を考慮すれば,それ自体,独占禁止法第
 10条第1項に違反する株式取得であったとは認められない。ま
 た,国内メーカーが,メーカー出資特約店に対し,自己の商品の
 みを取り扱う旨の同意を取り付けるなど,独占禁止法上問題とな
 る事例はみられなかった。
 国内メーカーにおいては,メーカー出資特約店に対し,明示的
 か暗示的かを問わず,競争品の取扱いを妨げないようにするとと
 もに,自己が市場における有力な事業者であることを十分認識
 し,引き続き,流通・取引慣行ガイドラインを踏まえ,株主とし
 ての地位を利用して,自己の商品のみを取り扱う旨の同意を取り
 付けるなどの行為を行うことのないよう十分留意する必要があ
 る。
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                        | (ウ) | 積立保証金等の差別的取扱い | 
                      
                        |  | 
                          
                            
                              | a | 基本的考え方 |  
                              |  | 国内メーカーは,特約店との取引では手形取引がほとんどであ るため,債権上の危険回避の手段として,取引開始に際し保証金
 等の担保を個別に求めている。保証金等の担保を求めることも,
 通常の取引条件の一つと考えられるが,かかる要求において,不
 当に,ある事業者に対し取引の条件又は実施について有利又は不
 利な取扱いをする場合には,不公正な取引方法として禁止される
 こととなる(一般指定4項(取引条件等の差別取扱い))。
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                              | b | 調査結果による評価 |  
                              |  | 保証金の積立てに不満を感じている特約店が一部にみられた が,保証金等の担保の水準や保証金に対する金利が恣意的に決定
 されるなど,不当にある事業者に対し有利又は不利な取扱いをし
 たり,競争品の排除等,独占禁止法上不当な目的の達成のために
 行われていると認められる事例はみられなかった。
 国内メーカーにおいては,保証金等の担保を求めるに当たって
 は,客観的な基準に基づき保証金の額及び金利等を設定すること
 が求められ,独占禁止法上問題となるような不当な差別的取扱い
 を行うことのないよう十分留意する必要がある。
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                        | (エ) | その他 | 
                      
                        |  | 上記(ア)から(ウ)以外の行為であっても,国内メーカーが特約店等に 対し競争品の取扱いを制限することは独占禁止法上問題となるが,
 ここでいう「制限行為」には,契約による制限だけでなく,製品供
 給やリベート支給を制限するなど,何らかの人為的手段によりその
 実効性が確保されている場合が広く含まれる。また,国内メーカー
 が,自己の取引先である新聞等の広告媒体に対して,競争品の広告
 を掲載させないようにするなどの行為は,継続的な取引関係を背景
 に自己の優越的な地位を利用して不当に行われる場合や,取引先事
 業者と競争者との取引が不当に妨害される等の場合には,独占禁止
 法上問題となる。
 輸入品の取扱いを妨害する等の具体的な事例はみられなかった
 が,国内メーカーにおいては,このような行為を行うことのないよ
 う十分に留意する必要がある。
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