3―2 規制緩和の推進と競争政策の取組について
    ―規制緩和推進3か年計画の再改定に際して―
公正取引委員会
平成12年3月31日
 本日の閣議において,「規制緩和推進3か年計画(再改定)」が決定された。同再改定計画の「1 目的」には,我が国経済社会を「国際的に開かれ,自己責任原則と市場原理に立つ自由で公正な経済社会としていく」ことを基本とし,「市場機能をより発揮するための競争政策の積極的展開」について,「規制の緩和や撤廃と一体として取り組んでいく」こと等が打ち出されている。
 公正取引委員会は,同再改定計画に示された政府として行うこととしている規制緩和推進のための施策の趣旨を踏まえつつ,我が国市場における公正かつ自由な競争を促進するため,独占禁止法違反行為に対して,引き続き,厳正かつ積極的に対処するとともに,規制等公的制度や民間部門の諸局面において公正かつ自由な競争の確保・促進が図られるよう取り組んでいくこととしている。
 当委員会の具体的な取組の内容は,以下のとおりである(点線で囲った部分は,同再改定計画抜粋。)。
 なお,公正取引委員会は,規制緩和の推進及び競争政策の運営における公正取引委員会の役割に関し,広く一般の意見を受け付けている。
   違反行為に対する厳正・迅速かつ積極的な対処
(1)  独占禁止法違反事件の処理
 公正取引委員会の審査体制等の充実を含め,独占禁止法の執行力の強化を図り,価格カルテル,入札談合等の同法違反行為に対して告発を含め厳正かつ積極的に対処する。
(総論「5 規制緩和の推進に伴う諸方策」中「(1) 公正かつ自由な競争の促進」)
 また,企業活動の一層のグローバル化に伴う,国際カルテル,内外事業者の新規参入阻害事件についても引き続き厳正,積極的に対処する。
 処理状況
 平成11年度の法的措置件数は27件であり,20件335名に総額54億5900万円の課徴金納付を命じた。
(注)  課徴金の納付を命じる審決を含み,審判開始決定により審判手続に移行したものを除く。
 最近の主要事例
(1)  価格カルテル,入札談合等の事件
 ダクタイル鋳鉄管製造業者3社によるシェア配分協定事件(平成11年2月刑事告発,同年4月勧告審決)
 ダイオキシン類測定分析業者による入札談合事件(平成11年5月勧告審決)
 近畿地区における修学旅行取扱旅行業者8社による修学旅行の取扱料金の料率等カルテル事件(平成11年7月勧告審決)
 住宅・都市整備公団中部支社2営業所発注の塗装工事の入札参加業者34社による入札談合事件(平成11年7月勧告審決)
 防衛庁調達実施本部発注石油製品の納入業者11社による入札談合事件(平成11年10月刑事告発,同年12月勧告審決(うち3社について審判開始決定))
 日本道路公団発注の塗装工事の入札参加業者295社による入札談合事件(平成12年1月勧告審決)
(2)  市場参入阻害・競争者排除事件
 放射性医薬品原料について,需要家との間で長期の排他的供給契約を締結して,競争事業者を排除した私的独占事件(平成10年9月勧告審決)
 パソコンソフトウェア販売業者のパソコンメーカーに対する抱き合わせ事件(平成10年12月勧告審決)
 国産自動車向け補修用ガラスの卸売取引について,輸入補修用ガラスを積極的に取り扱う補修用ガラス販売業者に対する差別取扱い事件(平成12年2月勧告審決)
(3)  流通分野における不公正な取引方法事件
 据置型浄水器の総代理店の並行輸入業者に対する不当阻害事件(平成10年7月勧告審決)
 ブランドスポーツシューズの総代理店の販売業者に対する再販売価格維持事件(平成10年7月勧告審決)
 フランチャイズチェーン本部の日用雑貨品納入業者に対する優越的地位の濫用事件(平成10年7月勧告審決)
 携帯電話機の販売店に対する再販売価格維持事件(平成11年12月勧告審決)
(4)  いわゆる民民規制に関する事件
 医師会による会員の広告活動制限事件(平成11年1月勧告審決)
 医師会による医療機関の開設等の制限事件(平成11年10月審判審決)
 教科書発行会社の団体による会員の教科書編集・製作活動制限事件(平成11年11月勧告審決)
(5)  国際取引に関する事件
 放射性医療用原料について,需要家との間で長期の排他的供給契約を締結して,競争事業者を排除した私的独占事件(平成10年9月勧告審決)(再掲)
 人造黒鉛電極について,内外の製造業者による,国際的な市場分割協定等の疑い(平成11年3月警告)
 措置の透明性の確保
 現在,発出の都度行われている警告の公表内容について,引き続きこれを励行するとともに,注意についての公表内容について,更に具体性を高める。
 また,注意については,適切な運用が行われることを促進するために,その適用基準について,必要に応じて適切な範囲で明らかとする。(分野別措置事項の別紙中「1 競争政策関係」の「(5)警告及び注意の在り方」)
 体制・機能の強化
 独占禁止法違反行為に対する取組を一層強化するため,審査活動・審査能力の充実・向上に努めつつ,審査部門を中心として体制を充実・強化
公正取引委員会の定員の推移 (単位:人)
(2)  規制緩和後の公正な競争の確保
 規制緩和後の市場の公正な競争秩序を確保するため,中小事業者等に不当な不利益を与える不当廉売,優越的地位の濫用等の不公正な取引方法に関する考え方の一層の明確化に努めるとともに,関係省庁から人員の派遣を受けるなどして,これに厳正・迅速に対処する。
 さらに,商品・サービスの品質や内容について誤認を与える等により消費者の適正な選択を妨げる不当表示等に対して厳正・迅速に対処する。
(総論「5 規制緩和の推進に伴う諸方策」中「(1) 公正かつ自由な競争の促進」)
 中小事業者に不当に不利益を及ぼす不公正取引への厳正・迅速な対処
(1)  不当廉売
 小売業における不当廉売は,周辺の中小事業者に対する影響が大きいことから,不当廉売に当たる可能性のある事案については迅速に処理する方針の下で,その端緒に接した場合には,必要に応じて現地に赴いて調査の上,注意等の措置を採る。
最近における処理状況 (単位:件)
(2)  優越的地位の濫用
 独占禁止法違反事件への対処(平成11年度(2月末現在))
 警告・・・1件,注意・・・4件
 スーパーマーケットによる納入業者に対する優越的地位の濫用事件(平成11年4月警告)
 大規摸小売業者と納入業者との取引に関する実態調査(平成11年7月)
 下請法の的確な運用
最近における下請法の運用状況 (単位:件)
(注)  1つの事件で2以上の違反行為を行っているものがあるため,態様別件数の合計と勧告件数・警告件数の合計は一致しない。
 「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」を公表(平成10年3月)
 下請法の運用見直しに伴う公正取引委員会規則及び運用基準等の改正(平成11年7月)
 不当表示への対処(平成11年度における事件の処理状況)
排除命令・・・2件,警告・・・144件
(排除命令は平成12年3月末日現在,警告は平成12年2月末現在)
 高齢者向け住宅の入居募集の不当表示に関し警告(平成11年6月)
 衣料品等の不当な二重価格表示に関し警告(平成11年6月)
 衣料品の不当な二重価格表示に関し警告(平成12年1月)
 寝具の品質の不当表示に関し排除命令(平成12年3月)
 中古自動車の走行距離計の巻戻しに関し排除命令(平成12年3月)
 引越サービスの取引における広告表示に関する実態調査(平成11年5月)
 証券投資信託の広告表示に関する実態調査(平成11年8月)
 中小事業者等の相談・指導体制の拡充
 商工会議所及び商工会との連携による「独占禁止法相談ネットワーク」の実施(平成10年8月)
 規制緩和と競争政策の積極的推進
 国際的に開かれた,自由で公正な活力ある経済社会を形成していくためには,規制緩和を含めた競争政策を積極的に推進していくことが必要である。このため,公正取引委員会は,次のとおり規制緩和の推進と競争の唱導に努める。規制緩和については,規制緩和のための調査・提言,競争制限的行政指導の改善,民民規制への対応,事業者の自主的な独占禁止法遵守への取組に対する支援等を通じ,関係省庁,事業者等に対して働きかけを行っている。
(1)  規制緩和のための調査・提言
 規制緩和の推進について,内外の事業者の公正かつ自由な競争を促進し,消費者の利益を確保するため,公正取引委員会は,競争政策の観点から,需給調整規制等により参入が制限されている分野等について積極的に調査・提言を行い,参入規制等が緩和された分野について,規制緩和後の状況を調査し,必要な提言を行うとともに,事業者の自主的な独占禁止法遵守の取組への支援を行うことにより競争政策の積極的推進を図る。
(総論「5 規制緩和の推進に伴う諸方策」中「(1) 公正かつ自由な競争の促進」)
 政府規制制度の見直し及び見直し後の公正な競争条件の在り方のための調査・提言(政府規制等と競争政策に関する研究会(座長 鶴田 俊正 専修大学教授))
 電気・ガス事業分野等規制緩和が進められている公益事業分野における公正な競争の在り方について検討中
 「電気事業分野における競争政策上の課題(中間報告)」公表(平成11年11月)
 「ガス事業分野における競争政策上の課題(中間報告)」公表(平成11年12月)
 「国内航空旅客運送事業分野における競争政策上の課題(中間報告)」公表(平成12年2月)
 現在,「電気通信事業に関するワーキンググループ」を開催して,電気通信事業分野における競争政策上の課題を検討中(注)
(注)  「規制緩和推進3か年計画(再改定)」は,「分野別措置事項」の別紙中「3.情報・通信関係(1) 通信NTTの在り方」において「(b)NTTのドコモ株の保有割合の引下げについては,携帯電話事業者間の競争状況とドコモとNTT東西地域会社との間の競争の状況に留意しつつ,引き続き検討を進める。」とされている。
(2)  地方規制への対応
 地方公共団体が講じている参入規制等についても,公正取引委員会は,競争政策の観点から実態調査を行い,必要に応じて提言を行うとともに関係行政庁と所要の調整を行う。
(総論「5 規制緩和の推進に伴う諸方策」中「(1) 公正かつ自由な競争の促進」)
 「競争政策の観点からみた地方公共団体による規制・入札等について」実態調査の公表(平成11年6月)
 「行き過ぎた地域要件の設定及び過度の分割発注について」都道府県に対し要請(建設省との連名 平成11年12月)
(3)  競争制限的な行政指導への対応
 規制緩和後において,規制に代わって競争制限的な行政指導が行われることのないよう,「行政指導に関する独占禁止法上の考え方」の趣旨を踏まえ,関係省庁は,公正取引委員会と事前に所要の調整を図る。
 (総論「5 規制緩和の推進に伴う諸方策」中「(1) 公正かつ自由な競争の促進」」)
 競争制限的な行政指導に対する取組
 独占禁止法違反事件についての審査,実態調査等により,競争制限的な行政指導の存在が認められた場合には,改善を要請
(4)  民民規制への対応
 いわゆる民民規制の問題については,公正取引委員会は,独占禁止法違反行為に対し同法に基づき厳正に対処するほか,その実態を調査し,競争制限的な民間慣行についてその是正を図る。また,その背後に競争制限的な行政指導が存在する場合には,公正取引委員会及び関係省庁がその早急な見直しに取り組む。行政が何ら関与していない場合には,関係省庁は,関与していない旨を改めて周知するなど,責任の所在の明確化に努める。
 (総論「5 規制緩和の推進に伴う諸方策」中「(2) 民民規制への対処」)
 民民規制に対する取組
 公正取引委員会は,事業者又は事業者団体による新規参入の阻止や差別的取扱い等の独占禁止法違反行為について,従来から厳正に対処するとともに,その背後に競争制限的な行政指導が存在する場合には,必要に応じて関係行政機関に改善を要請また,実態調査を実施し,競争政策上問題のあるものについて所要の改善を指導
 独占禁止法違反行為に対する厳正な対処
 医師会による医療機関の開設等の制限事件(平成11年10月審決)
 教科書発行会社の団体による会員の教科書編集・製作活動制限事件(平成11年11月審決)
 民民規制に関する実態調査と関係省庁との調整
 建設業団体が作成する価格表に関する実態調査(平成11年3月)
 LPガス販売業における取引慣行等に関する実態調査(平成11年6月)
(5)  競争の唱導と違反行為の未然防止
 独占禁止法遵守のための事業者等の自主的な取組に対する支援
 事業者の自主的な独占禁止法遵守の取組への支援を行う。((再掲)(総論「5 規制緩和の推進に伴う措置」中「(1) 公正かつ自由な競争の促進」)
 独占禁止法遵守のための事業者等の自主的な取組に対する支援
 (財)公正取引協会において,モデル的な独占禁止法遵守プログラムの策定に向け作業中であり,公正取引委員会として,独占禁止法遵守プログラムの作成やその整備に向けた自主的な取組を進める事業者から要請があった場合には,これを支援
 入札談合防止の取組
 入札談合未然防止のための発注機関との協力
(1)  発注官庁において指名された,公共入札に関する公正取引委員会との連絡担当官との協力
(2)  都道府県・市町村等の調達担当官が入札談合行為の確認及び関連情報の収集をより的確に行うことができるようにするため,調達機関の調達担当官を対象とした研修会について,講師の派遣及び資料の提供を行い,これに協力
 入札談合事件についての審査の過程で発注方法等に問題が認められた場合には,発注機関に改善を要請
 事業者等の法的安定性及び法運用の透明性を確保するため,事業者等のどのような行為が独占禁止法に違反するのかを具体的に明らかにするための独占禁止法上の各種指針を策定・公表しているほか,合併,株式所有等の企業結合や事業者・事業者団体が行おうとする活動の独占禁止法への適合性に関して事前に相談を受けた場合には,引き続き,積極的に対応するとともに,主要な相談事例の公表を行う等により,その透明性の確保を図る。
 「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針」を公表(平成11年7月)
 企業結合に係る事前相談の個別公表の充実
 事業者・事業者団体の活動に関する主要相談事例の公表(平成11年6月,平成12年3月)
 公益事業分野における制度改革後の公正な競争の確保
 「適正な電力取引についての指針」(平成11年12月)及び「適正なガス取引についての指針」(平成12年3月)を策定・公表(通商産業省と共同)
 独占禁止政策協力委員制度の活用
 競争政策への理解の促進と経済実態に即した政策運営に資するため,平成11年度に発足した独占禁止政策協力委員制度を活用し,全国各地域の経済実態等に通じた有識者から,独占禁止法や公正取引委員会に対する意見・要望の聴取等を行い,その意見・要望等を踏まえ,経済実態に即した競争政策の運営を図る。
 独占禁止法適用除外制度の見直し
 規制緩和と一体の課題として,平成7年から独占禁止法適用除外制度の見直しが累次行われてきており,個別法に基づく適用除外規定の廃止又は縮減(平成9年),独占禁止法に基づく適用除外規定の縮減及び適用除外法の廃止(平成11年)が行われてきている。
 本年は,電気・ガス等の事業に固有の行為に対する適用除外規定の廃止を含む独占禁止法改正法案が国会に提出されている。
(1)   独占禁止法適用除外カルテル等制度の見直し(平成12年3月末現在16法律23制度。再販適用除外制度を含む。)
 独占禁止法適用除外カルテル等制度について,適用除外となる行為及び団体の全範囲について見直しを行った結果は以下のとおりであり,独占禁止法に基づく適用除外制度については不況カルテル制度・合理化カルテル制度等を廃止し,適用除外法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の適用除外等に関する法律)に基づく適用除外制度については協同組織の団体に係るものを独占禁止法第24条の規定によることとし,その他のものは原則廃止するとともに,適用除外法そのものを廃止することとする。このうち,立法措置を必要とするものについては,平成11年又は12年の通常国会に改正法案を提出する等所要の措置を行うものとする。<措置済み>
 (分野別措置事項の別紙中「1 競争政策関係」の「(1)独占禁止法適用除外カルテル等制度」)
 規制緩和推進3か年計画(平成10年3月31日閣議決定,平成11年3月30日改定)に基づき,独占禁止法の適用除外制度整理法案を第145回通常国会に提出,平成11年6月15日同国会にて成立(同年6月23日公布,同年7月23日施行)
(内容)
 独占禁止法に基づく適用除外制度について不況カルテル制度,合理化カルテル制度等を廃止
 適用除外法に基づく適用除外制度について,適用除外法そのものを廃止し,同法に基づく適用除外等については原則廃止
 さらに,同計画に基づき,電気事業,ガス事業等における自由化を踏まえ,独占禁止法第21条(その性質上当然に独占となる事業に固有の行為に対する適用除外)の規定の削除を含む独占禁止法改正法案を今国会に提出(平成12年3月21日)
 中小企業団体の組織に関する法律に基づく商工組合の経営安定カルテル・合理化カルテル制度の廃止
 (中小企業の事業活動の活性化等のための中小企業関係法律の一部を改正する法律(平成11年12月14日成立,同月22日公布,平成12年3月2日施行))
(2)  著作物の再販制度
 著作物(書籍・雑誌,新聞,レコード盤・音楽用テープ・音楽用CD)の再販売価格維持制度については,独占禁止法上原則禁止されている再販行為に関する適用除外制度であることから,制度を維持すべき相当の特別な理由が必要であり,今後,行政改革委員会最終意見の指摘する論点に係る議論を深めつつ,適切な措置を講ずるものとする。
 当面,現行の再販制度の下で見られる各種の流通・取引慣行上の弊害について,消費者利益確保の観点から,迅速かつ的確にその是正を図ることとする。
 (分野別措置事項の別紙中「1 競争政策関係」の「(2)著作物の再販売価格維持制度」)
 平成10年3月,規制緩和推進3か年計画と併せて,「著作物再販制度の取扱いについて」を公表し,これに沿った取組を行っている。
 著作物の再販適用除外制度の取扱いについては,平成13年春を目途に制度自体の存廃について結論を得ることを目指して検討中(競争政策の観点からは,同制度は廃止の方向で検討されるべきであるが,文化の振興・普及の観点から,廃止した場合の影響について検討を行う必要がある。)
 現行著作物再販制度下における関係業界の流通取引慣行改善等の取組状況等について取りまとめ,公表(平成10年12月,平成11年12月)
 新聞業における特定の不公正な取引方法の見直し
 新聞業における特定の不公正な取引方法の全部改正(平成11年7月21日官報告示,同年9月1日施行)
 企業結合関係
 合併など企業結合の審査については,国際的な市場における競争環境を考慮するなど市場の実態を踏まえて,引き続き独占禁止法の迅速,透明で適切な運用を図る。
 また,事業支配力の過度の集中を防止する観点から,持株会社,大規模事業会社及び金融会社に対して課されている株式保有制限については,独占禁止法改正法(平成9年法律第87号)附則の見直し規定(注)を踏まえ,当面,大規模事業会社の株式保有の状況や最近の金融機関を中心とする大規模な再編が産業に与える影響などの実態把握に努める。
(注)  附則第5条では,政府は,平成14年12月以降,設立等が禁止される持株会社の範囲及び大規模会社の株式保有総額の制限の対象となる株式の範囲について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする旨を規定。
合併等の事前届出に係る事前相談の在り方
 合併・営業譲受け等の事前届出に係る事前相談について,透明性の向上を通じて内容の適正を確保する観点から,以下の措置を講ずる,
(a)  事前相談においては,あくまで最終的な判断は,届出を受けて審査した上で行うことを明確に企業に伝える。
(b)  相談者の質問については引き続き書面で回答を行うことを励行する,
(c)  問題点の指摘を行う場合には,相談者が必要とされる措置を適切に講じることができるよう,問題点とその考え方について具体的で適切な説明を行う。
(d)  事前相談の事例の公表を充実する。
持株会社の範囲等
 禁止される持株会社の範囲,大規模会社の株式保有総額の制限の対象となる株式の範囲等について,独占禁止法改正法(平成9年法律第87号)附則の見直し規定を踏まえ,必要な検討を行い,その結果に基づいて所要の措置を講ずる。
 なお,大規模会社の株式保有総額制限については,見直しに当たって,適用除外株式の範囲及び裾切り要件について大幅な拡大及び引上げを行う方向で検討し,その検討結果を踏まえて必要な拡大及び引上げを図る。
金融会社の株式保有規制
 金融会社間の競争が激しくなってきていることや金融再編が進んできていること等の金融機関を取り巻く環境の変化の推移を踏まえ,現行の規制が現時点でも適切なものとなっているかという観点から,金融会社の株式保有制限を見直す(備考:金融機関を取り巻く環境の変化の推移を踏まえ,14年度に見直しを行う方向で検討)。
 (分野別措置事項の別紙中「1 競争政策関係」の「(4)合併等の事前届出に係る事前相談の在り方」及び「(6)持株会社の範囲等」並びに「7 金融・証券・保険関係」中「28 金融会社の株式保有規制」)
 平成10年独占禁止法改正により,外国における企業結合にも同法を適用
 「株式保有,合併等に係る『一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合』の考え方」(企業結合ガイドライン)の策定・公表(平成10年12月)
 市場シェアだけではなく,海外からの参入・輸入,隣接市場からの競争圧力等の具体的判断要素を総合的に勘案して,事案ごとに判断
 事前相談の個別事例の公表の充実(再掲)
 民事的救済制度
 独占禁止法違反行為に係る民事的救済制度については,規制緩和推進のための基盤的条件の整備の観点から,有効かつ整合的な制度となるよう研究会(「独占禁止法違反行為に係る民事的救済制度に関する研究会」(座長 古城 誠 上智大学教授))において検討を行い,平成11年10月22日,同研究会から,差止訴訟制度の導入及び損害賠償訴訟制度の充実についての最終報告を得て,これを公表した。
 上記研究会報告書の提言等も踏まえ,政府は,独占禁止法違反行為(不公正な取引方法に係るもの)を行った事業者に対する差止請求を行うことができる制度の導入等を内容とする独占禁止法改正法案を今国会に提出している(平成12年3月21日)。
 民事的救済制度については,規制緩和推進のための基盤的条件の整備の観点から,有効かつ整合的な制度となるよう結論を得て,私人による独占禁止法違反行為(不公正な取引方法に係るもの)に対する差止請求を行うことができる制度を新設する等のための所要の法的措置を講ずる。
 (分野別措置事項の別紙中「1 競争政策関係」の「(7)民事的救済制度」)