(第21条の削除・民事的救済制度の整備)
独占禁止法第21条の削除及び民事的救済制度の整備を内容とする独占禁止法改正法案は,平成12年5月12日に成立し,同月19日に公布された。施行日は,平成13年1月6日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日(独占禁止法第21条の削除に関しては,公布の日から起算して1月を経過した日)とされた。同法制定の経緯,国会における審議状況及び同法の内容は,次のとおりである。
我が国経済社会をより開かれ,自己責任原則と市場原理に立つ自由で公正なものとしていくためには,規制緩和の推進とともに競争政策の積極的展開を図ることが不可欠である。また,公正かつ自由な経済社会実現のための基盤的な条件を整備していくことも必要である。このような観点から,政府は,電気事業,ガス事業等に対する独占禁止法の適用除外制度の廃止,不公正な取引方法を用いた事業者等に対する差止請求を行うことができる制度の導入等の民事的救済制度の整備を内容とする「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」を,平成12年3月21日に国会に提出した(公正取引委員会としての検討状況は,第3章第6を参照)。
上記独占禁止法改正法案は,平成12年3月17日に閣議決定が行われ,同月21日,第147回国会に提出された。同改正法案は,衆議院において,4月17日に商工委員会に付託され,同月18日に同委員会で提案理由説明を行い,同月19日に同委員会で,同月20日に本会議でそれぞれ可決され,参議院に送付された。参議院においては,5月8日に経済・産業委員会に付託され,同月9日に同委員会で提案理由説明を行い,同月11日に同委員会で,同月12日に本会議でそれぞれ可決され,成立した。
電気事業,ガス事業等における自由化を踏まえ,独占禁止法第21条(その性質上当然に独占となる事業に固有な行為に対する独占禁止法適用除外の規定)を削除した。
公正取引委員会の審決が確定した後に無過失損害賠償責任を負うものとして,現行の規定では,私的独占若しくは不当な取引制限をし,又は不公正な取引方法を用いた事業者が規定されているところ,独占禁止法第8条第1項の規定に違反する行為をした事業者団体等を追加した(改正法第25条)。
近年の経済情勢の変化にかんがみ,中小企業者の範囲を拡大すること等を内容とする中小企業基本法等の一部を改正する法律(平成11年法律第146号)が成立し,独占禁止法第7条の2(課徴金算定率の軽減対象範囲)が次のように改正された(平成11年12月3日公布,同日施行)。
・課徴金算定率の軽減対象範囲(独占禁止法第7条の2)
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会社がその営業の全部又は一部を他の会社に承継させる会社分割の制度の創設を内容とする商法等の一部を改正する法律の施行に伴い,民法その他の関係法律の規定を整備するとともに,所要の経過措置を定める必要があるため,商法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備に関する法律案が第147回国会に提出された。同法案は,会社分割の制度の創設に伴う独占禁止法の所要の改正(競争を実質的に制限することとなる会社分割の禁止,会社分割の届出に係る規定の創設等)を含むものであるところ,平成12年5月24日に可決・成立した(平成12年5月31日公布,商法等の一部を改正する法律の施行の日(すなわち同法の公布の日である平成12年5月31日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日)から施行)。
中央省庁等改革の一環として,新たな府省の編成等を行うための中央省庁等改革関係法が第145回国会において成立したが,このうち新たな府省の設置法等を施行するため,その施行期日を定めるとともに,その施行に伴い,関係法律の整備等を行う必要があること等から,中央省庁等改革関係法施行法案が第146回国会に提出された。同法案は,中央省庁改革に伴う独占禁止法の所要の改正を含むものであるところ,平成11年12月13日に可決・成立した(平成11年12月22日公布,一部の規定を除き平成13年1月6日施行)。
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中小企業基本法等の一部を改正する法律の施行に伴い,独占禁止法施行令の一部を改正し,課徴金算定率の軽減対象範囲を以下のとおりとした(国民生活金融公庫法施行令等の一部を改正する政令(平成11年政令第386号)。平成11年12月3日公布,同日施行)。
![]() ※自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く。 |
中小企業に関する施策の対象とする中小企業者の範囲を拡大すること等を内容とする「中小企業基本法等の一部を改正する法律」により,中小企業基本法の一部改正(製造業等に係る中小企業者の定義における資本の額等の基準を「1億円以下」から「3億円以下」に改正)と合わせて,下請法の一部が次のとおり改正された(平成11年12月3日公布,平成12年3月3日施行)。
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中央省庁等改革に伴い,(1)官房に置かれる審議官の1名増員,審査局特別審査部に置かれる特別審査長の1名増員等の体制の整備,(2)局,部及び課の設置規定の見直し等を内容とする公正取引委員会事務総局組織令の改正が行われた(中央省庁等改革のための総務省関係政令等の整備に関する政令(平成12年政令第304号)。平成12年6月7日公布,平成13年1月6日施行)。
公正取引委員会の審判費用等に関する政令(昭和23年政令第332号)の改正が行われ,当委員会に出頭を命ぜられた参考人及び鑑定人に支払われる日当額の上限が引き上げられた(平成12年政令第350号。平成12年6月23日公布,平成12年7月1日施行)。
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当委員会は,関係行政機関が特定の政策的必要性から経済法令の制定又は改正を行おうとする際に,これら法令に独占禁止法の適用除外や競争制限的効果をもたらすおそれのある行政庁の処分に係る規定を設けるなどの場合には,その企画・立案の段階で,当該行政機関からの協議を受け,独占禁止法及び競争政策との調整を図っている。
平成11年度において調整を行った主なものは,次のとおりである。
我が国の産業再生に向け,新規事業の創出,技術開発の活性化等によって生産性の高い分野の創出を図ること等の観点から,通商産業省は,事業再構築を行おうとする者等に対する商法上の特例措置,中小企業者に対する無利子融資制度の拡充,国の委託研究開発に係る特許等の開発者への帰属等を内容とする本法律案を立案した。
当委員会は,同一の業種に属する複数の事業者が共同して行う事業再構築については,独占禁止法の枠内で行うものであることを前提に,同省と所要の調整を行った。
我が国において,資源が大量に使用されていることにより,使用済物品等及び副産物が大量に発生し,その相当部分が廃棄されており,かつ,再生資源及び再生部品の相当部分が利用されずに廃棄されている状況にかんがみ,通商産業省は,使用済物品等及び副産物の発生の抑制並びに再生部品の利用の促進に関する措置を講ずるとともに,再生資源の利用の促進に関する措置を拡充する必要があるとの観点から,本法律案を立案した。
本法律案において,当委員会は,独占禁止法の運用を通じて当委員会が有する競争政策に関する知見が回収・リサイクルにおける適正な競争の確保に資するとの観点から,同省と所要の調整を行った。
当委員会は,関係行政機関が特定の政策的必要性から行う行政措置等について,独占禁止法及び競争政策上の問題が生じないよう,当該行政機関と調整を行っている。
「規制緩和推進3か年計画(改定)」(平成11年3月30日閣議決定)において,「地方公共団体が講じている参入規制等についても,公正取引委員会は,競争政策の観点から実態調査を行い,必要に応じて提言を行うとともに関係行政庁と所要の調整を行う」とされていることを受けて,当委員会は,地方公共団体が行っている規制及び入札・契約手続に関し,実態を調査するとともに,競争政策上の問題について検討し,平成11年6月28日にその結果を公表した。 これに伴い,地方公共団体の公共入札における地元企業優先発注・地元産品優先使用の方針,ごみ収集袋の指定等の事案について多くの相談が寄せられた。当委員会は,これらの事案について独占禁止法及び競争政策上の観点から所要の調整等を行った。 |