独占禁止法第8条第1項第4号違反事件
(1)   社団法人教科書協会に対する件(平成11年(勧)第24号)
ア 関係人

イ 違反事実等
(ア)
 社団法人教科書協会(以下「教科書協会」という。)は,かねてから,教科及び種目ごとに教科書の編集・製作上の標準的な規格を理事会において決めてきたところ,平成元年3月15日に改正された学習指導要領(平成元年文部省告示第24号,第25号及び第26号)に基づく小学校用,中学校用及び高等学校用の教科書(以下「教科書」という。)について、教科及び種目ごとに教科書のページ数,本文ページ数に占める色刷りページ数の割合(以下「色刷り度数」という。),折り込みページ数等の編集・製作上の標準的な規格(以下「体様のめやす」という。)を,小学校用教科書については同年5月26日ころ,中学校用教科書については同年9月22日ころ,高等学校用教科書については同年12月22日ころに開催した理事会においてそれぞれ決定し,小学校用教科書についての体様のめやすを記載した「小学校教科書の体様のめやす」と題する文書を平成元年6月23日付け,中学校用教科書についての体様のめやすを記載した「中学校教科書の体様のめやす」と題する文書を同年10月23日付け,高等学校用教科書についての体様のめやすを記載した「高等学校教科書の体様のめやす」と題する文書を平成2年5月23日付けで,それぞれ,郵送するなどの方法により,会員に周知した。
 教科書協会は,教科書の編集・製作上の規格面での競争を回避する観点から,毎年,会員が発行する予定の教科書について,会員にそのページ数,色刷り度数等を記入した教科書体様届と称する届出書を提出させるなど,当該教科書の規格が体様のめやすに適合しているか否かを調査し,体様のめやすに適合していない教科書を発行しようとする会員に対し,体様のめやすに適合するように当該教科書の規格を変更するよう要請し,当該教科書の規格を変更させている。その状況について,教科書協会は,毎年,理事会において,教科書の検定制度,編集・製作上の規格等に関わる事項を検討するための検定専門委員会を担当する理事(以下「担当理事」という。)から報告を受け,了承している。
 前記bの行為について具体的に示すと,次のとおりである。
(a)  教科書協会は,東京都千代田区神田神保町所在の会員が平成9年度に発行する予定の中学校用地図帳(以下「中学校用地図帳」という。)の折り込みページ数が体様のめやすで定められた折り込みページ数を超過していたため,事務局から同会員に対し,体様のめやすに適合するように折り込みページ数を削減するよう要請したが,同会員がこれに応じず,更に検定専門委員会と同会員との間で話合いを行ったが,話合いは平行線のまま推移した。このため,教科書協会は,同会員に対し担当理事及び検定専門委員会委員長の連名による平成7年12月6日付けの文書をもって,体様のめやすに適合するように中学校用地図帳の折り込みページ数を削減するよう要請したところ,同会員は,同年12月15日ころに教科書協会の会議室で開催された理事会において,これを受け入れる旨回答した。
 その結果,同会員は,教科書協会の要請に従い,中学校用地図帳の折り込みページ数を削減することとし,当初,中学校用地図帳を利用する生徒にとって地理的関係の理解が容易になるであろうとして折り込みを行うこととしていた部分の一部について,折り込みを行うことを取りやめて,中学校用地図帳を発行した。
(b)  教科書協会は,東京都千代田区九段北所在の会員が平成11年度に発行する予定の高等学校用数学教科書(以下「高等学校用数学教科書」という。)の色刷り度数が体様のめやすで定められた色刷り度数を超過していたため,事務局から同会員に対し,高等学校用数学教科書の色刷り度数が体様のめやすに適合するように色刷りページ数を削減するよう要請した。
 その後,教科書協会は,同会員に対し,検定専門委員会委員長名による平成9年7月8日付け文書をもって,高等学校用数学教科書の色刷り度数が体様のめやすに適合するように色刷りページ数を削減するよう具体的に数字を示して要請したが,同会員がこれに応じず,更に検定専門委員会と同会員との間で話合いを行った。しかし,話合いは平行線のまま推移し,最終的に,同年9月11日ころ,教科書協会の応接室において担当理事が同会員の代表取締役社長と話合いを行った結果,同社長は,体様のめやすで定められた色刷り度数に近付けるよう努力する旨回答した。
 教科書協会は,同年9月19日ころに教科書協会の会議室で開催された理事会において,担当理事から,前記経緯について報告を受けた。
 同会員は,教科書協会の要請に沿って,高等学校用数学教科書の色刷り度数を体様のめやすで定められた色刷り度数に近づけることとし,平成9年10月16日付けの文書をもって,高等学校用数学教科書の色刷りページ数を削減する旨を具体的な数字を示して,検定専門委員会委員長に報告した。
 その結果,同会員は,当初,高等学校用数学教科書を利用する生徒にとって当該教科書の内容をより理解しやすいものにするために色刷りをすることとしていた部分の一部について,色刷りをすることを取りやめて,高等学校用数学教科書を発行した。
(イ)  教科書協会の前記(ア)b及びcの行為により,会員は,おおむね,体様のめやすに従って教科書を編集・製作している。
ウ 排除措置
  教科書協会に対し,次の措置を採るように命じた。
(ア)  会員が発行する予定の教科書について,会員にそのページ数,色刷り度数等を記入した教科書体様届と称する届出書を提出させるなど,当該教科書の規格が,同協会が決定した編集・製作上の標準的な規格に適合しているか否かを調査し,同規格に適合していない教科書を発行しようとする会員に対し,同規格に適合するように当該教科書の規格を変更するよう要請し,当該教科書の規格を変更させている行為を取りやめること。
(イ)  前記の標準的な規格は教科書の編集・製作上の単なる参考となるものであって,会員の自主的な編集・製作活動を制限するものではないことを確認すること。
(ウ)  前記(ア)及び(イ)に基づいて採った措置を会員に周知徹底させること。
(エ)  社団法人教科書協会は,今後,前記(ア)と同様の方法により,会員の自主的な教科書の編集・製作活動を制限する行為を行わないこと。
(2)   東京都自動車硝子部会に対する件(平成11年(勧)第29号)
ア 関係人

イ 違反事実等
(ア)  国内で使用される国産自動車向け補修用ガラス(以下「補修用ガラス」という。)には,自動車製造業者が国内の補修用ガラスの製造業者に製造を依頼し,自社製自動車の部品として販売するもの(以下「純正品」という。),国内の補修用ガラスの製造業者が自社製品として製造販売するもの(以下「社外品」という。),海外から我が国に輸入されるもの(以下「輸入品」という。)等がある。
(イ)  東京都自動車硝子部会(以下「東京硝子部会」という。)は,輸入品が格安の価格で流通することにより会員の社外品の販売高及び販売価格が低下することを危惧して,平成7年ころから,輸入品の流通の実態を調査し,意思決定機関としての総会,理事会等において東京地区における輸入品の流通の増加を抑制するための方策について検討を重ねてきたところ,平成8年5月11日ころ,神奈川県足柄下郡箱根町所在の湯本富士屋ホテルで開催した定時総会において
 会員は,顧客の求めにより臨時に輸入品を販売する場合を除き,輸入品の販売を行わない
 今後,会員が積極的に輸入品を販売することにより,他の会員の営業活動に影響を及ぼす場合には,東京硝子部会が当該会員に対して輸入品の販売を取りやめるよう要請すること等を決定した。
 東京硝子部会は,前記総会に欠席した会員に対して,各ブロック会(東京地区を4の区域に区分し,下部組織として区域ごとに置かれているもの)を開催するなどして前記決定を周知した。
(ウ)  東京硝子部会の会員は,前記(イ)の決定に基づき,おおむね輸入品の販売を行っていない。
ウ 排除措置
  東京硝子部会に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  平成8年5月11日ころに行った,会員の国産自動車向け輸入補修用ガラスの販売を制限する旨の決定を破棄すること。
(イ)  次の事項を会員及び会員の取引先に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,国産自動車向け輸入補修用ガラスの販売について,会員の販売活動を制限する行為をせず,会員がそれぞれ自主的に販売活動を行う旨
(ウ)  今後,前記(ア)と同様の方法により,会員の国産自動車向け輸入補修用ガラスの販売を制限しないこと。
(3)   石川県理容環境衛生同業組合金沢支部に対する件(平成12年(勧)第3号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  石川県理容環境衛生同業組合は,昭和39年12月18日に環境衛生関係営業の運営の適正化に関する法律(昭和32年法律第164号。以下「環境衛生法」という。)の規定に基づき,石川県知事の認可を受けて,適正化規程を定め,料金及び営業方法の制限を行ってきたが,平成8年3月31日に同規程を廃止した。
(イ)
 石川県理容環境衛生同業組合金沢支部(以下「金沢支部」という。)は,かねてから,支部員に対し,支部員が行う広告活動のうち,テレビ,ラジオ,新聞等による広告活動の禁止を取り決めるとともに,広告活動を意図する支部員に対し,広告活動の内容及び方法を記入した届出書を金沢支部に提出させ,また,この取決めに違反して広告活動を行った支部員に対して,今後,この取決めに違反する広告活動を行わない旨及び再度違反した場合は金沢支部から除名されても異議を申し立てない旨を約した書面を提出させるなどして,この取決めを遵守させていた。
(a)  金沢支部は,前記(ア)の適正化規程が廃止されたことに伴い,支部員の中に,自由に営業活動を行うことが可能になったとして各支部員が定めた理容料金の割引,広告活動等を行う者が出てきたことから,支部員の間における顧客の争奪の防止等を図るため,平成11年6月2日ころ,金沢市三社町所在の学校法人石川県理容美容専門学校視聴覚教室において開催した支部長,副支部長,総務部,組織部等の各部の部長及び副部長並びに前記区域を11の地区に分けた地区ごとに選出された地区部長及び幹事を構成員とする幹事会において
(i)  理容料金の割引(ポイントカード類による割引を含む。以下同じ。)は禁止する
(ii)  テレビ,ラジオ及び新聞による広告活動(新聞折り込みチラシによる広告活動を含む。)は禁止する
(iii)  金沢支部以外の団体名で行う広告活動は禁止する
(iv)  前記(ii)及び(iii)以外の広告活動は原則的に自由とするが,いかなる場合でも理容料金の明示は禁止する
(v)  広告活動を意図する支部員は,広告活動の内容及び方法を記入した届出書を,地区部長を通じて,副支部長,総務部長,組織部長,地区部長の中から選出された者2名及び支部員の中から選出された者3名を構成員とする調整委員会に事前に提出することとし,調整委員会は,その可否について審議し,その結果を支部員に通知する
(vi)  支部員が行う広告活動により周辺の支部員に迷惑が及ぶ場合は,調整委員会と両支部員との間で話合いを行う
(vii)  金沢支部は,上記(i)から(vi)の事項について違反した支部員に対し,金沢支部からの脱退勧告又は除名を含む処分を行うことができる
等を内容とする営業行為についての内規を決定し,同日以降,実施することとした。
(b)  金沢支部は,前記内規の内容を記載した文書を支部員に配布するとともに,その内容を平成11年6月20日付けの金沢支部の機関紙である「理容かなざわ」に掲載することにより,支部員に周知した。
(ウ)  金沢支部の支部員は,前記(イ)b(a)(i)から(v)の事項をおおむね遵守している。
ウ 排除措置
  金沢支部に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  平成11年6月2日ころに決定した支部員の営業行為についての内規のうち
 理容料金の割引(ポイントカード類による割引を含む。)の禁止に関する事項
 広告活動の制限に関する事項
 前記a又はbの事項に違反した支部員に対する処分に関する事項
を破棄するとともに,これらの事項に基づき支部員に対し,理容料金の割引(ポイントカード類による割引を含む。)を禁止し,広告活動を制限している行為を取りやめること。
(イ)  前記(ア)に基づいて採った措置を支部員に周知徹底させること。
(ウ)  今後,前記(ア)と同様の方法により,支部員の理容料金の割引(ポイントカード類による割引を含む。)を禁止し,広告活動を制限する行為を行わないこと。
3 独占禁止法第19条違反事件
(1)   日本移動通信株式会社に対する件(平成11年(勧)第26号)
ア 関係人

イ 違反事実等
(ア)
(a)  日本移動通信株式会社(以下「IDO」という。)は,かねてから,平成11年4月に発売予定の「cdmaOne」の商標を付した携帯電話機(以下「cdmaOne」という。)の販売価格政策について検討してきたところ,平成10年10月27日ころに開催した経営検討会議において,販売経費の増大の要因となっている統括代理店と称する取引先代理店(以下「統括代理店」という。)に対する販売奨励金の支払額を抑制するため,cdmaOneの一般消費者に対する販売価格(本体価格及び同付属品価格並びに契約事務手数料を合わせた価格をいう。以下同じ。)を2万円以上とし,同価格の水準を維持する旨の方針を決定した。
(b)  IDOの関東地区における営業活動を担当する首都圏事業部は,前記の方針を受けて,関東地区における具体的な販売価格政策について検討した結果,平成11年3月上旬までに,cdmaOneの一般消費者に対する販売価格として,ガイドライン価格と称する価格(以下「ガイドライン価格」という。)をC201Hと称する機種については2万2800円,その他の機種については2万800円と定め,統括代理店及び傘下統括代理店又は統括代理店から直接若しくは間接に仕入れて小売販売を行う販売店(以下「取次店」という。)に対し,同価格で一般消費者に販売させることとした。
(c)  首都圏事業部は,平成11年3月上旬以降,統括代理店に対し,cdmaOneのガイドライン価格を周知するとともに,ガイドライン価格で一般消費者に販売すること及び取次店に対しガイドライン価格で一般消費者に販売させるようにすることを要請していた。その際,首都圏事業部は,ガイドライン価格を遵守しない場合には出荷停止等の制裁措置を講じる旨を伝えていた。
 前記要請を受けた統括代理店は,一般消費者にガイドライン価格で販売するよう直接又は間接に取次店に要請していた。
(a)  首都圏事業部は,前記aの実効を確保するため,cdmaOneの販売に際して取次店の仕入先をそれぞれ特定の1社に定めて,IDOに取次店を登録させることにより流通経路を明確にさせ,また,平成11年6月ころには,cdmaOneのガイドライン価格の遵守等を条件として支払う,cdmaOne特別インセンティブと称する販売奨励金制度を創設するとともに,ラウンダーと称するcdmaOneの価格調査員,営業担当者,統括代理店等からの情報により,統括代理店がガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売していることが判明した場合は,当該統括代理店に対し,ガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売することをやめさせ又は当該統括代理店に対する出荷を一時停止する等の措置を講じ,また,取次店がガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売していることが判明した場合は,当該取次店に卸売している統括代理店をして,当該取次店がガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売することをやめさせ又は当該統括代理店をして当該取次店に対する出荷を一時停止させる等の措置を講じていた。
(b)  首都圏事業部が講じた措置を例示すると,次のとおりである。
(i)  平成11年4月ころ,神奈川県に本店を置く取次店がcdmaOneについて,ガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売したことから,同取次店に卸売している統括代理店をしてガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売しないよう要請させたが,同取次店がこれに従わなかったため,同統括代理店をして同取次店に対する出荷を一時停止させた。
(ii)  平成11年4月ころ,東京都に本店を置く取次店がcdmaOneについて,ガイドライン価格を下回る販売価格を表示した新聞折り込み広告を配布し,同販売価格で一般消費者に販売したことから,同取次店に卸売している統括代理店をしてガイドライン価格で一般消費者に販売するよう要請させたが,同取次店がこれに従わなかったため,同取次店の登録を抹消し,同統括代理店をして同取次店との取引を停止させた。
(iii)  平成11年6月ころ,東京都に本店を置く取次店がcdmaOneについて,ガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売したことから,同取次店に卸売している統括代理店の同取次店に係るcdmaOne特別インセンティブと称する販売奨励金を支払いの対象から外した。
(イ)  IDOは,前記(ア)の行為により,cdmaOneについて,関東地区の統括代理店及び取次店に対し,おおむね,ガイドライン価格で一般消費者に販売するようにさせていた。
(ウ)  平成11年7月22日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,IDOは,同月23日以降,cdmaOneの関東地区における販売に関して,統括代理店及び取次店に対し,IDOの定めたガイドライン価格で一般消費者に販売するようにさせる行為を取りやめている。
ウ 排除措置
  IDOに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  cdmaOneの茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県及び山梨県の区域における販売に関し,統括代理店及び取次店に対し,ガイドライン価格で一般消費者に販売するようにさせていた行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  次の事項を茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県及び山梨県の区域の統括代理店及び取次店から直接又は間接に仕入れて小売販売を行う販売店並びに一般消費者に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(ウ)  今後,携帯電話機の販売に関し,前記(ア)の行為と同様の行為により,統括代理店及び取次店の自由な販売価格の決定を拘束しないこと。
(2)   オートグラス東日本株式会社に対する件(平成11年(勧)第30号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  国内で使用される国産自動車向け補修用ガラス(以下「補修用ガラス」という。)には,自動車製造業者が国内の補修用ガラスの製造業者に製造を依頼し,自社製自動車の部品として販売するもの(以下「純正品」という。),国内の補修用ガラスの製造業者が自社製品として製造販売するもの(以下「社外品」という。),海外から我が国に輸入されるもの(以下「愉入品」という。)等がある。
 なお,補修用ガラスの取引においては顧客から自動車の迅速な修理を求められることが多いことから,予測困難な需要に対応して迅速に供給できることが重視されており,補修用ガラスの大手製造業者3社の製品を,それぞれ,一手に取り扱う卸売業者(以下「特約店」という。)は,1日1回から数回の定期便を運行して取引先である補修用ガラス販売業者(以下「ガラス商」という。)を巡回しており,中でも,オートグラス東日本株式会社(以下「オートグラス東日本」という。)は,競合する特約店に比して迅速な供給が可能な体制を採っている。
(イ)
 オートグラス東日本は,平成7年ころから,輸入品が貨物自動車運送業者等の大口需要者(以下「大口需要者」という。)等に対して輸入販売業者等から格安の価格で販売されるようになってきたことから,自社の社外品の卸売高及び卸売価格が低下することを懸念し,取引先ガラス商に対する社外品の卸売価格を引き下げる等の対抗策を講じてきたところ,輸入品を取り扱うガラス商が増加することにより輸入品の流通が活発化することを抑制するため,広告を用いるなどして積極的に輸入品を取り扱っている取引先ガラス商に対して,社外品の卸売価格を引き上げ,配送の回数を減らす行為を行っている。
 前記aの行為を具体的に示すと次のとおりである。
(a)  平成9年9月ころから,輸入販売業者と連名の広告を大口需要者に送付し,社外品に比して格安の価格で輸入品の販売を行っていた千葉県所在の取引先ガラス商に対して,オートグラス東日本は,同年12月ころ,社外品の卸売価格を現行の卸売価格より約15パーセント引き上げる旨通知し,これを翌月から実施し,さらに,1日2回の定期便及び必要に応じた臨時便により行っていた同ガラス商に対する純正品及び社外品の配送について,平成10年3月ころから定期便を1日1回に減らした上,臨時便に応じないこととしている。
(b)  平成8年1月ころから,他社の名義の広告を大口需要者等に送付し,社外品に比して格安の価格で輸入品の販売を行っていた栃木県所在の有力な取引先ガラス商に対して,オートグラス東日本は,平成10年9月ころ,社外品の卸売価格を現行の卸売価格より約10パーセント引き上げ,さらに,同ガラス商の本社及び営業所に対して行っていた純正品及び社外品の1日2回の定期便及び1日3回程度の臨時便による配送について,本社に対しては臨時便に応じない旨,営業所に対しては定期便を1日1回に減らした上,臨時便に応じない旨を通知し,これを翌月から実施している。
 オートグラス東日本は,前記bの行為を行った旨を,必要に応じて他の取引先ガラス商に対して説明している。
(ウ)  オートグラス東日本は,前記(イ)により,輸入品を取り扱う取引先ガラス商が増加することを抑制している。
ウ 排除措置
  オートグラス東日本に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  補修用ガラスの取引に関し,平成10年1月ころ以降行っている,積極的に輸入品を取り扱う取引先ガラス販売業者に対し,国産品の卸売価格を引き上げ,配送の回数を減らしている行為を取りやめること。
(イ)  次の事項を補修用ガラスの取引先ガラス販売業者に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(ウ)  今後,国産自動車向け輸入補修用ガラスを取り扱う取引先ガラス販売業者に対し,前記(ア)の行為と同様の行為により不利な措置を採らないこと。
(3)   株式会社ウエルネットに対する件(平成11年(勧)第29号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)
 株式会社ウエルネット(以下「ウエルネット」という。)は,テンピュール安眠枕と称するまくら(以下「テンピュール安眠枕」という。)を,スウェーデン王国所在のファゲダーラ・ワールド・フォームズ社から一手に輸入している豊田通商株式会社から一手に供給を受け,主として自ら又は国内の取引先卸売業者を通じて,小売業者である百貨店,通信販売業者等と取引していたが,平成7年ころから雑誌等で取り上げられるようになり,徐々に一般消費者の間において人気が高まってきたこと等から,平成8年4月以降,テンピュール安眠枕をウエルネットの販売主力商品とし,その取引先の拡大を図ることとしたが,そのことにより,今後,希望小売価格を下回る価格でテンピュール安眠枕を販売する小売業者が現れ,それまで希望小売価格で販売していた百貨店,通信販売業者等がテンピュール安眠枕を取り扱わなくなること等を懸念して,テンピュール安眠枕の小売価格の水準を維持するとの方針の下に,小売業者及び卸売業者との取引開始時及びその後の商談において,小売業者に対しては,希望小売価格でテンピュール安眠枕を販売するよう要請し,また,卸売業者に対しては,同卸売業者の取引先小売業者に希望小売価格でテンピュール安眠枕を販売させるよう要請し,当該要請を受け入れた小売業者及び卸売業者とのみ取引を行っていた。
 ウエルネットは,前記aの実効を確保するため
(a)  取引先小売業者の店舗等に対するウエルネットの従業員によるテンピュール安眠枕の価格調査及び他の取引先小売業者からのテンピュール安眠枕の価格に関する苦情に基づき,前記aの要請を遵守していない取引先小売業者に対して,自ら又は取引先卸売業者を通じて,希望小売価格でテンピュール安眠枕を販売するよう要請し,希望小売価格を下回る価格での販売をやめさせる
(b)  前記(a)の要請に応じなかった一部の取引先大手量販店に対して,テンピュール安眠枕の出荷を停止する措置を講じていた。
(イ)  ウエルネットの前記(ア)の行為により,取引先小売業者は,おおむね,希望小売価格でテンピュール安眠枕を販売していた。
(ウ)  平成11年5月25日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,ウエルネットは,同日ころ以降,テンピュール安眠枕について,自ら又は取引先卸売業者を通じて,取引先小売業者に対し,希望小売価格で販売するようにさせる行為を取りやめている。
ウ 排除措置
  ウエルネットに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  テンピュール安眠枕と称するまくらの販売に関し,自ら又は取引先卸売業者を通じて,取引先小売業者に対し,同社の定めた希望小売価格で販売するようにさせる行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  前記(ア)に基づいて採った措置を,取引先卸売業者,取引先小売業者及び一般消費者に対し,それぞれ周知徹底させること。
(ウ)  今後,前記(ア)の行為と同様の行為により,取引先小売業者の販売価格を制限しないこと。
4 審判開始決定事件
 公正取引委員会は,独占禁止法違反の疑いで審査を行い,同法に違反する事実があると認めて排除措置を採るよう勧告し(第48条第1項及び第2項),勧告を受けたものが当該勧告を応諾しなかった場合において,事件を審判手続に付することが公共の利益に適合すると認めたときは,当該事件について事件の要旨を記載した文書をもって審判開始決定を行っている(第49条第1項及び第50条第1項)。
(1)   日立造船株式会社ほか4名に対する件(平成11年(判)第4号)
ア 関係人
イ 審判開始決定の内容
(ア)  日立造船株式会社,日本鋼管株式会社,株式会社タクマ,三菱重工業株式会社及び川崎重工業株式会社の5名(以下「5名」という。)は,遅くとも平成6年4月以降,地方公共団体が指名競争入札,一般競争入札又は指名見積り合わせの方法により発注するストーカ式燃焼装置を採用する全連続燃焼式及び准連続燃焼式ごみ消却施設(当該ごみ焼却施設と一体として発注されるその他のごみ処理施設を含む。以下「全連及び准連ストーカ炉」という。)の建設工事(以下「地方公共団体発注の全連及び准連ストーカ炉の建設工事」という。)について,受注機会の均等化を図るため
 地方公共団体が建設を計画していることが判明した工事について,各社が受注希望の表明を行い
(a)  受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1名の工事については,その者を当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)とする
(b)  受注希望者が複数の工事については,受注希望者間で話し合い,受注予定者を決定する
 5名の間で受注予定者を決定した工事について,5名以外の者が指名競争入札等に参加する場合には,受注予定者は自社が受注できるように5名以外の者に協力を求める
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,各社の会議室で,各社の部長級又は課長級の者による会合を開催し,各社の受注実績等を基にあらかじめ定めた一定の方式により算出した数値を勘案して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(イ)  5名は,前記(ア)により,地方公共団体発注の全連及び准連ストーカ炉の建設工事の大部分を受注していた。
(ウ)  平成10年9月17日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,5名は,同日以降,前記の会合を開催しておらず,前記(ア)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っていない。
(2)   安藤造園土木株式会社ほか14名に対する件(平成12年(判)第1号)
ア 関係人
イ 審判開始決定の内容
(ア)  安藤造園土木株式会社,株式会社香椎造園,株式会社北川緑地建設,木下緑化建設株式会社,株式会社九州緑化産業,九州林産株式会社,古賀緑地建設株式会社,株式会社素鶴園,株式会社都市造園,株式会社中村緑地建設,西鉄グリーン株式会社,福岡造園株式会社,株式会社藤吉園芸場,株式会社別府梢風園及び緑化建設愛廣園株式会社の15名(以下「15名」という。)は,遅くとも平成9年7月31日以降(福岡造園株式会社及び株式会社別府梢風園にあっては,平成9年9月24日ころ以降),福岡市が指名競争入札の方法により発注する造園工事(福岡市が,所管部局の異なる複数の造園工事について,当該工事を一の物件として入札に付す合併入札と称する方法により発注する工事を含み,落札金額が1億円未満の工事を除く。以下「福岡市発注の特定造園工事」という。)について,受注機会の均等化及び受注価格の低落防止を図るため
 福岡市から指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を定める
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者が定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意に基づき,運営委員等と称されている者が,福岡市発注の特定造園工事の入札について,15名のうち,指名を受けた者の中から,あらかじめ定められた受注予定者となるべき順位,受注実績等を勘案し,15名が均等に受注できるように受注予定者を選定するとの方法により,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(イ)  15名は,前記(ア)により,福岡市発注の特定造園工事のすべてを受注していた。
(ウ)  平成11年2月2日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,15名は,同日以降,前記(ア)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(3)   株式会社クボタほか2名に対する件(平成12年(判)第2,3,4号)
ア 関係人

イ 審判開始決定の内容
(ア)  課徴金に係る違反行為
 株式会社クボタ(以下「クボタ」という。),株式会社栗本鐵工所(以下「栗本鐵工所」という。)及び日本鋳鉄管株式会社(以下「日本鋳鉄管」という。)の3名(以下「3名」という。)は,かねてから,我が国におけるダクタイル鋳鉄管直管の総需要数量に対する各社の受注すべき数量の基本的な割合を,クボタについては63パーセント,栗本鐵工所については27パーセント,日本鋳鉄管については10パーセント(以下この割合を「基本配分率」という。)とすることとし,これに基づき各年度ごとに前年度までの各社の受注数量等を勘案した当該年度の総需要数量に対する各社の受注すべき数量の割合(以下「年度配分率」という。)を決定していたところ,
(a)  3名は,平成8年5月上旬ころ,北海道地区,東北地区,東京地区,中部地区,大阪地区及び九州地区と称する全国を区分した6地区(以下「6地区」という。)における平成8年度のダクタイル鋳鉄管直管の需要見込数量を把握した上,平成8年6月4日ころから同月下旬ころまでの間,日本鋳鉄管の本店会議室又は栗本鐵工所が借用した東京都港区に所在する貸会議室において,3名の東京地区の営業担当課長級の者による会合を数度にわたり開催し,
(i)  ダクタイル鋳鉄管直管の6地区における需要見込数量に基づいて平成8年度の我が国におけるダクタイル鋳鉄管直管の総需要見込数量を算出し,6地区のうち東京地区を除く5地区における各社の受注すべき数量の割合(以下6地区の地区ごとの各社の受注すべき数量の割合を「地区配分率」という。)を取りまとめ,
(ii)  前記(i)の総需要見込数量に各社の基本配分率をそれぞれ乗じて算出した数量に各社の平成7年度の受注数量等を勘案した数量を加減して算出した平成8年度の各社の受注見込数量の前記(i)の総需要見込数量に対する割合,すなわち,クボタについては62.85パーセント,栗本鐵工所については26.97パーセント,日本鋳鉄管については10.18パーセントを平成8年度の年度配分率とするとともに,
(iii)  前記(ii)の各社の受注見込数量から,東京地区を除く5地区の地区配分率に基づく各社の受注見込数量の合計を差し引いた残余に占める各社の受注見込数量の割合を東京地区の地区配分率とした上で,
平成8年度の年度配分率,6地区における地区配分率等を内容とする計画案を作成した。
(b)  3名は,平成8年8月20日ころ,東京都中央区所在の水道用ポリエチレンパイプシステム研究会会議室で開催した各社の営業担当部長級の者及び東京地区の営業担当課長級の者の会合において,平成8年度の年度配分率を前記aの計画案に基づくものとすることを決定し,平成8年度末までに各社においてそれぞれの受注数量の総需要数量に対する割合を前記決定に係る平成8年度の年度配分率に合致させるよう受注数量の調整を行うことを合意した。
 3名は,前記a(ii)の合意に基づき,ダクタイル鋳鉄管直管に係る3名と販売業者との間及び販売業者と建設業者との間のそれぞれの取引関係が固定的であることを利用し,これを維持しつつ,毎月の受注数量を相互に連絡して,各社の年度当初からの受注数量と年度配分率に基づく数量との差異を確認した上で,水道事業者が競争入札の方法により発注するダクタイル鋳鉄管直管について,物件ごとの受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにするなど,各社のダクタイル鋳鉄管直管の受注数量の調整を行い,年度の途中において,ダクタイル鋳鉄管直管の総需要見込数量の増加が見込まれるときは,年度配分率の微調整を行うことによって,平成8年度の年度配分率にほとんど一致する割合でタクタイル鋳鉄管直管を受注していた。
(イ)  課徴金の計算の基礎
 3名は,ダクタイル鋳鉄管直管の製造販売業を営む者である。
 3名が前記(ア)記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成8年8月20日であると認められる。
 また,前記の違反行為の実行としての事業活動は,平成9年4月1日以降,なくなっているものと認められる。
 したがって,3名については,前記の違反行為の実行としての事業活動を行った日から当該行為の実行としての事業活動がなくなる日までの期間は,平成8年8月20日から平成9年3月31日までである。
 前期期間におけるダクタイル鋳鉄管直管の売上額及び課徴金額
(4)   株式会社ニッショーに対する件(平成12年(判)第8号)
ア 関係人

イ 審判開始決定の内容
(ア)
 株式会社ニッショー(以下「ニッショー」という。)は,注射液等の容器として使用されるアンプル用の生地管(以下「生地管」という。)を国内で唯一製造している日本電気硝子株式会社(以下「日本電気硝子」という。)から,富山県,岐阜県及び愛知県以西の西日本地区(以下「西日本地区」という。)において販売する生地管の供給を一手に受けて,西日本地区において,生地管をアンプルに加工し,製薬会社等に販売する業者(自社の生地管の仕入部門を担当する子会社等を含む。以下「アンプル加工業者」という。)に販売している。
 なお,日本電気硝子は,静岡県,長野県及び新潟県以東の東日本地区においては,前田硝子株式会社(以下「前田硝子」という。)に,その製造する生地管をアンプル加工業者に一手に販売させている。
 日本電気硝子は平成6年7月末ころ,株式会社ナイガイ(以下「ナイガイ」という。)が生地管を輸入していることをニッショーに告知し,それ以降同年12月ころまで,ニッショー及び前田硝子の2名(以下「2名」という。)と,ナイガイが生地管を輸入していることへの対応策について検討を行ってきたところ,日本電気硝子は2名に対し,日本電気硝子が2名に対する販売価格を引き下げること及び2名がそれぞれの取引先に対し販売価格を引き下げることを提案したが,ニッショーは,その対応策ではニッショー,日本電気硝子及び前田硝子の収益が減少すること等を懸念し,同提案に反対した。
 ニッショーは,平成6年10月31日ころ,ナイガイに対し,生地管の輸入を取りやめること等を要請するとともに,同要請に応じない場合にはナイガイの親会社であるアンプルの加工販売業を営む内外硝子工業株式会社(以下「内外硝子」という。)以外のアンプル加工業者に対して生地管を安く販売するとの対抗策を講じる旨申し入れ,さらに,同年12月29日ころ,再度,ナイガイに対し同様の要請を行ったが,これを拒否されたこと,内外硝子がナイガイから供給を受けた輸入された生地管(以下「輸入生地管」という。)を加工したアンプルを取引先製薬会社に廉価で販売し,他のアンプル加工業者の顧客を奪うこと等を懸念したことから,ニッショーは,生地管を輸入しているナイガイ及び輸入生地管を加工販売している内外硝子に対し,次の行為を行っている。
(a)
(i)  ニッショーは,平成7年3月1日ころ,ナイガイ包囲網と称し,ナイガイに対してのみ,同年4月1日以降の納入分からすべての生地管の販売価格を引き上げることを通知し,同日以降,ナイガイに対する生地管の販売価格を現行の販売価格から平均20パーセント程度引き上げた価格で納入代金を請求するとともに,他の主要な取引先アンプル加工業者に対して実施している取引金額に一定率を乗じた額を取引金額から差引きする定率不良返品値引き等の特別値引き(以下「特別値引き」という。)を取りやめている。
(ii)  ナイガイは,ニッショーの前記(a)(i)の請求に応じれば,内外硝子に対する生地管の販売価格を引き上げざるを得ず,これにより,内外硝子のみが製薬会社等に対するアンプルの販売価格を引き上げざるを得なくなり,その結果,内外硝子の顧客及び販売数量が減ることとなり,ナイガイの販売数量も減ることは明白であることから,平成7年4月1日以降もニッショーに対し,従前どおりの価格で生地管の納入代金を支払っているが,同請求に応じないことを理由としてニッショーから生地管の販売を拒絶されることを危惧し,平成8年4月ころ,大阪地方裁判所に対し,売買代金債務一部不存在確認の訴えを提起した。同訴えについては,現在,大阪高等裁判所に係属中である。
(b)
(i)  ニッショーは,内外硝子と競合する他のアンプル加工業者から,輸入生地管を加工して販売している内外硝子の低価格のアンプルに対抗するための値引き要請を受けて,当該アンプル加工業者の一部に対して,当該生地管の総販売原価を下回り,仕入価格に近い価格で販売し,当該アンプル加工業者は,平成10年5月ころ以降,アンプルの販売価格を引き下げた。
(ii)  内外硝子は,このため,アンプルの販売価格を引き下げなければ取引先製薬会社との取引を失わざるを得ない状況になり,当該取引先製薬会社向けアンプルの販売価格を引き下げた。
(c)
(i)  ナイガイは,大韓民国に所在する生地管製造業者から内外硝子が使用する一部の生地管を輸入していたところ,同社の生産設備が老朽化したこと等により,当該生地管を安定して輸入することができなくなったため,ニッショーに対し,平成9年6月11日ころ,当該生地管のうちの一品種に替わる生地管及びこれと同品種の生地管であって,従来,ニッショーから供給を受けていた一部の製薬会社向けのものを合わせて発注し,また,同年7月23日ころ,安定して輸入することができなくなった生地管のうちの別の一品種に替わる生地管をそれぞれ発注したところ,ニッショーは,ナイガイが当該生地管を安定して輸入することができなくなった旨の情報に接し,内外硝子の取引先である一部の製薬会社が,納入すべきアンプルについて,生地管の製造業者を日本電気硝子と指定していたことを知っており,また,当該発注に係る生地管を供給することが可能であったにもかかわらず,当該発注に係る生地管が,それぞれ,ナイガイが輸入している生地管と同品種であることを理由に,当該発注に係る生地管の受注を拒絶した。
(ii)  内外硝子は,ニッショーの前記(c)(i)の行為により,ナイガイの前記発注に係る生地管の供給を受けられず,一部の製薬会社向けのアンプルの生産に支障を来した。
(d)
(i)  ナイガイは,平成11年1月ころ,ニッショーが内外硝子の取引先製薬会社に対して,ナイガイとの取引を時期を見て停止せざるを得ないので,他のアンプル加工業者との取引を準備するよう伝えている旨の情報に接したことから,ニッショーから生地管の供給が受けられなくなることを危惧し,当面の在庫を確保するため,やむを得ず発注数量を大幅に増やしたところ,ニッショーは,急きょ,平成11年3月19日ころ,ナイガイに対して設定していた与信限度額を引き下げ,売掛金及び未決済手形の合計金額が,当該与信限度額を超えていること等を理由として,同月23日ころ以降,同社の債務に対する担保の差し入れ又は現金決済のいずれかの条件以外での取引には応じない旨の申入れを行った。
(ii)  ナイガイは,ニッショーの前記(d)(i)の行為により,事実上,ニッショーから生地管の供給がほとんど受けられず,輸入生地管への切替えを余儀なくされ,ナイガイから供給を受けている内外硝子は,前記輸入生地管での対応を迫られたことにより,納入すべきアンプルについて,生地管の製造業者を日本電気硝子と指定している取引先製薬会社との取引の全部又は一部を失うに至った。
 ナイガイ及び内外硝子は,製薬会社の需要動向から,事業活動を円滑に行うためには,日本電気硝子が製造する生地管に相当程度依存せざるを得ない状況にあるところ,ニッショーによる前記cの各行為により,事業活動の遂行に支障を来すこととなり,その結果,今後,輸入生地管の取扱いが困難となるおそれがある。