3 独占禁止法第19条違反事件
(1) |
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日本移動通信株式会社に対する件(平成11年(勧)第26号) |
ア 関係人

イ 違反事実等
(ア)
a |
(a) |
日本移動通信株式会社(以下「IDO」という。)は,かねてから,平成11年4月に発売予定の「cdmaOne」の商標を付した携帯電話機(以下「cdmaOne」という。)の販売価格政策について検討してきたところ,平成10年10月27日ころに開催した経営検討会議において,販売経費の増大の要因となっている統括代理店と称する取引先代理店(以下「統括代理店」という。)に対する販売奨励金の支払額を抑制するため,cdmaOneの一般消費者に対する販売価格(本体価格及び同付属品価格並びに契約事務手数料を合わせた価格をいう。以下同じ。)を2万円以上とし,同価格の水準を維持する旨の方針を決定した。 |
(b) |
IDOの関東地区における営業活動を担当する首都圏事業部は,前記の方針を受けて,関東地区における具体的な販売価格政策について検討した結果,平成11年3月上旬までに,cdmaOneの一般消費者に対する販売価格として,ガイドライン価格と称する価格(以下「ガイドライン価格」という。)をC201Hと称する機種については2万2800円,その他の機種については2万800円と定め,統括代理店及び傘下統括代理店又は統括代理店から直接若しくは間接に仕入れて小売販売を行う販売店(以下「取次店」という。)に対し,同価格で一般消費者に販売させることとした。 |
(c) |
首都圏事業部は,平成11年3月上旬以降,統括代理店に対し,cdmaOneのガイドライン価格を周知するとともに,ガイドライン価格で一般消費者に販売すること及び取次店に対しガイドライン価格で一般消費者に販売させるようにすることを要請していた。その際,首都圏事業部は,ガイドライン価格を遵守しない場合には出荷停止等の制裁措置を講じる旨を伝えていた。
前記要請を受けた統括代理店は,一般消費者にガイドライン価格で販売するよう直接又は間接に取次店に要請していた。 |
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b |
(a) |
首都圏事業部は,前記aの実効を確保するため,cdmaOneの販売に際して取次店の仕入先をそれぞれ特定の1社に定めて,IDOに取次店を登録させることにより流通経路を明確にさせ,また,平成11年6月ころには,cdmaOneのガイドライン価格の遵守等を条件として支払う,cdmaOne特別インセンティブと称する販売奨励金制度を創設するとともに,ラウンダーと称するcdmaOneの価格調査員,営業担当者,統括代理店等からの情報により,統括代理店がガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売していることが判明した場合は,当該統括代理店に対し,ガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売することをやめさせ又は当該統括代理店に対する出荷を一時停止する等の措置を講じ,また,取次店がガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売していることが判明した場合は,当該取次店に卸売している統括代理店をして,当該取次店がガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売することをやめさせ又は当該統括代理店をして当該取次店に対する出荷を一時停止させる等の措置を講じていた。 |
(b) |
首都圏事業部が講じた措置を例示すると,次のとおりである。 |
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(i) |
平成11年4月ころ,神奈川県に本店を置く取次店がcdmaOneについて,ガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売したことから,同取次店に卸売している統括代理店をしてガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売しないよう要請させたが,同取次店がこれに従わなかったため,同統括代理店をして同取次店に対する出荷を一時停止させた。 |
(ii) |
平成11年4月ころ,東京都に本店を置く取次店がcdmaOneについて,ガイドライン価格を下回る販売価格を表示した新聞折り込み広告を配布し,同販売価格で一般消費者に販売したことから,同取次店に卸売している統括代理店をしてガイドライン価格で一般消費者に販売するよう要請させたが,同取次店がこれに従わなかったため,同取次店の登録を抹消し,同統括代理店をして同取次店との取引を停止させた。 |
(iii) |
平成11年6月ころ,東京都に本店を置く取次店がcdmaOneについて,ガイドライン価格を下回る価格で一般消費者に販売したことから,同取次店に卸売している統括代理店の同取次店に係るcdmaOne特別インセンティブと称する販売奨励金を支払いの対象から外した。 |
(イ) |
IDOは,前記(ア)の行為により,cdmaOneについて,関東地区の統括代理店及び取次店に対し,おおむね,ガイドライン価格で一般消費者に販売するようにさせていた。 |
(ウ) |
平成11年7月22日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,IDOは,同月23日以降,cdmaOneの関東地区における販売に関して,統括代理店及び取次店に対し,IDOの定めたガイドライン価格で一般消費者に販売するようにさせる行為を取りやめている。 |
ウ 排除措置
IDOに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア) |
cdmaOneの茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県及び山梨県の区域における販売に関し,統括代理店及び取次店に対し,ガイドライン価格で一般消費者に販売するようにさせていた行為を取りやめていることを確認すること。 |
(イ) |
次の事項を茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県及び山梨県の区域の統括代理店及び取次店から直接又は間接に仕入れて小売販売を行う販売店並びに一般消費者に周知徹底させること。 |
a |
前記(ア)に基づいて採った措置 |
b |
今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨 |
(ウ) |
今後,携帯電話機の販売に関し,前記(ア)の行為と同様の行為により,統括代理店及び取次店の自由な販売価格の決定を拘束しないこと。 |
(2) |
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オートグラス東日本株式会社に対する件(平成11年(勧)第30号) |
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア) |
国内で使用される国産自動車向け補修用ガラス(以下「補修用ガラス」という。)には,自動車製造業者が国内の補修用ガラスの製造業者に製造を依頼し,自社製自動車の部品として販売するもの(以下「純正品」という。),国内の補修用ガラスの製造業者が自社製品として製造販売するもの(以下「社外品」という。),海外から我が国に輸入されるもの(以下「愉入品」という。)等がある。
なお,補修用ガラスの取引においては顧客から自動車の迅速な修理を求められることが多いことから,予測困難な需要に対応して迅速に供給できることが重視されており,補修用ガラスの大手製造業者3社の製品を,それぞれ,一手に取り扱う卸売業者(以下「特約店」という。)は,1日1回から数回の定期便を運行して取引先である補修用ガラス販売業者(以下「ガラス商」という。)を巡回しており,中でも,オートグラス東日本株式会社(以下「オートグラス東日本」という。)は,競合する特約店に比して迅速な供給が可能な体制を採っている。 |
(イ) |
a |
オートグラス東日本は,平成7年ころから,輸入品が貨物自動車運送業者等の大口需要者(以下「大口需要者」という。)等に対して輸入販売業者等から格安の価格で販売されるようになってきたことから,自社の社外品の卸売高及び卸売価格が低下することを懸念し,取引先ガラス商に対する社外品の卸売価格を引き下げる等の対抗策を講じてきたところ,輸入品を取り扱うガラス商が増加することにより輸入品の流通が活発化することを抑制するため,広告を用いるなどして積極的に輸入品を取り扱っている取引先ガラス商に対して,社外品の卸売価格を引き上げ,配送の回数を減らす行為を行っている。 |
b |
前記aの行為を具体的に示すと次のとおりである。 |
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(a) |
平成9年9月ころから,輸入販売業者と連名の広告を大口需要者に送付し,社外品に比して格安の価格で輸入品の販売を行っていた千葉県所在の取引先ガラス商に対して,オートグラス東日本は,同年12月ころ,社外品の卸売価格を現行の卸売価格より約15パーセント引き上げる旨通知し,これを翌月から実施し,さらに,1日2回の定期便及び必要に応じた臨時便により行っていた同ガラス商に対する純正品及び社外品の配送について,平成10年3月ころから定期便を1日1回に減らした上,臨時便に応じないこととしている。 |
(b) |
平成8年1月ころから,他社の名義の広告を大口需要者等に送付し,社外品に比して格安の価格で輸入品の販売を行っていた栃木県所在の有力な取引先ガラス商に対して,オートグラス東日本は,平成10年9月ころ,社外品の卸売価格を現行の卸売価格より約10パーセント引き上げ,さらに,同ガラス商の本社及び営業所に対して行っていた純正品及び社外品の1日2回の定期便及び1日3回程度の臨時便による配送について,本社に対しては臨時便に応じない旨,営業所に対しては定期便を1日1回に減らした上,臨時便に応じない旨を通知し,これを翌月から実施している。 |
c |
オートグラス東日本は,前記bの行為を行った旨を,必要に応じて他の取引先ガラス商に対して説明している。 |
(ウ) |
オートグラス東日本は,前記(イ)により,輸入品を取り扱う取引先ガラス商が増加することを抑制している。 |
ウ 排除措置
オートグラス東日本に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア) |
補修用ガラスの取引に関し,平成10年1月ころ以降行っている,積極的に輸入品を取り扱う取引先ガラス販売業者に対し,国産品の卸売価格を引き上げ,配送の回数を減らしている行為を取りやめること。 |
(イ) |
次の事項を補修用ガラスの取引先ガラス販売業者に周知徹底させること。 |
a |
前記(ア)に基づいて採った措置 |
b |
今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨 |
(ウ) |
今後,国産自動車向け輸入補修用ガラスを取り扱う取引先ガラス販売業者に対し,前記(ア)の行為と同様の行為により不利な措置を採らないこと。 |
(3) |
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株式会社ウエルネットに対する件(平成11年(勧)第29号) |
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)
a |
株式会社ウエルネット(以下「ウエルネット」という。)は,テンピュール安眠枕と称するまくら(以下「テンピュール安眠枕」という。)を,スウェーデン王国所在のファゲダーラ・ワールド・フォームズ社から一手に輸入している豊田通商株式会社から一手に供給を受け,主として自ら又は国内の取引先卸売業者を通じて,小売業者である百貨店,通信販売業者等と取引していたが,平成7年ころから雑誌等で取り上げられるようになり,徐々に一般消費者の間において人気が高まってきたこと等から,平成8年4月以降,テンピュール安眠枕をウエルネットの販売主力商品とし,その取引先の拡大を図ることとしたが,そのことにより,今後,希望小売価格を下回る価格でテンピュール安眠枕を販売する小売業者が現れ,それまで希望小売価格で販売していた百貨店,通信販売業者等がテンピュール安眠枕を取り扱わなくなること等を懸念して,テンピュール安眠枕の小売価格の水準を維持するとの方針の下に,小売業者及び卸売業者との取引開始時及びその後の商談において,小売業者に対しては,希望小売価格でテンピュール安眠枕を販売するよう要請し,また,卸売業者に対しては,同卸売業者の取引先小売業者に希望小売価格でテンピュール安眠枕を販売させるよう要請し,当該要請を受け入れた小売業者及び卸売業者とのみ取引を行っていた。 |
b |
ウエルネットは,前記aの実効を確保するため |
(a) |
取引先小売業者の店舗等に対するウエルネットの従業員によるテンピュール安眠枕の価格調査及び他の取引先小売業者からのテンピュール安眠枕の価格に関する苦情に基づき,前記aの要請を遵守していない取引先小売業者に対して,自ら又は取引先卸売業者を通じて,希望小売価格でテンピュール安眠枕を販売するよう要請し,希望小売価格を下回る価格での販売をやめさせる |
(b) |
前記(a)の要請に応じなかった一部の取引先大手量販店に対して,テンピュール安眠枕の出荷を停止する措置を講じていた。 |
(イ) |
ウエルネットの前記(ア)の行為により,取引先小売業者は,おおむね,希望小売価格でテンピュール安眠枕を販売していた。 |
(ウ) |
平成11年5月25日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,ウエルネットは,同日ころ以降,テンピュール安眠枕について,自ら又は取引先卸売業者を通じて,取引先小売業者に対し,希望小売価格で販売するようにさせる行為を取りやめている。 |
ウ 排除措置
ウエルネットに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア) |
テンピュール安眠枕と称するまくらの販売に関し,自ら又は取引先卸売業者を通じて,取引先小売業者に対し,同社の定めた希望小売価格で販売するようにさせる行為を取りやめていることを確認すること。 |
(イ) |
前記(ア)に基づいて採った措置を,取引先卸売業者,取引先小売業者及び一般消費者に対し,それぞれ周知徹底させること。 |
(ウ) |
今後,前記(ア)の行為と同様の行為により,取引先小売業者の販売価格を制限しないこと。 |
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