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特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針 |
当委員会は,技術取引の代表的なものである特許又はノウハウのライセンス契約について,平成元年2月,「特許・ノウハウライセンス契約における不公正な取引方法に関する運用基準」を公表し,特許又はノウハウのライセンス契約における不公正な取引方法に関する基準として示すとともに,当委員会に対して届け出られた国際的契約の審査の基準としてきたところである。しかし,平成9年6月以降国際的契約の届出制度が廃止されたこと,近年不公正な取引方法以外の行為についての知的財産権に関する独占禁止法の運用事例も増加してきていること,米国や欧州連合(EU)においてもガイドラインや規則の改正により特許又はノウハウと競争法との関係についての考え方の明確化が図られたこともあり,特許又はノウハウのライセンス契約に関する独占禁止法上の考え方を一層明確化することが求められている状況にある。
このような状況を踏まえ,上記の運用基準を全面的に改定して,特許又はノウハウのライセンス契約に関する独占禁止法の適用関係について包括的な考え方を示すこととしし,平成11年7月30日,「特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法上の指針」(以下「特許・ノウハウガイドライン」という。)を策定・公表した。
ア 特許ライセンス契約に関する独占禁止法第23条の考え方等
(ア) |
特許法等による「権利の行使と認められる行為」には独占禁止法の規定が適用されないが,「権利の行使」とみられるような行為であっても,それが技術保護制度の趣旨を逸脱し,又は同制度の目的に反すると認められる場合には,「権利の行使と認められる行為」とは評価されず,独占禁止法が適用される。 |
(イ) |
外形上又は形式的には特許法等による権利の行使とみられるような行為であっても,当該行為が不当な取引制限や私的独占の一環をなす行為として又はこれらの手段として利用されるなど権利の行使に藉口していると認められる場合等は,「権利の行使と認められる行為」とは評価されない。 |
(ウ) |
いったん権利者の意思により適法に拡布された特許製品の販売に関する制限については,独占禁止法上,一般の製品の販売に関する制限と同様に取り扱われる。 |
イ |
特許・ノウハウライセンス契約に関する独占禁止法第3条(不当な取引制限・私的独占)の観点からの考え方
特許等のライセンスは,一般的には,特許等のライセンス及びこれに対する対価の支払を内容とし,これに伴い実施地域の制限,改良発明等の譲渡等一定の制限条項が一方の当事者に課されるものであり,不当な取引制限や私的独占として直ちに問題となるわけではないが,例えば,特許等のライセンス契約において,相互に特許製品等の販売価格,研究開発の分野などの制限が課されることにより,一定の製品市場・技術市場における競争が実質的に制限される場合には,不当な取引制限として違法となる。また,例えば,特許等のライセンス契約に関連して,他の事業者の事業活動が排除又は支配されることにより,一定の製品市場・技術市場における競争が実質的に制限される場合には,私的独占として違法となる。 |
ウ |
特許・ノウハウライセンス契約に関する不公正な取引方法の観点からの考え方
不公正な取引方法の観点からの考え方については,これまでの運用基準を基礎として,独占禁止法上問題のある条項,又は問題のない条項の追加,公正競争阻害性についての考え方の変更等所要の修正を行っている。 |
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債務の株式化に係る独占禁止法第11条の規定による認可についての考え方 |
当委員会は,平成11年6月11日及び7月13日の政府の産業構造転換・雇用対策本部決定において,「債務の株式化のための環境整備」として,債務者と債権者の間の合意に基づき,債務の株式化を活用できることとするための環境整備に関して,独占禁止法第11条の認可の考え方の明確化を図ることが盛り込まれたことを受けて,「債務の株式化に係る独占禁止法第11条の規定による認可についての考え方」(平成11年10月1日公正取引委員会)を新たに策定・公表した。
(2) |
債務の株式化に係る独占禁止法第11条の規定による認可についての考え方の概要 |
ア |
債務の株式化(債務者が自らの債務を消滅させるために債権者に対して株式を発行することをいう。)により,金融業(銀行業,信託業,保険業,無尽業及び証券業をいう。)を営む会社(以下「金融会社」という。)が他の国内の会社の株式を保有するに際して,当該会社の株式を発行済株式総数の5%(保険業を営む会社の場合は10%)を超えて保有することとなる場合には,独占禁止法第11条第1項のただし書規定により,あらかじめ当委員会の認可を受けなければならない。 |
イ |
金融会社が,債権保全の一環として,産業活力再生特別措置法(平成11年法律第131号)に基づき主務大臣の認可を受けた事業再構築計画その他の合理的な経営改善のための計画に従って国内の会社の発行する株式を保有する場合であって,次の(1)及び(2)のいずれにも該当しないものであれば,独占禁止法第11条第1項のただし書規定により認可を行うこととする。 |
(1) |
事業支配力が過度に集中することとなる場合 |
(2) |
一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合 |
ウ |
認可の期限は原則として1年とし,期間満了時において,必要な場合にはその延長を行うこととする。 |
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