独占禁止法は,不公正な取引方法の規制として第19条において事業者が不公正な取引方法を用いることを禁止しているほか,事業者及び事業者団体が不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的契約を締結すること,事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること,会社及び会社以外の者が不公正な取引方法により株式を取得し又は所有すること,会社が不公正な取引方法により役員の兼任を強制すること,会社が不公正な取引方法により合併すること等の行為を禁止している(第6条,第8条第1項,第10条第1項,第13条第2項,第14条,第15条第1項及び第16条第1項)。
不公正な取引方法として規制される行為の具体的内容は,当委員会が法律の枠内で告示により指定することとされている(第2条第9項,第72条)。 不公正な取引方法に関しては,上記規定に違反する事件の処理のほか,不公正な取引方法の指定に関する調査,不公正な取引方法の防止のための指導業務等がある。また,不公正な取引方法に関する事業者からの相談に積極的に応じることにより違反行為の未然防止に努めている。 |
「規制緩和推進3か年計画」(平成10年3月31日閣議決定),「規制緩和推進3か年計画(改定)」(平成11年3月30日閣議決定)及び「規制緩和推進3か年計画(再改定)」(平成12年3月31日閣議決定)には,規制緩和の推進とともに競争政策の積極的展開を図るための措置が盛り込まれており,当委員会は,これらの閣議決定を踏まえ,独占禁止法違反行為に対する厳正かつ積極的な対処,規制緩和の推進についての競争政策の観点からの調査・提言,いわゆる民民規制についての実態調査及び競争制限的な民間慣行の是正,独占禁止法適用除外制度の見直し等に取り組んでいるところである。
規制緩和後の市場の競争秩序については,上記閣議決定において,規制緩和後の市場の公正な競争秩序を確保するため,中小事業者等に不当な不利益を与えるなどの不公正な取引に対して厳正・迅速に対処することとされている。この点について,当委員会は,次のような取組を行ってきている。
企業の効率性によって達成した低価格で商品を提供するのではなく,採算を度外視した低価格によって顧客を獲得することは,正常な競争手段とはいえず,これにより他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある不当廉売は,不公正な取引方法の一つとして禁止されている。
小売業における不当廉売は,周辺の中小事業者に対する影響が大きいことから,当委員会は,不当廉売に当たる可能性のある事案については迅速に処理する方針の下で,その端緒に接した場合には,必要に応じて現地に赴いて調査の上,注意等を行っている。
平成11年度において不当廉売につながるおそれがあるとして注意を行ったものは,次表のとおりである。 ![]() 主要な事例としては,酒類のディスカウンターによるビールの販売,給油所によるガソリン等の販売等に関するものがある。
自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為(優越的地位の濫用)は,自己と競争者及び相手方とその競争者との間の公正な競争を阻害するおそれのあるものであり,不公正な取引方法の一つとして禁止されている。
また,優越的地位の濫用は,下請取引において生じやすいものであることから,下請取引における優越的地位の濫用を迅速に処理するため,独占禁止法の補完法として,下請法が制定されている。
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