第11章 再販適用除外制度

第1 概説

 再販売価格維持契約とは,商品の供給者がその商品の取引先である事業者に対して転売する価格を指示し,これを遵守させること(以下「再販行為」という。)を内容とする契約である。再販行為は,原則として,不公正な取引方法(再販売価格の拘束)に該当し,独占禁止法第19条違反に問われるものであるが,おとり廉売防止等の観点から,同法第23条の規定に基づき,当委員会が指定する再販指定商品及び著作物を対象とするものについては,例外的に独占禁止法の適用を除外されている(再販適用除外制度)。
 独占禁止法の適用を除外される行為は,「再販売価格を決定し,これを維持するためにする正当な行為」であるが,「一般消費者の利益を不当に害することとなる場合」及び「その商品を販売する事業者がする行為にあってはその商品を生産する事業者の意に反してする場合」には適用除外とはならない。また,消費者・勤労者の互助を目的とする消費生活協同組合等の団体に対して販売する場合にも,適用除外とならない。
 再販適用除外制度を含む独占禁止法適用除外制度については,累次の閣議決定においてその見直しが決定されており,当委員会は,これらを踏まえ再販適用除外制度の見直しに取り組んできた。このうち指定再販制度については,化粧品14品目及び一般用医薬品14品目の指定を平成9年4月1日に取り消した。これにより,昭和28年以降行われてきた再販指定商品の指定はすべて取り消された。

第2 著作物再販制度の取扱い

 当委員会は,上記のとおり再販適用除外制度の見直しを進めてきた。このうち,著作物再販制度については,平成10年3月に,競争政策の観点からは廃止の方向で検討されるべきものであるが,本来的な対応とはいえないものの文化の振興・普及と関係する面もあるとの指摘があることから,著作物再販制度を廃止した場合の影響も含め引き続き検討し,一定期間経過後に制度自体の存廃について結論を得る旨の見解を公表した。
 これに基づき,著作物再販制度を廃止した場合の影響等について関係業界と対話を行うとともに,国民各層から意見を求めるなどして検討を進めてきたところ,平成13年3月23日,次のとおり取り扱うこととした。
 著作物再販制度は,独占禁止法上原則禁止されている再販売価格維持行為に対する適用除外制度であり,独占禁止法の運用を含む競争政策を所管する当委員会としては,規制改革を推進し,公正かつ自由な競争を促進することが求められている今日,競争政策の観点からは同制度を廃止し,著作物の流通において競争が促進されるべきであると考える。
 しかしながら,国民各層から寄せられた意見をみると,著作物再販制度を廃止すべきとする意見がある反面,同制度が廃止されると,書籍・雑誌及び音楽用CD等の発行企画の多様性が失われ,また,新聞の戸別配達制度が衰退し,国民の知る権利を阻害する可能性があるなど,文化・公共面での影響が生じるおそれがあるとし,同制度の廃止に反対する意見も多く,なお同制度の廃止について国民的合意が形成されるに至っていない状況にある。
 したがって,現段階において独占禁止法の改正に向けた措置を講じて著作物再販制度を廃止することは行わず,当面同制度を存置することが相当であると考える。
 著作物再販制度の下においても,消費者利益の向上につながるような運用も可能であり,関係業界においてこれに向けての取組もみられるが,前記の意見の中には,著作物再販制度が硬直的に運用されているという指摘もある。
 このため,当委員会は,現行制度の下で可能な限り運用の弾力化等の取組が進められることによって,消費者利益の向上が図られるよう,関係業界に対し,非再販商品の発行・流通の拡大,各種割引制度の導入等による価格設定の多様化等の方策を一層推進することを提案し,その実施を要請する。また,これらの方策が実効を挙げているか否かを検証し,より効果的な方途を検討するなど,著作物の流通についての意見交換をする場として,当委員会,関係事業者,消費者,学識経験者等を構成員とする協議会を設けることとする。
 当委員会としては,今後とも著作物再販制度の廃止について国民的合意が得られるよう努力を傾注するとともに,当面存置される同制度が硬直的に運用されて消費者利益が害されることがないよう著作物の取引実態の調査・検証に努めることとする。
 また,著作物再販制度の対象となる著作物の範囲については,従来から当委員会が解釈・運用してきた6品目(書籍・雑誌,新聞及びレコード盤・音楽用テープ・音楽用CD)に限ることとする。