独占禁止法は、事業者が私的独占又は不当な取引制限をすること、不公正な取引方法を用いること等を禁止しており(第3条、第19条ほか)、当委員会は、一般から提供された情報、自ら探知した事実等を検討し、これらの禁止規定に違反する事実があると思料するときは、独占禁止法違反被疑事件として必要な審査を行っている。
審査事件のうち必要なものについては独占禁止法第46条の規定に基づく権限を行使して審査を行い、違反する事実があると認められたときは、排除措置を採るよう勧告する(第48条第1項及び第2項)か、若しくは審判手続を開始し(第49条第1項)、又は違反行為がなくなってから1年を経過していることから勧告を行うことができないが、課徴金納付命令の対象となる場合には、同命令を行っている(第48条の2)。なお、相手方が勧告を応諾した場合には勧告審決(第48条第4項)、その他の場合は審判手続を経て同意審決(第53条の3)又は審判審決(第54条)を行っている。相手方が課徴金納付命令に対して不服中立てをした場合には審判手続が開始され、同納付命令は失効する(第49条第2項及び第3項)。 また、勧告等の法的措置(注)を採るに足る証拠が得られなかった場合であっても、違反の疑いがあるときは、関係事業者に対して警告を行い、是正措置を採るよう指導している。 さらに、違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが、違反につながるおそれのある行為がみられた場合には、未然防止を図る観点から注意を行っている。 平成12年度における審査件数は、前年度からの繰越しとなっていたもの39件、年度内に新規に着手したもの69件、合計108件であり、このうち本年度内に処理した件数は74件である。 74件の内訳は、勧告18件、警告17件、注意36件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切ったもの3件となっている(第1−1表)。
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第1−2表 不当廉売事案における迅速処理の状況
![]() 法的措置件数と対象事業者等の数の推移
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勧告、警告、注意又は打切りのいずれかの処理を行ったものを行為類型別 行為類型別の法的措置件数
![]() にみると、私的独占2件、価格カルテル10件、入札談合14件、その他のカルテル1件、不公正な取引方法39件、その他8件となっている(第2表)。法的措置として勧告等を行った事件は18件であり、この内訳は、価格カルテル1件、入札談合10件、その他のカルテル1件、不公正な取引方法6件となっている(第3表、第4表)。 第2表 平成12年度審査事件(行為類型別)一覧表
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第3表 最近5年間の勧告等の法的措置(行為類型別)一覧表
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なお、平成12年度において、独占禁止法の規定に違反する事実があると思料され、当委員会に報告された事実(申告)の件数は2,878件となっている。この報告が書面で具体的な事実を摘示して行われた場合には、措置結果を通知することとされており(第45条第3項)、平成12年度においては、1,647件の通知を行った。 第4表 平成12年度法的措置一覧表
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平成12年度は18件の勧告を行った。18件のうち、1件については関係人の一部について審判手続を開始し、その他については勧告審決を行った。平成12年度に法的措置を採った18件について違反法条をみると、第3条後段(不当な取引制限)違反12件、第19条違反(不公正な取引方法)違反6件となっている。
法的措置を採った上記18件の概要は、以下のとおりである。 1 独占禁止法第3条後段違反事件
ア 関係人
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![]() ![]() ![]() ![]() イ 違反事実等
(ア) 北海道上川支庁発注の農業土木工事関係
(イ) 上川支庁発注の農業土木工事に伴う測量設計業務関係
ウ 排除措置
(ア) 上川支庁発注の農業土木工事関係
203名に対し、次の措置を採るよう命じた。
(イ)上川支庁発沼三の農業土木工事に伴う測量設計業務関係
94名に対し、次の措置を採るよう命じた。
エ 当委員会からの要請
北海道農政部及び各支庁において、農業土木工事及びそれに伴う測量設計業務について、各事業者ごとの年間受注目標額が設定されていたこと、上川支庁において、同目標額をおおむね達成できるようにするために指名競争入札等の執行前に、受注業者に関する意向を旭川農業土木協会の事務局長の職にある者及び旭川測量設計業協会の事務局次長の職にある者に示していたこと等の事実が認められたことから、北海道に対し、今後、同様の行為が行われることのないよう次のとおり再発防止を要請した。
(1) 幹部及び関係職員の意識改革の徹底 (2) 独占禁止法違反行為等に対する監督体制の強化 (3) 入札における情報管理の徹底 (4) 入札における公正・自由な競争の確保 (5) 適切な入札が行われるために有効な制度及び組織の構築 ![]() ![]()
ア 関係人
![]() イ 違反事実等
ウ 排除措置
4社に対し、次の措置を採るよう命じた。
ア 関係人
![]() ![]() イ 違反事実等
ウ 排除措置
関係人45社に対し、次の措置を採るよう命じた。
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ア 関係人
![]() イ 違反事実等
ウ 排除措置
4社に対し、次の措置を採るよう命じた。
ア 関係人
![]() イ 違反事実等
ウ 排除措置
4社に対し、次の措置を採るよう命じた。
別表
特定通信機用乾電池の取扱状況 ![]()
ア 関係人
(ア) 町田市発注の土木一式工事関係(平成12年(勧)第16号)
![]() ![]() ![]() ![]() (イ)町田市発注の建築一式工事関係(平成12年(勧)第17号)
![]() ![]() ![]() (ウ)町出市発注の舗装工事関係(平成12年(勧)第18号)
![]() ![]() イ 違反事実等
(ア) 町田市発注の土木一式工事関係
(イ) 町田市発注の建築一式工事関係
(ウ) 町田市発注の舗装工事関係
ウ 排除措置
69名に対し、次の措置を採るよう命じた。
(ア) 町田市発注の土木一式工事関係
(イ) 町田市発注の建築一式工事関係
54名に対し、次の措置を採るよう命じた。
(ウ) 町田市発注の舗装工事関係
46名に対し、次の措置を採るよう命じた。
別表1
![]() ![]() 別表2
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ア 関係人
(ア) 富山県等発注関係(平成13年(勧)第2号)
![]() ![]() (イ) 富山市等発注関係(平成13年(勧)第3号)
![]() ![]() イ 違反事実等
(ア) 富山県等発注関係
(イ) 富山市等発注関係
ウ 排除措置
(ア) 富山県等発注関係
17名に対し、次の措置を採るよう命じた。
(イ) 富山市等発注関係
16名に対し、次の措置を採るよう命じた。
2 独占禁止法第19条違反事件
ア 関係人
![]() イ 違反事実等
ウ 排除措置
姫路協組に対し、次の措置を採るよう命じた。
ア 関係人
![]() イ 違反事実等
ウ 排除措置
サギサカに対し、次の措置を採るよう命じた。
ア 関係人
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ウ 排除措置
ピエトロに対し、次の措置を採るように命じた。
ア 関係人
![]() ![]() イ 違反事実等
ウ 排除措置
17社及びワキタに対し、次の措置を採るよう命じた。
ア 関係人
![]() イ 違反事実等
ウ 排除措置
アルパインに対し、次の措置を採るよう命じた。
ア 関係人
![]() イ 違反事実等
ウ 排除措置
奈良県生コン、協組に対し、次の措置を採るよう命じた。
4 審判開始決定事件
当委員会は、独占禁止法違反の疑いで審査を行い、同法に違反する事実があると認めて排除措置を採るよう勧告し(第48条第1項及び第2項)、勧告を受けたものが当該勧告を応諾しなかった場合において、事件を審判
手続に付することが公共の利益に適合すると認めたときは、当該事件について事件の要旨を記載した文書をもって審判開始決定を行っている(第49条第1項及び第50条第1項)。
ア 被審人
![]() なお、次に掲げる関係人28社については、勧告を応諾したため、平成13年3月30日にこれらの者に対し、勧告審決を行っている(ウ参照)。 ![]() イ 審判開始決定の内容
ウ 岡崎管工株式会社を除く関係人28社に対する排除措置
29社のうち岡崎管工株式会社を除く28社に対し、次の措置を採るよう命じた。
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警告措置を採ったものの概要は以下のとおりである。
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課徴金制度は、カルテルによる経済的利得を国が徴収し、違反行為者がそれをそのまま保持し得ないようにすることによって、社会的公正を確保すると同時に、違反行為の抑止を図り、カルテル禁止規定の実効を確保するため、行政上の措置として設けられているものである。
課徴金の対象となる行為は、事業者又は事業者団体の行う価格カルテル、入札談合・受注調整、供給量制限カルテル等のうち、商品若しくは役務の対価に係るもの又は実質的に商品若しくは役務の供給量を制限することによりその対価に影響のあるものである。これらの行為があった場合に、事業者又 は事業者団体の構成事業者に対し課徴金の納付を命じることとされている(第7条の2第1項、第8条の3)。 平成12年度は、延べ732件、総額105億2503万円の課徴金の納付を命じた(第5表)。 なお、平成12年度に課徴金の納付を命じた732件のうち、延べ13件については審判開始請求があり、これらについてはいずれも審判開始決定を行ったことから合計20億835万円の課徴金納付命令(平成12年(納)第485号〜第488号、第490号、第491号、平成13年(納)第19号、第25号、第283号〜287号)が失効した。この結果、平成12年度の課徴金額は、85億1668万円となった(第6表)。 課徴金額等の推移
![]() (注) 課徴金の納付を命ずる審決を含み、審判手続を開始したものを含まない。 第5表 平成12年度課徴金納付命令一覧
(課徴金の納付を命ずる審決を除く。) ![]() ![]()
第6表 課徴金制度の運用状況
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当委員会は、審決執行後、当該関係人の動向等を調査することにより、審決の履行状況を監査するとともに違反行為の再発防止に努めている。
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私的独占、カルテルなどの重大な独占禁止法違反行為については、勧告等の法的措置のほか罰則が設けられているところ、これらについては当委員会による告発を待って論ずることとされている(第96条、第73条第1項)。
当委員会は、平成2年6月20日、「独占禁止法違反行為に対する刑事告発に関する公正取弓委員会の方針」を公表して、積極的に刑事処罰を求めて告 発を行う方針を明らかにしたところである。 平成12年度においては、前記の告発方針に照らして告発すべき事案と判断して告発を行ったものはなかった。 |