第7章 価格の同調的引上げに関する報告の徴収

第1 概説

 独占禁止法第18条の2の規定により、年間国内総供給価額が600億円超で、かつ、上位3社の市場占拠率の合計が70%超という市場構造要件を満たす同種の商品又は役務につき、首位事業者を含む2以上の主要事業者(市場占拠率が5%以上であって、上位5位以内である者をいう。)が、取引の基準として用いる価格について、3か月以内に、同一又は近似の額又は率の引上げをしたときは、当委員会は、当該主要事業者に対し、当該価格の引上げ理由について報告を求めることができる。
 この規定の連用については、当委員会は、その運用基準を明らかにするとともに、市場構造要件に該当する品目をあらかじめ調査し、これを運用基準別表に掲げ、当該別表が改定されるまでの間、同別表に掲載された品目について価格の同調的引上げの報告徴収を行うこととしている。

第2 運用基準別表の改定

 当委員会は、市場構造要件について調査を実施し、次のとおり運用基準別表を改定し、平成13年1月1日から実施した。これは、国内総供給価額及び市場占拠率に関する平成10年の調査結果を踏まえて見直しを行ったものである。

第1表 運用基準別表の改定の状況

第2表 改定後の別表掲載品目(74品目)


備考 (1)  本表は、当委員会が行った調査に基づき、平成10年の国内総供給価額が600億円を超え、かつ、上位3社の市場占拠率の合計が70%を超えると認められる同種の商品及び同種の役務(独占禁止法第18条の2第1項ただし書の規定に該当する場合を除く。)を褐げたものである。
(2)  本表の商品順は工業統計表に、役務順は日本標準産業分類による。

第3 価格の同調的引上げ理由の報告徴収

 平成12年度において、独占禁止法第18条の2に規定する価格の同調的引上げに該当すると認めてその引上げ理由の報告を徴収したものは、磨き板ガラスの1件である。
 磨き板ガラスの平成8年における国内総供給価額は1219億円であり、上位3社の市場占拠率の合計は92.7%である。主要事業者は、旭硝子株式会社(以下「旭硝子」という。)、日本板硝子株式会社(以下「日本板硝子」という。)及びセントラル硝子株式会社(以下「セントラル硝子」という。)の3社(以下「3社」という。)であり、首位事業者は旭硝子である。
 旭硝子及び日本板硝子が平成11年12月1日から、セントラル硝子が同月20日からそれぞれ実施した磨き板ガラスの販売価格の引上げは、独占禁止法第18条の2に規定する価格の同調的引上げに該当すると認められたので、当委員会は、平成12年5月23日、これら3社に対して価格引上げの理由の報告を求めた。
(1) 各社の価格引上げ状況
 磨き板ガラスの価格引上げは、各社がそれぞれの取引先と個別に価格引上げ交渉を進める形で行われた。3社の価格引上げの交渉開始日又は時期、価格引上げ予定日、価格引上げ実施日及び引上げ率は、下表のとおりである。

(注)  価格引上げ率は、磨き板ガラスの主要製品であるフロート板ガラス3ミリ厚定寸及び5ミリ厚定寸並びに網入り磨き板ガラス6.8ミリ厚定寸の価格の個別取引先(特約店)ごとの引上げ率を同取引先への出荷実績で加重平均した値である。

(2) 各社の価格引上げ理由
 3社から提出された報告書によると、価格引上げの理由は、以下のとおりである。
ア 旭硝子
 旭硝子は,、磨き板ガラスの価格引上げの主たる理由として、平成9年度以降販売価格が低下し、設備の廃棄、営業拠点の統合、本社・工場・支店における人員の削減等のコストダウン施策を行ったものの、板ガラス事業の収益の悪化が進み、さらに平成11年春以降、主要燃料のC重油の価格が上昇しコストアップ要因となったため、同事業の収支を改善する必要があったことを挙げている。また、新価格は、板ガラス事業の収支を平成12年度には平成9年度の水準まで戻すことを目標として、品目ごと取引先ごとの取引状況も考慮した上で設定したとしている。
イ 日本板硝子
 日本板硝子は、磨き板ガラスの価格引上げの主たる理由として、平成9年度以降の販売価格の低下により硝子建材カンパニー(同社は、各部門別にカンパニー制を採用している。)の収益が低迷し、平成11年度において、人員の削減、運送保管費の削減、広告宣伝費の削減等のコストダウン施策を行つてもなお同カンパニーの利益目標の達成が困難であったことから、同事業の収支を改善する必要があったことを挙げている。また、新価格については、首位事業者の価格引上げ情報に接したことを契機として検討を行い、首位事業者の価格引上げ率、取引先との取引状況等を考慮した上で、収益の改善を試算して設定したとしている。
ウ セントラル硝子
 セントラル硝子は、磨き板ガラスの価格引上げの主たる理由として、ここ数年来硝子営業部門の経常損益は赤字が継続しており、平成11年度も、加工費及び販売固定費の削減等のコストダウン施策を行ってもなお赤字が見込まれ、さらにC重油等の資材の値上がりがあったため、同部門の収支を改善する必要があったことを挙げている。また、新価格は、平成12年度における硝子営業部門の経常損益の赤字解消を目指し、先行して価格引上げを公表した他の事業者の引上げ率も考慮して設定したとしている。