第4 訴訟

1 審決取消請求訴訟
 平成13年度当初において係属中の審決取消請求事件は3件であったが,このうち,東京海上火災保険株式会社ほか17名による審決取消請求事件については,平成13年11月30日,東京高等裁判所で一部認容の判決が下された後,当委員会は,上告受理申立てを行い,平成13年度末現在最高裁判所に係属中である。社団法人観音寺市三豊郡医師会による審決取消請求事件については,平成13年4月4日,同医師会が取下げたことにより終了した。
 平成13年度中に新たに,安藤造園土木株式会社ほか11名による審決取消請求事件,更生会社株式会社カンキョー管財人大澤誠による審決取消請求事件,国際地質株式会社による審決取消請求事件が提起され,このため,平成13年度末現在係属中の審決取消請求事件は5件である。
(1) 協業組合カンセイによる審決取消請求事件
ア 事件の表示
 最高裁判所 平成11年(行ツ)第115号,平成11年(行ヒ)第70号
審決取消請求事件
上告人・申立人(原告)協業組合カンセイ
被上告人・相手方(被告)公正取引委員会
審決年月日 平成10年3月11日
提訴年月日 平成10年4月8日
判決年月日 平成11年1月29日(請求棄却,東京高等裁判所)
上告及び上告受理申立て年月日 平成11年2月13日
イ 審決の概要
 協業組合カンセイに対し.独占禁止法第7条の2第1項の規定を適用して,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,協業組合である上告人・申立人に対する課徴金の算出に際して,売上額に乗ずるべき一定率として独占禁止法第7条の2第1項(売上額の6%)を用いたところ,上告人・申立入が独占禁止法第7条の2第1項と第2項の適用区分は,課徴金対象事業者の企業規模に基づくものであり,対象事業者の存立形態(法形式)が「会社及び個人」かそれ以外かの区別によってされるべきでないから,企業規模において中小企業者に該当する上告人・申立人には第2項(売上額の3%)を適用すべきであるとして,被上告人・相手方が平成10年3月11日寸けでした審決のうち,金967万円を超えて納付を命じた部分の取消しを求めた事案である。東京高等裁判所は,上告人・申立人の請求を棄却した。
エ 訴訟手続の経過
 本件は.上告人・申立人の上告及び上告受理申立てにより,平成13年度末現在,最高裁判所に係属中である。
(2) 社団法人観音寺市三豊郡医師会による審決取消請求事件
ア 事件の表示
 最高裁判所 平成13年(行サ)第29号及び平成13年(行ノ)第28号
  審決取消請求事件
  上告人・ 申立入(原告)社団法人観音寺市三豊郡医師会
  被上告人・相手方(被告)公正取引委員会
   審決年月日 平成11年10月26日
   提訴年月日 平成11年11月24日
   判決年月日 平成13年2月16日(請求棄却,東京高等裁判所)
   上告及び上告受理申立て年月日 平成13年3月5日
   取下げによる終了年月日 平成13年4月4日
イ 審決の概要
 本審決は,社団法人観音寺市三豊郡医師会に対し,独占禁止法第54条第1項の規定に基づいて,医療機関の開設の制限に関する決定等の破棄等の措置を命じたものであり,本審決が認定した事実の概要は次のとおりである。
 香川県観音寺市及び三豊郡の区域を地区とする医師会である上告人・申立入が,将来の患者の取り合いを防止する目的で,(1)昭和54年8月14日の医療機関の開設及び病床の増床の制限に関する「観音寺市三豊郡医師会医療機関新設等相談委員会規程」及び「観音寺市三豊群医師会医療機関新設等相談委員会施行細則」の決定,(2)昭和60年6月11日の診療科目の追加の制限に関する相談委員会規程及び相談委員会細別の改定,(3)平成3年11月12日の医療機関の増改築の制限に関する決定,(4)平成5年1月12日の老人保健施設の開設の制限に関する決定を行ってきた。
ウ 事案の概要
 本件は.上告人・申立人が,本件審決には主要事実を立証する実質的な証拠がないこと,事実認定を誤っていること等を理由として,審決の取消しを求めたものである。東京高等裁判所は,本件審決の認定は,実質的証拠を具備し,合理的であるというべきであり,本件審決に上告人・申立人主張の違法はなく,審決における事実認定及び法令の適用に違法は認められないとして,上告人・申立人の請求を棄却した。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,上告人・申立人の上告及び上告受理申立てにより,最高裁判所に係属したが,上告人・申立人の取下げにより,請求棄却判決が確定した。
(3) 東京海上火災保険株式会社ほか17社による審決取消請求事件
ア 事件の表示
最高裁判所平成14年(行ヒ)第72号
 審決取消請求上告受理申立て事件
 申立人(被告)公正取引委員会
 相手方(原告)東京海上火災保険株式会社ほか17名
  審決年月日 平成12年6月2日
  提訴年月日 平成12年7月3日,同月5日
  判決年月日 平成13年11月30日(請求一部認容,東京高等裁判所)
  上告受理申立て年月日 平成13年12月14日
イ 審決の概要
 東京海上火災保険株式会社(以下「東京海上」という。)及び住友海上火災保険株式会社ほか19名(以下「20名」という。)は,日本機械保険連盟(以下「連盟」という。)の会員となっていたところ,連盟は,機械保険及び組立保険(以下「機械保険等」という。)の保険料率に関し,会員が申請すべき認可申請の内容を決定し,会員に一定料率で機械保険等の引受けを行わせることにより,我が国における機械保険等の元受けに係る各取引分野における競争を実質的に制限していた。 本審決は,東京海上及び20名に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,相手方らが,本件審決には損害保険の経済的実態の認識を誤り,課徴金制度の仕組みと売上額の算定,損害保険制度と損害保険会社の機能及び代理店手数料等について,独占禁止法第8条の3及び同法第7条の2第1項,並びに独占禁止法施行令第5条及び同第6条の解釈,運用を誤ったものであり,かつ,相手方らに対して賦課すべき課徴金の算定を誤ったものである等を理由として,審決の取消しを求めているものである。
エ 一審(東京高等裁判所)判決の概要
 申立人が相手方らに対しそれぞれ平成12年6月2日付けでした公正取引委員会平成10年(判)第4ないし第24号課徴金納付命令審決のうち,営業保険料の合計額をもって課徴金算定の基礎となる売上額とし,営業保険料から支払保険金を控除しなかった点において,独占禁止法第8条の3及び第7条の2第1項並びに独占禁止法施行令第5条の規定に違反した違法があるので,本件審決のうち支払保険金を控除した場合の課徴金額を超えて課徴金の納付を命じる部分を取り消す。
(ア)支払保険金の額の控除について
a 課徴金算定の基本的姿勢
 課徴金制度の基本的性格はあくまでもカルテルによる経済的利益の剥奪にあるから,役務とその対価を把握するに当たっては,可能な範囲では課徴金の額が経済的に不当な利得の額に近づくような解釈を採るべきである。
b 保険制度の基本的理解
 保険制度は団体的共同備蓄とも称すべき制度であり,加入者相互間に同一の保険団体構成員としての関係が存在し,各人が団体の基金に出資する義務を負い,事故に遭遇した構成員が基金から保険金を受け取る権利を有するという集団性から切り離した個別の保険契約を考えることはできない。
c 支払保険金の性格と課徴金の対象となる売上額の関係
 営業保険料のうち保険金の支払に充てられた部分は,基金に留保され,保険団体内部での資金移動に供せられるだけのものであるから,役務に対する経済的な反対給付,すなわち対価とみることはできず,営業保険料から支払保険金に充てられた部分を控除した残りの部分をもって対価とみるべきである。
 営業保険料のうち保険金の支払に充てられた部分は,保険制度の仕組みの中において,もともと損害保険会社の利得の源泉を構成するものではないから,不当な利得の剥奪を基本的な目的とする課徴金の対象とすることはできない。保険金の支払に充てられた部分からも課徴金を徴収することは,保険原資の一部を奪うもので,需要者たる保険契約者の利益を害するものにもなるのであり,この点からも,課徴金の算定に当たっては,営業保険料から支払保険金の額を控除した額をもって,機械保険等の引受けという役務の「対価」ととらえるのが相当である。
d 被告の主張に対する判断
 申立人は,支払保険金は営業保険料という収益を獲得するための費用ないし原価であり,課徴金は費用を差し引く前の売上額を基準として算定するのであるから,保険金を差し引いて課徴金額を計算することは許されないと主張するが,支払保険金が営業保険料を獲得する費用ないし原価であるというのは,経済学的には成り立たない。会計処理上,収受した営業保険料を収益項目に計上し,支払った保険金を費用項目に計上しているが,機械保険等の引受けの対価が何であるかは実質的にみるべきもので,このような会計処理は上記解釈の妨げとはならない。
(イ) 純保険料の額の控除について
  純保険料の総額が実際の支払保険金の総額と一致するとは限らず,純保険料には,事業費及び利潤に充てられるものが含まれる可能性が高いから,営業保険料から純保険料の額を控除すべきであるという相手方らの主張は採用できない。
(ウ) 代理店手数料の額の控除について
 保険会社からみれば,代理店手数料は,保険契約締結のための費用であり,事業費の一部である。また,代理店手数料は役務提供の相手方である保険契約者に対して支払われたものではないから,独占禁止法施行令第5条第3号の割戻金として営業保険料から控除することはできない。
オ 訴訟手続の経過
 本件については,申立人の上告受理申立てにより,現在最高裁判所に係属中である。
(4) 安藤造園土木株式会社ほか11社による審決取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成13年(行ケ)第445号
 審決取消請求事件
 原告 安藤造園土木株式会社ほか11名
 被告 公正取引委員会
  審決年月日 平成13年9月12日
  提訴年月日 平成13年10月9日
イ 審決の概要
 本審決は,安藤造園土木株式会社ほか13社が,緑化建設愛廣園株式会社と,福岡市が指名競争入札の方法により発注する落札金額が1億円以上と想定される大規模な造園工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする旨合意し(以下「本件合意」という。),本件合意に基づいて受注調整を行っていたとし,安藤造園土木株式会社ほか13名に対し,独占禁止法第54条第2項の規定に基づいて,かかる行為を取りやめていることの確認等の措置を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,原告ら及び緑化建設愛廣園株式会社,西鉄グリーン株式会社及び株式会社九州緑化産業の間において,本件合意が成立していたとの認定は実質的証拠を失くし,また仮に談合行為があるとしても,落札金額1億円以上の工事が落礼金額1億円未満の工事と別個に独立して一定の取引分野を形成するとした審決の判断は誤っているとして,審決の取消しを求めているものである。
エ 訴訟手続の経過
 本件については,現在東京高等裁判所に係属中である。
(5) 更生会社株式会社カンキョー管財人大澤誠による審決取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成13年(行ケ)第454号
 審決取消請求事件
 原告 更生会社株式会社カンキョー管財人大澤誠
 被告 公正取引委員会
  審決年月日 平成13年9月12日1
  提訴年月日 平成13年10月12日
イ 審決の概要
 本審決は,更生会社株式会社カンキョー(以下「カンキョー」という。)に対し,景品表示法第7条第1項及び第2項に基づいて,一般消費者の誤認を排除する措置等を命じたものであり,本審決が認定した違反行為の概要は決のとおりである。
 カンキョーは,同社が製造・販売している家庭用空気清浄機に関し,当該家庭用空気清浄機は(1)他のフィルタ一式空気清浄機よりも集塵能力が高く,(2)室内の空気中のウイルスを実用的な意味で有効に捕集する能力を有しているかのような表示をしていたが,実際には,集塵能力において,他のフィルター式空気清浄機よりも劣るものであり,また,ウイルスを捕集する能力についても,実用的な意味を有していなかった。
ウ 事案の概要
 本件は,カンキョーが,本審決には,(ア)実質的証拠の不存在,(イ)鑑定の申出を却下したことについての手続的違法,(ウ)景品表示法第4条第1号の「著しく」の解釈適用を誤った違法が存するなどとして,その取消しを求めているものである。
エ 訴訟手続の経過
 本件については,現在東京高等裁判所に係属中である。(参考)更生会社株式会社カンキョー管財人大澤誠による審決執行免除申立事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成13年(行タ) 第60号
 審決の執行免除申立事件
 申立人 更生会社株式会社カンキョー管財人大澤誠
 相手方 公正取引委員会
  申立年月日 平成13年11月2日
  決定年月日 平成13年12月14日
イ 事案の概要
 略
ウ 決定の主文
 保証金として100万円を供託することにより,当該審決が確定するまでその執行を免れることができる。
(6) 国際地質株式会社による審決取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成13年(行ケ)第472号
 審決取消請求事件
 原告 国際地質株式会社
 被告 公正取引委員会
  審決年月日 平成13年9月20日
  提訴年月日 平成13年10月19日
イ 審決の概要
 本審決は,国際地質株式会社を含む千葉市内に本店又は主たる事務所を有する市内業者が,千葉市及び同市水道局が発注する地質調査業務について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする旨合意し(以下「本件合意」という。)
 本件合意に基づいて受注調整を行っていたとし,独占禁止法第54条第2項の規定に基づいて,国際地質株式会社に対し,かかる行為の取りやめの通知等の措置を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,原告が本件合意に基づく受注調整に参加していないなどとして,審決の取消しを求めているものである。
エ 訴訟手続の経過
 本件については,現在東京高等裁判所に係属中である。
2 その他の訴訟
 平成13年度当初において係属中の事件は5件であったが,日本鋼管株式会社,三菱重工業株式会社,日立造船株式会社ほか2名による審判事件記録閲覧謄写許可処分取消請求事件3件については,平成13年10月17日に一部却下,一部棄却の判決が下された後,控訴され,平成14年6月5日に閲覧謄写許可処分を取り消す旨の判決がされた。また,前述の閲覧謄写許可処分について提訴段階でされていた執行停止の申立て2件については,いずれも却下決定がされ,即時抗告の申立てがされたが,取り下げられた。
 平成13年度中に,新たに,日立造船株式会社ほか2名による控訴審段階酎における閲覧謄写許可処分についての執行停止の申立てと,技研システム株式会社による国家賠償請求訴訟の提起があった。また,有限会社庚申不動産鑑定所による不作為違法確認請求訴訟の提起があったが,取り下げられた。
(1) 日本鋼管株式会社ほか4名による審判事件記録謄写許可処分取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成13年(行コ)第239号
 事件記録閲覧謄写許可処分取消請求事件
 控訴人(原告)日本鋼管株式会社ほか4名
 被控訴人(被告)公正取引委員会
  提訴年月日 平成12年12月22日,平成13年1月19日
  判決年月日 平成13年10円17日
  控訴年月日 平成13年10月17日,平成13年10月18日
  判決年月日 平成14年6月5日
イ 事案の概要
 本件は,公正取引委員会平成11年(判)第4号事件の被審人らが,当委員会が独占禁止法第69条に基づき,被審人らを被告として住民訴訟を追行中の原告住民に対して,審判記録の閲覧謄写に応じる決定をし,各申請人に通知した各処分の取消しを求めるものである。
ウ 一審(東京地方裁判所)判決の概要
(ア)平成13年1月19日付け通知は,申請者に通知されなかったため,同通知以前には行政処分は存在しないのであって,控訴人らとしては,同年3月12日付けの処分(以下「本件各処分」という。)の取消しのみを求めれば足り,同年1月19日付けの処分の取消しを求める利益はない。
(イ)控訴人らは,被害者は,独占禁止法第25条による権利行使を容易にするために「利害関係人」に含められているのであるから,確定した審決によって認定された違反行為による被害者のみをいうと主張するが,独占禁止法第69条は,閲覧謄写を求め得る時期について,この主張のような限定をしていないし,審決確定以前から民法第709条に基づき損害賠償請求をすることが可能であるから,審判対象の行為によって被害を受けたと考えられる者は,審決確定前から,審判記録の閲覧謄写を請求する利害関係を有していると解するのが相当である。
 独占禁止法違反事件の審判対象たる行為と同一性を有する事実を基礎として被審人を被告とする住民訴訟としての損害賠償請求訴訟を提起し,同訴訟が現に係属している場合には,当該住民は,当該地方分共同体に代位してその損害賠償請求権を行使する法的地位を付与されているのであり,当該訴訟の帰すうによって当該地方公共団体自体が損害賠償請求権を有するか否かが確定し,当該地方公共団体もその訴訟の結論に拘束されるに至るのであるから,当該住民は,特段の事情のない限りは,「被害者」たる法的地位を取得した者として,「利害関係人」に該当すると解するのが相当である。
 なお,「利害関係人」に該当するのは適法な住民訴訟を提起した者に限るとの考え方も想定されないでもないが,住民訴訟が適法に提起されたか否かを行政庁である被控訴人に判断させるのは,被控訴人に難きを強いるものといわざるを得ず,他方,閲覧謄写の対象物は,公開の審判廷に提出された資料であることにかんがみると,住民訴訟を提起した住民は,当該訴訟が不適法なものであることが明らかであるような特段の事情がない限り,独占禁止法第69条にいう「利害関係人」に該当すると解するのが,閲覧謄写制度と住民訴訟制度を整合的に解釈した結論というべきである。
エ 二審(東京高等裁判所)判決の概要
 東京高等裁判所は,平成14年6月5日,本件一審判決を取り消す判決を言い渡した。
 本件判決は,独占禁止法第69条にいう「利害関係人」とは,当該審判事件の被審人
のほか,
 同法第59条及び第60条の各規定により審判手続に参加し得る者並びに当該審判事件の対象をなす同法違反行為の被害者をいうものと解されるところ(最高裁昭和50年7月10日第一小法廷判決・民集29巻6号888頁参照),住民訴訟を提起している本件各申請人が上記の同法違反行為の被害者として「利該関係人」に当たるか否かについて,(1)同法違反事件の処理手続がもともと公益保護の立場から同法違反の状態を是正することを主眼とし,同法違反行為による被害者の個人的利益の救済を図ることを直接の目的にするものではないことから,同法第24条の差止請求及び同法第25条の損害賠償責任制度により被害者の個人的利益の救済を図ることとし,被害者が積極的に審判手続に関与することを認めていない,(2)同法第69条が,法違反事件の処理手続を規定した第8章第2節の中に置かれた規定であることにかんがみれば,閲覧謄写等は原則として審判手続の中においてされることを予定しており,他方,審判手続に参加を認められなかった被害者については,同法第24条の差止請求訴訟を提起するか,又は同法第25条の損害賠償請求をすることができるようになるまでは,同法の上では特段の地位が与えられておらず,審判手続に関与する余地はないことから,同法違反行為の被害者は,同法第59条の規定により参加を認められた場合,同法第24条の規定に基づく差止請求訴訟を提起する場合及び同法第48第4項などの規定による審決が確定して同法第25条の規定に基づく損害賠償請求をする場合以外は,同法第69条の規定にいう「利害関係人」には当たらないと判示した。
 また,民法第709条の規定に基づく損害賠償を請求する者については,(1)仮に独占禁止法違反行為の被害者は同法第69条の規定にいう「利害関係人」として常に事件記録の閲覧謄写等を求めることができるとすると,被害を受けたと主張しさえすれば,だれでも事件記録の閲覧謄写等が可能になりかねないが,そうなっては,委員会の委員長等に課している秘密保持義務の規定も空文化しかねず,被審人や事件関係者に大きな不利益を与えるおそれがある,(2)民法第709条に基づく損害賠償請求においては,民事訴訟法の規定による証拠資料の収集・提出が行われるべきものであり,委員会が職権主義的に,かつ,強力な権限をもって収集した審判事件の資料が,いまだ独占禁止法違反行為があったと認定されていない段階で,損害賠償請求訴訟において証拠資料として用いられることは,同法の予定していないところである,として,同法第69条の規定にいう「利害関係人」には当たらず,これに当たるものとしてされた本件各処分は,違法であり,取消しを免れない。
オ 訴訟手続の経過
 本件については,平成14年6月13日に参加人らが上告受理申立てを行っている。
 なお,本案事件の判決の確定まで執行を停止する旨の決定がされている(後記(4)参照)。
(2) 日本鋼管株式会社による執行停止申立事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成13年(行ス)第55号
 執行停止申立却下決定に対する即時抗告申立事件
 申立人 日本鋼管株式会社
 相手方 公正取引委員会
  申立日 平成13年1円22日
  決定年月日 平成13年10月17日
  即時抗告年月日 平成13年10月17日
  取下げによる終了 平成13年12月18日
イ 事案の概要
 本件申立ては,前記(1)の提訴に伴い申し立てられた執行停止申立事件である。
ウ 決定の主文
 本件申立てを却下する。
エ 訴訟手続の経過
 本件申立てと同時期に申し立てられた日立造船株式会社ほか2名による執行停止の申立て (東京地方裁判所平成13年(行ク)第8号)が平成13年3月19日に「本案事件の第1審判決の言い渡しがあるまでの間」執行を停止するという形で認容されたので,本件申立ては,一審判決言渡しまで判断が示されなかった。そして,一審判決言渡しの後,本件申立てが却下されたので,申立人は,引き続き執行の停止を求めて抗告した。しかし,後記(4)の申立てが認容され,本案判決の確定まで執行が停止されたので,抗告は取り下げられた。
(3) 三菱重工業株式会社による執行停止申立事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成13年(行ス)第54号
 執行停止申立却下決定に対する即時抗告申立事件
 申立人 三菱立工業株式会社
 相手方 公正取引委員会
  申立年月 平成13年3月14日
  決定年月日 平成13年10月17日
  即時抗告年月日 平成13年10月17日
  取下げによる終了 平成13年12月20日
イ 事案の概要
 本件申立ては,前記(1)の提訴に伴い申し立てられた執行停止申立事件である。
ウ 決定の主文
  本件申立てを却下する。
エ 訴訟手続の経過
  (2)と同じ。
(4) 日立造船株式会社ほか2名による公正取引委員会審判記録閲覧謄写許可処分執行停止申立事件について
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成13年(行タ)第56号
 執行停止申立事件
 申立人 日立造船株式会社ほか2名
 被申立人 公正取引委員会
  申立年月日 平成13年10月17日
  決定年月日 平成13年10月24日
イ 事案の概要
  本件申立ては,前記(1)の控訴提起に伴い申し立てられた執行停止申立事件である。
ウ 決定の主文
 事件記録の閲覧謄写を認める旨の各決定(以下「本件各決定」という。)の執行は,いずれも本案事件の判決の確定まで停止する。
エ 決定の要旨
 本件の本案事件は,被申立人のした本件各決定の取消しを求めるものであるが,「本案について理由がないとみえる。」とはにわかに判断し難いところであるし,本件各決定が執行されてしまうと,本件各決定を取り消す意味も失われることになり,また,仮に記録が閲覧・謄写されることによって申立人らの企業秘密が明らかにされることなどによる損害が生ずるとすると,その申立人らの損害は性質上回復が困難になることが明らかである。したがって,申立人らには回復の困難な損害を避けるため本件本案事件の判決確定まで本件各決定の執行を停止すべき「緊急の必要がある」というべきである。
オ 訴訟手続の経過
 本件については,抗告許可の申立てをしなかったので,確定した。
(5) 技研システム株式会社による損害賠償請求事件
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成13年(ワ)第13381号
 損害賠償請求事件
 原告 技研システム株式会社
 披告 国
  提訴年月日 平成13年6月27日
イ 事案の概要
 本件は,公正取引委員会が,千葉市が発注する測量等の業務に関し,平成11年8月3日寸けで原告を含む設計・測量会社等計91名に対して勧告したが,平成12年8月8日,原告の違反事実を認めることはできない旨の審決を行ったところ,原告が公正取引委員会の違法な勧告によって地方公共団体等から指名停止処分を受け,売上げが減少し,民事再生手続開始申立てを行うこととなったとして,その損害賠償を求めるものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,現在,東京地方裁判所に係属中である。
(6) 有限会社庚申不動産鑑定所による不作為違法確認請求事件
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成14年(行ウ)第48号
 不作為違法確認請求事件
 原告 有限会社庚申不動産鑑定所
 被告 公正取引委員会
  提訴年月日 平成14年1月24日
  取下げによる終了 平成14年3月1日
イ 事案の概要
 本件は,原告が被告に対し,独占禁止法第45条第1項に基づき,社団法人茨城県不動産鑑定士協会に係る独占禁止法違反事実について適当な措置を採ることを求めてきたところ,被告がこれに対して措置を行わなかったことについて,不作為違法確認等を求めるものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,原告による取下げにより終了した。
3 独占禁止法第25条(無過失損害賠償責任)に基づく損害賠償請求事件
 平成13年度において独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求事件について新たに提起された事件はなく,同法第25条の規定に基づく係属中の損害賠償請求事件は4件である。
(1) 東京都発注水道メーター入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成10年(ワ)第1号
 損害賠償請求事件
 原告 東京都
 被告 愛知時計電機株式会社ほか24名
  提訴年月日 平成10年4月14日
イ 事案の概要
 当委員会は,東京都が発注する特定水道メーターの入札談合につい,平成9年4月18日,株式会社金門製作所ほか24名に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である東京都は,被審人である愛知時計電機株式会社ほか24名に対して,独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,和解手続進行中で平成13年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。
 なお,同裁判所から,平成11年2月24日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,同年4月27日,意見書を提出した。
(2) 米軍横田基地入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成11年(ワ)第1号
 損害賠償請求事件
 原告 アメリカ合衆国
 被告 株式会社協和エクシオ
  提訴年月日 平成11年9月29日
イ 事案の概要
 当委員会は,米国空軍契約センターが発注する電気通信設備の運用・保守の入札談合について,平成3年5月8日,株式会社協和エクシオほか11名が,当該契約センターが発注した27物件につき,受注予定者を決定したとして,協和エクシオほか2名に対し,課徴金納付命令を行った。このうち,株式会社協和エクシオ1社のみがこれを不服として審判手続の開始を請求した。
 当委員会は,平成3年7月9日,審判開始決定を行い,審判手続を経て,平成6年3月30日,課徴金の納付を命ずる審決を行ったところ,同社は同年4月14日,審決取消訴訟を提起したが,平成8年3月29日,請求棄却され,本決審決は確定した。その後,アメリカ合衆国は,独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成13年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。
 なお,同裁判所から,平成11年10月6日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成12年1月26日,意見書を提出した。
(3) 大阪市発注低食塩次亜塩素酸ソーダ入札談合事件
ア 事件の表示
(ア)東京高等裁判所平成11年(ワ)第2号
損害賠償請求事件
 原告 大阪市
 被告 ダイソー株式会社ほか9名
  提訴年月日 平成11年10月23日
(イ)東京高等裁判所平成11年(ワ)第3号
損害賠償請求事件
原告 大阪市
被告 ダイソー株式会社ほか6名
提訴年月日 平成11年18月23日
イ 事案の概要
(ア)平成11年(ワ)第2号事件
 当委員会は,大阪市が発注する10下水処理場向け低食塩次亜塩素酸ソーダの入札談合について,平成11年1月25日,ダイソー株式会社ほか9名に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である大阪市は,被審人であるダイソー株式会社ほか9名に対して,独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
(イ)平成11年(ワ)第3号事件
 当委員会は,大阪市水道局が発注する低食塩次亜塩素酸ソーダの入札談合について,平成11年1月25日,ダイソー株式会社ほか6名に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である大阪市は,被審人であるダイソー株式会社ほか6名に対して,独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,上記2事件が併合審理されており,両事件とも平成13年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。
 なお,同裁判所から,平成11年11月4日,2事件について,それぞれ,独占禁止法第84第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成12年1月31日,意見書を提出した。
4 その他の独占禁止法関係の損害賠償請求事件等
(1) 社会保険庁発注に係る支払通知書等貼付用シールの供給業者に対する不当利得本訴・各同反訴請求訴訟等
ア 事件の表示
最高裁判所平成13年(オ)第757号,平成13年(受)第747号
 不当利得返還請求控訴事件
 上告人(控訴人・本訴被告兼反訴原告)大日本印刷株式会社
 被上告人(被控訴人・本訴原告兼反訴被告)国
  提訴年月日 平成5年12月17日
  判決年月日 平成12年3月31日(本訴請求一部認容,反訴請求棄却,東京地方
裁判所)
  判決年月日 平成13年2月8日 (控訴棄却,東京高等裁判所)
  上告及び上告受理申立て年月日 平成13年2月19日
  判決年月日 平成14年3月28日(上告棄却,不受理決定,最高裁判所)
イ 事案の概要
 本件は,シールの入札談合について,国が民法第70条に基づき,入札談合による落札価格と客 観的価格(時価)との差額は被告らの不当利得であるとして,その返還を求める訴訟を東京地方裁判所に提起し,また,被告らが国に対し,未払残代金の支払を請求したものである。一審判決は,本訴原告(国)の請求を一部認容し,反訴原告の請求を棄却する判決を言い渡したところ,本訴被告のうち,大日本印刷株式会社が,平成12年4月13日,控訴し,平成13年2月8日控訴棄却した。その後,平成13年2月19日に上告し,平成14年3月28日に棄却判決が確定して,国が勝訴した。
 なお,当委員会は,入札談合について,トッパン・フォームズ株式会社(旧商号トッパン・ムーア株式会社)大日本印刷株式会社及び小林記録紙株式会社の3社に対し課徴金納付命令を行ったが,3社はこれを不服としたので,審判手続を経て審決を行った。これに対し,3社は,審決の取消しの訴えを東京高等裁判所に提起したが請求棄却された。その後,上告されていたが,平成10年10月13日,最高裁判所において上告棄却の判決が下された。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成14年3月28日,上告棄却。不受理決定があり,確定した。
(2) 米軍厚木基地における入札談合事件損害賠償請求訴訟
ア 事件の表示
 東京地方裁判所平成6年(ワ)第18372号
損害賠償請求事件
原告 アメリカ合衆同
被告 荒澤建設株式会社ほか52名(訴えの一部取下げがあったので,26名に減少
した。)
提訴年月日 平成6年9月16日
イ 事案の概要
 本件は,米国海軍航空施設(厚木基地)における建設工事等を競争入札により発注しているアメリカ合衆国の厚木駐在建設事務官が,競争入札に参加する厚木建設部会会員73名の昭和59年から平成2年にかけての談合行為により損害を被ったとして損害賠償を求める「通告書」を送付したが,これに応じなかった荒澤建設株式会社ほか52名に対して,民法第709条及び第719条の規定に基づき損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起したものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本作については,平成13年度末現在,東京地方裁判所において係属中である。
(3) 大阪府発注低食塩次亜塩素酸ソーダ入札談合事件に係る民法第709条訴訟
ア 事件の表示
大阪地方裁判所平成11年(ワ)第4154号
 揖害賠償請求事件
 原告 大阪府
 被告 ダイソー株式会社ほか9名
  提訴年月日 平成11年4月22日
イ 事案の概要
 当委員会は,大阪府が発注する三島浄水場向け低食塩次亜塩素酸ソーダの入札談合について,平成11年1月25日,ダイソー株式会社ほか9名に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である大阪府は,被審人であるダイソー株式会社ほか9名に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,大阪地方裁判所において平成13年12月28日,原告及び被吉との間で和解が成立し終結した。
 なお,同裁判所から,平成11年8月25日,文書送付嘱託があり,当委員会は,平成12年2月10日,資料を提供した。
(4) 京都市発注低食塩次亜塩素酸ソーダ入札談合事件に係る民法第719条訴訟
ア 事件の表示
京都地方裁判所平成11年(ワ)第2882号
 損害賠償請求事件
 原告 京都市
 被告 ダイソー株式会社ほか8名
  提訴年月日 平成11年11月9日
イ 事案の概要
 当委員会は,京都市上下水道事業管理者が発注する4浄水場向け及び4下水処理場向け低食塩次亜塩素酸ソーダの入札談合について,平成11年1月25日,ダイソー株式会社ほか8名に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である京都市は,被審人であるダイソー株式会社ほか8名に対して,民法第719条に基づく損害賠償請求訴訟を京都地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成12年3月22日,原告である京郡市が,京都地方裁判所に対し平成11年7月28日に提起されていた平成11年(行ウ)第20号違法公金支出金返還請求住民訴訟事件への共同訴訟参加を申し出て,同事件において係属中である。
(5)高槻市発注上水道工事入札談合事件に係る民法第709条訴訟
ア 事件の表示
大阪地方裁判所平成14年(ワ)第3005号,第4057号
 損害賠償請求事件
 原告 高槻市
 被告 有限会社アーサーほか27名
  提訴年月日 平成14年3月28日
イ 事案の概要
 当委員会は,高槻市水道部が発注する上水道本管工事入札談合について,平成13年11月7日,有限会社アーサーほか26名に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である高槻市は,被審人である有限会社アーサーほか26名に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件こついては,平成13年度末現在,大阪地方裁判所に係属中である。
(6) 旧埼玉土曜会談合事件に係る住民訴訟
ア 事件の表示
最高裁判所平成13年(行ツ)第235号
 損害賠償請求上告事件
 上告人(控訴人・原告)岩木英二ほか25名
 被上告人(被控訴人・被告)鹿島建設株式会社ほか24名
  提訴年月日 平成4年8月14日
  判決年月日 平成12年3月13日(訴え却下,浦和地方裁判所)
  判決年月日 平成13年4月26日(控訴棄却,東京高等裁判所)
  上告年月日 平成13年4月27日
イ 事案の概要
 当委員会は,埼玉県が発注する土木一式工事の入札談合について,平成4年6月3日,鹿島建設株式会社ほか65名に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決確定後,埼玉県の住民は,当該建設業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,埼玉県に代位して損害賠償を求める住民訴訟を浦和地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,浦和地方裁判所で訴え却下の判決がなされた後,東京高等裁判所でも平成13年4月26日控訴棄却の判決がなされたことから,同4月27日,最高裁判所に上告され,平成13年度末現在,同裁判所に係属中である。
 なお,浦和地方裁判所から,平成5年5月31日,文書送付嘱託があり,当委員会は,同年8月27日,資料を提供した。その後,同裁判所から,平成6年3月24日,再度文書送付嘱託及び調査嘱託があり,同年8月12日回答を行った。
(7) 日本下水道事業団発注の電気設備工事に係る住民訴訟
ア 事件の表示
(ア)名古屋高等裁判所平成13年(行コ)第21号
損害賠償請求控訴事件
被控訴人(原告)松川栄太郎ほか2名
控訴人(被告)日本下水道事業団及び富士電機株式会社
 提訴年月日 平成7年12月21日
 判決年月日 平成13年3月29日(請求一部認容,津地方裁判所)
 控訴年月日 平成13年4月11日
(イ)最高裁判所平成14年(行ツ)第1号
損害賠償請求上告事件
上告人(控訴人・原告)益子良一ほか51名
被上告人(被控訴人・被告)株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日 平成8年2月19日
 判決年月日 平成11年11月17日(訴え却下,横浜地方裁判所)
 判決年月日 平成13年9月19日(控訴棄却,東京高等裁判所)l
 上告年月日 平成14年1月8日
(ウ)名古屋高等裁判所平成13年(行コ)第37号
損害賠償請求控訴事件
被控訴人(原告)佐々木伸尚ほか1名
控訴人(被告)三菱電機株式会社ほか3名
 提訴年月日 平成8年2月21日
 判決年月日 平成13年9月7日(請求一部認容,名古屋地方裁判所)
 控訴年月日 平成13年9月11日
(エ)最高裁判所平成14年(行ツ)第18号,平成14年(行ヒ)第17号
損害賠償請求上告事件
被上告人(控訴人・原告)高橋敬幸
上告人(被控訴人・被告)日本下水道事業団
 提訴年月日 平成8年2月24日
 判決年月日 平成12年3月28日(請求一部認容,鳥取地方裁判所)
 判決年月日 平成13年10月12日(請求一部認容,広島高等裁判所松江支部)
 上告及び上告受理申立て年月日 平成13年10月24日
(オ)最高裁判所平成14年(行ツ)第19号,平成14年(行ヒ)18号
損害賠償請求上告事件
被上告人(控訴人・原告)高橋敬幸
上告人(被控訴人・被告)株式会社東芝
 提訴年月日 平成8年2月24日
 判決年月日 平成12年3月28日(請求一部認容,鳥取地方裁判所)
 判決年月日 平成13年10月12日(請求一部認容,広島高等裁判所松江支部)
 上告及び上告受理申立て年月日 平成13年10月25日
(カ)浦和地方裁判所平成8年(行ウ)第7号
損害賠償請求事件
原告 竹下悟ほか4名
被告 株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日 平成8年4月9日
 判決年月日 平成14年3月27日(訴え却下)
 控訴年月日 平成14年4月9日
(キ)広島高等裁判所松江支部平成13年(行コ)第7号
損害賠償請求控訴事件
控訴人(原告)竹下靖彦ほか1名 
控訴人(被告)株式会社東芝ほか2名
 提訴年月日 平成8年2月20日
 判決年月日 平成13年9月19日(請求一部認容,松江地方裁判所)
 控訴年月日 平成13年9月30日(双方控訴)
(ク)最高裁判所平成13年(行ツ)第116号,平成13年(行ヒ)第104号
損害賠償請求上告事件
上告人(控訴人・原告)村山泰弘ほか12名
被上告人(被控訴人・被告)株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日 平成8年2月20日
 判決年月日 平成11年10月28日(訴え却下,大阪地方裁判所)
 判決年月日 平成13年1月24日(控訴棄却,大阪高等裁判所)
 上告及び上告受理申立て年月日 平成13年2月6日
(ケ)名古屋高等裁判所平成13年(行コ)第20号
損害賠償請求控訴事件
被控訴人(原告)西谷清一ほか1名
控訴人(被告)株式会社東芝ほか3名
 提訴年月日 平成9年12月26日
 判決年月日 平成13年3月29日(請求一部認容,津地方裁判所)
 判決年月日 平成14年2月8日(訴え却下)
 上告受理申立て年月日 平成14年2月18日
イ 事案の概要
 当委員会は,日本下水道事業団が発注する電気設備工事の入札談合について,平成7年7月12日,株式会社日立製作所ほか8名に対し課徴金納付命令を行った。前記原告住民らは,前記被告らに対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償を求める住民訴訟を前記各裁判所等に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 前記各事件については,平成13年度末現在,各裁判所に係属中である。
 なお,前記各事件について,平成8年度,9年度及び12年度中に,それぞれの受訴裁判所から当委員会に文事送付嘱託があり,当委員会は当該各裁判所に資料を提供した。また,平成10年度,12年度に調査嘱託があった裁判所には回答を行った。
(8) デジタル計装制御システム工事の入札に係る住民訴訟
ア 事件の表示
(ア)最高裁判所平成13年(行ツ)第188号,平成13年(行ヒ〕第181号
損害賠償請求控訴事件
被上告人(被控訴人・原告)川田賢司ほか3名
上告人(控訴人・被告)横河電機株式会社ほか4名
 提訴年月日 平成8年2月21日
 判決年月日 平成11年10月20日(請求一部認容,奈良地方裁判所)
 判決年月日 平成13年3月8日(請求一部認容,大阪高等裁判所)
 上告及び上告受理申立て年月日 平成13年3月24日
(イ)名古屋高等裁判所平成13年(行コ)第38号
損害賠償請求上告事件
被控訴人(原告)北村三郎ほか2名
控訴人(被告)富士電機株式会社ほか3名
提訴年月日 平成8年2月21日
判決年月日 平成13年9月7日(請求一部認容,名古屋地方裁判所)
控訴年月日 平成13年9月11日
(ウ)東京高等裁判所平成14年(行コ)第60号
損害賠償請求控訴事件
控訴人(原告)古宮杜司男ほか5名
被控訴人(被告)横河電機株式会社ほか5名
 提訴年月日 平成8年2月22日
 判決年月日 平成14年1月31日(請求棄却,東京地方裁判所)
 控訴年月日 平成14年2月8日
イ 事案の概要
 当委員会は,デジタル計装制御システム工事の入札談合について,平成7年8月8日,横河電機株式会社ほか3名に対し課徴金納付命令を行った。前記原告住民らは,前記被告らに対して,地方自治法第242条の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償を求める住民訴訟を前記各裁判所等に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 前記各事件については,平成13年度末現在,各裁判所に係属中である。
 なお,前記各事件について,平成8年度又は9年度中に,それぞれの受訴裁判所から当委員会に文書送付嘱託があり,当委員会は当該各裁判所に資料を提供し,また,平成9年度に調査嘱託があった裁判所には回答を行った。
(9)東京都水道局発注の水道メーター入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成9年(行ウ)第142号
 損害賠償請求事件
 原告 小竹紘子ほか23名
 被告 東京都水道局長ほか27名
  提訴年月日 平成9年6月9日
イ 事案の概要
 当委員会は,東京都が発注する水道メーターの入札談合について,平成9年3月19日,株式会社金門製作所ほか24名に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,東京都の住民は,東京都水道局長ほか27名に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,東京都に代位して損害賠償を求める住民訴訟を東京地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成13年度末現在,東京地方裁判所に係属中である。
 なお,同裁判所から,平成10年5月19日,損害額等についての調査嘱託があり,当委員会は,同年10月5日,回答を行った。
(10) 群馬県及び同県沼田市発注の土木一式工事等入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
前橋地方裁判所平成10年(行ウ)第4号
 損害賠償請求事件
 原告 杉山弘一
 被告 群馬県知事ほか6名
  提訴年月日 平成10年4月20日
イ 事案の概要
 当委員会は,群馬県沼田市及び群馬県沼田土木事務所が発注する土木・建築・舗装工事の入札談合について,平成10年1月23日,同県沼田市所在の土木工事業者等に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,群馬県沼田市の住民は,当該土木工事業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,群馬県及び同沼田市に代位して損害賠償を求める住民訴訟を前橋地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成13年度末現在,前橋地方裁判所に係属中である。
 なお,同裁判所から,平成10年7月17日,文書送付嘱託があり,当委月会は,同年12月22日,資料を提供した。
(11) 愛知県発注の土木工事及び名古屋市発注の舗装工事等の入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
(ア)名古尾地方裁判所平成10年(行ウ)第45号
損害賠償請求事件
原告 株式会社マークシステムほか6名
被告 愛知県知事ほか14名
 提訴年月日 平成10年8月26日
 和解年月日 平成13年2月28日
(イ)名古屋地方裁判所平成10年(行ウ)第46号
  損害賠償請求事件
原告 株式会社マークシステムほか3名
被告 名古屋市長ほか16名
提訴年月日 平成10年8月26日
和解年月日 平成13年9月5日
(ウ)名古屋地方裁判所平成10年(行ウ)第53号
損害賠償請求事件
原告 株式会社マークシステムほか3名
被告 名古屋市長ほか10名
 提訴年月日 平成10年10月20日
 和解年月日 平成13年9月5日
イ 事案の概要
 当委員会は,愛知県発注の土木工事及び名古屋市が発注する舗装工事・道路復旧工事に係る入札談合について,平成10年4月23日,愛知県所在の土木工事業者等に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,愛知県及び名古屋市の住民は,当該土木工事業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,愛知県又は名古屋市に代位して損害賠償を求める住民訴訟を名古屋地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 前記アの3事件に関して,名古屋地方裁判所から,平成11年6月16日,文書送付嘱託があり,当委員会は,同年7月13日及び9月17日,資料を提供した。
エ 和解成立
 本件については,名古屋地方裁判所において,平成10年(行ウ)第45号事件は平成13年2月28日,被告14社が,愛知県等に対し,平成10年(行ウ)第46号,同53号事件は平成13年9月5日,被告13社が,名古屋市等に対し,それぞれ本訴請求の損害賠償債務に係る解決金等を支払うことで和解が成立した。
(12) 京都市発注の低食塩次亜塩素酸ソーダの入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
 京都地方裁判所平成11年(行ウ)第20号,平成11年(ワ)第2882号共同訴訟参加事件
違法公金支出金返還請求事件
原告 高橋瞬作ほか1名
被告 ダイソー株式会社ほか14名
提訴年月日 平成11年7月28日
イ 事案の概要
 当委員会は,京都市上下水道事業管理者が発注する低食塩次亜塩素酸ソーダの入札談合について,平成10年1月23日,同供給業者9杜に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,京都市の住民は,当該供給業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,京都市に代位して,違法に支出された公金の返還を求める住民訴訟を京都地方裁判所に提起した。
 なお,平成12年月3月22日,京都市が原告として被告に対し平成11年11月9日に同裁判所に対し提起していた平成11年(ワ)第2882号損害賠償請求事件を本件に共同訴訟参加を申し出て係属中である。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成13年度末現在,京都地方裁判所に係属中である。
 なお,同裁判所から,平成11年10月13日,文書送付嘱託があり,当委員会は,平成12年2月10日,資料を提供した。また,平成13年度に調査嘱託があり回答を行った。
(13) 千葉県等発注の建設コンサルタント業務等の入札談含に係る住民訴訟
ア 事件の表示
千葉地方裁判所平成12年(行ウ)第51号
 損害賠償請求事件
 原告 村越啓雄ほか4名
 被告 アジア航測株式会社ほか8名
  提訴年月日 平成12年8月3日
  判決年月日 平成13年10月30日(訴え却下)
イ 事案の概要
 当委員会は,千葉県等が発注する建設コンサルタント業務等の入札談合について,平成11年9月8日,千葉県及び同県周辺に所在する建設コンサルタント業者等292名に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,千葉市の住民は,当該建設コンサルタント業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,千葉市に代位して損害賠償を求める住民訴訟を千葉地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,千葉地方裁判所において却下の判決を受け,原告が控訴しなかったことにより,判決が確定した。
(14) 北海道上川支庁発注の農業土木工事等の入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
札幌地方裁判所平成12年(行ウ)第29号
 損害賠償請求事件
 原告 橘晃弘ほか1名
 被告 堀達也ほか6名
  提訴年月日 平成12年12月14日
イ 事案の概要
 当委員会は,北海道上川支庁が発注する農業土木工事等に係る入札談合について,平成12年6月16日,旭川市等所在の農業土木工事業者等に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,札楳市内の住民は,当該農業土木工事業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,北海道に代位して損害賠償を求める住民訴訟を札幌地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成13年度末現在,札幌地方裁判所に係属中である。
 なお.同裁判所から,平成13年9月25日,調査嘱託があり,当委員会は,同年11月5日回答を行った。
(15) 地方自治体発注のごみ焼却施設建設の入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
(ア)京都地方裁判所平成12年(行ウ)第3号
公金不正支出差止等請求事件
 原告 川口カほか774名
 被告 京都市長及び川崎重工業株式会社
  提訴年月日 平成12年2月10日
(イ)東京地方裁判所平成12年(行ウ)第185号
損害賠償請求事件
 原告 堀敏明ほか2名
 被告 株式会社タクマほか4名
  提訴年月日 平成12年7月14日
(ウ)東京地方裁判所平成12年(行ウ)第203号
損害賠償請求事件
原告 前田功
被告 多摩ニュータウン環境組合及び日立造船株式会社
 提訴年月日 平成12年8月4日
(エ)鳥取地方裁判所平成12年(行ウ)第2号
損害賠償請求事件
原告 南博ほか2名
被告 米子市長及び日本鋼管株式会社
 提訴年月日 平成12年8月9日
イ 事案の概要
 当委員会は,地方公共団体が発注するごみ焼却施設の建設工事に係る入札談合について,平成11年8月13日,日立造船株式会社ほか4名に対し,勧告を行ったところ,これを応諾しなかったため,同年9月8日,審判手続の開始を請求し,平成13年度末現在係属中である。
 前記原告住民らは,前記被告らに対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償を求める住民訴訟を前記各裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成13年度末現在,各裁判所に係属中である。
 なお,前記各事件について,平成12年度又は13年度中に,それぞれの受訴裁判所に対し,文書送付嘱託及び文書提出命令の申立てがあり,当委員会は,当該各裁判所に資料を提供及び回答を行った。
5 その他の当委員会関係の訴訟
 平成12年度当初において係属中の当委員会が関係する訴訟は,豊田商法の被害者による国家賠償請求事件(いわゆる大阪豊田商事事件)の1件であり,平成13年度末現在,最高裁判所に係属中である。