第1部 総論

第1 概説

1 我が国を取り巻く経済環境と競争政策の積極的展開
 我が国経済は,平成11年初から緩やかな景気回復過程をたどったものの,その足取りは弱く,平成12年末までには後退に転じ,景気回復局面は短期間にとどまった。平成13年度においても,年度を通じて厳しい状況が続いたが,補正予算等の各種の取組や在庫調整の進展,海外経済の回復により,年度末ころには底入れに向けた動きがみられた。しかしながら,企業の設備投資は低調であり,企業部門の雇用調整などにより,雇用・所得環境は引き続き厳しい状況にある。
 このような経済環境の中,消費者・生活者本位の経済・社会システムの構築と経済の活性化を図っていくためには,これまでの経済社会の構造を改革し,市場における公正かつ自由な競争を積極的に促進することが必要となっている。
 こうした状況の中で,平成13年5月に行われた小泉内閣総理大臣の所信表明演説において「市場の番人たる公正取引委員会の体制を強化し,21世紀にふさわしい競争政策を確立」するとうたわれたことを受け,公正取引委員会は,競争政策を強力に実施するプログラムとして,「構造改革の流れに即した法運用」「競争環境の積極的な創造」及び「ルールある競争社会の推進」の3本の柱からなる「21世紀における競争政策のグラン
ド・デザイン−市場の番人としての機能の十全な発揮のために−」を取りまとめ(平成13年6月),当該方針の下で独占禁止法の運用を執り行ってきた。
  
 また,公正取引委員会は,21世紀にふさわしい競争政策の在り方,それを遂行するために必要な体制・機能等について更なる検討を進めるため,平成13年6月,民間有識者により構成する「21世紀にふさわしい競争政策を考える懇談会」を開催した。同懇談会は,5回の会合を開催して検討を進め,同年11月,提言書を取りまとめ公正取引委員会に提出した。

  
 また,政府は,「今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針」(いわゆる骨太の方針。平成13年6月26日閣議決走)において,「公正取引委員会の体制を強化し,その機能を充実させるなど,競争環境の積極的な創造や市場監視の機能・体制を充実させ,競争政策を強力に実施する。」としているほか,「規制改革推進3か年計画」(改定)(平成14年3月29日閣議決定)等の累次の閣議決定においても,規制改革とともに競争政策の積極的展開を図る方針を明らかにしている。
2 平成13年度において講じた施策の概要
 公正取引委員会は,こうした状況を踏まえ,構造改革の流れに即した法運用,競争環境の積極的な創造及びルールある競争社会の推進に努めるとともに,競争政策の国際化ヘの対応に努めてきた。
 平成13年度においては,次のような施策に重点を置いて競争政策の運営に積極的に取り組んだ。
(1) 独占禁止法の改正
 経済活動の基本ルールである独占禁止法は,経済社会構造の変化や世の中のニーズを踏まえたものであることが必要であるところ,平成9年の独占禁止法改正法附則等において一般集中規制について検討・見直しを行うこととされていること及び独占禁止法の各種手続規定等について内外から各種要望がなされていることを踏まえ,公正取引委員会は,一般集中規制及び手続規定等の見直しについて検討を行うため,平成13年2月から「独占禁止法研究会」(座長 宮澤健一 一橋大学名誉教授)を開催してきたところ,同研究会は,同年10月に最終報告書を取りまとめ,公正取引委員会に提出した。公正取引委員会は同報告書における提言,関係各方面からの意見等を踏まえ,独占禁止法改正法案を策定し,同法案は,平成14年3月5日,第154回通常国会に提出され,同年5月22日に可決・成立し,同月29日に公布された(一般集中規制に係る改正規定は公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行。書類の送達規定等の整備及び罰金の引上げに係る改正規定は14年6月29日から施行)。

(2) 構造改革の流れに即した法運用
ア 独占禁止法違反行為の積極的排除
公正取引委員会は,従来から,独占禁止法違反行為に対し厳正かつ積極的に対処してきたところであり,平成13年度においても,入札談合,価格カルテル,流通分野における不公正な取引方法等の独占禁止法違反行為に対し,排除勧告を行うなど積極的に事件処理に取り組んだ。

イ 企業結合規制の的確な運用
 独占禁止法は,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる会社の合併,株式保有等を禁止している。事業活動のグローバル化等の経済環境の急速な変化に伴い,大企葉の合併等大型の企業結合事案が増加している状況において,公正取引委員会は,我が国市場における競争的な市場構造が確保されるよう,企業結合規制の的確な運用を行っている。平成13年度においては,次のような大型の企業結合事案を処理した。

(3) 競争環境の積極的創造に向けた調査・提言
ア 政府規制等に対する取組
(ア)政府規制等と競争政策に関する研究会による検討
 公正取引委員会は,学識経験者等による「政府規制等と競争政策に関する研究会」(座長 岩田規久男 学習院大学教授)を開催して,特定の分野における政府規制について,その実態や競争に与える影響等について調査・研究を行っており,平成13年度は,通信と放送の融合の問題について,公正かつ自由な競争を促進するために必要な施策等について検討を行った。
(イ)電気通信事業分野及び電力事業分野における指針の策定
 高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(いわゆるIT基本法)において,電気通信事業者間の公正な競争の促進に関する規定が設けられるなど,電気通信事業分野における公正かつ自由な競争を促進していくことが,政府全体としての重要な政策課題の一つとなっていることなどを踏まえ,公正取引委員会は,総務省と共同して,同分野における公正かつ自由な競争をより一層促進していく観点から,独占禁止法及び電気通信事業法それぞれに関する基本的考え方及び問題行為等を記した「電気通信事業分野における競争の促進に関する指針」を策定した(平成13年11月)。
 また,電力の部分供給について,平成11年に策定した「適正な電力取引についての指針」では,具体的に想定していないもの等がみられたことから,事件審査の結果を踏まえ,「電力の部分供給等に係る独占禁止法上の考え方」を策定した(平成13年11月)。
(ウ)医療,福祉,労働等の社会的規制分野の調査・検討
 医療,福祉,労働等の社会的規制分野に関しては,新規産業・雇用の創出と,国民生活の質的向上に向けた抜本的なシステム改革を進めるとの観点から,総合規制改革会議において活発な検討がなされるなど,同分野における規制改革が政府の重要政策となっていることなどを踏まえ,同分野の特性や今後の社会経済環境の変化を踏まえつつ,可能な限り新規参入の促進及び公正かつ自由な競争条件の確保を図る観点から,これらの分野の規制・制度について検討を行っている。
 また,介護保険制度が創設され,居宅サービス分野について民間事業者の参入が認められたことを踏まえ,社会的規制分野における事業者間の競争状況の実態把握の一環として,介護保険適用サービス分野のうち居宅サービス分野を中心に調査を行い,競争政策上の考え方を取りまとめて公表した(平成14年3月)。
(エ)基準認証分野の調査・検討
 基準認証の中には公益法人が国から委託等を受けて検査・検定を実施する制度が多数存在するが,規制改革や公益法人改革の流れの中で,公益法人以外のものの参入を認める等の制度の見直しが行われている。そこで,公正取引委員会は,今回,競争政策の観点から公益法人以外のものが当該検査・検定の市場に参入することが可能な制度についての実態調査を行い,その結果を公表した(平成14年3月)。
イ IT分野・知的財産権等に係る取組
 コンピュータ関連産業,通信・放送関連産業等のいわゆるIT関連産業では,通常,ハードやソフトの互換性等が重要であり,基本的な技術的規格は共通化に向かうことが多いことから,公正取引委員会は,「技術標準と競争政策に関する研究会」(座長稗貫俊文 北海道大学教授)を開催し,技術標準に関する競争政策上の問題を整埋し,基本的な考え方についての検討を行い,同研究会の検討結果を取りまとめた報告書を公表した(平成13年7月)。
 また,近年の情報通信技術(IT)の進展に伴い,企業の事業活動における知的財産権の重要性が増しているソフトウェアの取引について,通常の財とは異なる特殊性を持つことから,有識者及び実務家からなる「ソフトウェアと独占禁止法に関する研究会」を開催し,報告書を取りまとめ,公表し,独占禁止法上の考え方を明確化した(平成14年3月)。
ウ 著作物再販制度こ係る取組
 公正取引委員会は,平成13年3月,著作物の再販適用除外制度について,「現段階において独占禁止法の改正に向けた措置を講じて著作物再販制度を廃止することは行わず,当面同制度を存置することが適当であると考える」としたが,同制度が硬直的に運用されているという指摘もあることから,現行制度の下で可能な限り運用の弾力化等の取組が進められることによって,消費者利益の向上が図られるよう,関係業界に対し,非再販商品の発行・流通の拡大,各種割引制度の導入等による価格設定の多様化等の方策を一層推進することを提案し,その実施を要請した。また,これらの方策が実効を挙げているか否かを検証するなど,著作物の流通についての意見交換を行うため,公正取引員会,関係事業者,消費者,学識経験者等を構成員とする著作物再販協議会を設け,第1回会合を開催した(平成13年12月)。
(4) ルールある競争社会の推進に向けた取組
ア  下請法等による中小企業の競争条件の整備
(ア)下請法違反行為の積極的排除
 公正取引委員会は,中小企業の自主的な事業活動が阻害されることのないよう,下請法の厳正かつ迅速な運用により,下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護に努めており,平成13年度においては,次のような事件に対し勧告を行ったほか,必要に応じ警告の措置を採るなど積極的に事件処理に取り組んだ。
 
(イ)フランチャイズ・システムにおける本部と加盟者との取引の適正化
 公正取引委員会は,フランチャイズ・システムを利用した代表的な業態であるコンビニエンスストアの本部と加盟店との間の取引に関する独占禁止法上の問題こついて,実態を把握するため,調査を実施し,その結果を公表した(平成13年10月)。
 また,フランチャイズ・システムにおける本部と加盟者の取引において,どのような行為が独占禁止法上問題となるかについて具体的に明らかにすることにより,本部の独占禁止法違反行為の未然防止とその適切な事業活動の展開に役立てるために,「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(昭和58年9月20日公正取引委員会事務局)を策定・公表しているところであるが,その後のフランチャイズ・システムを活用した事業活動の増大や各市場におけるその比重の高まり等の変化を踏まえ,パブリックコメント手続を経た後,平成14年4月24日に改訂した。
(ウ)繊維製品に係る取引の適正化
 繊維製品に係る取引については,最近の繊維製品の輸入の急増等,繊維産業を取り巻く環境が変化する中で,生産・流通の各分野における取引慣行の問題が指摘され,その改善が強く求められている。
 このような状況を踏まえ,繊維製品に係る取引の適正化に資するため,繊維業界から提出された取引慣行についての具体的事例を参考に,「繊維製品に係る取引における優越的地位の濫用行為に関し下請法又は独占禁止法上問題となる事例」を取りまとめ公表するとともに,関係団体に対してこの内容を傘下の事業者に周知徹底するよう要請した(平成13年9月)。 
 また,同事例について全国各地(10か所)において繊維業界向けに講習会を開催し,周知徹底を図った。
イ 景品表示法による消費者行政の推進
(ア)景品表示法違反行為の積極的排除
 公正取引委員会は,消費者向けの商品・サービスの種類や販売方法が多様化する中で,消費者の適正な商品選択が妨げられることのないよう,景品表示法を厳正に運用することにより,不当な顧客誘引行為の排除に努めており,平成13年度においては,食品表示への不信感が拡大している状況を踏まえつつ,公正な競争を確保する観点から食肉の不当表示に対して,排除命令を行うなどにより厳正・迅速かつ効果的に対処するなど,次のような事件に積極的に取り組んだ。

(イ)消費者取引の適正化
 規制改革が進展する中で,従来にも増して消費者が自己責任原則に基づいて消費行動を採ることが求められており,事業者から消費者に対して商品選択上必要な情報が適切に提供されることが一層重要になってきている。このような状況を踏まえ,公正取引委員会は,広告表示等について実態調査を行うなどして,消費者取引の適正化に取り組んできており,平成13年度においては次のような取組を行った。

 また,消費者が商品及びサービスの適切な選択を行うことが可能な意思決定環境を整備・確保していくことの必要性が一層高まっていることを踏まえ,競争政策の観点から消費者取引問題に積極的に取り組むため,平成13年11月から「消費者取引問題研究会」(座長 落合誠一 東京大学大学院教授)を開催して次の事項等について検討を行っている。

(ウ)公正競争規約の見直し
 事業者又は事業者団体が,公正取引委員会の認定を受けて景品類又は表示に関する事項について自主的に設定する業界のルールである公正競争規約について,公正取引委員会は,平成13年度においては,7件の公正競争規約について変更の認定を行った。
ウ 不当廉売に対する取組
(ア)不当廉売行為の積極的排除
 小売業における不当廉売は,周辺事業者の経営に与える影響が大きいことから,公正取引委員会は,不当廉売に当たる可能性のある事案については迅速に処理する方針の下で,その端緒に接した場合には,必要に応じて現地に赴いて調査の上,注意等の措置を採ることとしている。
 また,大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案で周辺の販売業音に対する影響が大きいと考えられるものについては,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題のみられる事案については厳正に対処している。
 平成13年度においては,官公庁の情報システム調達における極端な安値受注に対して警告を行うなど,次のような事件に対し警告を行った。また,不当廉売につながるおそれがあるとして2,624件(酒類2,494件,石油製品86件,家電製品3件,その他41件)の注意を行うなど積極的に事件処理に取り組んだ。

(イ)不当廉売行為の規制基準の明確化
 小売業における不当廉売規制の考え方については,「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」(昭和59年)を公表しているところであるが,規制改革が進展している中で,独占禁止法違反行為の未然防止を図る観点から,「酒類の不当廉売に関する考え方の明確化について」(平成13年4月)及び「ガソリン等の流通における不当廉売,差別対価等への対応について」(平成13年12月)を公表した。
(5) 経済のグローバル化への対応
経済のグローバル化の進展に伴い,競争当局間の国際的協力や競争政策の国際化への対応を図ることが一層重要となってきている。このため,公正取引委員会は,二国間及び多国間の競争政策に関する協力,調整等が円滑に進められるよう,海外の競争当局との意見交換の開催,国際会議への参加等を通じて,競争当局間の協力関係の一層の充実を図り,また,開発途上国・市場経済移行国を対象とした競争法・競争政策に関する技術協力を実施した。
 また,近年,企業活動の国際化の進展に伴い,複数国の競争法に抵触する事案,一国による競争法の執行活動が他国の利益に影響を及ぼし得る事案等が増加するなど,競争当局間の協力関係の強化が求められている。このような状況を踏まえ,我が国は,日EC独占禁止協力協定の締結に向けて作業を進めるとともに,平成14年1月,初めての自由貿易協定である「日・シンガポール新時代経済連携協定」を締結したところ,同協定においては,競争政策分野として,貿易・投資の円滑化に寄与するため,両国が反競争的行為に対応するとともに,両国間の協力を推進していく旨が盛り込まれた。

第2 業務の大要

 業務別にみた平成13年度の業務の大要は,次のとおりである。
1 独占禁止法の改正
 会社の株式保有の制限に関する規定の改正,書類の送達規定等についての規定整備,法人等に対する罰金の上限の引上げを内容とする「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」が第154回国会に提出され,同法案は,同年5月22日に可決・成立し,同月29日に公布された。
2 独占禁止法と他の経済法令等の調整
 薬事法の一部を改正する法律案等の経済法令等について,関係行政機関が立案するに当たり,所要の調整を行った。
3 独占禁止法違反被疑事件の審査及び処理
 独占禁止法違反被疑事件として平成13年度に審査を行った事件は124件であり,そのうち同年度内に審査を完了したものは87件であった。また,平成13年度中に38件の法的措置(独占禁止法第48条に基づく勧告等)を延べ928事業者に対して採った(第1図)。法的措置の内訳は,37件が独占禁止法第48条の規定に基づく勧告であり,違反行為がなくなった日から1年を経過したため勧告を行わず課徴金納付命令を行ったものが1件となっている。
 なお,これらのうち3件について審判開始決定がなされ,審判手続に移行した。
 平成13年度の法的措置件数38件を行為類型別にみると価格カルテル3件,入札談合33件,不公正な取引方法2件となっている(第2図)。 
 平成13年度の法的措置以外の事件として,後記の不当廉売についての事件を除き,警告10件,注意26件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切った事件8件となっており,法的措置を採ったものと合わせてこれらを類型別にみると,私的独占2件,価格カルテル11件,入札談合37件,その他のカルテル2件,不公正な取引方法21件,その他の行為9件となっている。
 不当廉売事件については,規制改革後の公正競争を確保するため,5件の警告を行うとともに,違反につながるおそれのある行為に対し2,624件の注意を行うなど,適切な法運用に努めた。
 また,平成13年度の課徴金については,価格カルテル及び入札談合事案について,総計248件,総額21億9905万円の納付を命じた(第3図)。 
 なお,このほか,37件の課徴金納付命令(課徴金額7億1068万円)については,審判開始決定がなされ,審判手続に移行した。

第1図 法的措置件数と対象事業者等の推移


第2図 行為類型別の法的措置件数


第3図 課徴金額等の推移


 平成13年度における審判事件数は,前年度から引き継いだもの22件を含め,独占禁止法違反に係るものが10件,課徴金納付命令に係るものが55件,景品表示法違反に係るものが1件の計66件であった(第4図)。これらのうち,平成13年度中に,5件について審決を行った。この内訳は,審判審決4件,課徴金納付を命ずる審決1件である。

第4図 審判事件数の推移とその内訳



4 規制改革・競争政策に関する調査・提言等
 「規制改革推進3か年計画(改定)」(平成14年3月29日閣議決定)を踏まえ,独占禁止法違反行為に対し,引き続き,厳正かつ積極的に対処するとともに,規制改革をめぐる調査・提言,消費者政策の推進等を積極的に進めることにより,我が国市場における公正かつ自由な競争を確保・促進するよう取り組んでいくこととする具体的方針を公表した(平成14年3月)。
 また,前記のとおり,「政府規制等と競争政策に関する研究会」を開催し,通信と放送の融合問題について検討を行い,同研究会が取りまとめた報告書を公表した(平成13年12月)。
5 事業者及び事業者団体の活動に関する相談事例の公表
 事業者及び事業者団体の活動に関する相談に積極的に応じるとともに,実際に相談のあった事例のうち,他の事業者又は事業者団体の活動の参考となると思われるものの概要を主要相談事例集として取りまとめ,公表した(平成14年3月)。
6 価格の同調的引上げに関する報告の徴収
 独占禁止法第18条の2の規定に基づく価格の同調的引上げに関する報告徴収については,平成13年度において該当するものはなかった。
7 経済及び事業活動の実態調査
 競争政策の運営に資するため,平成13年度には次の調査等を行った。
●企業集団の実態について〜第七次調査〜
●大規模事業会社とグループ経営に関する実態調査
●業務提携と企業間競争に関する実態調査
●金融機関と企業との取引慣行に関する調査
●国内航空旅客運送事業分野における競争状況等に関する調査
●コンビニエンスストアにおける本部と加盟店との取引に関する実態調査
●介護保険適用サービス分野における競争状況に関する調査
●基準認証分野における公益法人改革と競争政策に関する調査

第5図 総資産100億円以上の合併届出、分割届出及び営業譲受け等届出受理件数


(注)分割届出(共同新設分割及び吸収分割)の制度については,平成12年5月の法改正により新設され,平成13年度から施行された。

8 持株会社・株式保有・役員兼任・合併・分割・営業譲受け等
 独占禁止法第9条から第16条の規定に基づく企業結合に関する業務については,金融会社の株式保有について351件の認可を行い,持株会社及びその子会社の事業について7件の報告,持株会杜の設立について7件の届出,事業会社の株式所有状況について898件の報告,会社の合併・分割・営業譲受け等について342件の届出をそれぞれ受理し,必要な審査を行った。大型事案についてみると,総資産100億円以上の合併届出は92件,分割届出は15件,営業譲受け等届出は125件であった(第5図)。
9 事業者団体
 独占禁止法第8条の規定に基づく事業者団体の届出件数は,成立届151件,変更届1,495件,解散届97件であった。
10 下請法に関する業務
 下請法に関する業務としては,下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護を図るため,親事業者18,090社及びこれらと取引している下請事業者94,486社を対象に書面調査を行った。
 書面調査等の結果,下請法違反行為が認められた1,314件につき,3件については勧告,それ以外については警告の措置を採った(第1表)。
11 景品表示法に関する業務
 景品表示法に関する業務としては,同法第6条の規定に基づき排除命令を行ったものは不当表示関係10件であり,警告を行ったものは,不当景品関係122件及び不当表示関係257件の計379件,注意を行ったものは,不当景品関係9件,不当表示関係74件であった(第2表)。
 都道府県における景品表示法関係業務の処理状況は,同法第9条の2の規定に基づく指示を行ったものが2件(不当表示関係2件),注意を行ったものが464件(不当景品関係109件,不当表示関係355件)であった。
第1表 下請法の事件処理状況
(単位:件)

(注)1つの事件で2以上の違反行為を行っているものがあるため,態様別件数の合計と勧告件数・警告件数の合計は一致しない。 

第2表 景品表示法の事件処理状況
(単位:件)

(注)「警告」とは,違反行為又は違反するおそれのある行為について,関係事業者に是正措置を採るよう指導するもの。

12 国際関係業務
 国際関係の業務については,各国共通の競争政策上の課題について,フランス,イタリア,ロシア,ドイツ,米国及びイギリスの競争当局と間で,それぞれ二国間の意見交換を行ったほか,OECD(経済協力開発機構),WTO(世界貿易機関),APEC(アジア太平洋経済協力),UNCTAD(国際連合貿易開発会議)等の国際機関における会議に積極的に参加した。
13 広報及び相談に関する業務等
 広報・相談業務については,各種ガイドブックや英文パンフレットの作成・配布,日本語・英語ホ−ムページの充実等のほか,小中学生を対象としたビデオとパンフレットを作成し,希望する小中学校へ配布するなど積極的な広報を行った。
 また,競争政策について一層の理解を求めるなどの目的で,全国9都市で講演会を開催するとともに,各地の有識者との意見交換を行った。
 さらに,独占禁止政策協力委員制度について,平成13年度は各地域の有識者150名に委員を委嘱し,全国9都市で会議を行った。