国際的に開かれた,自由で公正な活力ある経済社会を形成していくためには,規制改革の推進とともに競争政策の積極的展開を図り,そのための基盤的な条件を整備するための取組が重要である。
このため,公正取引委員会は,次のとおり,独占禁止法の見直しに向けた取組,規制改革に係る調査・提言,競争制限的な行政指導の改善,民民規制への対応,独占禁止法上の各種指針の策定・公表等を行っている。
持株会社の公正取引委員会への届出,報告基準を引き上げる。
金融会社による他の国内の会社の株式保有について規制している独占禁止法第11条について,証券会社,無尽会社,信託会社をその規制対象から外すとともに,適用除外株式を拡大し,また,保険業法等との整合性を確保するなど,その在り方の見直しを検討し,規制対象範囲の縮減を図る。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「エ 企業の経済活動を活性化する等のためのその他の措置」の「(1)一般集中規制(持株会社規制,大規模会社の株式保有総額制限,金融会社の株式保有規制)の見直し及びフォローアップ」)
不当な取引制限の罪等の法人等に対する罰金刑の上限を引き上げるとともに,独占禁止法第6条,第8条第1項第2号及び同項第3号違反行為について,違反行為が既になくなっている場合にも,法的措置を講ずることが出来るようにする。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ア 独占禁止法のエンフォースメント(ルールの実効性を確保するための手段)の見直し・強化」の「(9)法人等に対する罰則の強化等」)
公正取引委員会の情報収集活動等に関して,刑事告発を目的とする行政調査手続としての犯則調査手続の導入を検討する。
また,現行法上,検事総長への告発,不起訴の場合の内閣総理大臣への報告など,他法令に例がない厳格な告発手続が規定されているが,その妥当性について,見直しを検討する。 (「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ア 独占禁止法のエンフォースメント(ルールの実効性を確保するための手段)の見直し・強化」の「(1)刑事告発手続の見直し」) 独占禁止法違反行為に対する抑止力強化の観点から,現行課徴金制度を見直す。具体的には,独占禁止法違反行為を繰り返し行う事業者が跡を絶たないなどカルテル・談合体質が根強く残っている現状,並びに他の主要国における制裁金等の水準やその効果を踏まえ,課徴金制度の制定経緯等も考慮しつつ,現行課徴金制度の性格付けの見直しを含め,十分に抑止力のある効果的な制度を検討する。
なお,こうした制度の見直しに当たっては,適正手続の確保や不服申立ての手段等について,併せて検討を行う。 (「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ア 独占禁止法のエンフォースメント(ルールの実効性を確保するための手段)の見直し・強化」の「(2)課徴金制度の見直し」) 課徴金制度の見直しと併せて,摘発率の向上と法執行の効率性を両立させる観点から,自ら独占禁止法違反に関与していることを公正取引委員会に申告し,その後の調査・審査等に全面的に協力した者に対しては,上記課徴金の免除,減免等を行うプログラムの導入を図る。
ただし,導入に当たっては,透明性及び予測可能性を確保する観点から,課徴金減免のための要件とその効果を,告示やガイドラインの形で明確に定めて公表することとするなど,当局が過度の裁量権を有しないような工夫をする。 (「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ア 独占禁止法のエンフォースメント(ルールの実効性を確保するための手段)の見直し・強化」の「(3)課徴金減免プログラムの導入」) 独占禁止法違反行為に対する抑止力を一層強化する観点から,課徴金の適用対象について,私的独占等の悪質な独占禁止法違反行為一般までの拡大を図る。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ア 独占禁止法のエンフォースメント(ルールの実効性を確保するための手段)の見直し・強化」の「(4)課徴金適用対象の拡大」) エンフォースメントの強化を行うに当たって,更なる独立性や適正手続の確保等の観点から,審判制度の在り方を見直すことを検討する。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ア 独占禁止法のエンフォースメント(ルールの実効性を確保するための手段)の見直し・強化」の「(5)審判制度の見直し」) 現行の排除措置について,国際カルテル等に対しても十分対応できるよう,措置期限の延長を検討する。また,現行3年とされている課徴金納付命令の措置期限についても,延長を検討する。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ア 独占禁止法のエンフォースメント(ルールの実効性を確保するための手段)の見直し・強化」の「(6)既往の違反行為に対する措置期限についての見直し」)
独占禁止法の差止請求制度については,制度の実施状況を注視しつつ,事例の蓄積を待って必要性が認められる場合には,私人による差止請求対象行為の範囲の見直し等,民事的救済制度を更に充実した制度とするための検討に着手する。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ア 独占禁止法のエンフォースメント(ルールの実効性を確保するための手段)の見直し・強化」の「(7)独占禁止法における民事責任制度及び差止制度の見直し」)
電気事業者,ガス事業者,電気通信事業者による業種を超えた参入が活発化すると考えられるが,事業所管省庁は,他分野における市場支配力等を背景とした反競争的行為が行われることがないよう,参入等に当たって適切な担保措置を講ずる。また,問題となる行為が見られた場合には,事業所管省庁及び公正取引委員会は,積極的にこれを是正・排除する。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ウ 専門分野に関するエンフォースメントの強化」の「(2)各事業分野におけるエンフォースメントの強化」の「e 業種を超えた参入の促進」) 電気通信,エネルギー等の公益事業分野の競争促進の観点からは,公正取引委員会と各事業所管官庁の両者が協働して更なる連携の具体的方策を構築し,これによってエンフォースメントの一層の強化を図る。すなわち,両者のエンフォースメントが重複し,市場に混乱が生じることがないようにするため,それぞれの具体的適用関係を明らかにし,適宜機動的に見直しを図るとともに,必要な場合には相互の連絡や情報提供がより円滑に行えるようにする等,所要の措置を講ずる。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ウ 専門分野に関するエンフォースメントの強化」の「(2)各事業分野におけるエンフォースメントの強化」の「f公正取引委員会と各事業所管官庁との連携の推進」) 電気事業,ガス事業,電気通信事業,運輸事業などのうち,従来,新規事業者の参入が制限されていた規制産業における競争的仕組みの導入等に当たって,公正取引委員会は,所掌事務を遂行する上で政策提言等を行う必要があれば,今後も競争促進の観点からこれらの産業における競争の状況を調査し,改善の余地がある場合には積極的に政策提言等を行う。
また,上記の規制産業については,競争を促進する観点から,事業所管省庁と公正取引委員会が,ガイドラインの策定を含めて,競争にかかわる制度の新設,見直しについて必要な連携を行う仕組みについて検討を行う。 (「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ウ 専門分野に関するエンフォースメントの強化」の「(3)規制産業における競争の促進」) 電気通信事業分野における公正な競争を促進する観点から,独占禁止法上又は電気通信事業法上問題となる行為や,競争を一層促進する観点から事業者が採ることが望ましい行為の具体的事例を示した独占禁止法上及び電気通信事業法上の指針を平成13年中に取りまとめ,公表する。
また,上記指針について,平成14年中に見直しを行うとともに,その後も必要に応じて逐次見直しを行う。 (「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「ウ 専門分野に関するエンフォースメントの強化」の「(4)電気通信事業分野における独占禁止法上及び電気通信事業法上の考え方の明確化」) 国内航空事業分野では,新規参入者の開設した路線に係るその割安な料金を標的にして,競合する路線・時間帯の特定便に係る料金値下げが既存航空事業者によって行われ,公正な競争が阻害されているのではないかとの指摘があるが,独占禁止法(昭和22年法律第54号)違反行為への厳正な対応等,適切な対応を図る。
(「IV 分野的措置事項」の「11 運輸関係」の「(3) 個別事項」の「オ その他」の「28国内航空事業における新規参入に係る対応」)
ソフトウェアライセンス契約等について,競争政策の観点から実態を把握し,平成13年度末を目途に独占禁止法上の考え方の明確化を図る。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「エ 企業の経済活動を活性化する等のためのその他の措置」の「(7)ソフトウェアライセンス契約等に関する独占禁止法上の考え方の明確化」)
規制緩和後において,規制に代わって競争制限的な行政指導が行われることのないよう,「行政指導に関する独占禁止法上の考え方」の趣旨を踏まえ,関係省庁は,公正取引委員会と事前に所要の調整を図る。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(2) 執行・事務処理に係る方策」)
いわゆる民民規制の問題については,公正取引委員会は,独占禁止法違反行為に対し同法に基づき厳正に対処するほか,その実態を調査し,競争制限的な民間慣行についてその是正を図るとともに,その背後に競争制限的な行政指導が存在する場合には,公正取引委員会及び関係省庁がその早急な見直しに取り組む。行政が何ら関与していない場合には,関係省庁は,関与していない旨を改めて周知するなど,責任の所在の明確化に努める。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(2) 執行・事務処理に係る方策」)
公正取引委員会は,事業者又は事業者団体による新規参入の阻止や差別的取扱い等の独占禁止法違反行為について,従前から厳正に対処するとともに,その背後に競争制限的な行政指導が存在する場合には,必要に応じて関係行政機関に改善を要請。また,実態調査を実施し,競争政策上問題のあるものについて所要の改善を指導
リサイクルのための共同事業について,具体的にどのような共同の取組が独占禁止法において問題になるかに関して明確なガイドラインを作成する。
(「III 横断的措置事項」の「3 環境関係」の「(3) 個別事項」の「イ リサイクル・廃棄物」の「(10)リサイクルのための共同事業の推進と競争政策の在り方」)
独占禁止法遵守プログラムの作成やその整備に向けた自主的な取組を進める事業者等から要請があった場合には,これを支援
競争政策への理解の促進と経済実態に即した政策運営に資するため,独占禁止政策協力委員制度を活用し,全国各地域の経済実態等に通じた有識者から,独占禁止法や公正取引委員会に対する意見・要望の聴取等を行い,その意見・要望等を踏まえ,経済実態に即した競争政策の運営を図る。平成14年度においては,協力委員との会議を13回開催した。
近年,国際カルテルや国際的な企業結合事案など,複数国の競争法に関係するケースが発生しており,各国の競争当局の連携・協力が模索されている。また,貿易自由化や経済連携強化に向けた取組が進展する中で,貿易・投資に悪影響を及ぼす反競争的行為への対応の必要性が高まっている。
このような状況を踏まえ,公正取引委員会は,独占禁止協力協定の締結,地域経済連携の枠組みにおける競争政策分野での協力等を通じて世界各国・地域の競争当局との関係の強化に努めている。
貿易・投資の自由化は,市場の活性化を図る上で重要な要素であり,その便益を減退させる反競争的行為を厳正に取り締まる必要がある。このため,公正取引委員会は,経済連携協定において競争条項を重要な要素の一つと位置付けるべく,積極的にその作業に参画している。
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