ルールある競争社会の推進
 規制改革後の市場の公正な競争秩序を確保するため,中小事業者等に対する不当な不利益を与える不当廉売,優越的地位の濫用等の不公正な取引方法に対し,厳正かつ積極的に対処する。取り分け不当廉売事案については,関係省庁から人員の派遣を受けるなどして,(1)申告のあった事案に対しては,可能な限り迅速に処理することとし,(2)大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案で,周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについては,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題のみられる事案については厳正に対処するとともに,(3)必要に応じ,その後の価格動向のフォローアップを行う。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(2) 執行・事務処理に係る方策」)
(1)  中小企業者に不当に不利益を及ぼす不公正取引への厳正・迅速な対応
 不当廉売
 小売業における不当廉売は,周辺の中小事業者に対する影響が大きいことから,不当廉売に当たる可能性のある事案については迅速に処理する方針の下で,その端緒に接した場合には,必要に応じて現地に赴いて調査の上,注意等の措置を採ることとしている。また,大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案で,周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについては,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題のみられる事案については厳正に対処している。
 「酒類の流通における不当廉売,差別対価等への対応について」(酒類ガイドライン)を公表(平成12年11月)するとともに,メーカー等に対してリベート等の供与基準の明確化への取組を要請
 「官公庁等の情報システム調達における安値受注について」の公表(平成13年1月)
 「酒類の不当廉売に関する考え方の明確化について」の公表(平成13年4月)
 「ガソリン等の流通における不当廉売,差別対価等への対応について」(ガソリン等ガイドライン)の公表(平成13年12月)
 大手総合電機メーカーによる情報システム等の安値受注に対する警告(平成14年2月及び同年4月)
 青森県に所在する石油小売業者によるガソリンの不当廉売に対する警告(平成14年3月)
 秋田市に所在する酒類小売業者4名によるビール等の不当廉売に対する警告(平成15年3月)

最近における処理状況
 優越的地位の濫用
(ア)  役務の委託取引の公正化
 経済のソフト化・サービス化という環境変化を踏まえ,役務の委託取引についても取引の公正化のための有効な枠組みを確立するため,下請代金支払遅延等防止法(下請法)(昭和31年法律第120号)の対象を一定の役務の委託取引に拡大するとともに,同法の執行体制の整備・拡充について,関係省庁の協力体制の整備を含め検討する。
 取引の適正化を図るため,コンテンツ制作を含む役務の委託取引に本法の対象を拡大し,新たに法の対象となる取引に対する執行体制の整備・拡充を図る。
 役務の委託取引について,下請法で規制することができない取引や行為について,独占禁止法により厳正に対処するため,役務取引に関する独占禁止法ガイドラインの改定等の検討を行う。
 複雑・多様なコンテンツ取引の実態を十分踏まえつつ,コンテンツの取引についての独禁法上の考え方をより明確化するとともに,必要に応じ「役務の委託取引における優越的地位の濫用に関する独占禁止法上の指針」の改定を行うなど,市場参加者にとって,より自由かつ公正な取引を行うための環境整備を行う。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「エ 企業の経済活動を活性化する等のためのその他の措置」の「(5)下請法の改正等」)
 一定の役務の委託取引を下請法の対象とすべき等の提言を内容とする「企業取引研究会」の報告書公表(平成14年11月)
 プログラム作成等の役務に係る下請取引等に適用対象を拡大すること等を内容とする下請法改正法案を第156回国会に提出(平成15年3月)
 「デジタルコンテンツと競争政策に関する研究会」の開催(平成14年6月〜)〔再掲〕
 日本放送協会(NHK)の番組制作委託取引についての相談事例の公表(平成15年1月)〔再掲〕
(イ)  フランチャイズ・ガイドラインの見直し
 「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」を,公正な情報開示・取引が一層促進されるよう,現在のフランチャイズ・システムにおける新たな問題の発生も踏まえて,見直す。
(「III 横断的措置事項」の「4 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「エ 企業の経済活動を活性化する等のためのその他の措置」の「(10)フランチャイズ・ガイドラインの見直し」)
 コンビニエンスストアにおける本部と加盟店との取引に関する調査(平成13年10月)
 「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(フランチャイズ・ガイドライン)の改定(平成14年4月)
(ウ)  独占禁止法違反事件への対処
 ホームセンター事業者による納入業者に対する優越的地位の濫用の疑い(平成14年4月警告)
 沖縄県所在のホテル業者による納入業者に対する優越的地位の濫用の疑い(平成14年6月警告)
 四国地区所在のスーパーによる納入業者に対する優越的地位の濫用の疑い(平成14年9月警告)
(エ)  実態調査等の実施
 貨物自動車運送業及びソフトウエア開発業における委託取引に関する実態調査(平成12年12月)
 金融機関と企業との取引慣行に関する実態調査(平成13年7月)
 「繊維製品に係る取引における優越的地位の濫用行為に関し下請法又は独占禁止法上問題となる事例」を公表(平成13年9月)
 大規模小売業者と納入業者との取引に関する調査(平成14年12月)
(オ)  下請法の的確な運用
 情報通信技術を利用した発注内容の提供及び下請取引の記録の保存について下請法の規定を整備(書面の交付等に関する情報通信の技術の利用のための関係法律の整備に関する法律による改正。平成13年4月1日施行)
 下請法の遵守を要請する通達の発出(平成14年11月,約9,000事業者,約400団体あて送付)
 下請事業者等の苦情・相談の特別窓口の設置
最近における下請法の運用状況

(注)  1つの事件で2以上の違反行為を行っているものがあるため,態様別件数の合計と勧告件数・警告件数の合計は一致しない。

(2)  消費者に対する適正な情報の推進
 景品表示法の見直し
 消費者取引問題研究会報告書(平成14年11月公表)における提言等を踏まえ,合理的な根拠なく著しい優良性を示す不当表示の効果的な規制,都道府県知事の執行力の強化,手続規定の整備を内容とする景品表示法改正法案を第156回国会に提出(平成15年2月)
 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)(昭和37年法律第134号)の表示ルールについて執行力・抑止力の強化を行うほか、特に、裏付けとなる合理的な根拠をあらかじめ有さないにもかかわらず商品又はサービスの効果、効能、性質を表示することを有効に規制することができるように、同法の規制対象となる表示類型について見直しを行う。
(「III 横断的措置事項」の「3 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「エ 企業の経済活動を活性化する等のためのその他の措置」の「(3)景品表示法の改正」)

 不当表示への対処

事件の処理状況
 茶筌の原産国の不当表示に関し排除命令(平成14年4月)
 衣料品の不当な二重価格表示に関し排除命令(平成14年6月)
 「視力回復」を標ぼうする商品の効能効果の不当表示に関し警告(平成14年6月)
 ダイエット食品の品質等の不当表示に関し排除命令(平成14年9月)
 和服の取引条件の不当表示に関し排除命令(平成14年10月)
 眼鏡用レンズの品質の不当表示に関し排除命令(平成15年3月)

 電子商取引への対応
(ア)  対消費者(BtoC)電子商取引に係る独占禁止法上の考え方の明確化
 対消費者電子商取引に関して,消費者保護の観点から電子商取引上の表示に対する景品表示法上の対応や消費者に分かりやすい表示の在り方について,「消費者向け電子商取引への公正取引委員会の対応について―広告表示問題を中心に―」を平成13年1月に公表したところであるが,平成13年中に電子商取引の実態を適宜把握し,必要に応じて見直しを行う。
(III 横断的措置事項」の「3 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「エ 企業の経済活動を活性化する等のためのその他の措置」の「(4)対消費者電子商取引に係る独占禁止法上の考え方の明確化」)
 「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」の公表(平成14年6月)
 インターネット上の次のような表示についての,景品表示法上の問題点,問題事例,留意事項を提示
 インターネットを利用して行われる商品・サービスの取引(特に,(1)商品・サービスの内容・取引条件,(2)表示方法について)
 画像・音楽・ソフトウェア等のインターネット情報提供サービスの取引における表示
 BtoC取引を行う上で前提となるインターネット接続サービスの取引における表示
(イ)  インターネット上の表示に対する監視の強化
 インターネット・サーフ・デイの実施
 環境保全効果を強調する商品及び浄水器の表示に関するインターネット・サーフ・デイの実施(平成12年11月)
 ダイエットを標榜する健康食品の表示に関するインターネット・サーフ・デイ(平成12年12月実施)のフォローアップ(平成13年11月)
 健康に関する商品についてインターナショナル・インターネット・サーフ・デイを実施(経済産業省,国土交通省と共同。平成14年2月)
 電子商取引監視調査システムの運用
 一般消費者等に電子商取引調査員としてインターネット上の広告表示の調査を委託し,電子商取引監視調査システムを通じた常時監視を開始(平成14年8月)
 平成14年8月から12月までに電子商取引調査員から報告のあった508サイトのうち,108サイトの管理者に対し,景品表示法の遵守について啓発するメールを送信(平成15年1月)
 ゴキブリ及びネズミの駆除を標ぼうする商品の性能・効果の不当表示に関し排除命令(平成14年7月)
(ウ)  電子商取引等の普及に対応した景品類規制についての運用基準の明確化
 電子商取引など新しい形態の商取引の普及に対応するために,現行の景品類に関する規制について早急に検討を行い,ホームページ上で景品類を提供する際の景品規制に関する運用基準など,電子商取引における景品類の規制についての運用基準を明確化する。
(「III 横断的措置事項」の「3 競争政策等関係」の「(4) 個別事項」の「エ 企業の経済活動を活性化する等のためのその他の措置」の「(2)景品類に関する規制の見直し」)
 インターネット・ホームページ上で行われる景品提供企画について,景品表示法による規制の対象となるかどうかを明確化し,公表(「インターネット上で行われる懸賞企画の取扱いについて」平成13年4月)

 食品に関する表示の適正化に向けた取組
 食肉及び食肉加工食品の内容の不当表示に関し排除命令(平成14年に12件)
 うなぎ蒲焼の内容の不当表示に関し排除命令(平成14年12月)
 消費者が安心できる適正な表示確保への取組
 「食肉の表示に関する公正競争規約」について,食肉業界全体の表示の適正化を推進する観点から,食肉卸売業者等食肉を販売するすべての者の参加を可能とする一部変更を認定(平成14年10月)
 公正競争規約の遵守徹底の要望
 関連事業者団体に対し,会員事業者における適正な表示の徹底を要望
 公正取引委員会と各都道府県の景品表示法担当部署との連絡体制の強化

 不当表示の未然防止及び考え方の明確化
 環境保全に配慮した商品の表示に関する実態調査(平成13年3月)
 飲用海洋深層水の表示上の問題点と留意事項の公表(平成13年12月)
 「不当な価格表示についての景品表示法上の考え方」の一部改定(平成14年12月)

(3)  中小事業者等の相談・指導体制の拡充
 商工会議所及び商工会との連携による「独占禁止法相談ネットワーク」の活用