独占禁止法は,不公正な取引方法の規制として第19条において事業者が不公正な取引方法を用いることを禁止しているほか,事業者及び事業者団体が不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的契約を締結すること,事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること,会社及び会社以外の者が不公正な取引方法により株式を取得し又は所有すること,会社が不公正な取引方法により役員の兼任を強制すること,会社が不公正な取引方法により合併すること等の行為を禁止している(第6条,第8条第1項,第10条第1項,第13条第2項,第14条,第15条第1項及び第16条第1項)。
不公正な取引方法として規制される行為の具体的内容は,公正取引委員会が法律の枠内で告示により指定することとされている(第2条第9項,第72条)。 不公正な収引方法に関しては,上記規定に違反する事件の処理のほか,不公正な取引方法の指定に関する調査,不公正な取引方法の防止のための指導業務等がある。また,不公正な取引方法に関する事業者からの相談に積極的に応じることにより違反行為の未然防止に努めている。 |
「規制改革推進3か年計画(再改定)」(平成15年3月28日閣議決定)においては,規制改革とともに競争政策の積極的展開を図るための措置が盛り込まれている。
公正取引委員会は,この閣議決定等を踏まえて,独占禁止法違反行為に対する厳正な対処,規制改革の推進についての競争政策の観点からの調査・提言等を行っているところである。また,規制改革後の市場における公正な競争・秩序の確保が重要となっており,中小事業者等に不当な不利益を与える不当廉売,優越的地位の濫用等の不公正な取引方法や,消費者の適正な選択を妨げる不当表示等に対し,厳正かつ積極的に対処することとしている。 このうち,不当廉売及び優越的地位の濫用に関する取組は次のとおりである。 1 不当廉売に対する取組
企業の効率性によって達成した低価格で商品を提供するのではなく,採算を度外視した低価格によって顧客を獲得することは,正常な競争手段とはいえず,これにより他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある不当廉売は,不公正な取引方法の一つとして禁止されている。
不当廉売事案については,(1)申告のあった事案に対しては,可能な限り迅速に処理することとし(原則2か月以内),(2)大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案で,周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについては,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題のみられる事案については厳正に対処することとしている。
小売業における不当廉売規制の考え方については,昭和59年に「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」を公表しているところであるが,規制改革が進展している中で,独占禁止法違反行為の未然防止を図る観点から,酒類の取引実態を踏まえた不当廉売等の規制についての考え方を平成12年11月及び平成13年4月に,ガソリンの取引実態を踏まえた不当廉売等の規制についての考え方を平成13年12月に公表した。
平成14年度において,酒類販売業者4名に対し,その販売に要する費用を著しく下回る価格で継続して販売し,又は不当に低い価格で販売し,周辺地域に所在する他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせた疑いがある行為が認められたことから,それぞれ警告を行った。
平成14年度において,不当廉売につながるおそれがあるとして注意を行った件数は,第1表のとおりである。
主要な事例としては,酒類のディスカウンターによるビールの販売,給油所によるガソリン等の販売に関するものがある。
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「電子政府」構築に向けた情報システムの調達に際して実施された官公庁の入札における,極端な安値による応札行為について,平成14年度において,1件の警告を行った。
2 優越的地位の濫用に対する取組
自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為(優越的地位の濫用)は,自己と競争者間及び相手方とその競争者間の公正な競争を阻害するおそれのあるものであり,不公正な取引方法の一つとして禁止されている。
大規模小売業者による優越的地位の濫用行為については,その性格上,取引先納入業者からの情報提供が期待しにくいことを踏まえ,従来から,納入業者からの申告を待たずに,積極的に実態調査を実施してきたところであり,最近では,「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月)に示された違反行為等の有無について,アンケート調査(食料品等の納入業者合計約6,500社〉及びヒアリング調査(アンケート回答納入業者約100社)を実施し,平成14年12月に調査結果を取りまとめて公表した。
フランチャイズ・システムにおける本部と加盟者との取引において,どのような行為が独占禁止法上問題となるかについて具体的に明らかにするため,昭和58年に,「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(以下「フランチャイズ・ガイドライン」という。)を策定しているところであるが,その後のフランチャイズ・システムを活用した事業活動の増大や各市場におけるその比重の高まり等の変化を踏まえてフランチャイズ・ガイドラインを見直すこととし,平成14年2月に改訂原案を公表し,関係各方面から広く意見を求め,寄せられた意見を踏まえ,同年4月に改訂フランチャイズ・ガイドラインを策定・公表した。
改訂のポイント
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