2 8条1項4号事件
 全国病院用食材卸売業協同組合に対する件(平成15年(勧)第14号)

ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  全国病院用食材卸売業協同組合(以下「全病食協」という。)は,中小企業等協同組合法(昭和24年法律第181号)に基づいて設立された事業協同組合である。全病食協は,定款において,組合員の資格を有する者は理事会の決定により加入することができる旨を規定しているところ,加入希望があった場合でも,加入希望者と既存の組合員との競合を回避するため,加入希望者が治療用食品(主として腎臓病,糖尿病,えん下障害等の疾病に係る食事療法のために用いられることを目的とする食品をいう。以下同じ。)を販売する地域が含まれる地区のブロック会の了承を得ることを加入の条件としており,当該ブロック会の了承を得ることができなかった者については組合員の資格を満たすものであっても加入を認めていない。
(イ)
 全病食協の組合員の大部分は,昭和55年5月18日ころに設立され,全病食協の設立ともに解散した日本ダイエットサービス協会と称する任意団体(以下「旧協会」という。)の会員であったものであり,旧協会は,かねてから,会員間の競合を回避するため,都道府県を単位として会員の販売地域を定め(以下販売地域として定められた都道府県の区域を「商圏」という。),会員がそれぞれ有する商圏の数に応じた会費を会員から徴収していたところ,平成5年8月24日ころ,富山市所在のホテルの会議室で開催した会合において,かねて設立を計画していた事業協同組合が発足し,会員が組合員となった後も,各会員の従前の商圏を組合員としての商圏とし,組合員がそれぞれ有することとなる商圏の数に応じた賦課金を組合員から徴収することを決定した。
 全病食協は,旧協会解散後,前記aの決定をうけて,組合員間の競合を回避するため,その設立に際して,組合員の商圏を定めるとともに,設立後新たに加入した組合員については,加入の都度その商圏を定め,各組合員に対し,全病食協又は賛助会員から購入した治療用食品を商圏外の顧客(医療関連施設及び自宅療養中の患者をいう。以下同じ。)に販売しないよう指示し,商圏の数に応じた賦課金を徴収している。なお,商圏外の顧客であっても,全病食協加入以前から取引している顧客に販売する場合又はその顧客が所在する地域を商圏とする他の組合員が異議を申し立てない場合には,商圏外に販売することも差し支えないものとして取り扱っている。
 全病食協は,前記bの指示の実効を確保するため,次の行為を行っている。
(a)  全病食協は,組合員間で商圏をめぐる問題が生じた場合には,理事会,ブロック会等の場において検討し,組合員同士が競合しないよう調整している。
(b)  全病食協は,組合員の中に,治療用食品の通信販売業を営む非組合員に対して治療用食品を供給している者がいることを知り,これを放置すると,事実上商圏外の顧客に対する販売を容認することになると考え,平成13年8月23日ころ,札幌市中央区所在のホテルの会議室で開催した理事会において,新たに組合員との間で商品売買基本取引契約を締結し,同契約において非組合員である治療用食品の販売業者に対するプライベートブランド商品(治療用食品の供給業者である賛助会員に製造を委託するもの),専売商品(賛助会員から一手供給を受けるもの)等の転売を禁止することを決定した。
 全病食協は,同決定に基づき,組合員に対して商品売買基本取引契約の締結を要請し,ほとんどすべての組合員と同契約を締結するとともに,同契約の締結を拒否した組合員に対して,平成14年7月1日からプライベートブランド商品及び専売商品の販売を停止した。
(ウ)  全病食協の組合員は,おおむね,前記bの指示に基づき,全病食協が定めた商圏外の顧客には全病食協又は賛助会員から購入した治療用食品を原則として販売せず,商圏外の顧客から注文を受けた場合にはその顧客が所在する地域を商圏とする組合員を紹介するなど,他の組合員との競合を回避するようにしている。
ウ 全病食協に対する独占禁止法の適用について
 全病食協は,前記(ア)のとおり,組合員の任意の加入を制限しており,中小企業等協同組合法に基づいて設立された事業協同組合であるものの,独占禁止法第22条第2号の要件(組合員が任意に加入・脱退できること)を欠き,独占禁止法の適用を受けるものである。
エ 排除措置
 全病食協に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  組合員が販売する治療用食品の販売地域を定め,当該販売地域外での販売を制限している行為を取りやめること。
(イ)  全病食協は,組合員と締結している商品売買基本取引契約のうち非組合員に対する転売を禁止している条項を削除すること。
(ウ)  次の事項を組合員に周知徹底させること。
 前記(ア)及び(イ)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)と同様の行為を行わない旨
3 独占禁止法第19条違反事件
(1) 三菱電機ビルテクノサービス(株)に対する件(平成14年(勧)第7号)

ア 関係人

イ 違反事実等
(ア)
 三菱電機ビルテクノサービス(株)(以下「三菱ビルテクノ」という。)は,昇降機(エレベーター,エスカレーター及び小荷物専用昇降機をいう。以下同じ。)等の製造販売を行っている三菱電機(株)(以下「三菱電機」という。)が全額出資により設立したメーカー系保守業者であり,三菱電機が製造する昇降機(以下「三菱電機製昇降機」という。)の大部分の保守業務を行っており,我が国における昇降機保守の市場において第1位の地位を占めている。三菱ビルテクノは,三菱電機製昇降機の保守用部品の販売を行っており,三菱電機製昇降機専用に製造された保守用部品について,一元的に国内に供給しており,当該保守用部品は三菱ビルテクノ以外からは入手できない状況にある。
 三菱ビルテクノは,保守用部品について,同部品の製造業者等に発注してから自社に納品されるまでに要する標準的な日数(以下「標準納期」という。)を定めている。
 三菱ビルテクノは,自社と保守契約を締結している顧客(以下「自社の保守契約顧客」という。)向け保守用部品の販売価格について,同部品の製造業者等からの購入価格の約2倍とする旨定めている。
 三菱ビルテクノは,保守用部品のうち,継続して使用が見込まれるもの,緊急性が高いものなどについて,自社の物流センター,資材センター等において計画的に在庫として保有し,自社の保守契約顧客等に供給している。
 三菱ビルテクノは,平成9年3月14日,自社の事業活動における諸業務の基本となる考え方や標準的な手順・方法など業務運営に関する取扱いについて定めた「営業・生産・技術運営ノート」と題する社内文書を作成し,これを同社の各支社,支店,営業所等(以下「各支社等」という。)に通知し,各支社等は同社内文書に基づいて業務を運営している。
(イ)
 三菱ビルテクノは,かねてから,三菱電機製昇降機の保守は自社が行うべきものとの考えに基づき業務を行ってきたところ,平成7年ころから,独立系保守業者(昇降機の保守業務を行う事業者のうち昇降機メーカー及び昇降機メーカーが子会社として設立した保守業者以外の保守業者をいう。以下同じ。)の台頭等により,同昇降機の所有者,管理者等(以下「所有者等」という。)との保守契約率(同昇降機の国内設置台数に占める三菱ビルテクノの保守契約台数の割合)の低下及び自社の保守契約料金の低下傾向がみられるようになったことにかんがみ,保守契約率の維持及び向上並びに保守契約料金の低下防止を目的とするマーケットシェアキープ活動(以下「MSK」という。)と称する活動を業務運営の基本方針として,全社的な取組を開始し,各支社にMSKの推進者を置いて,この者を中心に,保守契約の解約等の防止及び独立系保守業者からの契約奪回を図るため,MSK対策商品と称する低価格の保守商品の開発及び販売,迅速な部品確保ができることなど自社の保守業務の優位性を主張する各種パンフレット類の配布等を実施している。
(a)  三菱ビルテクノは,前記(イ)aの状況の下,かねてから,保守用部品の供給に関して,自社の保守契約顧客向けと独立系保守業者向けとで取扱いに差異を設けていたところ,平成10年4月28日に前記「営業・生産・技術運営ノート」の一部である「未契約昇降機への部品販売等に関する取扱い」と題する社内文書を改定し,三菱ビルテクノとの間で保守契約を締結していない顧客(独立系保守業者を含む。)への保守用部品の販売について
 納期は,原則として,受注後部品製造業者等へ発注することを前提に対応する
ii  販売価格は,部品製造業者等からの自社の購入価格の3倍とする
旨等の指針を規定し,MSKの推進者が各支社等における同指針の遵守徹底を行うこととし,これらの内容を各支社等に通知した。
(b)  三菱ビルテクノは,各支社等において,前記(イ)b(a)の指針に基づき,次のとおり独立系保守業者に対する保守用部品の販売を行っている。
 独立系保守業者から受注した保守用部品を在庫として保有し独立系保守業者に対しても在庫の中から納入している場合など,標準納期より短期間に納入し得る場合であっても,原則として標準納期である60日,120日等を納期として納入している。
ii  独立系保守業者に対する保守用部品の販売に当たっては,同部品の自社の購入価格の多寡にかかわらず,一律に自社の保守契約顧客向け販売価格の約1.5倍に相当する購入価格の3倍の価格で販売している。
(ウ)  三菱ビルテクノの前記b等の行為により,独立系保守業者は,三菱電機製昇降機の保守業務を迅速かつ低廉に行うことが困難となっており,このため,同昇降機の保守契約を解除され,又は保守用部品の調達能力に関する信用を失うことなどにより,同昇降機の所有者等との同昇降機についての保守契約の締結及び維持並びに保守業務の円滑な遂行が妨げられている。
ウ 排除措置
 三菱ビルテクノに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  三菱電機製昇降機の所有者等から委託を受けて同昇降機の保守業務を行う独立系保守業者に対して,同昇降機の保守用部品を供給するに当たり
 納入し得る部品があり,遅滞なく納入できるにもかかわらず,原則として部品製造業者等へ発注した場合に要する納期により納入する
 合理的理由なく,自社と保守契約を締結している顧客向けの販売価格を著しく上回る価格により販売する
ことにより,独立系保守業者と同昇降機の所有者等との保守の取引を不当に妨害している行為を取りやめること。
(イ)  今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わないよう「未契約昇降機への部品販売等に関する取扱い」と題する社内文書の規定のうち前記イ(イ)b(a)i及びiiの旨を規定した条項を削除すること。
(ウ)  次の事項を三菱電機製昇降機の所有者等から委託を受けて同昇降機の保守業務を行う独立系保守業者に通知するとともに,自己の従業員に周知徹底させること。
 前記(ア)及び(イ)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(エ)  今後,前記(ア)の行為と同様の行為により,三菱電機製昇降機の所有者等から委託を受けて同昇降機の保守業務を行う独立系保守業者と同昇降機の所有者等との保守の取引を不当に妨害しないこと。

(2) スキューバプロ・アジア(株)に対する件(平成14年(勧)第20号)

ア 関係人

イ 違反事実等
(ア)  スキューバプロ・アジア(株)似下「スキューバプロ・アジア」という。)は,国内における潜水に使用される器材・用品(以下「ダイビング用品」という。)の販売分野において有力な地位を占めており,また,スキューバプロ・アジアが自ら又は取引先卸売業者を通じて小売業者に販売する「SCUBAPRO」の商標を付したダイビング用品(以下「スキューバプロ製品」という。)及び「UWATEC」の商標を付したダイビング用品(以下「ウワテック製品」という。)並びに「AIRE」の商標を付したダイビング用品(以下「アイレ製品」という。)は性能・品質が優れているとして,一般消費者から指定買いされることが多く,ダイビング用品を取り扱う小売業者にとっては当該製品を取り扱うことが営業上有利であるとされている.
(イ)
(a)  スキューバプロ製品の並行輸入の増加,廉売を標ぼうする量販店等の台頭等により,スキューバプロ製品の小売価格が低下しつつある中で,小売業者がスキューバプロ・アジアに対し量販店等の行う大幅な値引き販売を止めさせるよう求めてくることが増加したことから,スキューバプロ・アジアは,平成9年11月ころ,量販店等の大幅な値引き販売を防止し,小規模な小売業者及び自社の利益の確保を図ることを目的として,スキューバプロ製品の小売価格を維持させるための方策を検討し,平成10年1月1日以降,スキューバプロ製品のうち,新製品及び売れ筋製品を主体に毎年選定する製品(以下「価格維持対象製品」という。)について,小売業者が値引きして販売する場合の限度とする価格(以下「値引き限度価格」という。)を希望小売価格の20パーセント引きの価格とするとともに,小売業者のチラシ広告,ダイビング専門雑誌等の広告における価格表示を当該値引き限度価格以上の価格とする等の方針(以下「小売価格維持方針」という。)を決定した。
 また,スキューバプロ・アジアは,平成9年11月ころ,ウワテック製品のうち「アラジン」と銘柄を付したダイブコンピュータについても,小売価格維持方針に準じて,価格維持対象製品に含め小売価格を維持させることとし,平成10年1月1日以降,当該製品の値引き限度価格を希望小売価格の30パーセント引きの価格とすることとした。
(b)  スキューバプロ・アジアは,小売価格維持方針について,平成9年12月ころ,ディーラーミーティング(取引先卸売業者及び取引先小売業者を招集して販売方針,新製品の紹介等を行う会合。以下同じ。),営業活動等において,又は取引先卸売業者を通じて,小売業者に対し周知し,遵守するよう要請するとともに,平成10年における価格維持対象製品について,その製品名及び当該製品の希望小売価格を記載した文書を小売業者等に配布することなどにより周知していた。
(c)  その後,スキューバプロ・アジアは,平成11年3月ころ,アイレ製品のうち一部のものについても小売価格維持方針の対象とすること及び平成11年5月10日以降の当該製品の値引き限度価格を希望小売価格の20パーセント引きの価格とすることを決定するとともに,自ら又は取引先卸売業者を通じて,その旨を小売業者に周知し,遵守するよう要請していた。
(d)  また,スキューバプロ・アジアは,毎年,小売価格維持方針を,ディーラーミーティング,営業活動等において,又は取引先卸売業者を通じて,小売業者に対し周知し,遵守するよう要請するとともに,その年の価格維持対象製品名及び当該製品の希望小売価格を記載した文書を小売業者等に配布することなどにより周知している。
 スキューバプロ・アジアは,前記aの小売価格維持方針の実効確保するため、価格維持対象製品について,小売業者が値引き限度価格を下回る価格で販売又は価格表示をしていることが,自らの調査,又は他の小売業者からの苦情等により判明したときは,自ら又は取引先卸売業者を通じて,値引き限度価格を下回る価格で販売又は価格表示をしないよう要請しているほか,一部の小売業者に対し,当該製品の在庫を返品するようにさせるとともに,その出荷を停止する等の措置を講じている。
(ウ)  スキューバプロ・アジアの前記(イ)の行為により,小売菜者は,価格維持対象製品について,おおむね,スキューバプロ・アジアの定めた値引き限度価格以上の価格で販売している。
ウ 排除措置
 スキューバプロ・アジアに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  スキューバプロ・アジアは,スキューバプロ製品,ウワテック製品及びアイレ製品のうち,新製品及び売れ筋製品を主体に選定した製品の販売に関し,自ら又は取引先卸売業者を通じて,小売業者に対し,同社の定めた希望小売価格の20パーセント又は30パーセント引きの価格以上の価格で販売するようにさせている行為を取りやめること。
(イ)  次の事項を取引先卸売業者,小売業者及び一般消費者に対し,それぞれ周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(ウ)  今後,前記(ア)の製品の販売に関し,前記(ア)の行為と同様の行為により,小売業者の販売価格を制限しないこと。
(3) 東京地区エー・エル・シー協同組合に対する件(平成14年(勧)第23号)
ア 関係人

イ 違反事実等

(ア)
 東京地区エー・エル・シー協同組合(以下「東京協組」という。)は,組合員の取り扱う軽量気泡コンクリート製品に係る工事の共同受注事業を行うこと等を目的として設立された事業協同組合であるところ,かねてから,東京協組に加入する資格を有する販売施工業者をすべて加入させるとの方針の下,加入促進活動を行う一方で,共同受注事業を行うことによって,同事業の対象地区内における特定軽量気泡コンクリート製品工事(使用される軽量気泡コンクリート製品の種類が厚さ75ミリメートル以上のもの(大型及び特殊と称される種類の製品を除く。)であって,かつ,工事1物件当たりの同製品の使用量が150平方メートル以上(平成13年3月までは300平方メートル以上)の工事をいう。以下同じ。)の値戻しと称する受注価格の引上げに努めることとしていたが,東京協組に加入していない建材商社及び販売施工業者(以下「員外者」という。)の安値受注により,その目的を十分達成できていなかった。このため,東京協組は,平成9年7月8日ころ以降,組合員が,その営業活動において共同受注契約の締結に向けて東京協組が建設業者と交渉している価格よりも安値で員外者が建設業者と価格交渉している等の情報に接した場合,当該情報を東京協組に対し積極的に提供させ,これらの情報等を基に,員外者の営業活動を把握することとしている。
 東京協組は,平成10年1月ころまでに,特定軽量気泡コンクリート製品工事について,員外者が共同受注に関する最低契約価格よりも安値で建設業者から受注することを防ぐため,員外者が受注を希望する物件及びその内容について組合員を通じて申請(以下「代埋申請」という。)をさせ,受注する権利を当該組合員を通じて割り当てた場合にのみ受注することができるようにすることとした。また,東京協組は,平成10年7月28日ころに開催した理事会において,組合員に対し,員外者に代理申請をするようにさせるとともに,組合員を通じて受注する権利の割当てを受けた当該員外者には共同受注に関する最低契約価格を前提に建設業者と交渉をさせ,建設業者から受注した場合は,東京協組に当該物件を発注するようにさせることを確認し,平成10年11月25日ころ,組合員に対し,このことを周知した。
 東京協組は,前記bにより,自ら員外者に対し代理申請をするよう要請するとともに,当該員外者の軽量気泡コンクリート製品の仕入先製造販売業者に,当該員外者に対し代理申請をさせるよう指導することを要請してきたところ,員外者の代理申請を徹底するため,首都圏地区(埼玉県,千葉県,東京都及び神奈川県の区域をいう。以下同じ。)において軽量気泡コンクリート製品を供給しているすべての軽量気泡コンクリート製品製造販売業者に対し,次のとおり要請を行った。
(a)  東京協組は,平成11年5月20日ころ,東京都新宿区所在のトラック会館会議室に,東日本旭化成建材(株),小野田エー・エル・シー(株),住鉱シポレックス(株),日本イトン工業(株)及び旭硝予建材(株)の部長・支店長級の者を招致し,これらの者に対し,それぞれの系列の員外者が特定軽量気泡コンクリート製品工事を受注しようとする場合には,代理申請を確実に実行させ,東京協組による受注する権利の割当てを受けた場合にのみ受注することができるようにすること,代理申請をしない員外者に対しては,軽量気泡コンクリート製品の販売価格を東京協組の組合員に対する販売価格よりも高くすること等を要請した。
(b)  東京協組は,平成11年12月8日ころ,東京都新宿区所在のトラック会館会議室に,東日本旭化成建材(株),小野田エー・エル・シー(株),住友金属鉱山シポレックス(株)及び日本イトン工業(株)の部長・支店長級の者を招致し,これらの者に対し,前記(a)と同様の内容の要請を行ったほか,代理申請をしない員外者に対しては,軽量気泡コンクリート製品の出荷を停止すること等を要請した。
これらの要請を受けた軽量気泡コンクリート製品の製造販売業者は,いずれも員外者に代理申請をするようにさせること等を承諾した。
 東京協組は,前記b及びcの行為を通じて,員外者に代理申請をさせることにより,特定軽量気泡コンクリート製品工事について,員外者に対して,代理申請をさせた物件のうち受注する権利を割り当てた物件についてのみ建設業者と受注に向けた交渉をすることを認め,受注する権利を割り当てなかった物件については当該員外者が受注しないようにさせている。
 また,組合員からの前記aの情報提供により代理申請をしない員外者の動向を察知した場合は,自ら員外者に代理申請をするよう要請するほか,当該員外者の軽量気泡コンクリート製品の仕入先製造販売業者に,当該員外者に対し代理申請をさせるよう個別に指導を要請している。
(イ)  東京協組の前記bないしdの行為により,員外者は,首都圏地区において建設業者から発注される特定軽量気泡コンクリート製品工事について,受注を希望する物件に関して東京協組の組合員を通じて東京協組に申請し,東京協組から割当てを受けた場合にのみ受注することができるものとされており,首都圏地区における特定軽量気泡コンクリート製品工事の受注活動が不当に妨害されている。
ウ 排除措置
 東京協組に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)
 首都圏地区における軽量気泡コンクリート製品に係る工事について,員外者に対し,代理申請させ,当該組合員を通じて受注する権利を割り当てた場合にのみ受注することができるようにしている行為を取りやめること。
 平成11年5月20日ころ及び同年12月8日ころの会合において,首都圏地区における軽量気泡コンクリート製品に係る工事について,同製品の製造販売業者に対して行った,員外者に対し,代理申請させ,当該組合員を通じて同協同組合により受注する権利の割当てを受けた場合にのみ受注することができるようにする旨の要請を撤回すること。
(イ)  次の事項を首都圏地区に所在する軽量気泡コンクリート製品を取り扱う建材商社,販売施工業者及び同製品の製造販売業者並びに需要者に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(ウ)  今後,前記(ア)の行為と同様の行為により,員外者の軽量気泡コンクリート製品に係る工事の受注を不当に妨害する行為を行わないこと。
4 審判開始決定事件
 公正取引委員会は,独占禁止法違反の疑いで審査を行い,同法に違反する事実があると認めて排除措置を採るよう勧告し(第48条第1項及び第2項),勧告を受けたものが当該勧告を応諾しなかった場合において,事件を審判手続に付することが公共の利益に適合すると認めたときは,当該事件について事件の要旨を記載した文書をもって審判開始決定を行っている(第49条第1項及び第50条第2項)。
 また,公正取引委員会は,違反行為を経過してから1年を経過していることから勧告を行うことができないが,課徴金納付命令の対象となる場合に行った課徴金納付命令(第48条の2第1項)に対し,相手方が不服申立て審判手続の開始請求をした場合には,課徴金に係る違反行為,課徴金の計算基礎及び法令の適用を記載した文書をもって審判開始決定を行っている(第48条の2第5項,第49条第2項)。

(1) 新日石エンジニアリング(株)ほか1社に対する件(平成14年(判)第36号)
ア 関係人

 なお,次に掲げる関係人5社については,勧告に応諾したため,平成14年7月26日にこれらの者に対し,勧告審決(平成14年(勧)第8号)を行っている。(後記エ参照)
イ 関係人

ウ 審判開始決定の内容
(ア)
 被審人新日石エンジニアリング(株)(日石エンジニアリング(株)が三菱石油エンジニアリング(株)を平成11年11月1日に吸収合併するとともに日石菱油エンジニアリング(株)に商号を変更し,更に同14年6月27日に商号を変更したもの。)及び同東燃テクノロジー(株)の2社(以下「被審人2社」という。)並びに鹿島エンジニアリング(株),出光エンジニアリング(株),日陽エンジニアリング(株),太陽テクノサービス(株)(太陽エンジニアリング(株)を平成13年12月21日に吸収合併した太陽興産(株)が,同14年7月1日に商号変更したもの。)及びコスモエンジニアリング(株)の5社(以下「5社」という。)は,それぞれ,石油元売会社又は石油精製会社が主たる出資者となっている。これらの石油元売会社又は石油精製会社は,国家石油備蓄会社である,むつ小川原石油備蓄(株),苫小牧東部石油備蓄(株),福井石油備蓄(株),上五島石油備蓄(株),秋田石油備蓄(株),志布志石油備蓄(株),日本地下石油備蓄(株)及び白島石油備蓄(株)の8社(以下「国家石油備蓄会社8社」という。)のうち,その設立時に出資し,従業員を出向させるなどしている関係にある1社ないし2社の国家石油備蓄会社の中核会社と呼ばれている。また,このことから,被審人2社及び5社は,それぞれの主たる出資者である石油元売会社又は石油精製会社が中核会社となっている国家石油備蓄会社の中核エンジニアリング会社(以下「中核エンジ」という。)と呼ばれており,各国家石油備蓄会社(複数の事業所を持つ日本地下石油備蓄にあっては、各事業所ごとをいう。)のそれぞれの中核エンジは,別表記載のとおりである。
 国家石油備蓄会社8社は,その保有する石油備蓄基地施設のうち石油貯蔵施設及び同関連施設(以下「石油貯蔵施設等」という。)の保全工事,更新工事及び新増設工事(それぞれの本社が発注するものに限る。以下同じ。)を指名競争入札又は指名見積り合わせ(以下「指名競争入札等」という。)の方法により発注しており,指名競争入札等に当たっては,物件ごとに,同工事の施工実績を有し,当該物件の施工能力があると判断した者の中から指名競争入札等の参加者を指名しているところ,国家石油備蓄会社8社のうち白島石油備蓄(株)を除く7社(以下「国家石油備蓄会社7社」という。)は,同工事の指名競争入札等において,被審人2社及び5社のうち中核エンジを含む複数の者を参加者として指名している。
(イ)  国家石油備蓄会社が発注する石油貯蔵施設等の保全工事,更新工事及び新増設工事については,かねてから,指名競争入札等の参加者として指名を受けた者の間で,入札において競合しないように入札価格の調整が行われてきたところ,被審人2社及び5社(新日石エンジニアリング(株)にあっては,平成11年11月1日前は日石エンジニアリング(株)及び三菱石油エンジニアリング(株),また,同日以降は日石菱温エンジニアリング(株)をいう。以下同じ。)は,遅くとも平成10年4月1日以降(太陽テクノサービス(株)にあっては太陽エンジニアリング(株)をいい,平成11年4月27日ころ以降),国家石油備蓄会社7社(日本地下石油備蓄(株)にあっては,初めて指名競争入札等の方法により石油貯蔵施設等の保金工事,更新工事及び新増設工事を発注した平成11年4月27日以降)が被審人2社及び5社のうち中核エンジを含む複数の者を指名して指名競争入札等の方法により発注する石油貯蔵施設等の保全工事,更新工事及び新増設工事(以下「国家石油備蓄会社7社発注の特定保全等工事」という。)について,国家石油備蓄会社7社のそれぞれの中核エンジが継続して受注するようにするため
 国家石油備蓄会社7社から指名競争入札等の参加者として指名を受けた場合には,当該国家石油備蓄会社の中核エンジを受注すべき者(以下「受注予定者」という。)とする
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(ウ)  被審人2社及び5社は,前記(イ)により,国家石油備蓄会社7社発注の特定保全等工事の大部分を受注していた。
(エ)  平成13年6月27日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,被審人2社及び5社は,同日以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
エ 5社に対する排除措置
 5社に対する勧告審決において,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  5社は,遅くとも平成10年4月1日以降(太陽テクノサービス(株)にあっては,平成11年4月27日ころ以降)行っていた,国家石油備蓄会社7社が発注の特定保全等工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  次の事項を国家石油備蓄会社7社に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,国家石油備蓄会社7社発注の特定保全等工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,国家石油備蓄会社7社が競争入札又は見積り合わせの方法により発注する石油備蓄基地施設のうち石油貯蔵施設及び同関連施設の保全工事,更新工事及び新増設工事について,受注予定者を決定しないこと。

別表 各国家石油備蓄会社の中核エンジ 
(2) タキイ種苗(株)ほか18社に対する件(平成14年(判)第61号)
ア 関係人



 なお,次に掲げる関係人については,勧告を応諾したため,平成14年9月25日に,勧告審決を行っている。(後記エ参照)
イ 関係人

ウ 審判開始決定の内容
(ア)
 被審人19社(はくさいの交配種の種子にあっては別表1中「はくさい」欄記載の17社,キャベツの交配種の種子にあっては同「キャベツ」欄記載の19社,だいこんの交配種の種子にあっては同「だいこん」欄記載の17社及びかぶの交配種の種子にあっては同「かぶ」欄記載の17社をいう。)及び前記イの関係人13社(以下「13社」といい,はくさいの交配種の種子にあっては別表2中「はくさい」欄記載の9社,キャベツの交配種の種子にあっては同「キャベツ」欄記載の9社,だいこんの交配種の種子にあっては同「だいこん」欄記載の10社及びかぶの交配種の種子にあっては同「かぶ」欄記載の7社をいう。)は,別表1及び別表2記載の野菜の交配種の種子をそれぞれ,自ら若しくは他の生産業者等に委託することにより生産し,又は他の生産業者等から買い受け,袋等の容器(「バラ」等と称される大容量のものを除く。)に詰めた上で自社の名称を表示し,国内において野菜栽培農家等の需要者に卸売業者を通じるなどして販売している者である。このような方法により交配種の種子を販売する事業者は,一般に「元詰業者」と称されている。
 交配種は,遺伝的性質の異なる品種同士を交配させて親品種の優れた特性を受け継いだ均一な遺伝的性質を一代目に発現させるよう育種された品種である(以下,元詰業者が前記aの方法により販売する交配種の種子のことを「元詰種子」という。)。
 被審人19社及び13社が国内において販売するはくさい,キャベツ,だいこん(葉だいこん及び二十日だいこんに属するものを除く。)及びかぶの元詰種子(「小袋」と称される形態で流通するものを除く。以下「4種類の元詰種子」という。)のそれぞれの種類の販売金額の合計は,国内において販売されるそれぞれの種類の元詰種子の総販売金額のほとんどすべてを占めている。
 被審人19社及び13社は,それぞれ,4種類の元詰種子を販売するに際し,毎年5月ないし7月からの1年間を対象として,「小売」等と称する需要者向け価格,「農協」等と称する農業協同組合(以下「農協」という。)向け価格,「大卸」等と称する小売業者向け価格等(これらを総称して以下「価格表価格等」という。)を設定し,取引先販売業者及び需要者(以下「取引先」という。)に配布する価格表に掲載するなどしており,取引先ごとに定めた一定率を価格表価格等に乗じる等の方法により算定した価格を自社の取引先に対する販売価格としている。
(イ)  元詰業者は,かねてから,4種類の元詰種子に関して,毎年3月に会合を開催し,作柄状況,市況等の情報交換を行い,販売の基準となる価格を決定してきたところ,被審人19社及び13社は,遅くとも平成10年3月19日以降(別表3記載の事業者にあっては平成13年3月14日以降),4種類の元詰種子について,販売価格の低落防止等を図るため,種類ごとに,各社が販売価格を定める際の基準となる価格(以下「基準価格」という。)を毎年決定し,各社は当該基準価格の前年の基準価格からの変動に沿って各社の4種類の元詰種子の品種ごとの販売価格を定めて販売する旨の合意の下に,毎年3月に各社の代表者又は営業責任者級の者による会合を開催し,野菜の種類,品質等に応じて設けたA,B及びCの区分(かぶにあっては区分なし)ごとに,需要者向け,農協向け,小売業者向け等の形態及び取引単位に応じた基準価格をそれぞれ別表4記載のとおり決定し,基準価格の引上げ又は維持を行っていた。
(ウ)  被審人19社及び13社は,4種類の元詰種子のうち自社の販売する元詰種子について,前記(イ)に基づき,前年の基準価格からの変動に沿って品種ごとに取引先に対し価格表価格等を設定して販売することにより,4種類の元詰種子それぞれの販売価格をおおむね引き上げ,又は維持していた。
(エ)  平成13年8月29日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,被審人19社のうち17社及び13社のうち9社の計26社は,同年10月4日,静岡県熱海市所在の「古屋旅館」の会議室において会合を開催し,同年3月14日に決定した4種類の元詰種子の基準価格を破棄するとともに,以後,元詰種子の販売価格に関する話合いを行わない旨の申合せを行った。これにより,同日以降,前記(イ)の合意は事実上消滅している。
ウ 13社に対する排除措置
  13社に対する勧告審決において,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  それぞれ,遅くとも平成10年3月19日以降(別表3記載の事業者にあっては平成13年3月14日以降)行っていた,4種類の元詰種子のそれぞれの元詰業者間で行っていた基準価格を毎年決定し,各社は当該価格の前年の各社が基準価格からの変動に沿って取引先販売業者及び需要者に対し,品種ごとに販売価格を定めて販売する旨の合意を破棄していることを確認すること。
(イ)  次の事項を4種類の元詰種子のそれぞれの取引先販売業者及び需要者に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,それぞれ,相互に又は他の業者と共同して,国内において販売する4種類の元詰種子の販売価格について,基準価格を決定せず,各社がそれぞれ自主的に決める旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,4種類の元詰種子の販売価格を決定しないこと。

別表1  はくさい,キャベツ,だいこん及びかぶの交配種の種子を販売する被審人


別表2  はくさい,キャベツ,だいこん及びかぶの交配種の種子を販売する関係人


別表3  合意へ中途参加した事業者

別表4  基準価格
はくさい(1袋当たり20ミリリットル詰)

(注)  「小売1袋」は需要者向けに販売する場合の1袋当たりの価格,「共購10袋」は共同で購入する需要者向けに販売する場合の10袋当たりの価格,「農協10袋」は農協向けに販売する場合の10袋当たりの価格,「大卸10袋」及び「大卸100袋」は小売業者向けに販売する場合の10袋及び100袋当たりの価格。

キャベツ(1袋当たり20ミリリットル詰)


(注)  「小売1袋」は需要者向けに販売する場合の1袋当たりの価格,「共購10袋」は共同で購入する需要者向けに販売する場合の10袋当たりの価格,「農協10袋」は農協向けに販売する場合の10袋当たりの価格,「大卸10袋」及び「大卸100袋」は小売業者向けに販売する場合の10袋及び100袋当たりの価格。

だいこん(1袋当たり2デシリットル詰)

(注)  小売1袋」は需要者向けに販売する場合の1袋当たりの価格,「共購10袋」は共同で購入する需要者向けに販売する場合の10袋当たりの価格.「農協10袋」は農協向けに販売する場合の10袋当たりの価格,「大卸10袋」及び「大卸100袋」は小売業者向けに販売する場合の10袋及び100袋当たりの価格。

かぶ(1袋当たり2デシリットル詰)

(注)  「小売1袋」は需要者向けに販売する場合の1袋当たりの価格,「共購10袋」は共同で購入する需要者向けに販売する場含の10袋当たりの価格,「農協10袋」は農協向けに販売する場合の10袋当たりの価格,「大卸10袋」及び「大卸100袋」は小売業者向けに販売する場合の10袋及び100袋当たりの価格。

(3) (株)エスアールエルほか1社に対する件,(株)エスアールエルほか2名に対する件,(株)エスアールエルほか1名に対する件及び(株)エスアールエルほか1名に対する件(平成15年(判)第6号〜平成15年(判)第9号)
ア 被審人


イ 関係人
  なお,次に掲げる関係人については,勧告を応諾したため,平成15年3月14日に,勧告審決(平成15年(勧)第6号〜平成15年(勧)第9号)を行っている。(後記エ参照)

(注)  大塚製薬(株)及び塩野義製薬(株)の2社(以下「2社」という。)は,遅くとも勧告時点以降臨床検体検査を業として営んでいない。

ウ 審判開始決定の内容
(ア)
 東京都,名古屋地区(名古屋市,愛知県大府市及び同県小牧市の区域をいう。以下同じ。),大阪府及び福岡地区(福岡市,北九州市,福岡県春日市及び同県古賀市の区域をいう。以下同じ。)に所在する別表1記載の国公立等の病院(以下「各事件の国公立病院等」という。)は,臨床検体検査業務(自己の検査室における臨床検体検査業務を委託して行わせる業務を除く。以下「臨床検査業務」という。)の全検査項目を一括して,又は群若しくは項目ごとに分割して,一般競争入札,指名競争入札等の方法により発注しているところ,すべての指名競争入札において,各事件の被審人及び関係人のうちのいずれかの者を指名しており,また,すべての一般競争入札に,各事件の被審人及び関係人のうちのいずれかの者が参加していた。
 各事件の被審人及び関係人は,それぞれ,各事件の国公立病院等が一般競争入札又は指名競争入札(以下「競争入札」という。)の方法により発注する臨床検査業務のほとんどすべて(東京都においてはすべて)を受注していた。
(イ)  各事件の被審人及び関係人は,それぞれ,遅くとも,別表2の「期日」欄記載の年月日以降,各事件の国公立病院等が競争入札の方法により発注する臨床検査業務について,受注価格の低落防止を図るため
 全検査項目を一括して,又は群若しくは項目ごとに分割して発注(福岡地区においては,検査項目ごとに分割して発注)された当該臨床検査業務を受託していた者を引き続き受注すべき者(以下「受注予定者」という。)とする
 検査項目が新規に発注される場合(大阪府においては「場合等」)には,当該病院への営業努力等を勘案して,話合いにより受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(ウ)  各事件の被審人及び関係人は,それぞれ,前記(イ)により,各事件の国公立病院等が競争入札の方法により発注する臨床検査業務のほとんど(福岡地区においてはほとんどすべて)を受注していた。
(エ)  平成14年3月27日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,各事件の被審人及び関係人は,それぞれ,同日以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
エ 関係人7名に対する排除措置
 関係人7名に対する勧告審決において,それぞれ,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも別表2の「期日」欄記載の年月日以降行っていた,各事件の国公立病院等が競争入札の方法により発注する臨床検査業務について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  2社を除く関係人は,次の事項を,それぞれ該当する各事件の国公立病院等に通知するとともに,自己の従業員又は職員に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,各事件の国公立病院等が競争入札の方法により発注する臨床検査業務について,受注予定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  2社を除く関係人は,今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,各事件の国公立病院等が競争入札の方法により発注する臨床検査業務について,受注予定者を決定しないこと。
(エ)  2社は,前記(ア)に基づいて採った措置を,それぞれ該当する各事件の国公立病院等に通知しなければならない。

別表1  発注者一覧表


別表2  違反行為の始期

(4) 松下電器産業(株)に対する件(平成15年(判)第10号及び11号)
ア 被審人

 本件については,第3章第2の1(13)(102ページ)に記載しており,審判開始決定の内容は違反事実と同内容となっている。