第2 勧告等の法的措置

 平成15年度は25件の法的措置を行った。25件のうち,9件については関係人の一部について審判手続を開始し,その他については勧告審決を行った。平成15年度に法的措置を採った25件について違反法条をみると,第3条前段(私的独占)違反1件,第3条後段(不当な取引制限)違反17件及び第19条違反(不公正な取引方法)違反7件となっている。
 法的措置を採った上記25件の概要は,以下のとおりである。

1 独占禁止法第3条後段違反事件
(1) (財)経済調査会ほか1名に対する件(平成15年(勧)第18号)


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア)  国土交通省関東地方整備局(平成13年1月5日までは建設省関東地方建設局)管内に所在する国の機関,茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,山梨県,長野県及び公団の官公庁等(以下「関東地方整備局管内の官公庁等」という。)は,建設資材の実例価格の調査業務(同調査業務と他の価格調査業務等が併せて発注されるものを含む。以下「建設資材価格調査業務」という。)の大部分を指名競争入札又は指名見積り合わせ(以下「指名競争入札等」という。)の方法により発注しており,そのほとんどすべての指名競争入札等に当たっては,(財)経済調査会及び(財)建設物価調査会の2名(以下「2名」という。)のみを指名している。
(イ)  2名は,関東地方整備局管内の官公庁等が発注する建設資材価格調査業務について,かねてから,指名競争入札等の参加者として受注に関する話合いを行ってきたところ,遅くとも平成11年4月1日以降,関東地方整備局管内の官公庁等が指名競争入札等の方法により発注する建設資材価格調査業務(前記各都県が発注するものにあっては土木及び農林関係部局が発注するものに限る。以下「関東地方整備局管内の官公庁等発注の特定建設資材価格調査業務」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため
 関東地方整備局管内の官公庁等から指名競争入札等の参加の指名を受けた場合には,次の方法により,当該調査業務を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(a)
 毎年度継続して発注される調査業務(後記iiに係る調査業務を除く。)については,前年度に受注実績を有している者を受注予定者とする
ii  茨城県,群馬県,埼玉県,東京都又は山梨県の各土木関係部局から毎年度継続して発注される調査業務については,ローテーションと称する交互に受注する方法により,受注予定者を決定する
(b)  前記(a)以外の調査業務については,発注者に対する当該調査業務の営業活動の程度等を勘案した話合いにより,受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者が その定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意に基づき,毎年度,あらかじめ,建設資材価格調査業務の指名競争入札等の積算において使用する調査員の種別ごとの人件費の単価等を同一又は近似のものとすることを確認し合った上,当該単価等をもって積算し,受注すべき価格等を定めるなどして,受注予定者を決定し、受注予定者が受注できるようにしていた。
(ウ)  2名は,前記(イ)により,関東地方整備局管内の官公庁等発注の特定建設資材価格調査業務のほとんどを受注していた。
(エ)  平成14年6月19日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,2名は,同日以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
  2名に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成11年4月1日以降行っていた,関東地方整備局管内の官公庁等が指名競争入札等の方法により発注する建設資材価格調査業務について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  次の事項を関東地方整備局管内の官公庁等に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,関東地方整備局管内の官公庁等が指名競争入札等の方法により発注する建設資材価格調査業務について,受注予定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後、それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,関東地方整備局管内の官公庁等が指名競争入札等の方法により発注する建設資材価格調査業務について,受注予定者を決定しないこと。

(2)   (株)長瀬組ほか105名に対する件(平成15年(勧)第19号)


ア 関係人




イ 違反事実等
(ア)
(a)  名古屋市は,住宅都市局(平成12年3月31日までは建築局及び計画局。以下同じ。)において発注する建築工事の大部分を公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により発注しており,公募型指名競争入札に当たっては,競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者(以下「有資格者」という。)を対象に一定の条件を付して入札の参加希望者を募り,当該参加希望者の中から公募型指名競争入札の参加者を指名しており,また,指名競争入札に当たっては有資格者の中から指名競争入札の参加者を指名している。
(b)  名古屋市は,有資格者をその事業規模等によりAからEまでのいずれかの等級に格付しており,平成ll年度以降,当該格付を2年ごとに見直している。
(a)  関係人106社(以下「106社」という。)のうち別表1記載の事業者を除く103社は,平成11年度以降平成14年度までの間(別表1記載の事業者にあっては,それぞれ「期間」欄記載の期間),いずれも,名古屋市から建築工事についてB,C又はDの等級に格付されている者である。
(b)  別表2記載の事業者は,平成11年度及び平成12年度の2年問,名古屋市から建築工事についてBの等級に格付されていた者であるが,いずれも平成13年度以降,Aの等級に格付されている者である。
(c)  別表3記載の事業者は,平成11年度以降名古屋市から建築工事についてCの等級に格付されていた者である。
 106社,別表2記載の事業者及び別表3記載の事業者の110社(以下「110社」という。)は,名古屋市が公募型指名競争入札又は指名競争人札の方法により住宅都市局においてB,C又はDの等級に格付した者のみを指名して発注する建築工事について,指名を受けた者の過半を占めている。
(イ)  110社は,遅くとも平成11年4月1日以降(別表1記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日ころ以降),名古屋市が公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により住宅都市局においてB,C又はDの等級に格付した者のみを指名して発注する建築工事(以下「名古屋市発注の特定建築工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため
 名古屋市から公募型指名競争・入札又は指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(a)  当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1社のときは,その者を受注予定者とする
(b)  受注希望者が複数のときは,過去の受注工事との関連性,工事場所等の事情を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する
 受注すべき価格は、受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意に基づき,名古屋市東区所在の(社)名古屋建設業協会の会議室等において指名業者間の会合を開催し,また、調整役等と称する者の助言を得るなどして,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 さらに,110社のうち,Bの等級に格付された者等は,指名業者名が公表されない公募型指名競争入札の方法により発注される工事について,当該工事の工事費を積算する上で必要な設計図書が販売される名古屋市中区所在の(財)名古屋市建設事業サービス財団において当該設計図書を購入する指名業者を確認するなどの方法により,当該工事の指名業者を把握して,受注希望の確認をしていた。
(ウ)  110社は,前記(イ)により,名古屋市発注の特定建築工事のほとんどすべてを受注していた。
(エ)
 別表2記載の事業者は,いずれも,平成13年度以降,名古屋市から,建築工事についてAの等級に格付されたことにより,平成13年4月1日以降,名古屋市発注の特定建築工事の入札に参加していないため,同日以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っていない。
 別表3記載の事業者は,「期日」欄記載の年月日ころ以降,建設業に係る事業活動を取りやめているため,同日ころ以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っていない。
 平成14年10月24日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,106社は,同日以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
  106社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成11年4月1日以降行っていた,名古屋市発注の特定建築工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  次の事項を名古屋市に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,名古屋市発注の特定建築工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,名古屋市発注の特定建築工事について,受注予定者を決定しないこと。

別表1 合意へ中途参加した事業者


別表2   Aの等級に格付されたことにより特定建築工事の入札に参加しなくなった事業者


別表3   建設業に係る事業活動を取りやめている事業者


(1)   (株)田原スポーツ工業ほか35社に対する件(平成15年(勧)第22号)及び長谷川体育施設(株)ほか9社に対する件(平成15年(勧)第23号)


ア 関係人




イ 違反事実等
(ア) 東京都関係(平成15年(勧)第22号)
a(a)
 東京都は,財務局において運動場施設工事として発注する建設工事のすべてを希望制指名競争入札の方法により発注しており,希望制指名競争入札に当たっては,東京都が競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者(以下「有資格者」という。)を対象に入札の参加希望者を募り,当該参加希望者の中から希望制指名競争入札の参加者を指名している。
ii  東京都は,希望制指名競争入札の方法により財務局において運動場施設工
事として発注する建設工事(以下「東京都発注の特定運動場施設工事」という。)のうち,予定価格が8000万円以上の工事については共同施工方式により施工する工事として発注することとしている。
 東京都は,共同施工方式により施工する工事の入札に当たって,従来は,あらかじめ,入札参加希望者の中から建設共同企業体の構成員として選定するとともに,選定した事業者を,おおむね格付順位(東京都が有資格者に,その事業規模等に応じて,付している順位をいう。)の高い順に,原則として,10社ずつ,第1グループ・第2グループ又は第1グループ・第2グループ・第3グループに区分し,これら各グループ中の各1社を構成員とする建設共同企業体を希望制指名競争入札の参加者として指名していたが,平成14年4月1日以降は,各グループの構成員となるための条件を事前に公表し,当該条件を満たす入札参加希望者を構成員とする建設共同企業体を当該入札の参加者として指名している。
(b)  関係人36社(以下「36社」という。)並びに(株)唐川商工(以下「唐川商工」という。)及びトーリツ(株)(以下「トーリツ」という。)(以下「38社」という。)は,平成11年4月1日以降,東京都発注の特定運動場施設工事において指名された事業者の大部分を占めている。
 東京都発注の特定運動場施設工事については,かねてから,指名を受けた者の間で,受注に関する話合いが行われてきたところ,38社は,遅くとも平成11年4月1日以降,受注機会の均等化等を図るため
(a)  東京都から希望制指名競争入札に参加する建設共同企業体の構成員として選定された場合(平成14年4月1日以降は,構成員となるための条件が公表された場合)には,次の方法により,当該工事を受注すべき建設共同企業体を決定する
 各グループにおいて,構成員として選定された者(平成14年4月1日以降は,構成員となるための条件を満たしている者)のうち,東京都発注の特定運動場施設工事について直近の受注から経過した期間が最も長い者を,当該工事を受注すべき建設共同企業体の構成員とすることを基本として,話合いにより受注すべき建設共同企業体の構成員を決定する
ii  前記iにより決定された構成員同士が結成した建設共同企業体を受注すべき建設共同企業体とする
(b)  東京都から希望制指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,指名を受けた者のうち,東京都発注の特定運動場施設工事について直近の受注から経過した期問が最も長い者を,当該工事を受注すべき者とすることを基本として,話合いにより受注すべき者を決定する
(c)  受注すべき価格は,受注予定者(前記(a)における受注すべき建設共同企業体又は前記(b)における受注すべき者をいう。以下同じ。)が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,東京都所在の喫茶店又は貸会議室において会合を開催して受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 38社は,前記bにより,東京都発注の特定運動場施設工事のほとんどすべてを受注していた。
(a)  唐川商工は,平成13年9月15日ころ,前記bの合意から離脱した。
(b)  平成14年10月31日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,36社及びトーリツは,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(イ)  世田谷区関係(平成15年(勧)第23号)
(a)  東京都世田谷区(以下「世田谷区」という。また,区長が契約権限を委任した者を含む。以下同じ。)は,運動場施設工事として発注する建設工事のほとんどすべてを希望型指名競争入札又は指名競争入札の方法により発注しており,希望型指名競争入札に当たっては,世川谷区が競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者(以下「有資格者」という。)を対象に入札の参加希望者を募り,当該参加希望者の中から希望型指名競争入札の参加者を指名し,また,指名競争入札に当たっては,有資格者の中から指名競争入札の参加者を指名している。
(b)  関係人10社(以下「10社」という。)は,平成11年7月ころ以降,世田谷区が希望型指名競争入札又は指名競争入札(以下「希望型指名競争入札等」という。)の方法により運動場施設工事として発注する建設工事(以下「世田谷区発注の特定運動場施設工事」という。)において指名された事業者のすべてである。
 世田谷区発注の特定運動場施設工事については,かねてから,指名を受けた者の間で,受注に関する話合いが行われてきたところ,10社は,平成11年7月ころ以降(第一ゴルフ工事(株)にあっては,平成14年10月18日ころ以降),受注機会の均等化等を図るため
(a)  世田谷区から希望型指名競争入札等の参加の指名を受けた場合には,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
 指名を受けることとなる者の間であらかじめ定めた順番により決定した者を受注予定者とする
ii  世田谷区に対する営業活動の実績等の特殊事情がある物件にあっては,前記iによらず,話合いにより受注予定者を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 10社は,前記bにより,世田谷区発注の特定運動場施設工事のすべてを受注していた。
 平成14年10月31日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,10社は、同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
(ア)  東京都関係(平成15年(勧)第22号)
 36社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも平成11年4月1日以降行っていた,東京都発注の特定運動場施設工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を東京都に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,東京都発注の特定運動場施設工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,東京都発注の特定運動場施設工事について,受注予定者を決定しないこと。
(イ)  世田谷区関係(平成15年(勧)第23号)
 10社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 平成11年7月ころ以降行っていた,世田谷区発注の特定運動場施設工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を世田谷区に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,世田谷区発注の特定運動場施設工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,世田谷区発注の特定運動場施設工事について,受注予定者を決定しないこと。

別表   関係人のうち商号の変更を行った事業者


(4)   オイレス工業(株)ほか12社に対する件(平成15年(勧)第24号)


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア)
 橋梁用ゴム支承は,地震等による振動及び騒音を低減する機能を有する装置であり,橋梁の上部(橋桁)と下部(橋脚)との接点に設置される。橋梁用ゴム支承には,ゴムと鋼板との積層体のみで構成されるパッド型支承と,積層ゴムに鋼製部品が取り付けられた可動・固定支承,分散支承,すべり支承及び免震支承とがあり,積層ゴムに鋼製部品が取り付けられた支承が需要のほとんどを占めている。
 関係人13社(以下「13社」という。)の橋梁用ゴム支承の販売数量の合計は,我が国における橋梁用ゴム支承の販売数量のすべてを占めている。
 13社は,橋梁工事を発注している国の機関,地方公共団体,公団,公社等(以下「官公庁等」という。)の求めに応じて,発注が予定されている橋梁用ゴム支承の積算価格を提示している。
 13社は,橋梁工事の施主から橋梁工事を請け負った橋梁建設業者及び総合建設業者(以下「橋梁建設業者等」という。)に対し,直接又は販売業者を通じて販売している。橋梁用ゴム支承の販売業者は,橋梁工事を請け負った橋梁建設業者等から引き合いを受けた場合には,橋梁用ゴム支承製造業者に製品仕様,販売価格等について相談し,橋梁川ゴム支承製造業者からの了解を得た上で橋梁建設業者等と取引を行っている。
 13社は,橋梁建設業者等に販売する価格について,前記cの積算価格を基準として,直接又は販売業者をして橋梁建設業者等との間で交渉して定めている。また,13社が販売業者に販売する価格については,橋梁建設業者等への販売価格から販売業者の一定の率のマージンを差し引いたものとなっている。
(イ)
 13杜は,かねてより,各社が官公庁等に提出する橋梁用ゴム支承の積算価格(以下「官公庁等向け積算価格」という。)と実際に橋梁建設業者等に販売する橋梁用ゴム支承の価格が大幅に乖離していたため,官公庁等から各社の官公庁等向け積算価格を引き下げることを求められていたことから,各社の官公庁等向け積算価格を,従来の価格から30パーセント程度引き下げること及び積算価格の算定方法を統一することについて検討し,統一化した算定方法によって算定した橋梁用ゴム支承の積算価格を官公庁等及び橋梁建設業者等に周知するため,(財)建設物価調査会が発行する月刊建設物価(以下「建設物価」という。)に橋梁用ゴム支承の積算価格を掲載するよう(財)建設物価調査会と交渉した。そして,このような官公庁等向け積算価格の大幅な引下げに連動して,当該積算価格を基準として定められる橋梁建設業者等に販売する価格が引き下げられることを懸念したため,各社の営業担当課長級以上の者が出席する会合を設け,橋梁用ゴム支承の販売価格を維持する対策について検討してきた。
 13社は,平成13年5月9日ころ及び同年8月23日ころ,東京都中央区所在の新田ビル会議室で開催した各社の営業担当課長級以上の者が出席した一連の会合及び相互の連絡により,官公庁等向け積算価格を大幅に引き下げた後も,橋梁用ゴム支承(ゴム体が丸型のもの,ゴム体がフランジ一体型のもの,付属部品に鋳物が含まれるもの,予備せん断構造のもの,後歪調整構造のもの,アンカーにスパイラル筋が巻いてあるもの,補修用のもの及び鉄道用のものを除く。)のうち,可動・固定支承,分散支承,すべり支承及び免震支承(以下「特定橋梁用ゴム支承」という。)の販売価格を維持するため
(a)  特定橋梁用ゴム支承のうち,可動・固定支承,分散支承及びすべり支承については,建設物価に掲載される予定の橋梁用ゴム支承の価格の算定方法を用いて算定した新積算価格と称する価格(以下「新積算価格」という。)の70パーセント,また,免震支承については新積算価格の80パーセントを目途とする価格で販売すること
(b)  前記(a)の実効を確保するため,13社があらかじめ設けていた北海道,東北,関東甲信越,中部・北陸,近畿・四国,中国及び九州の各地区の13社の営業担当者等による会合において
 橋梁建設業者等ごとに幹事会社を定めること
ii  橋梁建設業者等から特定橋梁用ゴム支承の取引に関する引き合いがあった事業者は,前記オの幹事会社に引き合いを受けたことを登録し,複数の事業者が登録した場合には,当該橋梁建設業者等の意向,当該橋梁建設業者等に対する営業活動実績,当該橋梁建設業者等が受注した橋梁工事への設計協力等の事情を勘案して,登録した事業者間の協議により当該橋梁用ゴム支承を受注すべき事業者(以下「受注予定者」という。)を決定すること
iii  受注予定者以外の引き合いを受けた事業者は,受注予定者が前記(a)記載の価格で受注できるよう協力すること
を各地区の営業担当者等に周知し,実施させること
(c)  前記(a)及び(b)については,特定橋梁用ゴム支承の積算価格が建設物価に掲載される時点から実施すること
を決定した。
(ウ)  13社は,新積算価格算定のために共通のソフトウェアを作成し,特定橋梁用ゴム支承の積算価格が平成13年12月号の建設物価に掲載されたことから,前記(イ)bの決定に基づき,平成13年12月1日受注分から,各地区において,橋梁建設業者等別に定めた幹事会社に橋梁建設業者等から引き合いのあった旨を登録して受注予定者を決定し,当該ソフトウェアを使用して算定した新積算価格に基づいて定めた価格を目途とする価格で受注予定者が受注できるようにするなどして,特定橋梁用ゴム支承の販売価格を維持していた。
(エ)  平成14年9月18日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,13社は,同日以降,前記(イ)bの決定に基づく行為を行っていない。
ウ 排除措置
  13社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  それぞれ,平成13年12月1日受注分から行った特定橋梁用ゴム支承の販売価格を 共同して維持する行為を平成14年9月18日以降行っていないことを確認すること。
(イ)  次の事項を特定橋梁用ゴム支承の販売業者及び需要者に周知徹底すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,特定橋梁用ゴム支承の販売について,前記(ア)の行為と同様の行為を行わず,各社がそれぞれ自主的に販売活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,特定橋梁用ゴム支承の販売価格及び受注すべき製造販売業者を決定しないこと。

(5)   (株)ケイ・イー・エスほか26社に対する件(平成15年(勧)第26号)


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア)  関係人27社(以下「27社」という。),三島光産(株)(以下「三島光産」という。)及び別表2記載の事業者(以下「33社」という。)は,遅くとも平成11年4月1日以降(別表1記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日ころ以降),北九州市が指名競争入札の方法により発注する下水道の施設(浄化センター,ポンプ場及び低地ポンプ場をいう。)に係る機械器具設置工事(北九州市に機械器具設置工事業のほか電気工事業又は電気通信工事業についても建設業登録をしている者のみを指名して発注する工事,ディーゼルエンジン設備に係る工事及び機械器具製造業者のみを指名して発注する工事を除く。以下「北九州市発注の特定下水道設備工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため
 北九州市から指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(a)  当該工事について受注を希望する者が1社のときは,その者を受注予定者とする
(b)  前記(a)以外のときは,当該工事に係る営業活動の実績,機械器具の種類,受注実績等の事情を勘案して,指名業者の間の話合いにより受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(イ)  33社は,前記(ア)により,北九州市発注の特定下水道設備工事の大部分を受注していた。
(ウ)
 三島光産は,遅くとも平成12年11月27日以降,前記(ア)の合意から離脱した。
 平成15年3月25日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,27社は,同日以降,前記(ア)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
  27社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成11年4月1日以降行っていた,北九州市発注の特定下水道設備工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  前記27社は,次の事項を北九州市に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,北九州市発注の特定下水道設備工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  前記27社は,今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,北九州市発注の特定下水道設備工事について,受注予定者を決定しないこと。

別表1   合意へ中途参加した事業者

別表2   事業活動の全部又は一部を取りやめている事業者


(6)   (株)大嶋組ほか10社に対する件(平成15年(勧)第30号)


ア 関係人



イ 違反事実等
(ア)  静岡県清水市(平成15年4月1日に静岡市と合併。以下「旧清水市」という。)及び清水市押切北土地区画整理組合(以下「旧清水市等」という。)は,ほ装工事として発注する工事(旧清水市が発注するものについては,地方公営企業管理者が契約者となるものを含む。以下同じ。)の大部分を指名競争入札の方法により発注しており,指名競争入札に当たっては,旧清水市が指名競争入札参加の資格要件を満たす者として登録していた有資格者の中から入札の参加者を指名していた。
 旧清水市等は,指名競争入札の方法によりほ装工事として発注する工事の大部分において,舗装技術研究会と称する任意団体の会員のみを指名していた。
(イ)  関係人11社(以下「11社」という。)及び別表記載の事業者(以下「13社」という。)は,遅くとも平成11年6月1日以降,旧清水市等が指名競争人札の方法によりほ装工事として発注する工事(以下「旧清水市等発注の特定ほ装工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため
 旧清水市等から指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(a)  当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1社のときは,その者を受注予定者とする
(b)  受注希望者が複数のときは、工事場所,過去の受注工事との関連性等の事情を勘案して,受注希望者間の話合いにより,受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 前記(イ)aの受注予定者の決定に当たって13社は,必要に応じ,13社のすべてが会員となっていた旧清水市所在の(社)清水建設業協会の会議室等において入札参加業者間の会合を開催したり,受注希望者以外の入札参加業者又は調整役等と称する者の助言を得ていた。
(ウ)  13社は,前記(イ)により,旧清水市等発注の特定ほ装工事の大部分を受注していた。
(エ)  平成15年2月25日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,11社は,同日以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
  11社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成11年6月1日以降行っていた旧清水市等発注の特定ほ装工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  次の事項を静岡市及び清水市押切北土地区画整理組合に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,旧清水市等が指名競争入札の方法によりほ装工事として発注する工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,静岡市及び清水市押切北土地区画整理組合が競争入札の方法によりほ装工事として発注する工事について,受注予定者を決定しないこと。

別表   事業活動の全部を取りやめている事業者


(7)   国土監理(株)ほか34社に対する件(平成15年(勧)第31号)及び国土監理(株)ほか42社に対する件(平成15年(勧)第32号)


ア 関係人




イ 違反事実等
(ア) 測量業務関係(平成15年(勧)第31号)
a(a)
 長野県長野建設事務所(以下「長野建設事務所」という。)は,測量業務のほとんどを指名競争入札又は指名見積り合わせ(以下「指名競争入札等」という。)の方法により発注しており,指名競争入札等に当たっては,長野県が競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者の中から指名競争入札等の参加者を指名している。
ii  長野建設事務所は,測量業務の指名競争入札等における参加者の指名に当たっては,原則として長野県内に本店を置く者を指名している。
 関係人35社(以下「35社」という。)及び(株)第一測量設計コンサルタント(以下「第一測量設計コンサルタント」という。)の36社(以下「36社」という。)は,遅くとも平成11年4月1日以降(別表1記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日ころ以降),長野建設事務所が指名競争入札等の方法により発注する測量業務のうち長野県内に本店を置く者のみが指名される業務(以下「長野建設事務所発注の特定測量業務」という。)について,受注価格の低落防止及び受注機会の均等化を図るため
(a)  長野建設事務所から指名競争入札等の参加の指名を受けた場合には,次の方法により,当該業務を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
 当該業務について受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1社のときは,その者を受注予定者とする
ii  受注希望者が複数のときは,過去の受注業務との関連性,継続性等の事情を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 36社は,前記bにより,長野建設事務所発注の特定測量業務の大部分を受注していた。
(a)  第一測量設計コンサルタントは,平成13年7月25日ころ以降,前記bの合意から離脱している。
(b)  平成14年12月12日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,35社は,同月13日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(イ)  建設コンサルタント業務関係(平成15年(勧)第32号)
a(a)
 長野建設事務所は,建設コンサルタント業務のほとんどを指名競争入札等の方法により発注しており,指名競争・入札等に当たっては,長野県が競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している有資格者の中から指名競争入札等の参加者を指名している。
ii  長野建設事務所は,建設コンサルタント業務の指名競争入札等における参加者の指名に当たっては,高度な又は特殊な技術力を要するもの以外は,原則として長野県内に本店を置く者を指名している。
 関係人43社(以下「43社」という。)及び第一測量設計コンサルタントの44社(以下「44社」という。)は,遅くとも平成11年4月1日以降(別表2記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日ころ以降),長野建設事務所が指名競争入札等の方法により発注する建設コンサルタント業務のうち長野県内に本店を置く者のみが指名される業務(以下「長野建設事務所発注の特定建設コンサルタント業務」という。)について,受注価格の低落防止及び受注機会の均等化を図るため
(a)  長野建設事務所から指名競争入札等の参加の指名を受けた場合には,次の方法により,受注予定者を決定する
 受注希望者が1社のときは,その者を受注予定者とする
ii  受注希望者が複数のときは,過去の受注業務との関連性,継続性等の事情を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 44社は,前記bにより,長野建設事務所発注の特定建設コンサルタント業務の大部分を受注していた。
(a)  第一測量設計コンサルタントは,平成13年7月25日ころ以降,前記bの合意から離脱している。
(b)  平成14年12月12日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,43社は,同月13日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
(ア)  測量業務関係(平成15年(勧)第31号)
 35社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも平成ll年4月1日以降行っていた長野建設事務所発注の特定測量業務について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を長野建設事務所に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,長野建設事務所発注の特定測量業務について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,長野建設事務所発注の特定測量業務について,受注予定者を決定しないこと。
(イ)  建設コンサルタント業務関係(平成15年(勧)第32号)
 43社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも平成11年4月1日以降行っていた長野建設事務所発注の特定建設コンサルタント業務について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を長野建設事務所に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,長野建設事務所発注の特定建設コンサルタント業務について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,長野建設事務所発注の特定建設コンサルタント業務について,受注予定者を決定しないこと。

別表1   合意へ中途参加した事業者

別表2   合意へ中途参加した事業者

(8)   日新製鋼(株)ほか5社に対する件(平成15年(勧)第33号)


ア 関係人


(注) 新日本製鐵(株)及び住友金属工業(株)は,平成15年10月1日付けで,会社分割により設立した新日鐵住金ステンレス(株)に両社のステンレス事業を承継させている。

イ 違反事実等
(ア)
 冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯には,鉄,クロム及びニッケルを主原料とするクロム・ニッケル系ステンレス(以下「ニッケル系」という。)と鉄及びクロムを主原料とするクロム系ステンレス(以下「クロム系」という。)とがある。
 日新製鋼(株)(以下「日新製鋼」という。),新日本製鐵(株)(以下「新日鐵」という。),住友金属工業(株)(以下「住友金属」という。),日本冶金工業(株)(以下「日本冶金」という。),日本金属工業(株)(以下「日金工」という。)及びJFEスチール(株)(以下「JFE」という。)の6社(以下「6社」という。)の冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯(磨帯鋼を除く。以下同じ。)の販売数量の合計は,我が国における冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の販売数量のほとんどを占めていた。
(a)  6社が冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯を販売する際には,店売り取引で販売する方法とひも付き取引で販売する方法があり,6社は,冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯のほとんどすべてをこれらの方法で販売していた。
(b)  店売り取引で販売する際には,6社は,主として汎用品を対象にして販売業者との問で冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の販売価格等について交渉して販売しており,店売り取引で販売する冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の販売価格について,販売業者と交渉して定め,当該販売業者に他の販売業者を通じて販売する場合には,その販売価格から当該他の販売業者の口銭等を差し引いたものを自らの販売価格としていた。
(c)  ひも付き取引で販売する際には,6社は,各需要者との間で冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の需要者ごとの仕様等の条件とその価格について交渉して販売しており,ひも付き取引で販売する冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の販売価格について,需要者と交渉して定め,当該需要者に販売業者を通じて販売する場合には,その販売価格から当該販売業者の口銭等を差し引いたものを自らの販売価格としていた。
 6社は,かねてから,6社の営業担当部長級の者による会合,営業担当課長級の者による会合等の6社の営業担当者による会合(以下これらの会合を「6社の会合」という。)を開催し,店売り取引で販売する冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯並びにひも付き取引で販売する冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯のうち自動車メーカー向け及び大手電機メーカー向けのものを除くもの(以下これらを「冷間圧延ステンレス鋼板」という。)の販売価格等について情報交換を行ってきた。
(イ)
 6社は,平成13年に入ってから,冷間圧延ステンレス鋼板の需要の減退等により,冷間圧延ステンレス鋼板の店売り取引での販売価格が下落したこと等から,6社の会合において,平成13年9月ころから同年10月上旬ころまでの間に,その販売価格引上げの環境整備のための出荷数量等の制限について話し合うとともに,その販売価格の引上げの具体的な幅,時期等について検討し,平成14年1月契約分から店売り取引での販売価格を,ニッケル系及びクロム系とも,現行販売価格から1キログラム当たり20円を目途に引き上げることを合意した。
 6社は,前記(イ)aの合意に基づく冷間圧延ステンレス鋼板の店売り取引での販売価格の引上げが一部の販売業者には受け入れられたものの,十分には達成されていない状況等にかんがみ,6社の会合において,平成14年5月ころから平成14年8月ころまでの間に,冷間圧延ステンレス鋼板の店売り取引での販売価格の引上げの必要性やその販売価格引上げの具体的な幅,時期等について検討し,平成14年9月契約分から店売り取引での販売価格を,ニッケル系については現行販売価格から1キログラム当たり20円,クロム系については現行販売価格から同10円をそれぞれ目途に引き上げることを合意した。
 その後,6社は,前記(イ)a又は(イ)bの合意に基づく冷間圧延ステンレス鋼板の店売り取引での販売価格の引上げ交渉を続け,その販売価格の引上げを図ってきたところ,原料であるニッケルの価格が急騰したこと等から,6社の会合において,平成15年1月ころに,冷間圧延ステンレス鋼板の店売り取引での販売価格の引上げの具体的な幅,時期等について検討し,平成15年2月契約分から店売り取引での販売価格を,ニッケル系については現行販売価格から1キログラム当たり20円,クロム系については現行販売価格から同10円をそれぞれ目途に引き上げることを合意した。
 6社は,前記(イ)a,(イ)b及び(イ)cの合意に基づき,それぞれ冷間圧延ステンレス鋼板の店売り取引での販売価格の引上げに関する社内指示等を行うとともに,販売業者に対し,その販売価格を引き上げる旨の申入れを行い,これらの合意に基づく販売価格の引上げを実現するため,各合意後も6社の会合を頻繁に開催し,販売業者とのその販売価格の引上げ交渉の状況について相互に報告し合い,また,その販売価格の最低価格を設定することについて話し合うなどして,冷間圧延ステンレス鋼板の店売り取引での販売価格を引き上げていた。
(ウ)
 6社は,冷間圧延ステンレス鋼板の需要の減退等により,冷間圧延ステンレス鋼板のひも付き取引での販売価格が下落したこと等から,6社の会合において,平成14年3月ころから同年4月上旬ころまでの間に,その販売価格の引上げの具体的な幅,時期等について検討し,冷間圧延ステンレス鋼板のひも付き取引での販売価格を,ニッケル系及びクロム系とも
(a)  平成14年5月納入分からそれぞれ現行販売価格から1キログラム当たり20円を目途に引き上げること
(b)  前記の販売価格の引上げの需要者への申入れは平成14年4月から順次行うこと
を合意した。
 6社は,前記(ウ)aの合意に基づき,冷間圧延ステンレス鋼板のひも付き取引での販売価格の引上げに関する社内指示等を行うとともに,需要者に対し,その販売価格を引き上げる旨の申入れを行い,この合意に基づく販売価格の引上げを実現するため,この合意後も6社の会合を頻繁に開催し,需要者とのその販売価格の引上げ交渉の状況について相互に報告し合うなどして,冷間圧延ステンレス鋼板のひも付き取引での販売価格を引き上げていた。
(エ)  平成15年3月12日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,6社は,同日以降,前記(イ)及び(ウ)の各合意に基づく販売価格の引上げを実現するためにそれまで頻繁に開催していた6社の会合を取りやめている等の状況にあることから,前記(イ)及び(ウ)の各合意は事実上消滅したものと認められる。
ウ 排除措置
  6社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯について
 平成14年1月契約分,平成14年9月契約分及び平成15年2月契約分からの店売り取引での販売価格の引上げ
 平成14年5月納入分からのひも付き取引での販売価格の引上げ
の各合意が平成15年3月12日以降,事実上消滅していることを確認すること。
(イ)  日新製鋼,日本冶金,日金工及びJFEの4社は,次のa及びbの事項を前記(ア)の合意に係る冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の取引先販売業者及び需要者に、新日鐵及び住友金属の2社は,次のaの事項を新日鐵住金ステンレス(株)(以下「新日鐵住金」という。)並びに前記(ア)の合意に係る冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の取引先販売業者及び需要者に,それぞれ周知すること。
 (ア)に基づいて採った措置
 今後,相互の間において又は他の事業者と共同して,前記冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の販売価格を決定せず,各社がそれぞれ自主的に決める旨
(ウ)  前記4社は,今後,それぞれ、相互に又は他の事業者と,前記2社は,今後,それぞれ,前記4社と相互に又は新日鐵住金を除く他の事業者と,前記冷間圧延ステンレス銅板及び鋼帯の販売価格の改定に関する情報交換を行わないこと。
(エ)  前記4社は,今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,前記冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の販売価格を決定しないこと。
(オ)  前記2社は,今後,それぞれ,新日鐵住金をして,前記4社と相互に若しくは他の事業者と,前記冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の販売価格の改定に関する情報交換又は前記4社と相互の間において若しくは他の事業者と共同しての同販売価格の決定をさせないこと。
(カ)  前記4社は,今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と,前記冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の販売価格の改定に関する情報交換を行うことのないよう,また,相互の間において又は他の事業者と共同して,前記冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の販売価格を決定することのないよう,営業担当者に対する独占禁止法に関する研修,法務担当者による定期的な監査等を行うために必要な措置を講じ,当該措置の内容を自社の役員及び従業員に徹底させること。
(キ)  前記2社は,今後,それぞれ,新日鐵住金が前記4社と相互に又は他の事業者と,前記冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の販売価格の改定に関する情報交換を行うことのないよう,また,前記4社と相互の間において又は他の事業者と共同して,前記冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯の販売価格を決定することのないよう,新日鐵住金に対し,その営業担当者に対する独占禁止法に関する研修,法務担当者による定期的な監査等を行うために必要な措置を講じるよう指導すること。