第2 勧告等の法的措置

2 独占禁止法第19条違反事件
(1)   ジェイフォン(株)に対する件(平成15年(勧)第21号)


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア)
 ジェイフォン(株)(以下「ジェイフォン」という。)は,電気通信事業法の規定に基づく第一種電気通信事業の許可を受けて,携帯電話機に係る電気通信役務を提供するとともに,「J―PHONE」の商標を付した携帯電話機(以下「ジェイフォンブランド携帯電話機」という。)を販売する電気通信事業者である。
 ジェイフォンは,携帯電話機を製造するメーカーにジェイフォンブランド携帯電話機の製造を委託し,そのほとんどを取引先代理店に販売し,取引先代理店又は取引先代理店から仕入れて小売販売を行う販売店(以下「取次店」という。)を通じて一般消費者に販売している。
 ジェイフォンは,ジェイフォンブランド携帯電話機の販売に関し,同社と競争関係にある電気通信事業者が販売する競合機種の市場価格等を考慮の上,参考価格又は想定価格と称する価格(以下「参考価格」という。)を定め,これに基づき,取引先代理店に対する仕切価格及び手数料を設定しているところ,茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,山梨県及び長野県の区域(以下「関東甲信地区」という。)において,かねてから,ジェイフォンブランド携帯電話機のうちカメラ付き携帯電話機の新機種及び売れ筋機種(以下「ジェイフォン主力製品」という。)の新たに携帯電話機に係る電気通信役務の契約を締結する一般消費者に対する販売(以下「新規販売」という。)において,取引先代理店に対して参考価格を通知してきた。
 ジェイフォンブランド携帯電話機のうちカメラ付き携帯電話機は,先発ブランドとして有力な地位を占め,一般消費者に高い知名度を有し,これを指名して購入する一般消費者が多いことから,携帯電話機の小売業者にとってこれを取り扱うことが営業上有利とされている。
(イ)
(a)  平成14年1月,ジェイフォンは,同年2月以降取引先代理店に供与する手数料を縮減して自社の営業費用の低減を図ることとしたことに伴い,関東甲信地区において,ジェイフォン主力製品の小売価格の水準を引き上げて取引先代理店の利益を確保するとの方針を定め,取引先代理店及び取次店が店頭又はチラシ広告において表示した価格が引き上げられると,実際の小売価格が上昇する傾向があることから,当該表示価格を参考価格で表示させることとした。
 しかし,ジェイフォンは,平成14年1月下旬ころ,関東甲信地区の取引先代理店に対し,ジェイフォン主力製品の新規販売について,同年2月1日以降に店頭又はチラシ広告において価格表示する場合には参考価格で表示すること及び取引先取次店に店頭又はチラシ広告において価格表示する場合には参考価格で表示させるようにすることを要請した。その際,ジェイフォンは,取引先代理店に対し,当該要請に応じない場合には出荷制限等も辞さない旨を伝えた。
(b)  ジェイフォンは,平成14年2月以降においても,毎月の商談等において,関東甲信地区の取引先代理店に対し,当該時期におけるジェイフォン主力製品の参考価格を通知し,店頭又はチラシ広告において価格表示する場合には参考価格で表示するよう求めてきており,同年の夏商戦において,ジェイフォン主力製品の実際の小売価格の低下による利益の減少を懸念した取引先代理店から,市場における販売価格を引き上げることを求められたことから,同年7月30日ころ及び同年9月27日ころの2回にわたり,取引先代理店に対して,価格リセットと称し,同年8月1日以降及び同年10月1日以降,取引先代理店がジェイフォン主力製品について店頭又はチラシ広告において価格表示する場合には参考価格で表示すること及び取引先取次店に店頭又はチラシ広告において価格表示する場合には参考価格で表示させるようにすることを要請した。
(c)  ジェイフォンの前記(a)及び(b)の要請を受けた取引先代理店及び取次店は,ジェイフォン主力製品を販売する他の取引先代理店及び取次店においても参考価格での価格表示が行われれば,実際の小売価格の維持が図られることから、おおむね,当該要請を受け入れ,平成14年2月1日以降,店頭又はチラシ広告における価格を参考価格により表示していた。
 ジェイフォンは、前記(イ)aの状況を維持するため,ジェイフォン主力製品について,参考価格を下回る価格で価格表示を行っている取引先代理店又は取次店がある旨の情報を得た場合には,自ら又は取引先代理店を通じて当該取引先代理店又は取次店の店頭又はチラシ広告の表示価格を参考価格に改めさせていた。これらを例示すると,次のとおりである。
(a)  平成14年6月ころ,ジェイフォンは,茨城県に本店を置く取引先代理店が,同県に所在する店舗において参考価格を下図る価格で価格表示を行っていたところ,当該価格表示に関する近隣の販売業者からの苦情を取り次ぎ,当該価格表示を取りやめるよう要請し,同代理店の店頭における表示価格を改めさせた。
(b)  平成14年10月ころ,ジェイフォンは,群馬県に本店を置く取次店が,神奈川県に所在する店舗において参考価格を下回る価格で価格表示を行っていたところ,当該価格表示に関する近隣の販売業者からの苦情を取り次ぎ,当該価格表示を取りやめるよう要請し,同店舗の店頭における表示価格を改めさせた。
 ジェイフォンの前記bの行為により,関東甲信地区における取引先代理店及び取次店は,おおむね,ジェイフォン主力製品の販売に当たり,店頭又はチラシ広告において価格表示する場合には参考価格による価格表示を行っていた。
 平成14年11月20日,本件について当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,ジェイフォンは,同年12月3日ころ以降,関東甲信地区の取引先代理店及び取次店に対し,ジェイフォン主力製品について参考価格の通知を取りやめ,店頭又はチラシ広告において価格表示する場合には参考価格で表示するようにさせる行為を取りやめている。
 排除措置
 ジェイフォンに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  新たに携帯電話機に係る電気通信役務の契約を締結する一般消費者に対するジェイフォン主力製品の関東甲信地区における販売に関し,取引先代理店及び取次店に対し,店頭又はチラシ広告においてジェイフォンが一般消費者に対する販売価格の目安として定めた参考価格を表示するようにさせていた行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  次の事項を関東甲信地区における取引先代理店,取次店及び一般消費者に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(ウ)  今後,携帯電話機の販売に関し,前記(ア)の行為と同様の行為により,取引先代理店及び取次店が店頭又はチラシ広告において表示する価格について制限しないこと。

(2)   トエンティース センチュリー フォックス ジャパン,インコーポレーテッドに対する件(平成15年(勧)第25号)


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア)
 トエンティース センチュリー フォックス ジャパン,インコーポレーテッド(以下「フォックスジャパン社」という。)は,アメリカ合衆国所在のトエンティース センチュリー フォックス インターナショナル コーポレーションから配給を受けた映画作品(以下「フォックス映画作品」という。)を国内において上映する事業者(以下「上映者」という。)に配給する事業を営む者である。
(a)  フォックスジャパン社は,フォックス映画作品を配給するに当たり,上映者と,あらかじめ,上映に関する基本的事項を定めた「上映契約(基本契約)」と題する契約(以下「基本契約」という。)を締結し,さらに,基本契約に基づき,フォックス映画作品ごと,上映者の映画館又は映画館の上映スクリーンごとに配給に係る取引条件について,「上映契約付属書」と題する契約(以下「付属契約」という。)を締結することを基本としている。
(b)  フォックスジャパン社は,基本契約及び付属契約において,上映者がフォックスジャパン社に支払うべき映画料と称するフォックス映画作品の配給に係る対価を,上映者が映画を鑑賞させる対価として入場者から徴収する入場料の総額に一定の割合を乗じた額とする旨規定し,上映者からその支払を受けることを基本としている。
 フォックスジャパン社は,平成11年1月以降,上映者に対し,「スター・ウォーズ」と題する一連の映画作品,「PLANET OF THE APES 猿の惑星」と題する映画作品、「マイノリティ・リポート」と題する映画作品等の高い人気を有したフォックス映画作品を含めて,毎年10ないし20作品程度ずつ,継続的に配給している。
(イ)
 フォックスジャパン社は,遅くとも平成11年1月以降,基本契約において
(a)  上映者が上映期間中に入場者から徴収する入場料は,付属契約において定められ,上映者は,当該入場料を徴収することを約束する旨
(b)  上映者は,あらかじめフォックスジャパン社が了承した場合を除いて,付属契約において定められる入場料を割り引かないことを約束する旨
(c)  上映者が付属契約において定められる入場料を割り引いて徴収した場合,フォックスジャパン社に支払うべき配給の対価は,付属契約において定められる入場料に基づき計算される旨
等,上映者が入場者から徴収する入場料を制限する条項を設けている。
 フォックスジャパン社は,遅くとも平成11年1月以降
(a)  基本契約に基づく付属契約の条項において,上映者が入場者から徴収する入場料について,想定される映画作品の人気の程度,映画館が所在する地域における入場料の実態等を勘案した上で,大人,大学生・高校生,中学生・小学生,60歳以上等に区分し,それぞれ具体的な金額を定め,上映者に対し,おおむね当該金額により入場料を徴収させること
(b)  上映者が,毎週特定の曜日における女性の入場者,一定の時刻以降の上映時における入場者,映画館において配布されるパンフレット,チラシ等に印刷された割引券を持参する入場者等をそれぞれ対象として,前記(イ)b(a)記載の入場料から一定の金額を割り引こうとする場合,基本契約に基づき,上映者からの事前の申出を受けてその実施の可否を決定することにより,おおむね,フォックスジャパン社の了承を受けることなく,上映者が入場者から徴収する入場料の割引を行わないようにさせること
によって,上映者が入場者から徴収する入場料について制限している。
 フォックスジャパン社が,前記(イ)bにより,上映者が入場者から徴収する入場料の具体的な金額を定めた状況及び上映者からの事前の申出を受けた入場料の割引についてその一部を実施させないこととした状況を例示すると,次のとおりである。
(a)  フォックスジャパン社は,平成11年7月ころから同年10月ころまで上映された「スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」と題する映画作品を配給するに際し,平成11年6月ころまでに,例えば,大都市の一部の上映者が従来徴収してきた入場料が大人1人当たり1,800円である場合には,これを2,000円に,地方都市の一部の上映者が従来徴収してきた入場料が大人1人当たり1,700円である場合には,これを1,800円に,それぞれ引き上げさせており,また,映画館において配布されるパンフレット,チラシ等に印刷された割引券を持参する入場者を対象とした割引を行わせないようにすることとし,その旨上映者に文書で要請し,これを取りやめさせている。
(b)  フォックスジャパン社は,平成14年7月ころから同年10月ころまで上映された「スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃」と題する映画作品を配給するに際し,平成14年6月ころまでに,例えば,大都市の一部の上映者が従来徴収してきた入場料が,大人1人当たり1,800円である場合には,これを引き上げさせるか,又は維持させるか等の検討を行い,結局,これを維持させており,また,前記(イ)c(a)記載の割引を行わせないようにすることとし,その旨上映者に口頭で要請し,これを取りやめさせている。
 排除措置
 フォックスジャパン社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  フォックス映画作品を上映者に配給するに当たり,上映者との間で締結している基本契約及び付属契約に基づき,上映者が映画を鑑賞させる対価として入場者から徴収する入場料の具体的な金額を定め,入場料の割引の実施の可否を決定するなどして,入場料を制限している行為を取りやめるとともに,前記契約のうち入場料を制限している条項を削除すること。
(イ)  次の事項を前記上映者及び一般消費者に対し,それぞれ周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(ウ)  今後,フォックス映画作品を配給するに当たり,前記(ア)の行為と同様の行為により,前記上映者が入場者から徴収する入場料を制限しないこと。

(3)   ヨネックス(株)に対する件(平成15年(勧)第27号)


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア) 
 ヨネックス(株)(以下「ヨネックス」という。)は,バドミントン用品等の製造販売業を営む者である。
 バドミントン用品には,シャトルコック,ラケット,シューズ,ウェア等があり,さらに,シャトルコックには,水鳥の羽根を用いた水鳥シャトル及び水鳥の羽根以外の素材を用いた合成シャトルがあるところ,水鳥シャトルがその大部分を占めている。
 ヨネックスは,水鳥シャトルについて,自ら又は取引先卸売業者を通じて小売業者に販売し,さらに,小売業者を通じて,中学校,高等学校,大学,実業団等のバドミントンクラブ等又はこれらの団体である各種バドミントン競技団体(以下「バドミントンクラブ等」という。)に販売している。
(a)  (財)日本バドミントン協会又は同協会に加盟するバドミントン競技団体若しくはその傘下の競技団体が主催又は主管するほとんどのバドミントン競技大会では,同協会の検定に合格した水鳥シャトルが使用されている。
(b)  バドミントン競技大会の主催者又は主管者(以下「大会主催者等」という。)は,バドミントン競技大会で使用する水鳥シャトル(以下「大会使用球」という。)を指定し,製造販売業者,小売業者等から大会使用球を購入するとともに,指定した製造販売業者等から大会使用球の提供,大会賞品の提供等の協賛を受けてバドミントン競技大会を開催しているところ,水鳥シャトルの製造販売業者等は,自社が製造販売等する水鳥シャトルが大会使用球とされると,宣伝効果が大きく,競技者への販売促進効果が見込まれることなどから,大会使用球の提供等の協賛を行っている。
 我が国における水鳥シャトルの製造販売又は輸入販売をする事業者は約20社あるところ,ヨネックスは,我が国における水鳥シャトルの販売数量が第1位であって,かつ,同社の水鳥シャトルが多くのバドミントン競技大会で使用されていることから,小売業者にとってヨネックスの水鳥シャトルを取り扱うことが営業上有利であるとされている。
(イ)
 平成5年ころから,円高傾向を背景に,海外から廉価な水鳥シャトルを輸入して通信販売等によりバドミントンクラブ等に販売する事業者(以下「輸入販売業者」という。)が水鳥シャトルの販売を開始し,経費節減等のために輸入販売業者が販売する水鳥シャトル(以下「直販シャトル」という。)を購入するバドミントンクラブ等が増えてきたためその影響を受けた取引先小売業者から直販シャトルへの対策を採るよう求められたことから,ヨネックスは,平成6年ころから,直販シャトルの販売数量が伸長することを抑止し,自社及び取引先小売業者の売上げや利益の確保を図ることを目的として
(a)  大会主催者等に対して,輸入販売業者から直販シャトルの提供等の協賛を受ける場合には自社は協賛しない旨示唆するなどして,輸入販売業者から協賛を受けないこと及び直販シャトルを大会使用球としないことを要請すること
(b)  直販シャトルに対抗するための商品として,平成6年12月ころ廉価な「スタンダード」と称する商品(以下「スタンダード」という。)を,平成7年11月ころ更に廉価な「スタンダードII」と称する商品(以下「スタンダードII」という。)を,それぞれ発売し,直販シャトルに顧客を奪われるなどの影響を受けている取引先小売業者に限定して取り扱わせて,直販シャトルを使用している顧客に販売させ,その使用する水鳥シャトルを自社のものに切り替えさせるようにすること
等の輸入販売業者及び直販シャトルに対する対策(以下「直販シャトル対策」という。)を講じて,大会主催者等を含む水鳥シャトルの顧客が直販シャトルを使用しないようにさせている。
 さらに,平成13年9月ころ,千葉県所在の輸入販売業者が,新たに水鳥シャトルの販売を開始し,通信販売によるほか,小売業者を通じた販売を企図してきたため,ヨネックスは,同輸入販売業者の直販シャトルを販売する機会を減少させ,自社及び取引先小売業者の売上げや利益の確保を図ることを目的として,同輸入販売業者に対し,前記(イ)a記載の直販シャトル対策を講ずることとしたほか、平成14年10月ころから
(a)  取引先小売業者が直販シャトルを取り扱おうとしている,又は取り扱っている場合において,直販シャトルを取り扱わない旨のヨネックスの要請に応じないときには,スタンダード及びスタンダードIIを供給しない旨示唆すること
(b)  前記輸入販売業者のホームページに直販シャトルの取扱小売業者として取引先小売業者の名称が掲載されている場合には、当該小売業者に対し,その名称の掲載をやめるよう同輸入販売業者に求めさせ,その掲載をやめさせること
等の対策を講じて,取引先小売業者が同輸入販売業者の直販シャトルを取り扱わないようにさせている。
 ヨネックスが取引先小売業者又は大会主催者等に対して行った前記(イ)a及びbの行為を例示すると次のとおりである。
(a)  ヨネックスは,平成13年3月ころ,千葉県内において全国規模のバドミントン競技大会が開催されるに当たり,その大会主催者等に対し,主にヨネックスの水鳥シャトルを大会使用球として使用すること,直販シャトルの使用は一切認めないことなどを協賛の条件として交渉し,同競技大会において直販シャトルが使用されないようにした。
(b)  ヨネックスは,平成14年11月ころ,東京都所在の取引先小売業者が前記千葉県所在の輸入販売業者の直販シャトルを取り扱おうとしたため,同小売業者に対し,当該直販シャトルを取り扱わないよう要請するとともに,当該直販シャトルを取り扱う場合にはスタンダードを供給しない旨示唆したところ,同小売業者は,当該直販シャトルを取り扱わないこととした。
(c)  ヨネックスは,平成14年11月ころ,石川県所在の取引先小売業者が前記千葉県所在の輸入販売業者のホームページにその直販シャトルの取扱小売業者として掲載されていたため,同小売業者に対し,当該直販シャトルを取り扱わないこと及び当該ホームページから同小売業者の名称を削除してもらうよう求めることを,それぞれ要請するとともに,名称が削除されない場合にはスタンダードを供給できなくなる旨示唆したところ,同小売業者は,当該直販シャトルを取り扱わないこととし,また,同輸入販売業者に対し,当該ホームページから名称を削除するよう要請したため,当該ホームページから同小売業者の名称が削除された。
 排除措置
 ヨネックスに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  自社が製造販売するバドミントン用シャトルコックのうち水鳥シャトルの取引に当たり
 取引先小売業者に対し,直販シャトルによって顧客を奪われるなどの影響を受けている取引先小売業者に限定してスタンダード及びスタンダードIIを取り扱わせて,直販シャトルを使用している顧客に販売させ,その使用する水鳥シャトルを自社のものに切り替えさせるようにすることにより,顧客が直販シャトルを使用しないようにさせるとともに,取引先小売業者が直販シャトルを取り扱おうとしている,又は取り扱っている場合において,その水鳥シャトルを取り扱わない旨の要請に応じないときには,スタンダード等の商品を供給しない旨示唆して,取引先小売業者が直販シャトルを取り扱わないようにさせている行為
 輸入販売業者のホームページにその水鳥シャトルの取扱小売業者として取引先小売業者の名称が掲載されている場合には,当該取引先小売業者に対し,その掲載をやめるよう当該輸入販売業者に求めさせ,その掲載をやめさせることにより,取引先小売業者が直販シャトルを取り扱わないようにさせている行為
 大会主催者等に対し,当該大会において,輸入販売業者から水鳥シャトルの提供等の協賛を受ける場合には自社は協賛しない旨示唆するなどして,輸入販売業者から協賛を受けないこと及び直販シャトルを当該大会使用球として指定しないことを要請することにより,直販シャトルを当該大会で使用しないようにさせている行為
を取りやめること。
(イ)  次の事項を輸入販売業者及び取引先小売業者並びに大会主催者等に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(ウ)  今後,前記(ア)の行為と同様の行為により,水鳥シャトルの取引について,自己と国内において競争関係にある輸入販売業者とその取引の相手方との取引を不当に妨害しないこと。

(4)   東急パーキングシステムズ(株)に対する件(平成16年(勧)第1号)


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア)
 東急パーキングシステムズ(株)(以下「東急パーキングシステムズ」という。)は,二段方式及び多段方式の機械式駐車装置(以下「駐車装置」という。)の販売業,保守業,保守用部品の販売業等を営む者である。
 東急パーキングシステムズは,東急車輌製造(株)(以下「東急車輌」という。)が製造する駐車装置(以下「東急車輌製駐車装置」という。)の販売業務及び据付け業務を一手に行っていたところ,平成14年7月1日,それまで東急車輌製駐車装置の保守業務,保守用部品の販売業務等を一手に行っていた東急パーキングメンテナンス(株)(以下「東急パーキングメンテナンス」という。)を吸収合併し,その後,東急車輌製駐車装置の保守業務及び保守用部品の販売業務も行っている。
(a)  駐車装置は,耐用年数が長いことから,経年変化による機能の低下がないようにするために,常時,当該駐車装置の機能,安全性及び作動の円滑性を確保するべく,適切に保守することが必要であり,また,駐車装置の管理業者,所有者等(以下「管理業者等」という。)は,管理し,又は所有する駐車装置を適切な状態に維持するよう努めている。
(b)  駐車装置の管理業者等は,通常,駐車装置の保守業を営む者(以下「保守業者」という。)との間において駐車装置の保守に係る契約(以下「保守契約」という。)を締結して,駐車装置の保守業務を委託している。
(c)  保守契約は,点検,給油,調整,若干の消耗品の交換等を行うことを内容とするパーツ・オイル・グリース契約がほとんどを占めており,パーツ・オイル・グリース契約において,駐車装置の機能維持のために部品取替え又は修理工事を行った場合,これらに要する費用は管理業者等が別途負担することになる。
(d)  駐車装置を構成する部品は,駐車装置メーカー又は駐車装置の機種ごとに仕様が異なるものが多いことから,駐車装置を適切に保守するためには,部品メーカー等が製造する当該駐車装置専用の保守用部品を必要とすることが多く,特に,自動車を載せる台であるパレットの落下を防止するためのパレット受け装置や駐車装置の制御に用いられる基板等の重要な部品に不具合や故障が生じた場合には,当該駐車装置専用の保守り用部品との取替えが必要不可欠とされている。
(e)  駐車装置は,日常使用する自動車に係るものであるため,故障等が発生した場合,保守業者は,管理業者等から迅速な修理等を求められており,それに要する保守用部品を迅速に,かつ,確実に入手できることが,契約先管理業者等の信用を保持する上で重要なものとなっている。
(a)  駐車装置の保守業務の大部分については,当該駐車装置を製造した駐車装置メーカー自ら又はその子会社である保守業者(以下「メーカー系保守業者」という。)が管理業者等と保守契約を締結しているが,一部については,メーカー系保守業者以外の保守業者(以下「独立系保守業者」という。)が管理業者等と保守契約を締結している。
(b)  独立系保守業者は,複数の駐車装置メーカーの駐車装置の保守業務を行っており,そのほとんどが一定の地域において保守業務を行う中小規模の事業者である。また,独立系保守業者は,メーカー系保守業者と比べて低廉な料金により管理業者等と保守契約を締結している。
(a)  東急パーキングシステムズは,東急車輌が全額出資しているメーカー系保守業者であって,自社が保守契約を締結している管理業者等の東急車輌製駐車装置について保守業務を行うほか,東急車輌が保守契約を締結している管理業者等の東急車輌製駐車装置について,東急車輌から委託を受けて保守業務を行っているところ,東急車輌製駐車装債のほとんどの保守業務を行っており,我が国における駐車装置の保守業務において第1位の地位を占めている。東急パーキングシステムズは,東急車輌製駐車装置専用の保守用部品を一手に供給しており,当該保守用部品は東急パーキングシステムズ以外からは入手することができない状況にある。
(b)  東急パーキングシステムズは,自社のパーツセンター及びサービス技術センターにおいて,保守用部品のうち,取替頻度の高いものなどについて,保守用部品ごとに,その年間出荷数量に基づき,最低在庫数量と最高在庫数量を定め,在庫数量が最低在庫数量に近づくと部品メーカー等に最高在庫数量と在庫数量の差に相当する数量を発注して補充を行い,常時,最低在庫数量を上回る数量の在庫を保有し,自社又は東急車輌が保守契約を締結している管理業者等(以下「自社の契約先管理業者等」という。)及び独立系保守業者に供給している。
(c)  東急パーキングシステムズは,自社の契約先管理業者等向けの保守用部品の販売価格について,原則として部品メーカー等からの仕入価格の約2倍としている。
(イ)
 東急パーキングメンテナンスは,かねてから,東急車輌製駐車装置の保守は自社が請け負うべきものとの方針の下で受注活動を行ってきたところ,独立系保守業者の受注活動が自社又は東急車輌の保守契約率(東急車輌製駐車装置について,自社又は東急車輌が保守契約を締結しているもののパレットの台数を保守契約を締結しているすべてのもののパレットの台数で除して得た率をいう。以下同じ。)の低下や保守料金の低下につながるとして,独立系保守業者に対して,原則として保守用部品を販売しないこととしていた。しかし,東急パーキングメンテナンスは,独立系保守業者に保守用部品を販売しないことは問題があるとの指摘を受けたことから,平成12年10月ころ,独立系保守業者に保守用部品を販売することに方針を転換したものの,東急車輌製駐車装置に係る保守契約率の維持及び向上を図るとともに,保守料金の低下を防止するため,独立系保守業者又は自社と取引のない管理業者等への保守用部品の販売について
(a)  納期は,部品メーカー等に新たに製造を委託して保守用部品を販売するいわゆる「生産出荷」により対応することを名目として,受注日の3か月後を目途とする
(b)  販売価格は,自社の契約先管理業者等向けの販売価格の1.5倍から2.5倍(部品メーカー等からの仕入価格の3倍から5倍に相当)を基準とする
(c)  販売数量は,部品メーカー等に新たに製造を委託する場合の最低発注可能数量を単位とする
旨の保守用部品を円滑に入手し得ないようにすることを内容とする販売方針(以下「販売方針」という。)を決定し,社内に周知した。
 その後,東急パーキングメンテナンスは,おおむね販売方針に沿って,独立系保守業者等に対する保守用部品の販売を行ってきていたが,東日本地区においては,平成13年10月ころ以降,前記(イ)a(a)については納期をおおむね入金確認日の約1か月後を目途とし,前記(イ)a(c)については販売数量を独立系保守業者の希望数量とするなどして運用してきた。
 東急パーキングシステムズは,平成14年7月1日,東急パーキングメンテナンスを吸収合併してその事業を包括的に継承したことに伴い,基本的に販売方針を踏襲しつつ,また,東日本地区における前記運用を継続していくこととして,独立系保守業者又は自社と取引のない管理業者等から,保守用部品の販売の申込みを受けた場合,おおむね次のとおり,独立系保守業者等に対し,保守用部品を販売してきている。
(a)  見積りの依頼に対して速やかに対応を行わないことが少なくない上,当該申込みに係る保守用部品を現に在庫しており,遅滞なく出荷することができるにもかかわらず,見積り時においてはいわゆる「生産出荷」を名目として出荷する時期を入金確認日の約1か月後とするなどして,著しく出荷を遅らせている。
(b)  現に在庫している保守用部品を販売しているにもかかわらず,自社の契約先管理業者等向けの販売価格の約1.5倍から2.5倍の価格を販売価格とし,西日本地区においては,前記価格を販売価格とし又は部品メーカー等に製造を委託する場合の最低発注可能数量を単位としている。
 東急パーキングシステムズの前記(イ)bの行為を例示すると次のとおりである。
(a)  京都府に本店を置く独立系保守業者は,平成14年10月ころ,滋賀県内に所在するマンションに設置されている東急車輌製駐車装置の部品であるソレノイド,基板等を取り替える必要が生じたため,東急パーキングシステムズに対し,ソレノイド5個,基板3枚等の見積りを依頼したところ,東急パーキングシステムズは,当該保守用部品の在庫を確認し,遅滞なく出荷することができるにもかかわらず,納期を入金確認日の1か月後,販売価格は自社の契約先管理業者等向けの販売価格と同額にするものの,当該保守用部品の販売価格の10パーセントに相当する約12万円の販売手数料を必要とし,販売数量をソレノイド40個,基板30枚等とする見積合計金額約137万円の見積書を約1週間後に提出した。
 当該独立系保守業者は,納期が入金確認日の1か月後では迅速な保守業務ができず,また,前記販売数量では自社の事業規模に照らして過大であり,購入金額が高額となることから,当該保守用部品を購入することを断念し,他の取引先管理業者に依頼して他の東急東輌製駐車装置の使用されていない部品を保守用部品として借用して当該マンションに設置されている東急車輌製駐車装置の部品と取り替えるとともに,壊れた部品については時間と労力を費やして修理した。
(b)  大阪府に本店を置く独立系保守業者は,東急パーキングメンテナンスに対し,兵庫県に所在するマンションに設置されている東急車輌製駐車装置の修理のためパレット受け装置4個の見積りを依頼したところ,東急パーキングメンテナンスから,販売数量を100個とするなどの回答を受けたことにより,当該保守用部品を購入することを断念した経緯があったことから,東急パーキングシステムズから保守用部品を購入することは困難であると判断していたところ,平成14年11月ころ,奈良県内に所在するマンションに設置されている東急車輌製駐車装置のソレノイドを取り替える必要が生じたことから,当該駐車装置の管理業者を通じて東急パーキングシステムズに対し,ソレノイド3個の見積りを依頼した。これに対し,東急パーキングシステムズは,当該保守用部品の在庫を確認し,遅滞なく出荷することができるにもかかわらず,納期を受注日の3か月後,販売価格は自社の契約先管理業者等向けの販売価格と同額とするものの,販売数量を40個とする旨の見積書を約1週間後に提出し,さらに,当該管理業者からの注文に対し,当該保守用部品の在庫があり遅滞なく出荷できるにもかかわらず,受注日の約3週間後に当該保守用部品を出荷した。
 当該独立系保守業者は,納期が受注日の3か月後では迅速な保守業務ができず,また,その事業規模から購入するソレノイドのほとんどが不必要であったが,当該管理業者に購入を依頼したこともあって,やむを得ずソレノイドを購入した。
(c)  東京都に本店を置く独立系保守業者は,平成14年12月ころ,神奈川県内に所在するマンションに設置されている東急車輌製駐車装置の部品である横行ローラーが故障したため,東急パーキングシステムズに対し,横行ローラー2個の見積りを依頼したところ,東急パーキングシステムズは,当該保守用部品の在庫を確認し,遅滞なく出荷することができるにもかかわらず,納期を入金確認日の約1か月後,販売価格を自社の契約先管理業者等への販売価格の約1.5倍とする旨の見積書を約10日後に提出し,さらに,当該独立系保守業者からの注文に対し,当該保守用部品の在庫があり遅滞なく出荷できるにもかかわらず,入金確認日から約1か月後に当該保守用部品を出荷した。
 東急パーキングシステムズの前記(イ)b及びcの行為により,独立系保守業者は,東急車輌製駐車装置の保守業務を迅速かつ低廉に行うことが困難となっており,このため,保守用部品の調達能力に関する信用を失うことなどにより,東急車輌製駐車装置の管理業者等との東急車輌製駐車装置についての保守契約の維持及び獲得が妨げられている。
 排除措置
 東急パーキングシステムズに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  東急車輌が製造する駐車装置の管理業者等から委託を受けて同駐車装置の保守業を営む独立系保守業者に対して,同駐車装置専用の保守用部品を供給するに当たり
 保守用部品を在庫しており,遅滞なく出荷できるにもかかわらず,部品メーカー等に新たに製造を委託して保守用部品を販売するいわゆる「生産出荷」により対応することを名目として,出荷する時期を著しく遅らせる
 合理的理由なく,自社の契約先管理業者等向けの販売価格を著しく上回る価格で販売し,又は部品メーカー等に新たに製造を委託する場合の最低発注可能数量を単位として販売することにより,前記独立系保守業者と同駐車装置の管理業者等との保守業務の取引を不当に妨害している行為を取りやめること。
(イ)  次の事項を前記駐車装置の管理業者等から委託を受けて同駐車装置の保守業を営む前記独立系保守業者に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底させること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(ウ)  今後,前記(ア)の行為と同様の行為により,前記駐車装置の管理業者等から委託を受けて同駐車装置の保守業を営む前記独立系保守業者と同駐車装置の管理業者等との保守業務の取引を不当に妨害しないこと。

(5)   (株)ポスフールに対する件(平成16年(勧)第2号)


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア)
 (株)ポスフール((株)マイカル北海道が平成14年1月7日に商号変更したもの。以下「ポスフール」という。)は,衣料服飾品,日用雑貨,食品等の小売業を営む,いわゆる総合量販店業者であって,北海道の区域において「ポスフール」と称する大規模小売店舗(「サティ」から平成14年5月に店舗名称を変更したもの。)を20店舗展開しており,これらの店舗の売場面積は,そのほとんどが3,000平方メートル以上である。
 ポスフールの売上高(平成14年3月から平成15年2月までの間)は約1260億円であり,そのうち衣料服飾品の売上高は約474億円であり,北海道の区域における総合量販店業界でいずれも第1位の地位を占めている。また,ポスフールの総店舗床面積は北海道の区域における総合量販店業界で第1位の地位にある。
 平成15年10月末において,ポスフールと継続的な取引関係にある衣料服飾品の納入業者(以下「衣料服飾品納入業者」という。)は約660名であるところ,ポスフールは,衣料服飾品納入業者と「商品売買契約書」と題する契約書によって,ポスフールが継続的に衣料服飾品納入業者から商品を買い受けるに当たっての契約を締結した上で,個別の売買を,ポスフールが衣料服飾品納入業者との問で合意した納入価格等を記載した発注書を衣料服飾品納入業者に提出する方法により行っている。これにより納入価格等は確定し,発注書に基づき納入された衣料服飾品をポスフールが検査し,注文した衣料服飾品であって,品質,数量等の問題がない場合には,ポスフールが受領した後に納入価格等が変更されることはない。
 ポスフールは,アウター(婦人外装品),スーツジャケット等の衣料服飾品の商品群(以下「販区」という。)ごとに年間及び各月に確保すべき売上高,利益額等の目標を作成し,これらを達成するよう努めているが,その目標を達成することは,容易ではない状況にある。
 衣料服飾品納入業者にとって,ポスフールは,北海道の区域において極めて有力な取引先であるとともに,衣料服飾品納入業者は,ポスフールと取引していることで他の取引先の信用を確保でき,また,秋又は冬の初めの時期における衣料服飾品の北海道での売れ筋等の情報をポスフールから入手してこれを自己の事業活動に利用することが営業戦略上重要であると認識していること等から,衣料服飾品納入業者は,ポスフールとの納入取引の継続を強く望んでいる状況にある。このため,衣料服飾品納入業者の相当数は,ポスフールとの納入取引を継続する上で,納入する商品の品質,納入価格等の取引条件とは別に,ポスフールからの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり,その取引上の地位はポスフールに対して劣っている。
(イ)  ポスフールは,かねてから,衣料服飾品納入業者への代金の支払に当たり,その支払うべき代金から一定の金額を差し引いて支払うこと(以下「代金の減額」という。)を行ってきたところ,遅くとも平成13年3月以降,各月に確保すべきものとして作成した売上高,利益額等の目標の達成が容易ではない状況にある中で,毎月,一定の利益率を確保するため,衣料服飾品納入業者が負うべき責任がないにもかかわらず,次のように,衣料服飾品納入業者に対し,代金の減額を行っていた。
 当月の販区の利益額が当該販区が当月に確保すべき利益額を下回ることが確実になると,月末に一定の利益率を確保するために必要な金額を計算し,この金額を衣料服飾品納入業者のうち当該月に当該販区での納入取引がある衣料服飾品納入業者ごとに割り振る。
 この割り振りに当たって,ポスフールは,各衣料服飾品納入業者のポスフールへの納入取引額も考慮していたものの,衣料服飾品納入業者のうち全国規模で事業活動を行っている等事業規模が大きい者に対しては,納入取引額が高くても割り振りを行わず,又は相対的に極めて少額にとどめ,事業規模の小さい衣料服飾品納入業者に対しては,相対的に多くの金額を割り振っていた。
 前記(イ)aにより割り振った金額やその算出根拠等を衣料服飾品納入業者にあらかじめ説明することなく,当該金額を当該衣料服飾品納入業者あての返品伝票に記載して起票し,当該衣料服飾品納入業者に支払うべき代金と当該金額を相殺する。
(ウ)  衣料服飾品納入業者の相当数は,当該衣料服飾品納入業者が負うべき責任がないにもかかわらず,ポスフールとの納入取引を継続して行う立場上,代金の減額を受け入れることを余儀なくされていた。
 ポスフールは,代金の減額を毎月行っており,減額した代金の総額は,年間数億円に上っていた。また,一部の衣料服飾品納入業者については,減額された代金の年間の総額がポスフールへの年間の納入取引額の1割以上に及んでいた。
(エ)  平成15年10月21日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,ポスフールは,同年11月末日ころ以降,代金の減額を取りやめている。
ウ 排除措置
 ポスフールに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  次の事項を衣料服飾品納入業者に通知すること。
 その取引上の地位が自己に対して劣っている前記納入業者に対し,当該納入業者が負うべき責任がないにもかかわらず,あらかじめ合意した納入価格等により納入された衣料服飾品の代金から一定の金額を差し引いた額を当該衣料服飾品の代金として支払う行為を取りやめている旨
 今後,前記(ア)aの行為と同様の行為を行わない旨
(イ)  今後,前記(ア)aの行為と同様の行為を行わないこと。
(ウ)  今後,前記(ア)aの行為と同様の行為を行うことのないよう,独占禁止法の遵守に関しての行動指針を作成し,当該行動指針等に基づく仕入担当者に対する独占禁止法に関する研修,法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じ,当該措置の内容を自社の役員及び従業員に周知徹底させること。

(6)   (株)山陽マルナカに対する件(平成16年(勧)第3号)


ア 関係人


イ 違反事実等
(ア)
 (株)山陽マルナカ(以下「山陽マルナカ」という。)は,岡山県,兵庫県及び大阪府の区域において,「マルナカ」と称する大規模小売店舗等で,食料品,日用雑貨品,衣料品等の小売業を営む者であり,いわゆる総合量販店業者である、
 山陽マルナカは,平成16年1月末日現在,岡山県,兵庫県及び大阪府の区域において58店舗を展開しており,そのうち34店舗の売場面積は1,500平方メートル以上又は3,000平方メートル以上であり,山陽マルナカの平成14年度における売上高は,岡山県の区域に本店を置く総合量販店業界において第1位の地位を占めている。
 山陽マルナカと継続的な取引関係にある食料品,日用雑貨品,衣料品等の納入業者(以下「納入業者」という。)は,約350名であるところ,山陽マルナカは,納入業者との間の納入取引のほとんどすべてについて買取りを条件としており,買取りを条件とした商品については,納入業者との間で事前に納入価格等の取引条件を交渉の上決定し,個別の売買を,当該取引条件に基づいて,各店舗から「EOS」と称する電子注文システムを用いて納入業者に発注する方法により行っている。これにより納入価格等の取引条件は確定し,当該商品を山陽マルナカが受領した後に納入価格等の取引条件が変更されることはない。
 納入業者にとって,山陽マルナカは有力な取引先であり,納入業者の多くは,山陽マルナカとの納入取引の継続を強く望んでいる状況にある。このため,納入業者の多くは,山陽マルナカとの納入取引を継続する上で,納入する商品の品質,納入価格等の取引条件とは別に,山陽マルナカからの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり,その取引上の地位は山陽マルナカに対して劣っている。
(イ)
(a)  山陽マルナカは,かねてから,自社の店舗を改装するに当たり行っている「売り尽くしセール」と称するセール(以下「売り尽くしセール」という。)において,在庫商品(売り尽くしセールのために発注し,当該売り尽くしセール前日までに納品させたものを含む。以下同じ。)を売り尽くしセール開始前の店頭表示価格の2割引ないし4割引の価格で販売しているところ,売り尽くしセールにおいて値引販売をした在庫商品について,仕入部門ごとに,当該値引販売において値引きした額に相当する額として次の方法により算出した額を,当該在庫商品を納入した納入業者に支払うべき代金の額から減じている。
 レトルト食品等の食料品の仕入れを担当する食品課にあっては,売り尽くしセール期間中の店頭表示価格からの値引額の合計を,過去3か月間の仕入総額に占める各納入業者からの仕入額の割合に応じて按分する方法
ii  チョコレート等の菓子類の仕入れを担当する菓子課にあっては,在庫商品数に売り尽くしセール開始前の店頭表示価格を乗じて得た金額に40パーセントを乗じる方法
iii  洗剤,ペット用品等の日用雑貨品の仕入れを担当する住居関連部にあっては,在庫商品数から売り尽くしセール終了後に売れ残った商品数を減じた数に売り尽くしセール開始前の店頭表示価格を乗じて得た金額に50パーセントを乗じる方法
iv  婦人服等の衣料品の仕入れを担当する衣料品部にあっては,在庫商品数に売り尽くしセール開始前の店頭表示価格を乗じて得た金額におおむね23パーセントないし30パーセントを乗じる方法
 ハム等の畜産加工品の仕入れを担当する畜産部にあっては,売り尽くしセール開始前の店頭表示価格に50パーセントを乗じて得た額とその仕入価格との差額に売り尽くしセール期問中の当該商品の販売数量を乗じる方法
vi  牛乳等の日配食品の仕入れを担当する日配品課にあっては,在庫商品数の半数にその仕入価格を乗じる方法
(b)  さらに,山陽マルナカは,売り尽くしセール終了後に売れ残った商品について,食料品,日用雑貨品,衣料品等の仕入部門ごとに,当該売れ残った商品の全部又は一部を返品するとともに,返品した商品の代金に相当する額を,当該納入業者に支払うべき代金の額から減じている。
(c)  前記(イ)a(a)の代金の減額又は同(b)の商品の返品を受けた納入業者の多くは,山陽マルナカとの納入取引を継続して行う立場上,納入業者が負うべき責任がなく,その意思によるものではないにもかかわらず,代金の減額又は商品の返品を受け入れることを余儀なくされている。
 山陽マルナカの前記(イ)aの行為について例示すると次のとおりである。
(a)  山陽マルナカは,平成15年1月16日ころから同月19日ころまで開催した岡山市益野町所在の益野店の売り尽くしセールにおいて,在庫商品を値引販売し,当該商品を納入した納入業者の少なくとも24社に対し,総額約1500万円をこれらの納入業者に支払うべき代金の額から減じた。
(b)  山陽マルナカは,前記(イ)b(a)記載の売り尽くしセール終了後に売れ残った商品を納入した納入業者の少なくとも14社に対し,総額約400万円に相当する当該商品を返品し,これらの納入業者に支払うべき代金の額から減じた。
(ウ)
 山陽マルナカは,かねてから,自社の店舗の新規オープン及び改装オープン時のオープンセールに際し,自社の販売業務のために,納入業者が納入した商品の陳列補充等の作業(以下「陳列等作業」という。)を納入業者に行わせることとし,あらかじめ納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,納入業者との間の納入取引に影響を及ぼし得る仕入担当者(以下「バイヤー」という。)から,納入業者に対し,自社が派遣を受けることを必要とする店舗,派遣日,人数等を連絡することのみで,納入業者の従業員等を派遣するよう要請している。
 これらの要請は,例えば、平成15年1月ころから同年12月末ころまでに,前記オープンセールにあっては新規オープンの3店舗及び改装オープンの15店舗の計18店舗において行われた。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,山陽マルナカとの納入取引を継続して行う立場上,陳列等作業を行うためのものであるにもかかわらず,その要請に応じることを余儀なくされている。
 山陽マルナカの前記(ウ)aの行為について例示すると次のとおりである。
(a)  山陽マルナカは,平成15年7月30日ころから同年8月9日ころまで開催した大阪市住之江区所在の住之江店の新規オープン時のオープンセールに際し,同期間中に陳列等作業を行わせるため,バイヤーから,納入業者のうち主として食料品,日用雑貨品及び衣料品を納入している者の少なくとも22社に対し,納入業者の従業員等の派遣を要請し,この要請を受けた納入業者は,少なくとも同期間中に延べ約780名の納入業者の従業員等を派遣して陳列等作業を行った。
(b)  山陽マルナカは,平成15年4月4日ころから同月13日ころまで開催した岡山県倉敷市有城所在の天城店の改装オープン時のオープンセールに際し,同期間中に陳列等作業を行わせるため,バイヤーから,納入業者のうち主として食料品,日用雑貨品及び衣料品を納入している者の少なくとも18社に対し,納入業者の従業員等の派遣を要請し,この要請を受けた納入業者は,少なくとも同期間中に延べ約300名の納入業者の従業員等を派遣して陳列等作業を行った。
(c)  山陽マルナカは,陳列等作業に際し納入業者の従業員等の派遣要請に応じた納入業者に対してはその対価を支払っていない。
(エ)
 山陽マルナカは,かねてから,毎年3月ころ及び9月ころ,本店の特設会場において,納入業者等を対象とする「お誂え紳士服特別ご招待会」と称する紳士服及び婦人服(以下「紳士服等」という。)の展示販売会を開催しているところ,同展示販売会に際して,あらかじめ,山陽マルナカの部門ごとに販売目標数を設定し,従業員による販売を奨励するため納入業者等に紳士服等を販売したときはその販売代金の2パーセントに相当する額の報奨金を当該従業員に支給する等の報奨金制度を設けた上,バイヤーから,納入業者との間の納入取引関係を利用して納入業者に対し,前記展示販売会において紳士服等を購入するよう要請している。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,山陽マルナカとの納入取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
 山陽マルナカの前記(エ)aの行為について例示すると,山陽マルナカは,平成15年9月22日ころから同月29日ころまで開催した前記展示販売会に際し,あらかじめ納入業者に対する紳士服等の販売目標数を184着に設定した上,仕入部門ごとに各バイヤーが,納入業者に対し,紳士服等の購入を要請し,これにより納入業者等は231着を購入した。
(オ)
 山陽マルナカは,かねてから,大規模小売店舗10数店舗においておおむね四半期ごとに実施する棚卸しに際し,自社の棚卸し業務のために,棚卸し作業を当該店舗ごとに納入業者に行わせることとし,あらかじめ納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について納入業者と合意することなく,バイヤーから,納入業者との間の納入取引関係を利用して納入業者に対し,自社が派遣を受けることを必要とする店舗,派遣日,人数等を連絡することのみで,納入業者の従業員等を派遣するよう要請している。
 これらの棚卸し作業についての納入業者の従業員等の派遣の要請は平成15年1月末,同年3月末,同年6月末及び同年9月末に山陽マルナカの大規模小売店舗10数店舗における棚卸しに際して行われた。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,山陽マルナカとの納入取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
 山陽マルナカの前記(オ)aの行為について例示すると,山陽マルナカは,平成15年9月30日ころ及び同年10月1日ころに大規模小売店舗13店舗において実施した棚卸しに際し,棚卸し作業を行わせるため,バイヤーから,納入業者のうち主として日用雑貨品及び衣料品を納入している者の少なくとも68社に対し,納入業者の従業員等の派遣を要請し,この要請を受けた納入業者は,少なくとも前記2日間に延べ159名の納入業者の従業員等を派遣して棚卸し作業を行った。
 平成15年10月22日,本件について,当委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,山陽マルナカは,同年3月末及び同年9月末に実施した棚卸しに際して行った納入業者の従業員等の派遣要請に応じた大部分の納入業者に対し,その対価として一人当たり1時間1,000円で算出した額を,同年10月末ころ又は平成16年1月ころに,支払う理由,金額の算出根拠等について何ら説明することなく支払っているが,当該派遣要請に応じた一部の納入業者に対してはその対価を支払っておらず,また,平成15年1月末及び同年6月末の棚卸しに際して行った納入業者の従業員等の派遣要請に応じた納入業者に対しても,その対価を支払っていない。
ウ 排除措置
 山陽マルナカに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  売り尽くしセールに際し,その取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者に対し,買取りを条件として納入された商品について,当該納入業者が負うべき責任がないにもかかわらず,店頭表示価格から値引販売をした在庫商品の値引額に相当する額を支払うべき代金の額から減じ,又は当該納入業者が負うべき責任がなく,当該納入業者の意思によらないにもかかわらず,当該セール終了後に売れ残った商品の全部又は一部を返品するとともに,その返品した商品の代金に相当する額を支払うべき代金の額から減じている行為を取りやめること。
(イ)  自社の店舗の新規オープン及び改装オープン時のオープンセールに際し,その取引上の地位が自社に対して劣っている前記納入業者に対し,陳列等作業を行わせるために,その従業員等を派遣するよう要請している行為を取りやめること。
(ウ)  自社の特設会場における「お誂え紳士服特別ご招待会」と称する紳士服等の展示販売会に際し,納入取引関係を利用して前記納入業者に対し,紳士服等を購入するよう要請している行為を取りやめること。
(エ)  棚卸しに際し,納入取引関係を利用して前記納入業者に対し,自社の棚卸しのための作業を行わせるために,その従業員等を派遣するよう要請している行為を取りやめること。
(オ)  次の事項を前記納入業者に通知すること。
 前記(ア)ないし(エ)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)ないし(エ)の行為と同様の行為を行わない旨
(カ)  今後,前記(ア)ないし(エ)の行為と同様の行為を行わないこと。
(キ)  今後,前記(ア)ないし(エ)の行為と同様の行為を行うことがないよう,独占禁止法の遵守に関しての行動指針を作成し,当該行動指針等に基づく仕入担当者に対する独占禁止法に関する研修,法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じ,当該措置の内容を自社の役員及び従業員に周知徹底させること。