第4 課徴金納付命令審決

平成13年(判)第17号土屋企業株式会社に対する審決


(1) 被審人


(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が(株)石井工務店ほか37名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,土屋企業(株)(以下「土屋企業」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,土屋企業に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 担当審判官の作成した審決案に対し,土屋企業が異議の申立てをしたので,当委員会は,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。(なお,本件については,平成15年7月12日に審決取消しを求める訴えが提起され,平成16年2月20日に請求を一部認容する判決があり,平成15年度末現在,最高裁判所に当委員会が上告受理申立て中である[本章第7参照]。)。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 課徴金に係る違反行為
 土屋企業は,(株)石井工務店らと共同して,町田市が指名競争入札又は見積り合わせの方法により発注する土木一式工事(町田市内に本店又は主たる事務所を有する者のみが指名業者として選定される工事に限る。以下「町田市発注の特定土木一式工事」という。)について,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,町田市発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア)  土屋企業は,建設業を営む者であり,平成11年中小企業基本法平成11年中小企業基本法改正法(平成11年法律第146号。以下「平成11年中小企業基本法改正法」という。)附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する業者である。
(イ)  土屋企業が前記ア記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成9年3月30日から平成12年3月29日までであり,この期間における土屋企業の売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については3件の契約により定められた対価の額を合計した1億7836万350円であり,同日以後については1件の契約により定められた対価の額の1729万1400円である。
ウ 主要な争点
 土屋企業が受注した4件の工事のうち2件(都市計画道路3・4・33号線(学園その2)道路築造工事〔以下「都市計画道路工事」という。〕,堺752・764号線道路改良工事〔以下「堺道路工事」という。〕)について,課徴金算定の対象となるか否か。
エ 主要な争点に対する判断
(ア) 都市計画道路工事
 都市計画道路工事は,本件違反行為の対象役務である町田市発注の特定土木一式工事に該当するところ,当該工事については,受注希望者である高尾建設(株)(以下「高尾建設」という。)及び土屋企業の間の話合いによっては受注予定者を決定することができず,入札では,受注予定者が決まらないまま,高尾建設と土屋企業とのいわばたたき合いによって土屋企業が落札・受注したのであるから,この事実をもって,土屋企業が本件基本合意に基づいて受注予定者に決定され,当該工事を受注したものということはできない。
 しかしながら,土屋企業が,本件基本合意を認識しながら,高尾建設の営業担当取締役(当時)に受注希望を述べ,受注希望者である高尾建設の営業担当取締役との間で受注予定者を決めるための話合いを行っており,これをもって,当該工事が本件基本合意による受注調整手続に上程されたものと認めることができること,受注希望を有しない土屋企業及び高尾建設以外の12社の指名業者は,高尾建設から入札価格の連絡を受けるなどして,受注希望者である高尾建設あるいは土屋企業のいずれかが受注できるような価格で入札するという競争制限的な行為を行ったことを総合すれば,当該工事について具体的に競争制限効果が発生したものと評価できる。
(イ) 堺道路工事
 堺道路工事は,本件違反行為の対象役務である町田市発注の特定土木一式工事に該当するところ,当該工事は,本件基本合意における受注予定者の決定の際の考慮要素からすれば,(株)興新(以下「興新」という。)が受注希望を表明すれば受注予定者とされることが見込まれたが,土屋企業は,興新に他の指名業者の了解を得た旨を連絡し,興新もこれを了解して,土屋企業が受注予定者であるとして入札に臨んだものと推認でき,入札結果をみても,土屋企業の落札価格を基準にして最高価格までわずか4%という接近した範囲にすべての入札価格が納まっているのであり,これらの事実からすれば,本件基本合意に基づく土屋企業を受注予定者とする受注調整が成立していたことを推認することができる。
(4) 法令の適用
 土屋企業の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項,改正後の独占禁止法第7条の2第2項及び独占禁止法第7条の2第4項を適用して,土屋企業が国庫に納入しなければならない課徴金の額は586万円である。
(5) 命じた措置
 土屋企業は,課徴金として586万円を平成15年8月15日までに国庫に納付しなければならない。

平成14年(判)第35号関東造園建設協同組合に対する審決


(1) 被審人


(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が(株)富士植木ほか25名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,関東造園建設協同組合(以下「関東造園」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,関東造園に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 課徴金に係る違反行為
 関東造園は,(株)富士植木らと共同して,東京都が指名競争入札の方法により発注する予定価格が8000万円以上の造園工事(以下「東京都発注の大型造園工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,東京都発注の大型造園工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア)  関東造園は,造園工事業を営む者であり,平成11年中小企業基本法改正法(平成11年法律第146号)の施行日である平成11年12月3日前に係る行為については,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7第2項第1号の規定する要件に該当する事業者である。
(イ)  関東造園が前記ア記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成9年12月13日から平成12年12月12日までであり,この期間における関東造園の売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については1件の契約により定められた対価の額の1億689万円である。
ウ 主要な争点
 課徴金の算定の基礎となる売上額が,本件請負契約により定められた対価の額の1億689万円であるか否か。
 なお,本件の審判開始決定書においては,関東造園に適用される課徴金算定率について,100分の6であるとされ,関東造園は,軽減算定率(100分の3)が適用されるべきであると主張して,これを争っていたが,審査官は,軽減算定率が適用されると改めて主張した。
エ 主要な争点に対する判断
(ア)  課徴金の算定の基礎となる売上額
 当委員会は,事業者が,不当な取引制限等で,商品又は役務の対価に係るもの等をしたときは,事業者に対し,実行期間における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に一定率を乗じて得た額に相当する額の課徴金の納付を命ずることとされている。
 本件違反行為の対象役務は,本案審決において,東京都発注の大型造園工事とされている。関東造園が実行期間中において締結した東京都発注の大型造園工事に係る契約は本件請負契約の1件であるから,本件請負契約の対価の額すなわち契約額である1億689万円が,関東造園の課徴金算定の基礎となる売上額となる。
(イ)  差別的な取扱いの有無
 関東造園は,違反行為者のうち,契約額の全額に対して課徴金を賦課されたのは事業協同組合である関東造園のみであり,他の行為者である共同企業体の構成員は契約額の一部である当該構成員の売上額をもって算定されているにすぎず,これは,不当に差別的な取扱いであると主張する。
 しかしながら,当委員会は,課徴金の額の算定について,裁量の余地はなく,本案審決の認定する違反行為者は,関東造園については構成員ではなく関東造園自体であり,共同企業体については,その構成員のうち東京都から第1グループの業者として選定された事業者であることは文面上明らかであり,前記のような課徴金の算定をもって関東造園を不当に差別的に取り扱ったものということはできない。
(ウ)  事業協同組合の特殊性等
 関東造園は,事業協同組合の事業は組合員のためのもので,組合会計上からも法定の目的に沿った利益しか蓄積を認められておらず,利益が発生したならば,組合員に配分されることからすれば,本件請負契約の契約額全額を課徴金算定の基礎となる売上額とすることは不当であり,また,不当な利得を国庫に返還させることが課徴金の趣旨であれば,利得を収得したこととなる組合員の売上げに課徴金を賦課すべきであると主張する。
 しかしながら,当委員会は,課徴金の額の算定に当たり,法の定める算定基準とはされない当該事業者の事業目的や利益配分方法等をしんしゃくすることはできない。したがって,関東造園の当該主張は採用できない、
 関東造園は,関東造園に対する課徴金の算定の基礎となる売上額は,本件請負契約の契約額の40%(筆頭構成員の売上額相当)又は25%(組合の受け取る手数料の上限に相当)であるべきであると主張するが,本件請負契約の契約額の一部の額をもって課徴金の算定の基礎となる売上額とすることはできないので,関東造園の当該主張は採用できない。
(エ)  関東造園に適用すべき課徴金算定率
 独占禁止法第7条の2第2項の趣旨は,事業規模の小さい企業に対して軽減算定率を適用することにあり,「会社」又は「個人」と事業規模において同等というべき事業者との間で軽減算定率の適用上取扱いを異にしなければならない理由はない(協業組合カンセイ事件最高裁判決)。
 関東造園固有の出資の総額に各組合員の資本の総額を合わせた出資の総額は1億9000万円であり,関東造園のものに各組合員のものを合わせた常時使用する従業員の総数は117名であるので,従業員数によれば,関東造園は,軽減算定率である100分の3が適用される。
(4) 法令の適用
 関東造園の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項及び独占禁止法第7条の2第4項の規定を適用して,関東造園が国庫に納入しなければならない課徴金の額は320万円である。
(5) 命じた措置
 関東造園は,課徴金として320万円を平成15年11月13日までに国庫に納付しなければならない。

平成15年(判)第16号宮本建設株式会社に対する審決


(1) 被審人


(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が(株)村上組ほか99名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,宮本建設(株)(以下「宮本建設」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,宮本建設に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 担当審判官の作成した審決案に対し,宮本建設が異議の申立てをしたので,当委員会は,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 課徴金に係る違反行為
 宮本建設は,(株)村上組らと共同して,高松市土木部が香川県内に本店又は主たる事務所を置く事業者のみを指名して指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事(以下「高松市発注の特定土木工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,高松市発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア)  宮本建設は,建設業を営む者であり,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によることとされる改正後の独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する事業者である。
(イ)  宮本建設が前記ア記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成10年1月22日から平成13年1月16日までであり,この期間における宮本建設の売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については6件の契約により定められた対価の額を合計した1億6428万5100円であり,同日以後については4件の契約により定められた対価の額の6777万7500円である。
ウ 主要な争点
 宮本建設が受注した林道北谷菅沢線開設工事等3件(以下「林道工事」という。)について,課徴金算定の対象物件に該当するか否か。
エ 主要な争点に対する判断
 高松市事務分掌条例及び規則によれば,高松市土木部において契約に関する事項を取り扱うものと認められ,高松市土木部が発注する工事とは,高松市土木部が工事請負契約に関する事項を取り扱っている工事をいうものと認められる。実際の林道工事の発注に当たっても,高松市土木部監理課が土木一式工事として指名業者の選定から契約までの事務を行ったのであるから,高松市土木部が発注する工事を,土木部所属の各課が契約依頼課として発注する工事であるとあえて解すべき論拠も見出し難い。
 よって,被審人の主張は採用できず,林道工事は,高松市発注の特定土木工事に該当するものと認められる。
(4) 法令の適用
 宮本建設の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項,改正後の独占禁止法第7条の2第2項及び第4項を適用して,宮本建設が国庫に納入しなければならない課徴金の額は696万円である。
(5) 命じた措置
 宮本建設は,課徴金として696万円を平成16年2月13日までに国庫に納付しなければならない。

平成15年(判)第19号瀬戸産業株式会社に対する審決


(1) 被審人


(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が(株)村上組ほか99名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,瀬戸産業(株)(以下「瀬戸産業」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,瀬戸産業に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 担当審判官の作成した審決案に対し,瀬戸産業が異議の申立てをしたので,当委員会は,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 課徴金に係る違反行為
 瀬戸産業は,(株)村上組らと共同して,高松市土木部が香川県内に本店又は主たる事務所を置く事業者のみを指名して指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事(以下「高松市発注の特定土木工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,高松市発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規程する役務の対価に係る行為である。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア)  瀬戸産業は,建設業を営む者であり,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によることとされる改正後の独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する事業者である。
(イ)  瀬戸産業が前記ア記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成10年1月22日から平成13年1月16日までであり,この期間における瀬戸産業の売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については7件の契約により定められた対価の額を合計した5433万8550円であり,同日以後については3件の契約により定められた対価の額の3916万5000円である。
ウ 主要な争点
 瀬戸産業が受注した林道八丁線開設工事等3件(以下「林道工事」という。)について,課徴金算定の対象物件に該当するか否か。
エ 主要な争点に対する判断
 高松市事務分掌条例及び規則によれば,高松市土木部において契約に関する事項を取り扱うものと認められ,高松市土木部が発注する工事とは,高松市土木部が工事請負契約に関する事項を取り扱っている工事をいうものと認められる。実際の林道工事の発注に当たっても,高松市土木部監理課が土木一式工事として指名業者の選定から契約までの事務を行ったのであるから,高松市土木部が発注する工事を,土木部所属の各課が契約依頼課として発注する工事であるとあえて解すべき論拠も見出し難い。
 よって,瀬戸産業の主張は採用できず,林道工事は,高松市発注の特定土木工事に該当するものと認められる。
(4) 法令の適用
 瀬戸産業の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項,改正後の独占禁止法第7条の2第2項及び第4項を適用して,瀬戸産業が国庫に納入しなければならない課徴金の額は280万円である。
(5) 命じた措置
 瀬戸産業は,課徴金として280万円を平成16年2月13日までに国庫に納付しなければならない。

平成15年(判)第32号株式会社関東建設に対する審決


(1) 被審人


(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が初雁興業(株)ほか17名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,(株)関東建設(以下「関東建設」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,関東建設に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 課徴金に係る違反行為
 関東建設は,初雁興業(株)らと共同して,川越市(川越市水道事業管理者を含む。)が土木一式工事(単価契約の方法により発注するものを除く。以下同じ。についてAの等級に格付し,埼玉県川越市内に本店又は営業所等を置く者のみを入札参加者として一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事(以下「川越市発注の特定土木工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,川越市発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア)  関東建設は,建設業を営む者であり,平成11年中小企業基本法改正法の施行日である平成11年12月3日前に係る行為については,同法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する事業者である。
(イ)  関東建設が前記ア記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成10年5月9日から平成13年5月8日までであり,この期間における関東建設の売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については3件の契約により定められた対価の額を合計した2億2194万9000円である。
ウ 主要な争点
 関東建設が受注した工事3件のうち,1件不老川第7―1号汚水幹線築造工事(第5工区)(以下「不老川工事」という。)について,勧告審決の名あて人でない埼玉ライナー(株)(以下「埼玉ライナー」という。)が相指名業者となっているところ,当該物件が課徴金算定の対象物件に該当するか否か。
エ 主要な争点に対する判断
(ア)  課徴金の対象についての基本的な考え方
 独占禁止法第7条の2第1項は,事業者が役務の対価に係る不当な取引制限をした場合には,当委員会は,事業者に対し,当該行為の実行としての事業活動が行われた期間における「当該商品又は役務」の売上額を基礎として計算された額の課徴金の納付を命ずる旨規定している。
 そして,ここにいう「当該商品又は役務」とは,当該違反行為の対象になった商品又は役務全体を指すが,本件のような受注調整の場合には,基本合意に基づいて受注予定者が決定されることによって,具体的に競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解するべきである。
(イ)  不老川工事について
 不老川工事は,本件違反行為の対象役務である川越市発注の特定土木工事に該当するところ,関東建設が本件基本合意に基づいて受注予定者に決定され,関東建設は,埼玉ライナーを含む相指名業者に対し入札価格の連絡を行い,相指名業者の協力を得て,関東建設が同工事を落札したものであると認められるので,不老川工事は,本件基本合意に基づいて受注予定者が決定され,具体的に競争制限効果が発生するに至った物件ということができるのであり,課徴金の算定対象となる。
(4) 法令の適用
 関東建設の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項及び第4項の規定を適用して,関東建設が国庫に納入しなければならない課徴金の額は665万円である。
(5) 命じた措置
 関東建設は,課徴金として665万円を平成16年3月25日までに国庫に納付しなければならない。

平成15年(判)第14号及び第17号河西建設株式会社に対する審決


(1) 被審人


(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が(株)村上組ほか99名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,河西建設(株)(以下「河西建設」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,河西建設に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 担当審判官の作成した審決案に対し,河西建設が異議の申立てをしたので,当委員会は,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 課徴金に係る違反行為
(ア)  香川県関係(平成15年(判)第14号)
 河西建設は,(株)村上組らと共同して,香川県が同県高松土木事務所の管轄区域(高松市,香川県香川郡及び同県木田郡(三木町を除く。)の区域。)を施工場所とし香川県内に本店又は主たる事務所を置く事業者のみを指名して同土木事務所において指名競争入札を行い土木一式工事として発注する工事(以下「香川県発注の特定土木工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,香川県発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
(イ)  高松市関係平成15年(判)第17号)
 河西建設は,(株)村上組らと共同して,高松市土木部が香川県内に本店又は主たる事務所を置く事業者のみを指名して指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事(以下「高松市発注の特定土木工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,高松市発注の特定上木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア)  香川県関係(平成15年(判)第14号)
 河西建設は,建設業を営む者であり,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によることとされる改正後の独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する事業者である。
 河四建設が前記ア(ア)記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成10年3月23日から平成13年1月16日までであり,この期間における河西建設の売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については2件の契約により定められた対価の額を合計した5806万5000円であり,同日以後については2件の契約により定められた対価の額の1億1671万8000円である。
(イ)  高松市関係(平成15年(判)第17号)
 河西建設は,建設業を営む者であり,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によることとされる改正後の独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する事業者である。
 河西建設が前記ア(イ)記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は、平成10年3月27日から平成13年1月16日までであり,この期間における河西建設の売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については4件の契約により定められた対価の額を合計した1億5586万3050円であり,同日以後については3件の契約により定められた対価の額の3738万円である。
ウ 主要な争点
(ア)  香川県関係(平成15年(判)第14号)
 河西建設が受注した国分寺綾南線道路改修工事(第4工区)について,課徴金算定の対象物件に該当するか否か。
(イ)  高松市関係(平成15年(判)第17号)
 河西建設が受注した木太鬼無線道路改良工事及び木太鬼無線関連水路工事について,課徴金算定の対象物件に該当するか否か。
 主要な争点に対する判断(平成15年(判)第14号及び第17号)
 課徴金の計算の基礎となる当該役務とは,当該違反行為の対象になった役務全体を指すが,本件のような受注調整の場合には,基本合意に基づいて受注予定者が決定されることによって,具体的に競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される。
 争点に係る物件については,本件違反行為の対象役務である香川県発注の特定土木工事又は高松市発注の特定土木工事に該当し,また,各物件の指名業者のうち受注希望者が河西建設だけであったことから河西建設が受注予定者となり受注したのであるから,それぞれ,基本合意に基づいて受注予定者が決定され,具体的に競争制限効果が発生するに至った物件ということができ,課徴金算定の対象となる。
(4) 法令の適用
ア 香川県関係(平成15年(判)第14号)
 河西建設の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項,改正後の独占禁止法第7条の2第2項及び独占禁止法第7条の2第4項を適用して,河西建設が国庫に納入しなければならない課徴金の額は524万円である。
イ 高松市関係(平成15年(判)第17号)
 河西建設の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規程する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項,改正後の独占禁止法第7条の2第2項及び第4項を適用して,河西建設が国庫に納入しなければならない課徴金の額は579万円である。
(5) 命じた措置
ア 香川県関係(平成15年(判)第14号)
 河西建設は,課徴金として524万円を平成16年4月8日までに国庫に納付しなければならない。
イ 高松市関係(平成15年(判)第17号)
 河西建設は,課徴金として579万円を平成16年4月8日までに国庫に納付しなければならない。

平成15年(判)第1号株式会社若鈴に対する審決


(1) 被審人


(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が杉山コンサルタンツ(株)ほか25名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,(株)若鈴(以下「若鈴」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,若鈴に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 課徴金に係る違反行為
 若鈴は,杉山コンサルタンツ(株)らと共同して,三重県が指名競争入札の方法により7県民局の農林商I部,農林水産商工部,農政部及び建設部において測量業務(航空測量業務を除く。),建設コンサルタント業務(建築コンサルタント業務を除く。)又は補償コンサルタント業務として発注する業務(これらの業務のいずれかを併せて発注する業務を含み,単価契約に係る業務を除く。)のうち三重県内に本店を置く事業者のみが指名される業務(以下「三重県発注の特定測量・設計等業務」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,三重県発注の特定測量・設計等業務の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,独占禁止法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア)  若鈴は,測量業,建設コンサルタント業又は補償コンサルタント業を営む者であり,平成11年中小企業基本法改正法の施行日である平成11年12月3日前に係る行為については,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する事業者である。
(イ)  若鈴が前記ア記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成10年6月1日から平成13年5月30日までであり,この期間における若鈴の売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については112件の契約により定められた対価の額を合計した9億4359万8250円であり,同日以後については89件の契約により定められた対価の額の6億5262万2250円である。
ウ 主要な争点
(ア)  B等級の事業者等が入札に参加した40物件を課徴金の対象外とすべきであるか否か(B等級の事業者等を違反行為者としなかったことは不公平な措置であるか否か。)。
(イ)  売上額から消費税を控除すべきであるか否か。
エ 主要な争点に対する判断
(ア)  課徴金の対象についての基本的な考え方
 「当該商品又は役務」とは,当該違反行為の対象とされた商品又は役務全体を指すが,本件のような受注調整の場合には,基本合意に基づいて受注予定者が決定されることによって,具体的に競争制限効果が発生するに至ったものを指すと解すべきである。
(イ)  40物件の課徴金の対象該当性
 本件40物件は,本件違反行為の対象役務である三重県発注の特定測量・設計等業務に該当するところ,本件40物件については,本案審決の名あて人である33社(以下「33社」という。)のうちの相指名業者との間で本件基本合意に基づいて指名状況を把握した上で若鈴が受注予定者に決定されているので,本件40物件は本件基本合意に基づいて受注予定者が決定されたものと認めることができる。
 そして,本件40物件は本案審決の名あて人ではないB等級又はC等級に格付された事業者も指名された混合指名物件であるが,B等級又はC等級に格付された事業者は,一般に混合指名物件において33社のうちの継続性や関連性を有する受注予定者が受注できるよう協力するものであるし,本件40物件の入札において33社のうちの相指名業者とほぼ同じ価格で入札している。落札率が90パーセントを超える物件が多いことからも,B等級又はC等級に格付された事業者は若鈴が自己の定めた価格で受注できるよう協力したことがうかがえる、
 そこで,本件40物件について,若鈴は,基本合意に基づく33社のうちの相指名業者の協力を得るとともに,B等級又はC等級に格付された事業者の協力も得て,自己の定めた価格で受注できたのであるから,競争制限効果は具体的に発生したものと認めることができる。したがって,本件40物件は課徴金の対象となるということができる。
(ウ)  不公平な取扱いの有無
 独占禁止法違反行為に対して審決を行うか否かは,同法の運用機関である当委員会の高度に専門技術的な知見による裁量に委ねられている。そして,違反行為に該当する事実が客観的に認められる場合には,当該違反行為についてなされた審決は,原則として,法の枠内での裁量が行われたものと評価することができる。33社は,A等級に格付された事業者である33社が本件受注調整を行っていたことを認めているのであるから,A等級に格付された事業者のみを違反行為者とした本案審決はいわれのない差別的な取扱いであるとは認められない。
 さらに,当委員会は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する事実があると認めるときには,同法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を発付しなければならず,課徴金の額の算定についても,法の定める算定基準に従って,一律に所定額の課徴金の納付を命ずることが義務づけられており,そこに当委員会の裁量の余地はないのであるから,若鈴が主張するように本件40物件を課徴金の対象としないこととする余地はない。
(エ)  消費税の取扱い
 消費税相当額を含めて定められている三重県と若鈴との間の対象物件に係る契約金額が対価の額と認められる。
(4) 法令の適用
 若鈴の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定により改正後の独占禁止法を適用することとされる改正後の独占禁止法第7条の2第2項及び第4項を適用して,若鈴が国庫に納入しなければならない課徴金の額は7619万円である。
(5) 命じた措置
 若鈴は,課徴金として7619万円を平成16年4月12日までに国庫に納付しなければならない。

平成15年(判)第2号南海カツマ株式会社に対する審決


(1) 被審人


(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が(株)若鈴ほか25名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,南海カツマ(株)(以下「南海カッマ」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,南海カツマに対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 課徴金に係る違反行為
 南海カツマは,(株)若鈴らと共同して,三重県が指名競争入札の方法により7県民局の農林商工部,農林水産商工部,農政部及び建設部において測量業務(航空測量業務を除く。),建設コンサルタント業務(建築コンサルタント業務を除く。)又は補償コンサルタント業務として発注する業務(これらの業務のいずれかを併せて発注する業務を含み,単価契約に係る業務を除く。)のうち三重県内に本店を置く事業者のみが指名される業務(以下「三重県発注の特定測量・設計等業務」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,三重県発注の特定測量・設計等業務の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア)  南海カツマは,測量業,建設コンサルタント業又は補償コンサルタント業を営む者であり,平成11年中小企業基本法改正法の施行日である平成11年12月3日前に係る行為については,同法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する事業者である。
(イ)  南海カツマが前記ア記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成10年6月1日から平成13年5月30日までであり,この期間における南海カツマの売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については130件の契約により定められた対価の額を合計した8億4545万7900円であり,同日以後については78件の契約により定められた対価の額の4億2789万4950円である。
ウ 主要な争点
(ア)  B等級の事業者等が入札に参加した18物件を課徴金の対象外とすべきであるか否か。
(イ)  売上額から消費税を控除すべきであるか否か。
エ 主要な争点に対する判断
(ア)  課徴金の対象についての基本的な考え方
 「当該商品又は役務」とは,当該違反行為の対象とされた商品又は役務全体を指すが,本件のような受注調整の場合には,基本合意に基づいて受注予定者が決定されることによって,具体的に競争制限効果が発生するに至ったものを指すと解すべきである。
(イ)  18物件の課徴金の対象該当性
 本件18物件は,本件違反行為の対象役務である三重県発注の特定測量・設計等業務に該当するところ,本件18物件については,本案審決の名あて人である33社(以下「33社」という。)のうちの相指名業者との間で本件基本合意に基づいて南海カツマが受注予定者に決定されているので,本件18物件は本件基本合意に基づいて受注予定者が決定されたものと認めることができる。
 そして,本件18物件のうち12物件は本案審決の名あて人ではないB等級に格付された事業者も指名された混合指名物件であるが,B等級に格付された事業者は,一般に混合指名物件において33社のうちの継続性や関連性を有する受注予定者が受注できるよう協力するものであるし,33社のうちの相指名業者とほぼ同じ価格で入札している。
 次に,本件18物件のうち6件は,(株)第一設計コンサルタント(以下「第一設計コンサルタント」という。)との競合物件であり,かつ,紀南及び紀北の物件である。紀南及び紀北の物件であっても,地元業者間の競争はあるし,地元業者以外の事業者が受注する場合もある。第一設計コンサルタントは,自社が強く希望する物件についてはかなり低い価格で入札する場合もあるが,自社が強く希望しない物件については,そのような行動はとらないのであり,前記6物件の入札において33社のうちの相指名業者とほぼ同じ価格で入札している。前記6物件の相指名業者である高本測量(株)(以下「高本測量」という。)は,南海カツマが受注できるように協力した。
 そこで,本件18物件について,南海カツマは,基本合意に基づく33社のうちの相指名業者の協力を得るとともに,B等級に格付された事業者又は高本測量の協力も得て,あるいは第一設計コンサルタントから価格競争を挑まれることなく,自己の定めた価格で受注できたのであるから,競争制限効果は具体的に発生したものと認めることができる。したがって,本件18物件は課徴金の対象となるということができる。
(ウ)  消費税の取扱い
 消費税相当額を含めて定められている三重県と南海カツマとの間の対象物件に係る契約金額が対価の額と認められる。
(4) 法令の適用
 南海カツマの行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定により改正後の独占禁止法を適用することとされる改正後の同法第7条の2第2項及び独占禁止法第7条の2第4項を適用して、南海カツマが国庫に納入しなければならない課徴金の額は6356万円である。
(5) 命じた措置
 南海カツマは,課徴金として6356万円を平成16年4月12日までに国庫に納付しなければならない。

平成15年(判)第3号丸栄調査設計株式会社に対する審決


(1) 被審人


(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が(株)若鈴ほか25名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,丸栄調査設計(株)似下「丸栄調査設計」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,丸栄調査設計に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 担当審判官の作成した審決案に対し,丸栄調査設計が異議の申立てをしたので,当委員会は,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 課徴金に係る違反行為
 丸栄調査設計は,(株)若鈴らと共同して,三重県が指名競争入札の方法により7県民局の農林商工部,農林水産商工部,農政部及び建設部において測量業務(航空測量業務を除く。),建設コンサルタント業務(建築コンサルタント業務を除く。)又は補償コンサルタント業務として発注する業務(これらの業務のいずれかを併せて発注する業務を含み,単価契約に係る業務を除く。)のうち三重県内に本店を置く事業者のみが指名される業務(以下「三重県発注の特定測量・設計等業務」という。)について、受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,三重県発注の特定測量・設計等業務の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものであり,かつ,独占禁止法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア)  丸栄調査設計は,測量業,建設コンサルタント業又は補償コンサルタント業を営む者であり,平成11年中小企業基本法改正法の施行日である平成11年12月3日前に係る行為については,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する事業者である。
(イ)  丸栄調査設計が前記ア記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成10年6月1日から平成13年5月30日までであり,この期間における丸栄調査設計の売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については87件の契約により定められた対価の額を合計した5億616万1950円であり,同日以後については71件の契約により定められた対価の額の4億7357万3100円である。
ウ 主要な争点
(ア)  測量業務のB等級の事業者が入札に参加した物件(5物件)は課徴金算定の対象かどうか。
(イ)  国道42号等道路交通調査業務(1物件)は課徴金算定の対象役務か否か。
(ウ)  売上額から消費税を控除すべきかどうか。
エ 主要な争点に対する判断
(ア)  課徴金の対象についての基本的な考え方
 独占禁止法第7条の2第1項は,事業者が商品又は役務の対価に係る不当な取引制限等をしたときは,当委員会は,事業者に対し,実行期間における「当該商品又は役務」の売上額を基礎として算定した額の課徴金の納付を命ずる旨規定している。
そして,「当該商品又は役務」とは,当該違反行為の対象とされた商品又は役務全体を指すが,本件のような受注調整の場合には,基本合意に基づいて受注予定者が決定されることによって,具体的に競争制限効果が発生するに至ったものを指すと解すべきである。
(イ)  6物件の課徴金の対象該当性
 本件6物件は,本件違反行為の対象役務である三重県発注の特定測量・設計等業務に該当し,国道42号等道路交通調査業務も本件基本合意の対象であるところ,本件6物件については,本案審決の名あて人である33社(以下「33社」という。)のうちの相指名業者との間で本件基本合意に基づいて丸栄調査設計が受注予定者に決定されているので,本件6物件は本件基本合意に基づいて受注予定者が決定されたものと認めることができる、
 そして,本件6物件のうち2物件は本案審決の名あて人ではないB等級に格付された事業者も指名された混合指名物件であるが,B等級に格付された事業者は,一般に混合指名物件において33社のうちの継続性や関連性を有する受注予定者が受注できるよう.協力するものであるし,前記2物件の入札において33社のうちの相指名業者とほぼ同じ価格で入札している。
 さらに,本件6物件のうち3物件は本案審決の名あて人ではないA等級に格付された事業者である高本測量(株)(以下「高本測量」という。)も指名された物件であるが,高本測量は,33社のうちの受注予定者が受注できるように協力するものであるし,前記3物件の入札において33社のうちの相指名業者とほぼ同じ価格で入札している。いずれの物件の落札率も96パーセントを超えていることから,高本測量は被審人が自己の定めた価格で受注できるよう協力したことがうかがえる。
 国道42号等道路交通調査業務については,丸栄調査設計以外の相指名業者は33社のいずれかの者であり,丸栄調査設計は本件基本合意に基づくこれら相指名業者の協力を得て受注した。
 そこで,丸栄調査設計は,本件6物件のうち,前記5物件については,本件基本合意に基づく33社のうちの相指名業者の協力を得るとともに,B等級に格付された事業者又は高本測量の協力も得て,また,国道42号等道路交通調査業務については,本件基本合意に基づく33社のうちの相指名業者の協力を得て,自己の定めた価格で受注できたのであるから,競争制限効果は具体的に発生したものと認めることができる。したがって,本件6物件は課徴金の対象となるということができる。
(ウ)  消費税の取扱い
 消費税相当額を含めて定められている三重県と丸栄調査設計との間の対象物件に係る契約金額が対価の額と認められる。
(4) 法令の適用
 丸栄調査設計の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定により改正後の独占禁止法を適用することとされる改正後の同法第7条の2第2項及び第4項を適用して,丸栄調査設計が国庫に納入しなければならない課徴金の額は4457万円である。
(5) 命じた措置
 丸栄調査設計は,課徴金として4457万円を平成16年4月12日までに国庫に納付しなければならない。

10 平成15年(判)第27号及び第35号三ツ和総合建設業協同組合に対する審決


(1) 被審人


(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が初雁興業(株)ほか23名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,三ツ和総合建設業協同組合(以下「三ツ和総合建設」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,三ツ和総合建設に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 担当審判官の作成した審決案に対し,三ツ和総合建設が異議の申立てをしたので,当委員会は,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 課徴金に係る違反行為
(ア)  土木工事関係(平成15年(判)第27号)
 三ツ和総合建設は,初雁興業(株)らと共同して,川越市(川越市水道事業管理者を含む。)が土木一式工事(単価契約の方法により発注するものを除く。以下同じ。)についてAの等級に格付し,埼玉県川越市内に本店又は営業所等を置く者のみを入札参加者として一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事(以下「川越市発注の特定土木工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,川越市発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
(イ)  ほ装工事関係(平成15年(判)第35号)
 三ツ和総合建設は,(株)田村工業所らと共同して,川越市(川越市水道事業管理者を含む。)がほ装工事(単価契約の方法により発注するものを除く。以下同じ。)についてAの等級に格付し,埼玉県川越市内に本店又は営業所等を置く者のみを入札参加者として一般競争入札又は指名競争入札の方法によりほ装工事として発注する工事(以下「川越市発注の特定ほ装工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,川越市発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア)  土木工事関系(平成15年(判)第27号)
 三ツ和総合建設は,建設業を営む事業者である。
 三ツ和総合建設が前記ア(ア)記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成10年5月9日から平成13年5月8日までであり,この期間における三ツ和総合建設の売上額は,4件の契約により定められた対価の額を合計した2億8948万5000円である。
(イ)  ほ装工事関係(平成15年(判)第35号)
 三ツ和総合建設は,建設業を営む事業者である。
 三ツ和総合建設が前記ア(イ)記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成10年5月9日から平成13年5月8日までであり,この期間における三ツ和総合建設の売上額は,2件の契約により定められた対価の額を合計した5859万円である。
 主要な争点(平成15年(判)第27号及び第35号)
三ツ和総合建設の課徴金の算定に当たり,独占禁止法第7条の2第1項の規定による算定率である100分の6が適用されるのか,それとも同条第2項の規定による軽減算定率である100分の3が適用されるのか。
エ 主要な争点に対する判断
(ア)  事業協同組合への軽減算定率の適用可否及び事業規模の判断方法
 独占禁止法第7条の2第2項の趣旨は,事業規模の小さい企業に対して軽減算定率を適用することにあり,同項の規定の適用対象となる「会社」又は「個人」と事業規模においてこれらと同等というべき事業者との間で軽減算定率の適用上取扱いを異にしなければならない理由はない(協業組合カンセイに対する件最高裁判決)。
 事業協同組合は,組合員である小規模の事業者が各組合員の営んでいる事業を共同化することにより,競争力のある一個の独立した事業主体たる地位を得るためのものであること,組合員の資格を有する者は,組合の地区内で事業を行う小規模の事業者等であるが,地域の小規模の事業者が共同事業を行うことにより地域独占体を構成し得ること,また,小規模の事業者より規模の大きな事業者を組合員に含むものがあることも想定しうることからすれば,事業協同組合固有の出資の総額及び従業員数をもって事業規模を判断するのは適当ではなく,商法上の会社及び有限会社を組合員とする事業協同組合にあっては,当該組合の出資の総額に各組合員の資本若しくは出資の額を合わせた出資の総額又は当該組合のものに各組合員のものを合わせた常時使用する従業員の総数をもって事業規模に関する要件を判断し,独占禁止法第7条の2第2項の規定する「会社」又は「個人」の事業規模に関する要件に該当するときは,同項を類推して,当該組合には軽減算定率を適用するのが相当である(関東造園建設協同組合に対する件審決)。
(イ)  三ツ和総合建設の事業規模及び三ツ和総合建設に適用すべき課徴金の算定率
 三ツ和総合建設は中小企業等協同組合法に基づき設立された事業協同組合であり,商法上の会社及び有限会社を組合員とするところ,課徴金算定対象物件の対象となる各物件の各契約日における三ツ和総合建設の事業規模は,三ツ和総合建設固有の出資の総額に各組合員の資本又は出資の総額を合わせた出資の総額は21億1008万円程度であり,三ツ和総合建設のものに各組合員のものを合わせた常時使用する従業員の総数は1875名ないし1884名程度である。
 したがって,三ツ和総合建設に対しては,課徴金の算定に当たり,独占禁止法第7条の2第1項に規定する100分の6の算定率が適用される。
(4) 法令の適用
(ア)  土木工事関係(平成15年(判)第27号)
 三ツ和総合建設の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,同条の2第4項を適用して,三ツ和総合建設協同組合が国庫に納入しなければならない課徴金の額は1736万円である。
(イ)  ほ装工事関係(平成15年(判)第35号)
 三ツ和総合建設の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,同条の2第4項を適用して,三ツ和総合建設が国庫に納入しなければならない課徴金の額は351万円である。
(5) 命じた措置
(ア)  土木工事関係(平成15年(判)第27号)
 三ツ和総合建設は,課徴金として1736万円を平成16年4月12日までに国庫に納付しなければならない。
(イ)  ほ装工事関係(平成15年(判)第35号)
 三ツ和総合建設は,課徴金として351万円を平成16年4月12日までに国庫に納付しなければならない。

11 平成15年(判)第12号及び第15号株式会社大王工務店に対する審決


(1) 被審人


(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が(株)村上組ほか134名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,(株)大王工務店(以下「大王工務店」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,大王工務店に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 担当審判官の作成した審決案に対し,大王工務店が異議の申立てをしたので,当委員会は,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
 なお,本件については,平成16年4月28日に審決取消訴訟が高等裁判所に提起された。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 課徴金に係る違反行為
(ア)  香川県関係(平成15年(判)第12号)
 大王工務店は,(株)村上組らと共同して,香川県が同県高松土木事務所の管轄区域(高松市,香川県香川郡及び同県木田郡(三木町を除く。)の区域。)を施工場所とし香川県内に本店又は主たる事務所を置く事業者のみを指名して同土木事務所において指名競争入札を行い土木一式工事として発注する工事(以下「香川県発注の特定土木工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,香川県発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは,同法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
(イ)  高松市関係(平成15年(判)第15号)
 大王工務店は,(株)村上組らと共同して,高松市土木部が香川県内に本店又は主たる事務所を置く事業者のみを指名して指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事(以下「高松市発注の特定土木工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,高松市発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していたものであって,これは独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取引制限に該当し,同法第3条の規定に違反するものであり,かつ,同法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係る行為である。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア)  香川県関係(平成15年(判)第12号)
 大王工務店は,建設業を営む者であり,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によることとされる改正後の独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する事業者である。
 大王工務店が前記ア(ア)記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成10年1月17日から平成13年1月16日までであり,この期間における大王工務店の売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については6件の契約により定められた対価の額を合計した5億144万100円であり,同日以後については5件の契約により定められた対価の額の1億8142万4250円である。
(イ)  高松市関係(平成15年(判)第15号)
 大王工務店は,建設業を営む者であり,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によることとされる改正後の独占禁止法第7条の2第2項第1号に該当する事業者である。
 大王工務店が前記ア(イ)記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は,平成10年3月27日から平成13年1月16日までであり,この期間における大王工務店の売上額は,平成11年中小企業基本法改正法の施行日前については9件の契約により定められた対価の額を合計した6億4236万1650円であり,同日以後については4件の契約により定められた対価の額の1億5091万2300円である。
ウ 主要な争点
(ア)  香川県関係(平成15年(判)第12号)
 住宅宅地関連公共施設整備促進事業広域基幹河川詰田川(宮川)改修工事(第2工区)が課徴金算定の対象物件に該当するか否か。
(イ)  高松市関係(平成15年(判)第15号)
 木太鬼無線宮川橋渠(仮称)築造工事が課徴金算定の対象物件に該当するか否か。
 主要な争点に対する判断(平成15年(判)第12号及び第15号)
 課徴金の計算の基礎となる当該役務とは,当該違反行為の対象になった役務全体を指すが,本件のような受注調整の場合には,基本合意に基づいて受注予定者が決定されることによって,具体的に競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される。
 争点に係る物件については,本件違反行為の対象役務である香川県発注の特定土木工事又は高松市発注の特定土木工事に該当し,また,各物件の指名業者のうち受注希望者が大王工務店だけであったことから大王工務店が受注予定者となり受注したのであるから,それぞれ,基本合意に基づいて受注予定者が決定され,具体的に競争制限効果が発生するに至った物件ということができ,課徴金算定の対象となる。
(4) 法令の適用
(ア)  香川県関係(平成15年(判)第12号)
 大王工務店の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定の課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項,改正後の独占禁止法第7条の2第2項及び独占禁止法第7条の2第4項を適用して,大王工務店が国庫に納入しなければならない課徴金の額は2048万円である。
(イ)  高松市関係(平成15年(判)第15号)
 大王工務店の行為は,独占禁止法第7条の2第1項に規定の課徴金の対象となる役務の対価に係るものであるから,平成11年中小企業基本法改正法附則第3条第2項の規定によりなお従前の例によることとされる改正前の独占禁止法第7条の2第2項,改正後の独占禁止法第7条の2第2項及び独占禁止法第7条の2第4項を適用して,大王工務店が国庫に納入しなければならない課徴金の額は2379万円である。
(5) 命じた措置
(ア)  香川県関係(平成15年(判)第12号)
 大王工務店は,課徴金として2048万円を平成16年6月3日までに国庫に納付しなければならない。
(イ)  高松市関係(平成15年(判)第15号)
 大王工務店は,課徴金として2379万円を平成16年6月3日までに国庫に納付しなければならない。