第5 審判手続開始請求の却下の審決

平成16年(監)第1号株式会社フジアートクループに対する審決

(1) 請求者


(2) 経緯
 本件は,公正取引員会が,(株)フジアートクループに対し,平成15年12月5日付け排除命令について,同社が,平成16年1月13日に本件排除命令に不服があるとして,審判手続開始請求をしたものである。
(3) 却下の理由
 審判手続開始請求については,告示があった日から30日以内に審判手続開始請求書を当委員会に提出する必要があるところ,本件請求書は同期間の経過後に提出されたものであるため,景品表示法第9条第2項に基づき,本件請求を不適法として却下した。

第6 審判手続打切り決定

平成13年(判)第18号有限会社杉本ポンプ工業に対する審判手続打切り決定

(1) 被審人


(2) 経緯
 本件は,公正取引委員会が,(有)新海設備工業ほか27名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,(有)杉本ポンプ工業(以下「杉本ポンプ工業」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,杉本ポンプ工業に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
(3) 打切りの理由
 杉本ボンプ工業に対しては,平成15年5月13日,広島地方裁判所において,破産宣告がなされ,また,同年10月1日,破産法(大正11年法律第71号)第353条の規定に基づく破産廃止の決定がなされたことを考慮し,杉本ポンプ工業に対する本件審判手続を打ち切った。

第7 訴訟

1 審決取消請求訴訟
 平成15年度当初において係属中の審決取消請求事件は4件であったが,このうち,東京高等裁判所に差し戻されていた協業組合カンセイによる審決取消請求事件については,請求認容の判決が確定したことにより,また,(株)オーエヌポートリーによる審決取消請求事件及び岡崎管工(株)による審決取消請求事件については,いずれも請求棄却の判決が確定したことにより終了した。
 平成15年度中に,新たに,土屋企業(株)による審決取消請求事件,(株)東芝ほか1名による審決取消請求事件が提起された。このため,平成15年度末現在係属中の審決取消請求事件は3件である。
 なお,土屋企業(株)による審決取消請求事件については,平成16年2月20日,請求一部認容の判決があり,(株)東芝ほか1名による審決取消請求事件については,平成16年4月23日,請求認容の判決があり,いずれも公正取引委員会は上告受理申立てをした。

(1) 協業組合カンセイによる審決取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所 平成15年(行ケ)第93号
 審決取消請求事件
原告(原告・上告人) 協業組合カンセイ
被告(被告・被上告人) 公正取引委員会
 審決年月日 平成10年3月11日
 提訴年月日 平成10年4月8日
 判決年月日 平成11年1月29日
(請求棄却,東京高等裁判所)
 上告及び上告受理申立て年月日
平成11年2月13日
 上告受理決定年月日
平成15年1月10日
 判決年月日 平成15年3月14日
(原判決破棄・東京高等裁判所へ差戻し,最高裁判所)
 判決年月日 平成15年9月12日
(請求認容)
イ 審決の概要
 協業組合カンセイ(以下「カンセイ」という。)を含む千歳市内に本店又は事務所を置き同市において水道施設工事業及び管工事業を営む9社が,千歳市等発注のガス水道配管等工事について,共同して受注予定者が受注できるようにすることにより,千歳市等発注のガス水道配管等工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,カンセイに対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,協業組合であるカンセイ(原告,上告入)に対する課徴金の算出に際して,売上額に乗ずるべき一定率として独占禁止法第7条の2第1項(売上額の6%)を用いたところ,カンセイが,同法第7条の2第1項と第2項の適用区分は,課徴金対象事業者の企業規模に基づくものであり,対象事業者の存立形態(法形式)が「会社及び個人」かそれ以外かの区別によってされるべきでないから,企業規模において中小企業者に該当するカンセイには第2項(売上額の3%)を適用すべきであるとして,審決のうち金967万円を超えて納付を命じた部分の取消しを求めたものである。
 東京高等裁判所は,独占禁止法第7条の2第2項各号は,これを適用する事業者を「会社」と「個人」に限定したものと解され,協業組合は商法等にいう「会社」ではないとして,カンセイの請求を棄却した。
 最高裁判所は,独占禁止法第7条の2第2項の適用の対象が「会社」又は「個人」に厳格に限定されていると解するのは相当ではなく,個人事業者を組合員とする協業組合にあっては,当該組合固有のものに各組合員固有のものを合わせた常時使用する従業員の総数が同項の規定する「会社」及び「個人」に関する従業員数の要件に該当するときは,同項を類推して,当該組合には軽減算定率が適用されるものと解するのが相当である旨判示し,本件は,カンセイ及びその組合員の常時使用する従業員の総数について審理されていないとして,東京高等裁判所に差し戻した。
エ 差戻し審(東京高等裁判所)判決の概要
 カンセイの組合員は実行期間中5名であり,また,カンセイ及びその組合員の常時使用する従業員の総数は,実行期間中43名を大きく上回ることはなかったものと推認することができる。
 よって,カンセイは,独占禁止法第7条の2第2項1号の「常時使用する従業員の数が300人以下の会社及び個人」に当たるというべきであるから,カンセイに対する課徴金の算定については,基本算定率でなく,軽減算定率が適用されるべきであるとして,平成10年3月11日付けでした審決のうち,967万円を超えて納付を命じた部分を取り消した。
オ 訴訟手続の経過
 本件は,上訴期間の経過により,請求認容の旨の判決が確定し終了した。
(参考)   協業組合カンセイによる審決取消請求事件にかかる訴訟費用額確定処分申立事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成15年(行タ)第58号
 訴訟費用額確定処分申立事件
申立人 協業組合カンセイ
相手方
 申立年月日 平成15年10月20日
 決定年月日 平成15年11月25日
イ 事案の概要
 本件は,カンセイ(申立人)が,カンセイと公正取引委員会間の審決取消請求訴訟に係る判決が確定したため,判決により被告(当委員会)の負担とされた上記訴訟の訴訟費用を確定させるための申立てを行ったものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件は,抗告期間の経過により,終了した。

(2) 東京海上火災保険(株)ほか17名による審決取消請求事件
ア 事件の表示
最高裁判所平成14年(行ヒ)第72号
 審決取消請求事件
申立人(被告) 公正取引委員会
相手方(原告) 東京海上火災保険株式会社ほか17名
 審決年月日 平成12年6月2日
 提訴年月日 平成12年7月3日,同月5日
 判決年月日 平成13年11月30日
(請求一部認容,東京高等裁判所)
 上告受理申立て年月日
平成13年12月14日
イ 審決の概要
 東京海上火災保険(株)ほか20名(以下「東京海上ほか20名」という。)は,日本機械保険連盟(以下「連盟」という。)の会員となっていたところ,連盟は,機械保険及び組立保険(以下「機械保険等」という。)の保険料率に関し,会員が申請すべき認可申請の内容を決定し,会員に一定料率で機械保険等の引受けを行わせることにより,我が国における機械保険等の元受けに係る各取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,東京海上ほか20名に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,東京海上ほか20名(原告,相手方)が,本件審決には損害保険の経済的実態の認識を誤り,課徴金制度の仕組みと売上額の算定,損害保険制度と損害保険会社の機能及び代理店手数料等について,独占禁止法第8条の3及び同法第7条の2第1項並びに同法施行令第5条及び同第6条の解釈,運用を誤ったものであり,かつ,東京海上ほか20名に対して賦課すべき課徴金の算定を誤ったものであること等を理由として,審決の取消しを求めるものである。
 東京高等裁判所は,審決のうち売上額から支払保険金を控除した場合の課徴金額を超えて課徴金の納付を命じる部分を取り消した。
 なお,合併により,現在の相手方は東京海上火災保険(株)ほか17名となっている。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,当委員会の上告受理申立てにより,現在最高裁判所に係属中である。

(3) 岡崎管工(株)による審決取消請求事件
ア 事件の表示
最高裁判所平成15年(行ツ)第133号,平成15年(行ヒ)第136号
 審決取消請求事件
上告人・申立人(原告) 岡崎管工株式会社
被上告人・相手方(被告) 公正取引委員会
 審決年月日 平成14年7月25日
 提訴年月日 平成14年8月21日
 判決年月日 平成15年3月7日
(請求棄却,東京高等裁判所)
 上告及び上告受理中立年月日
平成15年3月14日
 決定年月日 平成15年7月11日
(上告棄却・上告不受理)
イ 審決の概要
 岡崎管工(株)(以下「岡崎管工」という。)を含む広島市及び安芸郡府中町に本店を有する28名は,広島市水道局発注の特定上水道本管工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする旨合意し(以下「本件合意」という。),本件合意に基づいて受注調整を行っていた。
 本審決は,岡崎管工に対し,独占禁止法第54条第2項の規定に基づいて,かかる行為の取りやめの通知等の措置を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,岡崎管工(原告,上告人・申立人)が,(1)本件合意から途中離脱した時期の認定に誤りがある,(2)本件勧告を受ける前に本件合意から離脱している岡崎管工には排除措置をとる必要はないとして,審決の取消しを求めたものである。
 東京高等裁判所は岡崎管工の請求を棄却し,最高裁判所も上告理由及び上告受理申立理由がないとして,上告棄却・上告不受理とした。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,最高裁判所の上告棄却・上告不受理の決定により,終了した。
(参考)   岡崎管工(株)による審決取消請求事件に係る保証金没取申立事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成15年(行タ)第35号
 保証金没取の申立事件
申立人 公正取引委員会
相手方 岡崎管工株式会社
 申立年月日 平成15年7月30日
 決定年月日 平成15年8月29日
(全部没取)
イ 事案の概要
 本件は,公正取引委員会が,最高裁判所に係属していた審決取消請求訴訟が終了し,審決が確定したため,相手方が審決執行免除のために供託していた保証金200万円について,その全部を没取することを求める旨の申立てを行ったものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件は,抗告期間の経過により,終了した。

(4) (株)オーエヌポートリーによる審決取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成14年(行ケ)第552号
 審決取消請求事件
原告 株式会社オーエヌポートリー
被告 公正取引委員会
 審決年月日 平成14年9月25日
 提訴年月日 平成14年10月29日
 判決年月日 平成15年4月25日
(請求棄却)
イ 審決の概要
 (株)オーエヌポートリー(以下「オーエヌポートリー」という。)は,日本種鶏孵卵協会ブロイラー孵卵部会中国・四国ブロイラー孵卵協議会(以下「協議会」という。)の会員となっていたところ,協議会は,会員が兵庫県,鳥取県,島根県,岡山県,広島県,徳島県,香川県,愛媛県及び高知県の区域(以下「中国四国地区」という。)に所在する養鶏業者等の需要者又は同需要者に販売する取引先販売業者に販売するプロイラー用素びな(以下「素びな」という。)の販売価格の引上げを決定することにより,中国四国地区の素びなの供給分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,同社に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,オーエヌポートリー(原告)が,(1)オーエヌポートリーには協議会による素びなの値上げ決定という独占禁止法違反行為の実行としての事業活動はなく,(2)オーエヌポートリーの訴外山陰農芸(株)(以下「山陰農芸」という。)に対する素びなの売上げは課徴金の算定の基礎となる売上額に該当しない,(3)査第2号証及び査第3号証の信用性に異議があるとして,審決の取消しを求めたものである。
エ 判決の概要
(ア)  本件審決が,その認定事実及び関係証拠に基づき,オーエヌポートリーが協議会の値上げの決定を認識し認容した上で取引先と値上げの交渉を行ったものと認定したのは相当であり,その認定に実質的な証拠に欠ける点はない。
(イ)  証拠によれば,素びなの販売価格の値上げ決定の目的は,会員が足並みをそろえて値上げを図るということにあったというのであり,オーエヌポートリーの代表者も値上げ通知文書を送付しなかった取引先が値上げ決定の対象にならないということではない旨述べている。なお,協議会会長が,従前の値上げ文書の送付リストに記載された取引先及び会員から申出のあった取引先に値上げ決定の通知文書を送付したが,そのことのみをもって,上記文書を送付しなかった会員の取引先が値上げ決定の対象から除外されていたものと認めることは到底できない。
 また,本件審決が認定した事実によれば,オーエヌポートリーと山陰農芸間の素びなの販売価格の値上げの合意は,市況の変化と協議会の値上げ決定に対応するものであったと推認することができ,これと,オーエヌポートリーと山陰農芸が実質的に同一企業であるとはいえないこと,オーエヌポートリーの素びなの売上額における山陰農芸の占める割合は3分の1程度であることなどの事実を併せ考えれば,山陰農芸との間の上記値上げの合意が,他の取引先との事情と全く無関係に両社の経営事情によって定められたもの(いわゆる内部取引価格)であると認めることはできない。
(ウ)  査第2号証については,オーエヌポートリーの代表者は,審査官から記載内容を読み聞かせられ,事実及び趣旨が異なる箇所につき訂正を求めた上で,誤りがないとして署名押印しているのであり,その供述内容は詳細かつ具体的であって,信用性がないということはできない。
 査第3号証について,オーエヌポートリーは,オーエヌポートリーの代表者は白紙に署名押印したものであり,調書を読み聞かせてもらったことはないと主張するが,査第3号証の形式・記載内容及び審査官の審判期日における供述に照らしてにわかに採用することはできず,ほかに上記主張事実を認めるべき証拠はないから,査第3号証の信用性を認めた本件審決の判断は相当である。
オ 訴訟手続の経過
 本件は,控訴期間の経過により,請求棄却の旨の判決が確定し終了した。

(5) 土屋企業(株)による審決取消請求事件
ア 事件の表示
最高裁判所 平成16年(行ヒ)第135号
 審決取消請求事件
申立人(被告)公正取引委員会
相手方(原告)土屋企業株式会社
 審決年月日 平成15年6月13日
 提訴年月日 平成15年7月12日
 判決年月日 平成16年2月20日
(請求一部認容,東京高等裁判所)
 上告受理申立て年月日
平成16年3月5日
イ 審決の概要
 土屋企業(株)(以下「土屋企業」という。)を含む町田市内に本店又は主たる事務所を置き同市において建設業を営む69社は,町田市発注の特定土木一式工事について,共同して受注予定者が受注できるようにすることにより,町田市発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,土屋企業に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,土屋企業(原告,相手方)が,課徴金の対象となった道路工事のうちの2件については,受注調整を行ったことはなく,これを課徴金の対象とした本件審決には,基礎となる事実についての実質的証拠を欠くか,又は法令違反があるとして,その取消しを求めるものである。
エ 一審判決(東京高等裁判所)の概要
(ア)  都市計画道路工事について
 課徴金の対象となる「当該商品又は役務」とは,当該違反行為の対象とされた商品又は役務を指し,本件のような受注調整にあっては,当該事業者が,基本合意に基づいて受注予定者として決定され,受注するなど,受注調整手続に上程されることによって具体的に競争制限効果が発生するに至ったものを指すと解すべきである。そして,課徴金には,当該事業者の不当な取引制限を防止するための制裁的要素があることを考慮すると,当該事業者が直接又は間接に関与した受注調整手続の結果,競争制限効果が発生したことを要するというべきである。
 土屋企業は,本件基本合意に参画したけれども,当該工事については,本命と目された訴外高尾建設(株)(以下「高尾建設」という。)との2社間の話合いの場で,「仕事がないので受注したい。」との一点張りで対応し,本件基本合意に基づく調整を明確に拒絶して,その話合いを決裂させ,自らは他の指名業者に対し協力依頼や入札価格の連絡をしないで,他の指名業者及び高尾建設の入札価格に比べて相当低い価格で入札し,落札した。このような事情の下においては,たとえ,高尾建設が土屋企業以外の他の指名業者に自己の入札価格を連絡して協力を依頼し,他の指名業者がこれに応じて高尾建設の入札価格よりも高い価格で入札するという具体的な競争制限行為が行われ,土屋企業においてもそのような受注調整手続が進行しつつあることを知っていたなどの事情があったとしても,土屋企業が直接又は間接に関与した受注調整手続によって具体的な競争制限効果が発生するに至ったものとはいえないから,当該工事は課徴金の対象となるとはいえない。
(イ)  堺道路工事について
 本件審決は,土屋企業は訴外(株)興新(以下「興新」という。)に他の指名業者の了解を得た旨を連絡し,興新もこれを了解し,土屋企業が受注予定者として入札に臨んだこと,さらには,本件基本合意に基づく土屋企業を受注予定者とする受注調整が成立していたことを推認しているが,この推認は,いずれも合理的であり,経験則に反するところはないから実質的証拠があるというべきである。
オ 訴訟手続の経過
 本件は,当委員会の上告受理申立てにより,現在最高裁判所に係属中である。

(6) (株)東芝ほか1名による審決取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所 平成15年(行ケ)第335号
 審決取消請求事件
原告 株式会社東芝ほか1名
被告 公正取引委員会
 審決年月日 平成15年6月27日
 提訴年月日 平成15年7月25日
 判決年月日 平成16年4月23日
(請求認容)
イ 審決の概要
 (株)東芝(以下「東芝」という。)及び日本電気(株)(以下「日本電気」という。)は,郵政省が一般競争入札の方法により発注した郵便番号自動読取区分機類について,入札執行前に同省の調達事務担当官等から情報の提示を受けた者を受注予定者として決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,同省が一般競争入札の方法により発注する区分機類の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,東芝及び日本電気に対し,独占禁止法第54条第2項の規定を適用して,かかる行為の取りやめの通知等の措置を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,原告らが,本件審決は審決の基礎となった事実を証する実質的な証拠を欠いているとして,その取消しを求めるものである。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,平成16年4月23日,東京高等裁判所において審決取消しの判決がなされたので,公正取引委員会が,上告受理申立てをしている。

2 その他の訴訟
 平成15年度当初において係属中の事件は8件であったが,JFEエンジニアリング(株)(旧商号日本鋼管(株))ほか4名による審判事件記録閲覧謄写許可処分取消請求事件については,最高裁判所による原判決破棄・控訴棄却の判決言渡しにより,技研システム(株)による国家賠償請求事件については,控訴棄却の判決が確定したことにより終了した。2件係属していた情報公開法に基づく行政文書不開示決定取消請求事件については,いずれも請求棄却の判決が言い渡されたが,そのうちの1件は,原告が控訴して東京高等裁判所に係属中である。また,東京高等裁判所に係属していたごみ焼却炉入札談合事案に係る審判記録についての文書提出命令に対する即事抗告事件は,住民訴訟の原告による文書提出命令申立ての取下げにより終了した。
 平成15年度中に,新たに,北海道上川支庁発注の農業土木工事の入札談合事案に係る札幌地方裁判所の住民訴訟において,勧告審決の基礎となった北海道職員の供述調書について,文書提出命令が出されたことから,国(当委員会)が即時抗告を申し立てた。このため,平成15年度末現在係属中の審決取消請求訴訟以外の訴訟は5件である。

(1) 平成11年(判)第4号に係る審判事件記録閲覧謄写許可処分取消請求事件
ア 事件の表示
最高裁判所平成14年(行ヒ)第242号
 事件記録閲覧謄写許可処分取消,公正取引委員会審判事件記録閲覧謄写許可処分取消,公正取引委員会審判記録閲覧謄写許可執行取消請求事件
申立人(被告・被控訴人) 公正取引委員会(注)
申立人(参加人) 大川 隆司ほか2名
相手方(原告・控訴人) JFEエンジニアリング株式会社
(旧商号日本鋼管株式会社)ほか4名
(注)  上告受理申立てを行ったのが公正取引委員会側として参加している参加人らであるため,当委員会についても申立人の表記になる。
 提訴年月日 平成12年12月22日,平成13年1月19日
 判決年月日 平成13年10月17日
(一部請求却下,一部請求棄却,東京地方裁判所)
 控訴年月日 平成13年10月17日,
平成13年10月18日
 判決年月日 平成14年6月5日
(請求認容,東京高等裁判所)
 上告受理申立て年月日
平成14年6月13日
 判決年月日 平成15年9月9日(原判決破棄・控訴棄却)
イ 事案の概要
 本件は,平成11年(判)第4号事件の被審人であるJFEエンジニアリング(株)ほか4名(以下「JFEエンジニアリングほか4名」という。)(原告,控訴人,相手方)が,公正取引委員会が独占禁止法第69条に基づき,JFEエンジニアリングほか4名を被告として住民訴訟を追行中の原告住民に対して,審判記録の閲覧謄写に応じる決定をし,各申請人に通知した各処分の取消しを求めたものである。
 本件の主な争点は,住民訴訟の原告が,独占禁止法第69条所定の利害関係人に当たるか否かであったところ,一審は利害関係人に当たるとして,JFEエンジニアリングほか4名の請求を棄却したが,二審は利害関係人に当たらないとして,公正取引委員会(被告,被控訴人,申立人)敗訴の判決を言い渡した。
ウ 上告審(最高裁判所)判決の概要
(ア)  独占禁止法第69条所定の事件記録の閲覧謄写請求権は,審判手続における当事者の防御権行使等のためだけに認められたものではなく,審判手続に参加し得る者が参加又は意見陳述の要否を検討し,独占禁止法違反行為の被害者が差止請求訴訟又は損害賠償請求訴訟を提起しあるいは維持するための便宜を図る趣旨をも含むものと解するのが相当である。そうすると同条にいう利害関係人とは,当該事件の被審人のほか,同法第59条及び第60条により審判手続に参加し得る者並びに当該事件の対象をなす違反行為の被害者をいい,被審人に対し上記違反行為の被害者としてその差止め又は損害賠償を請求する者は,当該事件について審判が確定する前であっても,同法69条にいう利害関係人として事件記録の閲覧謄写を請求することができる。
(イ)  地方公共団体の住民が,地方自治法第242条の2第1項第4号に基づき,独占禁止法違反行為の被害者である地方公共団体に代位して被審人に対し損害賠償を請求する住民訴訟を提起した場合,当該訴訟において審判の対象とされるのは,被審人に対する地方公共団体の損害賠償請求権の存否であり,審判事件の事件記録を利用することの必要性,有用性については,地方公共団体が自ら被審人に対し損害賠償請求をしている場合と異ならない。このことに,上記のような独占禁止法の規定やその趣旨,目的等を併せ考えると,地方公共団体の住民が,地方自治法第242条の2第1項第4号に基づき,独占禁止法違反行為の被害者である地方公共団体に代位して被審人に対し損害賠償を請求する住民訴訟を提起し,当該違反行為の被害者に準ずる地位を取得した場合には,当該住民は,独占禁止法第69条にいう利害関係人に当たる。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,最高裁判所の原判決破棄・控訴棄却の判決により終了した。

(2) 技研システム株式会社による損害賠償請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成15年(ネ)第732号
 損害賠償請求事件
控訴人(原告)技研システム株式会社
被控訴人(被告)国
 提訴年月日 平成13年6月27日
 判決年月日 平成14年12月26日
(請求棄却,東京地方裁判所)
 控訴年月日 平成15年1月9日
 判決年月日 平成15年4月24日
(控訴棄却)
イ 事案の概要
 本件は,公正取引委員会が,千葉市が発注する測量等の業務に関し,技研システム(株)(以下「技研システム」という。)(原告,控訴人)を含む設計・測量会社等計91名に対して勧告したが,技研システムの違反事実を認めることはできない旨の審決を行ったところ,技研システムが,当委員会の違法な勧告によって地方公共団体等から指名停止処分を受け,売上げが減少し,民事再生手続開始申立てを行うことになったとして,国に対し,損害賠償を求めたものである。
 一審は,当委員会による本件勧告は,その職務上の義務に照らして不相当なものであったとまではいうことができず,国家賠償法上の違法性があると認めることはできないとして,技研システムの請求を棄却した。
ウ 二審(東京高等裁判所)判決の概要
 原判決の判断を維持
エ 訴訟手続の経過
 本件は,上訴期間の経過により終了した。

(3) 鳥取地裁ごみ焼却炉住民代位訴訟に係る文書提出命令に対する即時抗告申立事件
ア 事件の表示
広島高等裁判所松江支部平成14年(行ス)第1号
 文書提出命令に対する即時抗告申立事件
抗告人
相手方 米子市住民3名
 決定年月日 平成14年6月28日
 申立年月日 平成14年7月8日
イ 事案の概要
 本件は,ごみ焼却炉入札談合事案に対して提起された住民訴訟(基本事件鳥取地方裁判所平成12年(行ウ)第2号損害賠償代位等住民訴訟事件)において,公正取引委員会に係属中のごみ焼却炉入札談合事件(平成11年(判)第4号日立造船(株)ほか4名に対する件)に係る審判記録について民事訴訟法第223条第1項に基づき審査官提出の準備書面等の提出を命じる決定がされたところ,当該決定に対し国(当委員会)から即時抗告を申し立てたものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件は,現在,広島高等裁判所松江支部に係属中である。

(4) 新潟地裁ごみ焼却炉住民代位訴訟に係る文書提出命令に対する即時抗告申立事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成14年(行ス)第67号
 文書提出命令に対する即時抗告申立事件
抗告人
相手方 豊栄市住民
 決定年月日 平成14年9月27日
 申立年月日 平成14年10月8日
 文書提出命令
  申立ての取下げによる終了  
平成15年10月16日
イ 事案の概要
 本件は、ごみ焼却炉入札談合事案に対して提起された住民訴訟(基本事件新潟地方裁判所平成12年(行ウ)第13号損害賠償代位請求事件)において,公正取引委員会に係属中のごみ焼却炉入札談合事件(平成11年(判)第4号日立造船(株)ほか4名に対する件)に係る審判記録について民事訴訟法第223条第1項に基づき審判廷に提出された証拠の提出を命じる決定がされたところ,当該決定に対し国(当委員会)から即時抗告を申し立てたものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件は,文書提出命令申立ての取下げにより終了した。

(5) 特定個人による行政文書不開示決定取消請求事件
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成15年(行ウ)第21号
 行政文書不開示決定取消請求事件
原告 甲野 太郎(仮名)
被告 公正取引委員会事務総長
 提訴年月日 平成15年1月20日
 判決年月日 平成15年9月2日
(請求棄却)
イ 事案の概要
 本件は,原告が,行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づいて,2度にわたり,公正取引委員会委員の任命に関し,公正取引委員会委員長から内閣総理大臣に対して事前に行った発令依頼文書の開示を請求したところ,当委員会が,発令依頼の文書である「公正取引委員会委員の任免について」自体を除く文書については該当する文書が存在しないことを理由として不開示決定をしたため,原告が当該不開示決定の取消しを求めたものである。
ウ 判決の概要
 公正取引委員会が,委員の任命につき発令依頼を行うことを定めた規定はなく,そのほか,内閣総理大臣がいかなる者を公正取引委員会委員候補者とするかについて,公正取引委員会が何らかの関与をすることを予定した規定は存在しない。
 また,公正取引委員会の委員候補者ないしその推薦等について,公正取引委員会に何らかの行政文書の作成を義務づける規定も存在しない。そのほか,本件全証拠を子細に検討しても任命権者たる内閣総理大臣に対し,公正取引委員会が文書をもって発令依頼を行っていることを窺わせるような事情は見当たらない。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,控訴期間の経過により,請求棄却の旨の判決が確定し終了した。

(6) 福岡地裁ごみ焼却炉住民代位訴訟に係る文書提出命令に対する即時抗告申立事件
ア 事件の表示
福岡高等裁判所平成15年(行ス)第1号
 文書提出命令に対する即時抗告申立事件
抗告人 福岡市住民12名
相手方 国ほか6名
 決定年月日 平成15年2月28日
 申立年月日 平成15年3月6日
イ 事案の概要
 本件は,ごみ焼却炉入札談合事案に対して提起された住民訴訟(基本事件福岡地方裁判所平成12年(行ウ)第27号損害賠償代位請求等(住民訴訟)事件)において,当委員会に係属中のごみ焼却炉入札談合事件(平成11年(判)第4号日立造船(株)ほか4名に対する件)に係る審判記録について民事訴訟法第223条第1項に基づき申立てのあった記録の一部についてのみ提出を命じる決定がされたところ,当該決定に対し住民訴訟原告(抗告人)らが即時抗告を申し立てたものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,現在,福岡高等裁判所に係属中である。

(7) 不動産鑑定所による行政文書不開示決定取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成16年(行コ)第51号
 行政文書開示請求事件
控訴人(原告) 有限会社庚申不動産鑑定所
被控訴人(被告) 公正取引委員会事務総長
 提訴年月日 平成15年3月10日
 判決年月日 平成16年1月16日
(請求棄却,東京地方裁判所)
 控訴年月日 平成16年1月30日
イ 事案の概要
 本件は,(有)庚申不動産鑑定所(以下「庚申不動産」という。)(原告,控訴人)が,情報公開法に基づき,自らの申告に係る訴外(社)茨城県不動産鑑定士協会(以下「茨城県不動産鑑定士協会」という。)の独占禁止法違反被疑事件について,「平成14年4月9日付け『申告の処理に係る申出について』に基づき情報管理室が申告処理審理会へ提出した文書」(以下「本件行政文書」)という。)の開示を請求したところ,公正取引委員会から,その存否を含めて応答できない旨の決定を受けたため,その決定の取消しを求めるものである。
ウ 一審(東京地方裁判所)判決の概要
(ア)  本件行政文書について,公正取引委員会がその存否を応答すれば,茨城県不動産鑑定士協会に関して,他に独占禁止法違反に係る申告情報が存在するか否か,その申告の処理に係る申出があったか否か,また,茨城県不動産鑑定士協会に対する公正取引委員会の調査活動の有無が明らかとなり,更には調査の進捗状況や具体的な内容等が推測されるおそれが生じるものと認められる。そうすると,本件行政文書の存否を応答することにより,茨城県不動産鑑定士協会の信用低下を招き,その事業活動に不利益を与えるおそれがあるというべきであるから,本件行政文書については,その存否を応答するだけで,情報公開法第5条第2号イに規定する不開示情報を開示したことになるものと認められる。
(イ)  本件行政文書の存否について応答することにより,茨城県不動産鑑定士協会に対する公正取引委員会の調査活動の有無及び進捗状況等が明らかになり,これによって,茨城県不動産鑑定士協会が公正取引委員会の調査活動がある程度進展していることを知ることとなれば,その後の調査活動についての対策を講ずる可能性があり,また,公正取引委員会が申告の事実や事情聴取の有無を公表しないことに対する申告者等の信頼を損ない,申告者等に調査活動に対する任意の協力を求めることが困難になるから,公正取引委員会による審査及び調査活動を困難にするおそれがあるというべきである。よって,本件行政文書については,その存否を応答するだけで,情報公開法第5条第6号イに規定する不開示情報を開示したことになるものと認められる。
(ウ)  情報公開法第7条は,不開示情報が記録された行政文書であっても,行政機関の長が,公益上特に必要があると認める場合に,その裁量により,当該行政文書を開示することができることを規定したものであるから,同条による行政文書の開示をしなかった行政機関の長の判断が,与えられた裁量権を逸脱又は濫用するものでない限り,違法となることはない。本件における庚申不動産の主張からは,本件行政文書を開示することに公益上特に必要があると認めることはできず,公正取引委員会が本件行政文書を不開示としたことが裁量権の逸脱又は濫用に該当するとはいえない。
エ 訴訟手続の経過
 本件については,現在,東京高等裁判所に係属中である。

(8) 平成10年(判)第2号に係る審判事件記録閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成15年(行ウ)第152号
 閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件
原告 株式会社函館新聞社
被告 公正取引委員会
 提訴年月日 平成15年3月10日
イ 事案の概要
 本件は,(株)函館新聞社(原告)が独占禁止法第69条に基づいて行った平成10年(判)第2号(株)北海道新聞社に対する審判事件に係る事件記録全部の閲覧謄写申請に対し,公正取引委員会(被告)が本審判事件の事件記録のうち一部を除いて閲覧謄写を不許可とする旨の処分をしたところ,(株)函館新聞社が当該処分の取消しを求めたものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,現在,東京地方裁判所に係属中である。

(9) 札幌地裁住民代位訴訟に係る文書提出命令に対する即時抗告申立事件
ア 事件の表示
札幌高等裁判所平成16年(行ス)第1号
 文書提出命令に対する即時抗告申立事件
抗告人
相手方 北海道住民2名
 決定年月日 平成16年1月13日
 申立年月日 平成16年1月23日
イ 事案の概要
 本件は,北海道上川支庁発注の農業土木工事入札談合事案に対して提起された住民訴訟(基本事件札幌地方裁判所平成12年(行ウ)第29号損害賠償請求事件)において,勧告審決の基礎となった北海道職員の供述調書の提出を命じる決定がされたところ,当該決定に対し国(当委員会)から即時抗告を申し立てたものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件は,現在,札幌高等裁判所に係属中である。

独占禁止法第24条(差止請求権)に基づく差止請求事件
 平成15年度当初において係属中の独占禁止法第24条に基づく差止請求事件は14件であったが,同年度中に5件の訴えが提起され,下表のとおり大阪地裁において1件,東京地裁において9件の請求棄却判決があった。




独占禁止法第25条(無過失損害賠償責任)に基づく損害賠償請求事件
 平成15年度当初において独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求事件は,(株)函館新聞社による損害賠償請求事件及び福島県による損害賠償請求事件の2件であったが,平成15年度中に新たに広島市による損害賠償請求事件が提起され,平成15年度末現在において3件が係属中である。

(1) 株式会社北海道新聞社による株式会社函館新聞社の事業活動排除事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成14年(ワ)第4号
損害賠償請求事件
原告 株式会社函館新聞社
被告 株式会社北海道新聞社
 提訴年月日 平成14年12月27日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,(株)北海道新聞社(以下「北海道新聞社」という。)による函館対策と称する一連の行為によって(株)函館新聞社(以下「函館新聞社」という。)の事業活動を排除した行為について,平成10年2月5日,勧告を行ったところ,これを応諾しなかったことから審判開始決定を行い,審判官をして審判を行わせていたところ,同意審決を受ける旨の申出があり,かつ,具体的措置に関する計画書が提出されたので,平成12年2月28日,北海道新聞社に対し当該行為の排除等を命ずる同意審決を行った。その後,平成14年12月27日,函館新聞社は,北海道新聞社に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成15年1月7日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成15年7月3日,意見書を提出した。平成15年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

(2) 福島県内の官公庁等発注航空写真測量業務入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成15年(ワ)第1号
損害賠償請求事件
原告 福島県
被告 株式会社パスコほか7名
 提訴年月日 平成15年3月31日
イ 事案の概要
 当委員会は,福島県内の官公庁等発注の航空写真測量業務の入札談合について,平成13年6月19日,(株)パスコほか7名(以下「パスコほか7名」という。)に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である福島県は,被審人パスコほか7名及び国際航業(株)に対して,独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成15年4月3日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成15年9月19日,意見書を提出した。平成15年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

(3) 広島市水道局発注の上水道本管工事入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成16年(ワ)第1号
損害賠償請求事件
原告 広島市
被告 岡崎管工株式会社ほか25名
 提訴年月日 平成16年2月25日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,広島市水道局発注の上水道本管工事入札談合について,平成13年3月30日,(有)新海設備工業ほか27名に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。また,岡崎管工(株)(以下「岡崎管工」という。)に対しては,審判手続を経て平成14年7月11日審判審決を行った(その後,審決取消請求訴訟が提起され,平成15年7月11日上告受理申立が不受理となり確定)。当該審決確定後,発注者である広島市は,被審人岡崎管工ほか25名に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成15年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

その他の独占禁止法関係の損害賠償請求事件等
(1) 米軍厚木基地における入札談合事件に係る民法第709条及び第719条訴訟
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成14年(ネ)第4622号
損害賠償請求事件
控訴人(本訴原告) アメリカ合衆国
被控訴人(本訴被告) 株式会社アタラシほか25名
 提訴年月日 平成6年9月16日
 判決年月日 平成14年7月15日
(請求棄却,東京地方裁判所)
 控訴年月日 平成14年8月2日
イ 事案の概要
 本件は,米国海軍航空施設(厚木基地)における建設工事等を競争入札により発注しているアメリカ合衆国の厚木駐在建設事務官が,競争入札に参加する厚木建設部会会員73名の昭和59年から平成2年にかけての談合行為により損害を被ったとして損害賠償を求める「通告書」を送付したが,これに応じなかった(株)アタラシほか25名(訴訟提起当初は荒澤建設(株)ほか52名)に対して,民法第709条及び第719条の規定に基づき損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起し,同裁判所が原告の請求を棄却する判決を言い渡したところ,平成14年8月2日控訴したものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件について,平成15年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

(2) 京都市発注低食塩次亜塩素酸ソーダ入札談合事件に係る民法第719条訴訟
ア 事件の表示
京都地方裁判所平成11年(ワ)第2882号
損害賠償請求事件
原告 京都市
被告 ダイソー株式会社ほか8名
 提訴年月日 平成11年11月9日
 和解年月日 平成15年12月24日(和解)
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,京都市上下水道事業管理者発注の4浄水場向け及び4下水処理場向け低食塩次亜塩素酸ソーダの入札談合について,平成11年1月25日,ダイソー(株)ほか8名に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である京都市は,被審人であるダイソー(株)ほか8名に対して,民法第719条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を京都地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成12年3月22日,原告である京都市が,京都地方裁判所に対し平成11年7月28日に提起されていた平成11年(行ウ)第20号違法公金支出金返還請求住民訴訟事件への共同訴訟参加を申し出て同事件において係属していたところ,平成15年12月24日,和解が成立し終了した。

(3) 高槻市発注上水道工事入札談合事件に係る民法第709条訴訟
ア 事件の表示
大阪地方裁判所平成14年(ワ)第3005号
損害賠償請求事件
原告 高槻市
被告 有限会社アーサーほか26名
 提訴年月日 平成14年3月28日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,高槻市水道部発注の上水道本管工事入札談合について,平成13年11月7日,(有)アーサーほか26名(以下「アーサーほか26名」という。)に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である高槻市は,被審人であるアーサーほか26名に対して,民法第709条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件について,平成15年度末現在,大阪地方裁判所に係属中である。

(4) (株)北海道新聞社による(株)函館新聞社の参入妨害事件に係る民法709条訴訟
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成14年(ワ)第8915号
損害賠償請求事件
原告 株式会社函館新聞社
被告 株式会社北海道新聞社
 提訴年月日 平成14年4月26日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,(株)北海道新聞社(以下「北海道新聞社」という。)による函館対策と称する一連の行為によって(株)函館新聞社(以下「函館新聞社」という。)の事業活動を排除した行為について,平成12年2月28日,北海道新聞社に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。その後,平成14年4月26日,函館新聞社は,北海道新聞社に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成15年度末現在東京地方裁判所に係属中である。

(5) 旧埼玉土曜会談合事件に係る住民訴訟
ア 事件の表示
最高裁判所平成13年(行ツ)第235号
損害賠償請求上告事件
上告人(控訴人・原告)埼玉県住民26名
被上告人(被控訴人・被告)鹿島建設株式会社ほか24名
 提訴年月日 平成4年8月14日
 判決年月日 平成12年3月13日
(訴え却下,浦和地方裁判所)
 判決年月日 平成13年4月26日
(控訴棄却,東京高等裁判所)
 上告及び上告受理申立て年月日
平成13年4月27日
 判決年月日 平成15年6月26日
(上告棄却,不受理決定,最高裁)
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,埼玉県発注の土木一式工事の入札談合について,平成4年6月3日,鹿島建設(株)ほか65名に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決確定後,埼玉県の住民は,鹿島建設(株)ほか24名(以下「鹿島建設ほか24名」という。)に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,埼玉県に代位して損害賠償を求める住民訴訟を浦和地方裁判所に提起した。同裁判所は平成12年3月13日,訴え却下の判決を下した後,鹿島建設ほか24名は,東京高等裁判所に控訴したが請求棄却されたため,平成13年4月27日,最高裁判所に上告した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成15年6月26日,最高裁判所において,上告棄却,不受理決定がなされ終了した。

(6) 日本下水道事業団発注の電気設備工事に係る住民訴訟
ア 事件の表示
(ア)  名古屋高等裁判所平成15年(行コ)第40号
 損害賠償請求上告事件
被上告人(被控訴人・原告)四日市市住民3名
上告人(控訴人・被告)日本下水道事業団及び富士電機株式会社
 提訴年月日 平成7年12月21日
 判決年月日 平成13年3月29日
(請求一部認容,津地方裁判所)
 判決年月日 平成14年4月24日
(訴え却下,名古屋高等裁判所)
 上告及び上告受理申立て年月日
平成14年4月26日
 判決年月日 平成15年6月12日
(破棄差戻し[名古屋高等裁判所],最高裁判所)
 和解年月日 平成15年10月20日(和解)
(イ)  横浜地方裁判所平成14年(行ウ)第64号
 損害賠償請求事件
原告(控訴人・上告人) 横浜市等住民32名
被告(被控訴人・被上告人)(株)日立製作所ほか9名
 提訴年月日 平成8年2月19日
 判決年月日 平成11年11月17日
(訴え却下,横浜地方裁判所)
 判決年月日 平成13年9月19日
(控訴棄却・原判決取消し,東京高等裁判所)
 上告及び上告受理申立て年月日
平成13年9月26日〜10月2日
 判決年月日 平成14年4月26日
(平成14年(行ツ)第1号棄却決定,最高裁)
 判決年月日 平成14年10月15日
(平成14年(行ヒ)第1号 破棄差戻し
〔横浜地裁〕,最高裁)
 和解年月日 平成16年3月31日 (和解)
(ウ)  さいたま地裁平成15年(行ウ)第9号
 損害賠償請求控訴事件
控訴人(原告)鶴ヶ島市住民5名
被控訴人(被告)株式会社日立製作所ほか9名
 提訴年月日 平成8年4月9日
 判決年月日 平成14年3月27日
(訴え却下,浦和地方裁判所)
 控訴年月日 平成14年4月9日
 判決年月日 平成14年12月25日
(破棄差戻し[さいたま地裁],東京高裁)
 和解年月日 平成16年4月26日
(和解)
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,日本下水道事業団発注の電気設備工事の入札談合について,平成7年7月12日,(株)日立製作所ほか8名に対し課徴金納付命令を行った。前記原告住民らは,前記被告らに対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償を求める住民訴訟を前記各裁判所等に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 前記アの各事件については,平成15年度末現在各裁判所において2件について和解が成立し,終了しており,1件については,係属中である。

(7) デジタル計装制御システム工事の入札に係る住民訴訟
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成14年(行コ)第60号
 損害賠償請求控訴事件
控訴人(原告)東京都住民6名
被控訴人(被告)横河電機株式会社ほか5名
 提訴年月日 平成8年2月22日
 判決年月日 平成14年1月31日
(請求棄却,東京地方裁判所)
 控訴年月日 平成14年2月8日
 和解年月日 平成15年4月25日
(和解)
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,デジタル計装制御システム工事の入札談合について,平成7年8月8日,横河電機(株)ほか3名に対し課徴金納付命令を行った。原告住民らは,被告らに対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償を求める住民訴訟を前記各裁判所等に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 平成15年4月25日,東京高裁において,和解が成立し終了した。

(8) 群馬県及び同県沼田市発注の土木一式工事等入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成15年(行コ)第186号
 損害賠償請求事件
被控訴人(原告)沼田市住民
控訴人(被告)群馬県知事ほか6名
 提訴年月日 平成10年4月20日
 判決年月日 平成15年6月13日
(請求一部認容,前橋地裁)
 控訴年月日 平成15年6月27,28,30
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,群馬県沼田市及び群馬県沼田土木事務所発注の土木・建築・舗装工事の入札談合について,平成10年1月23日,同県沼田市所在の土木工事業者等に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,群馬県沼田市の住民は,当該土木工事業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,群馬県及び同沼田市に代位して損害賠償を求める住民訴訟を前橋地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成15年6月13日,前橋地方裁判所において,請求一部認容の判決があった。平成15年6月27日,同28日及び同30日に被告建設業者側が東京高等裁判所に控訴した。

(9) 北海道上川支庁発注の農業土木工事等の入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
札幌地方裁判所平成12年(行ウ)第29号
損害賠償請求事件
原告 北海道住民2名
被告 北海道知事ほか6名
 提訴年月日 平成12年12月14日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,北海道上川支庁発注の農業土木工事等の入札談合について,平成12年6月16日,旭川市等所在の農業土木工事業者等に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,札幌市内の住民は,当該農業土木工事業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,北海道に代位して損害賠償を求める住民訴訟を札幌地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成15年度末現在,札幌地方裁判所に係属中である。
 なお,平成15年度においては,裁判所から当委員会に対して審尋があり回答するとともに,文書提出命令に対して即時抗告を行った。

(10) 地方自治体発注のごみ焼却施設建設の入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
(ア)  京都地方裁判所平成12年(行ウ)第3号
 公金不正支出差止等請求事件
原告 京都市住民775名
被告 京都市長及び川崎重工業株式会社
 提訴年月日 平成12年2月10日
(イ)  東京地方裁判所平成12年(行ウ)第185号
 損害賠償請求事件
原告 東京都住民3名
被告 株式会社タクマほか4名
 提訴年月日 平成12年7月14日
(ウ)  東京地方裁判所平成12年(行ウ)第203号
 損害賠償請求事件
原告 町田市住民
被告 多摩ニュータウン環境組合及び日立造船株式会社
 提訴年月日 平成12年8月4日
(エ)  鳥取地方裁判所平成12年(行ウ)第2号
 損害賠償請求事件
原告 米子市住民3名
被告 米子市長及びJFEエンジニアリング株式会社
(旧商号 日本鋼管株式会社)
 提訴年月日 平成12年8月9日
(オ)  新潟地方裁判所平成12年(行ウ)第13号
 損害賠償請求事件
原告 豊栄市住民12名
被告 豊栄郷清掃施設処理組合管理者及び日立造船株式会社
 提訴年月日 平成12年10月6日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,地方公共団体発注のごみ焼却施設の建設工事に係る入札談合について,平成11年8月13日,日立造船(株)ほか4名に対し,勧告を行ったところ,これを応諾しなかったため,同年9月8日,審判手続の開始を請求し,平成15年度末現在係属中である。
 前記原告住民らは,前記被告らに対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償を求める住民訴訟を前記各裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成15年度末現在,各裁判所に係属中である。
 なお,前記各事件について,平成12年度から15年度にかけて,それぞれの受訴裁判所から,文書送付嘱託,審尋,文書特定手続及び求意見がありそれぞれ回答を行った。
 また,平成14年度中に,前記(ア)(エ)及び(オ)の事件について,受訴裁判所から文書提出命令が出され,それぞれ即時抗告を行った。