第2章 違反被疑事件の審査及び処理

第1 違反被疑事件の審査及び処理の状況

 独占禁止法は,事業者が私的独占又は不当な取引制限をすること,不公正な取引方法を用いること等を禁止しており(第3条,第19条ほか),公正取引委員会は,一般から提供された情報,自ら探知した事実等を検討し,これらの禁止規定に違反する事実があると思料するときは,独占禁止法違反被疑事件として必要な審沓を行っている。
 審査事件のうち必要なものについては独占禁止法第46条の規定に基づく権限を行使して審査を行い,違反する事実があると認められたときは,排除措置を採るよう勧告し(第48条第1項及び第2項),若しくは審判手続を開始し(第49条第1項),又は違反行為がなくなってから1年を経過しているため,勧告を行うことができないが,課徴金納付命令の対象となる場合には,同命令を行っている(第48条の2)。
 なお,相手方が勧告を応諾した場合には勧告審決(第48条第4項),その他の場合は審判手続を経て同意審決(第53条の3)又は審判審決(第54条)を行っている。相手方が課徴金納付命令に対して不服を申し立て審判手続の開始を請求した場合には,審判手続が開始され,同命令は審判手続に移行する(第49条第2項及び第3項)。
 また,勧告等の法的措置(注)を採るに足る証拠が得られなかった場合であっても,違反の疑いがあるときは,関係事業者に対して警告を行い,是正措置を採るよう指導している。
 さらに,違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが,違反につながるおそれのある行為がみられた場合には,未然防止を図る観点から注意を行っている。
 なお,法的措置及び警告については,当該事実を公表している。また,注意及び打切りについては,競争政策上公表することが望ましいと考えられる事案については,関係事業者から公表する旨の了解を得た場合又は違反被疑の対象となった事業者が公表を望む場合は,その旨公表している。
 平成16年度における審査件数(小売業における不当廉売事案で迅速処理したもの(第1−2表)を除く。)は,前年度からの繰越しとなっていたもの38件,年度内に新規に着手したもの101件,合計139件であり,このうち本年度内に処理した件数は120件である。
 120件の内訳は,勧告等の法的措置35件,警告9件,注意60件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切ったもの16件となっている(第1−1表)。
(注)  勧告等の法的措置とは,「勧告」及び「勧告を行っていない課徴金納伺命令」である。


 平成16年度において,勧告,警告,注意又は打切りのいずれかの処理を行ったものを行為類型別にみると,私的独占5件,価格カルテル5件,入札談合22件,その他のカルテル1件,不公正な取引方法76件,その他11件となっている(第2表)。法的措置として勧告を行った事件は35件であり,この内訳は,私的独占2件,価格カルテル2件,入札談合22件,不公正な取引方法8件,その他1件となっている(第3表,第3図,第4表)。
 また,平成16年度において,独占禁止法の規定に違反する事実があると思料され,公正取引委員会に報告(申告)された件数は2,607件となっている(第2図)。この報告が書面で具体的な事実を摘示して行われた場合には,措置結果を通知することとされており(第45条第3項),平成16年度においては,1,455件の通知を行った。
 なお,公正取引委員会は,独占禁止法違反被疑行為の端緒情報をより広く収集するため,平成14年4月からインターネットを利用した申告が可能となる電子申告システムを当委員会のホームページ上に設置しているところ,平成16年度においては,同システムを利用した申告が227件あった。









第2 勧告等の法的措置

 平成16年度は35件の法的措置を行った。35件のうち,16件については関係人の一部について審判手続を開始し,その他については勧告審決を行った。平成16年度に法的措置を採った35件について違反法条をみると,第3条前段(私的独占の禁止)違反2件,第3条後段(不当な取引制限の禁止)違反23件,第8条第1項第1号及び第4号(事業者団体による競争の実質的制限等の禁止)違反1件,第8条第1項第4号(事業者団体による構成員の機能活動の制限の禁止)違反1件及び第19条(不公正な取引方法の禁止)違反8件となっている。
 法的措置を採った上記35件の概要は,以下のとおりである。
1 独占禁止法第3条前段違反事件
(1) (株)有線ブロードネットワークスほか1社に対する件(平成16年(勧)第26号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア) (a)  音楽の提供を主たる目的として音声その他の音響を顧客に送信する放送(以下「音楽放送」という。)には,有線電気通信設備により音声その他の音響を顧客に送信するもの(以下「有線音楽放送」という。)及び通信衛星を利用して音声その他の音響を顧客に送信するもの(以下「衛星音楽放送」という。)がある。
(b)  音楽放送を提供する事業者(以下「音楽放送事業者」という。)は,店舗,宿泊施設等の事業所及び個人に対して,有線音楽放送又は衛星音楽放送を提供している。
(c)  音楽放送事業者は,店舗,宿泊施設等の事業所に対しては,専ら,当該事業所における背景音楽を提供することを目的として音楽放送を提供し(以下,店舗,宿泊施設等の事業所に対して提供される音楽放送を「業務店向け音楽放送」という。),個人に対しては,専ら,当該個人自らが楽しむための音楽を提供することを目的として音楽放送を提供している(以下,個人に対して提供される音楽放送を「個人向け音楽放送」という。)。
(d)  音楽放送事業者は,自ら又はその代理店を通じて,顧客との間で音楽放送の提供に係る契約(以下「受信契約」という。)を締結し,当該顧客に,有料で業務店向け音楽放送又は個人向け音楽放送を提供している。
(e)  平成16年7月末時点で,国内における業務店向け音楽放送の受信契約件数において,(株)有線ブロードネットワークス(以下「有線ブロードネットワークス」という。)の国内における業務店向け音楽放送の受信契約数は,72パーセント程度を占め,音楽放送事業者中第1位であり,キャンシステム(株)(以下「キャンシステム」という。)の国内における業務店向け音楽放送の受信契約数は,20パーセント程度を占め,同第2位である。/td>
(a)  有線ブロードネットワークス及びキャンシステムがその顧客との間で締結する業務店向け音楽放送の受信契約においては,通常,契約期問を2年間とし,顧客は,前記2社が提示する複数の商材(有線ブロードネットワークスの場合「USEN40ch」,「USEN24ch」等,キャンシステムの場合「ケーブル50ch」,「ケーブル30ch」等の受信契約の対象をいう。以下同じ。)の中から受信する商材を選び,加入金及び月額聴取料(キャンシステムにあっては,加入金,工事費及び月額聴取料)を支払うこととされている。
 また,前記2社が,その顧客との間で締結する業務店向け音楽放送の受信契約には,既に自社以外の音楽放送事業者との間で同契約を締結している顧客との間で当該契約に代えて締結する受信契約(以下「切替契約」という。)と前記顧客以外の顧客との間で締結する受信契約(以下「新規契約」という。)がある。
(b)  前記2社が,その顧客と締結する切替契約においては,加入金及び工事費は,現行の契約を継続した場合には顧客に発生しない費用であることから,通常,切替契約を締結した顧客に対し請求されることはなく,顧客は月額聴取料のみを支払うこととなる。
(c)  新規契約においては,有線ブロードネットワークスは,おおむね,加入金及び月額聴取料を請求しているが,キャンシステムは,おおむね,月額聴取料のみを請求している。
(a)  平成15年6月末時点において,有線ブロードネットワークスが業務店向け音楽放送の顧客に提示していた受信契約の条件は,「USEN40ch」,「USEN24ch」及び「SP(Single Mix)」について,おおむね,新規契約の場合,加入金(消費税相当額を含む。以下同じ。)は,それぞれ,21,000円,15,750円,31,500円,月額聴取料(消費税相当額を含む。以下同じ。)は,いずれの商材においても4,725円であり,月額聴取料の無料期間は,いずれの商材においても当該顧客が業務店向け音楽放送を受信するために必要なチューナーが当該顧客の店舗等に設置された月(以下「チューナー設置月」という。)に限られ,切替契約の場合,いずれの商材においても加入金は請求されず,月額聴取料はいずれの商材においても3,675円から4,725円までであり,月額聴取料の無料期間はいずれの商材においてもチューナー設置月を含め,最長で3か月であった。
(b)  一方,平成15年6月末時点において,キャンシステムが業務店向け音楽放送の顧客に提示していた受信契約の条件は,「ケーブル120ch」,「ケーブル50ch」,「ケーブル30ch」及び「サテライト50ch」について,おおむね,切替契約及び新規契約を問わず,月額聴取料は,「ケーブル120ch」にあっては5,250円,「ケーブル50ch」,「ケーブル30ch」及び「サテライト50ch」にあっては4,725円とした上で,おおむね,当該金額から1,000円程度を割り引くとともに,月額聴取料の無料期間はいずれの商材においてもチューナー設置月を含め2か月程度とし,加入金は,おおむね,切替契約及び新規契約のいずれにおいても請求されていなかった。
(イ)  有線ブロードネットワークス及び(株)日本ネットワークヴィジョン(以下「日本ネットワークヴィジョン」という。)は,平成15年7月1日,業務提携契約を締結し,日本ネットワークヴィジョンが取次ぎを行う有線ブロードネットワークスが締結する業務店向け音楽放送の受信契約の条件を前記(ア)c(a)と同様の条件とした。有線ブロードネットワークス及び日本ネットワークヴィジョンは,キャンシステムから短期間で大量の顧客を奪い,その音楽放送事業の運営を困難にし,キャンシステムに音楽放送事業を有線ブロードネットワークスに売却させて普楽放送事業を統合することを企図して,日本ネットワークヴィジョンが営業を開始した平成15年7月14日以降,キャンシステムの顧客を奪取する行為を開始したところ,キャンシステムが有線ブロードネットワークス及び日本ネットワークヴィジョンに対抗して月額聴取料を引き下げるなどしたことから,有線プロードネットワークス及び日本ネットワークヴィジョンは,平成15年8月以降,合同又は単独で,順次,次の行為を実施(日本ネットワークヴィジョンにあっては,有線ブロードネットワークスの承認を受けて実施)し,集中的にキャンシステムの顧客を奪取している。
 平成15年8月ころに実施した「NNVキャンペーン」等
 日本ネットワークヴィジョンは,平成15年8月18日から,キャンシステムの顧客の大部分が受信している商材と顧客層が重複する「USEN40ch」,「USEN24ch」及び「SP(Single Mix)」について,キャンシステムの顧客に限って,月額聴取料の無料期間を6か月とし,「USEN24ch」については月額聴取料を3,150円とする「NNVキャンペーン」と称するキャンペーンを実施し,有線ブロードネットワークスは,日本ネットワークヴィジョンの営業所のない地域を中心に,前記日本ネットワークヴィジョンと同様の受信契約の条件で,同年8月5日ころから,キャンシステムの顧客を奪取するためのキャンペーンを実施した。
 平成15年10月1日付けで締結した覚書による受信契約の条件の変更
 有線ブロードネットワークス及び日本ネットワークヴィジョンは,キャンシステムの顧客を奪取する活動を強化するため,平成15年10月1日,覚書を締結し,前記(イ)aの業務提携契約で定めた受信契約の条件を変更し,平成15年10月1日以降,キャンシステムの顧客の大部分と顧客層が重複する「USEN40ch」,「USEN24ch」及び「SP(Single Mix)」について,キャンシステムの顧客に限って,月額聴取料の最低額を3,675円であったものを3,150円とし,月額聴取料の無料期間をチューナー設置月を含めて最長3か月であったものをチューナー設置月を含めて最長6か月とした。
 平成15年11月ころに実施した「TDK(東京大空襲)キャンペーン」
 有線ブロードネットワークスは,平成15年11月4日から同月21日までを期間として,キャンシステムの顧客に限って,例えば,「USEN24ch」について月額聴取料を3,150円とする関東地区限定の「TDK(東京大空襲)キャンペーン」と称するキャンペーンを有線ブロードネットワークスの全国の支社から営業担当者を集めて実施し,日本ネットワークヴィジョンは,前記有線ブロードネットワークスが実施したキャンペーンにあわせて有線ブロードネットワークスと同様の受信契約の条件をキャンシステムの顧客に限って提示するキャンペーンを実施した。
 平成16年1月ころに実施した「1月度全国一斉切替キャンペーン」
 有線ブロードネットワークスは,平成16年1月7日から同月20日までを期間として,有線ブロードネットワークスの支社ごとにキャンシステムの顧客を対象にした切替契約の目標件数(全国で7,000件)を設定し,前記(イ)cのキャンペーンと同じ条件により,支社がその達成率を競う「1月度全国一斉切替キャンペーン」と称するキャンペーンを実施した。
 平成16年2月及び3月ころに実施した「40周年記念特別キャンペーン」
 有線ブロードネットワークス及び日本ネットワークヴィジョンは,合同で,「USEN440ch」,「USEN80ch」,「USEN40ch」,「USEN24ch」,「SP(All Mix)」,「SP(Dual Mix)」及び「SP(Single Mix)」について,最低月額聴取料を一律3,000円に引き下げ,月額聴取料の無料期間についても,「USEN440ch」及び「SP(All Mix)」にあってはチューナー設置月を含めて最長6か月,「USEN80ch」及び「SP(Dual Mix)」にあってはチューナー設置月を含めて最長9か月,「USEN40ch」,「USEN24ch」及び「SP(Single Mix)」にあってはチューナー設置月を含めて最長12か月とするといった有利な切替契約の条件をキャンシステムの顧客に限って提示する「40周年記念特別キャンペーン」と称するキャンペーンを平成16年2月に実施し,著しい成果を挙げたことから,翌月の平成16年3月末まで前記「40周年記念特別キャンペーン」と称するキャンペーンを延長して実施した。
 平成16年4月及び5月ころに実施した「トクトクキャンペーン」
 有線ブロードネットワークスは,平成16年4月1日以降は,前記(イ)bの覚書による切替契約の条件に戻すものの,キャンシステムの顧客奪取を継続するために,平成16年4月1日から同年5月末までの間を期間として,すべての商材を対象に,キャンシステムの顧客に限って,加入金として30,000円を支払った顧客に対しては月額聴取料の無料期間を12か月(16,000円を支払った顧客に対しては6か月)上乗せし,「USEN40ch」,「USEN24ch」及び「SP(Single Mix)」については,同社の支社長の決裁により更に6か月上乗せすることにより,例えば,加入金として30,000円を支払った顧客に対して月額聴取料の無料期間を最長24か月とする「トクトクキャンペーン」と称するキャンペーンを実施した。
 また,日本ネットワークヴィジョンは,有線ブロードネットワークスが実施した前記「トクトクキャンペーン」と称するキャンペーンの期間中,すべての商材を対象に,キャンシステムの顧客に限って,月額聴取料の前払いとして30,000円を支払った顧客に対して,月額聴取料の無料期間を12か月(16,000円を支払った顧客に対しては6か月)上乗せし,「USEN40ch」,「USEN24ch」及び「SP(Single Mix)」については,月額聴取料の無料期間を更に6か月上乗せすることにより,例えば,月額聴取料の前払いとして30,000円を支払った顧客に対して月額聴取料の無料期間を最長24か月とするキャンペーンを実施した。
(ウ)  有線ブロードネットワークス及び日本ネットワークヴィジョンは,前記(イ)の行為により,著しく多数のキャンシステムの顧客を奪取しており,キャンシステムの受信契約の件数は,平成15年6月末時点の262,821件から,平成16年6月末時点の216,175件へと著しく減少(17パーセント程度の減)した。
 この結果,国内における業務店向け音楽放送の受信契約件数において,有線ブロードネットワークスの国内における業務店向け音楽放送の受信契約数の占める割合は68パーセント程度(平成15年6月末時点)から72パーセント程度(平成16年7月末時点)に増加し,キャンシステムの国内における業務店向け音楽放送の受信契約数の占める割合は26パーセント程度(平成15年6月末時点9から20パーセント程度(平成16年7月末時点)に減少している。
 また,キャンシステムは,平成15年6月末時点において128箇所あった営業所を平成16年8月末時点で90箇所に減少させている。
(エ)  有線ブロードネットワークス及び日本ネットワークヴィジョンは,公正取引委員会が平成16年6月30日に東京高等裁判所に対して,独占禁止法第67条第1項の規定に基づき緊急停止命令の申立てを行ったところ,平成16年7月9日,すべての商材について,月額聴取料を3,675円以上とし,かつ,月額聴取料の無料期間をチューナー設置月を含めて3か月以内とする旨決定し,同日以降,3,675円を下回る月額聴取料又はチューナー設置月を含めて3か月を超える月額聴取料の無料期間をキャンシステムの顧客に限って提示することによりキャンシステムの顧客を奪取する行為を取りやめている。
ウ 排除措置
 関係人2社に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  音楽放送の提供に当たって,キャンシステムの顧客に限って切替契約の条件として3,675円を下回る月額聴取料又はチューナー設置月を含めて3か月を超える月額聴取料の無料期間を提示する行為を取りやめている旨及び今後同様の行為を行わない旨を相互に書面により通知するとともに,キャンシステムに書面により通知すること。
(イ)  それぞれ,今後,前記(ア)の行為と同様の行為により,他の音楽放送を提供する事業者の顧客を不当に奪取しないこと。
(ウ)  それぞれ,今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わないよう音楽放送の営業担当者に対する独占禁止法に関する研修を行うために必要な措置を講じ,当該措置の内容を自社の役員及び従業員に周知徹底させること。
(2) インテル(株)に対する件(平成17年(勧)第1号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア) (a)  インテル(株)(以下「日本インテル」という。)は,アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタクララに所在するインテルコーポレーション(以下「米国インテル」という,)が全額出資しているインテルインターナショナルの全額出資による日本法人であり,我が国において,米国インテルから,その製造販売する,パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)に搭載するx86系セントラル・プロセッシング・ユニット(以下「CPU」という。)を輸入し販売する事業を営む者である(米国インテルが製造販売するCPUを以下「インテル製CPU」という。)。
(b)  日本エイ・エム・ディ(株)(以下「日本AMD」という。)は,アメリカ合衆国カリフォルニア州サニーベールに所在するアドバンスド・マイクロ・デバイセス インクが全額出資している日本法人であり,東京都新宿区西新宿二丁目4番1号新宿NSビル5階に本店を置き,我が国において,同社から,その製造販売するCPU(以下「AMD製CPU」という。)を輸入し販売する事業を営む者である。
(c)  トランスメタ・コーポレーション(以下「米国トランスメタ」という。)は,アメリカ合衆国カリフォルニア州サンタクララに所在するCPUの製造販売業を営む者であり,東京都新宿区西新宿二丁目3番3号に本店を置くトランスメタ(株)(以下「日本トランスメタ」という。)に全額出資しているところ,日本トランスメタは,米国トランスメタが製造販売するCPU(以下「トランスメタ製CPU」という。)について,我が国において営業活動を行い,パソコンの製造販売業を営む者からのトランスメタ製CPUに対する注文を米国トランスメタに取り次ぐなどの事業を営んでいる。
(a)  日本インテル,日本AMD及び米国トランスメタの3社は,我が国において,国内に本店を置きパソコンの製造販売業を営む者(以下「国内パソコンメーカー」という。)に対し,直接又は代理店を通じてCPUを販売している。
(b)  前記(ア)b(a)記載の3社が国内パソコンメーカーに対して直接又は代理店を通じて販売するCPUの総販売数量(以下「CPU国内総販売数量」という。)は,我が国において販売されるCPUのほとんどすべてを占めているところ,平成15年において,日本インテルが販売したインテル製CPUの数量がCPU国内総販売数量に占める割合は約89パーセントである。
(a)  パソコンは,一般に,形態によってノートブック形又はデスクトップ形に分けられ,国内パソコンメーカーの中には,それぞれの形態について,機能,用途等に応じて幾つかの「シリーズ」等と称する商品群を設け,さらに,それぞれの商品群の中で,価格,機能等の面において上位から下位までのパソコンを販売しているものがいる。
(b)  国内パソコンメーカーは,その製造販売するパソコンについて,一般に,年に3回又は4回,従来のCPUに比して性能の向上したCPUを搭載したり,従来のパソコンに新たな機能を付加するなどの変更を行ったりして,新たなパソコンを発売しているところ,日本インテル,日本AMD及び日本トランスメタは,主に,当該機会をとらえて,国内パソコンメーカーに対し,CPUの販売に係る営業活動を行っている。
(c)  日本インテルは,国内パソコンメーカーに対して営業活動を行う場合,各国内パソコンメーカーが製造販売するパソコンに搭載するCPUの数量のうちインテル製CPUの数量が占める割合(以下「MSS」という。)を営業上の重要な指標とし,各国内パソコンメーカーのMSSを引き上げることを基本的な営業目標としている。
 日本インテルは,平成3年ころ以降,「インテル・インサイド・プログラム」と称する,国内パソコンメーカーの広告宣伝活動に対する支援制度を通じて,国内パソコンメーカーにおけるインテル製CPUを搭栽するパソコンの販売に係る事業活動を促進することにより,インテル製CPUのブランド力の形成・強化を図っている。
(a)  日本インテルが,国内パソコンメーカーに対し,インテル製CPUを直接販売する場合,国内パソコンメーカーごとに提示する「カスタマー・オーソライズド・プライス」と称する価格(以下「CAP」という。)で販売するときと,特定のインテル製CPUについて,そのCAPから一定の額を差し引いた「ECAP」等と称する価格(以下「特別価格」という。)で販売するときがある。
(b)  日本インテルは,国内パソコンメーカーに対し,特定のインテル製CPUを特別価格で販売する場合,一般的に,CAPで当該CPUを販売したものとして販売代金を請求し,一定期間が経過した後に,CAPと特別価格との差額に販売数量を乗じて得た額の金銭(以下「割戻金」という。)を当該国内パソコンメーカーに提供している。
(c)  また,日本インテルは,インテル製CPUを搭載するパソコンの販売促進等のため,国内パソコンメーカーに対し,米国インテルを通じて,「マーケット・ディベロップメント・ファンド」と称する資金(以下「MDF」という。)を提供する場合がある。
(a)  インテル製CPUについては,その国内における販売数量がCPU国内総販売数量の大部分を占めており,また,パソコンを購入するものの間において広く認知され,強いブランド力を有している。さらに,日本インテルは,価格,機能等の面において上位から下位までのほとんどすべてのパソコンに対応するCPUを国内パソコンメーカーに安定的に供給するとともに,従来のCPUに比して性能を向上させるなどしたCPUを次々に販売している,このため,国内パソコンメーカーにとって,その製造販売するパソコンの品ぞろえの中にインテル製CPUを搭載したパソコンを有することが重要となっている。
(b)  さらに,我が国においては,平成12年ころ以降,パソコンに対する需要の低迷,外国製の安価なパソコンの流入等によって,パソコンを製造販売する事業者の間における競争が激化していることから,国内パソコンメーカーにとっては,他のパソコンを製造販売する事業者と競争する上で,インテル製CPUをできるだけ有利な条件で調達することが重要となっており,このため,日本インテルから,インテル製CPUを購入するに当たって,割戻金又はMDFの提供を受けることを強く望んでいる状況にある。
(c)  このような状況の下で,日本インテルは,割戻金又はMDFの額及びその提供に当たっての条件を定めている。
(イ)  平成12年ころ以降,日本AMDが,インテル製CPUと競合するCPUをより安い価格で発売したことなどを契機として,国内パソコンメーカーが,特に,価格,機能等の面において中位から下位までのパソコンにAMD製CPUを搭載し始めたことから,CPU国内総販売数量のうちAMD製CPUの販売数量が占める割合は,平成12年から平成14年にかけて,約17パーセントから約22パーセントとなった。そのため,日本インテルは,AMD製CPUの販売数最が今後も増加し続けることを危ぐし,平成14年5月ころ以降,各国内パソコンメーカーのMSSを最大化することを目標として,インテル製CPUを直接販売している国内パソコンメーカーのうちの5社(平成12年から平成15年までの期間において,日本インテル,日本AMD及び米国トランスメタが当該5社に対して販売したCPUの数量の合計がCPU国内総販売数量に占める割合は約77パーセントである。)に対し,それぞれ,その製造販売するパソコンに搭栽するCPUについて
(a)  MSSを100パーセントとし,インテル製CPU以外のCPU(以下「競争事業者製CPU」という。)を採用しないこと
(b)  MSSを90パーセントとし,競争事業者製CPUの割合を10パーセントに抑えること
(c)  生産数量の比較的多い複数の商品群に属するすべてのパソコンに搭載するCPUについて競争事業者製CPUを採用しないこと
のいずれかを条件として,インテル製CPUに係る割戻金又はMDFを提供することを約束することにより,その製造販売するすべて若しくは大部分のパソコン又は特定の商品群に属するすべてのパソコンに搭載するCPUについて,競争事業者製CPUを採用しないようにさせる行為を行っている。
 その行為を例示すると,次のとおりである。
(a)  日本インテルは,複数の国内パソコンメーカーに対し,その製造販売する特定のパソコンに搭載するCPUとして採用していた競争事業者製CPUをインテル製CPUに切り替え,又は特定のパソコンに新たに搭載することとしていた競争事業者製CPUの採用を取りやめ,そのMSSをl00パーセントとし,これを維持することを条件として,特定のインテル製CPUに係る割戻金を提供することを約束した。これにより,当該国内パソコンメーカーは,そのMSSをほぼ100パーセントに引き上げ,これを維持している。
(b)  日本インテルは,国内パソコンメーカーに対し,そのMSSを90パーセントとし,競争事業者製CPUの割合を10パーセントに抑え,これを維持することなどを条件として,特定のインテル製CPUに係る割戻金又はMDFを提供することを約束した。これにより,当該国内パソコンメーカーは,パソコンの生産計画を変更するなどにより,そのMSSをほぼ90パーセントに引き上げ,その購入するCPUの数量のうち競争事業者製CPUの購入数量が占める割合をほぼ10パーセントとし,これを維持している。
(c)  日本インテルは,国内パソコンメーカーに対し,その製造販売するパソコンのうち生産数量の比較的多い二つの商品群について,それぞれ,当該商品群に属する特定のパソコンに搭載するCPUとして採用していた競争事業者製CPUをインテル製CPUに切り替え,当該商品群に属するすべてのパソコンに搭載するCPUについて競争事業者製CPUを採用せず,これを維持することを条件として,特定のインテル製CPUに係る割戻金を提供することを約束した。これにより,当該国内パソコンメーカーは,当該二つの商品群に属するすべてのパソコンにインテル製CPUを搭載し,これを維持していた。
(ウ)  これらにより,CPU国内総販売数量のうち日本AMD及び米国トランスメタが国内において販売したCPUの数量が占める割合は,平成14年にいて約24パーセントであったものが平成15年においては約11パーセントに減少している。
ウ 排除措置
 日本インテルに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  米国インテルから,その製造販売するCPUを輸入し,これを,国内パソコンメーカーに販売するに際して,平成14年5月ころ以降行っている,国内パソコンメーカーに対し,その製造販売するパソコンに搭載するCPUについて
 MSSを100パーセントとし,競争事業者製CPUを採用しないこと
 MSSを90パーセントとし,競争事業者製CPUの割合を10パーセントに抑えること
のいずれかを条件として,インテル製CPUに係る割戻し又は資金提供を行うことを約束することにより,その製造販売するすべて又は大部分のパソコンに搭載するCPUについて,競争事業者製CPUを採用しないようにさせる行為を取りやめること。
(イ)  次の事項を自社の取引先である国内パソコンメーカーのすべてに通知するとともに,自社の従業員に周知徹底すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 国内パソコンメーカーに対し,インテル製CPUに係る割戻し又は資金提供を行うに当たって,その製造販売するパソコンに搭載するCPUについて,競争事業者製CPUを採用しないことが条件となるものではない旨
 国内パソコンメーカーに対し,その製造販売する「シリーズ」等と称するパソコンの商品群のうち生産数量の比較的多い複数の商品群に属するパソコンに搭載するCPUとして採用していた競争事業者製CPUをインテル製CPUに切り替えて当該複数の商品群に属するすべてのパソコンにインテル製CPUを搭載し,これを維持することを条件として,インテル製CPUに係る割戻しを行うことを約束することにより,当該複数の商品群に属するすべてのパソコンに搭載するCPUについて,競争事業者製CPUを採用しないようにさせる行為を取りやめている旨
(ウ)  今後,次の行為により,国内パソコンメーカーに対するCPUの販売に係る競争事業者の事業活動を排除しないこと。
 国内パソコンメーカーに対し,その製造販売するパソコンに搭載するCPUについて,MSSを100パーセント又は90パーセント以上とし,これを維持することを条件として,インテル製CPUに係る割戻し又は資金提供を行うことを約束することにより,競争事業者製CPUの割合を0パーセント又は10パーセント以下に抑えるようにさせる行為
 国内パソコンメーカーに対し,正当な理由なく,その製造販売する「シリーズ」等と称するパソコンの商品群のうち生産数量の比較的多い複数の商品群に属するパソコンに搭載するCPUとして採用している競争事業者製CPUをインテル製CPUに切り替えて当該複数の商品群に属するすべてのパソコンにインテル製CPUを搭載し,これを維持することを条件として,インテル製CPUに係る割戻しを行うことを約束することにより,当該複数の商品群に属するすべてのパソコンに搭載するCPUについて,競争事業者製CPUを採用しないようにさせる行為
(エ)  今後,前記(ウ)の行為を行うことがないよう,自社のCPUの販売に係る営業担当の役員及び従業員に対する独占禁止法に関する研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じること。
2 独占禁止法第3条後段違反事件
(1)
 奥村組土木興業(株)ほか1社に対する件(平成16年(勧)第6号),(株)大王建設工業ほか4社に対する件(平成16年(勧)第8号),奥村組土木興業(株)ほか1社に対する件(平成16年(勧)第9号),中林道路(株)ほか5社に対する件(平成16年(勧)第10号),(株)中東組ほか2社に対する件(平成16年(勧)第12号),(株)吉田組ほか1社に対する件(平成16年(勧)第13号)及び奥山建設(株)ほか5社に対する件(平成16年(勧)第14号)
ア 関係人

イ 違反事実等
(ア) 配水設備修繕工事B工区関係(平成16年(勧)第6号)
(a)  大阪市は,平成11年12月まで指名見積り合わせの方法により水道局において発注していた水道局西部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事及び水道局南部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事について,平成12年1月,施工場所の統合(以下「工区統合」という。)を行い,工区統合以降平成16年2月までの間,水道局において水道局西部工事事務所及び水道局南部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事を[B]配水設備修繕工事として指名見積り合わせの方法により発注していた。
(b)  遅くとも平成6年7月以降,大阪市が平成12年1月に工区統合を行うまで,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注していた水道局西部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事については,奥村組土木興業(株)がすべて受注し,また,同市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注していた水道局南部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事については,(株)清川組がすべて受注していた。
(c)  大阪市は,同市が水道局において[B]配水設備修繕工事として指名見積り合わせの方法により発注していた配水設備修繕工事(以下「[B]配水設備修繕工事」という。)について,平成12年以降,毎年,2月ころに当年4月から当年9月まで,8月ころに当年10月から翌年3月までの施工業者を次のとおり決定し,単価契約を締結していた。
i  大阪市があらかじめほ装工事及び土木工事について競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している者のうち大阪市水道局が定める入札指名基準を満たす者であって,大阪市内に本店,支店又は営業所を置く者の中から指名見積り合わせの参加者を指名する。
ii   指名見積り合わせの参加者に,当該工事における管修繕工,管取替修繕工等の工種ごとの工事単価の合計額を提示させ,最も低い額を提示した者を施工業者とする。
(d)
i  大阪市は,配水設備修繕工事が配水管の折損による漏水事故の発生等に際し緊急に行われる工事であることから,当該工事の施工業者に対し,漏水事故の発生等に備え,6か月の契約期間を通じて昼夜を問わず随時施工する体制を有すること,管工事に関する高度な知識及び経験を有していることなどを求めている。
ii  大阪市が水道局において発注する配水設備修繕工事の指名見積り合わせの参加者は,前記(d)iの大阪市の求めに応じる上で,特定の施工場所において配水設備修繕工事を施工した経験のある者はそうでない者に比べて施工体制の整備等の点で優位にあると認識していた。
iii  [B]配水設備修繕工事の指名見積り合わせの参加者として指名を受けていた者のうち関係人2社(以下「2社」という。)は,[B]配水設備修繕工事について,現に施工体制を整備していた者である。
 2社は,工区統合を契機として,平成12年1月17日ころ以降,[B]配水設備修繕工事について,受注価格の低落防止等を図るため
(a)  大阪市から指名見積り合わせの参加者として指名を受けた場合には,2社が交互に当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)となる
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,必要に応じ,2社以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望しないことを確認するなどして,受注予定者が受注できるようにしていた。
 2社は,前記bにより,[B]配水設備修繕工事のすべてを受注していた。
 平成15年5月13日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,2社は,平成15年9月2日以降,[B]配水設備修繕工事について,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(イ) 配水管工事跡舗装復旧工事B工区関係(平成16年(勧)第8号)
(a)  大阪市は,遅くとも平成6年7月以降,行政区の地域又は複数の行政区の地域を合わせた地域を施工場所として,指名見積り合わせの方法により水道局において配水管工事跡舗装復旧工事を発注しているところ,平成13年1月,配水管工事跡舗装復旧工事の施工場所とする行政区の地域の組合せの変更(以下「工区変更」という。)を行い,工区変更以降平成15年12月までの間,都島区,中央区及び東成区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事を配水管工事跡舗装復旧工事(B)として発注していた。
(b)  大阪市は,同市が水道局において配水管工事跡舗装復旧工事(B)として指名見積り合わせの方法により発注していた配水管工事跡舗装復旧工事(以下「配水管工事跡舗装復旧工事(B)」という。)について,平成13年以降,毎年,1月に当年2月から当年7月まで,7月に当年8月から翌年1月までの施工業者を次のとおり決定し,単価契約を締結していた。
i  大阪市があらかじめほ装工事について競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している者のうち大阪市水道局が定める入札指名基準を満たす者であって,大阪市内に本店,支店又は営業所を置く者の中から指名見積り合わせの参加者を指名する。
ii  指名見積り合わせの参加者に,当該工事における舗装切断工,舗装破砕工等の工種ごとの工事単価の合計額を提示させ,最も低い額を提示した者を施工業者とする。
(c)  大阪市が水道局において発注する配水管工事跡舗装復旧工事の指名見積り合わせの参加者は,一般に,配水管工事跡舗装復旧工事を施工するに当たっては,当該工事が行われる場所の近隣の居住者等から苦情を申し出られることがあるため,配水管工事跡舗装復旧工事を円滑に施工する上で,苦情が申し出られることを予防し又は苦情が申し出られた場合に適切な対応を行うことが重要であることから,配水管工事跡舗装復旧工事が行われる地域の事情に通じている者がそうでない者に比べて有利であり,当該施工場所に事務所を置いていない者又は当該施工場所において配水管工事跡舗装復旧工事を受注したことがない者が同工事を受注することを希望していないと認識していた。
 遅くとも平成6年7月以降平成12年12月まで中央区の地域を施工場所として大阪市が水道局において発注していた配水管工事跡舗装復旧工事の受注実績があり又は配水管工事跡舗装復旧工事(B)の施工場所である行政区の地域内に事務所を置く関係人5社(以下「5社」という。)は,工区変更を契機として,平成13年1月17日ころ以降,配水管工事跡舗装復旧工事(B)について,受注価格の低落防止等を図るため
(a)  大阪市から指名見積り合わせの参加者として指名を受けた場合には,あらかじめ定めた順序で,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,必要に応じ,5社以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望しないことを確認するなどして,受注予定者が受注できるようにしていた。
 5社は,前記bにより,配水管工事跡舗装復旧工事(B)のすべてを受注していた。
 平成15年5月13日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,5社は,平成15年7月30日以降,配水管工事跡舗装復旧工事(B)について,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(ウ) 配水管工事跡舗装復旧工事C工区関係(平成16年(勧)第9号)
(a)  大阪市は,遅くとも平成6年7月以降,行政区の地域又は複数の行政区の地域を合わせた地域を施工場所として,指名見積り合わせの方法により水道局において配水管工事跡舗装復旧工事を発注しているところ,平成13年1月,配水管工事跡舗装復旧工事の施工場所とする行政区の地域の組合せの変更(以下「工区変更」という。)を行い,工区変更以降平成15年12月までの間,此花区,西区,港区及び大正区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事を配水管工事跡舗装復旧工事(C)として発注していた。
(b)  大阪市は,同市が水道局において配水管工事跡舗装復旧工事(C)として指名見積り合わせの方法により発注していた配水管工事跡舗装復旧工事(以下「配水管工事跡舗装復旧工事(C)」という。)について,平成13年以降,毎年,1月に当年2月から当年7月まで,7月に当年8月から翌年1月までの施工業者を次のとおり決定し,単価契約を締結していた。
i  大阪市があらかじめほ装工事について競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している者のうち大阪市水道局が定める入札指名基準を満たす者であって,大阪市内に本店,支店又は営業所を置く者の中から指名見積り合わせの参加者を指名する。
ii  指名見積り合わせの参加者に,当該工事における舗装切断工,舗装破砕工等の工種ごとの工事単価の合計額を提示させ,最も低い額を提示した者を施工業者とする。
(c)  大阪市が水道局において発注する配水管工事跡舗装復旧工事の指名見積り合わせの参加者は,一般に,配水管工事跡舗装復旧工事を施工するに当たっては,当該工事が行われる場所の近隣の居住者等から苦情を申し出られることがあるため,配水管工事跡舗装復旧工事を円滑に施工する上で,苦情が申し出られることを予防し又は苦情が申し出られた場合に適切な対応を行うことが重要であることから,配水管工事跡舗装復旧工事が行われる地域の事情に通じている者がそうでない者に比べて有利であり,当該施工場所に事務所を置いていない者又は当該施工場所において配水管工事跡舗装復旧工事を受注したことがない者が同工事を受注することを希望していないと認識していた。
 遅くとも平成6年7月以降平成12年12月まで港区の地域を施工場所として大阪市が水道局において発注していた配水管工事跡舗装復旧工事を大部分受注していた奥村組土木興業(株)は,配水管工事跡舗装復旧工事(C)についても受注することを希望していたところ,工区変更後最初に行われた平成13年1月26日の配水管工事跡舗装復旧工事(C)の指名見積り合わせにおいて,ショベル工業(株)が当該工事を受注したことから,これを契機として,関係人2社(以下「2社」という。)は,平成13年7月11日ころ以降,配水管工事跡舗装復旧工事(C)について,受注価格の低落防止を図るため
(a)  大阪市から指名見積り合わせの参加者として指名を受けた場合には,原則として,奥村組土木興業(株)が当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)となる
(b)  受注すべき価格は,奥村組土木興業(株)が定め,ショベル工業(株)は,奥村組土木興業(株)がその定めた価格で受注できるように協力するとともに,奥村組土木興業(株)が当該工事を受注したときには,奥村組土木興業(株)から他の工事を請け負う
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,必要に応じ,2社以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望しないことを確認するなどして,受注予定者が受注できるようにしていた。
 2社は,前記bにより,配水管工事跡舗装復旧工事(C)のすべてを受注していた。
 平成15年5月13日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,2社は,平成15年7月30日以降,配水管工事跡舗装復旧工事(C)について,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(エ) 配水管工事跡舗装復旧工事D工区関係(平成16年(勧)第10号)
(a)  大阪市は,遅くとも平成6年7月以降,行政区の地域又は複数の行政区の地域を合わせた地域を施工場所として,指名見積り合わせの方法により水道局において配水管工事跡舗装復旧工事を発注しているところ,平成13年1月,配水管工事跡舗装復旧工事の施工場所とする行政区の地域の組合せの変更(以下「工区変更」という。)を行い,工区変更以降平成15年12月までの間,浪速区,住之江区及び西成区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事を配水管工事跡舗装復旧工事(D)として発注していた。
(b)  大阪市は,同市が水道局において配水管工事跡舗装復旧工事(D)として指名見積り合わせの方法により発注していた配水管工事跡舗装復旧工事(以下「配水管工事跡舗装復旧工事(D)」という。)について,平成13年以降,毎年,1月に当年2月から当年7月まで,7月に当年8月から翌年1月までの施工業者を次のとおり決定し,単価契約を締結していた。
i  大阪市があらかじめほ装工事について競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している者のうち大阪市水道局が定める入札指名基準を満たす者であって,大阪市内に本店,支店又は営業所を置く者の中から指名見積り合わせの参加者を指名する。
ii  指名見積り合わせの参加者に,当該工事における舗装切断工,舗装破砕工等の工種ごとの工事単価の合計額を提示させ,最も低い額を提示した者を施工業者とする。
(c)  大阪市が水道局において発注する配水管工事跡舗装復旧工事の指名見積り合わせの参加者は,一般に,配水管工事跡舗装復旧工事を施工するに当たっては,当該工事が行われる場所の近隣の居住者等から苦情を申し出られることがあるため,配水管工事跡舗装復旧工事を円滑に施工する上で,苦情が申し出られることを予防し又は苦情が申し出られた場合に適切な対応を行うことが重要であることから,配水管工事跡舗装復旧工事が行われる地域の事情に通じている者がそうでない者に比べて有利であり,当該施工場所に事務所を置いていない者又は当該施工場所において配水管工事跡舗装復旧工事を受注したことがない者が同工事を受注することを希望していないと認識していた。
 遅くとも平成6年7月以降平成12年12月まで浪速区の地域を施工場所として大阪市が水道局において発注していた配水管工事跡舗装復旧工事をすべて受注し,工区変更後最初に行われた平成13年1月26日の配水管工事跡舗装復旧工事(D)の指名見積り合わせにおいても当該工事を受注した中林道路(株)は,配水管工事跡舗装復旧工事(D)について,引き続き受注することを希望していたところ,平成13年7月19日に行われた配水管工事跡舗装復旧工事(D)の指名見積り合わせに参加するに当たって,中林道路(株)以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望する旨表明したことから,これを契機として,関係人6社(北野建設工業(株)については,産容土木(株)が平成14年11月15日に商号変更したものである。以下「6社」という。)は,平成14年1月15日ころ以降(大昭建設(株)にあっては平成15年1月17日ころ以降),配水管工事跡舗装復旧工事(D)について,受注価格の低落防止を図るため
(a)  大阪市から指名見積り合わせの参加者として指名を受けた場合には,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
i  受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1社のときは,その者を受注予定者とする
ii  受注希望者が複数のときは,受注希望者間の話合いにより,受注予定者を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,必要に応じ,6社以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望しないことを確認するなどして,受注予定者が受注できるようにしていた。
 6社は,前記bにより,配水管工事跡舗装復旧工事(D)のすべてを受注していた。
 平成15年5月13日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,6社は,平成15年7月30日以降,配水管工事跡舗装復旧工事(D)について,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(オ) 配水管工事跡舗装復旧工事F工区関係(平成16年(勧)第12号
(a)  大阪市は,遅くとも平成6年7月以降,行政区の地域又は複数の行政区の地域を合わせた地域を施工場所として,指名見積り合わせの方法により水道局において配水管工事跡舗装復旧工事を発注しているところ,平成12年1月,配水管工事跡舗装復旧工事の施工場所とする行政区の地域の組合せの変更(以下「工区変更」という。)を行い,工区変更以降平成15年12月までの間,天王寺区,阿倍野区及び住吉区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事を配水管工事跡舗装復旧工事(F)として発注していた。
(b)  大阪市は,同市が水道局において配水管工事跡舗装復旧工事(F)として指名見積り合わせの方法により発注していた配水管工事跡舗装復旧工事(以下「配水管工事跡舗装復旧工事(F)」という。)について,平成12年以降,毎年,1月に当年2月から当年7月まで,7月に当年8月から翌年1月までの施工業者を次のとおり決定し,単価契約を締結していた。
i  大阪市があらかじめほ装工事について競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している者のうち大阪市水道局が定める入札指名基準を満たす者であって,大阪市内に本店,支店又は営業所を置く者の中から指名見積り合わせの参加者を指名する。
ii  指名見積り合わせの参加者に,当該工事における舗装切断工,舗装破砕工等の工種ごとの工事単価の合計額を提示させ,最も低い額を提示した者を施工業者とする。
(c)  大阪市が水道局において発注する配水管工事跡舗装復旧工事の指名見積り合わせの参加者は,一般に,配水管工事跡舗装復旧工事を施工するに当たっては,当該工事が行われる場所の近隣の居住者等から苦情を申し出られることがあるため,配水管工事跡舗装復旧工事を円滑に施工する上で,苦情が申し出られることを予防し又は苦情が申し出られた場合に適切な対応を行うことが重要であることから,配水管工事跡舗装復旧工事が行われる地域の事情に通じている者がそうでない者に比べて有利であり,当該施工場所に事務所を置いていない者又は当該施工場所において配水管工事跡舗装復旧工事を受注したことがない者が同工事を受注することを希望していないと認識していた。
 遅くとも平成6年7月以降平成11年12月まで住吉区の地域を施工場所として大阪市が水道局において発注していた配水管工事跡舗装復旧工事をすべて受注していた(株)中東組及び田中土建(株)並びに配水管工事跡舗装復旧工事を受注したことのある大栄建設(株)の関係人3社(以下「3社」という。)は,工区変更を契機として,平成12年1月17日ころ以降,配水管工事跡舗装復旧工事(F)について,受注価格の低落防止を図るため
(a)  大阪市から指名見積り合わせの参加者として指名を受けた場合には,3社間の話合いにより,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
(c)
i  (株)中東組が当該工事を受注したときは,当該工事のうち阿倍野区を施工場所とする工事については(株)中東組が施工し,天王寺区を施工場所とする工事については大栄建設(株)が(株)中東組から請け負って施工し,住吉区を施工場所とする工事については田中土建(株)が(株)中東組から請け負って施工する
ii  大栄建設(株)が当該工事を受注したときは,当該工事のうち天王寺区を施工場所とする工事については大栄建設(株)が施工し,阿倍野区を施工場所とする工事については(株)中東組が大栄建設(株)から請け負って施工し,住吉区を施工場所とする工事については田中土建(株)が大栄建設(株)から請け負って施工する
iii  田中土建(株)が当該工事を受注したときは,当該工事のうち住吉区を施工場所とする工事については田中土建(株)が施工し,天王寺区を施工場所とする工事については大栄建設(株)が田中土建(株)から請け負って施工し,阿倍野区を施工場所とする工事については(株)中東組が田中土建(株)から請け負って施工する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,必要に応じ,3社以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望しないことを確認するなどして,受注予定者が受注できるようにしていた。
 3社は,前記bにより,配水管工事跡舗装復旧工事(F)の大部分を受注していた。
 平成15年5月13日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,3社は,平成15年7月30日以降,配水管工事跡舗装復旧工事(F)について,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(カ) 配水管工事跡舗装復旧工事G工区関係(平成16年(勧)第13号)
(a)  大阪市は,遅くとも平成6年7月以降,行政区の地域又は複数の行政区の地域を合わせた地域を施工場所として,指名見積り合わせの方法により水道局において配水管工事跡舗装復旧工事を発注しているところ,平成12年1月,配水管工事跡舗装復旧工事の施工場所とする行政区の地域の組合せの変更(以下「工区変更」という。)を行い,工区変更以降平成15年12月までの間,北区,福島区及び東淀川区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事を配水管工事跡舗装復旧工事(G)として発注していた。
(b)  大阪市は,同市が水道局において配水管工事跡舗装復旧工事(G)として指名見積り合わせの方法により発注していた配水管工事跡舗装復旧工事(以下「配水管工事跡舗装復旧工事(G)」という。)について,平成12年以降,毎年,1月に当年2月から当年7月まで,7月に当年8月から翌年1月までの施工業者を次のとおり決定し,単価契約を締結していた。
i  大阪市があらかじめほ装工事について競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している者のうち大阪市水道局が定める入札指名基準を満たす者であって,大阪市内に本店,支店又は営業所を置く者の中から指名見積り合わせの参加者を指名する。
ii  指名見積り合わせの参加者に,当該工事における舗装切断工,舗装破砕工等の工種ごとの工事単価の合計額を提示させ,最も低い額を提示した者を施工業者とする。
(c)  大阪市が水道局において発注する配水管工事跡舗装復旧工事の指名見積り合わせの参加者は,一般に,配水管工事跡舗装復旧工事を施工するに当たっては,当該工事が行われる場所の近隣の居住者等から苦情を申し出られることがあるため,配水管工事跡舗装復旧工事を円滑に施工する上で,苦情が申し出られることを予防し又は苦情が申し出られた場合に適切な対応を行うことが重要であることから,配水管工事跡舗装復旧工事が行われる地域の事情に通じている者がそうでない者に比べて有利であり,当該施工場所に事務所を置いていない者又は当該施工場所において配水管工事跡舗装復旧工事を受注したことがない者が同工事を受注することを希望していないと認識していた。
 遅くとも平成6年7月以降平成11年12月まで北区,福島区又は東淀川区の地域を施工場所として大阪市が水道局において発注していた配水管工事跡舗装復旧工事をすべて受注していた関係人2社(以下「2社」という。)及び関係人以外の者1社は,工区変更後,配水管工事跡舗装復旧工事(G)について受注に関する話合いを行ってきたところ,平成13年7月19日に行われた配水管工事跡舗装復旧工事(G)の指名見積り合わせに参加するに当たって,関係人以外の1社が当該工事の受注を希望する旨表明しなかったことから,これを契機として,2社は,平成13年7月11日ころ以降,配水管工事跡舗装復旧工事(G)について,受注価格の低落防止等を図るため
(a)  大阪市から指名見積り合わせの参加者として指名を受けた場合には,2社が交互に当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)となる
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,必要に応じ,2社以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望しないことを確認するなどして,受注予定者が受注できるようにしていた。
 2社は,前記bにより,配水管工事跡舗装復旧工事(G)のすべてを受注していた。
 平成15年5月13日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,2社は,平成15年7月30日以降,配水管工事跡舗装復旧工事(G)について,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(キ) 配水管工事跡舗装復旧工事H工区関係(平成16年(勧)第14号)
(a)  大阪市は,遅くとも平成6年7月以降,行政区の地域又は複数の行政区の地域を合わせた地域を施工場所として,指名見積り合わせの方法により水道局において配水管工事跡舗装復旧工事を発注しているところ,平成12年1月,配水管工事跡舗装復旧工事の施工場所とする行政区の地域の組合せの変更(以下「工区変更」という。)を行い,工区変更以降平成15年12月までの間,西淀川区及び淀川区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事を配水管工事跡舗装復旧工事(H)として発注していた。
(b)  大阪市は,同市が水道局において配水管工事跡舗装復旧工事(H)として指名見積り合わせの方法により発注していた配水管工事跡舗装復旧工事(以下「配水管工事跡舗装復旧工事(H)」という。)について,平成12年以降,毎年,1月に当年2月から当年7月まで,7月に当年8月から翌年1月までの施工業者を次のとおり決定し,単価契約を締結していた。
i  大阪市があらかじめほ装工事について競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している者のうち大阪市水道局が定める入札指名基準を満たす者であって,大阪市内に本店,支店又は営業所を置く者の中から指名見積り合わせの参加者を指名する。
ii  指名見積り合わせの参加者に,当該工事における舗装切断工,舗装破砕工等の工種ごとの工事単価の合計額を提示させ,最も低い額を提示した者を施工業者とする。
(c)  大阪市が水道局において発注する配水管工事跡舗装復旧工事の指名見積り合わせの参加者は,一般に,配水管工事跡舗装復旧工事を施工するに当たっては,当該工事が行われる場所の近隣の居住者等から苦情を申し出られることがあるため,配水管工事跡舗装復旧工事を円滑に施工する上で,苦情が申し出られることを予防し又は苦情が申し出られた場合に適切な対応を行うことが重要であることから,配水管工事跡舗装復旧工事が行われる地域の事情に通じている者がそうでない者に比べて有利であり,当該施工場所に事務所を置いていない者又は当該施工場所において配水管工事跡舗装復旧工事を受注したことがない者が同工事を受注することを希望していないと認識していた。
 遅くとも平成6年7月以降平成13年6月まで西淀川区の地域を施工場所として大阪市が水道局において発注していた配水管工事跡舗装復旧工事を大部分受注していた(株)五島組は,配水管工事跡舗装復旧工事(H)について,引き続き受注することを希望していたところ,平成13年7月19日に行われた配水管工事跡舗装復旧工事(H)の指名見積り合わせに参加するに当たって,(株)五島組以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望する旨表明したことから,これを契機として,関係人6社(以下「6社」という。)は,平成13年7月11日ころ以降,配水管工事跡舗装復旧工事(H)について,受注価格の低落防止等を図るため
(a)  大阪市から指名見積り合わせの参加者として指名を受けた場合には,あらかじめ定めた順序で,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,必要に応じ,6社以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望しないことを確認するなどして,受注予定者が受注できるようにしていた。
 6社は,前記bにより,配水管工事跡舗装復旧工事(H)のすべてを受注していた。
 平成15年5月13日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,6社は,平成15年7月30日以降,配水管工事跡舗装復旧工事(H)について,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
(ア) 配水設備修繕工事B工区関係(平成16年(勧)第6号)
 関係人2社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 平成12年1月17日ころ以降行っていた,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注する水道局西部工事事務所及び水道局南部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を大阪市に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,大阪市が指名見積り合わせの方法により発注する配水設備修繕工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせ又は競争入札の方法により発注する配水設備修繕工事について,受注予定者を決定しないこと。
(イ) 配水管工事跡舗装復旧工事B工区関係(平成16年(勧)第8号)
 関係人5社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 平成13年1月17日ころ以降行っていた,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注する都島区,中央区及び東成区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を大阪市に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,大阪市が指名見積り合わせの方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせ又は競争入札の方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定しないこと。
(ウ) 配水管工事跡舗装復旧工事C工区関係(平成16年(勧)第9号)
 関係人2社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 平成13年7月11日ころ以降行っていた,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注する此花区,西区,港区及び大正区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を大阪市に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,大阪市が指名見積り合わせの方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせ又は競争入札の方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定しないこと。
(エ) 配水管工事跡舗装復旧工事D工区関係(平成16年(勧)第10号)
 関係人6社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 平成14年1月15日ころ以降(大昭建設(株)にあっては平成15年1月17日ころ以降)行っていた,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注する浪速区,住之江区及び西成区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を大阪市に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,大阪市が指名見積り合わせの方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせ又は競争入札の方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定しないこと。
(オ) 配水管工事跡舗装復旧工事F工区関係(平成16年(勧)第12号)
 関係人3社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 平成12年1月17日ころ以降行っていた,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注する天王寺区,阿倍野区及び住吉区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を大阪市に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,大阪市が指名見積り合わせの方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせ又は競争入札の方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定しないこと。
(カ) 配水管工事跡舗装復旧工事G工区関係(平成16年(勧)第13号)
 関係人2社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 平成13年7月11日ころ以降行っていた,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注する北区,福島区及び東淀川区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を大阪市に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,大阪市が指名見積り合わせの方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせ又は競争入札の方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定しないこと。
(キ) 配水管工事跡舗装復旧工事H工区関係(平成16年(勧)第14号)
 関係人6社に対し,次の措置を採るよう命じた
 平成13年7月11日ころ以降行っていた,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注する西淀川区及び淀川区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 次の事項を大阪市に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,大阪市が指名見積り合わせの方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせ又は競争入札の方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定しないこと。
(2)  (株)横山測量設計事務所ほか21名に対する件(平成16年(勧)第15号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  山形県は,山形県置賜総合支庁(以下「置賜総合支庁」という。)建設部(平成13年3月31日までは米沢建設事務所及び長井建設事務所。以下同じ。)において,測量業務,土木コンサルタント業務,補償コンサルタント業務及びその他業務(第5表記載の業務をいう。)(以下「測量,土木コンサルタント等業務」という。)のほとんどすべてを指名競争入札又は見積り合わせ(以下「指名競争入札等」という。)の方法により発注しており,指名競争入札等に当たっては,山形県が競争入札参加の資格要件を満たす者として名簿に登載している者の中から指名競争入札等の参加者を指名している。
 山形県は,置賜総合支庁建設部において発注する測量,土木コンサルタント等業務の指名競争入札等における参加者の指名に当たっては,高度な又は特殊な技術を要するもの以外は,原則として置賜総合支庁の管轄区域(以下「置賜総合支庁管内」という。)に本店又は主たる事務所を置く者(以下「置賜総合支庁管内業者」という。)を指名している。
 なお,関係人22名(以下「22名」という。)のうち(株)アサダ(同社は,同社が全額出資して設立した山形県米沢市に本店を置く(株)アサダ(以下「米沢市所在のアサダ」という。)に対し,平成15年10月15日付けで山形県の競争入札参加資格を承継させており,それまでは,置賜総合支庁管内において,測量業,土木コンサルタント業,補償コンサルタント業等を営む者であった。以下「大阪市所在のアサダ」という。)は,遅くとも昭和48年に山形県米沢市に営業所を設置し,以降,現在の山形県置賜総合支庁管内において測量,土木コンサルタント等業務に関する事業活動を行っていたことから,山形県が置賜総合支庁建設部において測量,土木コンサルタント等業務の指名競争入札等における指名に際しては置賜総合支庁管内業者と同等の者として取り扱われていた。
(イ)  22名並びに第6表及び第7表記載の事業者の25名(以下「25名」という。)は,遅くとも平成12年4月1日以降(第8表記載の事業者にあっては,それぞれ,遅くとも「期日」欄記載の年月日ころ以降),山形県が置賜総合支庁建設部において置賜総合支庁管内業者(大阪市所在のアサダを含む。以下同じ。)のみを指名して指名競争入札等の方法により発注する測量,土木コンサルタント等業務(知事が契約権限を委任した者が契約者となっているものを含む。以下「山形県発注の特定測量,土木コンサルタント等業務」という。)について,受注価格の低落防止を図るため
 山形県発注の特定測量,土木コンサルタント等業務の指名を受けた場合には,次の方法により,当該業務を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(a)  当該業務について,受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)が1名のときは,その者を受注予定者とする
(b)  受注希望者が複数のときは,当該受注希望者の過去の受注物件との継続性,発注者に対する当該業務に関する営業活動の実績,過去の指名回数等の要素を勘案して,受注希望者間の話合いにより受注予定者を決定する
(c)  受注希望者がいないときは,指名を受けた者の間の話合いにより受注予定者を決定する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(ウ)  25名は,前記(イ)により,山形県発注の特定測量,土木コンサルタント等業務のほとんどすべてを受注していた。
(エ)  平成15年9月18日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,22名は,同月19日以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
 22名に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  遅くとも平成12年4月1日以降(第8表記載の事業者にあっては,それぞれ,遅くとも「期日」欄記載の年月日ころ以降)行っていた,山形県発注の特定測量,土木コンサルタント等業務について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
(イ)  22名のうち,大阪市所在のアサダを除く21名(以下「21名」という。)は,次のa及びbの事項を山形県に通知すること。22名のうち,大阪市所在のアサダは,次のaの事項を山形県に通知するとともに,米沢市所在のアサダに通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,共同して,山形県が,置賜総合支庁建設部において,指名競争入札等の方法により発注する測量,土木コンサルタント等業務について,受注予定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  21名は,今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,山形県が,置賜総合支庁建設部において,競争入札又は見積り合わせの方法により発注する測量,土木コンサルタント等業務について,受注予定者を決定しないこと。
(エ)  22名のうち,大阪市所在のアサダは,今後,米沢市所在のアサダをして,21名又は他の事業者と共同して,山形県が,置賜総合支庁建設部において,競争入札又は見積り合わせの方法により発注する測量,土木コンサルタント等業務について,受注予定者を決定させないこと。
(3) (株)百十四銀行ほか5名に対する件(平成16年(勧)第19号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  香川県内に所在する幼稚園,小学校,中学校等(以下「学校等」という。)は,給食費,教材費,PTA会費等(以下「学校諸費」という。)を,生徒等の保護者から口座振替によって収納する場合には,主として,次のいずれかの方法によって行っている。
(a)  学校等が一又は複数の金融機関に預金口座又は貯金口座(以下「預貯金口座」という。)を開設し,当該金融機関との間で口座振替契約を締結することにより,当該金融機関が,生徒等の保護者の預貯金口座から学校諸費を引き落とし,これを学校等の預貯金口座に入金する方法(以下「一般の口座振替による方法」という。)
(b)  学校等が(株)百十四銀行(以下「百十四銀行」という。),(株)香川銀行(以下「香川銀行」という。),高松信用金庫(以下「高松信金」という。),観音寺信用金庫(以下「観音寺信金」という。)及び香川県農業協同組合(以下「香川県農協」という。)(以下「5名」という。)のいずれか1名に預貯金口座を開設し,当該金融機関との間で特別の口座振替契約を締結することにより,当該口座振替契約を締結した当該金融機関(以下「元受」という。)が,自ら引き落とした学校諸費とともに,口座振替に係る委託契約(以下「再委託契約」という。)に基づき生徒等の保護者が他の4名のいずれかに開設している預貯金口座から引き落とされた学校諸費を,学校等の預貯金口座に入金する方法(以下「学費システム」という。)
 香川県農協は,他の金融機関との間の資金決済等に関する事務を香川県信用農業協同組合連合会(以下「香川県信連」という。)に委託しているため,香川県農協が元受として学校等との間で学費システムに係る口座振替契約を締結したときは,香川県信連が,百十四銀行,香川銀行,高松信金及び観音寺信金との間で締結した再委託契約に基づき,香川県農協と前記各金融機関との間の資金決済等に関する事務を行っている。
 一般の口座振替による方法で学校諸費を収納する場合には,学校等は,その都度,生徒等別に収納すべき学校諸費に関するデータを作成し,これを金融機関に提出するとともに,学校諸費を引き落とした生徒等の保護者に対する明細票の作成等の作業を自ら行う必要があるのに対し,学費システムによる方法で学校諸費を収納する場合は,学校等は,学校諸費を引き落とすべき生徒等の保護者の預貯金口座に関する情報をあらかじめ元受に提出すれば,前記のデータ作成,明細票の作成等の作業も元受に行ってもらえるため,学校等の事務負担が軽減されることとなる。
 学費システムによる学校諸費の口座振替に係る手数料(以下「学費システムに係る口座振替手数料」という。)を学校等から徴収するか否か,徴収することとした場合の学費システムに係る口座振替手数料の額をいくらにするかといった事項については,学校等と元受との間で取り決めている。
(イ)  5名は,かねてから,原則として,学費システムに係る口座振替手数料を学校等から徴収しておらず,学費システムによる学校諸費の口座振替に要する費用を自ら負担していたが,近年,収益状況の悪化により,手数料収入の増加を図る必要が生じていた。このため,百十四銀行が呼びかけて,百十四銀行,香川銀行,高松信金,観音寺信金及び香川県信連は,平成14年12月ころから平成15年1月中旬ころまでの間に,百十四銀行の本店が入居しているビルの会議室(以下「百十四銀行本店の会議室」という。)において,百十四銀行,香川銀行,高松信金,観音寺信金及び香川県信連の営業責任者等による会合(以下「営業責任者等による会合」という。)を3回開催するなどして,今後は学費システムに係る口座振替手数料を徴収することについて合意した上で,口座振替1件当たり105円(消費税相当額を含む額。以下同じ。)を学校等から徴収すること,平成15年4月を目途として学費システムに係る口座振替手数料の徴収を実施するために学校等と交渉していくこととした。
 これを受けて,香川県信連は,平成15年1月30日ころまでに香川県農協に前記話合いの結果を伝達し,香川県農協もその内容をおおむね受け入れたことから,平成15年1月31日ころに百十四銀行本店の会議室で開催された営業責任者等による会合の場で,香川県農協は学費システムに係る口座振替手数料を徴収するための交渉を開始することとした旨報告し,また,高松信金は,平成15年1月下旬ころから同年3月上旬ころまで開催した内部の会議等において検討した結果,高松信金が徴収する学費システムに係る口座振替手数料の額を口座振替1件当たり89円(消費税相当額を含む額。以下同じ。)とすることとし,遅くとも,平成15年3月17日ころまでに,その旨を百十四銀行,香川銀行,観音寺信金及び香川県信連に報告し,それぞれ,了承された。
(ウ)  これに基づき,5名は,自らが元受として学費システムに係る口座振替契約を締結している学校等に対し,それぞれ,学費システムに係る口座振替手数料を徴収するための交渉を行った。また,百十四銀行,香川銀行,高松信金,観音寺信金及び香川県信連は,営業責任者等による会合を開催して,当該交渉の状況,実施時期の見込み等について情報交換を行い,当該交渉の状況にかんがみ学費システムに係る口座振替手数料の徴収を開始する時期を平成15年の秋ころ以降とすることを確認した。
 百十四銀行,香川銀行,観音寺信金及び香川県農協は,平成15年10月以降,順次,学費システムに係る口座振替手数料として口座振替1件当たり105円を,また,高松信金にあっては,平成15年12月以降,順次,学費システムに係る口座振替手数料として口座振替1件当たり89円を,それぞれ徴収している。
ウ 排除措置
 6名に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  学費システムに係る口座振替手数料に関する合意を破棄すること。
(イ)  百十四銀行,香川銀行,高松信金及び観音寺信金の4名は,それぞれ,次のa及びbの事項を,前記口座振替に係る契約を締結している学校等に,また,香川県信連及び香川県農協の2名は,次のa及びbの事項を,香川県農協が前記口座振替に係る契約を締結している学校等に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記4名及び前記2名が共同して,前記口座振替に係る手数料を決定せず,各自がそれぞれ自主的に決める旨

(4) 東光電氣工事(株)ほか102社に対する件(平成16年(勧)第20号)及び栗原工業(株)ほか37社に対する件(平成16年(勧)第21号)
ア 関係人


イ 違反事実等
(ア) 岐阜県等発注の電気工事関係(平成16年(勧)第20号)
 岐阜県並びに岐阜県の区域内の市町村,岐阜県内の広域連合及び一部事務組合(平成12年4月1日から平成16年2月17日までの間において廃され,又は解散したものを含む。以下「岐阜県等」という。)は,電気工事のほとんどすべてを一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札(以下「競争入札」という。)の方法により発注しており,一般競争入札に当たっては,岐阜県等が競争入札参加の資格要件を満たす者として名簿に登載している者(以下「有資格者」という。)を対象に,公告により入札への参加を希望する者を募り,当該希望者をその資格要件を確認した上で入札の参加者としており,公募型指名競争入札に当たっては,有資格者を対象に,公告により入札への参加を希望する者を募り,当該希望者から提出された技術資料等を評価した上で入札の参加者を指名しており,また,指名競争入札に当たっては,有資格者の中から入札の参加者を指名している。
 岐阜県等は,発注金額がおおむね2億円以上の電気工事について,共同施行方式により施行することとして発注しており,当該工事の発注の都度結成される共同企業体の入札参加者は,前記有資格者を構成員とする共同企業体としている。
 岐阜県等が競争入札の方法により発注する電気工事については,かねてから,入札参加者間で受注に関する調整が行われてきたところ,関係人103社(以下「103社」という。),第9表記載の事業者の2社及び名鉄エンジニアリング(株)の106社(以下「106社」という。)は,遅くとも平成12年4月1日(第10表記載の事業者にあっては,それぞれ,遅くとも「期日」欄記載の年月日ころ)以降,岐阜県等が競争入札の方法により発注する電気工事のうち,落札金額が2億円以上になると予想されるもの(重電機器製造業者であることが入札参加条件とされているもの,共同企業体に発注されるものであって重電機器製造業者が代表構成員であることが入札参加条件とされているもの及び下水道終末処理場における水処理施設に係るものを除く。以下「岐阜県等発注の特定電気工事」という。)について,受注機会の均等化及び受注価格の低落防止を図るため
(a)  岐阜県等が一般競争入札若しくは公募型指名競争入札の公告を行った場合又は岐阜県等から指名競争入札の参加の指名を受けた場合には,それまでの岐阜県等発注の特定電気工事への入札参加回数,工事場所,過去の受注工事との関連性等の事情により当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)は,世話人等と称する者に対してその旨を表明し,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
i  当該工事が単独の事業者を入札参加者とする場合は,受注希望者が1社のときは,その者を受注予定者とし,受注希望者が複数のときは,それまでの岐阜県等発注の特定電気工事への入札参加回数,工事場所,過去の受注工事との関連性等の事情を勘案して,受注希望者間の話合い又は前記世話人等と称する者の助言に基づき受注予定者を決定する
ii  当該工事が共同企業体を入札参加者とする場合は,岐阜県等発注の特定電気工事への入札参加回数,工事場所,過去の受注工事との関連性等の事情を勘案して,当該受注希望者間の話合い又は前記世話人等と称する者の助言に基づき決定した構成員により結成する共同企業体を受注予定者とする
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 106社は,前記bにより,岐阜県等発注の特定電気工事のほとんどを受注していた。
 平成16年2月17日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,103社及び第9表記載の(株)ジェイペックは,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(イ) 岐阜大学発注の電気工事関係(平成16年(勧)第21号
 岐阜大学(平成16年4月1日に国立大学法人に移行する前の国立学校設置法の規定に基づき設置された岐阜大学。以下同じ。)は,発注予定価格が1億円以上の電気工事を,一般競争入札,詳細条件審査型一般競争入札,公募型指名競争入札又は工事希望型指名競争入札の方法により発注しており,一般競争入札に当たっては,公告により入札への参加を希望する者を募り,当該希望者に対して資格審査を実施し,資格要件を満たす者として認められた者を入札の参加者とし,詳細条件審査型一般競争入札及び公募型指名競争入札に当たっては,文部科学省が一般競争入札参加の資格要件を満たす者として名簿に登載している者(以下「有資格者」という。)を対象に,公告により入札への参加を希望する者を募り,当該希望者から提出された技術資料を評価した上で入札の参加者を指名し,工事希望型指名競争入札に当たっては,有資格者の中から入札に参加するために必要な技術資料の提出を求める者を選択し,その者から提出された技術資料を評価した上で入札の参加者を指名していた。
 岐阜大学が競争入札の方法により発注する電気工事については,かねてから,入札参加者間で受注に関する調整が行われてきたところ,関係人38社(以下「38社」という。)は,遅くとも平成14年4月1日以降,岐阜大学が一般競争入札,詳細条件審査型一般競争入札,公募型指名競争入札又は工事希望型指名競争入札の方法により発注する電気工事(重電機器製造業者であることが入札参加条件とされているものを除く。以下「岐阜大学発注の特定電気工事」という。)について,受注機会の均等化及び受注価格の低落防止を図るため
(a)  岐阜大学が一般競争入札,詳細条件審査型一般競争入札,公募型指名競争入札又は工事希望型指名競争入札の公告を行った場合には,それまでの岐阜大学発注の特定電気工事への入札参加回数,工事場所,過去の受注工事との関連性等の事情により当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)は,世話人等と称する者に対してその旨を表明し,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
i  受注希望者が1社のときは,その者を受注予定者とする
ii  受注希望者が複数のときは,それまでの岐阜大学発注の特定電気工事への入札参加回数,工事場所,過去の受注工事との関連性等の事情を勘案して受注希望者間の話合い又は前記世話人等と称する者の助言に基づき受注予定者を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 38社は,前記bにより,岐阜大学発注の特定電気工事のすべてを受注していた。
 平成16年2月17日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,38社は,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
(ア) 岐阜県等発注の電気工事関係(平成16年(勧)第20号)
 関係人103社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも平成12年4月1日(第10表記載の事業者にあっては,それぞれ,遅くとも「期日」欄記載の年月日ころ)以降行っていた,岐阜県等発注の特定電気工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議し,そのことを相互に通知すること。
 次の(a)及び(b)の事項を岐阜県等に通知するとともに,岐阜県の区域における電気工事の営業を担当する自社の従業員に周知徹底すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,岐阜県等発注の特定電気工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,岐阜県等発注の特定電気工事について,受注予定者を決定しないこと。
(イ) 岐阜大学発注の電気工事関係(平成16年(勧)第21号)
 関係人38社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも平成14年4月1日以降行っていた,岐阜大学発注の特定電気工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議し,そのことを相互に通知すること。
 次の(a)及び(b)の事項を岐阜大学に通知するとともに,岐阜県の区域における電気工事の営業を担当する自社の従業員に周知徹底すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,岐阜大学発注の特定電気工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,岐阜大学発注の特定電気工事について,受注予定者を決定しないこと。

(5) (株)ブリヂストンほか3社に対する件(平成16年(勧)第35号)及び(株)ブリヂストンほか9社に対する件(平成16年(勧)第36号)
(注)  東洋ゴム工業(株)については,勧告を応諾しなかったので,平成17年1月31日に審判開始決定が行われたが,同社から同意審決の申出があったため,同年3月31日,同意審決を行った。

ア 関係人


イ 違反事実等
(ア) 特定航空機用タイヤ関係(平成16年(勧)第35号)
(a) i  防衛庁は,陸上自衛隊,海上自衛隊及び航空自衛隊の任務遂行に必要な航空機用空気入りタイヤ(以下「航空機用タイヤ」という。)の調達に関する契約に関する事務の大部分を,同庁契約本部(以下「契約本部」という。)において行っている。
ii  契約本部は,陸上自衛隊,海上自衛隊及び航空自衛隊からの調達要求を受けて,航空機用タイヤの調達に関する契約を締結するに当たり,そのほとんどすべてを一般競争入札に付している。
(i)  このうち,契約の種類を売買契約とするものについては,内閣府競争参加資格を満たす者として登録している有資格者のうち,一定の等級に格付されていること等を一般競争入札参加の要件としている。
(ii)  また,契約本部は,平成16年2月までは,航空機用タイヤのうち,契約の種類を製造請負契約とするものについても,一般競争入札に付することとし,前記a(a)ii(i)の要件のほか,当該タイヤを製造するために必要な金型(以下「モールド」という。)を保有していることを証明した者であることを,入札参加要件としていた。しかし,契約本部は,航空機用タイヤのうち,契約の種類を製造請負契約とするものについては,同年3月以降,原則として指名競争入札に付することとし,前記の入札参加要件を満たす者の中から入札の参加者を指名している。
iii
(i)  契約本部は,航空機用タイヤの競争入札を実施するに当たっては,調達要求元,種類,納期等の別により物件をまとめて入札に付すこととし,複数の入札をまとめて同じ日に行うという方法により,入札を実施している。
(ii)  契約本部は,航空機用タイヤの競争入札において,予定価格以下の最低の価格で応札した者を落札者として契約を締結することとしているが,予定価格以下の価格での応札がない場合には,同じ日に再度の入札(再度の入札が不調になった場合に同じ日に続けて行う入札を含む。以下同じ。)を行っており,再度の入札を繰り返しても予定価格以下の価格での応札がないときは,入札を不調とし,それまでの入札において最低の価格で応札した者との間で,随意契約を締結することを前提とした商議と称する価格交渉(以下「商議」という。)を行い,予定価格以下の見積価格の提示があったときは,その者と契約を締結している。さらに,商議によっても予定価格以下の見積価格の提示がないときは,商議を不調として終了させ,日を改めて再度公告をして入札を行っている。
(b) i  (株)ブリヂストン及び横浜ゴム(株)の2社(以下「メーカー2社」という。)及びグッドイヤーウィングフット(株)(以下「メーカー等3社」という。)は,前記a(a)ii(i)の入札参加要件を満たしている。また,製造請負契約の対象となる物件については,メーカー2社は自らが製造に用いるモールドを保有しており,グッドイヤーウィングフット(株)は製造に用いるモールドを保有して製造業者に貸与しており,それぞれ前記a(a)ii(ii)の入札参加要件を満たしている。
 なお,物件により,モールドをメーカー等3社のうち3社すべてが保有するもの,2社が保有するもの及び1社のみが保有するものがある。
ii メーカー2社は,自ら一部の入札及び商議に出席するほか,(株)ブリヂストンにあってはブリヂストンタイヤ東京販売(株)をして,横浜ゴム(株)にあってはヨコハマタイヤ東京販売(株)をして,それぞれ入札及び商議に出席させ,応札及び交渉を代行させることにより,自らの名で応札及び交渉し,これらの販売業者に代理権を授与して契約の締結を委任している。これらの販売業者は,メーカー2社のために契約を締結している。
 グッドイヤーウィングフット(株)は,自ら入札及び商議に出席して自らの名で応札し,契約を締結している。
iii メーカー等3社は,防衛庁が競争入札に付する航空機用タイヤのうち契約本部が契約に関する事務を行うもの(以下「防衛庁発注の特定航空機用タイヤ」という。)のすべてを受注している。
 防衛庁発注の特定航空機用タイヤの入札参加者及び入札代行者(入札及び商議に出席して,入札参加者の応札を代行し,契約締結を代理する者をいう。以下同じ。)は,かねてから,受注に関する調整を行ってきたところ,メーカー等3社並びにブリヂストンタイヤ東京販売(株)及びヨコハマタイヤ東京販売(株)の2社(以下「販売業者2社」という。)の5社(以下「5社」という。)は,遅くとも平成13年7月17日以降,防衛庁発注の特定航空機用タイヤについて,受注機会の均等化及び受注価格の維持を図るため
(a) i
(i)  メーカー等3社すべてがモールドを保有する物件については,累積受注金額(メーカー等3社それぞれがそれまでに受注した物件の契約額の累積金額をいう。)の少ない者から順に,調達が予定されている物件のうち最も高額な物件を割り当てていくという方法により,順次,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(ii)  メーカー等3社のうち2社がモールドを保有する物件については,当該2社の間の話合いなどにより,受注予定者を決定する (iii) メーカー等3社のうち1社のみがモールドを保有する物件については,当該1社を受注予定者とする
ii  物件ごとに受注予定者の受注すべき価格(以下「受注予定価格」という。)を定めることとし,受注予定価格を算出する際の単価は,当該物件と同種の物件に係る前回の契約時の単価の額から消費税相当分を差し引いた額を下回らないようにする
iii  入札においては,受注予定価格を上回る価格で応札するとともに,再度の入札においては,受注予定者以外の入札参加者は,所定の再度の入札で一斉に応札を辞退することにより,受注予定者だけが商議に参加できるようにし,物件ごとに,一斉に応札を辞退するまでの所定の入札の回数,各所定の入札における応札価格,商議回数及び各商議における見積価格を定める
iv  商議が不調となり,再度の公告をして入札が行われた場合にも,前記b(a)i,ii及びiiiと同様とする v 年度ごとにメーカー等3社のうち1社が順番に幹事となり,販売業者2社のうち1社が幹事を補佐して,会合の開催その他の連絡に当たる
旨の合意に基づき
(b)  毎年度,幹事の引継ぎを行い,前記b(a)の合意を確認した後,当該年度の最初の入札の前に,幹事の会議室において,メーカー等3社が,必要に応じ販売業者2社の出席を得て,会合を開催し,当該入札に係る物件及び当該会合の時点において調達の予定が判明している物件について,前記b(a)iの方法により受注予定者を決定し
(c) i  当該年度の調達に係る物件のうち,前記b(b)の会合の時点で調達の予定が判明していなかったものについては,幹事を補佐する販売業者が前記b(a)iの方法により受注予定者を定め
ii  受注予定価格,一斉に応札を辞退するまでの入札回数,各回の入札における応札価格,商議回数及び各商議における見積価格(以下「受注予定価格等」という。)については,幹事を補佐する販売業者がこれを定め,他の販売業者及びグッドイヤーウィングフット(株)に連絡し
(d)  グッドイヤーウィングフット(株)は自ら入札及び商議に出席し,販売業者2社はメーカー2社の入札代行者として,入札及び商議に出席し,それぞれ定められた価格で応札し,入札を不調にさせるとともに,受注予定者以外の入札参加者は所定の再度の入札で応札を辞退することにより,受注予定者又は受注予定者の入札代行者だけが商議に出席できるようにして
 商議において受注予定者が受注予定価格で受注できるようにしていた。
 5社の前記bの行為により,メーカー等3社は,防衛庁発注の特定航空機用タイヤのすべてを受注していた。
(a)  5社のうち,グッドイヤーウィングフット(株)は,同社の申出に基づき契約本部が平成16年3月4日に防衛庁発注の特定航空機用タイヤに係る同社との契約を解除したことにより,同日以降,防衛庁発注の特定航空機用タイヤの供給事業を取りやめている。
(b)  平成16年6月17日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,メーカー2社及び販売業者2社は,同日以降,それぞれ前記b(a)の合意に基づき受注予定者,受注予定価格等を決定し,受注予定者が受注予定価格で受注できるようにする行為を取りやめている。
(イ) 特定車両用タイヤ・チューブ関係(平成16年(勧)第36号)
(a) i  防衛庁は,陸上自衛隊,海上自衛隊及び航空自衛隊の任務遂行に必要な航空機用以外の空気入りタイヤ・チューブ(以下「車両用タイヤ・チューブ」という。)の調達に関する契約に関する事務の大部分を,同庁契約本部(以下「契約本部」という。)において行っている。
ii  契約本部は,陸上自衛隊,海上自衛隊及び航空自衛隊からの調達要求を受けて,車両用タイヤ・チューブの売買契約を締結するに当たり,そのほとんどすべてを一般競争入札に付しており,一般競争入札に当たっては,内閣府競争参加資格を満たす者として登録している有資格者のうち,一定の等級に格付されていること,製造業者以外の者が応札するときは製造業者からの出荷引受書をあらかじめ提出すること等を一般競争入札参加の要件としている。
iii
(i)  契約本部は,車両用タイヤ・チューブの一般競争入札を実施するに当たっては,調達要求元,種類,納期等の別により物件をまとめて入札に付することとし,複数の入札をまとめて同じ日に行うという方法により,入札を実施している。
(ii)  契約本部は,車両用タイヤ・チューブの一般競争入札において,予定価格以下の最低の価格で応札した者を落札者として契約を締結することとしているが,予定価格以下の価格での応札がない場合には,同じ日に再度の入札(再度の入札が不調になったときに同じ日に続けて行う入札を含む。以下同じ。)を行っており,再度の入札を繰り返しても予定価格以下の価格での応札がないときは,入札を不調とし,それまでの入札において最低の価格で応札した者との間で,随意契約を締結することを前提とした商議と称する価格交渉(以下「商議」という。)を行い,予定価格以下の見積価格の提示があったときは,その者と契約を締結している。さらに,商議によっても予定価格以下の見積価格の提示がないときは,商議を不調として終了させ,日を改めて再度公告をして入札を行っている。
(b) i  (株)ブリヂストン,横浜ゴム(株),住友ゴム工業(株)及び東洋ゴム工業(株)の4社(以下「メーカー4社」という。)及びグッドイヤーウィングフット(株)(以下「メーカー等5社」という。)は,前記a(a)iiの入札参加要件を満たしている。このうち,メーカー4社は,自ら一部の入札及び商議に出席するほか,(株)ブリヂストンにあってはブリヂストンタイヤ東京販売(株)をして,横浜ゴム(株)にあってはヨコハマタイヤ東京販売(株)をして,住友ゴム工業(株)にあっては中央ダンロップ(株)及び(株)ファルケン関東をして,東洋ゴム工業(株)にあっては新東京日産自動車販売(平成16年3月以前は,旧東京日産自動車販売)及び千代田タイヤ(株)をして,それぞれ入札及び商議に出席させ,応札及び交渉を代行させることにより,自らの名で応札及び交渉し,これらの販売業者に代理権を授与して契約の締結を委任している。これらの販売業者は,メーカー4社のために契約を締結している。
 グッドイヤーウィングフット(株)は,自ら入札及び商議に出席して自らの名で応札し,契約を締結している。
 なお,平成15年6月までは,オーツタイヤ(株)も,前記a(a)iiの入札参加要件を満たす者として,自ら一部の入札及び商議に出席するほか,(株)ファルケン関東をして入札及び商議に出席させ,応札及び交渉を代行させることにより,自らの名で応札及び交渉し,(株)ファルケン関東に代理権を授与して契約の締結を委任していた。(株)ファルケン関東は,オーツタイヤ(株)のために契約を締結していた。
ii  メーカー等5社は,防衛庁が一般競争入札に付する車両用タイヤ・チューブのうち契約本部が契約に関する事務を行うもの(以下「防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブ」という。)のほとんどすべてを受注している。
(a)  防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブの入札参加者及び入札代行者(入札及び商議に出席して,入札参加者の応札を代行し,契約締結を代理する者をいう。以下同じ。)は,かねてから,防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブについて,受注機会の確保及び受注価格の維持を図るため,防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブの総受注金額に対する入札参加者各社の受注すべき金額の基本的な割合(以下「受注シェア」という。)を定め,この受注シェアを維持するように受注に関する調整を行ってきた。
(b)  メーカー4社は,遅くとも平成15年7月31日までに,同日以降入札に付される防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブについて,販売業者4社(ブリヂストンタイヤ東京販売(株),ヨコハマタイヤ東京販売(株),中央ダンロップ(株)及び旧東京日産自動車販売をいう。)から,それぞれ,販売業者6社及びグッドイヤーウィングフット(株)の7社(以下「販売業者等7社」という。)の間で住友ゴム工業(株)とオーツタイヤ(株)の合併に伴い受注シェアを変更することについて行われた話合いの状況の報告を受けるなどして
i  販売業者等7社の間で前記合併後の受注シェアを定めること
ii  この受注シェアを維持するよう受注に関する調整を行うこと  
を認識・認容し,この調整を販売業者等7社に委ねることを了解した。
(c)  販売業者等7社は,メーカー4社の前記b(b)の了解の下に,遅くとも平成15年7月31日以降,防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブについて,
i  従来オーツタイヤ(株)が有していた受注シェアを住友ゴム工業(株)の受注シェアに合算することにより,メーカー等5社の受注シェアを次のとおりとする
 (株)ブリヂストン  35.55パーセント
 横浜ゴム(株)  25.16パーセント
 住友ゴム工業(株)  22.03パーセント
 東洋ゴム工業(株)  13.79パーセント
 グッドイヤーウィングフット(株)  3.47パーセント
ii
(i) α  メーカー等5社のうち2社以上が防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブを製造するために必要な金型(以下「モールド」という。)を保有する物件については,後記b(c)ii(i)βの物件を除き
(α)  取分(調達が予定されている物件の想定受注金額の総額にメーカー等5社各社の受注シェアを乗じた額に,後記b(c)ii(i)α(β)の額を加算した額をいう。以下同じ。)の大きい者から順に,調達が予定されている物件のうち想定受注金額の高額な物件から割り当てていくという方法により,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定するとともに
(β)  取分の残額(受注すべき者の取分から想定受注金額を差し引いた額をいう。以下同じ。)を,次に繰り越す
β  (株)ブリヂストン,横浜ゴム(株)及び住友ゴム工業(株)の3社以外が製造していないタイヤで特殊なトレッドパターンを持つものに係る物件については,後記b(c)ii(i)γの物件を除き,累積受注金額((株)ブリヂストン,横浜ゴム(株)及び住友ゴム工業(株)の3社それぞれが受注した物件の契約額の累積金額をいう。以下同じ。)の少ない者から順に,調達が予定されている物件のうち想定受注金額の高額な物件から割り当てていくという方法により,順次,受注予定者を決定する
γ  メーカー等5社のうち1社のみがモールドを保有する物件については,当該1社を受注予定者とする (ii) 物件ごとに受注予定者の受注すべき価格(以下「受注予定価格」という。)を定めることとし,受注予定価格を算出する際の単価は,当該物件と同種の物件に係る前回の契約時の単価の額から消費税相当額を差し引いた額を下回らないようにする
(iii)  入札においては,受注予定価格を上回る価格で応札するとともに,再度の入札においては,受注予定者以外の入札参加者は,所定の再度の入札で一斉に応札を辞退することにより,受注予定者だけが商議に参加できるようにし,物件ごとに,一斉に応札を辞退するまでの所定の入札の回数,各所定の入札における応札価格,商議回数及び各商議における見積価格を定める
(iv)  商議が不調となり,再度の公告をして入札が行われた場合にも,前記b(c)ii(i),(ii)及び(iii)と同様とする
iii (i)  ヨコハマタイヤ東京販売(株)が,受注予定価格,入札参加者,一斉に応札を辞退するまでの入札回数,各回の入札における応札価格,商議回数及び各商議における見積価格(以下これらを「受注予定価格等」という。)を定めるとともに,ブリヂストンタイヤ東京販売(株),中央ダンロップ(株),旧東京日産自動車販売及びグッドイヤーウィングフット(株)に連絡する
(ii)  前記b(c)iii(i)の連絡を受けて,中央ダンロップ(株)は(株)ファルケン関東に,旧東京日産自動車販売は千代田タイヤ(株)に連絡し,物件ごとの入札代行者を調整し,これを定める
旨の合意に基づき,グッドイヤーウィングフット(株)は自ら入札及び商議に出席し,販売業者6社はメーカー4社の入札代行者として入札及び商議に出席し.それぞれ定められた価格で応札し,入札を不調にさせるとともに,受注予定者以外の入札参加者は所定の再度の入札で応札を辞退することにより,受注予定者又は受注予定者の入札代行者だけが商議に出席できるようにして,商議において受注予定者が受注予定価格で受注できるようにしていた。
(d)  メーカー4社は,防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブについて,自ら一部の入札に出席するとともに,販売業者6社に自社名の入札書及び委任状を交付して受注予定者が受注予定価格で受注できるようにさせていた。
 メーカー4社及び販売業者等7社の前記bの行為により,メーカー等5社は,平成15年度における防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブのほとんどすべてを受注していた。
(a)  グッドイヤーウィングフット(株)は,同社の申出に基づき契約本部が平成16年3月4日に防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブに係る同社との契約を解除したことにより,同日以降,防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブの販売事業を取りやめている。
(b) i  ヨコハマタイヤ東京販売(株)は,グッドイヤーウィングフット(株)が契約本部に対して契約の解除を申し出たこと等を知り,平成16年5月26日ころ,東京都中央区所在の貸会議室において販売業者による会合を開催するなどして,グッドイヤーウィングフット(株)以外の入札参加者各社の受注シェアと平成15年度末における取分の残額及び累積受注金額を確認した。
 新東京日産自動車販売は,この会合に出席することにより,前記b(c)の合意を引き継いだ。
ii  平成16年6月17日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,ブリヂストンタイヤ東京販売(株),ヨコハマタイヤ東京販売(株),中央ダンロップ(株),新東京日産自動車販売,(株)ファルケン関東及び千代田タイヤ(株)の6社は,同日以降,それぞれ前記b(c)の合意に基づき受注予定者,受注予定価格等を決定し,受注予定者が受注予定価格で受注できるようにする行為を取りやめている。
ウ 排除措置
(ア) 特定航空機用タイヤ関係(平成16年(勧)第35号)
 関係人4社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 遅くとも平成13年7月17日以降行っていた,防衛庁発注の特定航空機用タイヤについて,受注予定者,受注予定価格等を決定し,受注予定者が受注予定価格で受注できるようにする行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議すること。
 それぞれ,次の事項を,前記4社のうち自社を除く3社に通知するとともに契約本部に通知し,かつ,自社の従業員に周知徹底すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,防衛庁発注の特定航空機用タイヤについて,受注予定者,受注予定価格等を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,防衛庁発注の特定航空機用タイヤについて,受注予定者,受注予定価格等を決定しないこと
 (株)ブリヂストン及び横浜ゴム(株)は,今後,前記aの行為と同様の行為を行うことがないよう,自社のタイヤの販売担当者に対する独占禁止法に関する研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じること。
(イ) 特定車両用タイヤ・チューブ関係(平成16年(勧)第36号)
 関係人10社に対し,次の措置を採るよう命じた。
 前記10社は,防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブについて,遅くとも平成15年7月31日以降(東京日産自動車販売(株)にあっては平成16年5月26日ころ以降),(株)ブリヂストン,横浜ゴム(株),住友ゴム工業(株)及び東洋ゴム工業(株)の4社の了解の下にブリヂストンタイヤ東京販売(株),ヨコハマタイヤ東京販売(株),中央ダンロップ(株),(株)ファルケン関東,東京日産自動車販売(株)及び千代田タイヤ(株)の6社が前記タイヤ・チューブの総受注金額に対する入札参加者各社の受注すべき金額の基本的な割合等を合意し,この合意に基づき,受注予定者,受注予定価格等を決定し,受注予定者が受注予定価格で受注できるようにすることを取りやめている旨を確認することを取締役会において決議すること。
 前記4社は,それぞれ,次の事項を,前記4社のうち自社を除く3社,前記6社及び契約本部に,前記6社は,それぞれ,次の事項を,前記6社のうち自社を除く5社及び契約本部に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブについて,受注予定者,受注予定価格等を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 前記4社及び6社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブについて,受注予定者,受注予定価格等を決定しないこと。
 前記4社は,今後,前記aの行為と同様の行為を行うことがないよう,自社のタイヤ・チューブの販売担当者に対する独占禁止法に関する研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じること。
3 独占禁止法第8条違反事件
(1) 三重県社会保険労務士会に対する件(平成16年(勧)第17号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  三重県社会保険労務士会(以下「三重県社労士会」という。)は,三重県の区域を地区とし,地区内に事務所又は勤務する事業所を有する社会保険労務士を会員とし,会員の品位を保持し,その資質の向上と業務の改善進歩を図ることを目的に,社会保険労務士法の規定に基づき,昭和53年11月4日に設立された法人である。
 三重県社労士会の会員数は,平成16年4月30日現在275名であり,そのうちの189名の者は,自ら事務所を開設して業務を行っている社会保険労務士である。
 三重県社労士会は,総会及び理事会を置き,会の運営に必要な事項に関する決定を行っている。また,三重県社労士会は,三重県社会保険労務士会倫理規程(以下「倫理規程」という。)の運用を行うために調査監察委員会を設けているほか,三重県社労士会での決定事項及び倫理規程の運用に関しては会員向けの研修会,会報等で会員に周知している。
 三重県社労士会は,昭和56年7月以降,上部団体である全国社会保険労務士会連合会の都道府県社会保険労務士会倫理規程準則に即して,倫理規程を設けている。
(イ)  三重県社労士会は,かねてから,倫理規程第6条に規定する広告活動の制限条項及び第8条に規定する業務侵害の禁止条項に基づき,会員のダイレクトメール,ファクシミリ等による広告活動を制限するとともに,会員に他の会員の顧客を獲得しないように求めてきた。三重県社労士会は,平成15年2月,全国社会保険労務士会連合会が都道府県社会保険労務士会倫理規程準則を改正したことから,平成15年5月30日,三重県社労士会会議室において開催した理事会において,倫理規程第6条の広告活動の制限条項の一部改正及び第8条の業務侵害の禁止条項の削除を決定したが,会員の広告活動及び会員が顧客を獲得するための活動の制限については,今後も従前のとおり,会員のダイレクトメール,ファクシミリ等による広告活動を制限すること及び会員に他の会員の顧客を獲得しないように求めることを確認した。
 三重県社労士会は,平成15年6月17日開催の入会3年未満の会員向け研修会において,ダイレクトメール,ファクシミリ等による広告活動を行わないこと及び他の会員の顧客を獲得しないことを会員に周知している。
 三重県社労士会は,平成15年7月14日開催の調査監察委員会において,ファクシミリによる広告活動を行った会員及び他の会員の顧客を獲得したとして申出のあった会員について審議した上で,当該会員に対し,これらの活動を行わないよう指導を行った。また,これらの指導事例等を平成15年9月発行の会報「社労士三重」に掲載して,全会員に周知している。
ウ 排除措置
 三重県社労士会に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  平成15年5月30日の理事会で確認した,会員のダイレクトメール,ファクシミリ等による広告活動を制限している行為及び会員が顧客を獲得するための活動を制限している行為を取りやめること。
(イ)  前記(ア)に基づいて採った措置を会員に通知すること。
(ウ)  今後,会員のダイレクトメール,ファクシミリ等による広告活動を制限する行為及び会員が顧客を獲得するための活動を制限している行為を行わないこと。
(2) 社団法人四日市医師会に対する件(平成16年(勧)第18号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  社団法人四日市医師会(以下「四日市医師会」という。)は,三重県四日市市,三重県三重郡朝日町,同郡川越町,同郡楠町及び同郡菰野町の区域(以下「四日市地区」という。)に就業所又は住所を有する医師を会員とし,医道の昂揚,医術の発展普及並びに公衆衛生の向上を図り,社会福祉を増進し医師の権利を擁護することを目的として,昭和22年11月23日に設立された社団法人である。
 四日市医師会の会員数は,平成16年4月1日現在454名であり,そのうち231名の者は,病院又は診療所(以下「医療機関」という。)を開設して医業を行っている医師(以下「開業医」という。)である。
 四日市医師会は,総会及び理事会を置き,理事会においては会務執行に関する事項の決定を行っているほか,四日市地区内における乳幼児健診に関する事項,各種予防接種料金に関する事項の検討等を行っている乳幼児医療委員会及び四日市地区内における医療機関の開設等に係る相談窓口として医療機関開設相談委員会を設置している。
 四日市医師会は,四日市地区内の市町の依頼等により,会員を学校医等に推薦するなどして会員に各種の健康診査を実施させるほか,会員に行政機関から発せられる通達類をはじめ医療,社会保険等に関する情報を提供する等業務上必要な便宜を広く供与しており,四日市地区内の開業医のほとんどすべては,医療機関の円滑な運営を考慮して,四日市医師会に加入している。
 各種予防接種のうち,インフルエンザ予防接種については,健康保険法で定める公的医療保険が適用されないところ,平成13年11月の一部改正による改正後の予防接種法に基づき,平成13年11月以降は,65歳以上の者及び60歳以上65歳未満の者であって,心臓,じん臓若しくは呼吸器の機能又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害を有するものとして厚生労働省令で定める者に対してはインフルエンザ予防接種の料金の一部が市町村から助成されることとなった。
 インフルエンザ予防接種は,インフルエンザワクチンの接種からその効果が表れるまで2週間程度を要し,効果の持続期間は約5か月とされていることから,インフルエンザの流行期間(12月ころから3月ころ)が始まる前の10月下旬から12月中旬の間に行うことが望ましいとされている。
(イ)  四日市医師会は,平成14年にインフルエンザワクチンの価格が上昇したことから,平成14年10月以降の65歳未満の者(60歳以上65歳未満の者であって,心臓,じん臓若しくは呼吸器の機能又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害を有するものとして厚生労働省令で定める者を除く。)に対するインフルエンザ予防接種(以下「特定インフルエンザ予防接種」という。)を会員が行う場合の料金について,乳幼児医療委員会で検討させた上で,平成14年10月15日ころに開催した理事会において1件につき3,800円以上とすることを決定し,平成14年10月23日付けの「10月度定例理事会内容報告」と題する文書により,同決定を遵守するよう会員に周知した。
 四日市医師会は,会員から前記(イ)aの決定を守らない会員がいるとの苦情を受け,会長,副会長及び乳幼児医療委員会の担当理事で対応策を協議した結果,平成15年10月6日付けの「平成15年度インフルエンザ予防接種の実施にあたって」と題する文書により,前記(イ)aの決定を遵守するよう会員に周知した。
 四日市医師会の会員は,前記(イ)a及びbにより,おおむね,平成14年10月以降の特定インフルエンザ予防接種の料金を1件につき3,800円以上としていた。
(ウ)  四日市医師会は,昭和54年ころに医療機関の偏在と会員相互の調整を図ることを目的として,医療機関適正配置委員会(以下「適正配置委員会」という。)を設置するとともに
(a)  会員が医療機関を開設しようとし,診療科目を増設しようとし,又は病床を増床しようとする場合には,四日市医師会に申し出て,適正配置委員会の助言と指導相談を受ける
(b)  会員が診療所を開設しようとし,又は診療所について診療科目を増設しようとする場合には,同一の第一標榜科目を掲げている既存の医療機関との直線距離を500メートル以上とする
(c)  会員が病院を開設しようとし,又は病院について診療科目を増設しようとする場合には,同一の第一標榜科目を掲げている既存の医療機関との直線距離を1,000メートル以上とする
等を内容とする「適正配置委員会施行細則」(以下「施行細則」という。)を決定し,昭和54年4月1日から施行することとした。
 四日市医師会は,昭和56年2月16日ころに開催した総会において,適正配置委員会の名称を「医療機関開設相談委員会」に,また,施行細則の名称を「医療機関開設相談委員会内規」(以下「内規」という。)に改めたが,内規の内容については変更していない。
 四日市医師会は,施行細則又は内規に基づき,会員から医療機関の開設,診療科目の増設又は病床の増床の申出があった場合は,医療機関開設相談委員会(昭和56年2月15日ころまでにあっては適正配置委員会)及び理事会において審議した上で,当該申出を受理し,又は既存の会員医療機関の同意を得ること,今後増床しないこと等の条件を付して当該申出を受理している。
ウ 排除措置
 四日市医師会に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  平成14年10月15日ころに行った会員が行う特定インフルエンザ予防接種の料金を1件につき3,800円以上とする旨の決定を破棄すること。
(イ)  昭和54年ころに決定し,昭和56年2月16日ころに名称変更した医療機関開設相談委員会内規を破棄するとともに,同内規に基づいて行っている病院及び診療所の開設,診療科目の増設及び病床の増床の制限を取りやめること。
(ウ)  次のaないしdの事項を会員に通知し,次のa及びcの事項を一般消費者に周知し,次のb及びdの事項を同医師会の地区内に就業所又は住所を有する会員外の医師に通知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 前記(イ)に基づいて採った措置
 今後,会員が行う特定インフルエンザ予防接種の料金を決定せず,会員がそれぞれ自主的に決める旨
 今後,病院又は診療所の開設,診療科目の増設又は病床の増床の制限を行わない旨
(エ)  今後,特定インフルエンザ予防接種の料金を決定する行為を行わないこと。
(オ)  今後,病院又は診療所の開設,診療科目の増設又は病床の増床を制限する行為を行わないこと。
4 独占禁止法第19条違反事件
(1) グリーングループ(株)に対する件(平成16年(勧)第16号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  グリーングループ(株)(以下「グリーングループ」という。)は,中ノ島開発(有)が平成13年1月15日にグリーングループ(有)に商号を変更し,平成14年8月1日に組織を変更したものである。
 グリーングループは,「日田天領水」の商標を付したミネラルウォーター類(以下「日田天領水」という。)を,通信販売等の方法により直接一般消費者に販売するほか,自ら又は卸売業者を通じて小売業者に販売している。
 日田天領水には,20リットル入りケース,10リットル入りケース,2リットル入りペットボトル及び500ミリリットル入りペットボトルの4種類がある。
 グリーングループは,日田天領水について,種類別及び地区別に一般消費者向け価格を定めており,これを通信販売等の方法により自らが直接一般消費者に販売する場合の価格とするとともに,希望小売価格(地区別小売価格,標準小売価格等とも称されている。以下「希望小売価格」と総称する。)としている。
 日田天領水は,平成14年以降,テレビ番組,新聞,雑誌,インターネット等で取り上げられるようになり,これとともに,西日本を中心に,一般消費者の間で急速に人気が高まってきている。このため,一般消費者の中には,日田天領水を指名して購入したり,継続して購入する者もおり,食品類又は酒類を販売する小売業者の中には,日田天領水の取扱いを望む者が少なくない。
(イ)  グリーングループは,日田天領水について,その発売当初においては,主として,直接一般消費者に販売するほか,希望小売価格を下回る価格で販売することの少ない小規模の小売業者向けを中心に販売してきたところ,前記(ア)dのとおり,平成14年以降,日田天領水の人気が急速に高まってきたことから,生産能力の拡大,営業体制の整備及びペットボトル入り商品の開発を行うとともに,卸売業者向けの販売を拡大するなど販売ルートの拡大を図ることとした。しかし,グリーングループは,販売ルートの拡大により,希望小売価格を下回る価格で日田天領水を販売する小売業者が現れ,それまで希望小売価格どおりの価格で販売していた小売業者の販売量に影響が出ること等を懸念して,日田天領水について,遅くとも平成14年11月以降(500ミリリットル入りペットボトルについては,その販売を開始した平成15年7月以降),日田天領水の小売価格を維持するとの方針の下に,小売業者及び卸売業者との取引開始時又はその後の商談において,小売業者に対しては,希望小売価格で日田天領水を販売するよう要請し,また,卸売業者に対しては,同卸売業者の取引先小売業者に希望小売価格で日田天領水を販売させるよう要請し,当該要請に異議を唱えない小売業者及び卸売業者とのみ取引を行っている。
 グリーングループは,販売ルートの拡大に伴い,平成15年ころから,一部の小売業者が希望小売価格を下回る価格で日田天領水を販売する事例が見られるようになったことから,卸売業者及び小売業者に対し,他の小売業者が希望小売価格を下回る価格で日田天領水を販売しているとの情報があればグリーングループに連絡するよう依頼するとともに,その情報に接した場合には,当該小売業者に対し希望小売価格を下回らない価格で販売するよう直接指導を行い,また,当該小売業者向けに販売している取引先卸売業者を指導して当該小売業者に希望小売価格を下回らない価格で日田天領水を販売するように指導を行わせ,当該小売業者の販売価格を希望小売価格を下回らない価格に改めさせている。
 グリーングループが小売業者の販売価格を希望小売価格を下回らない価格に改めさせた行為を例示すると,次のとおりである。
(a)  平成15年7月ころ,愛知県に本店を置く小売業者が日田天領水の20リットル入りケース,10リットル入りケース及び2リットル入りペットボトルを希望小売価格を下回る価格で販売する旨の広告を当該地域の月刊情報誌に掲載しているとの情報が寄せられたため,グリーングループは,同年8月ころ,同小売業者に対し,同製品の販売価格を希望小売価格どおりの価格に改めるよう指導を行い,同小売業者の同製品の販売価格を希望小売価格どおりの価格に改めさせた。これに伴い,同小売業者は,同製品を希望小売価格を下回る価格で販売する旨の広告を行ったことについて,グリーングループに対し,謝罪文書を提出した。
(b)  平成15年7月ころ,兵庫県に本店を置く量販店の同県内の店舗が日田天領水の2リットル入りペットボトルを希望小売価格を下回る価格で販売しているとの情報が寄せられたため,グリーングループは,卸売業者に対し同店舗の同製品の販売価格を希望小売価格どおりの価格に改めさせるよう指導を行い,同店舗の同製品の販売価格を希望小売価格どおりの価格に改めさせた。
(c)  平成15年10月ころ,愛知県に本店を置く量販店の同県内の店舗が日田天領水の2リットル入りペットボトルを希望小売価格を下回る価格で販売しているとの情報が寄せられたため,グリーングループは,一次卸売業者に対し,二次卸売業者をして同量販店に対し同店舗における同製品の販売価格を希望小売価格どおりの価格に改めさせるよう指導を行った。これにより,一次卸売業者は二次卸売業者に,二次卸売業者は同量販店にそれぞれ指導を行い,同店舗の同製品の販売価格を希望小売価格どおりの価格に改めさせた。
(d)  平成15年10月ころ,東京都に本店を置くディスカウントストアの愛知県内の店舗が日田天領水の2リットル入りペットボトル及び500ミリリットル入りペットボトルを希望小売価格を下回る価格で販売しているとの情報が寄せられたため,グリーングループは,一次卸売業者に対し,二次卸売業者をして同ディスカウントストアに対し同店舗における同製品の販売価格を希望小売価格どおりの価格に改めさせるよう指導を行った。これにより,一次卸売業者は二次卸売業者に,二次卸売業者は同ディスカウントストアにそれぞれ指導を行い,同店舗の同製品の販売価格を希望小売価格どおりの価格に改めさせた。
(e)  平成15年12月ころ,埼玉県に本店を置く小売業者の東京都内の店舗が日田天領水の2リットル入りペットボトルを希望小売価格を下回る価格で販売しているとの情報が寄せられたため,グリーングループは,平成16年1月ころ,同小売業者に対して,同店舗における同製品の販売価格を希望小売価格を下回らない価格に改めるよう指導を行い,同店舗の同製品の販売価格を希望小売価格を下回らない価格に改めさせた。
(f)  平成15年12月ころ,千葉県に本店を置く量販店が主要店舗を対象とする催事において日田天領水の2リットル入りペットボトルを希望小売価格を下回る価格で販売しようとしていたため,グリーングループは,同月から平成16年1月にかけて,卸売業者に対し同店舗の同製品の販売価格を希望小売価格どおりの価格に改めさせるよう再三にわたり指導を行うとともに,これを改めない場合には出荷停止することを示唆し,また,同量販店に対しても同店舗の同製品の販売価格を希望小売価格どおりの価格に改めるよう直接指導を行って,同店舗の同製品の販売価格を希望小売価格どおりの価格に改めさせた。これに伴い,同量販店は,同製品の販売価格について,当初,チラシ広告,値札等に希望小売価格を下回る価格を表示することを予定していたにもかかわらず,これを希望小売価格どおりの価格に修正した。
 卸売業者及び小売業者は,おおむね,グリーングループによる前記(イ)aの要請又は前記(イ)bの指導を受け入れ,日田天領水の供給を受けている。
(ウ)  グリーングループの前記(イ)の行為により,小売業者は,おおむね,希望小売価格を下回らない価格で日田天領水を販売している。
ウ 排除措置
 グリーングループに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  日田天領水の販売に関し,自ら又は取引先卸売業者を通じて,小売業者に対し,同社の定めた希望小売価格を下回らない価格で販売するようにさせている行為を取りやめること。
(イ)  次の事項を取引先卸売業者及び取引先小売業者に対し通知するとともに,一般消費者に周知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(ウ)  今後,日田天領水の販売に関し,前記(ア)の行為と同様の行為により,小売業者の販売価格を制限しないこと。
(2) (株)ミスターマックスに対する件(平成16年(勧)第30号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  (株)ミスターマックス(以下「ミスターマックス」という。)は,群馬県,千葉県,広島県,山口県,福岡県,佐賀県,長崎県,熊本県,大分県及び宮崎県の区域において,「MrMax」と称する小売店舗を40店舗展開しているところ,これらの店舗のうち,政令指定都市の区域内に所在する8店舗中5店舗の売場面積は3,000平方メートル以上であり,政令指定都市以外の区域内に所在する32店舗中31店舗の売場面積は1,500平方メートル以上である。
 ミスターマックスは,九州地区における総合ディスカウントストア業者の中で最大手の業者である。
 ミスターマックスと継続的な取引関係にある日用雑貨品,家庭用電気製品,食料品,衣料品等の納入業者(以下「納入業者」という。)は,約300社であるところ,納入業者にとって,ミスターマックスは重要な取引先であり,納入業者の多くは,ミスターマックスとの納入取引の継続を強く望んでいる状況にある。このため,納入業者の多くは,ミスターマックスとの納入取引を継続する上で,納入する商品の品質,納入価格等の取引条件とは別に,ミスターマックスからの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり,その取引上の地位はミスターマックスに対して劣っている。
(イ)  ミスターマックスは,毎年度,日用雑貨品,家庭用電気製品,食料品,衣料品等の仕入部門ごとに,あらかじめ納入業者との間で,
(a)  納入業者ごとに仕入金額の目標を設定した上で,目標の達成度に応じて段階的に設定した一定率により算出した額の金銭
(b)  仕入金額に一定率を乗じて算出した額の金銭
(c)  仕入金額によらず一定額の金銭
のいずれかを負担させることについて合意し,おおむね9月の中間決算期及び3月の本決算期に,前記合意に基づく金銭的負担の提供を求めているところ(ミスターマックスが納入業者に対して提供を求めている金銭的負担を以下「協賛金」という。),納入業者との間の納入取引に影響を及ぼし得る仕入担当者(以下「バイヤー」という。)から納入業者に対し,あらかじめ納入業者との間で合意した負担額を超える協賛金の提供を要請している。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,ミスターマックスとの納入取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
 例えば,平成15年度において,納入業者延べ約250社は,前記要請を受け,あらかじめ合意した額を超える額の協賛金として,9月の中間決算期に総額約3800万円,3月の本決算期に総額約7500万円を提供している。
 ミスターマックスは,毎年度,前記の仕入部門ごとに,粗利益額についての目標を設定しているところ,おおむね9月の中間決算期及び3月の本決算期に,この目標を達成するまで,前記(イ)aの協賛金のほか,あらゆる名目の下に協賛金の提供を繰り返し要請している。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,ミスターマックスとの納入取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
 例えば,平成15年度において,納入業者約200社は,前記要請を受け,総額約4億9000万円を提供している。
 ミスターマックスは,自社の店舗のじゅう器(陳列棚など通常設置しているものを除く。以下同じ。)の設置又は新規オープン時のセールにおけるアドバルーンの賃借に際し,自社の店舗のじゅう器費又はアドバルーン費との名目の下,納入業者に対し,実際に要する費用を超える額の協賛金の提供を要請している。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,ミスターマックスとの納入取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
 例えば,平成15年度において,納入業者延べ約500社は,前記要請を受け,実際に要する費用を超える額について,協賛金として総額約1800万円を提供している。
(ウ)  ミスターマックスは,納入業者との間の納入取引のほとんどすべてについて買取りを条件としており,買取りを条件とした商品については,納入業者との間で事前に納入価格等の取引条件を交渉の上決定している。
 ミスターマックスは,毎年度,日用雑貨品,家庭用電気製品,食料品,衣料品等の仕入部門ごとに,在庫高及び商品回転率についての目標を設定しており,この目標を達成するため,過剰在庫の整理に際し,商品回転率の低い商品及び入替えの対象となる定番商品の在庫品について,納入業者に対し,前記仕入部門ごとに当該商品の在庫品の全部又は一部を返品している。
 これらの返品を受けた納入業者の多くは,ミスターマックスとの納入取引を継続して行う立場上,当該納入業者が負うべき責任がないにもかかわらず,商品の返品を受け入れることを余儀なくされている。
 例えば,平成15年度において,ミスターマックスは,中間決算期である平成15年9月に,商品回転率の低い商品について納入業者約40社に対し総額約4000万円,入替えの対象となる定番商品について納入業者約110社に対し総額約1億6000万円,本決算期である平成16年3月に,商品回転率の低い商品について納入業者約50社に対し総額約5900万円,入替えの対象となる定番商品について納入業者約80社に対し総額約3700万円に相当する当該商品の在庫品を返品している。
(エ)  ミスターマックスは,かねてから,自社の店舗の新規オープン時,改装オープン時及び閉店時のセールに際して自社の販売業務のための商品の搬入,陳列,補充,撤去等の作業(以下「陳列等作業」という。)を納入業者に行わせることとし,あらかじめ納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,バイヤーから,納入業者に対し,陳列等作業を行わせるためにその従業員等の派遣を受けることを必要とする店舗及び日時を連絡し,納入業者の負担で,その従業員等を派遣するよう要請している。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,ミスターマックスとの納入取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
 例えば,平成15年度において,ミスターマックスは,15店舗において陳列等作業を行わせるため,納入業者に対し,その従業員等を派遣するよう要請しており,納入業者に延べ約1万8000人の従業員等を派遣させ,使用している。
ウ 排除措置
 ミスターマックスに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  納入業者に対し,自社の取引上の地位が当該納入業者に優越していることを利用して行っている,次の行為を取りやめること。
 あらかじめ当該納入業者との間で合意した負担額を超える協賛金を提供するよう要請している行為
 目標として設定された粗利益額を達成するまで,あらゆる名目の下に協賛金を提供するよう要請している行為
 自社の店舗のじゅう器の設置又は新規オープン時のセールにおけるアドバルーンの賃借に要する費用との名目の下,実際に要する費用を超える額の協賛金を提供するよう要請している行為
(イ)  過剰在庫の整理に際し,その取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者に対し,買取りを条件として納入された商品について,当該納入業者が負うべき責任がないにもかかわらず,商品の全部又は一部を返品している行為を取りやめること。
(ウ)  自社の店舗の新規オープン時,改装オープン時及び閉店時のセールに際し,その取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者に対し,自社の販売業務のための商品の搬入,陳列,補充,撤去等の作業を行わせるために,その従業員等を派遣するよう要請している行為を取りやめること。
(エ)  次の事項を納入業者に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底すること。
 前記(ア)ないし(ウ)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)ないし(ウ)の行為と同様の行為を行わない旨
(オ)  今後,前記(ア)ないし(ウ)の行為と同様の行為を行わないこと。
(カ)  今後,前記(ア)ないし(ウ)の行為と同様の行為を行うことがないよう,独占禁止法の遵守に関する行動指針に基づき,仕入担当者に対する独占禁止法に関する研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じること。
(3) カラカミ観光(株)に対する件(平成16年(勧)第31号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  カラカミ観光(株)(以下「カラカミ観光」という。)は,北海道の区域において,「定山渓ビューホテル」,「洞爺サンパレス」,「洞爺パークホテル」,「ニュー阿寒ホテル」,「阿寒ビューホテル」及び「ホテルエメラルド」と称するホテル(これらを総称して以下「道内6ホテル」という。)の経営を行っている。
 カラカミ観光は,道内6ホテルのうち,「定山渓ビューホテル」と称するホテル(以下「定山渓ビューホテル」という。)を除く5ホテルについて,自社が全額出資する子会社に対しこれらのホテルの運営を委託しているところ,運営責任者として自社の事業部長を配置し,自社が定めた営業方針に基づいてホテルの運営を行わせており,また,これらのホテルの従業員は事業部長の指示の下でホテルの運営に携わっている。これらのホテルの売上げに関する一切の収益は,カラカミ観光に帰属し,代金決済等,取引関係にある相手方との取引は実質的にカラカミ観光との間において行われている。
 カラカミ観光は,平成15年度において,北海道の区域において,いわゆる観光ホテル業者の中で売上高及び収容人員について第1位の地位にある。
 道内6ホテルにおいてカラカミ観光と継続的な取引関係にある食材,日用雑貨品,衣料品等の商品及び広告代理業務,人材派遣業務等の役務を供給する事業者(これらを総称して以下「納入業者等」という。)は,約440名であるところ,納入業者等にとって,カラカミ観光は重要な取引先であり,納入業者等の多くは,カラカミ観光との取引の継続を強く望んでいる状況にある。このため,納入業者等の多くは,カラカミ観光との商品又は役務の供給取引(以下「納入取引等」という。)を継続する上で,供給する商品又は役務の品質・内容,価格等の取引条件とは別に,カラカミ観光からの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり,カラカミ観光の取引上の地位はこれらの納入業者等に対して優越している。
(イ)  カラカミ観光は,遅くとも平成13年4月以降,道内6ホテルにおいて,閑散期における稼働率の向上及び収益確保を目的として,おおむね,第12表中「購入要請時期」欄記載の時期に,同表中「利用可能期間」欄記載の期間(年末年始等の特定の期間を除く。)に限り当該ホテルで使用できる宿泊券(以下「宿泊券」という。)について,納入業者等に対し,あらかじめ納入業者等ごとに購入を要請する枚数を設定し
(a)  文書で宿泊券の購入を要請し,購入の申込みが無いなどの場合には,事業部長ら納入取引等に影響を及ぼし得る者から購入するよう重ねて要請する
(b)  宿泊券の購入を要請する文書とともに購入を要請する枚数の宿泊券を納入取引等に影響を及ぼし得る者から手渡す
等の方法により宿泊券を購入するよう要請している。
 これらの要請を受けた納入業者等の多くは,カラカミ観光との納入取引等を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
 カラカミ観光は,納入業者等に対し,平成13年度に総額約2億2900万円,平成14年度に総額約2億2500万円,平成15年度に総額約2億円の宿泊券を購入させている。
 カラカミ観光の前記(イ)aの行為について例示すると次のとおりである。
(a)  カラカミ観光は,平成16年1月ころ,定山渓ビューホテルで使用できる1枚当たり18,000円の宿泊券について,あらかじめ納入業者等ごとに前年の宿泊券の購入枚数又は取引額に応じて購入を要請する宿泊券の枚数を設定し,納入業者等に対し,文書で宿泊券の購入を要請し,購入の申込みが無いなどの場合には,納入取引等に影響を及ぼし得る者から宿泊券の購入を重ねて要請し,これにより,92名の納入業者等に対し,2,559枚の宿泊券(総額約4606万円)を購入させた。
(b)  カラカミ観光は,平成16年3月ころ,「ニュー阿寒ホテル」と称するホテル(以下「ニュー阿寒ホテル」という。)で使用できる1枚当たり15,900円の宿泊券について,あらかじめ納入業者等ごとに前年の宿泊券の購入枚数又は取引額に応じて購入を要請する宿泊券の枚数を設定し,納入業者等に対し,購入を要請する枚数の宿泊券,申込書及び請求書を宿泊券の購入を要請する文書に同封して,納入取引等に影響を及ぼし得る者から手渡すなどして宿泊券の購入を要請し,これにより,67名の納入業者等に対し,945枚の宿泊券(総額約1502万円)を購入させた。
(ウ)  カラカミ観光は,遅くとも平成13年4月以降,納入業者等との懇親及び閑散期における収益確保を目的として,道内6ホテルにおいて,第13表記載の時期に納入業者等を対象に参加費用を徴収して開催する宿泊を伴う宴会(以下「宿泊を伴う宴会」という。)について,納入業者等に対し,あらかじめ,納入業者等ごとに参加を要請する人数を設定するなどして,文書で宿泊を伴う宴会への参加を要請し,参加の申込みが無いなどの場合には,納入取引等に影響を及ぼし得る者から参加するよう重ねて要請している。
 これらの要請を受けた納入業者等の多くは,カラカミ観光との納入取引等を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
 カラカミ観光は,納入業者等に対し,平成13年度に少なくとも総額約2700万円,平成14年度に総額約3300万円,平成15年度に総額約6800万円の参加費用を負担させている。
 カラカミ観光の前記(ウ)aの行為について例示すると次のとおりである。
(a)  カラカミ観光は,平成16年3月3日に「洞爺サンパレス」と称するホテルにおいて開催した納入業者等との「洞爺サンパレスお取引企業様懇親会」と称する宿泊を伴う宴会の開催に際し,あらかじめ納入業者等ごとに前年の宿泊を伴う宴会への出席人数に応じて参加を要請する人数を設定し,納入業者等に対し,文書で前記宿泊を伴う宴会への参加を要請するとともに,納入取引等に影響を及ぼし得る者から,参加の申込みが無い納入業者等又はあらかじめ設定した参加を要請する人数に比べ申込み人数が少ない納入業者等に対し,前記宿泊を伴う宴会に参加するよう重ねて要請し,これにより,少なくとも146名の納入業者等に対し,総額約930万円の参加費用を負担させた。
(b)  カラカミ観光は,平成16年3月18日にニュー阿寒ホテルにおいて開催した納入業者等との「シャングリラ館オープン十周年ニュー阿寒ホテル取引業社親睦会」と称する宿泊を伴う宴会の開催に際し,納入業者等1社につき2名以上の参加を要請することとし,納入業者等に対し,文書で前記宿泊を伴う宴会への参加を要請するとともに,納入取引等に影響を及ぼし得る者から,参加申込みが無い納入業者等に対し,前記宿泊を伴う宴会に参加するよう重ねて要請し,これにより,少なくとも147名の納入業者等に対し,総額約917万円の参加費用を負担させた。
ウ 排除措置
 カラカミ観光に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  自社が北海道の区域で経営する道内6ホテルにおいて,納入業者等に対し,取引関係を利用して行っている,次の行為を取りやめること。
 あらかじめ納入業者等ごとに当該ホテルで使用できる宿泊券の購入を要請する枚数を設定し
(a)  文書で前記宿泊券の購入を要請し,購入の申込みが無いなどの場合には,納入業者等との取引に影響を及ぼし得る者から購入するよう重ねて要請する
(b)  前記宿泊券の購入を要請する文書とともに購入を要請する枚数の前記宿泊券を納入業者等との取引に影響を及ぼし得る者から手渡す
等の方法により,前記宿泊券を購入するよう要請している行為
 あらかじめ納入業者等ごとに納入業者等を対象に宿泊を伴う宴会への参加を要請する人数を設定するなどして,文書で参加を要請し,参加の申込みが無いなどの場合には,納入業者等との取引に影響を及ぼし得る者から参加するよう重ねて要請している行為
(イ)  次の事項を納入業者等に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(ウ)  今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わないこと。
(エ)  今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行うことがないよう,独占禁止法の遵守に関しての行動指針を作成し,当該行動指針に基づく納入業者等との取引の担当者に対する独占禁止法に関する研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じること。



(4) コーナン商事(株)に対する件(平成16年(勧)第32号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  コーナン商事(株)(以下「コーナン商事」という。)は,平成16年7月末現在,東京都以西の20都府県の区域において,「ホームセンターコーナン」と称する大規模小売店舗等を181店舗展開しているところ,これらの店舗のうち,政令指定都市の区域内に所在する44店舗中30店舗の売場面積は3,000平方メートル以上であり,政令指定都市以外の区域内に所在する137店舗中92店舗の売場面積は1,500平方メートル以上である。
 コーナン商事の平成15事業年度(平成15年3月から平成16年2月をいう。)における売上高は,我が国のホームセンター業界において第2位の地位を占めている。また,コーナン商事は,近畿地区におけるホームセンター業者の中で最大手の業者であって,その店舗数及び売上高はここ数年毎年増加している。
 コーナン商事と継続的な取引関係にある日用雑貨品,日曜大工用品等の納入業者(以下「納入業者」という。)は,約500名であるところ,納入業者にとって,コーナン商事は重要な取引先であり,納入業者の多くは,コーナン商事との納入取引の継続を強く望んでいる状況にある。このため,納入業者の多くは,コーナン商事との納入取引を継続する上で,納入する商品の品質,納入価格等の取引条件とは別に,コーナン商事からの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり,その取引上の地位はコーナン商事に対して劣っている。
(イ)  コーナン商事は,遅くとも平成14年以降,毎年6月又は7月ころ,自社の決算に向けた粗利益を確保するため,納入業者との間の納入取引に影響を及ぼし得る仕入担当部署から納入業者に対し,自社の事業年度の下半期に企画するセールへの協力を名目として,自社の事業年度の下半期の期間におおむね相当する6か月間における納入業者の納入金額の1ないし1.5パーセントに相当する額の金銭的負担の提供を要請している(コーナン商事が納入業者に対して提供を求めている金銭的負担を以下「協賛金」という。)。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,コーナン商事との納入取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
 例えば,平成15年7月ころ,コーナン商事は,納入業者に対し,「四半世紀創業大感謝記念セール企画」と称するセールへの協力を名目として,平成15年9月から平成16年2月までの6か月間における納入業者の納入金額の1パーセントに相当する額の協賛金を提供するよう文書で要請し,要請を断った納入業者に対してはその理由を求めるとともに,仕入担当部署の責任者等から繰り返し要請するなどして,当該セールのための景品代金等に要する費用が約9900万円であるところ,納入業者約440社に,協賛金として総額約5億8600万円を提供させている。
 コーナン商事は,かねてから,納入業者との間の割戻金契約に基づき,新規オープン店のオープンセール期間における納入業者の当該店舗に対する納入金額に応じて割戻金を徴収しているところ,平成15年3月以降新規オープンした店舗のうち,新たに自社の店舗を展開することとなった関東地区,九州地区など自社が本店を置く大阪府から遠隔の地域において,近隣に有力な競争事業者が存在する6店舗の新規オープンに際し,事前に算出根拠,使途等について明確にすることなく,当該店舗の粗利益を確保するため,納入業者との間の納入取引に影響を及ぼし得る仕入担当部署から納入業者に対し,それぞれの新規オープン店のオープンセール後4ないし8か月間程度の期間における納入業者の当該店舗に対する納入金額の2ないし3パーセントに相当する額の協賛金の提供を要請している。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,コーナン商事との納入取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
 例えば,平成15年3月ころ,コーナン商事は,横浜市保土ヶ谷区所在の保土ヶ谷星川店及び東京都大田区所在の本羽田萩中店の新規オープンに際し,当該店舗の納入業者に対し,オープンセール期間後から同年8月までの約4か月間における納入業者の当該店舗に対する納入金額の3パーセントに相当する額の協賛金を提供するよう文書で要請し,要請を断った一部の納入業者に対してはその理由を求めるなどして,納入業者約310社に,協賛金として総額約6100万円を提供させている。
(ウ)  コーナン商事は,かねてから,自社の店舗の新規オープン及び改装オープンに際し,自社の販売業務のための商品の陳列,補充等の作業(以下「陳列等作業」という。)を納入業者に行わせることとし,事前に納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,納入業者との間の納入取引に影響を及ぼし得る仕入担当者から納入業者に対し,陳列等作業を行わせるためにその従業員等の派遣を受けることを必要とする店舗,日時,人数等を指定し,納入業者の負担で,その従業員等を派遣するよう要請している。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,コーナン商事との納入取引を継続して行う立場上,陳列等作業を行うためのものであるにもかかわらず,その要請に応じることを余儀なくされており,例えば,コーナン商事は,平成15年8月から平成16年7月までの間に新規オープンした26店舗及び改装オープンした11店舗の計37店舗すべてにおいて,陳列等作業を行わせるため,納入業者に少なくとも延べ約2万9000人の従業員等を派遣させ,使用している。
ウ 排除措置
 コーナン商事に対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  納入業者に対し,納入取引関係を利用して行っている,次の行為を取りやめること。
 決算に向けた粗利益を確保するため,事業年度の下半期に企画するセールへの協力を名目として金銭を提供するよう要請している行為
 新たに自社の店舗を展開することとなった関東地区,九州地区など自社が本店を置く大阪府から遠隔の地域において,近隣に有力な競争事業者が存在する特定の店舗の新規オープンに際し,事前に算出根拠,使途等について明確にすることなく,当該店舗の粗利益を確保するための金銭を提供するよう要請している行為
(イ)  自社の店舗の新規オープン及び改装オープンに際し,その取引上の地位が自社に対して劣っている納入業者に対し,自社の販売業務のための商品の陳列,補充等の作業を行わせるために,その従業員等を派遣するよう要請している行為を取りやめること。
(ウ)  次の事項を前記納入業者に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底すること。
 前記(ア)及び(イ)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)又は(イ)の行為と同様の行為を行わない旨
(エ)  今後,前記(ア)又は(イ)の行為と同様の行為を行わないこと。
(オ)  今後,前記(ア)又は(イ)の行為と同様の行為を行うことがないよう,独占禁止法の遵守に関しての行動指針を作成し,当該行動指針に基づく仕入担当者に対する独占禁止法に関する研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じること。
(5) ユニー(株)に対する件(平成16年(勧)第34号)
ア 関係人
イ 違反事実等
(ア)  ユニー(株)(以下「ユニー」という。)は,平成16年9月末日現在,茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,新潟県,山梨県,長野県,富山県,石川県,岐阜県,静岡県,愛知県,三重県,福井県及び奈良県の区域において,「ユニー」,「アピタ」,「ジョイマート ユニー」,「ラ フーズコア」及び「ユーホーム」と称する大規模小売店舗等を155店舗展開しているところ,これらの店舗のうち,政令指定都市の区域内に所在する26店舗中21店舗の売場面積は3,000平方メートル以上であり,政令指定都市以外の区域内に所在する129店舗の売場面積はすべて1,500平方メートル以上である。
 ユニーの平成15年2月21日から平成16年2月20日までの間の売上高は約7202億円であり,我が国の総合量販店業界において第4位の地位を占めている。また,ユニーは,東海・北陸地区における総合量販店業者の中で,最大手の業者である。
 ユニーと継続的な取引関係にある食料品,衣料品,住居関連品等の納入業者(以下「納入業者」という。)は,約2,500名であるところ,納入業者にとって,ユニーは重要な取引先であり,納入業者の多くは,ユニーとの納入取引の継続を強く望んでいる状況にある。このため,納入業者の多くは,ユニーとの納入取引を継続する上で,納入する商品の品質,納入価格等の取引条件とは別に,ユニーからの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり,その取引上の地位はユニーに対して劣っている。
 ユニーは,大部分の店舗において,年2回,春と秋のそれぞれ1日又は2日間,顧客が「UCSカード」等と称するユニーのクレジットカードを使用又は提示することにより割引販売を受けることができる「特別感謝デー」又は「特別ご招待会」と称するセール(以下「特別感謝セール」という。)を行っている。また,ユニーは,ほとんどすべての店舗において,火曜日に「火曜特売」と称する食料品を中心としたセール(以下「火曜特売セール」という。)を行っている。
 ユニーは,その販売する青果物の約8割を,各店舗の仕入担当者と青果物を納入する仲卸業者(以下「仲卸業者」という。)との間で商談を行い,仕入れており,その販売する青果物の約2割を,中京,静岡,北陸及び関東の各本部の仕入担当者と仲卸業者との間で商談を行い,仕入れている。
(イ)  ユニーは,遅くとも平成13年ころ以降,年2回行われる特別感謝セール及び年間約50回行われる火曜特売セールに際し,一部の店舗において,売上げの増加等を図るため,当該店舗の仕入担当者から,仲卸業者に対し,前記セールの用に供する青果物について,あらかじめ仲卸業者との間で納入価格について協議することなく,例えば,火曜特売セールの前日等に,チラシに掲載する大根,きゅうり,トマト等の目玉商品を連絡し,同商品について仲卸業者の仕入価格を下回る価格で納入するよう一方的に指示する等して,前記セールの用に供する青果物と等級,産地等からみて同種の商品の一般の卸売価格に比べて著しく低い価格をもって通常時に比べ多量に納入するよう要請している。
 これらの要請を受けた仲卸業者の多くは,ユニーとの納入取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
(ウ)  ユニーは,遅くとも平成13年ころ以降,自社の店舗の新規オープン時及び改装オープン時のセール並びに特別感謝セールに際し,自社の販売業務のための商品の陳列,補充,顧客が購入した商品の袋詰め等の作業(以下「陳列等作業」という。)を納入業者に行わせることとし,あらかじめ納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,納入業者との間の納入取引に影響を及ぼし得る仕入担当者から,納入業者に対し,陳列等作業を行わせるためにその従業員等の派遣を受けることを必要とする店舗,日時,人数等を連絡し,納入業者の負担で,その従業員等を派遣するよう要請している。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,ユニーとの納入取引を継続して行う立場上,陳列等作業を行うためのものであるにもかかわらず,その要請に応じることを余儀なくされている。
 例えば,ユニーは,平成15年8月から平成16年7月末の間に,新規オープンした6店舗,改装オープンした7店舗及び特別感謝セールを実施した延べ234店舗のすべてにおいて,陳列等作業を行わせるため,納入業者に対し,その従業員等を派遣するよう要請しており,納入業者に延べ3万7131人の従業員等を派遣させ,使用している。
(エ)  ユニーは,かねてから,半期ごとに実施する棚卸しに際し,自社の棚卸し業務のために,大部分の店舗において棚卸し作業を納入業者に行わせることとし,あらかじめ納入業者との間でその従業員等の派遣の条件について合意することなく,納入業者との間の納入取引に影響を及ぼし得る仕入担当者から,納入業者との間の納入取引関係を利用して,納入業者に対し,自社が派遣を受けることを必要とする店舗,日時,人数を連絡し,納入業者の負担で,納入業者の従業員等を派遣するよう要請している。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,ユニーとの納入取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされている。
 例えば,平成15年8月19日及び同月20日ころ並びに平成16年2月17日及び同月18日ころに行われた棚卸しに際し,ユニーは,延べ209店舗において棚卸し作業を行わせるため,納入業者に対し,その従業員等を派遣するよう要請しており,納入業者に延べ3,112人の従業員等を派遣させ,使用している。
 平成16年7月21日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,ユニーは,棚卸し作業を納入業者に行わせることを取りやめることとし,平成16年8月17日及び同月18日ころに行った棚卸しに際し,納入業者に対する従業員等の派遣要請を行っていない。
ウ 排除措置
 ユニーに対し,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  特別感謝セール及び火曜特売セールに際し,その取引上の地位が自社に対して劣っている自社と継続的な取引関係にある仲卸業者に対し,当該セールの用に供する青果物について,仲卸業者の仕入価格を下回る価格で納入するよう一方的に指示する等して,その青果物と等級,産地等からみて同種の商品の一般の卸売価格に比べて著しく低い価格をもって納入させている行為を取りやめること。
(イ)  自社の店舗の新規オープン時及び改装オープン時のセール並びに特別感謝セールに際し,その取引上の地位が自社に対して劣っている自社と継続的な取引関係にある納入業者に対し,陳列等作業を行わせるために,その従業員等を派遣するよう要請している行為を取りやめること。
(ウ)  棚卸しに際し,納入取引関係を利用して,納入業者に対し,自社の棚卸しのための作業を行わせるために,その従業員等を派遣するよう要請している行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議すること。
(エ)  次の事項を仲卸業者に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わない旨
(オ)  次の事項を納入業者に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底すること。
 前記(イ)又は(ウ)に基づいて採った措置
 今後,前記(イ)及び(ウ)の行為と同様の行為を行わない旨
(カ)  今後,前記(ア)ないし(ウ)の行為と同様の行為を行わないこと。 (キ) 今後,前記(ア)ないし(ウ)の行為と同様の行為を行うことがないよう,独占禁止法の遵守に関しての行動指針を作成し,当該行動指針等に基づく仕入担当者に対する独占禁止法に関する研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じること。
5 審判開始決定事件
 公正取引委員会は,独占禁止法違反の疑いで審査を行い,同法に違反する事実があると認めたときは排除措置を採るよう勧告し(第48条第1項及び第2項),勧告を受けたものが当該勧告を応諾しなかった場合において,事件を審判手続に付することが公共の利益に適合すると認めたときは,当該事件について事件の要旨を記載した文書をもって審判開始決定を行っている(第49条第1項及び第50条第2項)。
 また,公正取引委員会は,違反行為がなくなった日から一年を経過していることから勧告を行うことができないが,課徴金納付命令の対象となる場合に行った課徴金納付命令(第48条の2第1項)に対し,相手方が不服を申立て,審判手続の開始請求をした場合には,課徴金に係る違反行為,課徴金の計算基礎及び法令の適用を記載した文書をもって審判開始決定を行っている(第48条の2第5項,第49条第2項)。
(1)  (株)竹中土木ほか1社に対する件(平成16年(判)第7号),東海工業(株)に対する件(平成16年(判)第8号)及び(株)新歩組に対する件(平成16年(判)第9号)
ア 被審人
 なお,次に掲げる配水管工事跡舗装復旧工事A工区関係における関係人11社(以下「11社」という。)及び配水管工事跡舗装復旧工事E工区関係における関係人1社(以下「1社」という。)については,勧告を応諾したため,平成16年5月18日にこれらの者に対し,勧告審決(平成16年(勧)第7号及び平成16年(勧)第11号)を行っている。(後記エ)
イ 関係人
ウ 審判開始決定の内容
(ア) 配水設備修繕工事A工区関係(平成16年(判)第7号)
(a)  大阪市は,平成11年12月まで指名見積り合わせの方法により水道局において発注していた水道局東部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事及び水道局北部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事について,平成12年1月,施工場所の統合(以下「工区統合」という。)を行い,工区統合以降平成16年2月までの間,水道局において水道局東部工事事務所及び水道局北部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事を[A]配水設備修繕工事として指名見積り合わせの方法により発注していた。
(b)
i  遅くとも平成6年7月以降,大阪市が平成12年1月に工区統合を行うまで,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注していた水道局東部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事については,(株)竹中土木がすべて受注し,また,同市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注していた水道局北部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事については,被審人以外の者1社がすべて受注していた。
ii  前記被審人以外の者1社は,工区統合以降,大阪市水道局が定める入札指名基準を満たさなくなったことから,大阪市が水道局において[A]配水設備修繕工事として指名見積り合わせの方法により発注していた配水設備修繕工事(以下「[A]配水設備修繕工事」という。)の指名見積り合わせの参加者として指名を受けていない。
iii  遅くとも平成6年7月以降,大阪市が平成12年1月に工区統合を行うまで,東海工業(株)は,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注していた水道局北部工事事務所の管轄区域を施工場所とする配水設備修繕工事の指名見積り合わせの参加者として指名を受けていた。
(c)  大阪市は,[A]配水設備修繕工事について,平成12年以降,毎年,2月ころに当年4月から当年9月まで,8月ころに当年10月から翌年3月までの施工業者を次のとおり決定し,単価契約を締結していた。
i  大阪市があらかじめほ装工事及び土木工事について競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している者のうち大阪市水道局が定める入札指名基準を満たす者であって,大阪市内に本店,支店又は営業所を置く者の中から指名見積り合わせの参加者を指名する。
ii  指名見積り合わせの参加者に,当該工事における管修繕工,管取替修繕工等の工種ごとの工事単価の合計額を提示させ,最も低い額を提示した者を施工業者とする。
(d)
i  大阪市は,配水設備修繕工事が配水管の折損による漏水事故の発生等に際し緊急に行われる工事であることから,当該工事の施工業者に対し,漏水事故の発生等に備え,6か月の契約期間を通じて昼夜を問わず随時施工する体制を有すること,管工事に関する高度な知識及び経験を有していることなどを求めている。
ii  大阪市が水道局において発注する配水設備修繕工事の指名見積り合わせの参加者は,前記(d)iの大阪市の求めに応じる上で,特定の施工場所において配水設備修繕工事を施工した経験のある者はそうでない者に比べて施工体制の整備等の点で優位にあると認識していた。
iii  [A]配水設備修繕工事の指名見積り合わせの参加者として指名を受けていた者のうち被審人2社は,[A]配水設備修繕工事について,現に施工体制を整備していた者である。
 平成12年1月24日に行われた[A]配水設備修繕工事の指名見積り合わせに参加するに当たり,東海工業(株)が(株)竹中土木に対して受注を希望する旨表明したことから,これを契機として,被審人2社は,平成12年1月17日ころ以降,[A]配水設備修繕工事について,受注価格の低落防止を図るため
(a)  大阪市から指名見積り合わせの参加者として指名を受けた場合には,被審人2社間の話合いにより,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,必要に応じ,被審人2社以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望しないことを確認するなどして,受注予定者が受注できるようにしていた。
 被審人2社は,前記bにより,[A]配水設備修繕工事のすべてを受注していた。
 平成15年5月13日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,被審人2社は,平成15年9月2日以降,[A]配水設備修繕工事について,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(イ) 配水管工事跡舗装復旧工事A工区関係(平成16年(判)第8号)
(a)  大阪市は,遅くとも平成6年7月以降,行政区の地域又は複数の行政区の地域を合わせた地域を施工場所として,指名見積り合わせの方法により水道局において配水管工事跡舗装復旧工事を発注しているところ,平成13年1月,配水管工事跡舗装復旧工事の施工場所とする行政区の地域の組合せの変更(以下「工区変更」という。)を行い,工区変更以降平成15年12月までの間,旭区,城東区及び鶴見区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事を配水管工事跡舗装復旧工事(A)として発注していた。
(b)  大阪市は,同市が水道局において配水管工事跡舗装復旧工事(A)として指名見積り合わせの方法により発注していた配水管工事跡舗装復旧工事(以下「配水管工事跡舗装復旧工事(A)」という。)について,平成13年以降,毎年,1月に当年2月から当年7月まで,7月に当年8月から翌年1月までの施工業者を次のとおり決定し,単価契約を締結していた。
i  大阪市があらかじめほ装工事について競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している者のうち大阪市水道局が定める入札指名基準を満たす者であって,大阪市内に本店,支店又は営業所を置く者の中から指名見積り合わせの参加者を指名する。
ii  指名見積り合わせの参加者に,当該工事における舗装切断工,舗装破砕工等の工種ごとの工事単価の合計額を提示させ,最も低い額を提示した者を施工業者とする。
(c)  大阪市が水道局において発注する配水管工事跡舗装復旧工事の指名見積り合わせの参加者は,一般に,配水管工事跡舗装復旧工事を施工するに当たっては,当該工事が行われる場所の近隣の居住者等から苦情を申し出られることがあるため,配水管工事跡舗装復旧工事を円滑に施工する上で,苦情が申し出られることを予防し又は苦情が申し出られた場合に適切な対応を行うことが重要であることから,配水管工事跡舗装復旧工事が行われる地域の事情に通じている者がそうでない者に比べて有利であり,当該施工場所に事務所を置いていない者又は当該施工場所において配水管工事跡舗装復旧工事を受注したことがない者が同工事を受注することを希望していないと認識していた。
 遅くとも平成6年7月以降平成12年12月まで旭区又は鶴見区の地域を施工場所として大阪市が水道局において発注していた配水管工事跡舗装復旧工事の受注実績があり又は配水管工事跡舗装復旧工事(A)の施工場所である行政区の地域内に事務所を置く被審人及び11社は,工区変更を契機として,平成13年1月17日ころ以降(第14表記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日ころ以降),配水管工事跡舗装復旧工事(A)について,受注価格の低落防止等を図るため
(a)  大阪市から指名見積り合わせの参加者として指名を受けた場合には,次の方法により,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
i  鶴見区,旭区,城東区の順序で,それぞれの行政区に本店を置く者の中から受注予定者を選出する
ii  受注予定者を選出する行政区に本店を置く者の間で,話合い又はあらかじめ受注予定者となる順序を定める方法により,受注予定者を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する 旨の合意の下に,受注予定者を決定し,必要に応じ,被審人及び11社以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望しないことを確認するなどして,受注予定者が受注できるようにしていた。
 被審人及び11社は,前記bにより,配水管工事跡舗装復旧工事(A)のすべてを受注していた。
 平成15年5月13日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,被審人及び11社は,平成15年7月30日以降,配水管工事跡舗装復旧工事(A)について,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(ウ) 配水管工事跡舗装復旧工事E工区関係(平成16年(判)第9号)
(a)  大阪市は,遅くとも平成6年7月以降,行政区の地域又は複数の行政区の地域を合わせた地域を施工場所として,指名見積り合わせの方法により水道局において配水管工事跡舗装復旧工事を発注しているところ,平成12年1月,配水管工事跡舗装復旧工事の施工場所とする行政区の地域の組合せの変更(以下「工区変更」という。)を行い,工区変更以降平成15年12月までの間,生野区,東住吉区及び平野区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事を配水管工事跡舗装復旧工事(E)として発注していた。
(b)  大阪市は,同市が水道局において配水管工事跡舗装復旧工事(E)として指名見積り合わせの方法により発注していた配水管工事跡舗装復旧工事(以下「配水管工事跡舗装復旧工事(E)」という。)について,平成12年以降,毎年,1月に当年2月から当年7月まで,7月に当年8月から翌年1月までの施工業者を次のとおり決定し,単価契約を締結していた。
i  大阪市があらかじめほ装工事について競争入札参加の資格要件を満たす者として登録している者のうち大阪市水道局が定める入札指名基準を満たす者であって,大阪市内に本店,支店又は営業所を置く者の中から指名見積り合わせの参加者を指名する。
ii  指名見積り合わせの参加者に,当該工事における舗装切断工,舗装破砕工等の工種ごとの工事単価の合計額を提示させ,最も低い額を提示した者を施工業者とする。
(c)  大阪市が水道局において発注する配水管工事跡舗装復旧工事の指名見積り合わせの参加者は,一般に,配水管工事跡舗装復旧工事を施工するに当たっては,当該工事が行われる場所の近隣の居住者等から苦情を申し出られることがあるため,配水管工事跡舗装復旧工事を円滑に施工する上で,苦情が申し出られることを予防し又は苦情が申し出られた場合に適切な対応を行うことが重要であることから,配水管工事跡舗装復旧工事が行われる地域の事情に通じている者がそうでない者に比べて有利であり,当該施工場所に事務所を置いていない者又は当該施工場所において配水管工事跡舗装復旧工事を受注したことがない者が同工事を受注することを希望していないと認識していた。
 遅くとも平成6年7月以降平成11年12月まで生野区,東住吉区又は平野区の地域を施工場所として大阪市が水道局において発注していた配水管工事跡舗装復旧工事をすべて受注していた被審人,東亜土木(株)及び第15表記載の2社は,配水管工事跡舗装復旧工事(E)を受注することを希望し,工区変更を契機として,平成12年1月17日ころ以降(第15表記載の2社のうち(株)御堂コーポレーションにあっては平成13年7月11日ころ以降),配水管工事跡舗装復旧工事(E)について,受注価格の低落防止を図るため
(a)  大阪市から指名見積り合わせの参加者として指名を受けた場合には,話合いなどにより,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力するとともに,受注予定者が当該工事を受注したときには,受注予定者以外の一部の者が受注予定者から当該工事の一部を請け負う
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,必要に応じ,被審人,東亜土木(株)及び第15表記載の2社以外の指名見積り合わせの参加者が受注を希望しないことを確認するなどして,受注予定者が受注できるようにしていた。
 被審人,東亜土木(株)及び第15表記載の2社は,前記bにより,配水管工事跡舗装復旧工事(E)の大部分を受注していた。
 第15表記載の2社のうち辻岡土木建設(株)は,平成13年7月11日以降,大阪市から配水管工事跡舗装復旧工事(E)の指名見積り合わせの参加者として指名を受けていないことから,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っていない。
 また,第15表記載の2社のうち(株)御堂コーポレーションは,平成14年7月1日以降平成15年7月31日までの間,ほ装工事について競争入札参加の資格要件を満たす者として大阪市に登録されておらず,平成14年7月1日以降,配水管工事跡舗装復旧工事(E)の指名見積り合わせに参加していないことから,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っていない。
 平成15年5月13日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,被審人及び東亜土木(株)は,平成15年7月30日以降,配水管工事跡舗装復旧工事(E)について,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
エ 11社及び1社に対する排除措置
 11社及び1社に対する勧告審決において,次の措置を採るよう命じた。
(ア) 配水管工事跡舗装復旧工事A工区関係(平成16年(勧)第7号)
 11社は,平成13年1月17日ころ以降(第14表記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日ころ以降)行っていた,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注する旭区,城東区及び鶴見区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 11社は,次の事項を大阪市に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,大阪市が指名見積り合わせの方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 11社は,今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせ又は競争入札の方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定しないこと。
(イ) 配水管工事跡舗装復旧工事E工区関係(平成16年(勧)第11号)
 1社は,平成12年1月17日ころ以降,大阪市の区域において建設業を営む事業者との間で行っていた,大阪市が指名見積り合わせの方法により水道局において発注する生野区,東住吉区及び平野区の地域を施工場所とする配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認すること。
 1社は,次の事項を大阪市に通知すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,大阪市が指名見積り合わせの方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 1社は,今後,他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせ又は競争入札の方法により発注する配水管工事跡舗装復旧工事について,受注予定者を決定しないこと。

(2) マイクロソフトコーポレーションに対する件(平成16年(判)第13号)
ア 被審人
イ 審判開始決定の内容
(ア) (a)  被審人は,自社のパーソナルコンピュータ用基本ソフトウェア(以下「パソコン用OS」という。)の使用を許諾する条件を自ら定め,パーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という。)の製造販売事業を営んでいる事業者(以下「パソコン製造販売業者」という。)に対して,自社がほとんどを出資するマイクロソフトライセンシングゼネラルパートナーシップ(平成15年9月前にあっては自社が全額を出資するマイクロソフトライセンシングインク)をして自社のパソコン用OSの使用の許諾をさせている。被審人は,自社のパソコン用OSの使用の許諾をするに当たって,パソコン製造販売業者と直接交渉するほか,自社の販売代理店を通じて自社のパソコン用OSが記録された記録媒体を販売することにより使用の許諾をしており,また,自社のパソコン用OSが記録された記録媒体を購入した一般消費者に対して使用を許諾している(以下,被審人のパソコン用OSの使用の許諾を受けている者を「ライセンシー」という。)。
 被審人は,自社のパソコン用OSの使用を許諾するに当たって,当該パソコン用OSをオブジェクトコードの形態で提供しており,ソースコードの形態では提供していない。
(b)  被審人は,パソコン製造販売業者と直接交渉して自社のパソコン用OSの使用の許諾をする場合,使用の許諾をする期間を区切っており,平成14年7月以降は,その期間をほぼ1年間としている。
(c)  パソコン製造販売業者の多くは,被審人のパソコン用OSが記録された記録媒体を被審人の販売代理店から購入する場合,被審人と直接交渉して使用の許諾を受ける場合に比べ,その対価が高くなり,パソコンの製造に係る費用が増加すること,パソコンを購入した一般消費者の利便性が劣ること等の理由から,通常,被審人と直接交渉して被審人のパソコン用OSの使用の許諾を受けている(以下,被審人と直接交渉して被審人のパソコン用OSの使用の許諾を受けているパソコン製造販売業者を「OEM業者」という。)。
 被審人のパソコン用OSを搭載したパソコンのほとんどは,OEM業者によって製造販売されている。
(a)  被審人が,平成7年ころ「ウィンドウズ95」と称するパソコン用OSの使用の許諾を開始して以降,全世界において使用されているパソコン用OSのうち被審人のパソコン用OSが占める割合は,平成8年ころに70パーセントを超え,平成9年ころ以降80パーセントを超え,平成12年ころ以降90パーセントを超えそして平成15年において約94パーセントに至っている。また,我が国において使用されているパソコン用OSのうち被審人のパソコン用OSが占める割合は,平成10年ころに80パーセントを超え,平成15年には約95パーセントとなっている。このように,被審人は,全世界及び我が国におけるパソコン用OSの分野において独占的な地位を占めている。
(b)  被審人は,平成10年ころ,デジタル化された音楽や画像を視聴することができるようにする機能(以下「AV機能」という。)を有する「ウィンドウズメディアプレイヤー」と称するソフトウェアが組み込まれた「ウィンドウズ98」と称するパソコン用OSの使用の許諾を開始し,その後,順次,自社のパソコン用OSのAV機能を拡張してきている。
(c)  OEM業者の中には,AV機能に関する技術の開発を積極的に行っているところがある。
 被審人が全世界及び我が国のパソコン用OSの分野において独占的な地位を占めていること,また,一般消費者の多くが新たな機能が追加されたパソコン用OSが搭載されたパソコンを購入することを希望していることから,被審人が新たなパソコン用OSの使用の許諾を開始した場合,パソコン製造販売業者にとって,パソコン製造販売事業を継続していく上で,当該パソコン用OSの使用の許諾を受け,当該パソコン用OSの使用の許諾が開始されるのと同時期に当該パソコン用OSを搭載したパソコンを製造販売することが重要となっている。このため,パソコン製造販売業者のほとんどは,被審人が新たなパソコン用OSの使用の許諾を開始すると,当該パソコン用OSの使用の許諾を受け,当該パソコン用OSの使用の許諾が開始されるのと同時期に当該パソコン用OSを搭載したパソコンを製造販売している。
(イ)  被審人は,平成5年ころ以降,OEM業者に,被審人から使用の許諾を受けたパソコン用OSについて,ライセンシーが特許侵害を理由に被審人,被審人の子会社又は他のライセンシーに対して訴えを提起しないことを誓約する規定を含むライセンス契約書(パソコン用OSの使用の許諾に係る契約書をいう。以下同じ。)を提示し,当該ライセンス契約書により自社のパソコン用OSの使用の許諾をしている。
 被審人は,平成12年12月ころ,OEM業者に,おおむね後記(a)から(c)までを内容とする規定及び当該規定がライセンス契約の解除又は終了後においても存続する旨の規定のあるライセンス契約書を提示した。
(a)  使用の許諾を受けている製品又は同製品に含まれる発明が同製品の交換品若しくは後継品に含まれている場合には当該交換品若しくは後継品による免除期間内に生じた当該ライセンシーの特許の侵害について,当該ライセンシーは,被審人,被審人の子会社又は他のライセンシーに対し,訴訟を提起しないこと及びあらゆる種類の司法上,行政上その他の手続を提起し,請求し,支援し,又はこれらの手続に参加しないことを誓約する旨
(b)  前記(イ)b(a)の規定における当該ライセンシーの特許とは,当該ライセンシーが現に保有し,又は契約の終了までに取得することとなるすべての特許である旨
(c)  前記(イ)b(a)の免除期間とは,当該ライセンシーの特許の有効期間が終了するまでとする旨又はライセンス契約終了後一定期間までとする旨
 AV機能に関する技術の分野において特許を保有するOEM業者の一部は,被審人のパソコン用OSによって侵害されている又はその可能性がある特許のリストを被審人に提示し,前記(イ)b(a)から(c)までを内容とする規定及び当該規定がライセンス契約の解除又は終了後においても存続する旨の規定は,自社に重大な影響を与えるものである旨主張した。しかし,被審人は,当該OEM業者に対し何ら回答せず,当該OEM業者は当該ライセンス契約書の締結を余儀なくされている。
 また,被審人は,平成14年2月以降の自社のパソコン用OSの使用の許諾について,OEM業者との間で締結するライセンス契約書をすべてのOEM業者の間で共通のものとすることとし,平成13年12月ころ,平成14年2月から平成14年7月までの期間を使用の許諾の期間とするライセンス契約書をOEM業者に提示した。
 当該ライセンス契約書には,後記(a)から(d)までを内容とする規定及び当該規定がライセンス契約の解除又は終了後においても存続する旨の規定が含まれていた。
(a)  当該ライセンス契約書によってライセンシーが使用の許諾を受けている製品に係る当該ライセンシーの特許の侵害について,当該ライセンシーは,被審人,被審人の子会社又は他のライセンシーに対し,訴訟を提起しないこと及びあらゆる種類の司法上,行政上その他の手続を提起し,請求し,支援し,又はこれらの手続に参加しないことを誓約する旨
(b)  当該ライセンス契約書によってライセンシーが使用の許諾を受けている製品に現在含まれている特徴及び機能が,同製品の交換品又は後継品に含まれている場合,当該交換品又は後継品に含まれる当該特徴及び機能は,前記(イ)c(a)における,当該ライセンス契約書によってライセンシーが使用の許諾を受けている製品の一部とみなす旨
(c)  前記(イ)c(a)の規定における当該ライセンシーの特許とは,当該ライセンシーが現に保有し,又は契約の終了までに取得することとなるすべての特許であるとする旨
(d)  当該ライセンシーが当該ライセンス契約書により使用の許諾を受けている製品の販売を停止した後3年が経過した後に生じることとなる侵害については,前記(イ)c(a)の誓約は終了する旨
 AV機能に関する技術の分野において特許を保有するOEM業者の一部は,被審人のパソコン用OSに自社の特許を侵害する技術が使われている可能性があったこと,また,今後,被審人のパソコン用OSの機能拡張が進み,自社が開発している技術が被審人のパソコン用OSに取り込まれ,当該技術に関する特許侵害を被審人及び他のライセンシーに対して主張できなくなることにより,当該技術の開発に要した費用の回収ができなくなるおそれがあることから,被審人に対し,前記(イ)c(a)から(d)までを内容とする規定及び当該規定がライセンス契約の解除又は終了後においても存続する旨の規定の削除又は修正を強く求めたが,被審人は,当該削除又は修正を拒否し,ほとんどのOEM業者は当該ライセンス契約書の締結を余儀なくされている。
 被審人は,以後,平成14年8月から平成15年7月までの期間(一部のOEM業者に対して使用の許諾をする場合を除く。),平成15年8月から平成16年7月までの期間と,ほぼ1年ごとに使用の許諾の期間を区切り,その都度,前記(イ)c(a)から(d)までを内容とする規定及び当該規定がライセンス契約の解除又は終了後においても存続する旨の規定のあるライセンス契約書をOEM業者に提示したところ,AV機能に関する技術の分野において特許を保有するOEM業者の一部は,前記(イ)cと同様の理由で,被審人に対し,前記(イ)c(a)から(d)までを内容とする規定及び当該規定がライセンス契約の解除又は終了後においても存続する旨の規定の削除又は修正を強く求めたが,被審人は,当該削除又は修正を拒否し,すべてのOEM業者は被審人が提示したライセンス契約書の締結を余儀なくされている。
 このため,OEM業者は,被審人のパソコン用OSについて,被審人及び他のパソコン製造販売業者のほとんどに対して特許侵害を理由に訴訟を提起すること等ができない状況にあり,特に,AV機能に関する技術の分野において特許を保有するOEM業者は,被審人のパソコン用OSによって自社の特許が侵害されている又はその可能性があるにもかかわらず,被審人及び他のパソコン製造販売業者のほとんどに対し,特許権の行使が制限されているため,OEM業者のAV機能に関する技術の開発意欲が損なわれることとなり,我が国の当該技術に係る分野における公正な競争が阻害されるおそれがある。
(ウ)  被審人は,平成16年2月20日ころ,平成16年8月1日から平成17年7月31日までの期間を対象とした自社のパソコン用OSのライセンス契約書から前記(イ)c(a)から(d)までを内容とする規定を削除することをOEM業者に表明したが,前記(イ)b(a)から(c)までを内容とする規定及び前記(イ)c(a)から(d)までを内容とする規定はライセンス契約の解除又は終了後においても存続する旨の規定により,平成16年7月31日以前に締結したライセンス契約書にある前記規定は,平成16年8月以降も引き続き効力を有している。
(3)  (株)本間組ほか54社に対する件(平成16年(判)第18号),(株)佐藤企業ほか28社に対する件(平成16年(判)第19号)及び(株)本間組ほか44社に対する件(平成16年(判)第20号)
ア 被審人


(注)  株式会社堀工務店については,平成16年12月14日に同意審決が行われている。
 株式会社大沢組については,平成17年1月7日に同意審決が行われている。
 株式会社平工務店については,平成17年2月14日に同意審決が行われている。

 なお,次に掲げる開削工事関係における関係人19社(以下「19社」という。)及び建築工事関係における関係人11名(以下「11名」という。)については,勧告を応諾したため,平成16年9月17日にこれらの者に対し,勧告審決(平成16年(勧)第24号及び平成16年(勧)第25号)を行っている。(後記エ)
イ 関係人
ウ 審判開始決定の内容
(ア) 推進工事関係(平成16年(判)第18号)
(a)  被審人55社のうち,第16表記載の事業者は,「合併等の状況」欄記載のとおり,それぞれ,合併,商号変更等を行ったものである。
(b)  第17表記載の事業者は,それぞれ,「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣の許可を受け,新潟市の区域において建設業を営んでいた者であるが,「期日」欄記載の年月日に会社分割又は営業譲渡により,「分割等の状況」欄記載のとおり,第18表記載の事業者に対し,建設事業に関する営業を承継させ又は譲り渡しており,以後,建設業を営んでいない。
(c)  第19表記載の事業者は,それぞれ,「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣の許可を受け,新潟市の区域において建設業を営んでいた者であるが,「期日」欄記載の年月日に合併したことにより消滅している。
 また,浅野工事(株)(以下「浅野工事」という。)は,東京都中央区日本橋本町四丁目9番11号に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣の許可を受け,新潟市の区域において建設業を営んでいた者であるが,平成16年5月12日に建設業を廃業している。
(d)  第20表記載の事業者は,それぞれ,「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣又は新潟県知事の許可を受け,新潟市の区域において建設業を営んでいた者である。
(e)
i  新潟市は,推進工法又はシールド工法を用いる下水管きょ工事及び汚水管布設工事であって同工法により同工事を行うことができる者のみを入札参加者としているもの(以下「下水道推進工事」という。)の大部分を制限付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により発注していた。
ii  新潟市は,下水道推進工事を発注するに当たり,新潟市請負工事等指名委員会(以下「指名委員会」という。)を開催し,次のとおり競争入札の参加者を決定していた。
(i)  概算設計金額(指名委員会開催時におけるもの。以下同じ。)が2億円未満の下水道推進工事については,指名競争入札の方法により発注していたところ,競争入札の参加要件を満たすものとして新潟市競争入札参加資格者名簿に登載している者(以下「有資格者」という。)の中から当該指名競争入札の参加者を指名していた。
(ii)  概算設計金額が2億円以上5億円未満(平成14年1月前にあっては2億円以上,平成14年1月から平成15年3月までの期間にあっては2億円以上10億円未満)の下水道推進工事については,公募型指名競争入札の方法により発注していたところ,公募型指名競争入札に当たっては,有資格者を対象に,公告により所定の条件を付して入札参加者を募り,当該条件を満たす入札参加希望者すべてを当該公募型指名競争入札の参加者として指名していた。
 なお,平成15年3月までの期間にあっては,概算設計金額が5億円以上の下水道推進工事については,共同施工方式を採用していたところ,公募型指名競争入札に当たっては,複数の有資格者が結成した共同企業体を対象に,公告により所定の条件を付して入札参加者を募り,当該条件を満たす共同企業体すべてを当該公募型指名競争入札の参加者として指名していた。
(iii)  平成15年4月以降は,概算設計金額が5億円以上(平成14年1月から平成15年3月までの期間にあっては10億円以上)の下水道推進工事については,制限付一般競争入札の方法により発注していたところ,制限付一般競争入札に当たっては,複数の有資格者が結成した共同企業体を対象に,公告により所定の条件を付して入札参加者を募り,当該条件を満たす共同企業体のすべてを当該制限付一般競争入札の参加者としていた。
(f)  新潟市は,平成15年1月から,一部の下水道推進工事について,予定価格を事前に公表していた。
(g)  新潟市が発注する下水道推進工事の設計,施工管理等の業務は,新潟市都市整備局下水道部下水道建設課(以下「下水道建設課」という。),産業経済局農林水産部農地課(以下「農地課」という。)等が担当していることから,当該工事の設計金額については下水道建設課,農地課等が算出している。また,当該工事の予定価格は,設計金額の1万円未満の端数を切り捨てるなどした金額となっているところ,前記設計金額は公表されておらず,新潟市においても下水道建設課等限られた部署の一部の職員しか知り得ないものとなっている。
 新潟市が発注する下水道推進工事については,かねてから,入札参加業者間で受注に関する調整が行われてきたところ,被審人55社,第17表記載の事業者,第19表記載の事業者,浅野工事及び第20表記載の事業者の68社(以下「被審人55社及び13社」という。)は,遅くとも平成11年4月1日(第21表記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日ころ)以降,新潟市が制限付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により発注する下水道推進工事(以下「新潟市発注の特定下水道推進工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため
(a)  過去の受注実績,入札参加実績等の事情により受注を希望する者は,調整役等と称する者に対して,その旨表明し,調整役等と称する者の助言に基づき受注すべき者又は共同企業体(以下「受注予定者」という。)を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者(受注予定者が共同企業体である場合にあってはその代表者)が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 受注予定者は,新潟市発注の特定下水道推進工事の競争入札前に下水道建設課及び農地課の職員に対し当該下水道推進工事の設計金額の教示を求めて教示を受けた設計金額を基にするなどして受注すべき価格を定めていた。
 被審人55社及び13社は,前記bにより,新潟市発注の特定下水道推進工事のほとんどすべてを受注していた。
(a)  第20表記載の事業者は,平成15年4月25日以降,土木一式工事について新潟市の競争入札参加資格申請を行わなかったことにより,新潟市発注の特定下水道推進工事の入札に参加していないため,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っていない。
(b)  平成15年9月30日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,被審人55社,第17表中(1)記載の事業者,第19表記載の事業者のうち(株)青木建設及び浅野工事は,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(イ) 開削工事関係(平成16年(判)第19号)
(a)  被審人29社のうち,(株)廣瀬は,(株)新潟廣瀬組が平成13年2月3日に商号変更したものである。
 第22表記載の事業者は,それぞれ,「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き,建設業法の規定に基づき新潟県知事の許可を受け,新潟市の区域において建設業を営む者である。
 また,(株)吉川組は,新潟市川岸町二丁目8番地6に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣の許可を受け,新潟市の区域において建設業を営んでいた者であるが,平成14年5月2日に新潟地方裁判所から破産宣告を受け,以後,事業活動の全部を取りやめている。
(b)
i  新潟市は,開削工法を用いる下水管きょ工事及び汚水管布設工事(一部推進工法又はシールド工法を用いるものであって,同工法により工事を行うことができる者のみを入札参加者とするものを除く。以下「下水道開削工事」という。)の大部分を公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により発注していた。
ii  新潟市は,自らが発注する土木一式工事の競争入札に参加することを希望し,新潟市が定める競争入札参加資格要件を満たす事業者をその事業規模等によりA,B,C又はDのいずれかの等級に格付し,新潟市競争入札参加資格者名簿に登載しており,当該格付等を2年ごとに見直している(平成12年度においては,平成10年7月1日付けで経営事項審査基準の見直しが行われたことから,前年度に続き見直しを行った。)。
iii  新潟市は,下水道開削工事を発注するに当たり,新潟市請負工事等指名委員会(以下「指名委員会」という。)を開催し,次のとおり競争入札の参加者を決定していた。
(i)  工事予定価格が130万円超の下水道開削工事については,指名競争入札の方法により発注しているところ,概算設計金額(指名委員会開催時におけるもの。以下同じ。)が4000万円以上の下水道開削工事については土木一式工事についてA又はBの等級に格付されている者を,概算設計金額が8000万円以上2億円未満の下水道開削工事については土木一式工事についてAの等級に格付されている者のみを,当該指名競争入札の参加者として指名していた。
(ii)  概算設計金額が2億円以上の下水道開削工事については,公募型指名競争入札の方法により発注していたところ,公募型指名競争入札に当たっては,土木一式工事についてAの等級に格付されている者を対象に,公告により所定の条件を付して入札参加者を募り,当該条件を満たす入札参加希望者すべてを当該公募型指名競争入札の参加者として指名していた。
(c)  被審人29社,19社,第22表記載の事業者及び(株)吉川組の59社(以下「被審人29社及び30社」という。)は,遅くとも平成11年4月1日以降(第23表記載の事業者にあっては,それぞれ,「期間」欄記載の期間),いずれも,新潟市から土木一式工事についてAの等級に格付されていた。
(d)  新潟市は,平成15年1月から,一部の下水道開削工事について,予定価格を事前に公表していた。
(e)  新潟市が発注する下水道開削工事の設計,施工管理等の業務は,下水道建設課,農地課等が担当していることから,当該工事の設計金額については下水道建設課,農地課等が算出している。また,当該工事の予定価格は,設計金額の1万円未満の端数を切り捨てるなどした金額となっているところ,前記設計金額は公表されておらず,新潟市においても下水道建設課等限られた部署の一部の職員しか知り得ないものとなっている。
 新潟市が発注する下水道開削工事については,かねてから,入札参加業者間で受注に関する調整が行われてきたところ,被審人29社及び30社は,遅くとも平成11年4月1日(第24表及び第25表記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日ころ)以降(第26表記載の事業者にあっては,「期間」欄記載の期間を除く。),新潟市が公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事についてAの等級に格付している者のみを指名して発注する下水道開削工事(以下「新潟市発注の特定下水道開削工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため
(a)  工事場所,過去の受注実績等の事情により当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)は,調整役等と称する者又は入札参加業者に対して,その旨表明し
i  受注希望者が1社のときは,その者を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)とする
ii  受注希望者が複数のときは,工事場所,過去の受注実績等の事情を勘案して調整役等と称する者の助言又は受注希望者間の話合いに基づき受注予定者を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力する 旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 受注予定者は,新潟市発注の特定下水道開削工事の競争入札前に下水道建設課及び農地課の職員に対し当該下水道開削工事の設計金額の教示を求めて教示を受けた設計金額を基にするなどして受注すべき価格を定めていた。
 被審人29社及び30社は,前記bにより,新潟市発注の特定下水道開削工事のほとんどすべてを受注していた。
(a)  第22表記載の事業者は,「期日」欄記載の年月日ころ以降,新潟市から土木一式工事についてBの等級に格付されたこと又は新潟市の競争入札参加資格申請を行わなかったことにより,新潟市発注の特定下水道開削工事の入札に参加していないため,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っていない。
(b)  平成15年9月30日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,被審人29社及び19社は,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(ウ) 建築工事関係(平成16年(判)第20号)
(a)  第27表記載の事業者は,それぞれ,「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣の許可を受け,新潟市の区域において建設業を営んでいた者であるが,「期日」欄記載の年月日に会社分割により,「分割等の状況」欄記載のとおり,第28表記載の事業者に対し,建設事業に関する営業を承継させており,以後,建設業を営んでいない。
 また,第29表記載の事業者は,それぞれ,「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き,建設業法の規定に基づき新潟県知事の許可を受け,新潟市の区域において建設業を営んでいた者であるが,「期日」欄記載の年月日に建設業を廃業している。
(b)  第30表記載の事業者は,それぞれ,「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣又は新潟県知事の許可を受け,新潟市の区域において建設業を営む者である。
 また,第31表記載の事業者は,それぞれ,「本店の所在地」欄記載の地に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣又は新潟県知事の許可を受け,新潟市の区域において建設業を営んでいた者であるが,「期日」欄記載の年月日に新潟地方裁判所から破産宣告を受け,以後,事業活動の全部を取りやめている。
(c)
i  新潟市は,建築一式工事の大部分を制限付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により発注していた。
ii  新潟市は,自らが発注する建築一式工事の競争入札に参加を希望し,新潟市が定める競争入札参加資格要件を満たす事業者をその事業規模等によりA,B,C又はDのいずれかの等級に格付し,新潟市競争入札参加資格者名簿に登載しており,当該格付等を2年ごとに見直している(平成12年度においては,平成10年7月1日付けで経営事項審査基準の見直しが行われたことから,前年度に続き見直しを行った。)。
iii  新潟市は,建築一式工事を発注するに当たり,新潟市請負工事等指名委員会(以下「指名委員会」という。)を開催し,次のとおり競争入札の参加者を決定していた。
(i)  工事予定価格が130万円超の建築一式工事については,指名競争入札の方法により発注しているところ,概算設計金額(指名委員会開催時におけるもの。以下同じ。)が4000万円以上の建築一式工事については建築一式工事についてA又はBの等級に格付されている者を,概算設計金額が8000万円以上2億円未満の建築一式工事については建築一式工事についてAの等級に格付されている者のみを,当該指名競争入札の参加者として指名していた。
(ii)  概算設計金額が2億円以上7億円未満(平成14年1月前にあっては2億円以上,平成14年1月から平成15年3月までの期間にあっては2億円以上15億円未満)の建築一式工事については,公募型指名競争入札の方法により発注していたところ,公募型指名競争入札に当たっては,建築一式工事についてAの等級に格付されている者を対象に,公告により所定の条件を付して入札参加者を募り,当該条件を満たす入札参加希望者すべてを当該公募型指名競争入札の参加者として指名していた。
 また,概算設計金額が3億円以上の建築一式工事については,共同施工方式を採用しており,公募型指名競争入札に当たっては,建築一式工事についてAの等級に格付されている者を代表者として結成した共同企業体を対象に,公告により所定の条件を付して入札参加者を募り,当該条件を満たす共同企業体すべてを当該公募型指名競争入札の参加者として指名していた。
(iii)  概算設計金額が7億円以上(平成14年1月から平成15年3月までの期間にあっては15億円以上)の建築一式工事については,制限付一般競争入札の方法により発注していたところ,制限付一般競争入札に当たっては,建築一式工事についてAの等級に格付されている者を代表者とする共同企業体を対象に,公告により所定の条件を付して入札参加者を募り,当該条件を満たす共同企業体のすべてを当該制限付一般競争入札の参加者としていた。
(d)  被審人45社,11名,第27表記載の事業者,第29表記載の事業者,第30表記載の事業者及び第31表記載の事業者の70名(以下「被審人45社及び25名」という。)は,遅くとも平成11年4月1日以降(第32表記載の事業者にあっては,それぞれ,「期間」欄記載の期間),いずれも,新潟市から建築一式工事についてAの等級に格付されていた。
(e)  新潟市は,平成15年1月から,一部の建築一式工事について,予定価格を事前に公表していた。
(f)  新潟市が発注する建築一式工事の設計,施工管理等の業務は,新潟市都市整備局開発建築部営繕課(以下「営繕課」という。),同部住宅課(以下「住宅課」という。)及び教育委員会事務局学校教育部施設課(以下「施設課」という。)が担当していることから,当該工事の設計金額については営繕課,住宅課及び施設課が算出している。また,当該工事の予定価格は,設計金額の1万円未満の端数を切り捨てるなどした金額となっているところ,前記設計金額は公表されておらず,新潟市においても営繕課等限られた部署の一部の職員しか知り得ないものとなっている。
 新潟市が発注する建築一式工事については,かねてから,入札参加業者間で受注に関する調整が行われてきたところ,被審人45社及び25名は,遅くとも平成11年4月1日(第33表及び第34表記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日ころ)以降(第35表記載の事業者にあっては,「期間」欄記載の期間を除く。),新潟市が制限付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により建築一式工事についてAの等級に格付している者(Aの等級に格付している者を代表者とする共同企業体を含む。)のみを入札参加者として発注する建築一式工事(以下「新潟市発注の特定建築工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため
(a)  過去に受注した工事との関連性,工事場所等の事情により当該工事について受注を希望する者(以下「受注希望者」という。)は,調整役等と称する者又は入札参加業者に対して,その旨表明し
i  受注希望者が1名のときは,その者を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)とする
ii  受注希望者が複数のときは,過去に受注した工事との関連性,工事場所等の事情を勘案して調整役等と称する者の助言又は受注希望者間の話合いに基づき受注予定者(受注すべき共同企業体を含む。)を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者(受注予定者が共同企業体である場合にあってはその代表者)が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 受注予定者は,新潟市発注の特定建築工事の競争入札前に営繕課,住宅課及び施設課の職員に対し当該建築工事の設計金額の教示を求めて教示を受けた設計金額を基にするなどして受注すべき価格を定めていた。
 被審人45社及び25名は,前記bにより,新潟市発注の特定建築工事のほとんどすべてを受注していた。
(a)  第30表記載の事業者は,「期日」欄記載の年月日ころ以降,新潟市から建築一式工事においてBの等級に格付されたこと又は新潟市の競争入札参加資格申請を行わなかったことにより,新潟市発注の特定建築工事の入札に参加していないため,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を行っていない。
(b)  平成15年9月30日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,被審人45社及び11名,第27表記載の事業者,第29表記載の事業者のうち(株)日野浦組及び第31表記載の事業者のうち(株)吉田組は,同日以降,前記bの合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
エ 19社及び11名に対する排除措置
 19社及び11名に対する勧告審決において,次の措置を採るよう命じた。
(ア) 開削工事関係(平成16年(勧)第24号)
 遅くとも平成11年4月1日以降行っていた,新潟市発注の特定下水道開削工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議し,そのことを相互に通知すること。
 次の事項を新潟市に通知するとともに自社の従業員に周知徹底すること。
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,新潟市が制限付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により発注する下水道開削工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,新潟市が競争入札の方法により発注する下水道開削工事について,受注予定者を決定しないこと。
(イ) 建築工事関係(平成16年(勧)第25号)
 遅くとも平成11年4月1日以降行っていた,新潟市発注の特定建築工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議し,そのことを相互に通知するとともに,第28表記載の事業者に通知し,青池工務店こと青池秀夫は,前記行為を取りやめていることを確認し,そのことを自己を除く被審人及び関係人55社及び第28表記載の事業者に通知すること。
 次の事項を新潟市に通知すること。また,次の事項を自社の従業員に周知徹底すること。(後者については青池工務店こと青池秀夫を除く。)
(a)  前記aに基づいて採った措置
(b)  今後,共同して,新潟市が制限付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により発注する建築一式工事について,受注予定者を決定せず,各自がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 今後,それぞれ,相互の間において又は他の事業者と共同して,新潟市が競争入札の方法により発注する建築一式工事について,受注予定者を決定しないこと。
オ 新潟市長に対する改善措置要求について
(ア)  本件について,下水道建設課,農地課,営繕課,住宅課及び施設課の職員が,同市が発注する推進工事,開削工事及び建築工事の競争入札の受注予定者として入札参加業者間で決定された者からの求めに応じて,継続的に,秘密として管理されている当該工事の設計金額を入札執行前に教示していた事実が認められた(設計金額を教示していたことがこれまでに認められた職員は5名であり,また,設計金額の教示を受けたことがこれまでに認められた事業者は52社である。)。
 また,同市発注の推進工事及び開削工事の入札参加業者の一部の者に,同市下水道部下水道建設課が起案した秘密として管理されている請負工事等指名委員会提出案件説明資料の写し(以下「指名委員会資料」という。)が継続的に流出していた事実が認められた。
(イ)  前記(ア)の新潟市職員の行為は,いずれも入札談合等関与行為防止法第2条第5項第3号に規定する入札談合等関与行為に該当すると認められた。
(ウ)  公正取引委員会は,平成16年7月28日,新潟市長に対し,入札談合等関与行為防止法第3条第2項の規定に基づき,これらの同市職員の行為の排除のために,必要な改善措置の要求を行った。
カ 会計検査院への通知
 入札談合等関与行為防止法のための衆参両院の国会審議において,公正取引委員会と会計検査院の連携協力等を内容とする付帯決議がなされており,当委員会は入札談合等関与行為防止法の規定に基づき,新潟市長に対し,改善措置要求を行ったことを会計検査院へ通知した。
キ 新潟市長からの改善措置の通知
 新潟市長は,平成17年4月28日,入札談合等関与行為防止法第3条第6項の規定に基づき,調査結果及び改善措置の内容を公表し,これを公正取引委員会に通知した。当委員会は,この改善措置の内容について妥当と認め,意見を述べないこととした。


(2)


(2)








(4) (株)ピーエス三菱ほか19社に対する件(平成16年(判)第26号),オリエンタル建設(株)ほか16社に対する件(平成16年(判)第27号)及び常磐興産ピーシー(株)ほか17社に対する件(平成16年(判)第28号)

ア 被審人
イ 審判開始決定の内容
(ア) 関東地整発注のピー・シー橋梁工事関係(平成16年(判)第26号)
(a)  被審人20社のうち,第36表記載の事業者は,「合併等の状況」欄記載のとおり,それぞれ,合併及び商号変更を行ったものである。
(b)  常磐興産(株)は,東京都中央区東日本橋三丁目7番19号に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣から建設業の許可を受け,国土交通省関東地方整備局の管内においてプレストレスト・コンクリート工事業を営んでいた者であるが,平成14年8月1日にプレストレスト・コンクリート工事の事業部門を分割し,常磐興産ピーシー(株)に承継させたことにより,以後,プレストレスト・コンクリート工事に関する営業を行っていない。
 また,住友建設(株)は,東京都新宿区荒木町13番地の4に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣から建設業の許可を受け,国土交通省関東地方整備局の管内においてプレストレスト・コンクリート工事業を営んでいた者であるが,平成15年4月1日に三井建設(株)に吸収合併されたことにより消滅している。
(c)  被審人20社は,相互の親睦と国土交通省が関東地方整備局において発注するプレストレスト・コンクリート工事の営業に関する情報交換を図るため,各社の東京支店等の事業所において,専任者と呼ばれる各社のプレストレスト・コンクリート工事の営業担当部長級の者で構成する「関東PCクラブ」又は「S会」と称する会を設けている。
(d)  国土交通省は,関東地方整備局においてプレストレスト・コンクリート工事として発注する橋梁の新設工事のほとんどすべてを一般競争入札,公募型指名競争入札,工事希望型指名競争入札又は指名競争入札(以下「競争入札」という。)の方法により発注しており,一般競争入札に当たっては,公告により所定の条件を付して入札参加希望者を募り,当該条件を満たす入札参加希望者すべてを当該入札の参加者としており,公募型指名競争入札に当たっては,関東地方整備局が競争入札参加者の資格要件を満たす者として名簿に登載している者(以下「有資格者」という。)の中から一定の範囲の者に技術資料の提出を求め,提出された技術資料を審査した上で当該入札の参加者を指名しており,工事希望型指名競争入札に当たっては,有資格者の中から受注を希望する工事の内容等を勘案して選択した者に技術資料の提出を求め,提出された技術資料を審査した上で当該入札の参加者を指名しており,また,指名競争入札に当たっては,有資格者の中から当該入札の参加者を指名している。
(e)  国土交通省は,関東地方整備局においてプレストレスト・コンクリート工事として競争入札の方法により発注する橋梁の新設工事について,原則として毎年度四半期ごとに当該年度の発注予定工事の概要を公表している。
 被審人20社,常磐興産(株)及び住友建設(株)の22社(以下「被審人20社及び2社」という。)は,遅くとも平成13年4月1日(第37表記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日)以降,平成16年3月31日(常磐興産(株)にあっては平成14年7月31日,住友建設(株)にあっては平成15年3月31日)まで,国土交通省が関東地方整備局においてプレストレスト・コンクリート工事として競争入札の方法により発注する橋梁の新設工事(以下「関東地整発注の特定ピー・シー橋梁工事」という。)について,受注価格の低落防止を図るため
(a)  自社が受注を希望する工事又は自社が受注を希望する工事額を「関東PCクラブ」又は「S会」と称する会の専任者と呼ばれる者の中から互選により選出された幹事と称する者に表明し,幹事と称する者は,各社の過去の受注実績,受注希望等を勘案して,受注すべき者(以下「受注予定者」という。)を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 被審人20社及び2社は,前記bにより,関東地整発注の特定ピー・シー橋梁工事の大部分を受注していた。
(イ) 近畿地整発注のピー・シー橋梁工事関係(平成16年(判)第27号)
(a)  被審人17社のうち,第38表記載の事業者は,「合併等の状況」欄記載のとおり,それぞれ,合併及び商号変更を行ったものである。
(b)  住友建設(株)は,東京都新宿区荒木町13番地の4に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣から建設業の許可を受け,国土交通省近畿地方整備局の管内においてプレストレスト・コンクリート工事業を営んでいた者であるが,平成15年4月1日に三井建設(株)に吸収合併されたことにより消滅している。
(c)  国土交通省(平成13年1月5日までは建設省。以下同じ。)は,近畿地方整備局(平成13年1月5日までは近畿地方建設局。以下同じ。)においてプレストレスト・コンクリート工事として発注する橋梁の新設工事のほとんどすべてを一般競争入札,公募型指名競争入札,工事希望型指名競争入札又は指名競争入札(以下「競争入札」という。)の方法により発注しており,一般競争入札に当たっては,公告により所定の条件を付して入札参加希望者(複数の入札参加希望者により結成された共同企業体を含む。)を募り,当該条件を満たす入札参加希望者すべてを当該入札の参加者としており,公募型指名競争入札に当たっては,近畿地方整備局が競争入札参加者の資格要件を満たす者として名簿に登載している者(以下「有資格者」という。)の中から一定の範囲の者に技術資料の提出を求め,提出された技術資料を審査した上で当該入札の参加者を指名しており,工事希望型指名競争入札に当たっては,有資格者の中から受注を希望する工事の内容等を勘案して選択した者に技術資料の提出を求め,提出された技術資料を審査した上で当該入札の参加者を指名しており,また,指名競争入札に当たっては,有資格者の中から当該入札の参加者を指名している。
 被審人17社及び住友建設(株)の18社は,遅くとも平成12年4月1日(第39表記載の事業者にあっては,「期日」欄記載の年月日)以降,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始した平成15年12月3日(住友建設(株)にあっては平成15年3月31日)まで,国土交通省が近畿地方整備局においてプレストレスト・コンクリート工事として競争入札の方法により発注する橋梁の新設工事(以下「近畿地整発注の特定ピー・シー橋梁工事」という。)について,受注価格の低落防止を図るため
(a)  指名を受けた者又は一般競争入札に参加する者(共同企業体である場合にあってはその代表者)は,各社の中から互選により選出された幹事と称する者にその旨を連絡するとともに,受注を希望する場合には,その旨を表明し,三井住友建設(株)(平成15年4月1日前にあっては住友建設(株))に在籍する特定の者が,幹事と称する者に表明された受注希望,各社の過去の受注実績等を勘案して,受注すべき者(共同企業体を含む。以下「受注予定者」という。)を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者(共同企業体である場合にあってはその代表者)が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた
 被審人17社及び住友建設(株)は,前記bにより,近畿地整発注の特定ピー・シー橋梁工事の大部分を受注していた。
(ウ) 福島県発注のピー・シー橋梁工事関係(平成16年(判)第28号)
(a)  被審人18社のうち,第40表記載の事業者は,「合併等の状況」欄記載のとおり,それぞれ,合併及び商号変更を行ったものである。
(b)  常磐興産(株)は,東京都中央区東日本橋三丁目7番19号に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣から建設業の許可を受け,福島県の区域においてプレストレスト・コンクリート工事業を営んでいた者であるが,平成14年8月1日にプレストレスト・コンクリート工事の事業部門を分割し,常磐興産ピーシー(株)に承継させたことにより,以後,プレストレスト・コンクリート工事に関する営業を行っていない。
 また,住友建設(株)は,東京都新宿区荒木町13番地の4に本店を置き,建設業法の規定に基づき国土交通大臣から建設業の許可を受け,福島県の区域においてプレストレスト・コンクリート工事業を営んでいた者であるが,平成15年4月1日に三井建設(株)に吸収合併されたことにより消滅している。
(c)  福島県は,プレストレスト・コンクリート工事として発注する橋梁の新設工事(以下「ピー・シー橋梁新設工事」という。)のほとんどを条件付き一般競争入札(平成15年5月1日から実施),技術評価型意向確認方式指名競争入札,希望工種反映型指名競争入札又は指名競争入札(以下「競争入札」という。)の方法により発注しており,条件付き一般競争入札に当たっては,福島県が競争入札参加者の資格要件を満たす者として名簿に登載している者(以下「有資格者」という。)を対象に,公告により入札参加希望者を募り,当該希望者をその資格要件を確認した上で当該入札の参加者としており,技術評価型意向確認方式指名競争入札に当たっては,複数の有資格者を選定し,受注の意向を確認するとともに技術資料の提出を求め,提出された技術資料を評価した上で当該入札の参加者を指名しており,希望工種反映型指名競争入札に当たっては,希望工種,技術力等を記載した申告書等を提出した有資格者の中から希望工種等を考慮し当該入札の参加者を指名しており,また,指名競争入札に当たっては,有資格者の中から当該入札の参加者を指名している。
 福島県は,設計金額がおおむね4億円以上(平成15年4月以前にあっては5億円以上)のピー・シー橋梁新設工事について,共同施工方式により施工することとして発注しており,有資格者を構成員とする共同企業体を入札参加者としている。
 被審人18社,常磐興産(株)及び住友建設(株)の20社(以下「被審人18社及び2社」という。)は,遅くとも平成13年4月1日(第41表記載の事業者にあっては,それぞれ,「期日」欄記載の年月日)以降,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始した平成15年12月3日(常磐興産(株)にあっては平成14年7月31日,住友建設(株)にあっては平成15年3月31日)まで,福島県が競争入札の方法により発注するピー・シー橋梁新設工事(以下「福島県発注の特定ピー・シー橋梁工事」という。)について,受注価格の低落防止を図るため
(a)  福島県発注の特定ピー・シー橋梁工事に係る設計を請け負ったコンサルタント業者に対し,設計図面の作成などの設計協力を行ったかどうか等を勘案して入札参加者間の話合いにより受注すべき者(共同企業体を含む。以下「受注予定者」という。)を決定する
(b)  受注すべき価格は,受注予定者(共同企業体である場合にあってはその代表者)が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるよう協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 被審人18社及び2社は,前記bにより,福島県発注の特定ピー・シー橋梁工事のほとんどすべてを受注していた。

(5) ライト工業(株)ほか15社に対する件(平成16年(判)第29号)
ア 被審人
イ 審判開始決定の内容
(ア)  愛媛県は,のり面保護工事(工種がのり面工のみであるもの又は主たる工種がのり面工であるものをいう。以下同じ。)のほとんどすべてを指名競争入札の方法により発注しており,指名競争入札に当たっては,競争入札に参加する資格を有することについて愛媛県知事の認定を受けた者の中から,当該のり面保護工事を発注する上で適格であると認めた者を指名競争入札の参加者として指名している。
(イ)  被審人16社は,遅くとも平成13年7月1日(第42表記載の事業者にあっては,遅くとも「期日」欄記載の年月日ころ)以降,愛媛県が指名競争入札の方法により土木部,地方局建設部及び土木事務所において発注するのり面保護工事(以下「愛媛県発注の特定のり面保護工事」という。)について,受注価格の低落防止を図るため
 愛媛県から指名競争入札の参加の指名を受けた者は,ライト工業(株)に在籍する世話役と称する者に対してその旨を連絡し,
(a)  過去に受注した工事との継続性,関連性,指名実績等の事情により当該工事について受注を希望する旨を世話役と称する者に対して表明した者(以下「受注希望者」という。)が1社のときは,当該工事を受注すべき者(以下「受注予定者」という。)とする
(b)  受注希望者が複数のときは,過去に受注した工事との継続性,関連性,指名実績等の事情を勘案して,受注希望者間の話合い又は世話役と称する者の助言に基づき受注予定者を決定する
(c)  受注希望者がいないときは,指名実績等を勘案して世話役と称する者が受注予定者を決定する b 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
 受注すべき価格は,受注予定者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるように協力する
旨の合意の下に,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(ウ)  被審人16社は,前記(イ)により,愛媛県発注の特定のり面保護工事の大部分を受注していた。
(エ)  平成16年3月23日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法の規定に基づき審査を開始したところ,被審人16社は,同月24日以降,前記(イ)の合意に基づき受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめている。
(6) (株)ドン・キホーテに対する件(平成17年(判)第7号)
ア 被審人
イ 審判開始決定の内容
(ア)  被審人は,平成16年11月末日現在,北海道,茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,東京都,神奈川県,新潟県,山梨県,静岡県,愛知県,京都府,大阪府,兵庫県,奈良県,福岡県,熊本県及び大分県の区域において,「ドン・キホーテ」,「パウ」及び「ピカソ」と称する小売店舗を101店舗展開しているところ,これらの店舗のうち,東京都特別区及び政令指定都市以外の区域内に所在する48店舗中19店舗の売場面積は1,500平方メートル以上である。
 被審人は,我が国の総合ディスカウントストア業者の中で最大手の業者である。
 被審人と継続的な取引関係にある身の回り品,日用雑貨品,家庭用電気製品,食料品等の納入業者(以下「納入業者」という。)は,約1,500社であるところ,納入業者にとって,被審人は重要な取引先であり,納入業者の多くは,被審人との納入取引の継続を強く望んでいる状況にある。このため,納入業者の多くは,被審人との納入取引を継続する上で,納入する商品の品質,納入価格等の取引条件とは別に,被審人からの種々の要請に従わざるを得ない立場にあり,その取引上の地位は被審人に対して劣っている。
 被審人は,前記101店舗の管理・運営を第一営業本部(以下「一営」という。)及び第二営業本部(以下「二営」という。)に分担させて行っており,その販売する商品については,主に,各営業本部又は各店舗の仕入担当者が納入業者との間で商談を行い,買取りを条件として仕入れている。
(イ)  被審人は,遅くとも平成15年ころ以降,自社の店舗の新規オープンに際し,自社の販売業務のための商品の陳列等の作業(以下「陳列等作業」という。)を納入業者に行わせることとし,あらかじめ納入業者との間でその従業員等を派遣する条件について具体的に合意することなく,納入業者との間の納入取引に影響を及ぼし得る仕入担当者(以下「カテゴリーリーダー等」という。)から,納入業者に対し,陳列等作業を行わせるためにその従業員等の派遣を受けることを必要とする店舗,日時等を連絡し,納入業者の負担で,その従業員等を派遣するよう要請している。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,被審人との納入取引を継続して行う立場上,陳列等作業を行うためのものであるにもかかわらず,その要請に応じることを余儀なくされている。
 例えば,被審人は,平成15年8月ころから同16年11月ころまでの間に,33店舗の新規オープンに際し,当該店舗において陳列等作業を行わせるため,納入業者に対し,その従業員等を派遣するよう要請しており,納入業者に少なくとも延べ約5,200人の従業員等を派遣させ,使用している。
(ウ)  被審人は,かねてから,半期ごとに実施する棚卸し及び必要に応じて実施している棚替え等に際し,自社の棚卸し,棚替え等の作業を納入業者に行わせることとし,あらかじめ納入業者との間でその従業員等を派遣する条件について具体的に合意することなく,カテゴリーリーダー等から,納入業者との間の納入取引関係を利用して,納入業者に対し,自社の棚卸し,棚替え等の作業を行わせるためにその従業員等の派遣を受けることを必要とする店舗,日時等を連絡し,納入業者の負担で,その従業員等を派遣するよう要請している。この際,納入業者の従業員等の派遣人員が前記作業に要する人員に満たない場合には,当該人員を充足するまで重ねて要請している。
 これらの要請を受けた納入業者の多くは,被審人との納入取引を継続して行う立場上,棚卸し,棚替え等の作業を行うためのものであるにもかかわらず,その要請に応じることを余儀なくされている。
 例えば,被審人は,平成16年8月19日から同年11月11日までの間に実施した棚卸しに際し,97店舗において棚卸し作業を行わせるため,納入業者に対し,その従業員等を派遣するよう要請しており,納入業者に少なくとも延べ約1万4300人の従業員等を派遣させ,使用している。また,被審人は,平成15年7月ころから同16年12月ころまでの間に実施した棚替え等に際し,延べ200店舗において棚替え等の作業を行わせるため,納入業者に対し,その従業員等を派遣するよう要請しており,納入業者に少なくとも延べ約3,600人の従業員等を派遣させ,使用している。
(エ)  被審人は,負担額及びその算出根拠,使途等について,あらかじめ納入業者との間で明確にしていなかったにもかかわらず,平成15年7月から同16年6月までの一年間に新規オープンした店舗に対する協賛金として,平成16年5月ころから同年7月ころまでの間に,一営及び二営の各営業本部長の指示の下,カテゴリーリーダー等から,納入業者との間の納入取引関係を利用して,納入業者に対し,当該店舗における納入業者の初回納入金額に一定率を乗じて算出した額,前記期間等における納入業者の納入金額の1パーセントに相当する額等の金銭をさかのぼって提供するよう要請し,これらの要請を受けた納入業者の多くは,被審人との納入取引を継続して行う立場上,その要請に応じることを余儀なくされ,平成16年7月ころまでに,少なくとも,総額約2億9200万円を提供していた。
(7)  (株)ソニー・ミュージックエンタテインメントほか3社に対する件(平成17年(判)第11号)
ア 被審人


 なお,次に掲げる関係人1社(以下「1社」という。)については,勧告を応諾したため,平成17年4月26日に,勧告審決を行っている。(後記エ)
イ 関係人
ウ 審判開始決定内容
(ア)  (株)エスエムイージェー(以下「旧エスエムイー」という。)は,平成15年4月1日に,レコード制作会社であって原盤に録音された演奏者の歌声等の一部を携帯電話の着信音として設定できるよう配信するサービス(以下「着うた」という。)を提供する事業を営む者であった(株)ソニー・ミュージックエンタテインメントから商号を変更したものであり,同日付けで会社分割により設立した被審人(株)ソニー・ミュージックエンタテインメント(以下「エスエムイー」という。)にレコードの制作に関する業務及び着うたの提供に関する業務を承継させた後,同年7月3日ソニー(株)と合併し,消滅している。
(a)  東京都港区に本店を置くレーベルモバイル(株)(以下「レーベルモバイル」という。)は,平成14年12月ころ以降,被審人エスエムイー(平成15年3月以前は,旧エスエムイー。以下同じ。),被審人エイベックスネットワーク(株)(以下「エイベックス」という。),被審人ユニバーサルミュージック(株)(以下「ユニバーサル」という。)及び被審人ビクターエンタテインメント株式会社(以下「ビクター」という。)の4社(以下「被審人4社」という。)並びに1社ら着うたを提供する事業を営むレコード制作会社等から着うたの提供業務を受託している。
(b)  レーベルモバイルの取締役及び執行役員は,すべて,それぞれ,被審人4社及び1社いずれかの役員又は従業員がその地位を兼ねている。
(c)  レーベルモバイルは,その意思決定機関としての取締役会,その運営に関する事項の検討等を行う運営会議等を設けているところ,運営会議には,平成16年3月ころまでは取締役が,同年4月ころ以降は執行役員が出席している。
 ユーザーは,携帯電話会社のネットワークを通じて着うたを提供する者等の携帯電話向けのウェブサイトに接続することにより,着うたにより提供される演奏者の歌声等のダウンロード(当該歌声等を携帯電話の着信音として設定することができるよう記録することをいう。以下同じ。)をするところ,平成16年10月時点において,被審人4社及び1社のレーベルモバイルを通じた着うたの提供に係る売上高並びに被審人4社及び1社の提供する着うたにより配信される演奏者の歌声等をユーザーがダウンロードをする回数は,それぞれ,国内における着うたの提供に係る売上高の約半分,着うたにより配信される演奏者の歌声等の総ダウンロード回数の約4割を占めている。
(a)  原盤の制作者は,著作権法(昭和45年法律第48号)により,原盤に録音された演奏者の歌声等を送信可能化する権利等(以下「原盤権」という。)を有しており,原盤権を保有する者以外の者が着うたを提供するには,原盤権を保有する者等から,原盤権の利用許諾を得ることが必要である。
(b)  着うたのユーザーは,若年層が多く,着うたを提供する事業においては,国内においてコンパクトディスク(以下「CD」という。)等として発売され人気を博している楽曲の多くを着うたとして提供することが重要となっており,被審人4社及び1社は当該楽曲の原盤権の多くを保有等している。
(イ)  被審人4社及び1社は,かねてから,着メロ(MIDIと称される規格に従って記録された音を携帯電話の着信音として設定できるよう配信するサービスをいう。以下同じ。)が,被審人4社及び1社らにおいて制作しCD等として発売した楽曲を利用して提供されているにもかかわらず,被審人4社及び1社らレコード制作会社等は何ら収入を得ることができないことに不満を抱くとともに,その原因が,着メロが(社)日本音楽著作権協会等を通じるなどして著作権者に著作物使用料を支払えば提供できるサービスであることにあり,また,著作権者に著作物使用料を支払えば提供できるサービスであれば,提供する事業者数が多くなり,価格競争が激しくなるとの認識を有していたところ,平成13年7月3日,旧エスエムイー,被審人エイベックス及び被審人ビクターは,今後,携帯電話向けに音楽の配信が開始されるとの予測を踏まえ,レコード制作会社がその有する音楽情報等を提供する共通の携帯電話向けウェブサイトを共同で構築・運営し,レコード制作会社がその優位性を発揮することができるサービスを提供すること等を目的として,レーベルモバイルを設立し,同年8月11日,1社及び被審人ユニバーサルも同社に出資し,平成15年4月1日,被審人エスエムイーは同社の出資者となり,それぞれ,同日ころ以降,その運営に加わった。
(a) i  旧エスエムイーは,平成14年5月ころ,レーベルモバイルの運営会議において,被審人4社及び1社のうち自社を除く4社に対し,原盤に録音された演奏者の歌声等の一部を携帯電話向けに配信することが現実化するとの予測を基に,原盤権を保有しているレコード制作会社の優位性を保つことができ,レコード制作会社にしかできないサービスであるとともに,価格競争のないサービスであると位置付けられた着うたの提供に関する提案を行った。
ii  被審人4社及び1社は,前記(イ)b(a)iの提案に基づいて,平成14年8月ころ以降同年10月ころまでに開催されたレーベルモバイルの運営会議等において,着うたを,原盤権を保有しているレコード制作会社の優位性を保つことができ,レコード制作会社にしかできないサービスとすることにより,価格競争が激しくならないサービスであると位置付け,着うたの提供に係るレーベルモバイルの携帯電話向けウェブサイトを共同で構築・運営し,レーベルモバイルに着うたの提供業務を委託することにより,当該ウェブサイトを通じて着うたを提供することを決定するとともに,被審人4社及び1社らレーベルモバイルに着うたの提供業務を委託する者以外の着うたを提供する又は提供しようとする事業者(以下「他の着うた提供業者」という。)には,被審人4社及び1社が原盤権を保有等している楽曲の原盤権の利用許諾は行わないようにすることとした。
(b)  被審人4社及び1社は,前記(イ)b(a)iiの認識の下,他の着うた提供業者から原盤権の利用許諾の申入れがなされた場合には,これを拒絶し,又は原盤権の利用許諾の申入れを行った他の着うた提供業者が,被審人4社及び1社のCDの販売等に関し被審人4社及び1社と取引関係にある等一定の条件を満たす場合には,当該他の着うた提供業者に対し,その携帯電話向けウェブサイトから着うたの提供に係るレーベルモバイルの携帯電話向けウェブサイトへ誘導することを提案するにとどめ,原盤権の利用許諾を拒絶している。
 被審人4社及び1社の前記(イ)bの行為により,他の着うた提供業者は,被審人4社及び1社が原盤権を保有等している楽曲のほとんどすべてについて,その原盤権の利用許諾を得られていない状況にある。
エ 1社に対する排除措置
 1社に対する勧告審決において,次の措置を採るよう命じた。
(ア)  被審人4社と共同して,着うたを提供する業務をレーベルモバイルに委託する者以外の着うたを提供する又は提供しようとする事業者に対し,原盤権の利用許諾を行わないようにしている行為を取りやめること。
(イ)  次の事項を,被審人4社及びレーベルモバイルに対し通知するとともに,自社の従業員及び前記サービスを提供する又は提供しようとする事業者に周知すること。
 前記(ア)に基づいて採った措置
 今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行わず,自主的に前記利用許諾の可否を決定する旨
(ウ)  今後,自主的に前記利用許諾の可否を決定すること。
(エ)  今後,前記(ア)の行為と同様の行為を行うことがないよう,前記利用許諾に関する業務の担当者に対し,独占禁止法の遵守に関しての行動指針に基づく独占禁止法に関する研修及び法務担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じること。

第3 警告

 平成16年度において警告を行ったものの概要は,後記第43表のとおりである。


第4 その他の事件処理等の公表

 平成16年において,公表案件のうち,審査を終了したものの概要は,後記第44表のとおりである。

第5 課徴金

 課徴金制度は,カルテルによる経済的利得を国が徴収し,違反行為者がそれをそのまま保持し得ないようにすることによって,社会的公正を確保すると同時に,違反行為の抑止を図り,カルテル禁止規定の実効性を確保するため,行政上の措置として設けられているものである。
 課徴金の対象となる行為は,事業者又は事業者団体の行うカルテルのうち,商品若しくは役務の対価に係るもの又は実質的に商品若しくは役務の供給量を制限することによりその対価に影響のあるものであり,これらの行為があった場合に,事業者又は事業者団体の構成事業者に対し課徴金の納付を命じることとされている(第7条の2第1項,第8条の3)。
 平成16年度においては,200件,総額132億9863万円の課徴金の納付を命じた(第45表)。
 なお,平成16年度に課徴金の納付を命じた200件のうち,13件について審判開始請求があり,これらについてはいずれも審判開始決定を行ったことから合計42億6013万円の課徴金納付命令(平成16年(納)第228号ないし第230号,第276号,第283号,第286号,第287号,第296号,第303号,第335号,平成17年(納)第29号,第32号及び第33号)が審判手続に移行した。この結果,平成16年度において確定した課徴金額は,課徴金の納付を命ずる審決32件を含め,219件,111億5029万円となった(第46表)。



第6 告発

 私的独占,カルテルなどの重大な独占禁止法違反行為については,勧告等の法的措置のほか罰則が設けられているところ,これらについては公正取引委員会による告発を待って論ずることとされている(第96条,第73条第1項)。
 公正取引委員会は,平成2年6月20日,「独占禁止法違反行為に対する刑事告発に関する公正取引委員会の方針」を公表して,今後積極的に刑事処罰を求めて告発を行う方針を明らかにしたところである。
 平成16年度においては,前記告発方針に照らして告発すべき事案と判断して告発を行ったものはなかった。