第3章 審判及び訴訟

第1 審判

 平成16年度における審判件数は,平成15年度から引き継いだもの140件,平成16年度中に審判開始決定を行ったもの32件の合計172件(うち,75件は手続を併合。下表(注)参照。)であり,平成16年度中に,44件(うち,審判審決1件,同意審決11件(うち4件については,一部の被審人のみに対する同意審決であり,残る被審人については審判手続係属中であるため,係属事件の件数には影響しない。),課徴金の納付を命ずる審決32件)について審決を行った(本章第2,第3及び第4参照)。また,4件について審判手続を打ち切った(うち2件については,一部の被審人のみについての打切りであり,残る被審人については審判審決を行ったため,係属事件の件数には影響しない。)。平成16年度末現在において審判手続係属中の事件は,下表の130件である。





第2 審判審決

 平成15年(判)第25号公成建設(株)ほか7名に対する審決(京都市発注の特定ほ装工事の入札談合事件)
(1) 被審人
(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が公成建設(株)ほか7名(以下「被審人8名」という。),久御山建設(株)及び山田建設(株)(以下「被審人2名」という。)を含む12名に対し,独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,11名(被審人8名及び同2名を含む。)がこれを応諾しなかったので,11名に対し同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。(なお,被審人2名については,京都地方裁判所から破産宣告を受けたこと等を考慮して,平成16年9月17日,審判手続を打ち切る旨の決定を行った(本章第5参照)。)
(3) 認定した事実の概要及び判断の概要
ア 事実の概要
 被審人8名を含む13名は,共同して,平成12年4月1日以降,京都市が指名競争入札の方法によりほ装工事として発注する予定価格が5000万円以上の工事(以下「京都市発注の特定ほ装工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,京都市発注の特定ほ装工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
イ 主要な争点
 受注希望の表明,受注予定者の絞り込み及び協力行為があったかどうか。
ウ 主要な争点に対する判断
(ア)  平成12年4月1日以降平成14年8月27日までの間における京都市発注の特定ほ装工事は74物件であり,うち少なくとも51物件については,指名業者間で受注希望の有無が確認され,受注希望を表明した者が1名しかなく,その者が受注予定者となることの確定が行われていた。
(イ)  3物件については,受注希望者が複数存在し,話合いにより受注予定者が決まった。
(ウ)  全74物件について,受注予定者から相指名業者に対して積算内訳書を配付していたこと等により,受注予定者が受注できるように協力していた。
(4) 法令の適用
 独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
(5) 命じた措置
 被審人8名は,平成12年4月1日以降行っていた,京都市発注の特定ほ装工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめてい ることを確認しなければならない。
 被審人8名は,次の事項を京都市に通知しなければならない。
(ア)  前項に基づいて採った措置
(イ)  今後,共同して,京都市が指名競争入札の方法により発注する前記工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
 被審人8名は,今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,京都市が競争入札の方法により発注する前記工事について,受注予定者を決定してはならない。

第3 同意審決

 平成15年(判)第6号ないし第9号(株)エスアールエルほか2名に対する審決(国立病院等発注の臨床検体検査業務の入札談合事件)
(1) 被審人
(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が延べ28名に対し,独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,(株)エスアールエル,(株)SBS及び(株)生命情報分析センター(以下「被審人3名」という。)がこれを応諾しなかったので,被審人3名に対し同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたところ,被審人3名から,同法第53条の3及び公正取引委員会の審査及び審判に関する規則第81条の規定に基づき同意審決を受ける旨の申出があり,具体的措置に関する計画書が提出されたので,これを精査した結果,適当と認められたことから,その後の審判手続を経ないで審決を行った。
(3) 認定した事実の概要
ア 平成15年(判)第6号
 (株)エスアールエル,(株)SBS(以下「被審人2名」という。)及び4名は,共同して,防衛庁,郵政事業庁,厚生労働省及び労働福祉事業団が設置している東京都の区域に所在する病院が,一般競争入札又は指名競争入札の方法により発注する臨床検体検査業務(当該病院の検査室における臨床検体検査業務を受託して行う業務を除く。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 平成15年(判)第7号
 被審人3名及び6名は,共同して,郵政事業庁,厚生労働省及び愛知県内の地方公共団体が設置している名古屋市,愛知県大府市及び同県小牧市の区域に所在する病院が一般競争入札又は指名競争入札の方法により発注する臨床検体検査業務について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
ウ 平成15年(判)第8号
 被審人2名及び6名は,共同して,文部科学省,厚生労働省及び大阪府内の地方公共団体が設置している大阪府の区域に所在する病院が一般競争入札又は指名競争入札の方法により発注する臨床検体検査業務(当該病院の検査室における臨床検体検査業務を受託して行う業務を除く。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
エ 平成15年(判)第9号
 被審人2名及び3名は,共同して,防衛庁及び厚生労働省が設置している福岡市,北九州市,福岡県春日市及び同県古賀市の区域に所在する病院が一般競争入札又は指名競争入札の方法により発注する臨床検体検査業務について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(4) 法令の適用
 独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
(5) 命じた措置
 被審人らは,前記(3)の行為を取りやめていることを確認しなければならない。
 被審人らは,次の事項を前記(3)記載の病院に通知しなければならない。
(ア)  前項に基づいて採った措置
(イ)  今後,前記(3)記載の臨床検体検査業務について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行う旨
 被審人らは,今後,前記(3)の行為と同様の行為を行ってはならない。
 平成16年(判)第16号及び第17号サンテック(株)ほか4名に対する審決(岐阜県所在の官公庁発注の電気工事の入札談合事件)
(1) 被審人
(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が延べ141名に対し,独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,サンテック(株)ほか4名(以下「被審人5名」という。)がこれを応諾しなかったので,被審人5名に対し同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたところ,被審人5名から,同法第53条の3及び公正取引委員会の審査及び審判に関する規則第81条の規定に基づき同意審決を受ける旨の申出があり,具体的措置に関する計画書が提出されたので,これを精査した結果,適当と認められたことから,その後の審判手続を経ないで審決を行った。
(3) 認定した事実の概要
ア 平成16年(判)第16号
 被審人5名及び98名は,遅くとも平成12年4月1日以降,岐阜県等が,一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により発注する電気工事のうち,落札金額が2億円以上になると予想されるもの(以下「岐阜県等発注の特定電気工事」という。)について,受注機会の均等化及び受注価格の低落防止を図るため,共同して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 平成16年(判)第17号
 サンテック(株)及び(株)松本電気設備(以下「被審人2名」という)並びに36名は,遅くとも平成14年4月1日以降,岐阜大学が,一般競争入札,詳細条件審査型一般競争入札,公募型指名競争入札又は工事希望型指名競争入札の方法により発注する電気工事(以下「岐阜大学発注の特定電気工事」という。)について,受注機会の均等化及び受注価格の低落防止を図るため,共同して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(4) 法令の適用
 独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
(5) 命じた措置
ア 平成16年(判)第16号
(ア)  被審人5名は,前記(3)アの行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議し,そのことを相互に通知するとともに98名に通知しなければならない。
(イ)  被審人5名は,次の事項を岐阜県等に通知するとともに,岐阜県の区域における電気工事の営業を担当する自社の従業員に周知徹底しなければならない。
 前項に基づいて採った措置
 今後,共同して,岐阜県等発注の特定電気工事について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  被審人5名は,今後,前記(3)アの行為と同様の行為を行ってはならない。
イ 平成16年(判)第17号
(ア)  被審人2名は,前記(3)イの行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議し,そのことを相互に通知するとともに36名に通知しなければならない。
(イ)  被審人2名は,次の事項を岐阜大学に通知するとともに,岐阜県の区域における電気工事の営業を担当する自社の従業員に周知徹底させなければならない。
 前項に基づいて採った措置
 今後,共同して,岐阜大学発注の特定電気工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  被審人2名は,今後,前記(3)イの行為と同様の行為を行ってはならない。
 平成16年(判)第20号(株)堀工務店に対する審決(新潟市発注の特定建築工事の入札談合事件)
(1) 被審人
(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が(株)本間組ほか55名に対し,独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,45名がこれを応諾しなかったので,45名に対し同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたところ,(株)堀工務店(以下「被審人」という。)から,同法第53条の3及び公正取引委員会の審査及び審判に関する規則第81条の規定に基づき同意審決を受ける旨の申出があり,具体的措置に関する計画書が提出されたので,これを精査した結果,適当と認められたことから,その後の審判手続を経ないで審決を行った。
(3) 認定した事実の概要
 被審人は,11名及び新潟市の区域において建設業を営む事業者と共同して,遅くとも平成11年4月1日以降,新潟市が制限付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法によりAの等級に格付している者(Aの等級に格付している者を代表者とする共同企業体を含む。)のみを入札参加者として発注する建築工事(以下「新潟市発注の特定建築工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(4) 法令の適用
 独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
(5) 命じた措置
 被審人は,前記(3)記載の行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議し,そのことを審判開始決定書別紙の表1,表2及び表4記載の事業者に通知しなければならない。
 被審人は,次の事項を新潟市に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底させなければならない。
(ア)  前項に基づいて採った措置
(イ)  今後,共同して,新潟市発注の特定建築工事について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  被審人は,今後,前記(3)の行為と同様の行為を行ってはならない。
 平成16年(判)第19号及び第20号(株)大沢組に対する審決(新潟市発注の特定下水道開削工事及び特定建築工事の入札談合事件)
(1) 被審人
(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が,(株)佐藤企業ほか47名及び(株)本間組ほか55名に対し,それぞれ独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,それぞれ29名及び45名がこれを応諾しなかったので,これらの事業者に対し,同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたところ,(株)大沢組(以下「被審人」という。)から,同法第53条の3及び公正取引委員会の審査及び審判に関する規則第81条の規定に基づき同意審決を受ける旨の申出があり,具体的措置に関する計画書が提出されたので,これを精査した結果,適当と認められたことから,その後の審判手続を経ないで審決を行った。
(3) 認定した事実の概要
ア 平成16年(判)第19号
 被審人は,19名及び新潟市の区域において建設業を営む事業者と共同して,遅くとも平成11年4月1日以降,新潟市が公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法によりAの等級に格付している者のみを指名して発注する開削工法を用いる下水管きょ工事及び汚水管布設工事(一部推進工法又はシールド工法を用いるものであって,同工法により工事を行うことができる者のみを入札参加者とするものを除く。以下「新潟市発注の特定下水道開削工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 平成16年(判)第20号
 被審人は,11名,(株)堀工務店及び新潟市の区域において建設業を営む事業者と共同して,遅くとも平成11年4月1日以降,新潟市が制限付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法によりAの等級に格付している者(Aの等級に格付している者を代表者とする共同企業体を含む。)のみを入札参加者として発注する建築工事(以下「新潟市発注の特定建築工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(4) 法令の適用
 独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
(5) 命じた措置
ア 平成16年(判)第19号
(ア)  被審人は,前記(3)アの行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議し,そのことを勧告の対象となった各事業者に通知しなければならない。
(イ)  被審人は,次の事項を新潟市に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
 前項に基づいて採った措置
 今後,共同して,新潟市発注の特定下水道開削工事について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  被審人は,今後,前記(3)アの行為と同様の行為を行ってはならない。
イ 平成16年(判)第20号
(ア)  被審人は,前記(3)イの行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議し,そのことを勧告の対象となった各事業者等に通知しなければならない。
(イ)  被審人は,次の事項を新潟市に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
 前項に基づいて採った措置
 今後,共同して,新潟市発注の特定建築工事について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  被審人は,今後,前記(3)イの行為と同様の行為を行ってはならない。
 平成16年(判)第20号(株)平工務店に対する審決(新潟市発注の特定建築工事の入札談合事件)
(1) 被審人
(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が(株)本間組ほか55名に対し,独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,45名がこれを応諾しなかったので,45名に対し同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたところ,(株)平工務店(以下「被審人」という。)から,同法第53条の3及び公正取引委員会の審査及び審判に関する規則第81条の規定に基づき同意審決を受ける旨の申出があり,具体的措置に関する計画書が提出されたので,これを精査した結果,適当と認められたことから,その後の審判手続を経ないで審決を行った。
(3) 認定した事実の概要
 被審人は,11名,(株)堀工務店,(株)大沢組及び新潟市の区域において建設業を営む事業者と共同して,遅くとも平成11年4月1日以降,新潟市が制限付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法によりAの等級に格付している者(Aの等級に格付している者を代表者とする共同企業体を含む。)のみを入札参加者として発注する建築工事(以下「新潟市発注の特定建築工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(4) 法令の適用
 独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
(5) 命じた措置
 被審人は,前記(3)の行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議し,そのことを勧告の対象となった各事業者等に通知しなければならない。
 被審人は,次の事項を新潟市に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
(ア)  前項に基づいて採った措置
(イ)  今後,共同して,新潟市発注の特定建築工事について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行う旨
(ウ)  被審人は,今後,前記(3)の行為と同様の行為を行ってはならない。
 平成17年(判)第6号東洋ゴム工業(株)に対する審決(防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブの入札談合事件)
(1) 被審人
(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が10名に対し,独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,東洋ゴム工業(株)(以下「被審人」という。)がこれを応諾しなかったので,被審人に対し同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたところ,被審人から,同法第53条の3及び公正取引委員会の審査及び審判に関する規則第81条の規定に基づき同意審決を受ける旨の申出があり,具体的措置に関する計画書が提出されたので,これを精査した結果,適当と認められたことから,その後の審判手続を経ないで審決を行った。
(3) 認定した事実の概要
 被審人は,メーカー3名及び販売業者6名と共同して,遅くとも平成15年7月31日以降,防衛庁が一般競争入札に付する航空機用以外の空気入りタイヤ・チューブのうち防衛庁契約本部が契約に関する事務を行うもの(以下「防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブ」という。)について,受注機会の確保及び受注価格の維持を図るため,受注予定者等を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(4) 法令の適用
 独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
(5) 命じた措置
 被審人は,前記(3)の行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議しなければならない。
 被審人は,次の事項をメーカー3名,販売業者6名及び防衛庁契約本部に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
(ア)  前項に基づいて採った措置
 今後,共同して,防衛庁発注の特定車両用タイヤ・チューブについて,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行う旨
(イ)  被審人は,今後,前記(3)の行為と同様の行為を行ってはならない。
(ウ)  被審人は,今後,前記(3)の行為と同様の行為を行わないよう,自社のタイヤ・チューブの販売担当者による定期的な監査を行うために必要な措置を講じなければならない。

第4 課徴金納付命令審決

 平成13年(判)第1号ないし第6号出光興産(株)ほか5名に対する審決(防衛庁調達実施本部(同庁契約本部の前身)発注の石油製品の入札談合事件)
(1) 事件の経過
 本件は,平成12年11月27日,公正取引委員会が出光興産(株)ほか7名に対し,それぞれ独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,出光興産(株)ほか5名(以下「被審人6名」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,被審人6名に対し,平成13年2月5日,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである(審判開催回数はいずれも21回)。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成17年2月22日,審決案と同じ内容の審決を行った。(なお,本件については,平成17年3月22日に東燃ゼネラル石油(株)から審決の取消しを求める訴えが提起された。本章第6参照)
(2) 被審人及び納付を命じた課徴金の額
(3) 認定した事実及び判断の概要
 被審人6名は,遅くとも平成7年4月以降,他6名と共同して,防衛庁調達実施本部(以下「調達実施本部」という。)が指名競争入札の方法により発注する自衛隊の基地等において消費される自動車ガソリン,灯油,軽油(一般用及び艦船用),A重油及び航空タービン燃料について,物件ごとに受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 課徴金の計算の基礎となる事実
(ア) 業種
 被審人6名の本件石油製品に係る事業は,出光興産(株)は本件石油製品の全油種とも製造業,東燃ゼネラル石油(株)は本件石油製品の全油種とも製造業,新日鉱ホールディングス(株)(吸収合併前の(株)ジャパンエナジーの業種)は,自動車ガソリン,灯油,軽油及びA重油は卸売業,航空タービン燃料は製造業,九州石油(株)は本件石油製品の全油種とも製造業,キグナス石油(株)は本件石油製品の全油種とも卸売業,太陽石油(株)は軽油及びA重油は製造業と認定される。
(イ) 実行期間
 出光興産(株)ほか5名が前記ア記載の違反行為の実行としての事業活動を行った日は平成7年11月21日から平成10年11月20日までであり,この期間における被審人6名の売上額は前記(2)の表のとおりである。
ウ 主要な争点及びそれに対する判断
(ア)  本件違反行為が独占禁止法第7条の2第1項に規定する商品の対価に係るものに該当するかどうか
 被審人6名及び他6名の行為は,調達実施本部から提示される基準価格を低下させる影響のある行為を差し控えることによって同提示額を最大限のものとなるようにした上で,新たな入札における最大限の価格による受注を可能とすることによって,本件石油製品の発注価格を最大限とする効果を有するものであったといえることから,本件違反行為は,独占禁止法第7条の2に規定する商品の対価に係るものに該当する。
(イ)  本件違反行為が同法第2条第6項に規定する公共の利益に反する行為であるかどうか
 独占禁止法第48条第4項の勧告審決が確定した後に当該審決に係る違反行為について同一の被審人に対して行われる審判手続においては,当該被審人は,先行する審決の主文に係る違反行為の不存在を主張することができないと解すべきところ,被審人の主張は,そもそも本件違反行為について既に確定している本件勧告審決の主文に係る違反行為が存在しないとの主張に帰するから理由がない。
(ウ) 課徴金の算定率
 課徴金の算定率を決定するための業種の認定は,課徴金の算定の基礎となる売上額について独占禁止法第7条の2第1項が当該違反行為に係る商品又は役務の売上額を採用しているのと同様に,当該違反行為に係る事業(違反行為者が行う商品又は役務についての事業のうち違反行為の実行として行われた取引全体)を対象として行うことが相当であるところ,本件違反行為は本件石油製品の油種ごとの不当な取引制限であるので,本件における業種の認定は,自動車ガソリン,灯油,軽油,A重油及び航空タービン燃料という油種ごとの事業のうちそれぞれ防衛庁から受注する取引に係る事業を対象として行うべきである。
 課徴金算定率の適用上,違反行為者の業種が,卸売業又は小売業に該当するかどうかを認定するに当たっては,違反行為者の行っていた事業活動が,いかなる構造で対価を受け取るものであったかをその事業活動の具体的な内容に照らして認定し,判断すべきである。
 以上によれば,出光興産(株),東燃ゼネラル石油(株)及び九州石油(株)に対しては全油種について6パーセントの算定率が,キグナス石油(株)に対しては全油種について1パーセントの算定率が,新日鉱ホールディングス(株)に対しては,航空タービン燃料について6パーセント,その他の油種について1パーセントの算定率が,太陽石油(株)に対しては軽油及びA重油について6パーセントの算定率が,それぞれ適用される。
(エ) 契約基準適用の可否
 独占禁止法施行令第6条が設けられた趣旨,同条の規定の文言等によれば,契約基準の適用の可否は,引渡基準によった場合の対価の合計額と契約により定められた対価の合計額との間に著しい差異を生ずる蓋然性が類型的ないし定性的に認められるかどうかを判断して決すれば足りるものと解するのが相当である(社会保険庁シール事件判決参照)。そして,違反行為に係る商品又は役務の取引が継続的なものであっても,引渡し又は提供まで長期間を要する場合,引渡し又は提供が不定期に行われる場合,一定期間ごとの引き渡された商品又は提供された役務の対価の合計額が均一でない場合等においては,実行期間前に契約され実行期間内に引渡し又は提供が行われた商品又は役務の対価と実行期間内に契約され実行期間後に引渡し又は提供が行われた商品又は役務の対価とが大きくかい離することがあり得るので,引渡基準によった場合の対価の合計額と契約により定められた対価の合計額との間に著しい差異を生ずる蓋然性が類型的ないし定性的に認められるといえるところ,本件違反行為に係る取引の内容は,このような場合に該当し,引渡基準によった場合の対価の合計額と契約により定められた対価の合計額との間に著しい差異を生ずる蓋然性が類型的ないし定性的に存在するから,契約基準によることが相当である。
(オ)  消費税及び関係石油諸税の各相当額を売上額に算入することの可否
a 消費税相当額について
 独占禁止法第7条の2第1項は,課徴金の算定の基礎となる売上額について,政令で定める方法により算定するものとしており,独占禁止法施行令第6条は,この方法について,実行期間において締結した商品の販売又は役務の提供に係る契約により定められた対価の額を合計する方法とする旨規定する。商品の購入者が支払う消費税相当額は,商品本体等の代金相当額の金員と同一の法的性質を有する金員として一体的に事業者に支払われ,事業者が,消費者から受領した金員の中から自らの義務として消費税を納付することが予定されているので,法的性質上,商品の「販売価格」の一部であり,同施行令第6条にいう商品の「対価」に含まれていると解すべきである。かかる解釈は,社会保険庁シール事件判決及び同事件の上告審判決においても是認されている。
b 関係石油諸税相当額
 揮発油税及び地方道路税が揮発油の製造者,原油関税が原油を輸入する者,石油税が原油若しくは石油製品又はガス状炭化水素を保税地域から引き取る者が納税義務者とされており,これらの税が課される製品の購入者は,納税義務者が支払った税金を経済的に転嫁されて負担する立場にとどまり法律的には納税義務者ではない。そして,これらの税金については,販売に際して授受される代金額にその内訳として明示されることも一般的にはなく当該製品の価額の一部を構成するものとして社会的に認識され,企業会計上も売上高及び売上原価双方の中に含めて処理されている(財務諸表規則取扱要領第152条参照)。したがって,被審人らが取得する本件石油製品の代金額のうちこれらの税相当額は,法的性質からしても企業会計の観点からも商品の対価の一部として課徴金算定の基礎となる売上額に含まれるものと解することが相当である。
 軽油引取税は,道路に関する費用に充てること等を目的とする地方税であり,地方税法において,特約業者又は元売業者から「軽油の引取りを行う者」が納税義務者,特約業者又は元売業者が特別徴収義務者とされ,元売業者は,特別徴収義務者として,納税義務者である販売先から軽油の対価とともに軽油引取税の支払を受け,これに代わって当該軽油引取税を申告納付するものである。
 本件においては,国(調達実施本部)が納税義務者であり,軽油の販売について授受された代金額中の軽油引取税相当額部分については,被審人らが,特別徴収義務者として都道府県に代わって納税義務者である国(調達実施本部)から徴収して都道府県に納入したものであり(争いがない事実),また,被審人らは,調達実施本部との契約書において契約金額中の軽油引取税相当額を区別して明記するなど,契約上も同税相当額が明確に区分されていたところから,商品の対価に含まれず,よって,課徴金の算定の基礎となる売上額に含まれないと解することが相当である。
c 沖縄県石油価格調整税の返納金について
 出光興産(株)及び東燃ゼネラル石油(株)による航空タービン燃料代金中の沖縄県石油価格調整税相当分の国庫への返納は,実質的には,平成9年度における航空タービン燃料の対価の額の変更であるから,変更による売上額の減額分に相当する返納額は,課徴金の算定の基礎となる売上額から除くことが相当である。
(カ) 独占禁止法第7条の2第1項の合憲性について
 行政機関である公正取引委員会は法律の合憲性を判断する権限を有しないのであるから,本審判手続において判断の対象となり得ない事項である。
(4) 関係法条
 独占禁止法第7条の2
 (株)昇和産業ほか7名に対する審決(千葉市等発注の土木工事及びほ装工事の入札談合事件)
(1) 事件の経過
 本件は,平成15年10月8日,公正取引委員会が延べ130名に対し,それぞれ,独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,20名(以下「被審人20名」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,被審人20名に対し,同法第49条第2項の規定に基づき,平成15年12月11日,審判開始決定(35件)を行い,審判官をして審判手続を行わせ,それぞれ(2)のとおり,被審人8名(13件)について課徴金の納付を命ずる審決を行った。(なお,被審人12名(20件)に対する審判は引き続き係属している。)
(2) 被審人及び納付を命じた課徴金の額

(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 平成14年(勧)第17号(土木工事関係)
 122名(被審人19名を含む。)は,共同して,千葉市及び財団法人千葉市都市整備公社が千葉市内に本店又は主たる営業拠点を置く事業者のみを指名して指名競争入札又は希望型指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する設計金額が5000万円以上3億円未満の工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 平成14年(勧)第18号(ほ装工事関係)
 100名(被審人16名を含む。)は,共同して,千葉市及び財団法人千葉市都市整備公社が千葉市内に本店を置く事業者のみを指名して指名競争入札又は希望型指名競争入札の方法によりほ装工事として発注する設計金額が2500万円以上3億円未満の工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
ウ 主要な争点及びそれに対する判断
(ア) 売上額から消費税を控除すべきかどうか
 売上額の算定方法は,独占禁止法施行令第6条により,「実行期間において締結した商品の販売又は役務の提供に係る契約により定められた対価の額を合計する方法とする」と定められており,被審人と千葉市及び財団法人千葉市都市整備公社との間の契約において定められた請負代金額が「役務の対価」に該当すると認められ,これには消費税相当額が含まれている。したがって,課徴金の額の算定の基礎である「売上額」には消費税が含まれるものと認められる。
(イ)  土木工事について設計金額5000万円未満の物件,ほ装工事について設計金額2500万円未満の物件は課徴金対象となるか否か
 課徴金に係る違反行為の対象役務は,土木工事の場合,設計金額が5000万円以上3億円未満の工事であり,また,ほ装工事の場合,設計金額が2500万円以上3億円未満の工事であることから,それぞれ,5000万円未満又は2500万円未満の工事に係る売上額を含めることはできない。
(ウ)  契約が変更されて契約金額が増額された場合,その増額分を課徴金の計算の基礎となる売上額に含めるかどうか
 独占禁止法第7条の2第1項は,売上額について,「政令で定める方法により算定」するものとし,施行令第6条は,この方法は,「実行期間において締結した商品の販売又は役務の提供に係る契約により定められた対価の額を合計する方法とする」と規定している。したがって,実行期間内に締結された役務の提供に係る契約の契約金額が,実行期間内に変更された場合には,変更後の金額が「実行期間において締結した商品の販売又は役務の提供に係る契約により定められた対価の額」となり,課徴金算定の基礎となる売上額は当該変更後の金額に基づいて算定することとなり,当該変更後の契約金額が「契約により定められた対価の額」となるので,課徴金の算定対象となる売上額となる。
(エ)  本件違反行為の実行としての事業活動がなくなる日を平成13年11月19日とすることの適否
 独占禁止法第7条の2第1項にいう「実行としての事業活動がなくなる日」とは,違反行為の実行としての事業活動が行われなくなる日であるので,違反行為がなくなればその実行としての事業活動は行われなくなるのが通常であると考えられる。しかし,本件のような受注調整事件において,違反行為がなくなる日より前に,基本合意に基づいて受注予定者が決定され,入札が行われた結果,当該受注予定者が落札した物件の契約が同日より後に行われた場合は,当該物件について受注予定者が発注者と契約を締結する行為は,本件違反行為の実行としての事業活動に該当すると解するのが相当である。
(4) 関係法条
 独占禁止法第7条の2
 ユニコ(株)に対する審決(香川県及び高松市発注の土木工事の入札談合事件)
(1) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が平成15年3月6日に行った課徴金納付命令について,ユニコ(株)(以下「被審人」という。)から審判手続の開始の請求があったので,平成15年5月20日,審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成16年5月12日,審決案と同じ内容の審決を行った。
 なお,本件以外の香川県及び高松市発注の土木工事の入札談合事件に係る課徴金納付命令審判事件については,平成15年度にいずれも審決を行っている。
(2) 被審人及び納付を命じた課徴金の額
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 香川県関係(平成15年(判)第13号)
 125名(被審人を含む。)は,共同して,香川県が同県高松土木事務所の管轄区域(高松市,香川県香川郡及び同県木田郡(三木町を除く。)の区域)を施工場所とし香川県内に本店又は主たる事務所を置く事業者のみを指名して同土木事務所において指名競争入札を行い土木一式工事として発注する工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 高松市関係(平成15年(判)第18号)
 129名(被審人を含む。)は,共同して,高松市土木部が香川県内に本店又は主たる事務所を置く事業者のみを指名して指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
ウ 主要な争点及びそれに対する判断
(ア) 各物件が課徴金の対象物件に該当するか否か
 課徴金の計算の基礎となる当該役務とは,当該違反行為の対象になった役務全体を指すが,本件のような受注調整の場合には,基本合意に基づいて受注予定者が決定されることによって,具体的に競争制限効果が発生するに至ったものをいうと解される。
 争点に係る物件については,本件違反行為の対象役務である香川県又は高松市発注の特定土木工事に該当し,また,各物件の指名業者のうち受注希望者が被審人だけであったことから被審人が受注予定者となり受注したのであるから,それぞれ,基本合意に基づいて受注予定者が決定され,具体的に競争制限効果が発生するに至った物件ということができ,課徴金算定の対象となる。
(イ)  課徴金の計算の基礎となる売上額に消費税相当額を含むことの適否
 売上額の算定方法は,独占禁止法施行令第6条により,「実行期間において締結した商品の販売又は役務の提供に係る契約により定められた対価の額を合計する方法とする」と定められており,本件の場合,被審人と香川県又は高松市との間の契約において定められた請負代金額が「役務の対価」に該当すると認められ,これには消費税相当額が含まれている。したがって,課徴金の額の算定の基礎である「売上額」には消費税が含まれるものと認められる。
(4) 関係法条
 独占禁止法第7条の2
 (株)第一測量設計コンサルタントに対する審決(長野建設事務所発注の測量業務及び建設コンサルタント業務の入札談合)
(1) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が平成15年3月6日に行った課徴金納付命令について,(株)第一測量設計コンサルタント(以下「被審人」という。)から審判手続の開始の請求があったので,平成16年9月9日,審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成16年12月14日,審決案と同じ内容の審決を行った。
(2) 被審人及び納付を命じた課徴金の額
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 測量業務関係(平成16年(判)第14号)
 36名(被審人を含む。)は,長野建設事務所が指名競争入札又は指名競争見積り合わせの方法により発注する測量業務のうち長野県内に本店を置く者のみが指名される業務について,共同して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ  建設コンサルタント業務関係(平成16年(判)第15号)
 44名(被審人を含む。)は,長野建設事務所が同様の方法により発注する建設コンサルタント業務のうち長野県内に本店を置く者のみが指名される業務について,共同して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(4) 関係法条
 独占禁止法第7条の2
 初雁興業(株)ほか4名に対する審決(川越市発注の土木工事及びほ装工事の入札談合事件)
(1) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が平成15年3月6日に行った課徴金納付命令について,初雁興業(株)ほか4名(以下「被審人5名」という。)から審判手続の開始の請求があったので,平成15年8月20日,審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである(審判開催回数はいずれも8回)。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成17年1月7日,審決案と同じ内容の審決を行った。
 なお,本件以外の川越市発注の土木工事及びほ装工事に係る課徴金納付命令審判事件については,平成15年度にいずれも審決を行っている。
(2) 被審人及び納付を命じた課徴金の額
(3) 認定した事実及び判断の概要
 土木一式工事関係(平成15年(判)第26号,第28号ないし第31号)
 20名(被審人5名を含む。)は,川越市が土木一式工事についてAの等級に格付し,埼玉県川越市内に本店又は営業所等を置く者のみを入札参加者として一般競争入札又は指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する工事について,共同して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
 ほ装工事関係(平成15年(判)第33号,第34号,第36号,第37号)
 19名(被審人4名を含む。)は,川越市がほ装工事についてAの等級に格付し,埼玉県川越市内に本店又は営業所等を置く者のみを入札参加者として一般競争入札又は指名競争入札の方法によりほ装工事として発注する工事について(いずれも単価契約の方法により発注するものを除く。),共同して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
ウ 主要な争点及びそれに対する判断
(ア)  いわゆるアウトサイダーが入札に参加した物件が,課徴金の算定対象物件から除外されるかどうか
 被審人らは,本件審決の名あて人以外の者が入札に参加したいわゆるアウトサイダー物件のそれぞれについて,入札前に各入札参加者に対して受注を希望する旨の連絡をし,その結果,被審人らが受注予定者となった。その後,被審人らは,各入札参加者に対し入札価格の連絡を行い,その協力を得て,被審人らが前記工事を落札したことからすると,アウトサイダーが入札に参加した物件は,本件基本合意に基づいて受注予定者が決定され,具体的に競争制限的効果が発生するに至った物件ということができるのであり,課徴金の算定対象となる。
(イ)  課徴金の計算の基礎となる売上額に消費税相当額を含めることが適当かどうか
 独占禁止法第7条の2第1項は,売上額について,「政令で定める方法により算定」するものとしており,施行令第6条第1項は,この方法について,「実行期間において締結した商品又は役務の提供に係る契約により定められた対価の額を合計する方法とする」と規定している。そして,一般に商品又は役務の対価とは,商品又は役務の販売価格,代金を指すと考えられるところ,本件では,被審人らと川越市との間の契約において定められた請負代金額が「役務の対価」に該当すると認められ,これには消費税相当額が含まれている(請負代金額に消費税相当額が含まれていることについては争いがない。)。したがって,上記の課徴金の額の算定の基礎である「売上額」には,消費税相当額が含まれるものと認められる。
(4) 関係法条
 独占禁止法第7条の2

第5 審判手続打切り決定

 本年度中に,下表の被審人4名に対し,破産宣告がなされたこと,破産法(大正11年法律第71号)第353条の規定に基づく破産廃止の決定がなされたことを考慮して審判手続打切り決定が行われた。

第6 訴訟

1 審決取消請求訴訟
 平成16年度当初において係属中の審決取消請求事件は3件であった。
 平成16年度中に,新たに,(株)大王工務店による審決取消請求事件及び東燃ゼネラル石油(株)による審決取消請求事件が提起されたが,前者は取下げにより終了した。このため,平成16年度末現在係属中の審決取消請求訴訟は4件である。
 なお,(株)東芝ほか1名による審決取消請求事件については,平成16年4月23日,請求認容の判決があり,公正取引委員会が上告受理申立てをした。
(1) 東京海上火災保険(株)ほか17名による審決取消請求事件
ア 事件の表示
最高裁判所平成14年(行ヒ)第72号
審決取消請求事件
申立人(被告)公正取引委員会
相手方(原告)東京海上火災保険(株)ほか17名
 審決年月日  平成12年6月2日
 提訴年月日  平成12年7月3日,同月5日
 判決年月日  平成13年11月30日(請求一部認容,東京高等裁判所)
 上告受理申立て年月日 平成13年12月14日
イ 審決の概要
 東京海上火災保険(株)ほか20名は,日本機械保険連盟(以下「連盟」という。)の会員となっていたところ,連盟は,機械保険及び組立保険(以下「機械保険等」という。)の保険料率に関し,会員が申請すべき認可申請の内容を決定し,会員に一定料率で機械保険等の引受けを行わせることにより,我が国における機械保険等の元受けに係る各取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,東京海上火災保険(株)ほか20名に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,相手方らが,本件審決には損害保険の経済的実態の認識を誤り,課徴金制度の仕組みと売上額の算定,損害保険制度と損害保険会社の機能及び代理店手数料等について,独占禁止法第8条の3及び同法第7条の2第1項並びに同法施行令第5条及び同令第6条の解釈,運用を誤ったものであり,かつ,相手方らに対して賦課すべき課徴金の算定を誤ったものであること等を理由として,審決の取消しを求めるものである。
 東京高等裁判所は,審決のうち売上額から支払保険金を控除した場合の課徴金額を超えて課徴金の納付を命じる部分を取り消した。
 なお,合併により,現在の相手方は東京海上火災保険(株)ほか17名となっている。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,公正取引委員会の上告受理申立てにより,現在,最高裁判所に係属中である。
(2) 土屋企業(株)による審決取消請求事件
ア 事件の表示
最高裁判所 平成16年(行ヒ)第135号
審決取消請求事件
申立人(被告)公正取引委員会
相手方(原告)土屋企業(株)
 審決年月日  平成15年6月13日
 提訴年月日  平成15年7月12日
 判決年月日  平成16年2月20日(請求一部認容,東京高等裁判所)
 上告受理申立て年月日 平成16年3月5日
イ 審決の概要
 土屋企業(株)を含む町田市内に本店又は主たる事務所を置き同市において建設業を営む69社は,町田市発注の特定土木一式工事について,共同して受注予定者が受注できるようにすることにより,町田市発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,土屋企業(株)に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,相手方が,課徴金の対象となった道路工事のうちの2件については,受注調整を行ったことはなく,これを課徴金の対象とした本件審決には,基礎となる事実についての実質的証拠を欠くか,又は法令違反があるとして,その取消しを求めるものである。
 東京高等裁判所は,審決のうち都市計画道路工事は課徴金の対象となるとはいえないとして,前記工事に係る課徴金の納付を命じる部分を取り消した。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,公正取引委員会の上告受理申立てにより,現在,最高裁判所に係属中である。
(3) (株)東芝ほか1名による審決取消請求事件
ア 事件の表示
最高裁判所 平成16年(行ヒ)第208号
審決取消請求事件
申立人(被告)公正取引委員会
相手方(原告)(株)東芝ほか1名
 審決年月日  平成15年6月27日
 提訴年月日  平成15年7月25日
 判決年月日  平成16年4月23日(請求認容,東京高等裁判所)
 上告受理申立て年月日 平成16年5月7日
イ 審決の概要
 (株)東芝及び日本電気(株)は,郵政省が一般競争入札の方法により発注した郵便番号自動読取区分機類について,入札執行前に同省の調達事務担当官等から情報の提示を受けた者を受注予定者として決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,同省が一般競争入札の方法により発注する区分機類の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,(株)東芝及び日本電気(株)に対し,独占禁止法第54条第2項の規定を適用して,かかる行為の取りやめの通知等の措置を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,相手方らが,本件審決は審決の基礎となった事実を証する実質的な証拠を欠いているとして,その取消しを求めるものである。
エ 判決の概要
 独占禁止法第54条第2項(独占禁止第7条第2項)により命ずることができる措置は,当該違反行為が排除されたことを確保するために必要な措置に限られることは,法の文言上明らかであるから,これを当該違反行為を離れて,およそ競争秩序の維持・回復を阻害する行為が排除されたことを確保するために必要な措置と解することはできない。したがって,前記規定により排除措置を命ずることができるのは,当該違反行為と同一ないし社会通念上同一性があると考え得る行為が行われるおそれがある場合に限定されると解するのが相当である。
 したがって,本件において排除措置を採ることが許されるのは,郵政省の行う区分機類及びそれに類する機器類の一般競争入札において,原告らが今後も受注調整行為を行うおそれがある場合ということになる。
 本件では,郵政省の調達事務担当官等から情報の提示を受けることが違反行為の重要な前提条件となっているのであるから,情報の提示がされなくなった場合でも,なお原告らが郵政省の行う一般競争入札について受注調整を行うおそれが存在するとすることは,原告らの受注調整行為が長期間にわたって行われてきたこと,原告らが受注調整行為を取りやめたのは原告らの自発的意思に基づくものでないこと,区分機類の市場はいまだ寡占市場であること等の,被告の主張する諸事情があるとしても,認め難いといわなければならない。被告の裁量は,「特に必要があると認めるとき」という要件の存在が認められるときに,排除措置を採るか否か及びその内容について認められるのであって,この要件が存在しないときにまで,排除措置を命ずることが許されることにはならない。
オ 訴訟手続の経過
 本件は,公正取引委員会の上告受理申立てにより,現在,最高裁判所に係属中である。
(4) (株)大王工務店による審決取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所 平成16年(行ケ)第183号
審決取消請求事件
原告 (株)大王工務店
被告 公正取引委員会
 審決年月日  平成16年3月29日
 提訴年月日  平成16年4月28日
 終了年月日  平成16年8月3日(取下げ)
イ 審決の概要
 (株)大王工務店は,他の事業者と共同して,香川県及び高松市発注の特定土木一式工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,香川県及び高松市発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,(株)大王工務店に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,原告が,受注希望者が原告1名だけであった物件については,審決の基礎となった事実の具体的な主張とそれを立証する実質的な証拠がないから課徴金算定の対象外であるとして,審決の一部取消しを求めるものである。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,訴えの取下げにより終了した。
(5) 東燃ゼネラル石油(株)による審決取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所 平成17年(行ケ)第118号
審決取消請求事件
原告 東燃ゼネラル石油(株)
被告 公正取引委員会
 審決年月日  平成17年2月22日
 提訴年月日  平成17年3月22日
イ 審決の概要
 東燃ゼネラル石油(株)は,他の事業者と共同して,防衛庁調達実施本部が指名競争入札の方法により発注する陸上自衛隊,海上自衛隊及び航空自衛隊の基地等において消費される自動車ガソリン,灯油,軽油,A重油及び航空タービン燃料について,油種ごとに受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,防衛庁調達実施本部の石油製品の油種ごとの取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,東燃ゼネラル石油(株)ほか5名に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,原告が,(1)審査官が主張する事実を認定するに足る実質的証拠が欠如しているにもかかわらずこれを認定している(実質的証拠の不存在),(2)法令の適用においても憲法違反及び独占禁止法等の法令違反を多数含んでいるとして,本件審決のうち,原告に対して課徴金の納付を命じる部分の取消しを求めるものである。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,現在,東京高等裁判所に係属中である。
2 その他の訴訟
 平成16年度当初において係属中の事件は5件であったが,情報公開法に基づく行政文書開示請求事件については,控訴棄却の判決が確定したことにより終了した。また,2件係属していたごみ焼却炉入札談合事案に係る審判記録についての文書提出命令に対する即時抗告申立事件は,1件は申立ての取下げにより,1件は一部取消し一部却下決定の確定によりそれぞれ終了した。
 平成16年度中に,新たに,情報公開法に基づく行政文書不開示処分取消請求事件が1件及び独占禁止法第69条に基づく閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件が1件,それぞれ提起された。このうち,情報公開法に基づく行政文書不開示処分取消請求事件は取下げにより終了したため,平成16年度末現在係属中の審決取消請求訴訟以外の訴訟は3件である。
(1)  鳥取地裁ごみ焼却炉住民代位訴訟に係る文書提出命令に対する即時抗告申立事件
ア 事件の表示
広島高等裁判所松江支部平成14年(行ス)第1号
文書提出命令に対する即時抗告申立事件
抗告人 国ほか1名
相手方 米子市住民3名
 決定年月日  平成14年6月28日
 申立年月日  平成14年7月8日
 決定年月日  平成16年12月13日(一部取消し,一部却下)
イ 事案の概要
 本件は,ごみ焼却炉入札談合事案に対して提起された住民訴訟(基本事件鳥取地方裁判所平成12年(行ウ)第2号損害賠償代位等住民訴訟事件)において,公正取引委員会に係属中のごみ焼却炉入札談合事件(平成11年(判)第4号日立造船(株)ほか4名に対する件)に係る審判記録について民事訴訟法第223条第1項に基づき審査官提出の準備書面等の提出を命じる決定がされたところ,当該決定に対し国(当委員会)から即時抗告を申し立てたものである。
ウ 決定の概要
 民事訴訟法第220条第4号該当文書につき文書提出命令を申し立てることができるのは,「書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要がある場合」でなければならないところ,相手方らとしては,当該事件記録の閲覧謄写をすることによって本件対象文書を入手することができ,これにより入手した文書を本件基本事件において書証として提出することができることになるから,本件対象文書についての書証の申出を文書提出命令の申立てによってする必要があるとは認められない。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,抗告期間の経過により終了した。
(2)  福岡地裁ごみ焼却炉住民代位訴訟に係る文書提出命令に対する即時抗告申立事件
ア 事件の表示
福岡高等裁判所平成15年(行ス)第1号
文書提出命令に対する即時抗告申立事件
抗告人 福岡市住民12名
相手方 国ほか6名
 決定年月日  平成15年2月28日
 申立年月日  平成15年3月6日
 終了年月日  平成16年4月6日(取下げ)
イ 事案の概要
 本件は,ごみ焼却炉入札談合事案に対して提起された住民訴訟(基本事件福岡地方裁判所平成12年(行ウ)第27号損害賠償代位請求等(住民訴訟)事件)において,当委員会に係属中のごみ焼却炉入札談合事件(平成11年(判)第4号日立造船(株)ほか4名に対する件)に係る審判記録について民事訴訟法第223条第1項に基づき申立てのあった記録の一部についてのみ提出を命じる決定がされたところ,当該決定に対し住民訴訟原告である抗告人らが即時抗告を申し立てたものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件は,訴えの取下げにより終了した。
(3) 情報公開法に基づく行政文書開示請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成16年(行コ)第51号
行政文書開示請求事件
控訴人(原告) X
被控訴人(被告) 公正取引委員会事務総長
 提訴年月日  平成15年3月10日
 判決年月日  平成16年1月16日(請求棄却,東京地方裁判所)
 控訴年月日  平成16年1月30日
 判決年月日  平成16年5月26日(控訴棄却)
イ 事案の概要
 本件は,控訴人が,情報公開法に基づき,自らの申告に係る訴外Aの独占禁止法違反被疑事件について,「平成14年4月9日付け『申告の処理に係る申出について』に基づき情報管理室が申告処理審理会へ提出した文書」(以下「本件行政文書」)という。)の開示を請求したところ,被控訴人から,その存否を含めて応答できない旨の決定を受けたため,その決定の取消しを求めるものである。
 東京高等裁判所は,原判決の判断を維持し,本件控訴は理由がないとして,控訴を棄却した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件は,上訴期間の経過により終了した。
(4)  平成10年(判)第2号に係る審判事件記録閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成15年(行ウ)第152号,平成16年(行ウ)第475号
閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件
原告 株式会社函館新聞社
被告 公正取引委員会
 提訴年月日 平成15年3月10日,平成16年11月5日
イ 事案の概要
 本件は,原告が独占禁止法第69条に基づいて行った平成10年(判)第2号(株)北海道新聞社に対する審判事件に係る事件記録全部の閲覧謄写申請に対し,被告が本審判事件の事件記録のうち一部を除いて閲覧謄写を不許可とする旨の処分をしたところ,原告が当該処分の取消しを求めたものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,現在,東京地方裁判所に係属中である。
(5)  札幌地裁住民代位訴訟に係る文書提出命令に対する即時抗告申立事件
ア 事件の表示
札幌高等裁判所平成16年(行ス)第1号
文書提出命令に対する即時抗告申立事件
抗告人 国
相手方 札幌市住民2名
 決定年月日  平成16年1月13日
 申立年月日  平成16年1月23日
イ 事案の概要
 本件は,北海道上川支庁発注の農業土木工事入札談合事案に対して提起された住民訴訟(基本事件札幌地方裁判所平成12年(行ウ)第29号損害賠請求事件)において,勧告審決の基礎となった北海道職員の供述調書の提出を命じる決定がされたところ,当該決定に対し国(当委員会)から即時抗告を申し立てたものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件は,平成17年4月18日,国の即時抗告を棄却する決定がなされ,抗告期間の経過により確定した。
(6) 情報公開法に基づく行政文書不開示処分取消請求事件
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成16年(行ウ)第393号
行政文書不開示処分取消請求事件
原告 X
被告 公正取引委員会事務総局審査局長
 提訴年月日  平成16年9月3日
 終了年月日  平成16年12月7日(取下げ)
イ 事案の概要
 本件は,原告が,情報公開法に基づき,「新潟市発注工事に係る平成16年7月28日付け排除勧告において,違反行為の対象とされた「推進工事」「開削工事」及び「建築工事」それぞれの明細(工事名,入札ないし契約年月日,契約金額等)が記載された文書」の開示を請求したところ,被告から,本件文書を開示しない旨の決定を受けたため,その決定の取消しを求めるものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件は,訴えの取下げにより終了した。
3 独占禁止法第24条(差止請求権)に基づく差止請求事件
 平成16年度当初において係属中の独占禁止法第24条に基づく差止請求事件は19件であったが,同年度中に7件の訴えが提起され,下表のとおり東京地裁において2件,大阪地裁において1件,さいたま地裁において1件,札幌地裁において1件の請求棄却判決があり,東京高裁において2件,大阪高裁において1件の控訴棄却判決があった。平成16年度末において係属中の事件は20件である。


 独占禁止法第25条(無過失損害賠償責任)に基づく損害賠償請求事件
 平成16年度当初において独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求事件は,(株)函館新聞社による損害賠償請求事件,福島県による損害賠償請求事件及び広島市による損害賠償請求事件の3件であったが,平成16年度中に新たに町田市による損害賠償請求事件が提起され,平成16年度末現在において4件が係属中である。

(1) (株)北海道新聞社による(株)函館新聞社の事業活動排除事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成14年(ワ)第4号
損害賠償請求事件
原 告 (株)函館新聞社
被 告 (株)北海道新聞社
 提訴年月日 平成14年12月27日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,(株)北海道新聞社(以下「北海道新聞社」という。)による函館対策と称する一連の行為によって(株)函館新聞社(以下「函館新聞社」という。)の事業活動を排除した行為について,平成10年2月5日,勧告を行ったところ,これを応諾しなかったことから審判開始決定を行い,審判官をして審判を行わせていたところ,同意審決を受ける旨の申出があり,かつ,具体的措置に関する計画書が提出されたので,平成12年2月28日,北海道新聞社に対し当該行為の排除等を命ずる同意審決を行った。その後,平成14年12月27日,函館新聞社は,北海道新聞社に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成15年1月7日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成15年7月3日,意見書を提出した。平成16年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

(2) 福島県内の官公庁等発注航空写真測量業務入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成15年(ワ)第1号
損害賠償請求事件
原 告 福島県
被 告 (株)パスコほか7名
 提訴年月日 平成15年3月31日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,福島県内の官公庁等発注の航空写真測量業務の入札談合について,平成13年6月19日,(株)パスコほか7名(以下「パスコほか7名」という。)に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,発注者である福島県は,被審人パスコほか7名及び国際航業(株)に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成15年4月3日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成15年9月19日,意見書を提出した。平成16年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

(3) 広島市水道局発注の上水道本管工事入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成16年(ワ)第1号
損害賠償請求事件
原 告 広島市
被 告 岡崎管工(株)ほか25名
 提訴年月日 平成16年2月25日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,広島市水道局発注の上水道本管工事入札談合について,平成13年3月30日,(有)新海設備工業ほか27名に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。また,岡崎管工(株)(以下「岡崎管工」という。)に対しては,審判手続を経て平成14年7月11日審判審決を行った(その後,審決取消請求訴訟が提起され,平成15年7月11日上告受理申立が不受理となり確定)。当該審決確定後,発注者である広島市は,被審人岡崎管工ほか25名に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成16年3月3日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成16年5月19日,意見書を提出した。平成16年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

(4) 町田市発注の土木一式工事等入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成16年(ワ)第2号
損害賠償請求事件
原 告 町田市
被 告 亜東コンスト(株)ほか51名
 提訴年月日 平成16年7月20日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,町田市発注の土木一式工事等入札談合について,平成13年2月9日(株)朝見工務店ほか68名に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,発注者である町田市は,被審人亜東コンスト(株)ほか51名に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成16年8月12日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成16年11月1日,意見書を提出した。平成16年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

5 その他の独占禁止法関係の損害賠償請求事件等
(1)  米軍厚木基地における入札談合事件に係る民法第709条及び第719条訴訟
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成14年(ネ)第4622号
損害賠償請求事件
控訴人(本訴原告)  アメリカ合衆国
被控訴人(本訴被告)  (株)アタラシほか25名
 提訴年月日  平成6年9月16日
 判決年月日  平成14年7月15日(請求棄却,東京地方裁判所)
 控訴年月日  平成14年8月2日
イ 事案の概要
 本件は,米国海軍航空施設(厚木基地)における建設工事等を競争入札により発注しているアメリカ合衆国の厚木駐在建設事務官が,競争入札に参加する厚木建設部会会員73名の昭和59年から平成2年にかけての談合行為により損害を被ったとして損害賠償を求める「通告書」を送付したが,これに応じなかった(株)アタラシほか25名(訴訟提起当初は荒澤建設(株)ほか52名)に対して,民法第709条及び第719条の規定に基づき損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起し,同裁判所が原告の請求を棄却する判決を言い渡したところ,平成14年8月2日控訴したものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件について,平成16年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

(2) 高槻市発注上水道工事入札談合事件に係る民法第709条訴訟
ア 事件の表示
大阪地方裁判所平成14年(ワ)第3005号
損害賠償請求事件
原告 高槻市
被告 有限会社アーサーほか26名
 提訴年月日 平成14年3月28日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,高槻市水道部発注の上水道本管工事の入札談合について,平成13年11月7日,(有)アーサーほか26名(以下「アーサーほか26名」という。)に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である高槻市は,被審人であるアーサーほか26名に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件について,平成16年度末現在,大阪地方裁判所に係属中である。

(3)  (株)北海道新聞社による(株)函館新聞社の参入妨害事件に係る民法第709条訴訟
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成14年(ワ)第8915号
損害賠償請求事件
原 告 (株)函館新聞社
被 告 (株)北海道新聞社
 提訴年月日 平成14年4月26日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,(株)北海道新聞社(以下「北海道新聞社」という。)による函館対策と称する一連の行為によって(株)函館新聞社(以下「函館新聞社」という。)の事業活動を排除した行為について,平成12年2月28日,北海道新聞社に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。その後,平成14年4月26日,函館新聞社は,北海道新聞社に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成16年度末現在,東京地方裁判所に係属中である。

(4)  宮城県内の官公庁等発注航空写真測量業務入札談合事件に係る民法第709条訴訟
ア 事件の表示
仙台地方裁判所平成15年(ワ)第365号
損害賠償請求事件
原 告 宮城県
被 告 アジア航測(株)ほか7名
 提訴年月日 平成15年3月27日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,宮城県内の官公庁等発注の航空写真測量業務について,平成13年6月19日,(株)パスコほか6名(以下「パスコほか6名」という。)に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である宮城県は,被審人パスコほか6名及び国際航業(株)に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を仙台地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件について,平成16年度末現在,仙台地方裁判所に係属中である。

(5)  宮城県内の官公庁等発注航空写真測量業務入札談合事件に係る民法第709条訴訟
ア 事件の表示
仙台地方裁判所平成15年(ワ)第361号
損害賠償請求事件
原 告 仙台市
被 告 (株)パスコほか7名
 提訴年月日 平成15年3月27日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,宮城県内の官公庁等発注の航空写真測量業務について,平成13年6月19日,(株)パスコほか6名(以下「パスコほか6名」という。)に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である仙台市は,被審人パスコほか6名及び国際航業(株)に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を仙台地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件について,平成16年度末現在,仙台地方裁判所に係属中である。

(6)  群馬県及び同県沼田市発注の土木一式工事等入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成15年(行コ)第186号
損害賠償請求事件
被控訴人(原告)  沼田市住民
控訴人(被告)  群馬県知事ほか6名
 提訴年月日  平成10年4月20日
 判決年月日  平成15年6月13日(請求一部認容,前橋地裁)
 控訴年月日  平成15年6月27,28,30日
 判決年月日  平成16年7月26日(和解)
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,群馬県沼田市及び群馬県沼田土木事務所発注の土木・建築・舗装工事の入札談合について,平成10年1月23日,同県沼田市所在の土木工事業者等に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,群馬県沼田市の住民は,当該土木工事業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,群馬県及び同沼田市に代位して損害賠償を求める住民訴訟を前橋地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成16年7月26日,和解が成立し終了した。

(7) 北海道上川支庁発注の農業土木工事等の入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
札幌地方裁判所平成12年(行ウ)第29号
損害賠償請求事件
原 告 北海道住民2名
被 告 北海道知事ほか6名
 提訴年月日 平成12年12月14日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,北海道上川支庁発注の農業土木工事等の入札談合について,平成12年6月16日,旭川市等所在の農業土木工事業者等に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,札幌市内の住民は,当該農業土木工事業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,北海道に代位して損害賠償を求める住民訴訟を札幌地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成16年度末現在,札幌地方裁判所に係属中である。

(8) 地方自治体発注のごみ焼却施設建設の入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
(ア) 福島地方裁判所平成11年(行ウ)第3号
支出命令差止等請求事件
原 告 いわき市住民6名
被 告 いわき市長ほか4名
 提訴年月日 平成11年4月21日
(イ) さいたま地方裁判所平成12年(行ウ) 第4号
損害賠償請求事件
原 告 上尾市住民2名
被 告  JFEエンジニアリング(株)
 (旧商号 日本鋼管(株))
 提訴年月日 平成12年1月26日
(ウ) 京都地方裁判所平成12年(行ウ)第3 号
公金不正支出差止等請求事件
原 告 京都市住民775名
被 告 京都市長及び川崎重工業(株)
 提訴年月日 平成12年2月10日
(エ) 東京地方裁判所平成12年(行ウ)第1 85号
損害賠償請求事件
原 告 東京都住民3名
被 告 (株)タクマほか4名
 提訴年月日 平成12年7月14日
(オ) 京都地方裁判所平成12年(行ウ)第7 号
公金不正支出差止等請求事件
原 告 京都市住民38名
被 告 京都市長及び川崎重工業(株)
 提訴年月日 平成12年3月17日
(カ) 大阪地方裁判所平成12年(行ウ)第6 7号
損害賠償請求事件
原 告 大阪市住民3名
被 告 日立造船(株)
 提訴年月日 平成12年7月13日
(キ) 神戸地方裁判所平成12年(行ウ)第3 0号
損害賠償請求事件
原 告 神戸市住民7名
被 告 川崎重工業(株)
 提訴年月日 平成12年7月19日
(ク) 横浜地方裁判所平成12年(行ウ)第3 4号
損害賠償請求事件
原 告 横浜市住民10名
被 告 三菱重工業(株)ほか2名
 提訴年月日 平成12年7月21日
(ケ)  神戸地方裁判所平成12年(行ウ)第3 2号,第33号,第52号 損害賠償請求事件
原 告 尼崎市住民1名
被 告 三菱重工業(株)ほか6名
 提訴年月日 平成12年7月28日
(コ) 福岡地方裁判所平成12年(行ウ)第2 7号
損害賠償請求事件
原 告 福岡市住民12名
被 告 福岡市長ほか5名
 提訴年月日 平成12年8月3日
(サ) 東京地方裁判所平成12年(行ウ)第2 03号
損害賠償請求事件
原 告 町田市住民
被 告 多摩ニュータウン環境組合及び日立造船(株)
 提訴年月日 平成12年8月4日
(シ) 鳥取地方裁判所平成12年(行ウ)第2 号
損害賠償請求事件
原 告 米子市住民3名
被 告 米子市長及び日本鋼管(株)
 提訴年月日 平成12年8月9日
(ス) 新潟地方裁判所平成12年(行ウ)第1 3号
損害賠償請求事件
原 告 豊栄市住民12名
被 告 豊栄郷清掃施設処理組合管理者及び日立造船(株)
 提訴年月日 平成12年10月6日
イ 事案の概要
 当委員会は,地方公共団体発注のごみ 焼却施設の建設工事に係る入札談合について,平成11年8月13日,日 立造船(株)ほか4名に対し,勧告を行ったところ,これを応諾しなかったため, 同年9月8日,審判手続の開始を請求し,平成16年度末現在係属中であ る。
 前記原告住民らは,前記被告らに対して,地方自治法第242条の 2の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償を求める住民訴訟を 前記各裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成16年度末現在,各 裁判所に係属中である。