第7章 不公正取引への取組

第1 概説

 独占禁止法は,不公正な取引方法の規制として第19条において事業者が不公正な取引方法を用いることを禁止しているほか,事業者及び事業者団体が不公正な取引方法に該当する事項を内容とする国際的契約を締結すること,事業者団体が事業者に不公正な取引方法に該当する行為をさせるようにすること,会社及び会社以外の者が不公正な取引方法により株式を取得し又は所有すること,会社が不公正な取引方法により役員の兼任を強制すること,会社が不公正な取引方法により合併すること等の行為を禁止している(第6条,第8条第1項,第10条第1項,第13条第2項,第14条,第15条第1項,第15条の2第1項第2号及び第16条第1項)。
 不公正な取引方法として規制される行為の具体的な内容は,公正取引委員会が法律の枠内で告示により指定することとされている(第2条第9項,第72条)。
 不公正な取引方法に関しては,前記規定に違反する事件の処理のほか,不公正な取引方法の指定に関する調査,不公正な取引方法の防止のための指導業務等がある。また,不公正な取引方法に関する事業者からの相談に積極的に応じることにより違反行為の未然防止に努めている。

第2 中小企業を取り巻く取引の公正化への取組について

公正取引委員会は,従来から,中小事業者等に不当な不利益を与える不当廉売,優越的地位の濫用等の不公正な取引方法や消費者の適正な選択を妨げる不当表示等に対し,厳正かつ積極的に対処することとしている。
 このうち,不当廉売及び優越的地位の濫用に関する最近の取組は次のとおりである。
1 不当廉売に対する取組
(1) 不当廉売規制
 企業の効率性によって達成した低価格で商品を提供するのではなく,採算を度外視した低価格によって顧客を獲得することは,正常な競争手段とはいえず,これにより他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれがある不当廉売は,不公正な取引方法の一つとして禁止されている。
(2) 小売業における不当廉売事案の規制
ア 処理方針
 不当廉売事案については,(1)申告のあった事案に対しては,可能な限り迅速に処理することとし(原則2か月以内),(2)大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案で,周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについては,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題のみられる事案については厳正に対処することとしている。
イ 規制基準の明確化
 小売業における不当廉売規制の考え方については,昭和59年に「不当廉売に関する独占禁止法上の考え方」を公表しているところであるが,規制改革が進展している中で,独占禁止法違反行為の未然防止を図る観点から,酒類の取引実態を踏まえた不当廉売等の規制についての考え方を平成12年11月及び平成13年4月に,ガソリンの取引実態を踏まえた不当廉売等の規制についての考え方を平成13年12月に,それぞれ公表している。
ウ 処理の状況
(ア) 警告
 平成16年度においては,酒類の小売業者4社に対し,その販売に要する費用を著しく下回る価格で継続して販売し,又は不当に低い価格で販売し,周辺地域に所在する他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせた疑いがある行為が認められたことから,それぞれ警告を行った。また,官公庁発注の入札において供給に要する費用を著しく下回る価格で受注し,競争事業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせた疑いがある行為が認められた建設工事業者2社,情報システム業者1社及び設計業者1社に対し,それぞれ警告を行った。
(イ) 注意
 平成16年度において,小売業者に対し不当廉売につながるおそれがあるとして迅速処理により注意を行った件数は,第1表のとおりである。



2 優越的地位の濫用に対する取組
(1) 優越的地位の濫用規制
 自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して,正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える行為(優越的地位の濫用)は,自己と競争者間及び相手方とその競争者間の公正な競争を阻害するおそれがあるものであり,不公正な取引方法の一つとして禁止されている。
 なお,平成16年度においては,大規模小売業者等による納入業者に対する優越的地位の濫用行為に対して5件の排除勧告を行ったほか,消費税総額表示化に係るもの8件を含め,16件の注意を行った(排除勧告を行った事件の詳細については第2章第2参照)。
(2) 大規模小売業者と納入業者との取引の公正化に向けた取組
 公正取引委員会は,昭和29年12月,大規模小売業者の納入業者に対する優越的地位の濫用行為を規制する基本的ルールとして「百貨店業における特定の不公正な取引方法」(昭和29年公正取引委員会告示第7号。以下「百貨店業告示」という。)を定めた。
 百貨店業告示は,いわゆる百貨店,スーパー等を規制対象とするものであるが,近年,大規模小売業者については,百貨店,スーパーのほか,ホームセンター,衣料,家電等の専門量販店,ドラッグストア,コンビニエンスストア本部など業態が多様化するとともに,その規模等も拡大しており,このような中で,百貨店業告示の規制対象とならない大規模小売業者による納入取引上の問題や,不当な協賛金等の負担要請など百貨店業告示に規定していない独占禁止法上問題となる行為が納入業者から強く指摘されてきている。また,公正取引委員会がこれまで行ってきた納入取引に関する実態調査や後記第5の実態調査においても同様の結果が見られるなど,百貨店業告示は,必ずしも現在の流通の実態にそぐわなくなっている。
 このため,公正取引委員会は,独占禁止法第2条第9項の規定に基づき,「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」(以下「大規模小売業告示」という。)の指定を行うべく,平成17年3月10日,その告示案を公表し,当該告示案について,広く一般から意見募集を行うとともに,同月31日に公聴会を開催した。
 なお,大規模小売業告示は平成17年5月13日に指定され,同年11月1日に施行されることとなっている。
(3) 荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた取組
 公正取引委員会は,荷主と物流事業者の取引における優越的地位の濫用行為を効果的に規制する観点から,平成16年3月,独占禁止法第2条第9項の規定に基づき,「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」(以下「物流特殊指定」という。)の指定を行い,物流特殊指定は,同年4月1日から施行された。
 平成16年度においては,物流特殊指定の普及・啓発を図るとともに,物流事業者2,000社を対象に,荷主による物流事業者に対する優越的地位の濫用行為が行われていないかどうかを監視するための書面調査を実施した。

第3 ガソリンの流通実態に関する調査の概要について

1 調査の趣旨等
(1) 調査の趣旨
 ガソリンの小売段階での廉売の激化やその背景として卸売段階における差別対価の問題が指摘されている。また,これらの問題について,石油元売会社(以下「元売」という。)が商社等に対して販売するいわゆる業転玉の存在が影響を及ぼしているとも言われている。
 このような現状を踏まえ,ガソリンの流通実態調査を行い,独占禁止法上の考え方を示す目的で調査を実施し,平成16年9月,調査結果を公表した。
(2) 調査の対象・方法
ア 調査対象
 自動車ガソリンのうち,レギュラーガソリンを対象品目とした。
イ 調査対象企業
 今回の調査では,元売10社,総合商社・エネルギー商社13社,ガソリン販売業者3,211社に対して書面調査を行った。また,元売を始め98社に対して聴取調査を行った。
2 調査結果の概要
(1) ガソリンの流通
(注)  一部の商社及び大手系列特約店は,系列特約店としてガソリンの取引を行う傍ら,業転ルートのガソリンも取り扱っている。また,業転ルートのガソリンは,元売及び商社等において,系列ルートとは別の部署で取り扱われている。

 元売間においては,石油製品の物流合理化のための方策として,共同配送,石油製品の融通(バーター取引),油槽所施設の共同利用等が行われている。
(2) 系列特約店・系列販売店について
 元売系列ガソリンスタンド(以下「SS」という。)を運営するガソリン販売事業者としては,(1)元売と直接取引を行う系列特約店及び(2)系列特約店を介してガソリンを購入している系列販売店がある。
ア 系列特約店の事業規模等
 系列特約店は,特定の元売にガソリンの供給を依存し,また,事業規模も資本金が1000万円以下の事業者が45.6%,経営するSSの数が2か所以下である者が43.3%を占めるなど小規模な事業者が多い。さらに,系列特約店が,取引先元売を変更するには相応のコストがかかることも考慮すると,系列特約店は元売に対し,取引上劣位に立ちやすいと考えられる。系列販売店は系列特約店よりもさらに規模が小さい事業者が多いものとみられる。
イ 元売と系列特約店等との契約関係
 系列特約店は,通常,元売との間で,継続的かつ安定的にガソリンの供給を受けることができる旨規定した「特約店契約書」を取り交わしており,当該契約書には,元売の商標を使用してガソリンを販売することができる旨規定した「商標権使用許諾契約条項」が含まれている。また,系列販売店は,元売との間で,「商標権使用許諾契約書」を取り交わしている。
 系列特約店等が元売と交わす商標使用許諾契約は,元売商標を掲げるSSにおいて,当該元売から(系列販売店については特定の系列特約店を通じて)供給を受けたガソリン以外を販売すること等を禁止する内容となっており,元売ブランドの下で営業する元売系列SSにおいては,ガソリンの仕入先が当該元売に限定されている。
3 ガソリンの卸売価格等について
(1) 元売におけるガソリン卸売価格の決定方式
 ガソリンにおける卸売価格の決定の仕方は,おおむね(1)エリア市況リンク方式と,(2)RIMリンク方式等の二つに大別することができる。
 エリア市況リンク方式とは,元売が,地域ごとにガソリンの末端小売価格を基に基準価格を定め,そこから系列特約店等の販売量等に応じて数量割引額等を差し引いて,卸売価格を算出する方式を指し,また,RIMリンク方式とは,RIM情報開発株式会社公表のRIM価格(各種取引の中でも低い価格で推移することが通常。)を指標として卸売価格を決定する方式を指す。
 元売と系列特約店等との間の卸売価格の決定方法については,系列玉についてはエリア市況リンク方式が,業転玉についてはRIMリンク方式が,主として用いられている状況となっている。
 なお,一部の大手業者や大手商社等では,系列玉についてもRIMリンク方式等によって卸売価格が決定されている。
(2) 元売のガソリン卸売価格の実態
ア 元売の卸売価格等の設定等
 中小の系列特約店と元売との間の系列玉の卸売価格については,元売がエリア市況リンク方式を基本として算出した額を基に決定されているが,中には,契約上,元売が一方的に決定する形となっているものもみられる。
 70%以上の系列特約店は元売との卸売価格の決定方法について「分からない」としており,系列特約店においては,価格決定方式の種別及び内容について十分に把握されていない。
 卸売価格の決定時期については,多くは当月における地域ごとのSSの小売価格を勘案した上で,当月中やその翌月に決定されている。また,事後的に卸売価格を引き下げるなどの調整をしている元売もみられた。
イ 系列玉の卸売価格差
 元売の系列特約店に対する系列玉の卸売価格差は,各元売ごとの最高値・最低値の平均でみると,1リットル当たり10円程度みられる。また,月別にみると,元売によっては,最小5円程度から最大10数円程度みられる。
ウ 系列特約店向け系列玉と商社等向け業転玉の価格差
 地域,取引数量等の違いから生じる系列玉間の価格差を反映して,中小の系列特約店向け系列玉と大手商社向け業転玉の卸売価格には,1リットル当たり3円から8円程度の価格差がみられる。
4 独占禁止法上の考え方
(1) 元売の卸売価格差について
ア 系列玉の卸売価格差
 販売量や販売先地域の市況,決済方法,輸送費等に起因するなど,合理的な範囲内のものであれば独占禁止法上の問題は生じない。しかしながら,
(ア)  元売A社と継続的な取引関係にある販売業者甲社及び乙社(甲社又は乙社がA社のSS経営元売子会社である場合も含む。以下同じ。)が同一の商圏内に所在している場合において,A社と甲社又は乙社との取引内容(取引高,決済条件,ガソリンの配送条件等。以下同じ。)が同等とみられるにもかかわらず,A社の甲社又は乙社に対する同一種類のガソリンの実質的な卸売価格に著しい相違がみられる場合
(イ)  元売A社と継続的な取引関係にある販売業者甲社及び乙社が同一の商圏内に所在している場合において,A社と甲社又は乙社との取引内容が同等とはみられないものの,A社の甲社又は乙社に対する同一種類のガソリンの実質的な卸売価格にその取引内容の相違を超えた著しい相違がみられる場合
等であって,これにより,不利に取り扱われたガソリン販売業者の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼすことにより公正な競争秩序に悪影響を与える場合には,独占禁止法上問題(不当な差別対価,差別的取扱い)となるおそれがある。
イ 系列特約店向け系列玉と商社等向け業転玉の価格差
 系列特約店向け系列玉と商社等向け業転玉とが同一の市場を形成しているとはいえないものと考えられ,これらの間の価格差自体を,独占禁止法上問題視することは適当ではない。
(2) 系列特約店等による業転玉の取扱い制限
 元売が,系列特約店等に対し,自社のサインポールを揚げたSSで業転玉を販売するのを禁止することは,ガソリンは製品自体に商標を付すことが出来ず,SSのサインポール等に商標を掲げて,その下で販売するほかないことを踏まえると,一般的には,元売がその商標の信用の維持を図る上で,必要な範囲の行為と考えられ,独占禁止法上問題となるものではない。
 しかしながら,具体的には個々の事案ごとに判断されるものであるが,次のような場合には,元売の行為が商標保護制度の趣旨を逸脱し,又は同制度の趣旨に反するなど,商標権の権利の行使と認められないおそれがあり,独占禁止法上の問題(排他条件付取引,差別的取扱い,拘束条件付取引,優越的地位の濫用など)となり得るものである。
 同一の自社系列の特約店間であっても,ある系列特約店には業転玉の取扱いを止めるよう求めたことがないのに,他の系列特約店に対しては業転玉の取扱いを止めるよう求めるなど,商標権を恣意的,差別的に行使し,不利に取り扱われた系列特約店の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼす場合
 元売が,系列特約店等が同じ自社系列の大手特約店等からの低価格の自社の系列玉を取り扱えないようにすることにより,系列特約店等の自由な事業活動を阻害し,不当な不利益を与える場合
 元売が,系列玉の流通過程において,不特定の他社のガソリンとの混合・混入を許容,黙認するなど自社の系列玉としての品質管理を行わず,また,系列玉を業転玉などと適切に分別して管理を行っていないなど,一貫して商標を付した系列玉として適切に流通させることをしていないにもかかわらず,系列特約店等が業転玉を取り扱う際には,当該商標権を行使してこれを禁止することにより,系列特約店等の自由な事業活動を阻害し,不当な不利益を与える場合
(3) 不透明な取引条件等の設定等
 元売が系列特約店に対し,卸売価格の決定方法を十分に説明しなかったり,一方的に卸売価格を通知したりすることは,系列特約店にとって不当に不利な卸売価格が設定されるなどの問題につながるおそれもある。さらに,卸売価格の事後決定や事後調整については,卸売価格等の取引条件を不透明にし,コスト意識等に基づく系列特約店による自主的,合理的な経営行動に逆行するとともに,ひいては市場メカニズムに基づく価格形成を阻害するおそれがある。
 したがって,元売各社は,特に以下のような対応を行うことが競争政策上望まれる。
 卸売価格について元売が一定の算式により算出することとされている契約になっている場合には,一方の取引当事者である系列特約店が卸売価格について自ら予測できるように,系列特約店に対し,市況と基準価格の対応関係や数量割引等の算出方法について,十分説明するようにすること。
 アの価格決定方式に加え,それ以外のRIMリンク方式等二つ以上の価格決定方式が併行的に用いられている場合においては,系列特約店に対し,RIMリンク方式等の適用を受けるための条件(取引数量等)をあらかじめ提示すること。
 事後的な価格決定や事後調整を行わず,事前に卸売価格を決定すること。また,中小の系列特約店においても,元売からアのような情報提供が行われた場合には,セールスの強化,経営するSS数の増加,他の系列特約店との共同購入等を通じた元売との取引数量の増加により仕入価格の低減を図るなど,自主的な企業努力を行うことが求められる。
5 最後に
 公正取引委員会としては,関係事業者が,本報告書の内容を踏まえ,適切に対応することを望むとともに,公正かつ自由な競争の促進の観点から引き続き流通の動向を注視していくこととしている。

第4 家電製品の流通実態に関する調査の概要について

1 調査の趣旨等
(1) 調査の趣旨
 近年,家電製品の小売市場では,家電量販店の成長が目覚しく,メーカーの家電量販店への販売依存度が高まる傾向にある中で,大手の家電量販店間で激しい低価格競争が行われているが,この背景には,メーカーが行う不透明なリベート支出,従業員等(以下「ヘルパー」という。)の派遣等の販売政策とともに,大手の家電量販店を中心としたいわゆる購買力に基づく企業行動による問題も指摘されている。
 このような現状を踏まえ,家電製品の流通実態調査を行い,独占禁止法上の考え方を示す目的で調査を実施し,平成16年9月,調査結果を公表した。
(2) 調査の対象・方法
 今回の調査では,家電メーカー及び販売会社(家電メーカーが家電販売部門を独立した販売子会社としている場合。以下「メーカー・販売会社」又は単に「メーカー」という。)9社,家電量販店38社に対して書面調査を行った。また,関連事業者及び関連事業者団体を対象に,聴取調査を実施した。
2 調査結果の概要
(1) 家電製品の流通ルート
 家電製品の流通ルートは,家電量販店,地域電気店(系列店を含む。),その他小売店向けの3ルートに大別できる。
 大手の家電量販店は,荷受の集約化・効率化を図るため,自社の物流センターを所有しているところが多く,このような場合は,取引先量販店の物流センターを利用することが事実上取引の前提となっており,メーカーは,家電量販店の物流センターまで配送し,その後は取引先の物流に委ねている。
(2) メーカー・販売会社の主な販売政策
ア 取引価格の設定等
 メーカー・販売会社は,商品ごとに建値(標準的な卸売価格)を設定しており,取引先数は多いが,1店当たりの取引量は比較的少ない系列店との取引においては,原則として,建値で販売し,その上で系列店政策に基づくリベートを支出して,実質的な取引価格を決定する。
 一方,取引量が多い家電量販店との取引においては,取引先ごとに取引実績等の取引条件を踏まえた交渉価格(標準的な卸売価格より低い価格)を提示し,その交渉価格を基に家電量販店と価格の引下げや,リベートの供与について商談を行い,実質的な取引価格を決定する。系列店と大手量販店との実質的な取引価格の差は平均して6%であった。
 当初の商談時に設定された取引価格であっても,例えば,市況の変化,当初販売計画とのかい離,他メーカーの新製品の投入による自社製品の製品力の低下等に対応するため,製品の発売後に見直し(引下げ)が行われることが多い。


イ リベート政策
 メーカー・販売会社の供与するリベートを,その目的・機能から分類すると,以下のとおりである。
(1) 販売促進を目的としたリベート
(2) 取引(納入)価格の見直し(引下げ)のために支払われるリベート
(3) 取引先の各種要請に対応するために支払われるリベート
(4) 取引条件の改善等施策誘導のために支払われるリベート
 リベート支出総額からその過半を占める実質的な取引価格として折り込まれている分((2)のリベート)を差し引いたリベート支出額は1877億円であり,メーカー・販売会社の国内出荷額の約6%に相当している。
 メーカー・販売会社が,特定の大手の家電量販店からの粗利補てんリベート(特に大手の家電量販店が競合量販店の行う安値販売に対抗できるように競合量販店との販売価格差分の値引き原資として支出するリベート)の要請等に対して,得意先との取引関係に配慮して,一部ではこれに応じていた例もみられた。


ウ ヘルパー派遣
(ア) ヘルパー派遣の概況
 ヘルパーは,派遣目的に応じて,
(1) 販売支援,技術説明,市場調査等を目的として派遣するヘルパー
(2) 社員研修の一環として販売店店頭での営業実習を目的として派遣するヘルパーに大別される。
 さらに,(1)のうち,常時派遣されている「説明員」と新規開店時等の来店者数が増加する比較的短期間に派遣される「応援員」と区別して管理していることが多い。
(イ) 派遣の基準
 ヘルパーの派遣に当たっては,販売力の大きな大手の家電量販店に対して優先的に派遣されやすくなることから,メーカー・販売会社は,恣意的で不透明な派遣を排除するため,それぞれ,ヘルパー派遣基準を策定している。



(ウ) 派遣の実態
a 派遣目的外の業務への従事
 ヘルパーに対して,一部の派遣先から,棚卸,店舗改装,レジ打ちなどの派遣目的外の業務に従事するよう要請があり,メーカー・販売会社が一部対応したことがあるとしていた。また,メーカー・販売会社の派遣するヘルパーに代えて,家電量販店が派遣員を手配することを理由に当該費用の負担をメーカー・販売会社側に求めるケースがあった。
b 派遣実績
 過去1年間のヘルパーの派遣実績を調査したところ,メーカー・販売会社による派遣総数は,延べ33万4千人であり,店舗数・店舗面積,売上高の多い大手の家電量販店に派遣されるヘルパーの割合が高くなっている。
エ 協賛金
(ア) 支出の概況
 家電量販店がメーカー・販売会社に対して協賛金を求める内容を大別すると次の3つに分類され,この区分に沿って,協賛金の具体例を示すと以下のとおりである。


(イ) 支出の実態
a 支出基準
 協賛金の支出に関しては,メーカー・販売会社9社とも取引先の要請の内容次第という事情のため,明文化した支出基準は有していない。
b 協賛金要請の方法
 メーカー・販売会社に対して,売上高上位10社の大手家電量販店から行われる協賛金要請が書面により行われているかどうか調査したところ,約60%の取引先が書面をもって協賛金の要請を行っている。
 しかしながら,書面による要請を行っているケースにおいても,要請金額の算出根拠まで明らかにしているケースは50%程度にとどまっている。また,口頭のみによる要請や十分な説明がない場合,あるいは,取引実績に関係なく一方的な金額を要請する場合等の事例もみられた。
c 支出実績
 メーカー・販売会社における最近1年間の支出状況を調査したところ,取引先の各種要請に対応するために支払われるリベート支出額1040億円(前記イ(3)のリベート)のうち,およそ636億円(61%)が協賛金としての支出である。
 大手の家電量販店及び系列店への協賛金の支出比率(大手62%,系列19%)は,売上比率(大手52%,系列16%)に比して若干高くなっている。また,大手の家電量販店について支出状況を個別にみると,おおむね売上高に比例した割合で支出されている。
3 独占禁止法上の考え方
(1) 取引価格に係る問題
ア リベート等支出基準の整備,合理性,公正性,透明性の確保
 メーカーが,交渉価格を設定する場合や事後的に粗利補てんリベートや協賛金等を供与するなどして特定の取引先に対する取引価格を引き下げるような場合には,合理性,公正性,透明性の観点に特に留意する必要がある。このため,メーカーは,それぞれ,交渉価格や,実質的に取引価格に関連するリベートに係る社内基準を整備し,合理性,公正性,透明性を確保することが望まれる。
 また,そもそも一旦合意された取引価格を,あらかじめ額・率等が明確にされていない粗利補てんリベートの供与等によって事後的に変更することは,メーカーにおける合理的,公正な取引条件の設定を困難にさせるだけでなく,当該リベートの受給を見越した安易な価格設定を誘引し,家電量販店のコスト意識に基づく合理的な経営行動に逆行することにもなるので,当初の商談において取引価格やリベートについて十分に協議することが望まれる。
イ 独占禁止法上留意すべき事項
 一般に,取引先ごとに,販売価格,その他の取引条件において差異があるとしても,その差異が取引内容,需給関係,市況等を反映した経済合理性が認められる範囲のものであれば,差異があること自体が独占禁止法上問題となるものではないが,例えば,同一商圏内に所在する取引先甲社及び乙社の取引内容が同等とみられるにもかかわらず,甲社及び乙社に対する同一種類の家電製品の実質的な取引価格に著しい格差を設けるなどの行為によって取引先事業者の競争機能に直接かつ重大な影響を及ぼすことにより公正な競争秩序に悪影響を与える場合には,独占禁止法上の問題(差別対価,差別的取扱い)が生じるおそれがある。
ウ 家電量販店の優越的地位の濫用に係る問題
 メーカーと大手の家電量販店があらかじめ十分交渉の上でリベート等を授受することについては,前記イの観点が問題とされるおそれがあるほかは,特に独占禁止法上問題となるものではないが,例えば,大手の家電量販店が,自社への納入依存度が高く,取引先を変更することが困難なメーカーに対して,一旦取引価格について合意しているにもかかわらず,さらに粗利補てんリベート等の供与を求めることについては,その求める内容や要求の方法いかんによっては,独占禁止法上の問題(優越的地位の濫用)が生じるおそれがある。
 したがって,家電量販店においては,事前にメーカーと十分に協議して取引価格やリベート等の取引条件を設定する必要がある。
(2) ヘルパー派遣に係る問題
ア 派遣目的外の業務への就業
 メーカーは,派遣目的に立ち返り,派遣目的に沿った派遣を行うなどヘルパーの派遣管理を十分に行うことが望まれる。
イ 派遣基準に沿った派遣
 メーカーにおいては,できるだけ客観的な基準に基づく派遣を行うことが望まれる。
ウ 家電量販店の優越的地位の濫用に係る問題
 家電量販店がヘルパー派遣を要請するに当たっては,「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」(平成3年7月)を踏まえて,一方的な派遣要請などとならないよう事前にメーカーと十分協議を行う必要がある。
エ 協賛金に係る問題
(ア) 支出基準の整備
 メーカーは,協賛金に係る支出基準を整備し,合理性,公正性,透明性の確保に努めることが望まれる。
(イ) 家電量販店の優越的地位の濫用に係る問題
 家電量販店が協賛金を要請するに当たっては,「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」を踏まえて,一方的な要請などとならないよう事前にメーカーと十分協議を行う必要がある。
4 最後に
 公正取引委員会としては,関係事業者が本報告書の内容を踏まえ,適切に対応することを望むとともに,公正かつ自由な競争の促進の観点から引き続き流通の動向を注視していくこととしている。

第5 大規模小売業者と納入業者との取引に関する実態調査の概要について

1 調査の趣旨
 公正取引委員会は,大規模小売業者と納入業者との納入取引について,従来から,その公正化を図る観点から,納入取引におけるルールの明確化,実態調査に基づく改善指導,違反行為に対する措置等を講じてきている。
 しかし,前記第2の2(2)のとおり,近年,大規模小売業者については,百貨店,スーパーのほか,ホームセンター,衣料,家電等の専門量販店,ドラッグストア,コンビニエンスストア本部など業態が多様化するとともに,その規模等も拡大してきており,このような中で,大規模小売業者による納入取引上の問題についての指摘も増加しているなど,百貨店業告示は必ずしも現在の流通の実態にそぐわなくなっている。
 そこで,百貨店業告示の見直しの一環として,大規模小売業者と納入業者との取引の実態を把握するために書面調査を実施し(書面調査の対象期間:平成15年10月〜平成16年9月),その調査結果を平成17年2月に公表した。
2 調査方法等
(1) 調査対象及び調査方法
 大規模小売業者及び納入業者を対象に書面調査を実施した。調査票の発送数及び回答状況は以下のとおりである。
(2) 調査対象行為類型等
 (1)返品,(2)商品納入後の値引き要請,(3)買取仕入れから委託仕入れ方式への変更要請,(4)特売,創業祭等における低価格納入の要請,(5)プライベート・ブランド商品の受領拒否,(6)従業員等の派遣要請,(7)不当な要請を断ったことによる不利益な取扱い,(8)商品やサービスの購入要請,(9)協賛金等の負担要請,(10)物流センターの設置等に伴う費用の負担要請,(11)多頻度小口配送の要請,(12)その他
3 調査結果の概要
(1) 返品
 納入業者に対する書面調査(以下「納入業者調査」という。)によれば,返品の有無についてみると,「返品を受けたことがある」と回答した者が約80%(大規模小売業者に対する書面調査(以下「小売業者調査」という。)によれば,「返品を行ったことがある」と回答した者がほとんどすべて)となっている。
 納入業者調査で「返品を受けたことがある」と回答した者のうち,「不当な返品がある」と回答した者は約63%となっている。
 不当な返品の内容について,納入業者調査によれば,「小売業者が独自の判断による店舗又は売場の改装や棚替えに伴い不要となった商品の返品」や「展示等に用いたため汚損・毀損した商品の返品」を挙げる者が多い。
 一方,返品の内容について,小売業者調査によれば,「納入を受けた商品に汚損,毀損等の瑕疵があったので返品したことがある」や「納入を受けた商品と注文した商品が異なっていたので返品したことがある」を挙げる者が多い。
 返品基準の明確化及び遵守の状況について,納入業者調査によれば,「返品の基準は明確になっており,基準の範囲内で返品がなされている」と回答した者が約41%となっているものの,「返品の基準は明確になっていない」と回答した者及び「返品の基準は明確になっているが,基準の範囲を超えた返品がある」と回答した者を併せると約59%となっている。
 また,小売業者調査によれば,返品に関する条件の取決めの方法については,「書面で行っている」と回答した者が約70%となっている。
 このことから,返品条件については,書面により取り決められている場合が多いものの,納入業者からみれば,返品基準は必ずしも明確にはなっていない,又は基準どおりに返品がなされていない場合が多いことがうかがわれる。
(2) 商品納入後の値引き要請
 商品納入後の値引き要請の有無について,納入業者調査によれば,自社の責めに帰すべき理由がないにもかかわらず,商品納入後に「値引き要請があった」と回答した者は約23%となっている。
 値引き要請の理由について,納入業者調査によれば,「小売業者がセールで値引き販売したため要請してきた」や「小売業者が決算対策のため要請してきた」を挙げる者が多い。
(3) 買取仕入れから委託仕入れ方式への変更要請
 買取仕入れから委託仕入れ方式への変更要請の有無について,納入業者調査によれば,「要請されたことがある」と回答した者は約9%となっている。
(4) 特売,創業祭等における低価格納入の要請
 特売,創業祭等で販売する商品の納入価格の決定方法について,納入業者調査によれば,「交渉し,双方合意の上で決めている」と回答した者が約70%と最も多く,次いで,「交渉し,主に当社の提示した価格で決まることが多い」と回答した者が約14%となっている。
 平成14年以降の特売,創業祭等における低価格納入の要請の状況の変化について,納入業者調査によれば,「ほとんど変わらない」と回答した者が約49%と最も多くなっている。
 なお,「大幅に増えた」,「若干増えた」とする者の割合の合計は約20%となっており,「若干減った」,「大幅に減った」とする者の割合の合計約11%を大幅に上回っている。
 このように,特売,創業祭等で販売する商品の納入価格の決定方法については,大規模小売業者と納入業者との間で十分に協議がなされている場合も多いが,低価格納入の要請自体は増加傾向にあることがうかがわれる。
(5) プライベート・ブランド商品の受領拒否
 プライベート・ブランド商品の取扱いの有無について,小売業者調査によれば,「取り扱っている」と回答した者が約86%と高い割合となっている。
 一方,納入業者調査によれば,プライベート・ブランド商品の受領拒否の有無についてみると,「受領拒否されたことがある」と回答した者が約13%となっている。
(6) 従業員等の派遣要請
 従業員等の派遣要請の有無について,納入業者調査によれば,「要請を受けたことがある」と回答した者が約55%(小売業者調査によれば,「要請したことがある」と回答した者が約68%)となっている。
 納入業者調査で「要請を受けたことがある」と回答した者のうち,「不当な従業員等の派遣要請がある」と回答した者が約68%となっている。
 この不当な従業員等の派遣要請の内容については,納入業者調査によれば,「納入商品の販売促進に寄与するとは思われない棚卸,棚替え,社内事務等の業務のための派遣要請」,「納入商品の販売促進やコスト削減に寄与するなどして得る利益の範囲を超えた派遣要請」を挙げる者が多い。
 一方,小売業者調査によれば,従業員等の派遣要請の内容については,「納入商品の販売促進やコスト削減に寄与することなどによる納入業者の利益の範囲内で派遣要請をしたことがある」,「従業員等の派遣に関する基準をあらかじめ明確にして派遣要請をしたことがある」を挙げる者が多い。
 従業員等の派遣基準の明確化及び遵守の状況について,納入業者調査によれば,「派遣の基準は明確になっていない」と回答した者が約65%と最も多く,「派遣の基準は明確になっているが,基準の範囲を超えた派遣要請がある」と回答した者を併せると約74%となっている。
 また,小売業者調査によれば,従業員等の派遣に関する条件の取決めの方法については,「取決めはしていない」と回答した者が約34%と最も多く,次いで,「書面で行っている」と回答した者が約31%,「口頭で行っている」と回答した者が約25%の順となっている。
(7) 不当な要請を断ったことによる不利益な取扱い
 不当な要請を断ったことによる大規模小売業者からの不利益な取扱いの有無について,納入業者調査によれば,「不利益な取扱いを受けたことはない」と回答した者が約92%となっている。ただし,このように回答した者の中には,「不当な要請であってもこれを断ることができないから,そもそも不当な要請を断ったために,不利益な取扱いを受けることはない」と指摘した者もいる。
(8) 商品やサービスの購入要請
 商品やサービスの購入要請の有無について,納入業者調査によれば,「不当な商品やサービスの購入要請がある」と回答した者が約33%となっている。
 不当な購入要請の方法としては,「仕入担当者(仕入担当者の上司等仕入取引に影響を及ぼし得る者も含む。)が購入を要請してきた」,「小売業者名で組織的・計画的に購入を要請してきた」を挙げる者が多い。
(9) 協賛金等の負担要請
 協賛金等の負担要請の有無について,納入業者調査によれば,「要請を受けたことがある」と回答した者が約63%(小売業者調査によれば,「要請をしたことがある」と回答した者が約79%)となっている。
 納入業者調査で「要請を受けたことがある」と回答した者のうち,「不当な協賛金の負担要請がある」と回答した者は約69%となっている。  不当な協賛金等の負担要請の内容について,納入業者調査によれば,「納入商品の販売促進に寄与するとは思われない催事(創業祭等),売場の改装,広告等のための費用負担の要請」,「納入商品の販売促進やコスト削減に寄与するなどして得る利益の範囲を超えた協賛金等の要請」,「決算対策という理由での協賛金等の要請」を挙げる者が多い。
 一方,小売業者調査によれば,「取引先納入業者と事前に販売目標達成リベートの同意を得ており,その販売目標を達成したので,リベート支給の要請をした」,「協賛金等に関する基準をあらかじめ明確にして協賛金等の要請をした」を挙げる者が多い。
 協賛金等の負担基準の明確化及び遵守の状況について,納入業者調査によれば,「負担の基準は明確になっていない」と回答した者が約57%と最も多く,「負担の基準は明確になっているが,基準の範囲を超えた要請がある」と回答した者を併せると約69%となっている。
 また,小売業者調査によれば,協賛金等の負担条件についての取決めの方法については,「書面で行っている」と回答した者が約67%と最も多くなっているものの,「取決めはしていない」と回答した者も約18%となっている。
(10) 物流センターの設置等に伴う費用の負担要請
 物流センターの利用状況について,納入業者調査によれば,「利用している」と回答した者が約63%(小売業者調査によれば,物流センターを「有している」と回答した者が約79%)となっている。
 また,小売業者調査によれば,物流センターの利用状況については,「一部を除くほとんどの取引先納入業者が利用している」と回答した者が約66%と最も多く,次いで,「利用するかどうかは取引先納入業者の個別判断に任せている」と回答した者が約19%となっている。
 物流センターを利用する理由について,納入業者調査によれば,「小売業者の方針で,物流センターを利用しないと取引できない」,「小売業者から要請を受け,受発注業務,物流業務の合理化に資すると思って利用している」を挙げる者が多い。
 物流センターの利用料の負担の状況について,納入業者調査によれば,物流センターの利用料を「負担している事例がある」と回答した者が約74%となっている。
 物流センターの利用料の負担額(率)に関する協議の状況について,納入業者調査によれば,「負担額(率)等について協議の機会を与えられなかった(一方的に要請された)」と回答した者が約46%と最も多く,次いで,「負担額(率)等について一応協議の機会は与えられたが,十分とはいえなかった」が約35%となっている。
 また,小売業者調査によれば,物流センターの利用に関する条件の取決めの方法については,「書面で行っている」と回答した者が約80%と高い割合となっている。
(11) 多頻度小口配送の要請
 多頻度小口配送の要請に関する協議の状況について,納入業者調査によれば,「一応協議の機会は与えられたが,十分とはいえなかった」と回答した者が約46%と最も多く,次いで,「協議の機会を与えられなかった(一方的に要請された)」と回答した者が約25%となっており,納入業者からみれば,十分な協議が行われていない状況にあることがうかがわれる。
4 公正取引委員会の対応
 今回の調査の結果,依然として,大規模小売業者から納入業者に対して種々の要請が行われており,納入業者は,要請が不当なものであってもこれを受け入れざるを得ない状況にあること,また,大規模小売業者からの要請の中には,百貨店業告示では禁止行為として規定されていない協賛金等の拠出要請や商品やサービスの購入要請等も広く行われている状況がみられた。
 さらに,大規模小売業者の業態(百貨店,スーパー,専門量販店,コンビニエンスストア,ホームセンター,ディスカウントストア,ドラッグストア,通販業者)にかかわらず,前記の納入取引上の問題がみられた。
 このため,公正取引委員会は,今回の調査結果を踏まえ,優越的地位の濫用行為が行われることのないよう,関係事業者団体に対し,傘下会員の独占禁止法遵守体制の整備について指導を要請した。
 また,前記第2の2(2)のとおり,大規模小売業告示の指定に向けて検討作業を行い,その告示案を平成17年3月10日に公表した。