第1部 総論

第1 概説

1 我が国を取り巻く経済環境と競争政策の積極的展開
 平成14年初からの景気回復局面は4年目を迎え,我が国経済の景気回復は戦後平均の33か月を上回る状況にある中,平成16年は消費や投資といった民需の好調に加え,輸出の増加も寄与し,年前半は高い成長率を実現した。年後半にはIT関連を中心とした輸出が伸び悩み,民需が盛り上がりを欠いたことからほぼゼロ成長となったものの,平成17年に入ると家計消費が持ち直し,対米輸出を中心とした輸出に明るさがみられるなど,1−3月期の経済成長は年率5%程度の高い伸びとなり,景気は大局的には緩やかな回復を続けている。
 これまでも累次の閣議決定において,市場機能をより発揮するための競争政策の積極的展開を図り,独占禁止法の執行力の強化を進めることとされてきているところ,平成16年度には,「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(平成16年6月4日閣議決定)において,「21世紀にふさわしい競争政策を確立するため,幅広く議論を尽くした上,独占禁止法改正法案を本年中に国会に提出するとともに,引き続き,公正取引委員会の機能強化に取り組む」こととされ,同年10月,「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の一部を改正する法律案」が国会に提出された。
2 平成16年度において講じた施策の概要
 このような状況を踏まえて,公正取引委員会は,平成16年度において,次のような施策に重点を置いて競争政策の運営に積極的に取り組んだ。
(1) 独占禁止法改正
ア 独占禁止法改正法
 課徴金制度の見直し,課徴金減免制度の導入,犯則調査権限の導入,審判手続等の見直し等を内容とする独占禁止法改正法は,平成17年4月20日に成立し,同月27日に公布された(平成17年法律第35号)。施行日は,公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日(価格の同調的引上げに対する報告徴収規定の削除に関しては,公布の日から起算して1月を経過した日)とされた。
イ 法律の内容
(2) 迅速かつ実効性のある法運用
ア 独占禁止法違反行為の積極的排除
 公正取引委員会は,従来から,独占禁止法違反行為に対し厳正かつ積極的に対処してきたところであり,平成16年度においては,迅速かつ実効性のある法運用という基本方針の下,特に,価格カルテル・入札談合行為,IT・公益事業分野における私的独占,知的財産権分野における新規参入阻害行為,中小事業者に不当な不利益を与える優越的地位の濫用・不当廉充などの不公正な取引方法等の独占禁止法違反行為に対し厳正かつ積極的に対応した。
 平成16年度における主な勧告事件は,次のとおりである。
イ 企業結合規制の的確な運用
 独占禁止法は,一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる会社の合併,株式保有等を禁止している。事業活動のグローバル化等の経済環境の急速な変化に伴い,大企業の合併等大型の企業結合事案が増加傾向にある状況において,公正取引委員会は,我が国市場における競争的な市場構造が確保されるよう,企業結合規制の的確な運用を行っている。平成16年度においては,次のような大型の企業結合事案を処理した。
 また,公正取引委員会は,企業結合が一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなるか否かの審査について,ガイドラインの作成や重要案件の公表等を通じて,審査内容の透明化・明確化に努めてきており,一定の取引分野の画定(いわゆる市場画定)や独占禁止法上問題となる場合の考え方等に関し,企業結合審査の透明性を一層確保し,予見可能性を一層高めるべきとの各方面からの要請が高まっていることから,平成16年5月,「企業結合審査に関する独占禁止法の運用指針」を策定・公表した。
(3) 競争環境の積極的創造に向けた調査・提言
ア 地方公共団体における入札・契約の実態に関する調査報告書
 公正取引委員会は,公共調達における一層の競争的な環境の実現を図る等の観点から,平成15年11月,公共調達と競争政策に関する研究会の検討結果が報告書(「公共調達における競争性の徹底を目指して」)として取りまとめられたことから,これを公表した。公正取引委員会では,本報告書の提言内容の実現に向け,政府の行政効率化関係省庁連絡会議の場を活用するなどして働きかけを行い,「今後の行政改革の方針」(平成16年12月24日閣議決定)にその趣旨が盛り込まれた。さらに,公正取引委員会は,平成16年度においては,地方公共団体における入札・契約の実態や制度的課題等を把握することを目的として,人口規模別に分類した517の地方公共団体に対してアンケート調査を実施し,調査結果を取りまとめ,平成16年9月,「地方公共団体における入札・契約の実態に関する調査報告書」を公表した。
 また,独占禁止法及び入札談合等関与行為防止法の趣旨を発注官庁等に周知することにより,調達及び発注に係る違反行為の未然防止に取り組むとともに,本報告書を踏まえた改善点等についても周知徹底に努めている。
イ 公益事業分野等における規制改革に関する調査・ガイドラインの公表等
 公正取引委員会では,規制改革が進んでいる分野において,新規参入の促進等を図るため,独占禁止法上問題となる参入阻害行為等を明らかにしたガイドラインの公表等を行った。
(4) ルールある競争社会の推進に向けた取組
ア 市場参加者としての消費者に対する適正な情報提供の推進
(ア) 「『有料老人ホーム等に関する不当な表示』の運用基準」を策定・公表
 公正取引委員会は,有料老人ホームが提供する各種サービスの内容に係る,消費者に誤認されるおそれのある表示を明確にすることにより,不当表示を未然に防止するとともに,不当表示に厳正に対処する観点から,平成16年4月2日,景品表示法第4条第1項第3号の規定に基づき,「有料老人ホーム等に関する不当な表示」(以下「有料老人ホーム告示」という。)を指定した(平成16年10月1日から施行。)さらに,有料老人ホーム告示の運用に当たっての基本的な考え方を定めるべく,平成16年6月16日,「『有料老人ホーム等に関する不当な表示』の運用基準」を策定・公表した。
(イ) 景品表示法違反行為の積極的排除
 公正取引委員会は,消費者向けの商品・サービスの種類や販売方法が多様化する中で,消費者の適正な商品選択が妨げられることのないよう,景品表示法を厳正・迅速に運用することにより,不当表示の排除に努めており,平成16年度においては,次のような事件を含め計21件の排除命令を行ったほか・必要に応じ警告の措置を採るなど,積極的に事件処理に取り組んだ。
(ウ) 消費者取引の適正化
 規制緩和の進展に伴い,消費者への適切な情報提供を推進し,消費者の適正な商品選択を確保していくことが重要な課題となっている。このため,公正取引委員会では,景品表示法を厳正に運用し,不当表示の排除に努めるほか・消費者の関心の高い商品・サービスや電子商取引等の新しい分野における表示について実態調査を行うとともに,その結果を踏まえて当該分野において見られる表示について景品表示法上の考え方を明らかにするためのガイドラインの策定等を行い,消費者取引の適正化に努めている。平成16年度においては次のような取組を行った。
イ 下請法違反行為の積極的排除
 公正取引委員会は,中小企業の自主的な事業活動が阻害されることのないよう,下請法の厳正かつ迅速な運用により,下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護に努めており,平成16年度においては,次のような事件に対し勧告・公表を行ったほか,必要に応じ警告の措置を採るなど積極的に事件処理に取り組んだ。
ウ 不当廉売,優越的地位の濫用に対する取組
(ア) 不当廉売に対する取組
 公正取引委員会は,小売業における不当廉売について,迅速に処理を行うとともに,大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案で周辺の販売業者に対する影響が大きいと考えられるものについては,周辺の販売業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い,問題のみられる事案については厳正に対処している。
  平成16年度においては,酒類の小売業者4社に対し,その販売に要する費用を著しく下回る価格で継続して販売し,又は不当に低い価格で販売し,周辺地域に所在する他の事業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせた疑いがある行為が認められたことから,それぞれ警告を行った。また,官公庁発注の入札において供給に要する費用を著しく下回る価格で受注し,競争事業者の事業活動を困難にさせるおそれを生じさせた疑いがある行為が認められた建設工事業者2社,情報システム業者1社及び設計業者1社に対し,それぞれ警告を行った。また,小売業者に対し不当廉売につながるおそれがあるとして627件(酒類485件,石油製品30件,家電1件,その111件)の注意を行った。
(イ) 優越的地位の濫用に対する取組
 公正取引委員会は,独占禁止法上の不公正な取引方法に該当する優越的地位の濫用行為が行われないよう監視を行うとともに,独占禁止法又は関係法令に違反する行為については厳正に対処することとしており,平成16年度においては,大規模小売業者等による納入業者に対する優越的地位の濫用行為に対して5件の排除勧告を行ったほか,消費税総額表示化に係るもの8件を含め,16件の注意を行った。
 公正取引委員会は,大規模小売業者による納入業者に対する優越的地位の濫用行為を規制する基本的ルールとして「百貨店業における特定の不公正な取引方法」(昭和29年公正取引委員会告示第7号。以下「百貨店業告示」という。)を指定しているが,近年,大規模小売業者については,百貨店,スーパーのほか,ホームセンター,衣料,家電等の専門量販店,ドラッグストア,コンビニエンスストア本部など業態が多様化するとともに,その規模等も拡大しており,このような中で,百貨店業告示の規制対象とならない大規模小売業者による納入取引上の問題や,不当な協賛金等の負担要請など百貨店業告示に規定していない独占禁止法上問題となる行為が納入業者から強く指摘されるなど,百貨店業告示は,必ずしも現在の流通の実態にそぐわなくなっていた。このため,独占禁止法第2条第9項の規定に基づき,「大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引方法」の指定を行うこととし,平成17年3月10日,その原案を公表し,同年5月13日,当該指定を行った。
(ウ) 荷主と物流事業者との取引の公正化に向けた取組
 公正取引委員会は,荷主と物流事業者の取引における優越的地位の濫用行為を効果的に規制する観点から,平成16年3月,独占禁止法第2条第9項の規定に基づき,「特定荷主が物品の運送又は保管を委託する場合の特定の不公正な取引方法」(以下「物流特殊指定」という。)の指定を行い,物流特殊指定は,同年4月1日から施行された。
 平成16年度においては,物流特殊指定の普及・啓発を図るとともに,物流事業者2,000社を対象に,荷主による物流事業者に対する優越的地位の濫用行為が行われていないかどうかを監視するための書面調査を実施した。
(5) 経済のグローバル化への対応
 企業活動の国際化の進展に伴い,複数国の競争法に抵触する事案,一国による競争法の執行活動が他国の利益に影響を及ぼし得る事案等が増加するなど,執行活動の国際化及び競争当局間の協力の強化の必要性が高まっている。このような状況を踏まえ,公正取引委員会は,二国間独占禁止協力協定を通じ,海外競争当局との協力関係の強化に努めている。また,公正取引委員会は,経済連携協定の重要な要素の一つとして,競争政策を積極的に位置付ける方向で,関係省庁等との連携を図りつつ協定締結交渉に当たるとともに,OECD(経済協力開発機構),APEC(アジア太平洋経済協力),UNCTAD(国際連合貿易開発会議),ICN(国際競争ネットワーク)等といった多国間における検討にも積極的に参加するとともに,東アジア競争法・政策に関するカンファレンス及び東アジア競争関連当局トップ会合を開催した。
 また,開発途上国や移行経済国においては,市場経済における競争法・競争政策の重要性が認識されるに従って,既存の競争法制を強化する動きや,新たに競争法制を導入する動きが活発になっている。公正取引委員会は,これら諸国の競争当局等に対し,研修の実施等による技術支援を行っている。
 さらに,公正取引委員会の国際的なプレゼンスの向上を図るため,内外の法曹協会等における講演や講師派遣,英文パンフレットの配布及び英文ホームページの更新・充実を行うなど,海外に向けての積極的な情報発信に取り組んでいる。
 平成16年度における主な取組は次のとおりである。

第2 業務の大要

 業務別にみた平成16年度の業務の大要は,次のとおりである。
1 独占禁止法と他の経済法令等の調整
 金融先物取引法,保険業法等の一部を改正する法律案等の経済法令等について,関係行政機関が立案するに当たり,所要の調整を行った。
2 独占禁止法違反被疑事件の審査及び処理
 独占禁止法違反被疑事件として平成16年度に審査を行った事件は139件であり,そのうち同年度内に審査を完了したものは120件であった。また,平成16年度中に35件の法的措置(独占禁止法第48条の規定に基づく勧告)を延べ472事業者に対して採った(第1図参照)。
 なお,これらのうち16件について審判開始決定がなされ,審判手続に移行した。
 平成16年度の法的措置件数35件を行為類型別にみると私的独占2件,価格カルテル2件,入札談合22件,不公正な取引方法8件,その他1件となっている(第2図参照)。
第1図 法的措置件数と対象事業者等の数の推移
第2図 行為類型別の法的措置件数

 平成16年度の法的措置以外の事件としては,後記の不当廉売についての事件を除き,警告1件,注意60件及び違反事実が認められなかったため審査を打ち切った事件16件となっている。
 不当廉売事案については,8件の警告を行うとともに,違反につながるおそれのある行為に対し627件の注意を行うなど,適切な法運用に努めた。
 また,平成16年度の課徴金については,価格カルテル及び入札談合事案について,総計219件,総額111億5029万円の納付命令が確定した(第3図参照)。
第3図 課徴金額等の推移

 平成16年度における審判事件数は,前年度から引き継いだもの140件を含め,独占禁止法違反に係るものが32件,課徴金納付命令に係るものが135件,景品表示法違反に係るものが5件の計172件であった(第4図参照)。これらのうち,平成16年度中に,44件について審決を行った。この内訳は,審判審決1件,同意審決11件,課徴金の納付を命ずる審322件である。
第4図 審判事件数の推移とその内訳
3 規制改革・競争政策に関する調査・提言等
 公正取引委員会は,公共調達における一層の競争的な環境の々現を図る等の観点から,平成15年11月,公共調達と競争政策に関する研究会の検討結果報告書(「公共調達における競争性の徹底を目指して」)として取りまとめられたことから,これを公表した。公正取引委員会では,本報告書の提言内容の実現に向け,政府の行政効率化関係省庁連絡会議の場を活用するなどして働きかけを行い,「今後の行政改革の方針」(平成16年12月24日閣議決定)にその趣旨が盛り込まれた。さらに,公正取引委員会は,平成16年度においては,地方公共団体における入札・契約の実態や制度的課題等を把握することを目的として,人口規模別に分類した517の地方公共団体に対してアンケート調査を実施し,調査結果を取りまとめ・平16年9月,「地方公共団体における入札・契約の実態に関する調査報告吉」を公表した。また,独占禁止法及び入札談合等関与行為防止法の趣旨を発注官庁等に周知することにより,調達及び発注に係る違反行為の未然防止に取り組むとともに,本報告書を踏まえた改善点等についても周知徹底に努めている。
 また,ガス事業法の改正等に伴う「適正なガス取引についての指針」の一部改定,金融機関の業態区分の緩和等に伴う「金融機関の業態区分の緩和及び業務範囲の拡大に伴う不公正な取引方法について」の策定を行った。さらに,電力・ガス・電気通信事業の分野における自由化の進展等に伴う公益事業分野の柑互参入及び携帯電話の番号ポータビリティの導入等における独占禁止法上の考え方を示した。
4 法運用の透明性の確保と独占禁止法違反行為の未然防止
 公正取引委員会は,独占禁止法違反行為の未然防止を図るため,事業者及び事業者団体が自ら実施しようとする具体的な事業活動が独占禁止法上問題が無いかどうかについて,個別の相談に応じてきている。
 なお,価格の同調的引上げに関する報告の徴収制度は,平成17年5月27日から独占禁止法改正法の一部が施行されたことに伴い,廃止されている。
5 価格の同調的引上げ理由の報告徴収
 平成14年の国内総供給価額及び市場占拠率に関する調査の結果を踏まえてガイドライン別表の改定を行い,平成16年12月17日から実施した。
 なお,価格の同調的引上げに関する報告の徴収制度は,平成17年5月27日から独占禁止法改正法の一部が施行されたことに伴い,廃止されている。
6 競争政策に関する理論的・実証的基盤の整備
競争政策研究センターでは,平成16年度には,6研究テーマに取り組むとともに,東京アメリカン・センターとの共催で国際シンポジウムを行ったほか・ワークショップ,公開セミナーを開催するなど精力的に活動を行った。
7 株式保有・合併等
 独占禁止法第9条から第16条の規定に基づく企業結合に関する業務については,銀行又は保険会社の議決権保有について14件の認可を行い・持株会社等について79件の報告,持株会社等の設立について1件の届出、会社の合併・分割・営業譲受け等について259件の届出,事業会社の株式所有について778件の報告をそれぞれ受理し,必要な審査を行った(第5図,第6図参照)。
第5図 合併届出,分割届出及び営業譲受け等届出受理件数
第6図 株式所有報告書の提出件数
8 不公正取引への取組
 不公正な取引方法については,独占禁止法の規定に違反する事件の処理のほか,不公正な取引方法に関する調査及び不公正な取引方法に関する事業者からの相談に積極的に応じることにより違反行為の未然防止に努めている。平成16年度においては,ガソリン及び家電製品の流通実態に関する調査を行い,それぞれ9月に調査結果を公表し,独占禁止法上の考え方を示している。さらに,百貨店業告示の見直しの一環として,大規模小売業者と納入業者との取引の実態を把握するため書面調査を実施し,その調査結果を平成17年2月に公表した。
9 事業者国体
 独占禁止法第8条の規定に基づく事業者団体の届出件数は,成立届80件,変更届1,233件,解散届84件であった。
10 下請法に関する業務
 下請法に関する業務としては,下請取引の公正化及び下請事業者の利益の保護を図るため,親事業者30,932社及びこれらと取引している下請事業者170,517社を対象に書面調査を行った。
 書面調査等の結果,下請法に違反する行為又は違反するおそれのある行為が認められた2,588件につき,4件については同法第7条の規定に基づく勧告,それ以外については警告の措置を採った(第1表参照)。
第1表 下請法の事件処理件数
11 景品表示法に関する業務
 景品表示法に関する業務としては,同法第6条の規定に基づき排除命令を行ったものは表示関係21件であり,警告を行ったものは,表示関係21件,注意を行ったものは,景品関係72件,表示関係650件であった(第2表参照)。
第2表 景品表示法の事件処理状況
(注)  平成16年度より警告はすべて公表しており,それ以前の警告件数には,非公表警告が含まれている。

  都道府県における景品表示法関係業務の処理状況は,同法第9条の2の規定に基づく指示を行ったものが14件(すべて表示関係),注意を行ったものが1,161件(景品関係51件,表示関係1,110件)であった。
 また,事業者又は事業者団体が,公正取引委員会の認定を受けて景品類又は表示に関する事項について自主的に設定する業界のルールである公正競争規約に閑し,公正取引委員会は,平成16年度において,3件の公正競争規約について新たに認定し,13件の公正競争規約について変更の認定を行った。
12 国際関係業務
 国際関係の業務については,各国共通の競争政策上の課題について,米国,EU,フランス,オーストラリア,インドネシア及びタイの競争当局との間で,それぞれ二国間の意見交換を行ったほか,経済協力開発機構(OECD),アジア太平洋経済協力(APEC),国際連合貿易開発会議(UNCTAD),国際競争ネットワーク(ICN)等の会議に積極的に参加した。
 また,インドネシアとの共催により,東アジア諸国における競争法の効果的な導入・執行に向けた共通の認識を醸成すべく,第2回東アジア競争法・政策カンファレンスを開催するとともに,同地域の競争関連当局トップ間の意見交換を通じて競争当局間のネットワーク化を進めるとの観点等から競争政策トップ会合を開催した。
13 広報等に関する業務等
 広報業務については,各種ガイドブックや英文パンフレットの作成・配布,日本語・英語ホームページの充実等のほか,小・中学校に講師を派遣して競争の役割等についての授業,中学生向け副教材を作成し,中学校へ配布するなど積極的な広報を行った。
 また,競争政策について一層の理解を求めるなどの目的で,全国8都市で講演会を開催するとともに,各地の有識者との意見交換を行った。
  さらに,独占禁止政策協力委員制度について,平成16年度は各地域の有識者150名に委員を委嘱し,全国9都市で会議を行った。
14 その他の業務
(1)  政策評価
 公正取引委員会は,行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号)が施行されたことに伴い,同法に基づき政策評価を実施しているところである。平成16年度には,「平成15年度における独占禁止法違反行為に対する措置」のほか,6件の政策評価を実施・公表した。
(2)  電子政府の実現に向けた取組
 公正取引委員会は,独占禁止法に基づく申請・届出等について,インターネット等を利用したオンライン化を推進し,事業者の負担の軽減及び行政の効率化を図るための取組を行っている。平成16年度には,審判手続等の準司法等手続についてのオンライン化を実現した。