第13章 広報,相談等に関する業務

第1 広報

1 概要
 公正取引委員会では,具体的な活動内容や実施している施策,独占禁止法を始めとする関係法令の解釈や運用について,広く国民に知ってもらうため,積極的かつ分かりやすい広報に努めているところである。広報業務の主なものは,次のとおりである(海外向け広報については,「第12章 国際関係業務」の「第8 海外への情報発信」において記載)。
2 記者会見
 事務総長定例記者会見を毎週水曜日に開催している。
3 報道発表
 公正取引委員会は,独占禁止法違反事件に対する法的措置,企業結合等の事前相談に対する回答,独占禁止法を始めとする関係法令に係る各種ガイドライン,実態調査報告書等の内容について,幅広く発表を行っている。平成17年度においては,274件の発表を行った。
 なお,特定のテーマについて,報道発表に併せて新聞等による政府広報を利用した広報を行っている。
4 独占禁止法改正法の周知
 平成17年度においては,独占禁止法改正法を広く周知するため,全国各地において説明会を開催したほか,全国の商工会議所,事業者団体等が主催する講演会,研修会等へ公正取引委員会から講師を派遣し,独占禁止法改正法について説明を行った。
 また,リーフレット「ここがポイント!“改正”独占禁止法」を作成・配布したほか,公正取引委員会のホームページに,「改正独禁法について」及び「課徴金減免制度について」のページを開設するなど,独占禁止法改正法の周知に努めた。
5 広報資料の作成・配布
(1) パンフレット
 独占禁止法や公正取引委員会に対する一般の理解を深めるため,各種のパンフレットを作成し,事業者,一般消費者等に配布している。
 平成17年度においては,「独占禁止法ガイドブック」,「やさしい独占禁止法ガイド」,「知ってなっとく独占禁止法」,「知るほどなるほど下請法」及び「だから安心!景品表示法」を作成し,事業者,一般消費者等に広く配布したほか,中学生向け副教材として「わたしたちの暮らしと市場経済」を作成し,中学校等に配布した。
(2) ビデオ
 独占禁止法,下請法,景品表示法等に関する5種類の広報用ビデオを作成し,これらを事業者団体,消費者団体等に配布している。
 平成17年度においては,一般消費者等向けの説明会等で用いたほか,事業者団体等にも貸し出しを行った。
(3) ホームページ
 平成9年以降,ホームページ(http://www.jftc.go.jp)において報道発表資料を含む各種の情報を掲載している。
 平成17年度においては,サイトマップ,検索機能を設置するなど操作性の向上を図った。  また,独占禁止法,下請法,景品表示法のパンフレットをホームページ上に掲載した。
(4) 講演会・研修会等への協力
 事業者団体等の要請に対応して,講演会,研修会等に講師を派遣し,独占禁止法等について広報を行った。

第2 国民への情報提供・国民からの意見聴取

1 各委員制度等及びその運用状況
(1) 独占禁止政策協力委員制度
ア 概要
 競争政策への理解の促進と地域の経済社会の実状に即した政策運営に資するため,平成11年度から,独占禁止政策協力委員制度を設置し公正取引委員会に対する独占禁止法等の運用や競争政策の運営等に係る意見・要望の聴取等を行い施策の実施の参考としている。平成17年度においては,各地域の有識者150名に委員を委嘱した。
イ 会議の開催状況
 平成17年度においては,平成17年6月8日から6月17日までの間に,全国9都市(札幌仙台,東京,名古屋,大阪,広島,高松,福岡及び那覇)において,独占禁止政策協力委員会議を開催した。
(2) その他の制度
 公正取引委員会は,独占禁止政策協力委員制度のほか,消費者モニター制度,下請取引改善協力委員制度,独占禁止法相談ネットワーク制度等を通じて,消費者,事業者等に対して公正取引委員会の活動状況等について広報を行うとともに,意見・要望等を聴取し,施策の実施の参考としている。
 平成17年度から,消費者取引の適正化をより一層進めていくため,新たに消費者取引適正化推進員制度を設置した。
2 各種懇談会等の実施
(1) 独占禁止懇話会
 平成17年度においては,独占禁止懇話会を3回開催した。
(2) 地方有識者との懇談会
ア 概要
 地方有識者と公正取引委員会の委員長又は委員等との懇談及び講演会を通して,競争政策についてより一層の理解を求めるとともに,幅広い意見,要望を把握し,今後の競争政策の有効かつ適切な推進を図るため,昭和47年度以降,毎年,全国各地において開催している。
イ 開催状況
 平成17年度においては,平成17年10月6日,7日,27日及び28日に,全国8都市(帯広,福島,横浜,静岡,福井,松江,高松及び福岡)において,公正取引委員会の最近の活動状況等について,各地の主要経済団体,消費者団体の代表者等の有識者と公正取引委員会委員との意見交換を行った。
 なお,このほか,全国各地区において,地方事務所長等の事務総局職員と有識者との懇談会も随時開催した。
(3) その他
 日本経済団体連合会,日本商工会議所等の経済団体との懇談会を開催したほか,全国各地区の消費者団体の代表との意見交換を随時開催した。
 また,入札談合防止のため,全国各地において発注官庁等の連絡担当者との間で会議を開催したほか,地方自治体等の発注担当者の研修会等に講師を派遣した。
 さらに,下請法・景品表示法の適正運用を図るため,地区ごとに都道府県担当者との間で連絡会議を開催し,意見交換を行った。

第3 学校教育等を通じた普及

1 大学教育
 大学からの要請を受けて,独占禁止法等の講義に講師を派遣して,最近の公正取引委員会の取組状況等について講義を行った。
2 中学校での教育
 中学校からの要請を受けて,中学校に講師を派遣して競争の役割等について授業を行った。また,「わたしたちの暮らしと市場経済」(中学生向けの副教材)を作成し,中学校に配布した。さらに,小・中学生の職場見学に対応した。

第4 独占禁止法及び関係法令に関する相談等

 事業者,事業者団体,一般消費者等から寄せられる独占禁止法,下請法,景品表示法等に関する質問に対しては,文書又は口頭により回答している。また,ホームページ上でも意見等の受付(https://www.jftc.go.jp/goiken/input.html)を行っている。
 また,平成12年度から申告の処理に関する疑問,苦情等の申出を受け付けるため,官房総務課(地方事務所・支所においては総務課,沖縄総合事務局公正取引室においては総務係)に申出受付窓口を設置しており,平成17年度においても公正取引委員会が指名する委員等をもって構成する審理会において,当該処理が適正であったかどうか点検した。

第5 事業活動に関する相談状況

1 概要
 公正取引委員会は,従来から,独占禁止法,下請法及び景品表示法違反行為の未然防止を図るため,事業者及び事業者団体が実施しようとする具体的な活動に関する相談に対応し,独占禁止法,下請法及び景品表示法の考え方の説明を行っている。
2 事前相談制度
 公正取引委員会は,従来から,事業者等からの書面による事前相談に対して書面により回答する事前相談制度を実施してきたが,相談制度の一層の充実を図るため,これを整備し,平成13年10月から当委員会が所管する法律(独占禁止法,下請法及び景品表示法)について,「事業者等の活動に係る事前相談制度」として実施してきている。
 本制度は,事業者及び事業者団体が実施しようとする具体的な行為が,前記法律の規定に照らして問題が無いかどうかの相談に応じ,原則として,事前相談申出書を受領してから30日以内に書面により回答し,その内容を公表するものである。
 なお,平成17年度においては本制度を利用した相談はなかった。
3 独占禁止法に係る相談の概要
 平成17年度において,事業者の活動に関して受け付けた相談件数は2,336件,事業者団体の活動に関して受け付けた相談件数は584件である(第1図参照)。平成17年度は,事業者によるもの,事業者団体によるものいずれの相談も前年に比べ増加している。
 特徴的な内容の相談を挙げると,事業者からの特許等知的財産に関する相談,事業者団体からの会員事業者の取引先に対する要請文書に関する相談やリサイクルシステムの構築に関する相談などがある。
第1図 独占禁止法に係る相談件数の推移(企業結合に関する相談を除く。)
(注)  平成16年度年次報告から,優越的地位の濫用に関する相談についても相談件数に集計することとしたため,平成15年度以前の年次報告とは数値が異なる。
4 下請法に係る相談の概要
 平成17年度に下請法に関して事業者等から受け付けた相談件数は,5,859件である(第2図参照)。
 平成17年度においては,平成16年度に引き続き,下請法の改正内容(情報成果物作成委託及び役務提供委託の追加等)に関係する相談が寄せられた。
第2図 下請法に係る相談件数の推移
5 景品表示法に係る相談の概要
 平成17年度において,景品表示法に関して受け付けた相談件数は21,871件である(第3図参照)。このうち,特徴的な相談を挙げると,有料老人ホームが提供する役務に関する表示の相談,商品の原産国の表示に関する相談,食料品の表示に関する相談,景品類の提供限度額に関する相談等がある。
第3図 景品表示法に係る相談件数の推移
6 独占禁止法相談ネットワークの実施
 公正取引委員会は,独占禁止法(下請法及び景品表示法を含む。)に関する中小事業者からの相談に適切に対応することができるように,商工会議所及び商工会の協力の下,独占禁止法相談ネットワークとして,全国の商工会議所及び商工会が有する中小事業者に対する相談窓口を活用し,独占禁止法に関する相談を受け付けている。また,平成17年度においては,全国の商工会議所及び商工会への相談事例集等の参考資料の配布,相談業務に従事する経営指導員向けの研修会への講師の派遣,中小事業者向けの独占禁止法等講習会の開催,一日相談会への相談員派遣等を行った。

第6 入札談合の防止への取組

 公正取引委員会は,従来から積極的に入札談合の摘発に努めているほか,平成6年7月に「公共的な入札に係る事業者及び事業者団体の活動に関する独占禁止法上の指針」を公表し,入札に係るどのような行為が独占禁止法上問題となるかについて具体例を挙げながら明らかにすることによって,入札談合防止の徹底を図っている。
 また,入札談合の未然防止を徹底するためには,発注者側の取組が極めて重要であるとの観点から,独占禁止法違反の可能性のある行為に関し,発注官庁等から公正取引委員会に対し情報が円滑に提供されるよう,各発注官庁等において,公共入札に関する公正取引委員会との連絡担当官として各省庁の会計課長等が指名されている。
 公正取引委員会は,連絡担当官との連絡・協力体制を一層緊密なものとするため,平成5年度以降,「公共入札に関する公正取引委員会との連絡担当官会議」を開催しており,平成17年度においては,国の本省庁等の連絡担当官会議を11月11日に開催するとともに,国の地方支分部局等の連絡担当官会議を全国9か所で開催した。
 また,公正取引委員会は,平成6年度以降,中央官庁又は地方公共団体が実施する調達担当者等に対する研修会への講師の派遣及び資料の提供等の協力を行うとともに,公団・事業団等の調達担当者に対する研修会を開催している。平成17年度においては,平成15年1月に施行された入札談合等関与行為防止法のより一層の周知と併せ,東京及び大阪等の4か所において公団・事業団等の調達担当者を対象とする研修会を開催するなど,国,地方公共団体,公社・公団等に対して63件の講師の派遣等を行った。

第7 その他の業務

1 政策評価
 公正取引委員会は,行政機関が行う政策の評価に関する法律(平成13年法律第86号)に基づき政策評価を実施しているところである。
 平成17年度には,「独占禁止法違反行為に対する措置(平成16年度)」等合計9件の政策評価を実施・公表した。
表 公正取引委員会が平成17年度において施した政策評価

2 電子政府の実現に向けた取組
 IT化の進展を踏まえて,政府全体で電子政府の実現に向けた取組を行っているところ,公正取引委員会においても,独占禁止法に基づく申請・届出等について,インターネット等を利用したオンライン化を推進し,事業者の負担の軽減及び行政の効率化を図るための取組を行っている。具体的には,平成16年度までに,当委員会の所管する申請・届出等手続,情報公開の開示請求手続及び審判手続等の準司法等手続についてそれぞれオンライン化を実現したところであり,平成17年度には,当該申請・届出等手続のオンライン利用を促進する観点から,申請・届出時の添付書類を省略できるものとするなどの規則改正等を行った。