第3章 審判及び訴訟

第1 審判

 平成17年度における審判件数は,平成16年度から引き継いだもの130件,平成17年度中に審判開始決定を行ったもの20件の合計150件(うち,78件は手続を併合。下表(注)参照。)であり,平成17年度中に,24件(うち,審判審決2件,同意審決8件(いずれも一部の被審人のみに対する同意審決であり,残る被審人については審判手続係属中であるため,係属事件の件数には影響しない。),課徴金の納付を命ずる審決14件)について審決を行った(本章第2,第3及び第4参照)。
 平成17年度末現在において審判手続係属中の事件は,下表の134件である。

係属中の審判事件一覧







(注)  一連番号3〜8事件,11〜44事件,46〜68事件,72〜73事件,97〜98事件,104〜106事件,108〜110・120〜121事件及び124〜162事件は手続を併合している。

第2 審判審決

 平成15年(判)第10号松下電器産業(株)に対する審決(警視庁発注の集中制御式交通信号機等新設工事の入札談合事件)
(1) 被審人
(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が松下電器産業(株)(以下「被審人」という。)ほか5社に対し,独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,被審人がこれを応諾しなかったので,被審人に対し同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,被審人が担当審判官の作成した審決案に対し,独占禁止法第53条の2の2の規定に基づき当委員会に対し直接陳述の申出を行ったので,平成18年2月7日に被審人から陳述聴取を行い,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実の概要及び判断の概要
ア 事実の概要
 被審人ほか5社は,警視庁が指名競争入札の方法により発注する集中制御式交通信号機等新設工事について,遅くとも平成11年4月1日ころ以降,受注機会の均等化及び受注価格の低落防止を図るため,当該工事の委託設計業務等を行った者を受注予定者とすることを基本とした話合いなどにより,共同して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 主要な争点及びそれに対する判断
(ア) 被審人が本件受注調整から途中で離脱したと認められるか否かについて
 5社は,被審人が何らかの離脱に関する発言をするのを聞いたが,被審人は外形上独占禁止法に抵触する行為を控える程度のことであって受注調整から離脱するわけではないと受け取ったと認められ,他の事業者に離脱の意思を明確に認識させるような被審人の意思表示又は行動があったとは認められない。
(イ) 独占禁止法第54条第2項に規定する「特に必要があると認めるとき」の要件への該当性について
 本件のような入札を対象とする不当な取引制限行為は,特定の業界における複数の事業者間で,長期間にわたり,継続的・恒常的に実行されるという性格の行為であること,本件違反行為終了の経緯が公正取引委員会による立入検査を契機とするものであり,自発的なものではないこと,そして,被審人は,本件違反行為以外にも独占禁止法違反行為を行い,当委員会から処分を受けていることから,今後,被審人が本件違反行為と同様の行為を繰り返すおそれがあると認めることができることなどから,「特に必要があると認めるとき」に該当し,排除措置は必要であると認められる。
(4) 法令の適用
 独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
(5) 命じた措置
 被審人は,5社と共同して,遅くとも平成11年4月1日以降行っていた,警視庁が指名競争入札の方法により発注する集中制御式交通信号機等新設工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認しなければならない。
 被審人は,次の事項を警視庁に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底させなければならない。
(ア)  前項に基づいて採った措置
(イ)  今後,前記5社と共同して,警視庁が指名競争入札の方法により発注する前記工事について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行う旨
 被審人は,今後,他の工事業者と共同して,警視庁が競争入札の方法により発注する前記工事について,受注予定者を決定してはならない。
 平成15年(判)第11号松下電器産業(株)に対する審決(警視庁発注の交通弱者感応化等工事の入札談合事件)
(1) 被審人
(2) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が松下電器産業(株)(以下「被審人」という。)ほか7社に対し,独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,被審人がこれを応諾しなかったので,被審人に対し同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,被審人が担当審判官の作成した審決案に対し,独占禁止法第53条の2の2の規定に基づき当委員会に対し直接陳述の申出を行ったので,平成18年2月7日に被審人から陳述聴取を行い,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実の概要及び判断の概要
ア 事実の概要
 被審人ほか7社は,警視庁が指名競争入札の方法により発注する交通弱者感応化等工事について,遅くとも平成14年1月30日ころ以降,受注機会の均等化及び受注価格の低落防止を図るため,受注実績等を勘案して,話合いにより,共同して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようしていた。
イ 主要な争点及びそれに対する判断
(ア) 平成14年1月以降に発注された集中制御式交通信号機物件の市場における競争の存否について
 平成14年1月以降に発注された集中制御式交通信号機物件の市場においては,受注の意思を有する事業者は存在していたのであるから,競争関係があったと認めることができる。そして,被審人を含む集中制御式交通信号機メーカー6社は,競争入札の本旨に反して,事業者間の話合いにより受注予定者を決定していたのであり,集中制御式交通信号機メーカー6社による受注調整行為によって平成14年1月以降に発注された集中制御式交通信号機物件の市場における競争が制限されたということができる。
(イ) 平成14年1月以降に発注された集中制御式交通信号機物件を対象として行われた受注調整に被審人が参加したと認めることができるかについて
 被審人は,集中制御式交通信号機物件を対象とする受注調整が行われた集中制御式交通信号機メーカー6社の各会合において,物件の配分自体に対する発言は意識して控えていたものの,当該受注調整に係る協議に終始立ち会い,被審人に対して受注物件の割当てを行うことに対して異論を唱えないなどの行動をとることによって,黙示に当該受注調整への参加の意思を表示し,もって平成14年1月30日ころまでに,集中制御式交通信号機物件について,他の集中制御式交通信号機メーカー5社とともに,話合いにより受注予定者を決定し,受注予定者以外の者は受注予定者が受注予定者の決めた価格によって受注できるよう協力する旨の合意に至り,当該合意の下に受注調整を行っていたものと認めることが相当である。
(ウ) 平成14年1月以降に発注された集中制御式交通信号機物件,プログラム多段式信号機物件及び付加装置工事を含む物件のそれぞれを対象として行われた受注調整及び平成13年12月以前に発注されたこれらの物件を対象として行われた受注調整を単一の違反行為として評価することの当否について
 平成14年1月以降にプログラム多段式交通信号機物件及び集中制御式交通信号機物件を対象として行われた各受注調整は,平成13年12月以前から付加装置メーカー3社及び京三によって行われ,平成14年1月以降も継続していた違反行為に被審人らの4社が新たに参加し,3つのグループに分かれて分担して全物件の受注調整を行っていた関係にあると認めることができ,平成14年1月以降に発注された付加装置工事を含む物件,プログラム多段式交通信号機物件及び集中制御式交通信号機物件のそれぞれを対象として行われた受注調整及び平成13年12月までに発注されたこれらの物件を対象として行われた受注調整を単一の違反行為として評価することが相当である。
(エ) 独占禁止法第54条第2項に規定する「特に必要があると認めるとき」の要件への該当性について
 本件のような入札を対象とする不当な取引制限行為は,特定の業界における複数の事業者間で,長期間にわたり,継続的・恒常的に実行されるという性格の行為であり,本件違反行為終了の経緯は公正取引委員会による立入検査を契機とするものであり,自発的なものではないこと,また,被審人は,本件違反行為以外にも独占禁止法違反行為を行い,当委員会から処分を受けていることから,今後,被審人が本件違反行為と同様の行為を繰り返すおそれがあると認めることができることなどから,「特に必要があると認めるとき」に該当し,排除措置は必要であると認められる。
(4) 法令の適用
 独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
(5) 命じた措置
 被審人は,7社と共同して,遅くとも平成14年1月30日ころ以降行っていた,警視庁が指名競争入札の方法により発注する交通弱者感応化等工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認しなければならない。
 被審人は,次の事項を警視庁に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底させなければならない。
(ア)  前項に基づいて採った措置
(イ)  今後,前記7社と共同して,警視庁が指名競争入札の方法により発注する前記工事について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行う旨
 被審人は,今後,他の事業者と共同して,警視庁が競争入札の方法により発注する前記工事について,受注予定者を決定してはならない。

第3 同意審決

1 (株)櫛谷組ほか2名に対する審決(新潟市発注の建設工事の入札談合事件)
(1) 事件の経過
 本件は,公正取引委員会が(株)本間組ほか54名,(株)佐藤企業ほか47名,(株)本間組ほか55名に対し,それぞれ,独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,55名,29名,45名がこれを応諾しなかったので,55名,29名及び45名に対し,それぞれ,同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたところ,本年度においてはそれぞれ,(2)のとおり,被審人3名(延べ8名)から,同法第53条の3及び当委員会の審査及び審判に関する規則第81条の規定に基づき同意審決を受ける旨の申出があり,具体的措置に関する計画書が提出されたので,これを精査した結果,適当と認められたことから,その後の審判手続を経ないで審決を行った。
(2) 被審人
ア 平成16年(判)第18号
イ 平成16年(判)第19号
ウ 平成16年(判)第20号
(3) 認定した事実の概要
ア 平成16年(判)第18号
 前記(2)アの表の各被審人は,自社を除く前記(2)アの表及び新潟市の区域において建設業を営む事業者と共同して,遅くとも平成11年4月1日以降,新潟市が制限付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により推進工法又はシールド工法を用いる下水管きょ工事及び汚水管布設工事であって同工法により同工事を行うことができる者のみを入札参加者として発注する下水道推進工事(以下「新潟市発注の特定下水道推進工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 平成16年(判)第19号
 前記(2)イの表の各被審人は,19名,(株)大沢組及び自社を除く前記(2)イの表及び新潟市の区域において建設業を営む事業者と共同して,遅くとも平成11年4月1日以降,新潟市が公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法によりAの等級に格付している者のみを指名して発注する開削工法を用いる下水管きょ工事及び汚水管布設工事(一部推進工法又はシールド工法を用いるものであって,同工法により工事を行うことができる者のみを入札参加者とするものを除く。以下「新潟市発注の特定下水道開削工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
ウ 平成16年(判)第20号
 前記(2)ウの表の各被審人は,11名,(株)堀工務店,(株)大沢組,(株)平工務店及び自社を除く前記(2)ウの表及び新潟市の区域において建設業を営む事業者と共同して,遅くとも平成11年4月1日ころ以降,新潟市が制限付一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法によりAの等級に格付している者(Aの等級に格付している者を代表者とする共同企業体を含む。)のみを入札参加者として発注する建築工事(以下「新潟市発注の特定建築工事」という。)について,受注価格の低落防止等を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(4) 法令の適用
 独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
(5) 命じた措置
 前記(2)の表の各被審人は,前記(3)の行為を取りやめている旨を確認することを取締役会において決議し,そのことを,自社を除く審判開始決定書別紙の表1及び表4(1)(第18号),表1及び表2(第19号),表1,表2及び表4(第20号)記載の事業者に通知しなければならない。
 前記(2)の表の各被審人は,次の事項を新潟市に通知するとともに,自社の従業員に周知徹底しなければならない。
(ア)  前項に基づいて採った措置
(イ)  今後,共同して,新潟市発注の特定下水道推進工事,特定下水道開削工事及び特定建築工事について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活動を行う旨
 前記(2)の表の各被審人は,今後,前記(3)の行為と同様の行為を行ってはならない。

第4 課徴金納付命令審決

1 泰伸建設(株)ほか5名に対する審決(千葉市等発注の土木工事及びほ装工事の入札談合事件)
(1) 事件の経過
 本件は,平成15年10月8日,公正取引委員会が延べ130名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,20名(以下「被審人20名」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,被審人20名に対し,同法第49条第2項の規定に基づき,平成15年12月11日,審判開始決定(35件)を行い,審判官をして審判手続を行わせ,それぞれ,(2)のとおり,被審人6名(8件)について課徴金の納付を命ずる審決を行った(なお,被審人6名(12件)に対する審判は引き続き係属している。)。
(2) 被審人及び納付を命じた課徴金の額

(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 平成14年(勧)第17号(土木工事関係)
 122名(被審人19名を含む。)は,共同して,千葉市及び財団法人千葉市都市整備公社が千葉市内に本店又は主たる営業拠点を置く事業者のみを指名して指名競争入札又は希望型指名競争入札の方法により土木一式工事として発注する設計金額が5000万円以上3億円未満の工事(以下「千葉市等発注の特定土木工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 平成14年(勧)第18号(ほ装工事関係)
 100名(被審人16名を含む。)は,共同して,千葉市及び財団法人千葉市都市整備公社が千葉市内に本店を置く事業者のみを指名して指名競争入札又は希望型指名競争入札の方法によりほ装工事として発注する設計金額が2500万円以上3億円未満の工事(以下「千葉市等発注の特定ほ装工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
ウ 主要な争点及びそれに対する判断
(ア) 契約が変更されて契約金額が増額された場合,その増額分を課徴金の計算の基礎となる売上額に含めるかどうかについて
 課徴金算定対象物件について,各追加工事は,それぞれ,本件違反行為の対象役務である千葉市等発注の特定土木工事に該当する当初工事と一体として発注された工事であると認められるので,追加工事に係る増額分は,課徴金の算定の基礎となる売上額に含まれる。
(イ) 工事に起因する被害補償金として被審人が第三者に対して支払った金額相当分は,売上額から除外されるべきであるか否かについて
 課徴金の算定の基礎である売上額から控除されるのは,特定の割戻しに限られており,被審人が被害補償金として第三者に対して支払った額を売上額から控除することはできない。
(ウ) 被審人が本件違反行為を行ったか否かについて
 本件は,独占禁止法第3条違反行為に係る勧告審決が有効に確定した後に課徴金納付命令が発せられたことに由来する課徴金納付命令審判であるところ,このような審判においては,勧告審決をした公正取引委員会が,被審人に勧告審決の主文に係る違反行為の存在についてこれを争う機会を与えなければならないとする理由は存しないものと解される。
(エ) 特定の物件が課徴金の対象となるか否かについて
 特定の物件は,千葉市等発注の特定土木工事又は特定ほ装工事に該当するところ,本件基本合意に基づいて受注予定者が決定され,具体的に競争制限効果が発生するに至った物件ということが証拠上認定できるのであり,課徴金の算定対象となる。
(4) 関係法条
 独占禁止法第7条の2
2 平成15年(判)第41号積樹道路株式会社に対する審決(警視庁発注の道路標識設置工事の入札談合事件)
(1) 被審人及び納付を命じた課徴金の額

(2) 事件の経過
 本件は,平成15年10月7日,公正取引委員会が45名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,積樹道路(株)(以下「被審人」という。)を含む2名は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,平成15年12月11日,2名に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成17年5月11日,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
 被審人は,他の事業者と共同して,警視庁が指名競争入札又は指名見積り合わせの方法により発注する道路標識設置工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(4) 関係法条
 独占禁止法第7条の2
3 平成16年(判)第5号株式会社水野工務店に対する審決(名古屋市発注の建築工事の入札談合事件)
(1) 被審人及び納付を命じた課徴金の額

(2) 事件の経過
 本件は,平成16年3月26日,公正取引委員会が91名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行つたところ,(株)水野工務店(以下「被審人」という。)を含む2名は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,平成16年5月24日,2名に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせた。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成17年5月19日,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
 被審人は,他の事業者と共同して,名古屋市が公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により住宅都市局においてB,C又はDの等級に格付した者のみを指名して発注する建築工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
(4) 関係法条
 独占禁止法第7条の2
4 平成16年(判)第25号坂本建設株式会社に対する審決(旧清水市等発注の特定土木工事の入札談合事件)
(1) 被審人及び納付を命じた課徴金の額
(2) 事件の経過
 本件は,平成16年9月10日,公正取引委員会が21名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,坂本建設(株)(以下「被審人」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,平成16年11月9日,被審人に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成17年6月21日,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 事実の概要
 被審人は,他の事業者と共同して,旧清水市等が制限付一般競争入札又は指名競争入札の方法によりAの等級に格付している者のみを入札参加者として土木一式工事として発注する工事(以下「旧清水市等発注の特定土木工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 主要な争点及びそれに対する判断
(ア) 被審人に対して下請取引等について条件を出した上で被審人の受注に協力した相指名業者に対しても課徴金の納付が命じられるべきであるかについて
 公正取引委員会は,独占禁止法第7条の2第1項に規定する事実があると認めたので,被審人に対して,課徴金の納付を命じたのであって,そこで,被審人以外の特定の事業者が本案審決の名あて人となっておらず,課徴金納付命令を受けていないとしても,このことは,被審人に対する課徴金に係る判断を左右するものではなく,被審人に係る課徴金審判の審理の対象となるものではない。
(イ) 下請取引に係る金額が被審人に対する課徴金の算定の基礎となる売上額から除外されるべきであるかについて
 課徴金の計算の基礎となる売上額の計算方法は,独占禁止法及び独占禁止法施行令に明確に定められており,本件においては,被審人が,旧清水市等発注の特定土木工事について,実行期間において旧清水市等との間で締結した役務の提供に係る契約により定められた契約金額を合計したものとなるのであって,この金額は,法の定める算定基準とはされていない被審人の現実の利得そのものの大きさ,特定の事業者との間の下請取引の経緯などにより左右されるものではない。
(4) 関係法条
 独占禁止法第7条の2
5 平成15年(判)第24号岡崎管工株式会社に対する審決(広島市水道局発注の特定上水道本管工事の入札談合事件)
(1) 被審人及び納付を命じた課徴金の額
(2) 事件の経過
 本件は,平成15年4月18日,公正取引委員会が岡崎管工(株)に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,岡崎管工(株)(以下「被審人」という。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,平成15年6月13日,被審人に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
 当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成17年9月28日,審決案と同じ内容の審決を行った。
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 事実の概要
 被審人は,他の事業者と共同して,広島市水道局が指名競争入札又は指名見積り合わせの方法により発注する上水道の配水管を設置し,取り替え又は移設する工事及び配水管の付属設備を取り替え又は補修する工事(推進工法を用いる工事及び海底に配水管を設置する工事を除く。以下「広島市水道局発注の特定上水道本管工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 主要な争点及びそれに対する判断
(ア) 実行期間について
 独占禁止法第7条の2の解釈上,違反行為に係る合意から早期に離脱した違反行為者について,実行期間の終期を他の違反行為者と同一に認定すべき根拠はない。
(イ) 課徴金の算定率について
 独占禁止法第7条の2第1項及び第2項の規定は,違反行為に係る事業者の業種と事業規模に応じて課徴金の算定率を一定かつ一律に定めており,違反行為を止めた経緯や公正取引委員会による調査への協力態様は,課徴金の算定率を決定するための要素とはされていない。
(ウ) 被審人が受注した物件のうち12物件が課徴金算定の対象となるかどうかについて
 12物件は,いずれも本件実行期間内に発注された広島市水道局発注の特定上水道本管工事であるから,特段の事情がない限り,本件違反行為に係る基本合意に基づいて受注予定者が決定され,そのことにより具体的に競争制限効果が発生するに至ったものと推定することができる。ただし,1物件については,相指名業者の入札価格を大幅に下回り,発注者による低入札価格調査の対象となっている事実及び相指名業者の入札価格もばらつきが大きい事実も認められるところ,特段の事情があると認めることができ,また,同物件について,本件違反行為に係る基本合意に基づいて受注予定者が決定されたことなどを直接認めるに足りる証拠はないことから課徴金算定の対象にはならない。
(4) 関係法条
 独占禁止法第7条の2
6 日東メーター(株)ほか1名に対する審決(東京都発注の水道メーター入札談合事件)
(1) 事件の経過
 本件は,平成17年2月7日,公正取引委員会が13名に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,日東メーター(株)及び(株)愛北製作所(以下「被審人愛北製作所」という。両者合わせて以下「被審人2名」という。)を含む3名は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,3名に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせ,本年度末までに,被審人2名について課徴金の納付を命ずる審決を行った(なお,残りの被審人1名に対する審判は引き続き係属している。)。
(2) 被審人及び納付を命じた課徴金の額
(3) 認定した事実及び判断の概要
ア 事実の概要
 被審人2名は,他の事業者と共同して,東京都が一般競争入札の方法により発注する乾式直読型の日径13ミリメートル,同20ミリメートル及び同25ミリメートルの水道メーター(2以上の異なる口径の水道メーターが同時に発注されているものを除く。以下「3口径メーター」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
イ 主要な争点及びそれに対する判断(平成17年(判)第8号事件については争いがない。)
 特定の物件が課徴金の対象物件に該当するかどうかについて(平成17年(判)第10号事件)
 本件物件については,本件基本合意に基づいて受注予定者が決定され,被審人愛北製作所は,受注予定者及び同被審人を除く入札参加者16社が,受注予定者が受注できるよう協力している事態を認識していたと認めることができる。また,被審人愛北製作所は,受注予定者が受注予定物件の直前の物件の落札単価に近い単価を用いて入札することを認識した上で,本件物件の直前の物件の落札単価よりわずかに低い単価を用いて入札し落札したものであると認められる。
 したがって,本件物件は,本件基本合意に基づいて,受注予定者が決定され,具体的に競争制限効果が発生するに至った物件ということができるのであり,課徴金の算定対象となる。
(4) 関係法条
 独占禁止法第7条の2

第5 訴訟

1 審決取消請求訴訟
 平成17年度当初において係属中の審決取消請求事件は4件であり,平成17年度中に,新たに(株)横石興業による審決取消請求事件が提起されたが,このうち,最高裁判所に係属中の東京海上日動火災保険(株)ほか13名による審決取消請求事件については,原判決中公正取引委員会敗訴部分を破棄し,請求を棄却する判決が確定したことにより,また,東京高等裁判所に係属中の東燃ゼネラル石油(株)による審決取消請求事件及び(株)横石興業による審決取消請求事件については,請求棄却の判決が確定したことにより,それぞれ終了した。このため,平成17年度末現在係属中の審決取消請求訴訟は2件である。
(1) 東京海上日動火災保険(株)ほか13名による審決取消請求事件
ア 事件の表示
最高裁判所平成14年(行ヒ)第72号
審決取消請求事件
上 告 人(被告)  公正取引委員会
被上告人(原告)  東京海上日動火災保険(株)ほか13名
 審決年月日  平成12年6月2日
 提訴年月日  平成12年7月3日,同月5日止
 原判決年月日  平成13年11月30日(請求一部認容,東京高等裁判所)
 上訴年月日  平成13年12月14日(上告受理申立)
 口頭弁論期日  平成17年7月19日
 判決年月日  平成17年9月13日(原判決破棄,請求棄却)
イ 審決の概要
 東京海上火災保険(株)ほか20名は,日本機械保険連盟(以下「連盟」という。)の会員となっていたところ,連盟は,機械保険及び組立保険(以下「機械保険等」という。)の保険料率に関し,会員が申請すべき認可申請の内容を決定し,会員に一定料率で機械保険等の引受けを行わせることにより,我が国における機械保険等の元受けに係る各取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,東京海上火災保険(株)ほか20名に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,被上告人らが,本件審決には損害保険の経済的実態の認識を誤り,課徴金制度の仕組みと売上額の算定,損害保険制度と損害保険会社の機能及び代理店手数料等について,独占禁止法第8条の3及び同法第7条の2第1項並びに同法施行令第5条及び同令第6条の解釈,運用を誤ったものであり,かつ,被上告人らに対して賦課すべき課徴金の算定を誤ったものであること等を理由として,審決の取消しを求めるものである。
 東京高等裁判所は,審決のうち売上額から支払保険金を控除した場合の課徴金額を超えて課徴金の納付を命じる部分を取り消したため,公正取引委員会は最高裁判所に上告受理申立を行った。
エ 判決の概要
 独占禁止法の課徴金制度は,カルテルの摘発に伴う不利益を増大させてその経済的誘因を小さくし,カルテルの予防効果を強化することを目的として,既存の刑事罰の定めやカルテルによる損害を回復するための損害賠償制度に加えて設けられ,カルテル禁止の実効性確保のための行政上の措置として機動的に発動できるようにしたものである。課徴金額の算定方式は,実行期間の売上額に一定率を乗ずる方式を採っているが,課徴金制度が行政上の措置であるため,算定基準も明確であることが望ましく,制度の積極的かつ効率的な運営により抑止効果を確保するためには算定が容易であることが必要であるため,個々の事案ごとに経済的利益を算定することは適切ではないとして,そのような算定方式が採用され,維持されている。
 企業会計上の概念である売上高は,個別の取引による実現収益として,事業者が取引の相手方から契約に基づいて受け取る対価である代金ないし報酬の合計から費用項目を差し引く前の数値であり,課徴金の額を定めるに当たって用いられる上記「売上額」は,この売上高と同義のものというべきである。
 損害保険契約に基づいて損保会社が提供する役務は,偶然な一定の事故によって生ずる損害を補填するという保険の引受けであるから,損害保険の引受けの対価である営業保険料の合計額が,独占禁止法第8条の3において準用する同法第7条の2の規定の「売上額」であると解するのが相当である。
オ 訴訟手続の経過
 本件判決により終了した。
(2) 土屋企業(株)による審決取消請求事件
ア 事件の表示
最高裁判所 平成16年(行ヒ)第135号
審決取消請求事件
申立人(被告)  公正取引委員会
相手方(原告)  土屋企業(株)
 審決年月日  平成15年6月13日
 提訴年月日  平成15年7月12日
 判決年月日  平成16年2月20日(請求一部認容,東京高等裁判所)   
 上訴年月日  平成16年3月5日(上告受理申立)
イ 審決の概要
 土屋企業(株)を含む町田市内に本店又は主たる事務所を置き同市において建設業を営む69社は,町田市発注の特定土木一式工事について,共同して受注予定者が受注できるようにすることにより,町田市発注の特定土木一式工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,土屋企業(株)に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,相手方が,課徴金の対象となった道路工事のうちの2件については,受注調整を行ったことはなく,これを課徴金の対象とした本件審決には,基礎となる事実についての実質的証拠を欠くか,又は法令違反があるとして,その取消しを求めるものである。
 東京高等裁判所は,審決のうち都市計画道路工事は課徴金の対象となるとはいえないとして,前記工事に係る課徴金の納付を命じる部分を取り消した。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,公正取引委員会の上告受理申立てにより,現在最高裁判所に係属中である。
(3) (株)東芝ほか1名による審決取消請求事件
ア 事件の表示
最高裁判所平成16年(行ヒ)第208号
審決取消請求事件
申立人(被告)  公正取引委員会
相手方(原告)  (株)東芝ほか1名
 審決年月日  平成15年6月27日
 提訴年月日  平成15年7月25日
 判決年月日  平成16年4月23日(請求認容,東京高等裁判所)
 上訴年月日  平成16年5月7日(上告受理申立)
イ 審決の概要
 (株)東芝及び日本電気(株)は,郵政省が一般競争入札の方法により発注した郵便番号自動読取区分機類について,入札執行前に同省の調達事務担当官等から情報の提示を受けた者を受注予定者として決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,同省が一般競争入札の方法により発注する区分機類の取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,(株)東芝及び日本電気(株)に対し,独占禁止法第54条第2項の規定を適用して,かかる行為の取りやめの通知等の措置を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,相手方らが,本件審決は審決の基礎となった事実を証する実質的な証拠を欠いているとして,その取消しを求めるものである。
エ 訴訟手続の経過
 本件は,公正取引委員会の上告受理申立てにより,現在最高裁判所に係属中である。
(4) 東燃ゼネラル石油(株)による審決取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所 平成17年(行ケ)第118号
審決取消請求事件
原告  東燃ゼネラル石油(株)
被告  公正取引委員会
 審決年月日  平成17年2月22日
 提訴年月日  平成17年3月22日
 判決年月日  平成18年2月24日(請求棄却)
 終了年月日  平成18年3月10日(判決確定)
イ 審決の概要
 東燃ゼネラル石油(株)は,他の事業者と共同して,防衛庁調達実施本部が指名競争入札の方法により発注する陸上自衛隊,海上自衛隊及び航空自衛隊の基地等において消費される自動車ガソリン,灯油,軽油,A重油及び航空タービン燃料について,油種ごとに受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,防衛庁調達実施本部の石油製品の油種ごとの取引分野における競争を実質的に制限していた。
 本審決は,東燃ゼネラル石油(株)ほか5名に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,原告が,(1)審査官が主張する事実を認定するに足る実質的証拠が欠如しているにもかかわらずこれを認定している(実質的証拠の不存在),(2)法令の適用においても憲法違反及び独占禁止法等の法令違反を多数含んでいるとして,本件審決のうち,原告に対して課徴金の納付を命じる部分の取消しを求めるものである。
エ 判決の概要
 原告ら12社の担当者は,同社らが前年度の実績並みの受注割合を確保し,価格競争による落札価格の下落を防止し,さらには商議を経た後の予定価格の再算定によって受注価格を引き上げることを意図して,本件配分会議を通じて本件受注調整を行っていたことは明らかであって,独占禁止法第7条の2第1項の「対価に係るもの」に該当する。
 課徴金の算定率については,歴史的経緯の如何に関わらず,本件違反行為当時の業務実態に照らして業種性を認定すべきところ,原告はその時点では本件審決認定のとおり販売油種について自ら製造した上でこれを調達実施本部に販売していたのであるから,一般に卸売業であるとはいえない。また,一般的には事業活動の内容が商品を第三者から購入して販売するものであっても,実質的にみて卸売業又は小売業の機能に属しない他業種の事業活動を行っていると認められる特段の事情があるときには,当該他業種と同視できる事業を行っているものとして業種の認定を行うことが相当である。原告の南西石油の事業に対する関与の実態に照らせば,原告は,航空タービン燃料に係る事業活動の内容において,自らの一部門において製造事業を行っていたものであるから,上記特段の事情が存在し,製造業と認定するのが妥当である。
 課徴金額算定の基礎となる売上額の算定基準について,独占禁止法施行令第6条にいう「著しい差異が生ずる事情がある」かどうかの判断は,独占禁止法施行令第5条の定める引渡基準によった場合の対価の合計額と契約により定められた対価の額の合計額との間に著しい差異が生ずる蓋然性が類型的又は定性的に認められるかどうかを判断して決すれば足りる。本件では著しい差異を生ずる蓋然性が類型的又は定性的に存在するとの被告の判断には相応の合理性が認められるから,契約基準により本件違反行為に係る本件実行期間内の本件石油製品の売上額を算定した被告の判断が,裁量の範囲を超え又は裁量権を濫用したと評価することはできない。
 消費税相当額は,法的性質上,商品の「販売価格」の一部であり,独占禁止法施行令第6条にいう「商品の対価」に含まれている。石油諸税についても,当該製品の価額の一部を構成するものとして社会的に認知されている。そうすると,消費税や石油諸税は,社会通念上も法律上も,商品の「対価」の一部に含まれると解するのが相当である。上記諸税金を売上金額の中から控除すべき合理性は認めることができない。
オ 訴訟手続の経過
 本件判決に対し,原告が上訴しなかったことから,終了した。
(5) (株)横石興業による審決取消請求事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所 平成17年(行ケ)第136号
審決取消請求事件
原告  (株)横石興業
被告  公正取引委員会
 審決年月日  平成17年5月19日
 提訴年月日  平成17年6月15日
 判決年月日  平成18年2月3日(請求棄却)
 終了年月日  平成18年2月17日(判決確定)
イ 審決の概要
 (株)横石興業は,千葉市内に本店を置き,建設業を営む株式会社であるが,千葉市及び財団法人千葉市都市整備公社の発注に係る土木工事について,受注調整の方法により落札の上契約し,もって競争を実質的に制限し,不当な取引制限行為を行っていた。
 本審決は,(株)横石興業に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金の納付を命じたものである。
ウ 事案の概要
 本件は,原告が,(1)原告(被審人)は土木工事について千葉市からBランクに格付けされており,Aランクの業者を中心とする本件違反行為とは無関係である,(2)原告(被審人)は社団法人千葉県建設業協会千葉支部に未加盟であり,受注調整に関する話合い等をしたことはないとして,審決の取消しを求めるものである。
エ 判決の概要
 本件審決においては,原告が本件実行期間に落札し受注した千葉市等発注の特定土木工事4件(本件各工事)の入札状況に係る被告の各事実認定について,その引用証拠によって認定されているが,これらの証拠によってそれらの事実を認定することに経験則違背等不合理な点はないから,上記認定事実は,実質的証拠があり,合理的であるものということができる。本件各工事は,本件基本合意に基づいて受注予定者が決定され,具体的に競争制限効果が発生するに至ったものということができるから,本件各工事が課徴金の算定対象となるとした本件審決の判断は,実質的証拠に基づく正当なものということができる。
オ 訴訟手続の経過
 本件判決に対し,原告が適式な上訴をしなかったことから,終了した。
2 その他の訴訟
 平成17年度当初において係属中の事件は3件であったが,札幌地方裁判所に係属中の住民代位訴訟に係る文書提出命令に対する即時抗告申立事件は,抗告棄却決定の確定により終了し,また,東京地裁に係属中の独占禁止法第69条に基づく閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件2件は,訴え一部却下,その余の請求認容の判決があり,当事者双方が控訴した。
 平成17年度中に,新たに,独占禁止法第69条に基づく閲覧謄写申請許可処分取消請求事件が1件,情報公開法に基づく行政文書不開示処分等取消請求事件が2件,それぞれ東京地方裁判所に提起され,また,課徴金返還に関する還付加算金請求事件が1件,札幌地方裁判所に提起された。このため,平成17年度末現在係属中の審決取消請求訴訟以外の訴訟は6件である。
(1) 平成10年(判)第2号審判事件記録に係る閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成15年(行ウ)第152号(A事件)
東京地方裁判所平成16年(行ウ)第475号(B事件)
閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件
原告  株式会社函館新聞社
被告  公正取引委員会
 提訴年月日  平成15年3月10日,平成16年11月5日
 判決年月日  平成18年2月23日(訴え一部却下,その余の請求認容)   
 控訴年月日  平成18年3月3日(原告),平成18年3月10日(被告)
イ 事案の概要
 本件は,原告が独占禁止法第69条に基づいて行った平成10年(判)第2号(株)北海道新聞社に対する審判事件に係る事件記録全部の閲覧謄写申請に対し,被告が本審判事件の事件記録のうち一部を除いて閲覧謄写を不許可とする旨の処分(第1処分)をしたところ,原告が当該処分の取消しを求めたものである(A事件)。また,被告が第1処分の内容を見直し,これを変更する処分(第2処分)をしたところ,原告が当該処分についても取消しを求めた(B事件)。
ウ 判決の概要
 本件第2処分は,それによって新たに閲覧謄写を許可された部分についてのみ法的効果を及ぼす受益的な性質を有する処分であるから,同処分を受けた原告は,同処分についてその救済を求める訴えの利益はなく,専ら当初の処分(本件第1処分)の取消しを求めることをもって足りる。原告は,本件第2処分が行われた後も,なお,本件第1処分の取消しを求めるべきであって,B事件に係る訴えは不適法である。さらに,A事件に係る訴えのうち,本件第1処分において閲覧謄写を不許可とされたが,本件第2処分によって閲覧謄写を許可された部分の取消しを求める部分についても,訴えの利益がない。
 独占禁止法には,事業者の秘密をはじめとする開示が制限される情報について配慮した規定は,審判の公開に関する同法第53条の限度でしかなく,同法自体においては,当該情報に関して,上記以上の保護を予定していると読み取るのは困難である。原告が同法第69条の利害関係人に該当し,本件審判事件で審判が公開されていた本件においては,被告は,原告による事件記録の閲覧謄写請求を拒むことはできない。被告が,同法第69条に基づく事件記録の閲覧謄写請求について,「利害関係人」による請求か否かという点以外に,事件記録上に記載されている情報の性質を根拠として,閲覧謄写を不許可とすることはできない。
エ 訴訟手続の経過
 本件判決に対し,原告及び被告双方はそれぞれ控訴した。
(2) 住民代位訴訟に係る文書提出命令に対する即時抗告申立事件
ア 事件の表示
札幌高等裁判所平成16年(行ス)第1号
文書提出命令に対する即時抗告申立事件
抗告人  国
相手方  札幌市住民2名
 決定年月日  平成16年1月13日
 申立年月日  平成16年1月23日
 決定年月日  平成17年4月18日(抗告棄却)
 
イ 事案の概要
 本件は,北海道上川支庁発注の農業土木工事入札談合事案に対して提起された住民訴訟(基本事件札幌地方裁判所平成12年(行ウ)第29号損害賠請求事件)において,勧告審決の基礎となった北海道職員の供述調書の提出を命じる決定がされたところ,当該決定に対し国(公正取引委員会)から即時抗告を申し立てたものである。
ウ 決定の概要
 本件各文書は,公正取引委員会の職員が本件違反事件についての勧告審決前の調査・審査活動の過程において,北海道職員から任意の事情聴取を行った結果を録取した書面であるところ,本件違反事件について,北海道職員のうちの誰がどのような経緯で事情聴取に応じてどのような供述をしたかということは公正取引委員会の職員が職務上知った非公知の事実であり,一般的には秘密として保護するに値するものというべきであるから,本件各文書は民事訴訟法第220条第4号ロに規定する「公務員の職務上の秘密に関する文書」に当たる。
 本件は,もともと独占禁止法の規定によって本案訴訟の当事者に開示された可能性がないとはいえない文書を,住民訴訟という地方公共の利益を図るための特殊な訴訟の証拠として用いるべくその文書提出命令が申し立てられたものであることから,本件各文書の提出により今後の公正取引委員会の調査・審査活動に協力することを拒否又は躊躇する者が現れるなどして公務の遂行に支障を生じるおそれがあるといえるとしても,その支障が「著しい支障」であるとまで評価することはできない。
 本件各文書が作成された当時,本件違反事件について審判開始に至ることがあり得ない状況であったとか,審判が開始されても非公開となる見込みがあったとか,あるいは審判手続に本件各文書が証拠として提出されることがおよそ予定されていなかったとかの特段の事情のない限り,本件各文書は,一定の場合には独占禁止法の規定に基づいて公開の場で取り調べられたり利害関係人に開示されたりされ得るとの前提の下に作成されたとみるべきである。本件各文書の開示が文書提出命令の手続でなされるとしても,北海道職員が本件各文書の開示・非開示に関して有する正当な期待を裏切るものということはできないし,まして本件各文書の提出により国民の公正取引委員会の専門的判断に寄せる信頼が失墜するおそれがあるなどとは到底認められない。
エ 訴訟手続の経過
 本件決定に対し,抗告人が上訴しなかったことから,終了した。
(3) 平成15年(判)第39号審判事件記録に係る閲覧謄写申請許可処分取消請求事件
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成17年(行ウ)第241号
閲覧謄写申請許可処分取消請求事件
原告  株式会社第一興商
被告  国(処分行政庁 公正取引委員会)
 提訴年月日 平成17年6月1日
イ 事案の概要
 本件は,利害関係人が独占禁止法第69条に基づいて行った平成15年(判)第39号(株)第一興商に対する審判事件に係る事件記録の閲覧謄写申請に対し,被告が本審判事件の事件記録のうち一部を除いて閲覧謄写を許可する旨の処分をしたところ,原告が当該処分の取消しを求めたものである。なお,原告は,行政事件訴訟法第25条第2項本文に基づく行政処分の執行停止を2度にわたり申し立て,東京地裁により,本件文書の一部につき,本件第一審判決の言渡しの日から3週間を経過する日まで本件処分の効力が停止されている。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,現在,東京地方裁判所に係属中である。
(4) 情報公開法に基づく行政文書不開示処分取消請求事件
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成17年(行ウ)第342号
裁決取消請求事件
原告  X
被告  国(処分行政庁 公正取引委員会委員長)
 提訴年月日 平成17年8月8日
東京地方裁判所平成17年(行ウ)第491号
追加的併合申立事件
原告  X
被告  国(処分行政庁 公正取引委員会事務総局審査局長)
 提訴年月日 平成17年10月28日
イ 事案の概要
 本件は,原告が公正取引委員会事務総局審査局長に対し行った行政文書開示請求につき,不開示決定がなされ,これを不服として公正取引委員会委員長に対し不開示決定処分の取消しを求める審査請求を行ったところ,情報公開審査会の答申を経て,上記審査請求を棄却する旨の裁決がなされたことから,当該棄却裁決の取消しを求めるものである。
 第1回口頭弁論の後,審査局長の行った行政文書不開示決定についても原告が取消訴訟を提起したため,行政事件訴訟法第19条の規定に基づき,裁決取消請求事件に併合された。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,現在,東京地方裁判所に係属中である。
(5) 課徴金返還に関する還付加算金請求事件
ア 事件の表示
札幌地方裁判所平成17年(行ウ)第17号
還付加算金請求事件
原告  協業組合カンセイ
被告  国
 提訴年月日 平成17年9月29日
イ 事案の概要
 本件は,原告が審決取消請求事件において勝訴し,判決が確定したことから,公正取引委員会が取消部分に係る金額を返還したところ,原告は,課徴金徴収について国税徴収の例によりながら,課徴金還付については国税の還付加算金に相当する規定を欠いているのは国権の作用として著しく正義公平の観点から妥当性を欠くものであり,課徴金還付については国税通則法の規定を類推適用し処理すべきであるとして,被告に対し,課徴金納付の日の翌日から還付を受けた日までの間の還付加算金の支払を求めるものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,現在,札幌地方裁判所に係属中である。
3 独占禁止法第24条(差止請求権)に基づく差止請求事件
 平成17年度当初において係属中の独占禁止法第24条に基づく差止請求事件は22件であったが,同年度中に2件の訴えが提起され,そのうち,和解をしたものが4件,判決が出たものが16件(うち4件は係属中)あり,判決はいずれも請求棄却となっている。平成17年度末において係属中の事件は8件である。


4 独占禁止法第25条(無過失損害賠償責任)に基づく損害賠償請求事件
 平成17年度当初において独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求事件は4件であったが,平成17年度中に1件が和解成立により,1件については判決が確定したことにより終了し,同年度中に新たに5件が提起され,平成17年度末現在において7件が係属中である。
(1) (株)北海道新聞社による(株)函館新聞社の事業活動排除事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成14年(ワ)第4号
損害賠償請求事件
原告  (株)函館新聞社
被告  (株)北海道新聞社
 提訴年月日 平成14年12月27日  
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,(株)北海道新聞社(以下「北海道新聞社」という。)が函館対策と称する一連の行為によって(株)函館新聞社(以下「函館新聞社」という。)の事業活動を排除した行為について,平成10年2月5日,勧告を行ったところ,北海道新聞社がこれを応諾しなかったことから審判開始決定を行い,審判官をして審判を行わせていたところ,同意審決を受ける旨の申出があり,かつ,具体的措置に関する計画書が提出されたので,平成12年2月28日,北海道新聞社に対し当該行為の排除等を命ずる同意審決を行った。その後,平成14年12月27日,函館新聞社は,北海道新聞社に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成15年1月7日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成15年7月3日,意見書を提出した。
 平成17年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。
(2) 福島県内の官公庁等発注航空写真測量業務入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成15年(ワ)第1号
損害賠償請求事件
原告  福島県
被告  (株)パスコほか7名
 提訴年月日  平成15年3月31日
 判決年月日  平成17年12月20日(和解)
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,福島県内の官公庁等発注の航空写真測量業務の入札談合について,平成13年6月19日,(株)パスコほか7名(以下「パスコほか7名」という。)に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,発注者である福島県は,パスコほか7名及び国際航業(株)に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成15年4月3日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成15年9月19日,意見書を提出した。
 平成17年12月20日に和解が成立し終了した。
(3) 広島市水道局発注の上水道本管工事入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成16年(ワ)第1号
損害賠償請求事件
原告  広島市
被告  岡崎管工(株)ほか25名
 提訴年月日  平成16年2月25日
 判決年月日  平成17年10月28日(22名につき和解,2名につき認諾)
 平成17年12月9日(1名につき認諾)
 平成18年2月17日(1名につき一部認容)
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,広島市水道局発注の上水道本管工事入札談合について,平成13年3月30日,(有)新海設備工業ほか27名に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。また,岡崎管工(株)(以下「岡崎管工」という。)に対しては,審判手続を経て平成14年7月11日審判審決を行った(その後,審決取消請求訴訟が提起され,平成15年7月11日上告受理申立が不受理となり確定)。当該審決確定後,発注者である広島市は,岡崎管工ほか25名に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 判決の概要
 約3億2000万円及び年5分の遅延損害金を支払え。
 損害は,違反行為により形成された現実の落札価格(現実落札価格)から,当該違反行為がなければ形成されたであろう落札価格(想定落札価格)を差し引いた額である。
 違反行為が終了した直後の落札価格が違反行為の影響を受けない自由な競争による価格と認められ,かつ,相当数の落札があり違反行為の直後の落札価格を合理的に算定することができるときは,当該価格形成の前提となる経済条件,市場構造その他の経済的要因等に変動がない限り,その価格をもって想定落札価格と推認することが合理的である。
 本件では,各違反行為が終了した直後の落札価格(各契約の設計価格に違反行為終了後の平均落札率86.2%を乗じた額)を想定落札価格とすることが適当である。
エ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成16年3月3日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成16年5月19日,意見書を提出した。
 平成17年10月28日に被告22名につき和解が成立,被告2名につき請求の認諾,平成17年12月9日に被告1名につき請求の認諾,平成18年2月17日に被告1名につき一部認容の判決が出た後,上訴期間の経過により終了した。
(4) 町田市発注の土木一式工事等入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成16年(ワ)第2号
損害賠償請求事件
原告  町田市
被告  亜東コンスト(株)ほか51名
 提訴年月日  平成16年7月20日
 判決年月日  平成17年10月7日(37名につき和解)
 平成17年11月29日(1名につき取下げ)
 平成18年1月18日(1名につき和解)
 平成18年1月27日(12名につき一部認容)
 なお,残り1名については破産により取扱い未定となっている。
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,町田市発注の土木一式工事等入札談合について,平成13年2月9日,(株)朝見工務店ほか68名に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,発注者である町田市は,亜東コンスト(株)ほか51名に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 判決の概要
 契約金額の5%の金員を支払え。
 違反行為がなければ存在したであろう落札価格(想定落札価格)を推定し,これを現実の落札価格から差し引くことにより損害額を算定する考え方自体は不合理なものではない。
 しかしながら,本件においては,原告の主張する落札率の差が本件違反行為が行われなくなったことのみによるものかどうかについて,これを判断すべき的確な資料がないから,当該差をもって直ちに損害額算定の基礎とすることはできない。
 損害の性質上その額を立証することが極めて困難であると認められることから,民事訴訟法第248条を適用し,裁判所が相当な損害額を認定するのが相当である。
エ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成16年8月12日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,当委員会は,平成16年11月1日,意見書を提出した。
 平成17年10月7日に被告37名につき和解が成立,平成17年11月29日に被告1名につき訴えの取下げ,平成18年1月18日に被告1名につき和解が成立,平成18年1月27日に被告11名につき判決が出た後,上訴期間の経過により終了した。なお,平成18年1月27日に一部認容の判決が出た12名のうち1名につき判決書の未送達により,残り1名につき破産により,取扱い未定となっている。
(5) 奈良県所在の茶筅製造販売業者による原産国不当表示事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成17年(ワ)第2号及び第3号
損害賠償請求事件
原告  奈良県高山茶筌生産協同組合
被告  (株)中田喜造商店及び高山堂こと藤井編利
 提訴年月日 平成17年4月20日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,奈良県所在の茶筅製造販売業者による原産国不当表示事件について,平成14年4月25日(株)中田喜造商店(以下「中田喜造商店」という。)ほか2名に対し排除命令を行った。当該審決確定後,奈良県高山茶筌生産協同組合は,中田喜造商店及び高山堂こと藤井編利に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成17年5月2日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされた。
 平成17年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。
(6) インテルによるCPU私的独占事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成17年(ワ)第4号
損害賠償請求事件
原告  日本エイ・エム・ディ(株)
被告  インテル(株)
 提訴年月日 平成17年6月30日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,インテル(株)(以下「インテル」という。)によるCPU(パーソナルコンピュータに搭載するx86系セントラル・プロセッシング・ユニットをいう。)の私的独占事件について,平成17年4月13日,インテルに対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,日本エイ・エム・ディ(株)は,インテルに対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成17年7月6日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされた。
 平成17年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。
(7) 警視庁発注の道路標識設置工事等入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成17年(ワ)第6号
損害賠償請求事件
原告  東京都
被告  アトムテクノス(株)ほか27名
 提訴年月日  平成17年10月28日
 判決年月日  平成18年3月7日(2名につき認諾)
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,警視庁発注の道路標識設置工事等の入札談合について,平成14年7月30日,信号器材(株)ほか55名等に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,発注者である東京都は,アトムテクノス(株)ほか27名に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成17年11月4日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされた。
 平成17年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。
(8) 警視庁発注のプログラム多段式交通信号機新設等工事等入札談合事件
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成18年(ワ)第1号
損害賠償請求事件
原告  東京都
被告  (株)工業社ほか3名
 提訴年月日 平成18年2月3日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,警視庁発注のプログラム多段式交通信号機新設等工事等の入札談合について,平成15年3月28日,(株)京三製作所ほか13名等に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,発注者である東京都は,(株)工業社ほか3名に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,東京高等裁判所から,平成18年2月7日,独占禁止法第84条第1項に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされた。
 平成17年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。
5 その他の独占禁止法関係の損害賠償請求事件等
(1) 米軍厚木基地における入札談合事件に係る民法第709条及び第719条訴訟
ア 事件の表示
東京高等裁判所平成14年(ネ)第4622号
損害賠償請求事件
控訴人(本訴原告)  アメリカ合衆国
被控訴人(本訴被告)  (株)アタラシほか25名
 提訴年月日  平成6年9月16日
 判決年月日  平成14年7月15日(請求棄却,東京地方裁判所)
 控訴年月日  平成14年8月2日
イ 事案の概要
 本件は,米国海軍航空施設(厚木基地)における建設工事等を競争入札により発注しているアメリカ合衆国の厚木駐在建設事務官が,競争入札に参加する厚木建設部会会員73名の昭和59年から平成2年にかけての談合行為により損害を被ったとして損害賠償を求める「通告書」を送付したが,これに応じなかった(株)アタラシほか25名(訴訟提起当初は荒澤建設(株)ほか52名)に対して,民法第709条及び第719条の規定に基づき損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起し,同裁判所が原告の請求を棄却する判決を言い渡したところ,平成14年8月2日控訴したものである。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成17年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。
(2) 高槻市発注上水道工事入札談合事件に係る民法第709条訴訟
ア 事件の表示
大阪地方裁判所平成14年(ワ)第3005号
損害賠償請求事件
原告  高槻市
被告  (有)アーサーほか26名
 提訴年月日  平成14年3月28日
 判決年月日  平成18年2月22日(一部認容)
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,高槻市水道部発注の上水道本管工事の入札談合について,平成13年11月7日,(有)アーサーほか26名(以下「アーサーほか26名」という。)に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である高槻市は,被審人であるアーサーほか26名に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を大阪地方裁判所に提起し,平成18年2月22日下に同裁判所が原告の請求を一部認容する判決を言い渡した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,上訴期間の経過により終了した。
(3) (株)北海道新聞社による(株)函館新聞社の参入妨害事件に係る民法第709条訴訟
ア 事件の表示
東京地方裁判所平成14年(ワ)第8915号
損害賠償請求事件
原告  (株)函館新聞社
被告  (株)北海道新聞社
 提訴年月日 平成14年4月26日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,(株)北海道新聞社(以下「北海道新聞社」という。)が函館対策と称する一連の行為によって(株)函館新聞社(以下「函館新聞社」という。)の事業活動を排除した行為について,平成12年2月28日,北海道新聞社に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。その後,平成14年4月26日,函館新聞社は,北海道新聞社に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成17年度末現在,東京地方裁判所に係属中である。
(4) 宮城県内の官公庁等発注航空写真測量業務入札談合事件に係る民法第709条訴訟
ア 事件の表示
仙台地方裁判所平成15年(ワ)第365号
損害賠償請求事件
原告  宮城県
被告  アジア航測(株)ほか7名
 提訴年月日  平成15年3月27日
 判決年月日  平成17年7月11日(和解)
     
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,宮城県内の官公庁等発注の航空写真測量業務について,平成13年6月19日,(株)パスコほか6名(以下「パスコほか6名」という。)に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である宮城県は,パスコほか6名及び国際航業(株)に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を仙台地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成17年7月11日,和解が成立し終了した。
(5) 宮城県内の官公庁等発注航空写真測量業務入札談合事件に係る民法第709条訴訟
ア 事件の表示
仙台地方裁判所平成15年(ワ)第361号
損害賠償請求事件
原告  仙台市
被告  (株)パスコほか7名
 提訴年月日  平成15年3月27日
 判決年月日  平成17年10月26日(和解)
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,宮城県内の官公庁等発注の航空写真測量業務について,平成13年6月19日,(株)パスコほか6名(以下「パスコほか6名」という。)に対し当該行為の排除等を命ずる審決を行った。当該審決確定後,発注者である仙台市は,パスコほか6名及び国際航業(株)に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を仙台地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成17年10月26日,和解が成立し終了した。
(6) 北海道上川支庁発注の農業土木工事等の入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
札幌地方裁判所平成12年(行ウ)第29号
損害賠償請求事件
原告  北海道住民2名
被告  北海道知事ほか6名
 提訴年月日 平成12年12月14日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,北海道上川支庁発注の農業土木工事等の入札談合について,平成12年6月16日,旭川市等所在の農業土木工事業者等に対し当該行為の排除等を命じる審決を行った。当該審決が確定した後,札幌市内の住民は,当該農業土木工事業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,北海道に代位して損害賠償を求める住民訴訟を札幌地方裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過
 本件については,平成17年度末現在,札幌地方裁判所に係属中である。
(7) 地方自治体発注のごみ焼却施設建設の入札談合に係る住民訴訟
ア 事件の表示
(ア)  福島地方裁判所平成11年(行ウ)第3号
 支出命令差止等請求事件
 原告 いわき市住民6名
 被告 いわき市長ほか4名
   提訴年月日 平成11年4月21日
(イ)  東京高等裁判所平成18年(行コ)第12号
 損害賠償請求事件
 控訴人(本訴被告)  JFEエンジニアリング(株)
(旧商号 日本鋼管(株))
 被控訴人(本訴原告) 上尾市住民2名
  提訴年月日 平成12年1月26日
  判決年月日 平成17年11月30日(一部認容,さいたま地方裁判所)
  控訴年月日 平成17年12月13日
(ウ)  大阪高等裁判所平成17年(行コ)第91号
 公金不正支出差止等請求事件
 控訴人(本訴被告)京都市長及び川崎重工業(株)
  被控訴人(本訴原告) 京都市住民774名
  提訴年月日 平成12年2月10日(京都地方裁判所平成12年(行ウ)第3号)
  提訴年月日 平成12年3月17日(京都地方裁判所平成12年(行ウ)第7号)
  判決年月日 平成17年8月31日(一部認容,京都地方裁判所)
  控訴年月日 平成17年9月13日
(エ)  東京地方裁判所平成12年(行ウ)第185号
 損害賠償請求事件
 原告 東京都住民3名
 被告 (株)タクマほか4名
  提訴年月日 平成12年7月14日
(オ)  大阪地方裁判所平成12年(行ウ)第67号
 損害賠償請求事件
 原告 大阪市住民3名
 被告 日立造船(株)
  提訴年月日 平成12年7月13日
(カ)  神戸地方裁判所平成12年(行ウ)第30号
 損害賠償請求事件
 原告 神戸市住民7名
 被告 川崎重工業(株)
  提訴年月日 平成12年7月19日
(キ)  横浜地方裁判所平成12年(行ウ)第34号
 損害賠償請求事件
 原告 横浜市住民10名
 被告 三菱重工業(株)ほか2名
  提訴年月日 平成12年7月21日
(ク)  神戸地方裁判所平成12年(行ウ)第32号,第33号,第52号
 損害賠償請求事件
 原告 尼崎市住民3名
 被告 三菱重工業(株)ほか4名
  提訴年月日 平成12年7月28日(平成12年(行ウ)第32号,第33号)
  提訴年月日 平成12年12月27日(平成12年(行ウ)第52号)
  訴え取下げ 平成17年6月3日(平成12年(行ウ)第32号,第33号)
(ケ)  福岡地方裁判所平成12年(行ウ)第27号
 損害賠償請求事件
 原告 福岡市住民12名
 被告 福岡市長ほか5名
  提訴年月日 平成12年8月3日
(コ)  東京地方裁判所平成12年(行ウ)第203号
 損害賠償請求事件
 原告 町田市住民1名
 被告 多摩ニュータウン環境組合及び日立造船(株)
  提訴年月日 平成12年8月4日
(サ)  鳥取地方裁判所平成12年(行ウ)第2号
 損害賠償請求事件
 原告 米子市住民3名
 被告 米子市長及び日本鋼管(株)
  提訴年月日 平成12年8月9日
(シ)  新潟地方裁判所平成12年(行ウ)第13号
 損害賠償請求事件
 原告 豊栄市住民12名
 被告 豊栄郷清掃施設処理組合管理者及び日立造船(株)
  提訴年月日 平成12年10月6日
(ス)  東京高等裁判所平成17年(行コ)第223号
 損害賠償請求事件
 控訴人(本訴原告) 熱海市住民1名
 被控訴人(本訴被告)  JFEエンジニアリング(株)ほか6名
           (旧商号日本鋼管(株))
  提訴年月日 平成12年10月20日
  判決年月日 平成13年6月28日(訴え却下,静岡地方裁判所)
  控訴年月日 平成13年7月11日
  判決年月日 平成14年2月20日(控訴棄却,東京高等裁判所)
  上告年月日 平成14年3月6日
  判決年月日 平成14年11月12日(第1審へ差戻し,最高裁判所)
  判決年月日 平成17年7月29日(請求棄却,静岡地方裁判所)
  控訴年月日 平成17年8月3日
イ 事案の概要
 公正取引委員会は,地方公共団体発注のごみ焼却施設の建設工事に係る入札談合について,平成11年8月13日,日立造船(株)ほか4名に対し,勧告を行ったところ,これを応諾しなかったため,同年9月8日,審判手続の開始を請求し,平成17年度末現在係属中である。
 前記原告住民らは,前記被告らに対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,各地方自治体に代位して損害賠償を求める住民訴訟を前記各裁判所に提起した。
ウ 訴訟手続の経過及び判決の概要
 前記(イ),(ウ)及び(ス)については,平成17年度中に判決があったが,いずれも控訴され,平成17年度末現在,各裁判所に係属中である。
 各判決の概要は以下のとおりである。
(イ) 上尾市発注のごみ処理設備建設工事に係る住民訴訟
 埼玉県上尾市の住民である原告らが,上尾市が被告(JFEエンジニアリング(株))との間で締結したごみ焼却炉建設工事請負契約は,被告を含む入札参加業者らが談合した結果,被告が応札して締結されたものであり,これにより上尾市が損害を被ったとして,旧地方自治法第242条の2第1項第4号(住民代位訴訟)に基づき,被告に対して,損害賠償金等を上尾市に支払うよう求めて平成12年1月26日に提訴したもの。
 判決では,訴えの一部を認容し,被告が上尾市に対し,本件ごみ処理設備工事請負金額(177億1600万円)の5%に相当する8億8580万円及び年5分の割合による金員を支払うことが命じられた。
(ウ) 京都市発注のごみ処理設備建設工事に係る住民訴訟
 京都市の住民である原告らが,京都市が発注したごみ処理設備建設工事の請負契約の一般競争入札において,被告(川崎重工(株))が違法な談合を行った結果,京都市が損害を被ったとして,旧地方自治法第242条の2第1項第4号(住民代位訴訟)に基づき,被告に対して,損害賠償金等を京都市に支払うよう求めて平成12年2月10日及び同年3月17日に提訴したもの。
 判決では,訴えの一部を認容し,被告が京都市に対し,本件ごみ処理設備工事請負金額(228億9000万円)の5%に相当する11億4450万円及び年5分の割合による金員を支払うことが命じられた。
(ス) 熱海市発注のごみ処理設備建設工事に係る住民訴訟
 熱海市の住民である原告が,熱海市が発注した清掃工場建設工事の指名競争入札において,各種機械の設計施工等の事業を営む会社である被告ら(JFEエンジニアリング(株)ほか6名)が談合を行った結果,熱海市が損害を被ったとして,旧地方自治法第242条の2第1項第4号(住民代位訴訟)に基づき,被告に対して,損害賠償金等を熱海市に支払うよう求めて平成12年10月20日に同裁判所平成12年(行ウ)第22号として提起した事件の差戻審である(差戻前の第1審は,監査請求期間の徒過を理由に却下判決をしたが,上告審判決は,本件監査請求に旧地方自治法第242条第2項本文の規定が適用されないと判示してこれを取り消し,第1審に事件を差し戻した。)。
 判決では,熱海市において,収集済みの資料及び将来収集が見込まれる資料の有無,内容等を踏まえて,被告らの談合の事実や故意・過失等について相当の確実性をもって見込まれる場合でない限りは,熱海市長が,公正取引委員会の審決又はその確定を待って被告らに対する法的措置を決すると判断することにも合理性が認められる,また,立証に関する困難性及びリスクを考慮すると,熱海市長において,不法行為に基づく損害賠償請求権の行使を差し控えていることは,市長としての合理的裁量の範囲内に属するものと認められるから,本件工事について熱海市長が原告主張の不法行為に基づく損害賠償請求権を行使しないことをもって,財産の管理を違法に怠っていると認めることはできない等としている。