5 平成16年(判)第6号犬飼建設(株)に対する審決(名古屋市発注の建築工事の入札
 談合事件)
 (1) 被審人及び納付を命じた課徴金の額
   

 (2) 事件の経過
    本件は,平成16年3月26日,公正取引委員会が91社に対し独占禁止法第48条の2第1
     項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,犬飼建設(株)(以下「被審人」とい
   う。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,平成16年5月24日,被審人
    に対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続
     を行わせたものである。
       当委員会は,被審人が担当審判官の作成した審決案に対し,異議の申立てを行ったの
     で,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
  (3) 認定した事実及び判断の概要
    ア  事実の概要
        被審人は,他の事業者と共同して,名古屋市が公募型指名競争入札又は指名競争入
      札の方法により住宅都市局においてB,C又はDの等級に格付した者のみを指名して
      発注する建築工事(以下「名古屋市発注の建築工事」という。)について,発注予定
      者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
    イ 主要な争点及びそれに対する判断
     (ア) 本件被審人の動告応諾は公正取引委員会職員の欺もう行為によるもので,錯誤に
    より無効であるか否かについて
     当委員会職員が被審人に対して欺もう行為を行ったことは認められず,被審人の
    勧告の応諾は被審人の自由な意思によるものであり,有効である。
   (イ)  本件勧告審決は適正手続に違反する調査手続によるもので無効であるか否かにつ
        いて
          被審人は,公正取引委員会職員が本件調査過程において欺もう行為によって応諾
        させるという手段を用いており,当委員会職員が収集した証拠は証拠能力を有さず,
        本件勧告審決は違法・無効であると主張するが,前記(ア)のとおり欺もう行為は認め
    られず,本件勧告審決は有効である。また,被審人は,本件の摘発はBランク以下
    の業者を狙い撃ちする恣意的・不公正なものであって違法・無効であるとも主張す
    るが,本件課徴金審判において本件摘発の違法性は主張し得ないものと解される上,
    本件摘発が恣意的な判断であると認める根拠は認められない。
     (ウ)  本件2物件が課徴金の対象となるか否かについて
          本件2物件は,本件基本合意に基づいて受注予定者が決定させることによって具
        体的に競争制限効果が発生するに至った物件ということができるのであり,課徴金
        の算定対象となる。
  (4) 関係法条
       独占禁止法第7条の2

6 (株)大建建設に対する審決ほか2件(新潟市発注の特定建築工事の入札談合事件)
  (1)  事件の経過
       本件は,平成17年8月1日,公正取引委員会が(株)大建建設ほか2社(以下「被審人ら」
   という。)に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行った
   ところ,被審人らは,これを不服として審判手続の開始を請求したので,平成17年10月
     5日,被審人らに対し,同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官
     をして審判手続を行わせたものである。
    当委員会は,被審人が担当審判官の作成した審決案に対し,異議の申立てを行ったの
     で,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
 (2) 被審人及び納付を命じた課徴金の額
   

 (3) 認定した事実及び判断の概要
    ア 事実の概要
    被審人らは,他の事業者と共同して,新潟市が制限付一般競争入札,公募型指名競
   争入札又は指名競争入札の方法によりAの等級に格付している者(Aの等級に格付し
   ている者を代表者とする共同企業体を含む。)のみを入札参加者として発注する建築工
   事(以下「新潟市発注の特定建築工事」という。)について,受注価格の低落防止等
   を図るため,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
  イ 主要な争点及びそれに対する判断
   (ア)  契約金額が変更された場合の変更後の契約金額は,独占禁止法施行令第6条に規
    定する「対価の額」に該当するか否かについて
     課徴金算定の基礎となる売上額は,独占禁止法施行令第6条第1項により「実行
    期間において締結した商品の販売又は役務の提供に係る契約により定められた対価
    の額」と規定されているところ,実行期間中に締結された変更契約によって原契約
    の契約金額が増減された場合には,変更後の金額が前記売上額に該当すると解すべ
    きである。
     (イ) 共同企業体が落札した物件について,共同企業体の構成員である事業者に対し各
    別の課徴金が課されるか否かについて
     本件における違反行為者は,そのいずれもが法人又は個人であるから,違反行為
    者が共同企業体を結成して入札に参加し落札した場合であっても,違反行為者は,
    共同企業体ではなく,その構成員である法人又は個人である。
     また,違反行為者が共同企業体を結成して落札し発注者と契約した場合には,当
    該共同企業体を構成する事業者についての独占禁止法第7条の2第1項が規定する
    「売上額」は,共同企業体の受注金額を当該構成員の出資比率に応じて按分して算
    定することが相当である。
 (4) 関係法条
    独占禁止法第7条の2

7 平成16年(判)第24号(株)唐川商工に対する審決(東京都世田谷区発注の運動場施
 設工事の入札談合事件)

 (1) 事件の経過
    本件は,平成16年9月3日,公正取引委員会が9社に対し独占禁止法第48条の2第1
     項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,(株)唐川商工(以下「被審人」とい
     う。)は,これを不服として審判手続の開始を請求してので,平成16年11月4日,被審人
   に対し同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を
     行わせたものである。
       当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成18年10月2日,審決案と
     同じ内容の審決を行った。
  (2)  被審人及び納付を命じた課徴金の額
   

 (3) 認定した事実及び判断の概要
  ア 事実の概要
    被審人は,他の事業者と共同して,東京都世田谷区(区長が契約権限を委任した者
   を含む。)が希望型指名競争入札又は指名競争入札の方法により運動場施設工事として
      発注する建設工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにし
      ていた。
    イ 主要な争点及びそれに対する判断
     (ア) 本件2物件について,追加工事に係る契約金額が売上額に含まれるか否かについて
       課徴金算定の基礎となる売上額は,独占禁止法施行令第6条第1項により「実行期間
       間において締結した商品の販売又は役務の 提供に係る契約により定められた対価の
       額」と規定されているところ,実行期間中に締結された変更契約によって原契約の契
    約金額が増減された場合には,変更後の金額が前記売上額に該当すると解すべきであ
    きである。
     (イ) 消費税相当額が売上額に含まれるか否かについて
     被審人と東京都世田谷区との間の契約において定められた 請負代金額が独占禁止
    止法施行令第6条第1項にいう「役務の対価」に該当すると解され,これには消費相当
    額が含まれているので,本件課徴金の額の算定の基礎となる売上額には,消費税相当
    額が含まれるものである。
  (4)  関係法条
       独占禁止法第7条の2

8 平成17年(判)第17号TCプロパティーズ(株)に対する審決(新潟市発注の下水道
 推進工事の入札談合事件)

 (1) 被審人及び納付を命じた課徴金の額
   

 (2) 事件の経過
    本件は,平成17年8月1日,公正取引委員会がTCプロパティーズ(株)(以下「被審人」
     という。)に対し,独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行った
     ところ,被審人は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,平成17年10月5
     日,被審人に対し同法第49条第2項の規定基づき審判開始決定を行い,審判官をして審
     判手続を行わせたものである。
       当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成18年12月14日,審決案と
     同じ内容の審決を行った。
 (3) 認定した事実及び判断の概要
  ア  事実の概要 
        被審人は,他の事業者と共同して,新潟市が制限付一般競争入札,公募型指名競争
   入札又は指名競争入札の方法により発注する推進工法又はシールド工法を用いる下水
   管きょ工事及び汚水管布設工事(以下「新潟市発注の下水道推進工事」という。)に
   ついて,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
  イ 主要な争点及びそれに対する判断
   (ア) 被審人が本件違反行為を行ったか否かについて
     被審人従業員の供述を含め,本件証拠によれば,被審人が67社と共同して新潟市
    発注の下水道推進工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよ
    うにしていたことが認定できる。
   (イ) 本件物件が課徴金の対象となるか否かについて
     本件物件は新潟市発注の下水道推進工事に該当し,また,被審人は,本件物件に
    ついて,本件基本合意に基づき,調整役の助言を得て受注予定者に決定され,他の
    入札参加業者の協力を得て,本件物件を受注したものであるから,本件物件は,本
    件基本合意に基づき受注予定者が決定されることによって,具体的に競争制限効果
    が発生するに至った物件ということができるのであり,課徴金の算定対象となる。
 (4) 関係法条
    独占禁止法第7条の2

9 平成16年(判)第12号日鐵運輸(株)に対する審決(北九州市発注の下水道ポンプ工
 事に入札談合事件)

 (1) 被審人及び納付を命じた課徴金の額
   

 (2) 事件の経過
    本件は,平成16年6月22日,公正取引委員会が27社に対し独占禁止法第48条の2第1
     項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,日鐵運輸(株)(以下「被審人」とい
     う。)は,これを不服として審判手続の開始を請求したので平成16年8月31日,被審人に
     対し同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行
     わせたものである。
       当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成18年12月14日,審決案と
     同じ内容の審決を行った。
 (3) 認定した事実及び判断の概要
  ア 事実の概要
        被審人は,他の事業者と共同して,北九州市が指名競争入札の方法により発注する
      下水道の施設(浄化センター,ポンプ場及び低地ポンプ場をいう。)に係る機械器具
      設置工事(北九州市に機械器具設置工事業のほか電気工事業又は電気通信工事業につ
      いても建設業登録をしている者のみを指名して発注する工事,ディーゼルエンジン設
      備に係る工事及び機械器具製造業者のみを指名して発注する工事を除く。以下「北九
      州市発注の下水道ポンプ工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定
      者が受注できるようにしていた。
    イ 主要な争点及びそれに対する判断
     (ア)  本件2物件が本件除外工事である「ディーゼルエンジン設備に係る工事」に該当
        するか否かについて
          本件違反行為の対象役務から除外されている「ディーゼルエンジン設備に係る工
        事」とは,北九州市が「ディーゼルエンジン設備に係る工事」として分類し発注し
        ているディーゼルエンジン本体の修繕又は整備が工事の主たる部分の工事であり,
        エンジン整備を専門とする業者でなければ適切に施工できないと北九州市が判断す
        る工事であるところ,本件2物件は北九州市が「ディーゼルエンジン設備に係る工
        事」として分類して発注したものではない。
    (イ) 本件7物件について実質的に競争があったか否かについて
          北九州市は,発注工事の内容を詳細に検討した上で,過去の工事の実績等に基づ
        いて当該工事の施工に必要な技術力や施工能力の評価を行い,入札参加資格審査時
        の情報等を総合的に考慮して指名業者を選定しているのであるから,北九州市から
        指名された業者には一般的に当該工事について施行能力があると認められ,また,
        本件7物件について,施工能力及び積算能力を有する者が被審人以外に存在しない
        というべき特段の事情が認められないので,競争が存在すると認められる。
     (ウ)  本件7物件は具体的に競争制限効果が発生するに至ったものといえるか否かにつ
        いて
          本件7物件は,被審人が,本件基本合意に基づいて,受注予定者に決定され,各
        指名業者の協力を得て,受注したものであって,基本合意に基づいて受注予定者が
        決定されることによって,具体的に競争制限効果が発生するに至ったものというべ
        きであり,課徴金の算定の対象となる。
 (4) 関係法条
    独占禁止法第7条の2

10 積水樹脂(株)に対する審決(警視庁発注の道路標識設置工事及び溶着式道路標示塗
  装工事の入札談合事件)

 (1) 被審人及び納付を命じた課徴金の額

   

 (2) 事件の経過
    本件は,平成15年10月7日,公正取引委員会が積水樹脂(株)(以下「被審人」という。)
   に対し独占禁止法第48条の2第1項の規定に基づき課徴金納付命令を行ったところ,被
   審人は,これを不服として審判手続の開始を請求したので,平成15年12月11日,被審人
   に対し同法第49条第2項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を
   行わせたものである。
    当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,平成19年2月21日,審決案と
     同じ内容の審決を行った。
 (3) 認定した事実及び判断の概要
  ア 事実の概要
   (ア) 平成15年(判)第40号(道路標識設置工事関係)
         被審人は,他の事業者と共同して,警視庁が指名競争入札又は指名見積り合わせ
    の方法により発注する道路標識設置工事(以下「警視庁発注の道路標識設置工事」
    という.)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
   (イ) 平成15年(判)第42号(溶着式道路標示塗装工事関係)
          被審人は,他の事業者と共同して,警視庁が指名見積り合わせの方法により溶着
        式道路標示塗装委託として発注する工事(以下「警視庁発注の溶着式道路標示塗装
        工事」という。)について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるように
        していた。
  イ 主要な争点及びそれに対する判断
   (ア) 本件合意が存在するか否かについて
     本件証拠によれば,本件係争物件について,指名競争入札等に参加する指名業者
    の間で,本件合意が存在していたことを優に認めることができる。
   (イ) 被審人が本件違反行為に参加していたか否かについて
     被審人の本件違反行為への参加については,被審人社員自らが本件違反行為への
    参加を認める旨の供述を行っているところである。被審人は同人の供述調書の信用
    性を争うが,この調書の信用性はいずれも十分これを認め得るものである。
 (4) 関係法条
    独占禁止法第7条の2


第5 審判手続打切決定
  本年度においては,下表の被審人2社に対し,破産宣告がなされたこと,改正前の破産法
法第282条の規定に基づく破産終結決定がなされたことなどを考慮して,審判手続打切決定が
行われた。
   


第6 訴 訟


 
1 審決取消請求訴訟
 平成18年度当初において係属中の審決取消請求訴訟は,土屋企業(株)による審決取消請求
事件及び(株) 東芝ほか1名による審決取消請求事件の2件であったが, このうち土屋企業
(株)による審決取消請求事件については,最高裁判所が上告不受理を決定したため,公正取
引委員会の審決を一部取り消した原判決が確定したことにより終了した。
 平成18年度中に新たに提訴された事件は,(株)大石組による審決取消請求事件,JFEエン
ジニアリング(株)ほか4名による審決取消請求事件,(株)サカタのタネほか14名による審決
取消請求事件,(株)ビームスによる審決取消請求事件,(株)ベイクルーズによる審決取消請
求事件及び(株)昭和シェル石油ほか2名による審決取消請求事件の6件である。
 このため,平成18年度末現在係属中の審決取消請求訴訟は7件である。
 なお,本文中引用されている条文は審決等から引用しているため,必ずしも現在の条文番
号と一致しない。
 (1) 土屋企業(株)による審決取消請求事件
   ア 事件の表示
       最高裁判所 平成16年(行ヒ)第135号
       第2部各論
    審決取消請求事件
       申立人(被告)公正取引委員会
       相手方(原告)土屋企業(株)
         審決年月日 平成15年6月13日
         提訴年月日 平成15年7月10日
         判決年月日 平成16年2月20日(請求一部認容,東京高等裁判所)
         上訴年月日 平成16年3月5日(上告受理申立て)
         決定年月日 平成18年11月14日(上告不受理決定)
    イ 審決の概要
        相手方を含む69社の建設事業者らが,町田市発注の特定土木一式工事について,共
      同して受注予定者が受注できるようにすることにより,町田市発注の特定土木一式工
      事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
        本審決は,相手方に対し,独占禁止法第54条の2第1項の規定に基づいて,課徴金
      の納付を命じたものである。
    ウ 事案の概要
        本件は,相手方が,課徴金の対象となった道路工事のうちの2件については,受注
      調整を行ったことはなく,これを課徴金の対象とした本審決には,基礎となる事実に
      ついての実質的証拠を欠くか,又は法令違反があるとして,その取消しを求めたもの
      である。
    第1審である東京高等裁判所は,本審決のうち都市計画道路工事は課徴金の対象と
   なるとはいえないとして,前記工事に係る課徴金の納付を命じる部分を取り消した。
  エ 決定の概要
    本件は,公正取引委員会が原判決を不服として上告受理申立てを行ったものである
   が,最高裁判所は,本件は民事訴訟法第318条第1項に定める法令の解釈に関する重要
   な事項を含むものとは認められないとして,上告不受理の決定を行った。
  オ 訴訟手続の経過
    本件決定により終了した。

 (2) (株)東芝ほか1名による審決取消請求事件
  ア 事件の表示
    最高裁判所 平成16年(行ヒ)第208号
    審決取消請求事件
    上告人(被告)公正取引委員会
    被上告人(原告)(株)東芝ほか1名
     審決年月日 平成15年6月27日
     提訴年月日 平成15年7月25日
     判決年月日 平成16年4月23日(請求認容,東京高等裁判所)
     上訴年月日 平成16年5月7日(上告受理申立て)
     決定年月日 平成19年1月22日(上告受理決定)
     判決年月日 平成19年4月19日
                 (原判決破棄,東京高等裁判所へ差戻し,最高裁判所)
  イ 審決の概要
    被上告人らは,旧郵政省が一般競争入札の方法により発注した郵便番号自動読取区
   分機類について,入札執行前に同省の調達事務担当官等から情報の提示を受けた者を
   受注予定者として決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,同省が一
   般競争入札の方法により発注する区分機類の取引分野における競争を実質的に制限し
   ていた。
    本審決は,被上告人らに対し,独占禁止法第54条第2項の規定を適用して,違反行
   為を取りやめていることの確認等の措置を命じたものである。
  ウ 事案の概要
    本件は,被上告人らが,本審決は審決の基礎となった事実を証する実施的な証拠を
   欠いているとして,審決の取消しを求めるものである。
    第1審である東京高等裁判所は,調達事務担当官等から情報の提示が行われなくなっ
   た以上,その入札において本件のような違反行為が行われる余地はなく,被上告人ら
   が今後も受注調整を行うおそれはないから,審決書の記載内容全体から判断しても独
   占禁止法第54条第2項の適用の基礎となった事実を当然に知り得るものということは
   できないし,同法第57条が要求する審決書の記載要件を具備したものということはで
   きないとして,本審決を取り消した。
  エ 判決の概要
    最高裁判所は,担当官等からの情報の提示は受注予定者を決定するための手段にす
   ぎず,情報の提示がなくとも,被上告人らにおいて,他の手段をもって,共同して,
   受注予定者を決定し,受注予定者が受注することができるようにすることにより,旧
   郵政省が一般競争入札の方法により発注する区分機類の取引分野における競争を実質
   的に制限することが可能であると判断し,このような見地から審決書の記載を全体と
   してみれば,上告人は,認定事実を基礎として「特に必要があると認めるとき」の要
   件に該当する旨判断したものであることを知り得るのであって,審決書には,独占禁
   止法第54条第2項所定の「特に必要があると認めるとき」の要件に該当する旨の判断
   の基礎となった上告人の認定事実が示されているということができると判示した。
    また,「特に必要があると認めるとき」の要件に該当するか否かの判断については,
   我が国における独占禁止法の運用機関として競争政策について専門的な知見を有する
   上告人の専門的な裁量が認められるというべきであるが,「特に必要があると認める
   とき」の要件に該当する旨の上告人の判断について,合理性を欠くものであるという
   ことはできず,上告人に裁量権の範囲を超え又はその濫用があったものということは
   できないと判示した。
    以上から,最高裁判所は,本審決は独占禁止法第57条第1項及び同法第54条第2項
   の規定に違反するものではないとして,原判決を破棄し,本審決の基礎となった事実
   を立証する実質的な証拠の有無の点について更に審理を尽くさせるため,本件を東京
   高等裁判所に差し戻した。
  オ 訴訟手続の経過
    本件は,差戻審である東京高等裁判所に係属中である。

 (3) (株)大石組による審決取消請求事件
  ア 事件の表示
    最高裁判所 平成19年(行ツ)第83号
          平成19年(行ヒ)第79号
    審決取消請求事件
    上告人兼申立人(原告)(株)大石組
    被上告人兼被申立人(被告)公正取引委員会
     審決年月日 平成18年4月12日
     提訴年月日 平成18年5月12日
     判決年月日 平成18年12月15日(請求棄却,東京高等裁判所)
     上訴年月日 平成18年12月26日(上告,上告受理申立て)
  イ 審決の概要
    上告人兼申立人を含む29社の建設事業者らが,共同して,旧清水市等が制限付一般
   競争入札又は指名競争入札の方法による旧清水市等発注の特定土木工事について,受
   注価格の低落防止等を図るため,入札参加者間で受注予定者を決定し,受注予定者以
   外の者は受注予定者が当該工事を受注できるように協力する旨の合意の下に,受注予
   定者を決定し,受注予定者が受注できるようにすることにより,公共の利益に反して,
   旧清水市等発注の特定土木工事の取引分野における競争を実質的に制限していた。
    本審決は,上告人兼申立人に対し,独占禁止法第54条第2項の規定を適用して,違
   反行為を取りやめていることの確認等の措置を命じたものである。
  ウ 事案の概要
    本件は,上告人兼申立人が,<1>本審決において指摘された本件違反行為は存在せず,
   本審決の事実認定は実質的証拠を欠くものであり,<2>勧告がなされるまでの間に違
   反行為を取りやめているのであるから,本件排除措置の必要性はないとして,審決の
   取消しを求めるものである。
    第1審である東京高等裁判所は,<1>本審決の事実認定に経験則違背,その他の不
   合理な点は見当たらない,<2>入札談合行為が,長期間にわたって恒常的に行われて
   きたものであること等を考慮すると,原告が既に受注調整行為から離脱していても,
   離脱の状態を確保するための措置を命ずる必要が特に存在するということができると
   して,上告人兼申立人の請求を棄却した。
  エ 訴訟手続の経過
    本件は,上告人兼申立人の上告人及び上告人受理申立てにより,現在最高裁判所に
    係属中である。

 (4) JFEエンジニアリング(株)ほか4名による審決取消請求事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所 平成18年(行ケ)第11号ないし第13号
    審決取消請求事件
    原告 JFEエンジニアリング(株)ほか4名
    被告 公正取引委員会
     審決年月日 平成18年6月27日
     提訴年月日 平成18年7月27日
  イ 審決の概要
    原告らは,地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注するストーカ炉の建設
   工事について,受注予定者を決定し,これを受注することにより,地方公共団体が指
   名競争入札等の方法により発注するストーカ炉の建設工事の取引分における競争を実
   質的に制限していた。
    本審決は,原告らに対し,独占禁止法第54条第2項の規定を適用して,違反行為を
   取りやめていることの確認等の措置を命じたものである。
  ウ 事案の概要
    本件は,原告らが,<1>本審決の認定事実につき証拠判断に合理性がなく実質的証拠
   がない,<2>本審決及び審決に至る審判手続は,憲法その他の法令に違反しているなど
   として,その取消しを求めるものである。
  エ 訴訟手続の経過
    本件は,現在,東京高等裁判所に係属中である。

 (5) (株)サカタのタネほか14名による審決取消請求事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所 平成18年(行ケ)第18号ないし第20号
    審決取消請求事件
    原告 (株)サカタのタネほか14名
    被告 公正取引委員会
     審決年月日 平成18年11月27日
     提訴年月日 平成18年12月25日~27日
  イ 審決の概要
    原告らを含む元詰業者32社は,共同して,はくさい,キャベツ,だいこん及びかぶ
   の交配種の種子について,各社が販売価格を定める際の基準となる価格を毎年決定し,
   各社は当該基準価格の前年度からの変動に沿って,品種ごとに販売価格を定め,取引
   先販売業者及び需要者に販売する旨合意することにより,公共の利益に反して,我が
   国における4種類の元詰種子の各販売分野における競争を実質的に制限していた。
    本審決は,原告らを含む元詰業者19社に対し,独占禁止法第54条第2項の規定を適
   用して,違反行為を取りやめていることの確認等の措置を命じたものである。
  ウ 事案の概要
    本件は,原告らが,<1>本審決における本件合意の認定や競争の実質的制限に関する
   事実認定について実質的証拠を欠き,法令に違反する,<2>既往の行為については排除
   措置の必要性がないなどとして,審決の取消しを求めるものである。
  エ 訴訟手続の経過
    本件は,現在,東京高等裁判所に係属中である。

 (6) (株)ビームスによる審決取消請求事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所 平成19年(行ケ)第4号
    審決取消請求事件
    原告 (株)ビームス
    被告 公正取引委員会
     審決年月日 平成19年1月30日
     提訴年月日 平成19年2月20日
  イ 審決の概要
    原告は, 新光株式会社が運営する小売店舗を通じて販売した ジー・ティー・アー
    モーダ社製のズボンについて,当該ズボンの原産国がルーマニアであるにもかかわら
   ず,あたかも,原産国がイタリア共和国であるかのように表示したが,かかる表示は
   事実と異なるものであり,一般消費者に誤認される表示であった。
    本審決は,原告に対し,独占禁止法第54条第2項並びに景品表示法第7条第1項及
   び同条第2項の規定を適用して,当該ズボンの原産国について一般消費者に誤認され
   る表示である旨を速やかに公示しなければならない等の措置を命じたものである。
  ウ 事案の概要
    本件は,原告が,<1>本件表示は,景品表示法第4条第1項第3号に定める「商品又
   は役務に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって,不
   当に顧客を誘引し,公正な競争を阻害する」に該当しない,<2>原告は表示内容を決定
   しておらず,同号に違反する表示をしていない,<3>原告は表示の作成について何らの
   過失もなく,排除措置命令の必要性もないなどとして,審決の取消しを求めるもので
   ある。
  エ 訴訟手続の経過
    本件は,現在,東京高等裁判所に係属中である。

 (7) (株)ベイクルーズによる審決取消請求事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所 平成19年(行ケ)第5号
    審決取消請求事件
    原告 (株)ベイクルーズ
    被告 公正取引委員会
     審決年月日 平成19年1月30日
     提訴年月日 平成19年2月27日
  イ 審決の概要
    原告は,同社の小売店舗において販売したジー・ティー・アー モーダ社製のズボ
   ンについて,当該ズボンの原産国がルーマニアであるにもかかわらず,あたかも,原
   産国がイタリア共和国であるかのように表示したが,かかる表示は事実と異なるもの
   であり,一般消費者に誤認される表示であった。
    本審決は,原告に対し,独占禁止法第54条第2項並びに景品表示法第7条第1項及
   び同条第2項の規定を適用して,当該ズボンの原産国について一般消費者に誤認され
   る表示である旨を速やかに公示しなければならない等の措置を命じたものである。
  ウ 事案の概要
    本件は,原告が,<1>景品表示法第4条第1項第3号に定める表示主体ではなく,本
   件表示も同号に定める「表示」に該当しない,<2>原告は必要な注意義務を尽くしてお
   り,同法第6条第1項に違反せず,このためそもそも排除命令の必要性もない,<3>他
   の事業者に対する処分との差が著しく均衡を失しており,憲法第14条の平等原則に違
   反する,<4>本審決に至る過程で裁量権濫用の違法があるなどして,審決の取消しを
   求めるものである。
  エ 訴訟手続の経過
    本件は,現在,東京高等裁判所に係属中である。

 (8) (株)昭和シェル石油ほか2名による審決取消請求事件
  ア 事件の表示
   (ア)  東京高等裁判所 平成19年(行ケ)第7号
     審決取消請求事件
     原告 昭和シェル(株)
     被告 公正取引委員会
   (イ) 東京高等裁判所 平成19年(行ケ)第8号
     審決取消請求事件
     原告 新日本石油(株)
     被告 公正取引委員会
   (ウ) 東京高等裁判所 平成19年(行ケ)第9号
          原告 コスモ石油(株)
     被告 公正取引委員会
      審決年月日 平成19年2月14日
      提訴年月日 平成19年3月15日
  イ 審決の概要
    原告らは,防衛庁調達実施本部(現在の防衛省装備本部)発注の石油製品(自動車
   ガソリン,灯油,軽油,A重油及び航空タービン燃料)について,他8社(航空ター
   ビン燃料については他6社)と共同して,油種ごとに受注予定者を決定し,受注予定
   者が受注することができるようにすることにより,公共の利益に反して,前記石油製
   品の油種ごとの取引分野における競争を実質的に制限していた。
    本審決は,原告らに対し,独占禁止法第54条第2項の規定を適用して,違反行為を
   取りやめていることの確認等の措置を命じたものである。
  ウ 事案の概要
    本件は,原告らが,<1>本審決の基礎となる事実を立証する実質的証拠がない,<2>
   本件石油製品に係る取引分野に関し競争の存在を認定したことは「一定の取引分野に
   おける競争」(独占禁止法第2条第6項)の解釈適用を誤ったものである,<3>航空
   タービン燃料につき排除措置を命じたことは「特に必要があると認められるとき」(独
   占禁止法第54条第2項)の解釈を誤ったものであるなどとして,審決の取消しを求め
   るものである。
  エ 訴訟手続の経過
    本件は,現在,東京高等裁判所に係属中である。

2 その他の訴訟
 平成18年度当初において係属中の審決取消請求事件以外の事件は,独占禁止法第69条に基
づく閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件2件(後記(1)の事件は第1審で併合されたため,
第2審では,一つの事件番号で取り扱われている。),同法に基づく閲覧謄写許可処分取消
請求事件,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に
基づく行政文書不開示処分等取消等請求事件2件,課徴金返還に関する還付加算金請求事件
の計6件であった。このうち,独占禁止法第69条に基づく閲覧謄写不許可処分取消請求事件
は,当事者双方が東京高等裁判所に控訴していたところ,控訴棄却の判決があり,公正取引
委員会が最高裁判所に上告受理申立てを行った。また,東京地方裁判所に係属していた情報
公開法に基づく行政文書不開示処分等取消等請求事件2件は,原告の請求を棄却した判決の
確定により終了し,札幌地方裁判所に係属していた課徴金返還に関する還付加算金請求事件
1件は,請求を一部認容した判決の確定により終了した。
 平成18年度中に,新たに提訴された事件は,文書提出命令に対する抗告事件(抗告棄却で既
に確定),国家賠償法第1条に基づく損害賠償等請求事件の2件である。
 このため,平成18年度末現在係属中の審決取消請求訴訟以外の訴訟は3件である。

 (1) 平成10年(判)第2号審判事件記録に係る閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件
  ア 事件の表示
    最高裁判所平成19年(行ヒ)第3号
    閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件
    申立人(1審被告)公正取引委員会
    相手方(1審原告)(株)函館新聞社
     提訴年月日 平成15年3月10日,平成16年11月5日
     1審判決年月日 平成18年2月23日(訴え一部却下,その余の請求認容)
     控訴年月日 平成18年3月3日(相手方),平成18年3月8日(申立人)
     原判決年月日 平成18年9月27日(控訴棄却)
     上訴年月日 平成18年10日10日(申立人)
  イ 事案の概要
    本件は,相手方が独占禁止法第69条に基づいて行った平成10年(判)第2号(株)
   北海道新聞社に対する審判事件に係る事件記録全部の閲覧謄写申請に対し,申立人が
   本審判事件の事件記録のうち一部を除いて閲覧謄写を不許可とする旨の処分(第1処
   分)をしたところ,相手方が当該処分の取消しを求めるものである。また,申立人が
   第1処分の内容を見直し,これを変更する処分(第2処分)をしたところ,相手方が当
   該処分についても取消しを求めるものである。
    第1審である東京地方裁判所は,独占禁止法第69条の規定上,事件記録の閲覧謄写
   請求については,「利害関係人」である旨の制限がかけられているにすぎず,事件記
   録上に記載されている情報の性質を根拠として,閲覧謄写を不許可とすることはでき
   ないとし,本件において相手方が同条の「利害関係人」に当たる以上,事件記録のす
   べてを閲覧謄写させなければならないとして相手方の請求を認容(一部却下)したた
   め,申立人が控訴するとともに,一部却下部分について相手方も控訴した。
    第2審である東京高等裁判所は,独占禁止法には,事業者の秘密を始めとする開示
   が制限される情報について配慮した規定は,審判の公開に関する同法第53条の限度で
   しかなく,同法自体においては,当該情報に関して,前記以上の保護を予定している
   と読み取るのは困難であるとし,相手方が同法第69条の利害関係人に該当し,本件審
   判事件で審判が公開されていた本件においては,申立人は,相手方による事件記録の
   閲覧謄写請求を拒むことはできず,申立人が,同法第69条に基づく事件記録の閲覧謄
   写請求について,「利害関係人」による請求か否かという点以外に,事件記録上に記
   載されている情報の性質を根拠として,閲覧謄写を不許可とすることはできないとし
   て,本件控訴を棄却した。
  ウ 訴訟手続の経過
    本件は,公正取引委員会の上告受理申立てにより,現在最高裁判所に係属中である。

 
(2) 平成15年(判)第39号審判事件記録に係る閲覧謄写許可処分取消請求事件
  ア 事件の表示
    東京地方裁判所平成17年(行ウ)第241号
    閲覧謄写許可処分取消請求事件
    原告 (株)第一興商
    被告 国(処分行政庁 公正取引委員会)
     提訴年月日 平成17年6月1日
  イ 事案の概要
    本件は,利害関係人が独占禁止法第69条に基づいて行った平成15年(判)第39号(株)
   第一興商に対する審判事件に係る事件記録の閲覧謄写申請に対し,被告が本審判事件
   の事件記録のうち一部を除いて閲覧謄写を許可とする旨の処分をしたところ,原告が
   当該処分の取消しを求めるものである。なお,原告は行政事件訴訟法第25条第2項
   本文に基づく処分の効力の停止を2度にわたり申し立て,東京地方裁判所は,本件文
   書の一部につき,本件第一審判決の言渡しの日から3週間を経過する日まで本件処分
   の効力を停止する決定を行った。
  ウ 訴訟手続の経過
    本件は,現在,東京地方裁判所に係属中である。

 
(3) 情報公開法に基づく行政文書不開示処分取消請求事件
  ア 事件の表示
    東京地方裁判所平成17年(行ウ)第342号
    裁決取消請求事件
    原告 X
    被告 国(処分行政庁 公正取引委員会委員長)
     提訴年月日 平成17年8月8日
    東京地方裁判所平成17年(行ウ)第491号
    追加的併合申立事件
    原告 X
    被告 国(処分行政庁 公正取引委員会事務総局審査局長)
     提訴年月日 平成17年10月27日
    判決年月日 平成18年6月29日(請求棄却)
  イ 事案の概要
    本件は,原告が公正取引委員会事務総局審査局長(以下「審査局長」という。)に
   対し行った行政文書開示請求につき,不開示決定がなされ,これを不服として公正取
   引委員会委員長に対し不開示処分の取消しを求める審査請求を行ったところ,情報公
   開審査会の答申を経て,前記審査請求を棄却する旨の裁決がなされたことから,当該
   棄却裁決の取消しを求めたものである。
    第1回口頭弁論の後,審査局長の行った行政文書不開示決定についても原告が取消
   訴訟を提起したため,行政事件訴訟法第19条の規定に基づき,裁決取消請求事件に併
   合された。
  ウ 判決の概要
    東京地方裁判所は,本件文書に記録された情報は,少なくとも情報公開法第5条1
   号及び同条6号イに該当し,また,本件文書の存否を明らかにすることで不開示情報
   を開示する結果になってしまうから,同法第8条に基づき,本件文書存否そのものに
   ついて回答しないこととした本件処分は適法であるとして,原告の請求を棄却した。
  エ 訴訟手続の経過
    本件判決に対し,原告が上訴しなかったことから,終了した。

 
(4) 課徴金返還に関する還付加算金請求事件
  ア 事件の表示
    札幌地方裁判所平成17年(行ウ)第17号
    還付加算金請求事件
    原告 協業組合カンセイ
    被告 国
     提訴年月日 平成17年9月29日
     判決年月日 平成18年9月22日(一部認容)
  イ 事案の概要
    本件は,原告が審決取消請求事件において勝訴し,判決が確定したことから,公正取
   引委員会が取消部分に係る金額を返還したところ,原告は,課徴金徴収について国税
   徴収の例によりながら,課徴金還付については国税の還付加算金に相当する規定を欠
   いているのは国権の作用として著しく正義公平の観点から妥当性を欠くものであり,
   課徴金還付については国税通則法の規定を類推適用し処理すべきであるとして,被告
   に対し,課徴金納付の日の翌日から還付を受けた日までの間の還付加算金の支払を求
   めたものである。
  ウ 判決の概要
    裁判で取り消された一部課徴金の返還について,国税通則法の還付加算金に関する
   規定を類推適用することはできず,これに基づき利息を付す必要はない。また,一部
   課徴金を取り消す裁判が確定した後は,当該課徴金相当額は民事上の不当利得と考え
   られ,悪意の受益者となった時点から利息が発生することになる。本件の場合,被告
   は東京高等裁判所による差戻審判決の確定の翌日以降悪意の受益者となるため,原告
   が還付金を受領した日までの4日間分の利息を支払うよう命じられた。
  エ 訴訟手続の経過
    本件判決に対し,国(公正取引委員会)及び原告とも上訴しなかったことから,終
   了した。

 
(5) 文書提出命令に対する即時抗告申立事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所平成19年(ラ許)第48号
    文書提出命令に対する抗告事件
    抗告人 国
    相手方 X
     決定年月日 平成18年9月1日(文書提出命令,東京地方裁判所)
     申立年月日 平成18年9月11日(即時抗告申立て)
     決定年月日 平成19年2月16日(抗告棄却,東京高等裁判所)
     申立年月日 平成19年3月13日(許可抗告申立て)
     決定年月日 平成19年3月23日(許可抗告不許可決定,東京高等裁判所)
  イ 事件の概要
    本件は,五洋建設(株)の株主である原告が,当時の取締役の善管注意義務違反による
   政治献金及び課徴金の納付によって会社が損害を受けたとして,被告ら(元取締役)
   に対し,五洋建設(株)に損害賠償を支払うよう求めた株主代表訴訟を本案とする文書
   提出命令事件である。
    原告は,五洋建設(株)が談合を行っていた事実を証するため等として,公正取引委
   員会作成に係る五洋建設(株)従業員の供述調書等について,当委員会に対する文書提
   出命令を裁判所に申し立てていたところ,同裁判所は,相手方の申立てに係る文書の
   うち,本件談合に係る間接事実が記載されている文書について,当委員会に対し文書
   の提出を命じ,その余の文書について申立てを却下する決定を行った。
    国(公正取引委員会)は,東京地方裁判所の決定を不服として東京高等裁判所に即
   時抗告を行ったが,同裁判所は,当委員会が損害賠償請求訴訟の場合には審判記録の
   閲覧謄写や文書送付嘱託に応じていることなどをとらえ,株主代表訴訟と損害賠償請
   求訴訟とで区別すべき合理的理由がないなどとし,最終的に「公務の遂行に著しい支
   障を生じるおそれ」はないとして本件抗告を棄却したため,国(公正取引委員会)は
   同裁判所に許可抗告を行った。
  ウ 決定の概要
    東京高等裁判所は,民事訴訟法第337条第2項に定める法令の解釈に関する重要な事
   項を含まないとして不許可の決定を行った。
  エ 訴訟手続の経過
    本件決定により終了した。

 
(6) 損害賠償等請求事件
  ア 事件の表示
    東京地方裁判所平成18年(ワ)第11104号,同第14504号,同第19429号,同第19433
    号,同第25757号
    損害賠償等請求事件
    原告 日本テレシス(株)ほか(集団訴訟)
    被告 国ほか3名
     提訴年月日 平成18年5月30日~同年11月17日
  イ 事案の概要
    本件は,固定電話加入権を有する原告らが,将来電話加入権が廃止される旨の方針
   が打ち出されたこと等による電話加入権の経済的価値の下落により損害を被ったとし
   て,被告らに対し,連帯して,電話加入権料の現在までの下落額である電話加入権1
   本当たり3万6千円の支払を求めるものである。
    原告らは,被告日本電信電話(株)(旧日本電信電話公社。以下「NTT」という。)は
   長期にわたり電話事業を独占しており,原告ら電話加入者には被告NTT以外に取引
   先選択の余地がなく,電話加入時に電話設備負担金の支払を強制されていたところ,
   電話設備負担金の支払が不合理・不適当となっていたにもかかわらず,被告NTTが
   その独占力を背景として徴収を続けており,これは独占禁止法で禁止する優越的地位
   の濫用に当たり,不法行為に該当するとして,被告NTT並びに被告東日本電信電話
   (株)及び同西日本電信電話(株)に対して民法第709条に基づく損害賠償を請求すると
   ともに,公正取引委員会はこの独占禁止法違反行為に対して排除勧告すべきであった
   のに,それをしなかったことは監督官庁の規制権限の不行使に当たり,結果的に電話
   加入者に損害を与えたとして,国に対し国家賠償法第1条に基づく損害賠償を請求し
   ている。
    当初,集団訴訟をして大阪地方裁判所にも提訴されたが,東京地方裁判所に移送・
   併合された。
  ウ 訴訟手続の経過
   本件は,現在,東京地方裁判所に係属中である。


3 独占禁止法第24条(差止請求権)に基づく差止請求事件
 平成18年度当初において係属中の独占禁止法第24条に基づく差止請求事件は8件であった
が,同年度中に2件の訴えが提起され,そのうち,和解をしたものが1件,取下げのあった
ものが1件,判決が出たものが5件(うち請求棄却が4件,却下が1件。また,請求が棄却
されたもののうち,1件については上訴があったため係属中である。)であった。平成18年
度末において係属中の事件は4件である。
   

   


4 独占禁止法第25条(無過失損害賠償責任)に基づく損害賠償請求事件
 平成18年度当初において独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求事件は7件であったが,
平成18年度中に2件が訴え取下げにより,2件については判決(いずれも一部認容)により
終了し,同年度中に新たに2件が提起され,平成18年度末現在において5件が係属中である。

 
(1) (株)北海道新聞社による(株)函館新聞社の事業活動排除事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所平成14年(ワ)第4号
    損害賠償請求事件
    原告 (株)函館新聞社
    被告 (株)北海道新聞社
     提訴年月日 平成14年12月27日
     終了年月日 平成18年10月28日(訴え取下げ)
  イ 事案の概要
    公正取引委員会は,(株)北海道新聞社(以下「北海道新聞社」という。)が函館対策
   と称する一連の行為によって(株)函館新聞社(以下「函館新聞社」という。)の事業活
   動を排除した行為について,平成10年2月5日,勧告を行ったところ,北海道新聞社
   がこれを応諾しなかったことから審判開始決定を行い,審判官をして審判を行わせて
   いたところ,同社から同意審決を受ける旨の申出があり,かつ,具体的措置に関する
   計画書が提出されたので,平成12年2月28日,北海道新聞社に対し当該行為の排除等
   を命ずる同意判決を行った。その後,平成14年12月27日,函館新聞社は,北海道新聞
   社に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に
   提起した。
  ウ 訴訟手続の経過
    本件については,東京高等裁判所から,平成15年1月7日,独占禁止法第84条第1
   項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,
   公正取引委員会は,平成15年7月3日,意見書を提出した。
    本件については,平成18年10月28日,訴え取下げにより終了した。

 
(2) 町田市発注の土木一式工事等入札談合事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所平成16年(ワ)第2号
    損害賠償請求事件
    原告 町田市
    被告 東亜コンスト㈱ほか51名
     提訴年月日 平成16年7月20日
     判決年月日 平成17年10月7日(37名につき和解)
           平成17年11月29日(1名につき訴え取下げ)
           平成18年1月18日(1名につき和解)
           平成18年1月27日(12名につき一部認容)
           平成19年3月23日(1名につき一部認容)
  イ 事案の概要
    公正取引委員会は,町田市発注の土木一式工事等入札談合について,平成13年2月
   9日,(株)朝見工務店ほか68名に対し当該行為の排除等を命ずる勧告判決を行った。
   当該判決確定後,発注者である町田市は,東亜コンスト(株)ほか51社に対して,独占禁
   止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
  ウ 判決の概要
    契約金額の5%の金員を支払え。
    違反行為がなければ存在したであろう落札価格(想定落札価格)を推定し,これを
   現実の落札価格から差し引くことにより損害額を算定する考え方自体は不合理なもの
   ではない。
    しかしながら,本件においては,原告の主張する落札率の差が本件違反行為が行わ
   れなくなったことのみによるものかどうかについて,これを判断すべき的確な資料が
   ないから、当該差をもって直ちに損害額算定の基礎とすることはできない。
    損害の性質上その額を立証することが極めて困難であると認められることから,民
   事訴訟法第248条を適用し,裁判所が相当な損害額を認定するのが相当である。
  エ 訴訟手続の経過
    本件については,東京港等裁判所から,平成16年8月12日,独占禁止法第84条第1
   項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,
   公正取引委員会は,平成16年11月1日,意見書を提出した。
    本件については,平成17年10月7日に被告37社につき和解が成立,平成17年11月29
   日に被告1社につき訴えの取下げ,平成18年1月18日に被告1社につき和解が成立,
   平成18年1月27日に被告12社につき判決があり,平成19年3月23日に被告1社につい
   て判決があった(平成18年度末現在ではまだ確定していない。)。

 (3) 奈良県所在の茶筌製造販売業者による原産国不当表示事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所平成17年(ワ)第2号及び同第3号
    損害賠償請求事件
    原告 奈良県高山茶筌生産協同組合
    被告 ㈱中田喜造商店及び高山堂こと藤井編利
     提訴年月日 平成17年4月20日
     終了年月日 平成18年12月21日(第3号につき訴え取下げ)
     判決年月日 平成19年3月30日(第2号につき一部認容)
  イ 事案の概要
    公正取引委員会は,奈良県所在の茶筌製造販売業者による原産国不当表示事件につ
   いて,平成14年4月25日,(株)中田喜造商店(以下「中田喜造商店」という。)ほか
   2名に対し排除命令を行った。当該排除命令が確定した審決とみなされた後,奈良県高
   山茶筌生産協同組合は,中田喜造商店及び高山堂こと藤井編利に対して,独占禁止法
   第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
  ウ 判決の概要
    被告の販売する茶筌の原産国は韓国であると認められるところ,被告は,これを我
   が国の高山地区で製造されたものであるかのように表示したのであり,景品表示法第
   4条第3号の不当な表示をしたものと認められる。
    被告のかかる行為により,一般消費者の誤認を招いたというべきであるが,同時に,
   高山地区における高山茶筌の製造業者も公正な競争を阻害されたというべきである。
   そして,高山茶筌の製造販売業者が高山茶筌の伝統を守り育てようとして設立し,そ
   のための事業を行ってきた原告組合も,本件不当表示の被害者と認めるべきことは明
   らかである。
    認定事実を統合すると,被告が相当長期にわたって本件不当表示を行ってきたこと
   により,原告が多大な損害を被ったものと認められるが,他方,被告は公正取引委員
   会の排除命令に従って命じられた措置を採ったことなどの事情を総合考慮すると,原
   告の受けた無形損害に対する賠償は80万円をもって相当とする。
  エ 訴訟手続の経過
    本件については,東京高等裁判所から,平成17年5月2日,独占禁止法第84条第1
   項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,
   公正取引委員会は,平成18年12月18日,意見書を提出した。
    本件については,平成18年12月21日に被告高山堂こと藤井編利につき訴えの取下げ
   があり,平成19年3月30日に被告中田喜造商店につき判決があった(平成18年末現在
   ではまだ確定していない。)。

 
(4) インテル(株)によるCPU私的独占事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所平成17年(ワ)第4号
    損害賠償請求事件
    原告 日本エイ・エム・ディ(株)
    被告 インテル(株)
     提訴年月日 平成17年6月30日
  イ 事案の概要
    公正取引委員会は,インテル(株)(以下「インテル」という。)によるCPU(パーソ
   ナルコンピュータに搭載するx86系セントラル・プロセッシング・ユニットをいう。)
   の私的独占事件について,平成17年4月13日,インテルに対し当該行為の排除等を命ず
   る勧告審決を行った。当該審決確定後,日本エイ・エム・ディ㈱は,インテルに対し
   て,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
  ウ 訴訟手続の経過
    本件については,東京高等裁判所から,平成17年7月6日,独占禁止法第84条第1
   項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,
   公正取引委員会は,平成18年5月15日,意見書を提出した。
    本件については,平成18年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

 
(5) 警視庁発注の道路標識設置工事等入札談合事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所平成17年(ワ)第6号
    損害賠償請求事件
    原告 東京都
    被告 アトムテクノス(株)ほか27名
     提訴年月日 平成17年10月28日
     終了年月日 平成18年3月7日(2名につき認諾)
  イ 事案の概要
    公正取引委員会は,警視庁発注の道路標識設置工事等の入札談合について,平成14年
   7月30日,信号器材(株)ほか55社等に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行っ
   た。当該審決確定後,発注者である東京都は,アトムテクノス(株)ほか27社に対して,
   独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
  ウ 訴訟手続の経過
    本件については,東京高等裁判所から,平成17年11月4日,独占禁止法第84条第1
   項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,
   公正取引委員会は,平成18年7月31日,意見書を提出した。
    本件については,平成18年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

 
(6) 警視庁発注のプログラム多段式交通信号機新設等工事等入札談合事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所平成18年(ワ)第1号
    損害賠償請求事件
    原告 東京都
    被告 (株)工業社ほか3名
     提訴年月日 平成18年2月3日
  イ 事案の概要
    公正取引委員会は,警視庁発注のプログラム多段式交通信号機新設等工事等の入札
   談合について,平成15年3月28日,(株)京三製作所ほか13社に対し当該行為の排除等
   を名ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,発注者である東京都は,(株)工業社ほ
   か3社に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判
   所に提起した。
  ウ 訴訟手続の経過
    本件については,東京高等裁判所から,平成18年2月7日,独占禁止法第84条第1
   項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,
   公正取引委員会は,平成18年7月31日,意見書を提出した。
    本件については,平成18年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

 
(7) 大阪市発注の配水管工事跡舗装復旧工事入札談合事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所平成18年(ワ)第2号
    損害賠償請求事件
    原告 大阪市
    被告 奥村組土木興業(株)ほか3名
     提訴年月日 平成18年4月6日
     和解年月日 平成18年12月11日(1名)
  イ 事案の概要
    公正取引委員会は,大阪市発注の配水管工事跡舗装復旧工事等の入札談合について,
   平成16年5月18日,奥村組土木興業(株)ほかに対し当該行為の排除等を命ずる勧告審
   決を行った。当該審決確定後,発注者である大阪市は,奥村組土木興業(株)ほか3社
   に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提
   起した。
  ウ 訴訟手続の経過
    本件については,東京高等裁判所から,平成18年4月13日,独占禁止法第84条第1
   項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,
   公正取引委員会は,平成18年10月18日,意見書を提出した。
    本件については,平成18年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

 
(8) (株)三井住友銀行による金利スワップ契約に係る優越的地位の濫用事件
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所平成18年(ワ)第5号
    損害賠償請求事件
    原告 クリエイティヴアダック(株)
    被告 (株)三井住友銀行
     提訴年月日 平成18年9月8日
  イ 事案の概要
    公正取引委員会は,(株)三井住友銀行(以下「三井住友銀行」という。)による金
   利スワップ契約に係る優越的地位の濫用事件について,平成17年12月26日,三井住友
   銀行に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,本件金利
   スワップ契約の相手方であるクリエイティヴアダック(株)は,三井住友銀行に対して,
   独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。
  ウ 訴訟手辻気の経過
    本件については,東京高等裁判所から,平成18年9月19日,独占禁止法第84条第1
   項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされた。
    本件については,平成18年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

5  その他の独占禁止法関係の損害賠償請求事件等

 
(1) 北海道上川支庁発注の農業土木工事等の入札談合に係る住民訴訟
  ア 事件の表示
    札幌地方裁判所平成12年(行ウ)第29号
    損害賠償事件
    原告 北海道住民2名
    被告 北海道知事ほか6名
     提訴年月日 平成12年12月14日
     判決年月日 平成19年1月19日
  イ 事案の概要
    北海道上川支庁発注の農業土木工事等の入札談合について,公正取引委員会は,平
   成12年6月16日,旭川市等所在の農業土木工事業者等203に対し当該行為の排除等を命
   ずる勧告審決を行った。当該審決が確定した後,札幌市内の住民は,当該農業土木工
   事業者等に対して,地方自治法第242条の2の規定に基づき,北海道に代位して損害賠
   償を求める住民訴訟を札幌地方裁判所に提起し,平成19年1月19日に同裁判所が原告
   の請求を一部認容する判決を言い渡した。
  ウ 訴訟手続の経過
    本件については,上訴期間の経過により終了した。

 
(2) (株)北海道新聞社による㈱函館新聞社の参入妨害事件に係る民法第709条訴訟
  ア 事件の表示
    東京地方裁判所平成14年(ワ)第8915号
    損害賠償請求事件
    原告 (株)函館新聞社
    被告 (株)北海道新聞社
     提訴年月日 平成14年4月26日
     終了年月日 平成18年10月24日(和解)
  イ 事案の概要
    (株)北海道新聞社(以下「北海道新聞社」という。)による函館対策と称する一連
   の行為によって(株)函館新聞社(以下「函館新聞社」という。)の事業活動を排除した行
   為について,公正取引委員会は,平成12年2月28日,北海道新聞社に対し当該行為の
   排除等を命ずる同意審決を行った。その後,平成14年4月26日,函館新聞社は,北海
   道新聞社に対して,民法第709条に基づく損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起し
   た。
  ウ 訴訟手続の経過
    本件については,平成18年10月24日に和解により終了した。

 
(3) 米軍厚木基地における入札談合に係る民法第709条及び第719条訴訟
  ア 事件の表示
    東京高等裁判所平成14年(ネ)第4622号
    損害賠償請求事件
    控 訴 人(原告)アメリカ合衆国
    被控訴人(被告)㈱アタラシほか25名
     提訴年月日 平成6年9月16日
     判決年月日 平成14年7月15日(請求棄却,東京地方裁判所)
     控訴年月日 平成14年8月2日
     判決年月日 平成18年10月5日(控訴棄却)
  イ 事案の概要
    本件は,米国海軍航空施設(厚木基地)における建設工事等を競争入札により発注
   しているアメリカ合衆国の厚木駐在建設事務官が,競争入札に参加する厚木建設部会
   会員73社による昭和59年から平成2年にかけての談合行為により損害を被ったとして
   損害賠償を求める「通告書」を送付したが,これに応じなかった(株)アタラシほか25
   社(訴訟提起当初は荒澤建設(株)ほか52社)に対して,民法第709条及び第719条の規定
   に基づき損害賠償請求訴訟を東京地方裁判所に提起したものである。平成14年7月15
   日,同裁判所が原告の請求を棄却する判決を言い渡したことから,原告は,平成14年8
   月2日,東京高等裁判所に控訴したところ,平成18年10月5日に同裁判所が控訴棄却
   の判決を言い渡した。
  ウ 訴訟手続の経過
    本件については,上訴期間の経過により終了した。

  (4) 地方公共団体発注のごみ処理施設建設工事の入札談合に係る住民訴訟等
  ア 事件の表示
   (ア)  福島地方裁判所平成11年(行ウ)第3号
      支出命令差止等請求事件
      原告 いわき市住民6名
      被告 いわき市長ほか4名
       提訴年月日 平成11年4月21日
    (イ)  東京高等裁判所平成18年(行コ)第12号
      損害賠償代位請求控訴事件
      控訴人(被告)JFEエンジニアリング(株)(旧商号:日本鋼管(株))
      被控訴人(原告)上尾市住民1名
       提訴年月日 平成12年1月26日(さいたま地方裁判所平成12年(行ウ)第4号)
      判決年月日 平成17年11月30日(一部認容,さいたま地方裁判所)
      控訴年月日 平成17年12月13日
      判決年月日 平成19年4月11日(住民敗訴,東京高等裁判所)
      上告及び上告受理申立て年月日 平成19年4月20日及び同月22日
    (ウ) 最高裁判所平成18年(行ツ)第322号,同年(行ヒ)第375号
     公金不正支出差止等請求事件
     上告人兼申立人(1審被告,原審控訴人)川崎重工業(株)
     被上告人兼相手方(1審原告,原審被控訴人)京都市住民774名
      提訴年月日 平成12年2月10日(京都地方裁判所平成12年(行ウ)第3号)
      提訴年月日 平成12年3月17日(京都地方裁判所平成12年(行ウ)第7号)
      判決年月日 平成17年8月31日(一部認容,京都地方裁判所)
      控訴年月日 平成17年9月13日
      判決年月日 平成18年9月14日(控訴棄却,大阪高等裁判所)
      上告及び上告受理申立て年月日 平成18年9月27日
      終了年月日 平成19年4月24日(上告棄却,上告不受理決定,最高裁判所)
   (エ) 大坂地方裁判所平成12年(行ウ)第67号
     損害賠償請求事件
     原告 大阪市住民3名
     被告 日立造船(株)
     提訴年月日 平成12年7月13日
   (オ) 東京地方裁判所平成12年(行ウ)第185号
     損害賠償等(住民訴訟)請求事件
     原告 東京都住民3名
     被告 (株)タクマほか4名
      提訴年月日 平成12年7月14日
      判決年月日 平成19年3月20日(一部認容,東京地方裁判所)
      控訴年月日 平成19年4月4日及び同月10日
   (カ) 大阪高等裁判所平成18年(行コ)第135号
     神戸市焼却炉談合損害賠償代位請求控訴事件
     控 訴 人(被告)川崎重工業(株)
     被控訴人(原告)神戸市住民7名
      提訴年月日 平成12年7月19日(神戸地方裁判所平成12年(行ウ)第30号)
            判決年月日 平成18年11月16日(一部認容,神戸地方裁判所)
      控訴年月日 平成18年11月29日
    (キ) 東京高等裁判所平成18年(行コ)第191号
     損害賠償請求控訴事件
     控訴人(被告)三菱重工業(株)ほか1名
     被控訴人(原告)横浜市住民9名
      控訴年月日 平成12年7月21日(横浜地方裁判所平成12年(行ウ)第34号)
      判決年月日 平成18年6月21日(一部認容,横浜地方裁判所)
      控訴年月日 平成18年6月30日及び同年7月6日
   (ク) 大阪高等裁判所平成18年(行コ)第134号
     損害賠償代位等請求控訴事件
     控訴人(被 告)三菱重工業(株)ほか5名
     被控訴人(参加人)尼崎市住民3名
      提訴年月日 平成12年7月28日
            (神戸地方裁判所平成12年(行ウ)第32号,第33号)
      提訴年月日 平成12年12月27日(神戸地方裁判所平成12年(行ウ)第52号)
      訴え取下げ 平成17年6月3日(平成12年(行ウ)第32号,第33号)
      判決年月日 平成18年11月16日(一部認容,神戸地方裁判所)
      控訴年月日 平成18年11月28日から同年12月2日
   (ケ) 福岡高等裁判所平成18年(行コ)第20号
     損害賠償代位等住民訴訟控訴事件
     控訴人(被告)福岡市長ほか5名
     被控訴人(原告)福岡市住民12名
      提訴年月日 平成12年8月3日(福岡地方裁判所平成12年(行ウ)第27号)
      判決年月日 平成12年4月25日(一部認容,福岡地方裁判所)
      控訴年月日 平成18年4月29日から同年5月10日
   (コ) 最高裁判所平成19年(行ツ)第8号,同年(行ヒ)第8号
     損害賠償請求事件
     上告人兼申立人(1審被告,原審控訴人)日立造船(株)
     被上告人兼相手方(1審原告,原審被控訴人)東京都住民1名
      提訴年月日 平成12年8月4日(東京地方裁判所平成12年(行ウ)第203号)
      判決年月日 平成18年4月28日(一部認容,東京地方裁判所)
      控訴年月日 平成18年5月11日(東京高等裁判所平成18年(行コ)第149号)
      判決年月日 平成18年10月19日(控訴棄却,東京高等裁判所)
      上告及び上告受理申立て 平成18年11月1日
      終了年月日 平成19年4月24日(上告棄却,上告不受理決定,最高裁判所)
    (サ) 広島江東裁判所松江支部平成18年(行コ)第5号
     損害賠償代位等住民訴訟控訴事件
     控訴人(原告)米子市住民3名
     被控訴人(被告)JFEエンジニアリング(株)(旧商号:日本鋼管(株))
      提訴年月日 平成12年8月9日(鳥取地方裁判所平成12年(行ウ)第2号)
            判決年月日 平成18年9月26日(請求棄却,鳥取地方裁判所)
      控訴年月日 平成18年10月3日
   (シ) 東京高等裁判所平成18年(行コ)第289号
     損害賠償代位請求控訴事件
     控訴人(被告)日立造船(株)
     被控訴人(原告)豊栄市住民1名
      提訴年月日 平成12年10月6日(新潟地方裁判所平成12年(行ウ)第13号)
      判決年月日 平成18年9月28日(一部認容,新潟地方裁判所)
      控訴年月日 平成18年10月11日
    (ス) 東京高等裁判所平成17年(行コ)第223号
     損害賠償代位請求控訴事件
     控訴人(原告)熱海市住民1名
     被控訴人(被告)JFEエンジニアリング(株)(旧商号:日本鋼管(株))ほか6名
      提訴年月日 平成12年10月20日(静岡地方裁判所平成12年(行ウ)第22号)
            判決年月日 平成13年6月28日(訴え却下,静岡地方裁判所)
      控訴年月日 平成13年7月11日(東京高等裁判所平成13年(行コ)第164号)
      判決年月日 平成14年2月20日(控訴棄却,東京高等裁判所)
      上告年月日 平成14年3月6日(最高裁判所平成14年(行ツ)第101号)
      判決年月日 平成14年11月12日(第1審へ差戻し,最高裁判所)
      判決年月日 平成17年7月29日(請求棄却,静岡地方裁判所)
      控訴年月日 平成17年8月3日
    (セ) 大津地方裁判所平成18年(行コ)第742号
     損害賠償請求事件
     原告 湖北広域行政事務センター
     被告 日立造船(株)ほか4名
      提訴年月日 平成18年11月16日
   (ソ) 名古屋地方裁判所平成19年(ワ)第360号
     損害賠償請求事件
     原告 名古屋市
     被告 三菱重工業(株)ほか1名
      提訴年月日 平成19年1月29日
   (タ) 名古屋地方裁判所平成19年(ワ)第1472号
     損害賠償請求事件
     原告 一宮市
     被告 日立造船(株)ほか4名
     控訴年月日 平成19年3月30日
  イ 事案の概要
    地方公共団体発注のごみ処理施設建設工事に係る入札談合について,公正取引委員
   会は,平成11年8月13日,日立造船(株)ほか4社(以下「日立造船ほか4社」という。)
   に対し,勧告を行ったところ,日立造船ほか4社はこれを応諾しなかったため,同年
   9月8日,審判手続の開始を決定し,平成18年6月27日,審判審決を行った。
    前記原告らは,日立造船ほか4社らに対して,地方自治法第242条の2の規定に基づ
   き,各地方自治体に代位して,又は被害者の立場で損害賠償を求める訴訟を前記ア各
   裁判所に提起した。
  ウ 訴訟手続の経過及び判決の概要
    前記16件の訴訟のうつ9件については,平成18年度中に判決があり,うち8件につ
   いては上訴があった(残り1件については,上訴期間中であり確定していない。)。こ
   のため,平成18年度末に係属している事件は16件である。
    各判決の概要は以下のとおりである。
   (イ) 上尾市発注のごみ処理施設建設工事に係る住民訴訟
     上尾市の住民である原告が,上尾市が被告(JFEエンジニアリング(株))との間で
    締結したごみ処理施設建設工事請負契約は,被告を含む入札参加業者らが談合した
    結果,被告が応札して締結したものであり,これにより上尾市が損害を被ったとし
    て旧地方自治法第242条の2第1項第1号(住民代位訴訟)の規定に基づき,被告に
    対して損害賠償金(34億4000万円)等の支払を求めて平成12年1月26日に提訴した
    事件(さいたま地方裁判所平成12年(行ウ)第4号)の控訴審である。
     原審(さいたま地方裁判所)は,訴えの一部を認容し,被告に対し,本件ごみ処
    理施設建設工事請負金額(177億1600万円)の5%に相当する8億8580万円及び年5
    分の割合による遅延損害金の支払を命じたが,控訴審(東京高等裁判所)は,被告
    を含む大手5社が,全国各地の地方公共団体が発注するごみ処理施設建設工事につ
    き談合を行っていたことが認められるものの,本件工事の入札における談合を直接
    的に証明するような証拠は存在しないとして,原審判決のうち被告敗訴部分を取り
    消した(平成19年4月11日)。
   (ウ) 京都市発注のごみ処理施設建設工事に係る住民訴訟
      京都市住民である原告らが,京都市が被告(川崎重工業(株))との間で締結したご
     み処理施設建設工事請負契約は,被告を含む入札参加業者らが談合した結果,被告
     が応札して締結されたものであり,これにより京都市が損害を被ったとして,旧地
     方自治法第242条の2第1項第4号(住民代位訴訟)の規定に基づき,被告に対して
     工事代金として受け取った公金を京都市に返還するよう求めて平成12年2月10日及
     び同年3月17日に提起した事件(京都地方裁判所平成12年(行ウ)第3号及び同第
     7号)の控訴審及び上告審である。
      原審(京都地方裁判所)は,訴えの一部を認容し,被告に対し,本件ごみ処理施
     設建設工事請負金額(228億9000万円)の5%に相当する11億4450万円及び年5分の
     割合による遅延損害金の支払を命じたが,控訴審(大阪高等裁判所)は,原審の判
    決を変更して,被告に対して前記請負金額の8%に相当する18億3120万円の支払を
    命じた。これに対し,被告は最高裁判所に上告及び上告申立てを行ったが,平成19
    年4月24日,同裁判所は上告棄却及び上告不受理決定を行い,事件が終了した。
    (オ) 東京都発注のごみ処理施設建設工事に係る住民訴訟
      東京都の住民である原告らが,東京都(その後,一部の工事については,東京二
    十三区清掃一部事務組合が発注者の地位を継承した。)が被告ら((株)タクマ,日立造
    船(株)及び三菱重工業(株))との間で締結したごみ処理施設建設工事請負契約は,前
    記被告らを含む入札参加業者らが談合した結果,前記被告らが応札して締結したも
    のであり,これにより東京都が損害を被ったとして旧地方自治法第 242条の2第1
        項第1号の規定(住民代位訴訟)の規定に基づき,前期被告らに対して損害賠償金
    (307億8117万円)等の支払を求めるとともに,被告ら(東京都知事及び東京二十三
    区清掃一部事務組合管理者)が損害賠償請求を怠る事実が違法であることの確認を
    求めて平成12年7月14日に提訴したもの。
     判決(東京地方裁判所)では,訴えの一部が認容され,被告ら((株)タクマ,日立
    造船(株)及び三菱重工業(株))に対し,本件ごみ処理施設建設工事請負金額(1995億
    5166万7000円)の5%に相当する97億7758万3350円及び年5分の割合による遅延損
    害金の支払が命じられるとともに,被告ら(東京都知事及び東京二十三区清掃一部
    事務組合管理者)が損害賠償請求を怠る事実が違法であることが確認された。
   (カ) 神戸市発注のごみ処理施設建設工事に係る住民訴訟
     神戸市の住民である原告らが,神戸市が被告(川崎重工業(株))との間で締結し
    たごみ処理施設建設工事請負契約は,被告を含む入札参加業者らが談合した結果,
    被告が応札して締結されたものであり,これにより神戸市が損害を被ったとして,
    旧地方自治法第242条の2第1項第4号(住民代位訴訟)の規定に基づき,被告に対
    して,損害賠償金(27億2950万円)等の支払を求めて平成12年7月19日に提訴した
    もの。
     判決(神戸地方裁判所)では,訴えの一部が認容され,被告に対し,本件ごみ処
    理施設建設工事請負金額(272億9500万円)の5%に相当する13億6475万円及び年5
    分の割合による遅延損害金の支払が命じられた。
    (キ) 横浜市発注のごみ処理施設建設工事に係る住民訴訟
     横浜市の住民である原告らが,横浜市が被告ら(三菱重工業(株)及び JFEエンジ
    ニアリング(株))との間で締結したごみ処理施設建設工事請負契約は,前記被告ら
    を含む入札参加業者らが談合した結果,前期被告らが応札して締結されたものであ
    り,これにより横浜市が損害を被ったとして,旧地方自治法第242条の2第1項第4
    号(住民代位訴訟)の規定に基づき,前記被告らに対して損害賠償金(60億3580万
    円)等を横浜市に支払うよう求めるとともに,被告(横浜市長)が損害賠償請求を
    怠る事実が違法であることの確認を求めて平成12年7月21日に提訴したもの。
     判決(横浜地方裁判所)では,訴えの一部が認容され,被告ら(三菱重工業(株)
    及びJFEエンジニアリング(株))に対し,本件ごみ処理施設建設工事請負金額(603億
    5800万円)の5%に相当する30億1790万円及び年5分の割合による遅延損害金の支
    払が命じられるとともに,被告(横浜市長)が損害賠償請求を怠る事実が違法であ
    ることが確認された。
   (ク) 尼崎市発注のごみ処理施設建設工事に係る住民訴訟
      尼崎市の住民である参加人らが,尼崎市が被告(日立造船(株))との間で締結した
    ごみ処理施設建設工事請負契約は,被告ら(三菱重工業(株), JFEエンジニアリン
    グ(株),日立造船(株),(株)タクマ,川崎重工業(株)及び(株)クボタ)が談合し又
    はこれに協力した結果,被告(日立造船(株))が応札して締結されたものであり,
    これにより尼崎市が損害を被ったとして,旧地方自治法第242条の2第1項第4号
    (住民代位訴訟)の規定に基づき,前記被告らに対して損害賠償金(10億6090万円)
    等を尼崎市に支払うよう求めて平成12年7月28日に提訴したもの。
     判決(神戸地方裁判所)では,訴えの一部が認容され,被告らに対し,本件ごみ
    処理施設建設工事請負金額(106億0900万円)の5%に相当する 5億3045万円及び
     年5分の割合による遅延損害金の支払が命じられた。
    (ケ)  福岡市発注のごみ処理施設建設工事に係る住民訴訟
      福岡市の住民である原告らが,福岡市が被告(日立造船(株))との間で締結したご
     み処理施設建設工事請負契約は,被告ら(日立造船(株),(株)タクマ,川崎重工業
        (株),JFEエンジニアリング(株)及び三菱重工業(株))が談合した結果,被告(日立
        造船(株))が応札して締結されたものであり,これにより福岡市が損害を被ったと
        して,旧地方自治法第242条の2第1項第4号(住民代位訴訟)の規定に基づき,前
        記被告らに対して損害賠償金(29億8288万円)等を福岡市に支払うよう求めるとと
        もに,被告(福岡市長)が損害賠償請求を怠った事実が違法であることの確認を求
        めて平成12年8月3日に提訴したもの。
      判決(福岡地方裁判所)では,訴えの一部が認容され,前記被告らに対し,本件
     ごみ処理施設建設工事請負金額(298億2880万円)の7%に相当する20億8801万6000
     円及び年5分の割合による遅延損害金の支払が命じられるとともに,被告(福岡市
     長)が損害賠償請求を怠る事実が違法であることが確認された。
    (コ)  町田市発注のごみ処理施設建設工事に係る住民訴訟
      町田市の住民である原告が,地方公共団地の一部事務組合である多摩ニュータウ
    ン環境組合が被告(日立造船(株))との間で締結したごみ処理施設建設工事請負契
    約は,被告(日立造船(株))を含む入札参加業者らが談合した結果,被告(日立造
    船(株))が応札して締結されたものであり,これにより町田市が損害を被ったとし
    て,旧地方自治法第242条の2第1項第4号(住民代位訴訟)の規定に基づき,被告
    (日立造船(株))に対して損害賠償金(38億5941万円)等を多摩ニュータウン環境
    組合に支払うよう求めるとともに,被告(多摩ニュータウン環境組合管理者)が損
    害賠償請求を怠った事実が違法であることの確認を求めて平成12年8月4日に提訴
    したもの。
     判決(東京地方裁判所)では,訴えの一部が認容され,被告(日立造船(株))に対
    し,本件ごみ処理施設建設工事請金額(257億2940万円)の5%に相当する12億8647
    万円及び年5分の割合による遅延損害金の支払が命じられるとともに,被告(多摩
    ニュータウン環境組合管理者)が損害賠償請求を怠る事実が違法であることが確認
    された。これに対し,被告らは東京高等裁判所に控訴したところ,同裁判所はこれ
    を棄却したため,被告(日立造船(株))はさらに最高裁判所に上告及び上告受理申
    立てを行ったが,平成19年4月24日,同裁判所は上告棄却及び上告不受理決定を行
    い,事件が終了した。
    (サ)  米子市発注のごみ処理施設建設工事に係る住民訴訟
     米子市の住民である原告らが,米子市が被告(JFEエンジニアリング(株))との間
    で締結したごみ処理施設建設工事請負契約は,被告を含む入札参加業者らが談合し
    た結果,被告(JFEエンジニアリング(株))が応札して締結されたものであり,これ
    により米子市が損害を被ったとして,旧地方自治法第242条の2第1項第4号(住民
    代位訴訟)の規定に基づき,被告(JFEエンジニアリング(株))に対して損害賠償金
    (15億2571万3000円)等を米子市に支払うよう求めるとともに,被告(米子市長)が
    損害賠償請求を怠った事実が違法であることの確認を求めて平成12年8月9日に提
    訴したもの。
     判決(鳥取地方裁判所)では,被告(JFEエンジニアリング(株))を含む大手5社
    が,全国各地の地方公共団体の発注するごみ処理施設建設工事につき談合を行って
    いたことが認められ,本件工事についても受注予定者を被告(JFEエンジニアリング
    (株))に決定したと認められるものの,アウトサイダーに対する協力要請等を推認
    させる具体的証拠はなく,指名業者間で競争関係が排除されていたとは認め難いと
    して,原告らの請求を棄却した。
    (シ)  豊栄市発注のごみ処理施設建設工事に係る住民訴訟
      豊栄市の住民である原告が,地方公共団体の一部事務組合である豊栄郷清掃施設
     処理組合が被告((日立造船(株))との間で締結したごみ処理施設建設工事請負契約
    は,被告(日立造船(株))を含む入札参加業者らが談合した結果,被告(日立造船
    (株))が応札して締結されたものであり,これにより豊栄郷清掃施設処理組合が損
    害を被ったとして,旧地方自治法第242条の2第1項第4号(住民代位訴訟)の規定
    に基づき,被告(日立造船(株))に対して損害賠償金(2億5441万円)等を豊栄郷
    清掃施設処理組合に支払うよう求めるとともに,被告(新潟市長)が損害賠償請求
    を怠った事実が違法であることの確認を求めて平成12年10月6日に提訴したもの。
     判決(新潟地方裁判所)では,訴えの一部が認容され,被告(日立造船(株))に対
    し,本件工事における被告(日立造船(株))の最低入札金額(26億2650万円)の5%
     に相当する1億3132万5000円から,契約に当たり最低入札金額から値引きした金額
     8240万円を控除した4892万5000円及び年5分の割合による遅延損害金の支払が命じ
     られるとともに,被告(豊栄郷清掃施設処理組合管理者)が損害賠償請求を怠る事
     実が違法であることが確認された。