第5章 競争政策に関する理論的・実証的基盤の整備

第1 概説

 いわゆる経済の高度化,ボーダーレス化等が進展する中で,公正取引委員会における競
争政策上の制度設計や法執行に関し,経済学的,あるいは法学的な分析の成果を取り入れ
る必要性がますます高まっている。
 このような中,公正取引委員会は,平成15年6月,事務総局内に「競争政策研究センター」
を発足させた。同センターでは,外部の研究者や実務家と公正取引委員会職員との協働に
よる研究等,独占禁止法及び関連する法律の執行や競争政策の企画・立案・評価を行う上
での理論的な基礎を強化するための活動を展開している。
 平成18年度においては,5研究テーマに取り組むとともに,一橋大学21世紀COE/RESプロ
グラム,(株)日本経済新聞社及び(財)公正取引協会と国際シンポジウムを共催したほか,
ワークショップを13回,公開セミナーを3回開催するなど,精力的に活動を行った。

第2 競争政策研究センターの活動状況

1 共同研究報告書・ディスカッション・ペーパー

 競争政策研究センターでは,経済学者,法学者及び公正取引委員会職員の三者協働を原
則に,複数の競争政策に関する研究テーマに取り組んでいる。平成18年度においては,5
テーマについて研究を行い,7本の共同研究報告書を公表した。
 このほか,共同研究報告書で取り上げたテーマを更に掘り下げた研究や,競争政策研究
センターが開催する公開セミナーや国際シンポジウムの際に取りまとめた研究等をディス
カッション・ペーパーとして公表している(第1表,第2表及び第3表参照)。

   

   

   

2 ワークショップ
 競争政策研究センターでは,共同研究の研究計画,進捗状況,最終報告書案等について,
客員研究員等と公正取引委員会職員が議論することにより,共同研究の質的向上を図るこ
とを主たる目的として,定期的にワークショップを開催している。平成18年度にはワーク
ショップを13回開催した(第4表参照)。

   

3 インフォーマル・ワークショップ
 競争政策研究センターでは,客員研究員等が有している問題意識の将来の研究課題の可
能性について公正取引委員会職員と客員研究員等が議論するために,インフォーマル・
ワークショップを開催している。

4 BBL(Brown Bag Lunch)ミーティング
 競争政策研究センターでは,公正取引委員会職員が有している問題意識やアイディアに
ついて,客員研究員等を交えて意見交換するために,昼食時間を利用してBBLミーティング
を開催している。

5 公開セミナー
 競争政策研究センターでは,共同研究報告書等の研究成果を対外的に紹介するために,
公開セミナーを開催している。この公開セミナーは,海外の競争当局高官や学識経験者の
来日機会を捉えた講演会の場としても活用されている(第5表参照)。

   

6 国際シンポジウム
 競争政策研究センターでは,競争政策に関する国際的な交流拠点としての機能を果たすた
め,海外の競争当局担当者や学識経験者を迎えた国際シンポジウムを開催している。
 平成19年3月23日には,一橋大学21世紀COE/RESプログラム,(株)日本経済新聞社及び(財)
公正取引協会との共催により,ロバート・D・ウィリッグ氏(プリンストン大学ウッドロー
ルソン校教授(経済学,公共政策学)),ポール・シーブライト氏(トゥールーズウィ社会
科学大学教授(経済学))及び小田切宏之氏(一橋大学大学院経済学研究科教授)を講師に,
上杉秋則氏(公正取引委員会顧問(前事務総長))及び小林利治氏( (株)東芝執行役常務法
務部長・(社)日本経済団体連合会経済法規委員会競争法部会部会長)を コメンテーターに
招へいし,「M&Aと競争政策」をテーマにした国際シンポジウムを開催した。