第3章 審判及び訴訟

第1 審判

  平成18年度における審判件数は,前年度から引き継いだもの134件,平成18年度中に審判
 手続を開始したもの21件の合計155件(独占禁止法違反に係るものが30件,課徴金納付
命令
 に係るものが114件,景品表示法違反に係るものが11件)であった。 これらのうち,平成
 18年度中に102件について審決を行い,2件について審判手続打ち切り決定を行った。102件
 の審決の内容は,審判審決14件,同意審決42件,課徴金の納付を命ずる条文は旧法のもので
 ある。)。この結果,平成18年度末における審判件数(平成19年度に引き継ぐもの)は93件と
 なっている(同意審決42件は,いずれも一部の被審人のみに対するものであり,残る被審
 人については審判手続係属中であるため,係属事件の件数に影響しない。)。
   

      

   

   

   

   
      (注)   一連番号1~6事件,8~41事件,44~45事件,52~54事件,57~58事件,60~61事件,
          67~68事件,78~83事件及び84~86事件は手続を併合している。



第2 審判審決
 1 平成16年(判)第1号(株)大石組に対する審決(旧清水市等発注の土木一式工  事の入札談合事件)
    

 
(1) 被審人
   

 (2) 事件の経過
    本件は,公正取引委員会が(株)大石組(以下「被審人」という。)ほか24社に対し,独
   占禁止法第48条2項の規定に基づき勧告を行ったところ,被審人がこれを応諾しなかっ
   たので,被審人に対し同法第49条第1項の規定に基づく審判開始決定を行い,審判官を
   して審判手続を行わせたものである。
    当委員会は,被審人が担当審判官の作成した審決案に対し,独占禁止法第53条の2の
   2の規定に基づき問う委員会に対し直接鎮守油津の申出を行ったので,平成18年3月16
  
日に被審人から陳述聴取を行い,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
 (3) 認定した事実の概要及び判断の概要
   ア 事実の概要
     被審人及び28名は,遅くとも平成11年6月1日以降,静岡県清水市及び清水市押切
    北土地区画整理組合(以下「旧清水市等」という。)が制限付一般競争入札又は指名
    競争入札の方法により Aの等級に格付している者のみを入札参加者として土木一式
    工事として発注する工事(以下「旧清水市等発注の土木工事」という。)について,    受注価格の低落防止を図るため,共同して,受注予定者を決定し,受注予定者以外の者
   は,受注予定者がその定めた価格で受注できるようにしていた。
  イ 主要な争点及びそれに対する判断
   (ア) 本件基本合意の存否について
     平成11年6月から平成15年2月までに発注された旧清水市等発注の土木工事105物
    件のうち80物件について,被審人及び28名は,あらかじめ一定の方法により受注予定
    者以外の者を決定し,受注予定者以外の者は受注予定者が受注できるよう協力してお
    り,その目的は受注価格の低落防止等であると認識していた事実から,本件基本合意
    意が存在し,その合意のしたに受注調整が行われていたことが認められる。
   (イ) 被審人の本件基本合意への参加について
     被審人は,受注調整が行われていたと認められる80物件のうち,60物件の入札に参
    加参加していた。 被審人は,被審人が受注した5物件すべてを含む8物件について
    具体的に受注調整に関与していたこと,60 物件のうち同8物件以外の物件について
    も,28名のうち受注を希望する者は,被審人と他の入札参加者を区別することなく,
    受注を希望する場合には希望表明を行い,受注予定者になった場合には入札価格を連
    絡していたことなどから,被審人は本件基本合意に参加していたと認めることができ
    る。
   (ウ) 被審人に対して排除措置を命ずる必要性について
     被審人及び28名は,少なくとも3年8か月余の長期にわたって受注調整行為を行
    っており,被審人らの間で強調的関係が確立していたのであり,また,本件違反行
    為の取りやめは,構成取引員会が立入検査を行ったことによるものであって,被審
    人らの自発的意思に基づくものではない。
     さらに,被審人は,本件違反行為意外にも独占禁止法違反を行い,当委員会から
    処分を受けていることから,今後,被審人が本件違反行為と同様の行為を繰り返す
    おそれがあると認められることなどから,「特に必要があると認めるとき」に該当
    し,排除措置は必要であると認めることができる。
 (4) 法令の摘要
    独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
 (5) 命じた措置
   ア 被審人は,28名と共同して,遅くとも平成11年6月1日以降行っていた,旧清水市
    等発注の特定土木工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるよう
    にする行為を取りやめていることを確認しなければならない。
   イ 被審人は,次の事項を静岡市に通知しなければならない。
   (ア) 前項に基づいて採った措置
   (イ) 今後,他の事業者と共同して,静岡市が制限付一般競争入札又は指名競争入札の
     方法により土木一式工事として発注する工事について,受注予定者を決定せず,自
     主的に受注活動を行う旨
   ウ 被審人は,今後,他の事業者と共同して,静岡市が競争入札の方法により土木一式
    工事として発注する工事について,受注予定者を決定してはならない。


2 平成16年(判)第8号東海工業(株)に対する審決ほか1件(大阪市水道局発注の配水
 管工事跡ほ装復旧工事の入札談合事件)
   

 (1) 被審人
   

 (2) 事件の経過
    本件は,公正取引委員会が東海工業(株)(以下「被審人東海工業」という。)ほか11社
   に対し,また,(株)新歩組(以下「被審人新歩組」という。)ほか1社に対し,独占禁止
   法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,被審人東海工業及び被審人新歩組
   (以下「被審人ら」という。)がこれを応諾しなかったので,被審人らに対し同法第49
   条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせたもので
   ある。
    当委員会は,被審人らが担当審判官の作成した審決案に対し,異議の申立てを行った
   ので,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
 (3) 認定した事実の概要及び判断の概要
  ア 事実の概要
   (ア) 平成16年(判)第8号審判事件
     被審人東海工業ほか11社は,遅くとも平成12年1月17日ころ以降,大阪市が水道
    局において工区ごとに指名見積り合わせの方法により発注する配水管工事跡ほ装復
    旧工事(A)について,受注価格の低落防止を図るため,共同して,受注予定者を
    決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
   (イ) 平成16年(判)第9号審判事件
     被審人新歩組及びその他の3社(以下「4社」という。)は,平成12年1月17日
    ころ以降,大阪市が水道局において工区ごとに指名見積り合わせの方法により発注
    する配水管工事跡ほ装復旧工事(E)について,受注価格の低落防止を図るため,
    共同して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
  イ 主要な争点及びそれに対する判断
   (ア) 平成16年(判)第8号審判事件
    a 被審人東海工業の本件違反行為への参加の有無について
      証拠により,被審人東海工業の会合への出席が認定されるのであり,被審人東
     海工業は本件違犯行為に参加していたと認められる。
    b 被審人東海工業に対して排除措置を命ずる必要性について
      被審人東海興業は,少なくとも2年以上の長期にわたって受注調整行為を行っ
     ており,強調的関係が確立していたのであり,さらに,本件違反行為の取りやめ
     は,公正取引委員会が立入検査を行ったことによるものであって,被審人東海工
     業の自発的意思に基づくものではないことにかんがみると,今後,被審人東海工
     業が本件違反行為と同様の行為を繰り返すおそれが高いと認めざるを得ない。
   (イ) 平成16年(判)第9号審判事件
    a 4社以外にも見積比較参加者が存在していることについて
      本件基本合意が存在していたことは,証拠上認められる。
      一般に,市場における競争を制限するためには,競争関係にある事業者のすべ
     てが合意する必要なないのであるから,一部の競争事業者を除いた合意が成立し
     ないとはいえない。
      また,本件においては,4社のうち受注予定者となった者は,4社以外の見積
     比較参加者に対して,7物件のすべてについて,個々の物件ごとに,その受注希
     望の有無を問い合わせ,その結果,7物件のうち6物件については,4社以外の
     見積比較参加者が受注を希望しないことを確認した上で,見積比較に参加し,落
     札していたのであるから,競争制限効果が生じていたことは明らかである。
    b 被審人新歩組に対して排除措置を命ずる必要性について
      本件においては,発注者である大阪市が談合情報を受け競争を活性化させると
     の目的で工区変更を行った後における違反行為であること,4社は,少なくとも
     3年以上の長期にわたって受注調整行為を行っており,4社の間で強調的関係が
     確率していたことが認められる。
      また,本件違反行為の取りやめは,公正取引委員会が審査を開始したことを契
     機としたものであって,4社の自発的意思に基づくものではないことが推認され
     る。
      なお,被審人新歩組の代表者は,被審人新歩組が,今後,大阪市発注のほ装復
     旧工事の公募型入札に参加しないことを当審判廷において制約しているが,それ
     だけでは入札に参加し無い事が確実とはいえない。
      したがって,今後,被審人新歩組が本件違反行為と同様の行為を繰り返すおそ
     れがあると認められることなどから,独占禁止法第54条第2項の規定により,排
     除措置を命ずる必要がある。
 (4) 法令の適用
    独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
 (5) 命じた措置
  ア 平成16年(判)第8号審判事件
   (ア) 被審人東海工業は,11社と共同して,平成12年1月17日ころ以降行っていた,前
    記(3)ア(ア)の行為を取りやめていることを確認しなければならない。
   (イ) 被審人東海工業は,次の事項を大阪市に通知しなければならない。
    a 前項に基づいて採った措置
    b 配水管工事跡ほ装復旧工事について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活
     動を行う旨
   (ウ) 被審人東海工業は,今後,他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせ又
    は競争入札の方法により発注する配水管工事跡ほ装復旧工事について,受注予定者
    を決定してはならない。
  イ 平成16年(判)第9号審判事件
   (ア) 被審人新歩組は,他の事業者と共同して,平成12年1月17日ころ以降行っていた,
    前記(3)ア(イ)の行為を取りやめていることを確認しなければならない。
   (イ) 被審人新歩組は,次の事項を大阪市に通知しなければならない。
    a 前項に基づいて採った措置
    b 今後,他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせの方法により発注す
     る配水管工事跡ほ装復旧工事について,受注予定者を決定せず,自主的に受注活
    動を行う旨
   (ウ) 被審人新歩組は,今後,他の事業者と共同して,大阪市が指名見積り合わせ又は
    競争入札の方法により発注する配水管工事跡ほ装復旧工事について,受注予定者を
    決定してはならない。


3 平成16年(判)第7号(株)竹中土木及び東海工業(株)に対する審決(大阪市水道局発 注の配水設備集z船工事の入札談合事件)
   

 (1) 被審人
   

 (2) 事件の経過
    本件は,公正取引委員会が(株)竹中土木及び東海工業(株)(以下「被審人ら」という。)
   に対し,独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,被審人らがこれ
   を応諾しなかったので,被審人らに対し同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定
   を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
    当委員会は,被審人らが担当審判官の作成した審決案に対し異議の申立てを行い,さ
   らに,被審人(株)竹中土木が独占禁止法第53条の2の2の規定に基づき当委員会に対し
   直接陳述の申出を行ったので,平成18年12月25日に被審人 (株)竹中土木から陳述聴取
   を行い,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
 (3) 認定した事実の概要及び判断の概要
  ア 事実の概要
   (ア) 被審人らの間の競争関係の存否について
     被審人らは,排水設備修繕工事に熟練した下請業者をそれぞれ確保していたので
    あるから,当該配水設備修繕工事の施工能力を有しており,競争関係はあったと認
    められる。
   (イ) 本件違反行為の存否について
     証拠により,被審人らにおいて基本合意に基づき受注予定者の決定が行われてい
    たことが認められる。
   (ウ) 被審人らに対して排除措置を命ずる必要性について
     被審人らは,少なくとも3年以上の長期にわたり本件違反行為を行っており,強
    調的関係が確立していたのであり,さらに,本件違反行為の取りやめは公正取引委
    員会の審査開始を契機とするものであって,被審人らの自発的意思に基づくもので
    はないことにかんがみると,将来同様の違反行為を繰り返すおそれがあると認めざ
    るを得ない。
 (4) 法令の適用
    独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
 (5) 命じた措置
  ア 被審人らは,平成12年1月17日ころ以降行っていた,大阪市が指名見積り合わせの
   方法により水道局において発注する水道局東部工事事務所の管轄区域及び水道局北部
   工事事務所の管轄区域を施工場所とする排水設備修繕工事について,受注予定者を決
   定し,受注予定者が受注できるようにする行為を取りやめていることを確認しなけれ
    ばならない。
  イ 被審人らは,次の事項を大阪市に通知しなければならない。
   (ア) 前項に基づいて採った措置
   (イ) 今後,共同して,大阪市が指名見積り合わせ又は競争入札の方法により発注する
    排水設備修繕工事について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注
    活動を行う旨
  ウ 被審人らは,今後,それぞれ,相互の間又は他の事業者と共同して,大阪市が指名
   見積り合わせ又は競争入札の方法により発注する排水設備修繕工事について,受注予
   定者を決定してはならない。


4 平成17年(判)第1号(株)ビームスに対する審決ほか2件(輸入ズボンの原産刻不
 当表示事件)
   


 (1) 被審人
   

 (2) 事件の経過
    本件は,公正取引委員会が6社に対し,景品表示法第6条第1項の規定に基づき排除
   命令を行ったところ,八木通商(株)(以下「八木通商」という。)を除く5社(「以下「被
   審人ら」という。)から審判手続の開始の請求があったので,被審人らに対し独占禁止
   法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして審判手続を行わせた
   ものである。
    当委員会は,被審人(株)ユナイテッドアローズが担当審判官の作成した審決案に対し
   異議の申立てを行ったので,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行い,被審
   人(株)ビームス及び同(株)ベイクルーズが担当審判官の作成した審決案に対し,独占禁
   止法第53条の2の2の規定に基づき当委員会に対し直接陳述の申出を行ったので,平成
   19年1月11日に同2社から陳述聴取を行い,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審
   決を行った
    なお,残る被審人2社について審判が係属している。
 (3) 認定した事実の概要及び判断の概要
  ア 事実の概要
    被審人(株)ユナイテッドアローズにあっては平成12年8月ころから平成16年7月こ
   ろまでの間,同(株)ビームス及び同(株)ベイクルーズにあっては平成12年2月ころか
   ら平成16年7月ころまでの間,被審人らの小売店舗等において一般消費者向けに,被
   審人らの社名とともに「イタリア製」及び「MADE IN ITALY」と記載された品質表示タッ
   グ並びに被審人らの社名及び商標とともに「イタリア製」と記載された下げ札が付さ
   れたジー・ティー・アー モーダ社製のズボン(八木通商が輸入したもの)を販売し
   たが,当該ズボンの原産国はルーマニアであった。
  イ 主要な争点及びそれに対する判断
   (ア) 被審人らが景品表示法上の表示を行った者(表示の主体)に該当するかについて
      被審人らは,本件商品の購入を始めるに当たり,八木通商の説明に基づき本件商
    品がイタリア製であると認識し,その認識の下に,「イタリア製」と記載した本件
    下げ札を自ら作成したことなどを認めることができ,これらの事実から,被審人ら
    は,本件下げ札及び本件品質表示タッグの表示内容の決定に関与した者に該当する
    といえる。
   (イ) 被審人らに対して排除措置を命じる必要性に就いて
     被審人らのウェブサイト又は店頭における訂正告知によっても不当に該当された
    顧客の大部分に告知されたと認めるに足る証拠がなく,一般消費者の五人を排除す
    るには不十分である。
     なお,被審人(株)ビームスについては,小売業者として,原産国に係る不当表示
    を防止するための必要な注意を十分尽していたものと認めることができるので,再
    発防止のための措置を命ずる必要性はないものと認められる。
   (ウ) 被審人らに対して排除措置を命じることが裁量権の逸脱及び平等原則違反に当た
    るかについて
     被審人らが長期にわたり本件商品を販売していること等の事実から,本件違反行
    為の及ぼした影響は軽微とはいえず,排除措置を命じることが不当であるとはいえ
    ない。
 (4) 法令の適用
    景品表示法第4条(「商品の原産国に関する不当な表示」第2項第1号に該当)
 (5) 命じた措置
  ア 前記(1)の標の各被審人は,一般消費者に誤認される表示を行っていた旨を公表しな
   ければならない。
  イ 被審人(株)ベイクルーズ及び同(株)ユナイテッドアローズは,再発防止策を講じ,
   これを自社の役員及び従業員に周知徹底させなければならない。
  ウ 被審人(株)ベイクルーズ及び同ユナイテッドアローズは,今後,一般消費者に誤認
   される表示をしてはならない。

5 平成12年(判)第8号ニプロ(株)に対する審決(アンブル生地管市場の私的独占
 事件)
   

 (1) 被審人
   

 (2) 事件の経過
    本件は,公正取引委員会がニプロ(株)(以下「被審人」という。)に対し,独占禁止法
   第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ, 被審人がこれを応諾しなかったの   で,被審人に対し同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定を行い,審判官をして
   審判手続を行わせたものである。
    当委員会は,担当審判官の作成した審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行
   った。
 (3) 認定した事実の概要及び判断の概要
  ア 事実の概要
    被審人は,(株)ナイガイ及び内外硝子工業(株)((以下「ナイガイブループ」)と
    いう。)による輸入生地管の取扱いの継続又は拡大を索制し,これに対して制裁を加え
  る目的の下に後記(ア)ないし(ウ)の行為を行ったが,これらは,ナイガイグループの事業
   活動を排除する効果を有し,競争の実質的制限をもたらすものであった。
   (ア) (株)ナイガイのみに対する平成7年4月1日からの取引条件の変更(公定価格ま
     での値上げ・手形サイトの短縮・特別値引きの全廃)の申入れ
   (イ) 平成9年8月以降の(株)ナイガイに対する輸入生地管と同品種の日本電気硝子製
    生地管の受注拒否
   (ウ) (株)ナイガイおみに対する平成11年3月23日からの取引条件の変更(担保の差し
    入れ又は現金決済
  イ 主要な争点及びそれに対する判断
   (ア) 被審人の前記アの行為がナイガイグループの事業活動を排除する効果を有するも
    のであったか否か
     被審人の前記アの行為は,ナイガイグループの行う生地管輸入の排除の意図・目
    的をもって,ナイガイグループの輸入生地管に係る事業活動を排除し,また,他の
    アンプル加工業者に輸入生地管を取り扱うことを萎縮させ,ひいては被審人の競争
    者の事業活動を排除する蓋然性の極めた高いものであり,読k船禁止法第2条第5
    項の「他の事業者の事業活動を排除する」行為に該当する。
   (イ) 被審人の前記アの行為は,競争の実質的制限をもたらすものであるか否かについ
    て
     被審人の前記アの行為は,競争者の事業活動を排除する行為に該当するものであ
    り,暫定条件による取引が開始され,これにより被審人とナイガイブループの抗争
    が暫定的ながら解消される契機となった公正取引委員会の勧告前の状況においてみ
    ると,前記事業活動の排除を実現することができる状態が既に生じているというこ
    とができる。
     したがって,被審人の本件行為は,西日本地区の生地管の供給市場において独占
    的な日本電気硝子製生地管の供給者であって既に市場支配地を有する被審人が,輸
    入生地管の取扱いの継続又は拡大を索制し,これに対して制裁を加えることを企図
    し,ナイガイグループに対して行ったものであって,これにより競争力のある競争
    者の生地管の輸入を制限又は抑制して品質・価格による競争が生じ又は生じ得る状
    況を現出させないようにしているものであり,西日本地区における生地管の供給分
    野における競争を実質的に制限するものであると認められる。
  ウ 被審人に対して排除措置を命じる必要性について
    被審人の前記アの行為は, 本件審判開始決定の時までに存在し,かつ, 既になく
   なっていると認められる。そして,被審人の本件行為が取りやめられたとき以降,ア
   ンプルのプラスチック化の一層の進行等のため本件市場の規模は大幅に縮小している
   こと,(株)ナイガイの生地管の輸入も拡大傾向で移行していること等の本件市場の状
   況の大きな変化にかんがみると,本件は独占禁止法第54条第2項にに規定する「特に
   必要があると認めるとき」に該当する事情があるとはいえないものというべきである。
 (4) 法令の適用
    独占禁止法第3条(私的独占の禁止)
 (5) 主文
    被審人の前記(3)アの行為は,独占禁止法第3条に違反するものであるが,既になく
   なっていると認められるので,被審人に対し,格別の措置を命じない。

6 平成11年(判)第4号日立造船(株)ほか4社に対する審決(地方公共団体発注のご
 み処理施設建設工事の入札談合事件)
   


 (1) 被審人
   

 (2) 事件の経過
    本件は,公正取引委員会が日立造船㈱ほか4社(以下「被審人ら」という。)に対
   し,独占禁止法第48条第2項の規定に基づき勧告を行ったところ,被審人らがこれを
   応諾しなかったので,被審人らに対し同法第49条第1項の規定に基づき審判開始決定
   を行い,審判官をして審判手続を行わせたものである。
    当委員会は,被審人らが担当審判官の作成した審決案に対し,独占禁止法第53条の
   2の2の規定に基づき当委員会に対し直接陳述の申出を行ったので,被審人らから陳
   述聴取を行い,審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行った。
 (3) 認定した事実の概要及び判断の概要
  ア 事実の概要
    被審人らは,遅くとも平成6年4月以降,地方公共団体が指名競争入札等の方法に
   より発注する全連続燃焼式及び准連続燃焼式ストーカ炉の建設工事について,受注予
   定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。
  イ 主要な争点及びそれに対する判断
   (ア) 本件合意の存否について
     証拠によれば,被審人らは,平成6年4月以降,地方公共団体が指名競争入札等
    の方法により発注するストーカ炉の建設工事について,受注機会の均等化を図るた
    め(1)各社が受注希望の表明を行い,受注希望者が1社の工事については,その者を
    当該工事の受注予定者とし,受注希望者が複数の工事については,受注希望者間で
    話し合い受注予定者を決定する,(2)被審人らの間で受注予定者を決定した工事につ
    いて,被審人ら以外の者が指名競争入札に参加する場合には,受注予定者は自社が
    受注できるように被審人ら以外の者に協力を求める,(3)受注すべき価格は受注予定
    者が定め,受注予定者以外の者は,受注予定者がその定めた価格で受注できるよう
    に協力する旨の合意の下に,地方公共団体が建設を計画しているストーカ炉の建設
    工事について把握している情報を交換し共通化するなどし,受注予定者は各社の受
    注の均等を念頭において決定し,被審人ら以外のプラントメーカーが入札に参加し
    た場合,受注予定者等は,自社が受注できるよう協力を求め,その協力を得るよう
    にするなどして,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていたと
    認められる。
     被審人らは,平成6年4月から平成10年9月17日までの間において,被審人らが
    受注予定者を決定したと具体的に推認される工事を含め地方公共団体が指名競争入
    札等の方法により発注するストーカ炉の建設工事の過半について,受注予定者を決
    定し,これを受注することにより,地方公共団体が指名競争入札等の方法により発
    注するストーカ炉の建設工事の取引分野における競争を実質的に制限していたもの
    と認められる。
   (イ) 排除措置を命じる必要性について
     本件違反行為は,いわゆる入札談合であり,約4年5か月余の期間にわたり継続
    され,その終了の契機は,公正取引委員会の審査開始を契機とするものであって,
    被審人らが自発的に終了させたものではないこと,被審人らは,過去に,全連続燃
    焼式ごみ焼却施設の建設工事の市場における受注調整に関し,当委員会から警告の
    措置を受けたことがありながら,同様の本件違反行為を行うに及んでいること等か
    らして,被審人らにおいて,独占禁止法に違反する行為を防止するための体制に不
    備があったことが明らかであることなど諸事情を考慮すれば,将来同様の違反行為
    が再び行われるおそれがあると認めることができる。
     本件対象期間後に発注された本件ストーカ炉工事の入札において,被審人らは,
    本件対象期間中に被審人5社間で受注予定者を決定していた工事については,その
    多くで,受注予定者に決定されていた被審人が受注することを妨げないように,低
    価格による入札をあえて行わないという入札行動を取っていたものと推認すること
    ができる。このような競争を回避する行動は,長期間行われていた被審人らの違反
    行為の結果が残存していて競争秩序が十分に回復していないことを示すものといえ
    る。
     前記の点にかんがみると,本件は,「特に必要があると認めるとき」に該当する事
    情があるといえる。
 (4) 法令の適用
    独占禁止法第3条(不当な取引制限の禁止)
 (5) 命じた措置
  ア 被審人らは,遅くとも平成6年4月以降行っていた,地方公共団体が指名競争入札
   等の方法により発注する前記工事について,受注予定者を決定し,受注予定者が受注
   できるようにしていた行為を,平成10年9月17日以降行っていないことを確認しなけ
   ればならない。
  イ 被審人らは,次の事項を地方公共団体に通知し,自社の従業員に周知徹底させなけ
   ればならない。
   (ア) 前項に基づいて採った措置
   (イ) 今後,共同して,地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注する前記工事
    について,受注予定者を決定せず,各社がそれぞれ自主的に受注活動を行う旨
  ウ 被審人らは,今後,それぞれ,相互に又は他の事業者と共同して,地方公共団体が
   競争入札又は指名見積り合わせの方法により発注する前記工事について,受注予定者
   を決定してはならない。

7 平成17年(判)第26号ルートインジャパン(株)に対する審決(ホテルの浴場浴槽温
 水の不当表示事件)
   


 (1) 被審人
   

  (2) 事件の経過
   本件は,公正取引委員会がルートインジャパン(株)(以下「被審人」という。)に対し,
  景品表示法第6条第1項の規定に基づき排除命令を行なったところ,被審人から審判手
  続の開始請求があったので,被審人に対し独占禁止法第49条第1項の規定に基づき審判
  開始決定を行い,審判官をして審判手続を行なわせたものである。
    当委員会は,担当審判官が作成した審決案を調査の上,審決案と同じ内容の審決を行っ
  た。
 (3) 認定した事実の概要及び判断の概要
  ア 事実の概要
    被審人は,遅くとも平成16年4月ころから平成17年8月ころまでの間,「ルートイ
   ン」との名称を付したホテル(以下「各ルートインホテル」という。)において提供
   する役務の内容について,当該ホテルに設置した浴場の浴槽の温水が,水道水を加温
   した上で医薬部外品である温浴剤を溶かしたものであったにもかかわらず,「ラジウ
   ムイオン鉱泉大浴場」等の記載により,あたかも鉱泉又は温泉を使用したものである
   かのように表示していた。
  イ 主要な争点及びそれに対する判断
   (ア) 本件各表示内容が,一般消費者に対し,実際のものよりも著しく優良であると示
    すものといえるかについて
     各ルートインホテルの浴場の浴槽の温水は,水道水を加温して温浴剤を溶かした
    ものであったところ,被審人は,「ラジウムイオン鉱泉大浴場」,「ラジウム温泉大浴
    場」等の記載により,鉱泉又は温泉を使用したものであるかのように表示していた
    ものであり,一般消費者に実際のものよりも著しく優良であると誤認されるものと
    認められる。
   (イ) 本件各表示内容が不当に顧客を誘引するものであるかについて
     一般消費者に実際のものよりも著しく優良であると示す表示であると認められる
    以上,その内容により一般消費者の商品・役務の選択がゆがめられることになるか
    ら,不当に顧客を誘引すると認められる。被審人にそのような意図があったかどう
    かや実際に当該表示により顧客から苦情があったかどうかは違反行為の成否とは関
    係がない。
   (ウ) 排除措置の必要性又は排除措置を命ずることが裁量権の濫用に当たるかについて
     被審人は,平成17年6月9日以降直ちに表示内容を改めたと主張するが,それら
    は単に不当表示を取りやめたにすぎず,本件違反行為によって生じた誤認の排除及
    同様の行為の再発防止のための措置を命ずることが必要である。
 (4) 法令の適用
    景品常時方第4条
 (5) 命じた措置
   ア 被審人は,本件の表示が,提供する役務の内容について一般消費者に対し,実際の
       ものよりも著しく優良であると示すものであった旨を公示しなければならない。
   イ 被審人は,今後,同様の表示を行なうことにより,一般消費者に対し,実際より著
    しく優良であると示す表示をしてはならない。