第11章 消費者取引に関する業務

第1 概説

 近年,消費者ニーズの多様化,経済のサービス化・国際化等,消費者を取り巻く経済社会情勢は大きく変化してきており,また,規制緩和の進展に伴い,消費者への適切な情報提供を推進し,消費者の適正な商品・サービスの選択を確保していくことが重要な課題となっている。
 公正取引委員会では,独占禁止法及び景品表示法を厳正に運用し,違反事件の排除に努めるほか,消費者の関心の高い商品・サービスや電子商取引等の新しい分野における実態調査を行うこと等を通じて,景品表示法上の考え方を明らかにするためのガイドラインの策定等を行い,公正かつ自由な競争を促進し,消費者取引の適正化に努めている。

第2 消費者取引の適正化への取組

1 消費者向け電子商取引の適正化ヘの対応

公正取引委員会は,一般家庭におけるインターネットの急速な普及とともに広く行われるようになった消費者向け電子商取引について,健全な発展と消費者取引の適正化を図る観点から,次のような取組を行った。
・ 電子商取引監視調査システムによる常時監視の実施
 インターネット上の広告表示については,消費者向け電子商取引の健全な発展と適正化を図る観点から,従来から,一般消費者80名を「電子商取引調査員」に選定して,これらにインターネット上の広告表示の調査を委託し,問題となるおそれがあると思われる表示について報告を受け(電子商取引監視調査システム),景品表示法違反事件の端緒,景品表示法の遵守について啓発するメールの送信等に利用している。
 平成19年度は,電子商取引監視調査システムを通じ,942件のインターネット上の広告表示について,電子商取引調査員から問題となるおそれがあるとの報告を受けた。また,「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」(平成14年6月公表)に照らして問題があると認められた67サイトの管理者に対し,景品表示法の遵守について啓発するメールを送信することにより,これら管理者に自主的な表示の改善を促した。その結果,ほとんどの表示について改善がみられるなど一定の成果を上げている。

2 インターネット上の広告表示の適正化に関する国際的取組への参加

 インターネットにおいて生じる問題は,国内にとどまるものではないことから,OECD加盟国を中心とした国々の消費者保護機関等から成るICPEN(International Consumer Protection and Enforcement Network:消費者保護及び執行のための国際ネットワーク)の枠組の下で,参加各国の関係当局がインターネット上の広告表示について,共通のテーマを選定し,法令違反の疑いがないかを一斉に点検するInternational Internet Sweep Daysに参加するなど,諸外国の関係当局との連携を深めている。
 平成19年度においては,9月に,「Who can you trust?(誰を信用しますか?)」をテーマとして実施されたInternational Internet Sweep Daysに参加し,公正取引委員会は「電子商取引における効果・性能保証の強調表示」を点検の対象とした。電子商取引調査員から報告を受けた339件(252事業者320サイト)について点検した結果,景品表示法上問題となるおそれがあると思われる表示を行っていた42サイト40事業者の管理者に対し,景品表示法の遵守について啓発するメールを送信した。

第3 消費者モニター制度

1 概要

 消費者モニター制度は,独占禁止法及び景品表示法の施行その他公正取引委員会の消費者政策の諸施策の的確な運用に資するため,当委員会が一般消費者1,100名以内を消費者モニターに選出して,アンケート調査への回答,消費者としての体験,見聞等の報告その他当委員会の業務に協力を求めるものであり,昭和39年度から運用している。
 また,平成17年度からは,消費者モニター制度の中に,全国で200人以内の規模で構成される消費者取引適正化推進員制度を新設し,特定事項に関する調査,景品表示法等に違反する疑いのある行為に関する情報収集,公正取引委員会が行う消費者取引適正化のための諸施策に関する意見の提出,景品表示法の普及・啓発等について協力を求めた。
 平成19年度の消費者モニター(消費者取引適正化推進員を除く。)の各地区の配置数は,関 東甲信越地区265名,北海道地区60名,東北地区89名,中部地区110名,近畿地区145名,中国地区70名,四国地区50名,九州地区105名,沖縄地区12名であった。
 また,平成19年度の消費者取引適正化推進員の各地区の配置数は,関東甲信越地区70名,北海道地区10名,東北地区11名,中部地区25名,近畿地区35名,中国地区10名,四国地区10名,九州地区20名,沖縄地区3名であった。

2 活動状況

 平成19年度においては,消費者モニター及び消費者取引適正化推進員を対象に3件のアンケート調査及び広告物の収集依頼を行ったほか,随時,独占禁止法及び景品表示法の違反被疑事実の報告,意見等を求めた。

(1)アンケート調査及び広告物の収集

 平成19年度におけるアンケート調査等の概要は,次のとおりである。
ア 「No.1表示」に関するアンケート調査及び広告物の収集
 「No.1表示」に関する消費者の意識を把握するため,アンケート調査を行うとともに,No.1である旨を表示している広告物の収集を依頼した。
イ 「見づらい表示」,「読みにくい表示」に関する広告物の収集
 「見づらい表示」,「読みにくい表示」に関する消費者の意識を把握するため,見づらい又は読みにくいと感じる広告物の収集を依頼した。
ウ ペット(犬・猫)の取引における表示に関するアンケート調査
 ペット(犬・猫)の取引における表示に関する消費者の意識を把握するため,アンケート調査を行った。

(2)自由通信

 消費者モニター及び消費者取引適正化推進員は,前記アンケート調査等のほか,自由通信という形で,随時,公正取引委員会に対し,自由に意見及び情報を提供している。これは,(1)独占禁止法及び景品表示法の違反被疑事実の報告,(2)景品表示法に基づいて設定された公正競争規約の遵守状況等についての情報提供,(3)その他一般的な意見の提供等を行うものであり,平成19年度においては合計5,425件の自由通信が寄せられた(第1表参照)。

第1表 自由通信状況
第1表 自由通信状況

(3)各種会合等への参加

 平成19年度においては,公正取引協議会が主催する試買検査会等(第2表参照)に消費者取引適正化推進員を中心とする消費者モニターが出席し,一般消費者の立場からの意見を述べた。

第2表 消費者モニターの出席した試買検査会
第2表 消費者モニターの出席した試買検査会

第4 景品表示法の消費者庁への移管

 消費者行政をめぐる政府全体の動きとしては,平成20年6月13日,消費者行政推進会議において報告書が取りまとめられ,同月27日,消費者行政推進基本計画が閣議決定された。当該決定において景品表示法は「所要の見直しを行った上で,消費者庁に移管する」とされている。