第4章 訴訟

第1 審決取消請求訴訟

1 概説

平成20年度当初において係属中の審決取消請求訴訟は12件であったが,平成20年度中に新たに8件の審決取消請求訴訟が提起された。これら平成20年度の係属事件のうち,平成19年度中に東京高等裁判所において原告の請求を棄却する判決が下され,平成20年度に入ってから上訴期間の経過をもって確定したことにより終了したものが1件,平成20年度において,最高裁判所が上告棄却及び上告不受理の決定をしたことにより終了したものが1件,原告が訴えを取り下げたことにより終了したものが1件あった。また,東京高等裁判所において,原告の請求を棄却する判決が下されたもののうち2件が平成20年度中に上訴期間の経過をもって確定し,終了した。この結果,平成20年度末時点において係属中の審決取消請求訴訟は15件となった。

なお,このほか,平成20年度中に東京高等裁判所が原告の上告を却下する決定をしたものが1件(上告受理申立てが最高裁判所に係属しているため,係属件数に影響しない。),東京高等裁判所が原告の請求を棄却する判決を下し,原審原告が上告及び上告受理申立てを行い,最高裁判所に係属中のものが6件ある。

表 平成20年度に係属していた審決取消請求訴訟

2 東京高等裁判所における判決等

(1) (株)東芝ほか1名による審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第12号)(前記表一連番号1)

ア 主な争点及び判決の概要

(ア) 独占禁止法第2条第6項・第3条の解釈適用の誤り,事実認定の違法性について

原告らは,郵政省内示を受けていなかった原告は,当該物件については,「当初から入札に参加して落札することができない状態すなわち当初から他方の原告との競争から排除されて他方の原告とは競争することができない状況(競争不能状況)にあった」旨主張した。これに対し,「郵政省内示を受けていなかった原告も,郵政省内示を受けていない入札対象物件について,入札条件として設定された期間内に当該区分機類を製造し得る可能性があり,また,他社製の選別押印機及び台付押印機と自社製のあて名区分機とを接続し得る可能性もあり,したがって,郵政省内示を受けていた原告と競争することができる可能性があったものというべきである」と,競争可能な状況にあった旨判示している。

(イ) 「意思の連絡」の不存在について

原告らは,本件審決において原告らが意思の連絡の下に受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていたとした認定は誤っている旨主張した。これに対し,「『郵政省の調達事務担当官等から情報の提示のあった者のみが当該物件の入札に参加し,情報の提示のなかった者は当該物件の入札に参加しないことにより,郵政省の調達事務担当官等から情報の提示のあった者が受注できるようにする。』旨の少なくとも黙示的な意思の連絡があったことは優に認められる」と判示している。

一方,情報の提示を受けなかったという事実のみによって,原告が当該物件の入札に参加しなかったという事実が説明できるかという点については,「入札に付されたすべての物件について実際に競札が生じておらず」,「情報の提示を受けた者のみが情報の提示を受けた物件の入札に参加し情報の提示を受けなかった者は情報の提示を受けなかった物件については入札に参加しないという不自然に一致した行動をとっている」こと等から,「原告ら2社間の暗黙の意思の連絡にもよるものと認めるのが相当であって,このような意思の連絡なくして原告ら2社がたまたま結果的に同じ行動をとったものとは考え難い」と判示している。

(ウ) 独占禁止法第2条第6項の「公共の利益に反して」の解釈適用の誤りについて

原告らは,本件は郵政省が郵便処理機械化による効率性の向上等の消費者利益の確保という国家的プロジェクトを確実に実現するために原告らそれぞれに協力を求めた事案であり,独占禁止法第1条の究極の目的に実質的に反しないかどうかを考慮して判断すべきものである旨主張した。これに対し,「本件審決案が認定した(略)事実によれば,原告ら2社は郵政省の区分機類の発注のおおむね半分ずつを安定的,継続的かつ確実に受注する目的を持って本件違反行為を行っていたものと認められるから,原告ら2社の本件違反行為が『公共の利益に反して』いることは明らか」である旨判示するとともに,「現に,(略)平成11年3月19日の入札からはすべての物件について原告ら2社と日立との3社あるいは原告ら2社の競札となったが,同日の落札率は約40.5%から約84.4%あるいは約65.5%から約98.5%までと大幅に下がっている」として,原告らの主張を排斥している。

また,原告らが,消費者利益の確保という国家的プロジェクトを実現するために行われたものとして主張する点を考慮しても,「なお,本件違反行為が『公共の利益に反して』いないものということはできないものというべき」と判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は,原告らの上告及び上告受理申立てにより,平成20年度末現在,最高裁判所に係属中である。

(2) JFEエンジニアリング(株)ほか4名による審決取消請求事件(平成18年(行ケ)第11号ないし第13号)(前記表一連番号2)

ア 主な争点及び判決の概要

(ア) 本件審決に係る手続上の法令違反の有無について

原告らは,審査官が審判開始決定書において「各社の受注実績等を基にあらかじめ定めた一定の方式により算出した数値を勘案して,受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた。」としていた点を最終意見において変更したことについて,本件審決がこの主張の変更を許容したことは違法である旨主張した。これに対し,「独占禁止法には,審査官の主張の変更についてこれを認める明文の規定は存在しないが,事実の同一性を害せず,かつ審判手続全体の経過からみて被審人に防御の機会を閉ざしていない限り,主張の変更が許されるというべきである。」とし,本件審決について,「審査官最終意見における審査官の主張の変更は,審判開始決定書記載の事実と同一性を失わせるものではないというべきである。」と判示している。

(イ) 本件基本合意の認定は実質的証拠を欠くものか否かについて

原告らは,本件基本合意の認定は実質的証拠を欠くものである旨主張した。これに対し,本件審判手続で提出された供述証拠及び本件審決挙示の証拠から,原告らは,地方公共団体が指名競争入札等の方法により発注するストーカ炉の建設工事について,受注機会の均等化を図るため,本件基本合意の下に,被告認定の方法で受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていたものと認められる旨判示している。

(ウ) 本件審決の判断構造の特異性と判断の誤りの有無について

原告らは,本件審決は,基本合意のみでは不当な取引制限の要件を充足するものではなく,個別合意をまって初めてその要件を満たすとの論理構成をとっている旨主張した。これに対し,本件審決の認定及び認定判断の過程に照らせば,本件審決は,基本合意の下に受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていたことを違反行為ととらえ,個別の受注調整行為は,基本合意が存在し,その基本合意の下に受注予定者を決定し,受注予定者が受注できるようにしていた事実を推認することができる間接事実として認定していることが明らかである旨判示している。

また,「本件審決は,基本合意が,個別合意をまって初めて不当な取引制限を充足するとの論理構成の下に,個別合意,つまり個別の受注調整行為自体を違反行為の構成要件とするものではない。したがって,個別の合意に関しては,基本合意がその内容のとおり機能し,競争を実質的に制限していたとの事実を認定する上で必要な範囲で立証されれば足りるものというべきである。」と判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は,原告らの上告及び上告受理申立てにより,平成20年度末現在,最高裁判所に係属中である。

(3) (株)サカタのタネほか14名による審決取消請求事件(平成18年(行ケ)第18号ないし第20号)(前記表一連番号3)

ア 主な争点及び判決の概要

(ア) 本件合意の存在について

原告らは,本件合意の存在及び本件合意の各部分について実質的証拠を欠く旨主張した。これに対し,本件審決が本件合意の存在を認定した手法には,不合理的な点はなく,その認定の過程において経験則違背等のあったことも認められないため,原告らの主張は理由がない旨判示している。

また,不当な取引制限において必要とされる意思の連絡とは,複数事業者間で相互に同内容又は同種の対価の引上げを実施することを認識し,ないしは予測し,これと歩調をそろえる意思があることをもって足りるものというべきである(東京高裁平成7年9月25日判決)から,このような意思が形成されるに至った経過や動機について具体的に特定されることまでを要するものではない旨判示している。

さらに,原告らが,仮に合意が存在するとしても,(社)日本種苗協会の元詰部会討議研究会(以下「討議研究会」という。)で9種類の元詰種子について基準価格を決定していたから,各事業者間に意思の合致が認められるのは9種類の元詰種子に係る合意であって,4種類の元詰種子を対象とする合意とするためには縮小された合意の認定が必要である旨主張したところ,これに対し,不当な取引制限において必要とされる意思の連絡については,明示の意思表示が事業者間において一致していることまでを要するものではなく,本件審決も,32社の間に本件合意が存在すること,すなわち,4種類の元詰種子について,討議研究会で決定した基準価格に基づいて互いに認識し,これと歩調をそろえる意思を有していたことを認定しているのであって,32社がそれぞれ9種類の元詰種子の価格について不当な取引制限に係る明示かつ単一の意思表示をして,これが合致することを認定するものではないから,4種類の元詰種子に係る本件合意の存在を認定しても,意思表示の一部のみを取り出して認定したものとなるわけではなく,このような合意のとらえ方をする以上,32社が4種類の元詰種子とその余の5種類の元詰種子について別個に合意するとの認識を有していた旨の認定を要するものでもない旨判示している。

(イ) 相互拘束性について

原告らは,本件合意のみでは,具体的な販売価格を設定することができないから,相互拘束性を欠く旨主張した。これに対し,本来,商品・役務の価格は,市場において,公正かつ自由な競争の結果決定されるべきものであるから,具体的な販売価格の設定が可能となるような合意をしていなくても,4種類の元詰種子について,いずれも9割以上のシェアを有する32社の元詰業者らが,本来,公正かつ自由な競争により決定されるべき価格表価格及び販売価格を,継続的に,同業者団体である討議研究会において決定した基準価格に基づいて定めると合意すること自体が競争を制限する行為にほかならないものというべきである旨判示している。

また,原告らが,32社には相互認識がなく,意思の連絡があるというためには,相互認識を要するものというべきである旨主張したところ,これに対し,意思の連絡があるというためには,複数事業者間において,相互に,討議研究会で決定した基準価格に基づいて価格表価格及び販売価格を設定することを認識ないし予測し,これと歩調をそろえる意思があれば足りるのであり,代表者等の供述によると,32社は,元詰部会の構成員である事業者が,取引先が国外の事業者であるなど特殊な事業者である場合を除き,概ね討議研究会において決定した基準価格に連動した価格表価格を設定するものと相互に認識していたこと及び現に4種類の元詰種子について9割を超えるシェアを有する32社が基準価格に基づいた価格表価格の設定を行っていたことが認められるところ,多数の事業者が存在する市場においては,上記の程度の概括的認識をもって意思の連絡があるものと解すべきであり,このような意思を有する事業者の範囲を具体的かつ明確に認識することまでは要しないものと解するのが相当である旨判示している。

(ウ) 実質的競争制限について

原告らは,元詰種子における価格競争が存在するとしても,軽微であるから,本件合意により実質的競争制限には至っていない等の旨主張した。これに対し,4種類の元詰種子について,いずれも9割以上のシェアを占める32社が,本来,公正かつ自由な競争により決定されるべき商品価格を,継続的なやり方であることを認識した上で,同業者団体である討議研究会において協議の上決定する基準価格に基づいて定めるとの合意をすること自体が競争を制限する行為にほかならず,市場における競争機能に十分な影響を与えるものと推認することが相当である旨判示している。

(エ) 一定の取引分野について

原告らは,各事業者の競争関係は年度ごとに異なり,元詰種子の生産販売活動における競争関係は各年度ごとに独立して別個に成立しているから,競争制限効果が年度を超えて及ぶことはない旨主張した。これに対し,一定の取引分野の決定においては,違反者のした共同行為が対象としている取引及びそれにより影響を受ける範囲を検討し,その競争が実質的に制限される範囲を画定して決定するのが相当である(東京高裁昭和61年6月13日判決,東京高裁平成5年12月14日判決)ところ,元詰種子が,その性質上毎年生産し,販売し,これを購入する必要がある商品であるとしても,本件合意は,その価格表価格及び販売価格に毎年討議研究会で決定する基準価格による拘束力を及ぼすことを内容とするものであり,その内容自体から年度を超えて各事業者の価格表価格及び販売価格を拘束するものであることが明らかである旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は,原告らが上告及び上告受理申立て((株)サカタのタネは上告受理申立てのみ)を行ったところ,後記3のとおり,最高裁判所は,上告棄却及び上告不受理の決定を行った。

(4) (株)ベイクルーズによる審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第5号)(前記表一連番号4)

ア 主な争点及び判決の概要

(ア) 原告が景品表示法第4条第1項第3号に該当する不当な表示を行った事業者に当たるか否か

原告は,本件商品の原産国について表示内容を決定した者は八木通商(株)(以下「八木通商」という。)であって原告ではなく,また,原告には本件商品の原産国がどこであるかを調査する能力はなく,原産国についての決定に影響を及ぼすような権限もない等から,原告は表示内容の決定に実質的に関与した者にも当たらない旨主張した。これに対し,八木通商から本件商品の原産国はイタリアであるとの説明を受けてこれを信用し,八木通商に作成及び取付けを依頼した品質表示タッグ及び下げ札に本件商品の原産国がイタリアであると記載されることを了解していたこと,原告はこのような品質表示タッグ及び下げ札が取り付けられた本件商品を自己の経営するセレクトショップにおいて販売していたことが認められ,これによれば,原告が景品表示法第4条第1項第3号に該当する不当な表示を行った事業者に当たること,すなわち,「表示内容の決定に関与した事業者」に当たることは明らかである旨判示している。

(イ) 本件原産国表示がなされたことについて原告に過失があることが必要か

原告は,景品表示法第6条第1項による排除命令を発するためには,排除命令の対象事業者において不当表示がなされたことについて過失があったことが必要である旨主張した。これに対し,景品表示法第4条第1項に違反する行為については,不当表示行為があれば足り,それ以上に,そのことについて「不当表示を行った者」の故意・過失は要せず排除命令を発し得るものというべきである旨判示している。

(ウ) 本件審決が命じる排除措置はその必要性があるか

原告は,本件においては既に原告において十分な誤認排除措置及び再発防止措置を採っているから,原告に対して更に本件排除措置を命じる必要性がない旨主張した。これに対し,原告はウェブサイトでの告知及び店頭の告知により一応一定の顧客に対して本件原産国表示の誤りを知らせたものと認められるが,ウェブサイトでの告知及び店頭の告知では,自ら積極的に原告のウェブサイトにアクセスして情報を入手しようとする顧客や自ら原告のセレクトショップに足を運ぶリピーターに対しては告知効果があるものの,これらのいわば能動的な顧客以外の一般消費者に対しては何ら告知効果はないものである旨判示している。

さらに,本件商品がブランド衣料品であるということや,原告の事業規模の大きさ,さらには本件原産国表示が小売市場に与えた影響等を考慮すると,原告のウェブサイトでの告知及び店頭の告知ではいまだ一般消費者の誤認を排除するための措置としては不十分というべきであって,被告が原告に対し日刊新聞紙等による公示を前提とした更なる誤認排除のための措置(公示)を命じたことは,被告に与えられた裁量権を逸脱するものではないというべきである旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は,原告の上告及び上告受理申立てにより,平成20年度末現在,最高裁判所に係属中である。

(5) (株)大石組による審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第18号)(前記表一連番号7)

ア 主な争点及び判決の概要

(ア) 本件審決は,実体上も手続上も本件本案審決を前提とするものであるか

原告は,本件課徴金の納付を命じる審決は,実体上も手続上も本件本案審決を前提とするものであるのに,本件課徴金の前提となる本件審決摘示の違反事実は存在しないし,その存在を証明する証拠はなく,また,本件審決は,本件課徴金の対象となる本件対象工事についての本件違反行為の存在が確定しない限りその手続を進行できないものであるにもかかわらず,本件本案審決が確定するために手続を進行させ審決にまで至っており,憲法に違反するものである旨主張した。これに対し,独占禁止法の課徴金納付命令についての手続構造に照らすと,被審人としての原告の防御権の保障に欠けるものとも解されないのであるから,本件審決が,本件本案審決で本件対象工事についての本件違反行為の存在が既に認定されたことを理由として,この点について原告が重ねて本件違反行為の不存在を主張することはできないとし,本件本案審決が認定した事実を前提としてその余の独占禁止法第7条の2第1項に規定する役務の対価に係るものであるとの本件審決固有の認定判断をしたことは相当である旨判示している。

(イ) 本件審決による本件課徴金の必要性

原告は,本件課徴金の必要性について,被告から勧告されるまでの間に他の業者らによる違反行為も取りやめられており,およそ措置を命ずる必要は存在しなかったのであり,措置の必要性を根拠づける証拠も存在しない旨主張したところ,これに対し,被告が独占禁止法第7条の2第1項に規定する事実があると認める場合には,課徴金を国庫に納付すべきことを「命じなければならない」(同法第48条の2第1項本文)のであり,課徴金納付命令の発出について被告の裁量の余地はない旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は,上訴期間の経過をもって確定した。

(6) (株)栗本鐵工所による審決取消請求事件(平成19年(行ケ)第39号)(前記表一連番号10)

ア 主な争点及び判決の概要

(ア) 本件工事に対する課徴金の計算の基礎となる売上額

原告は,共同企業体の場合に他の構成員がすべきであった工事部分を引き受けるということは,契約主体の変更で,新たな契約の締結であるところ,本件において本件変更契約の締結は違反行為となっていないから,原告が引き受けた他の構成員の担当工事に係る部分の代金を加えた金額を課徴金の基準となる原告の売上額ということはできない旨主張した。これに対し,共同企業体方式で請負契約が締結された場合に課徴金を算定するに当たっては,請負代金額全体をJV比率であん分した額ないし共同企業体内部で取り決めた各構成員の請負代金取得額をもって各構成員の「売上額」とするのが相当というべきであり,したがって,共同企業体方式による請負契約締結の場合においては,JV比率であん分した額ないし共同企業体内部で取り決めた各構成員の請負代金取得額を独占禁止法施行令第6条第1項所定の「契約により定められた対価」と解することになるとし,本件工事における原告の売上額は原契約で定められた対価と認めるのが相当であり,原告の主張は理由がない旨判示している。

(イ) 審決の手続的違法の有無

原告は,本件審判において審査官,原告双方とも契約の変更があることを前提として審理がされていたのに,本件審決が原契約の変更はないとして本件工事請負代金全額をもって原告の売上額に当たると判断したため,本件審決は原告の防御の機会を奪ってされたものというべきで,適正手続の保障に反し許されない旨主張した。これに対し,本件審決は,原契約が本件JVの構成員である原告及びほか1社が当事者として本件工事全体を連帯して請け負い,本件工事の完成債務を負担した契約であることを重視し,請負代金額の全額をもって原告の売上額としたものであるから,本件審決の内容は基本的には審査官の主張に沿うものであり,本件審決に手続上の違法があるということはできない旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は,上訴期間の経過をもって確定した。

(7) (有)賀数建設による審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第3号)(前記表一連番号12)

ア 主な争点及び判決の概要

(ア) 本件違反行為の対象工事の特定

原告は,沖縄県が県内の建設業者に等級格付をしている事実はあるが,その発注する建築工事自体に等級格付をしている事実はないから,本件納付命令が本件違反行為の対象工事を「沖縄県が,特A級の等級に区分し,一般競争入札,公募型指名競争入札又は指名競争入札の方法により発注する建築一式工事」としたのは誤りである旨主張した。これに対し,沖縄県が発注する建築工事の一般競争入札又は指名競争入札に参加しようとする者の資格等について定めた規程に規定していること等によれば,沖縄県が発注する建築工事については請負工事金額に応じて特A級,A級などの等級名を付した等級格付がなされているものと解するのが相当であり,原告の主張は採用することができない旨判示している。

(イ) 個別の受注調整行為

原告は,本件基本合意に基づく本件物件についての個別の受注調整行為に関与していないから,「不当な取引制限」をしたとして課徴金の納付を命じることはできない旨主張した。これに対し,独占禁止法第2条第6項の「不当な取引制限」の解釈として,本件のように,受注予定者を決定する方法等について基本合意(談合)がなされており,この基本合意に基づいてその後に入札に付される個々の物件について受注予定者が決定され受注予定者が受注できるように基本合意の合意者が協力するとされている場合には,当該基本合意そのものが競争を実質的に制限するものとして,当該基本合意そのものを「不当な取引制限」に該当する行為というべきである旨判示している。

そして,たとえ,原告が本件基本合意に基づく本件物件についての個別の受注調整行為(個別の談合行為)に関与していなかったとしても,原告には「不当な取引制限」が成立し,課徴金の納付を命じることができるものである旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

原告は上告及び上告受理申立てを行ったところ,東京高等裁判所は,上告状兼上告受理申立書に上告理由の記載がなく,また,法定の期間内に原告が上告理由書を提出していないとして,上告却下の決定を行った。

本件は,原告が行った上告受理申立てにつき,平成20年度末現在,最高裁判所に係属中である。

(8) 新明和工業(株)による審決取消請求事件(平成20年(行ケ)第9号)(前記表一連番号13)

ア 主な争点及び判決の概要

原告は,本件審決の基礎となった基本合意についてはその態様及び内容いかんにかかわらず,これに全く関与していないのであって,この点に関する実質的証拠は存在しない旨主張した。

これに対し,

(ア) 本件審決における認定事実については,審判手続において取り調べられた証拠があり,また,これを推認させる事実を裏付ける証拠がある

(イ) 14社中原告ほか1社を除く各社については本件基本合意に基づく本件違反行為が行われたとの事実を踏まえ,それに加えて審判手続において取り調べられた各証拠に基づき認定される事実によれば,原告もまた本件基本合意に基づき本件違反行為に及んだものと推認することができるというべきである

等の認定判断を基に検討してみれば,原告が本件基本合意に基づき本件違反行為に及んだとの本件審決認定の事実についてはこれを裏付ける実質的証拠があるというべきである旨判示している。

イ 訴訟手続の経過

本件は,平成20年度末現在,最高裁判所に係属中である。

3 (株)サカタのタネほか14名による審決取消請求事件に係る最高裁判所における決定(平成20年(行ツ)第223号及び第224号,平成20年(行ヒ)第254号ないし第256号)(前記表一連番号3)

(1) 決定の概要

最高裁判所は,(1)本件上告理由は,民事訴訟法第312条第1項又は第2項に規定する事由に該当せず,(2)本件は,同法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして,上告棄却及び上告不受理の決定を行った。

(2) 訴訟手続の経過

原審判決は,本件決定により確定した。

第2 その他の公正取引委員会が当事者である訴訟

1 概要

平成20年度当初において係属していた訴訟のうち,審決取消請求訴訟以外のもので公正取引委員会が当事者であるものは,独占禁止法第69条に基づく閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件及び国家賠償法第1条に基づく損害賠償等請求事件の計2件であったが,同年度中に新たに課徴金納付命令に係る損害賠償請求事件1件が提起された。これら平成20年度の係属事件のうち,独占禁止法第69条に基づく閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件は,平成18年度中に東京高等裁判所において控訴棄却の判決が下され,平成20年度に最高裁判所が上告不受理の決定をしたことにより終了した。また,国家賠償法第1条に基づく損害賠償等請求事件は,平成20年度中に東京高等裁判所が一審原告による控訴を棄却する判決を下し,一審原告が上告及び上告受理申立てを行い,最高裁判所が上告棄却及び上告不受理の決定をしたことにより終了した。この結果,平成20年度末時点において係属中の審決取消請求訴訟以外の訴訟のうち,公正取引委員会が当事者であるものは1件となった。

2 平成20年度中に係属中であったその他の公正取引委員会が当事者である訴訟

(1) 平成10年(判)第2号審判事件記録に係る閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件

ア 事件の表示

最高裁判所平成19年(行ヒ)第3号

閲覧謄写申請不許可処分取消請求事件

申立人(一審被告,原審控訴人) 公正取引委員会

相手方(一審原告,原審被控訴人)(株)函館新聞社

提訴年月日 平成15年3月10日,平成16年11月5日

1審判決年月日 平成18年2月23日(訴え一部却下,その余の請求認容,東京地方裁判所)

控訴年月日 平成18年3月3日(一審原告,原審被控訴人)

      平成18年3月8日(一審被告,原審控訴人)

      平成18年7月24日(一審原告,原審被控訴人の控訴取下げ)

原判決年月日 平成18年9月27日(控訴棄却,東京高等裁判所)

上訴年月日 平成18年10月10日(上告受理申立て,一審被告,原審控訴人)

決定年月日 平成20年11月4日(上告不受理決定,最高裁判所)

イ 事案の概要

本件は,相手方((株)函館新聞社)が独占禁止法第69条に基づいて行った平成10年(判)第2号(株)北海道新聞社に対する審判事件に係る事件記録全部の閲覧謄写申請に対し,申立人(公正取引委員会)が行った本審判事件の事件記録のうち一部を除いて閲覧謄写を不許可とする旨の処分(第1処分)及び第1処分の内容を見直しこれを変更する処分(第2処分)について,相手方が取消しを求めるものである。

第一審である東京地方裁判所は,独占禁止法第69条の規定上,事件記録の閲覧謄写請求については,「利害関係人」である旨の制限がかけられているにすぎず,事件記録上に記載されている情報の性質を根拠として,閲覧謄写を不許可とすることはできないとし,本件において相手方が同条の「利害関係人」に当たる以上,事件記録のすべてを閲覧謄写させなければならないとして相手方の請求を認容(一部却下)したため,申立人が控訴するとともに,一部却下部分について相手方も控訴した。

第二審である東京高等裁判所は,独占禁止法には,事業者の秘密をはじめとする開示が制限される情報について配慮した規定は,審判の公開に関する同法第53条の限度でしかなく,同法自体においては,当該情報に関して,前記以上の保護を予定していると読み取るのは困難であるとし,相手方が同法第69条の利害関係人に該当し,本件審判事件で審判が公開されていた本件においては,申立人は,相手方による事件記録の閲覧謄写請求を拒むことはできず,申立人が,同法第69条に基づく事件記録の閲覧謄写請求について,「利害関係人」による請求か否かという点以外に,事件記録上に記載されている情報の性質を根拠として,閲覧謄写を不許可とすることはできないとして,本件控訴を棄却した。

ウ 決定の概要

最高裁判所は,本件は,民事訴訟法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして,上告不受理の決定を行った。

エ 訴訟手続の経過

原審判決は,本件決定により確定した。

(2) 電話加入権に係る損害賠償請求事件

ア 事件の表示

最高裁判所 平成20年(オ)第1190号,平成20年(受)第1442号

損害賠償請求事件

上告人兼申立人(一審原告,原審控訴人) 日本テレシス(株)訴訟承継人ほか

被上告人兼相手方(一審被告,原審被控訴人) 国ほか3名

提訴年月日 平成18年5月30日~同年11月17日

判決年月日 平成19年10月22日(請求棄却,東京地方裁判所)

控訴年月日 平成19年11月5日(一審原告,原審控訴人)

判決年月日 平成20年5月22日(控訴棄却,東京高等裁判所)

上訴年月日 平成20年6月4日(上告及び上告受理申立て,一審原告,原審控訴人)

決定年月日 平成20年11月4日(上告棄却・上告不受理決定,最高裁判所)

イ 事案の概要

本件は,一審原告らが,一審被告の日本電信電話(株)(以下「NTT」という。)は長期にわたり電話事業を独占しており,一審原告ら電話加入者にはNTT以外に取引先選択の余地がなく,電話加入時に施設設置負担金の支払を強制されていたところ,施設設置負担金の支払が不合理・不適当となっていたにもかかわらず,NTTがその独占力を背景として徴収を続けており,これは独占禁止法で禁止する優越的地位の濫用に当たり,不法行為に該当するとして,NTT並びに一審被告の東日本電信電話(株)及び同西日本電信電話(株)に対して民法第709条に基づく損害賠償を請求するとともに,公正取引委員会はこの独占禁止法違反行為に対して排除勧告すべきであったのに,それをしなかったことは監督官庁の規制権限の不行使に当たり,結果的に電話加入者に損害を与えたとして,国に対し国家賠償法第1条に基づく損害賠償を請求するものである。

第一審である東京地方裁判所は,(1)NTTが長期にわたり電話事業の独占力を背景に不合理・不適当となっていた施設設置負担金の徴収を続けてきたことを認めるに足りる証拠はなく,NTTが優越的地位を濫用したとも認められない,(2)NTTが優越的地位を濫用してきたことを認めるに足りる証拠はないから,公正取引委員会において適切な勧告を行うべき義務があったとも認められないなどとして,一審原告らの請求を棄却したため,一審原告らは,東京高等裁判所に控訴を行った。

原審である東京高等裁判所は,国及びNTTは電話加入権の取引市場に関与しておらず,同市場におけるプレーヤーであるということもできないから,市場価格をコントロールする立場にもないことは明らかである等の理由を付加するほか,一審である東京地方裁判所における判決の理由説示のとおりであるとして,一審原告らの控訴を棄却したため,一審原告らは,最高裁判所に上告及び上告受理申立てを行った。

ウ 決定の概要

最高裁判所は,(1)本件は民事訴訟法第312条第1項又は第2項に定める上告事由には該当せず,(2)同法第318条第1項により受理すべきものとは認められないとして,上告棄却及び上告不受理の決定を行った。

エ 訴訟手続の経過

原審判決は,本件決定により確定した。

(3) 課徴金納付命令に係る損害賠償請求事件

ア 事件の表示

東京地方裁判所 平成20年(行ウ)第612号

損害賠償等請求事件

原告 三井化学(株)

被告 国

提訴年月日 平成20年10月17日

イ 事案の概要

本件は,被告が原告(吸収合併前の(株)グランドポリマー)に対して行った平成15年3月31日付け課徴金納付命令(平成15年(納)第259号。以下「本件課徴金納付命令」という。)において,原告に関する本件カルテルの実行期間の終期を,平成12年9月21日と認定したにもかかわらず,その後,被告が本件カルテルの参加者である訴外2社に対して行った平成19年6月19日付け課徴金の納付を命ずる審判審決(平成15年(判)第22号及び第23号。以下「本件課徴金審決」という。)において,本件カルテルの実行期間の終期を違反行為者全員につき平成12年5月29日と認定したことから,原告に対する本件課徴金納付命令は,違法無効である等として,本件課徴金納付命令により支払済みの課徴金から過払となっている課徴金の差額について,国家賠償法第1条に基づく損害賠償請求又は不当利得返還請求等を行うものである。

ウ 訴訟手続の経過

本件は,平成20年度末現在,東京地方裁判所に係属中である。

第3 独占禁止法第24条に基づく差止請求訴訟

平成20年度当初において係属していた独占禁止法第24条に基づく差止請求訴訟は6件であったが,同年度中に新たに6件の訴訟が提起された。これら平成20年度の係属事件のうち,同年度中に高松高等裁判所が一審原告の控訴を棄却する判決を下し,一審原告が上告及び上告受理申立てを行い,最高裁判所が上告棄却及び上告不受理の決定をしたことにより終了したものが1件,最高裁判所が上告棄却及び上告不受理の決定をしたことにより終了したものが1件あった。また,原告が訴えを取り下げたものが3件(うち1件は被告の一部について訴えの取下げがあったものであるため,終了したものは2件。)あった。この結果,平成20年度末時点において係属中の訴訟は8件となった。

第4 独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟

平成20年度当初において係属していた独占禁止法第25条に基づく損害賠償請求訴訟は2件であったが,同年度中に36件の訴えが提起された。これら平成20年度の係属事件のうち,原告が訴えを取り下げたものが7件(うち1件については,被告の一部について訴えの取下げがあったものであるため,終了したものは6件)あった。この結果,平成20年度末時点において係属中の訴訟は32件となった。

1 インテル(株)によるCPUに係る私的独占事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成17年(ワ)第4号

損害賠償請求事件

原告 日本エイ・エム・ディ(株)

被告 インテル(株)

提訴年月日 平成17年6月30日

(2) 事案の概要

公正取引委員会は,インテル(株)(以下「インテル」という。)によるCPU(パーソナルコンピュータに搭載するx86系セントラル・プロセッシング・ユニットをいう。)に係る私的独占事件について,平成17年4月13日,インテルに対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,日本エイ・エム・ディ(株)は,インテルに対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件については,東京高等裁判所から,平成17年7月6日,独占禁止法第84条第1項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,公正取引委員会は,平成18年5月15日,意見書を提出した。

平成20年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

2 ニプロ(株)によるアンプル生地管に係る私的独占事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成19年(ワ)第10号

損害賠償請求事件

原告 (株)ナイガイ及び内外硝子工業(株)

被告 ニプロ(株)

提訴年月日 平成19年11月26日

(2) 事案の概要

公正取引委員会は,ニプロ(株)によるアンプル生地管に係る私的独占事件について,平成18年6月5日,ニプロ(株)に対し審判審決を行った。当該審決確定後,(株)ナイガイ及び内外硝子工業(株)は,ニプロ(株)に対して,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件については,東京高等裁判所から,平成19年11月27日,独占禁止法第84条第1項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされ,公正取引委員会は,平成20年8月14日,意見書を提出した。

平成20年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

3 日本道路公団が発注する情報表示設備工事の入札談合事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成20年(ワ)第2号

損害賠償請求事件

原告 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構

被告 星和電機(株)ほか2名

提訴年月日 平成20年9月19日

(2) 事案の概要

公正取引委員会は,日本道路公団が発注する情報表示設備工事の入札談合について,平成17年4月27日,星和電機(株)ほか2名に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構は,当該審決が認定した入札談合により日本道路公団が被った損害に係る賠償請求権を同機構が日本道路公団から承継したとして,星和電機(株)ほか2名に対し,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟を東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件については,東京高等裁判所から,平成20年10月15日,独占禁止法第84条第1項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされている。

平成20年度末現在,東京高等裁判所に係属中である。

4 日本道路公団が発注する鋼橋上部工工事の入札談合事件

(1) 事件の表示

東京高等裁判所平成20年(ワ)第3号,第4号,第6号ないし第11号,第13号ないし第15号,第17号ないし第40号

損害賠償請求事件

原告 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構,東日本高速道路(株)又は中日本高速道路(株)(注)

被告 三井造船(株)ほか29名(注)

(注)原告,被告は事件ごとに異なる。

提訴年月日 平成20年12月19日

(2) 事案の概要

公正取引委員会は,日本道路公団が発注する鋼橋上部工工事の入札談合について,平成17年11月18日,同工事の入札参加業者ら45名に対し当該行為の排除等を命ずる勧告審決を行った。当該審決確定後,独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構,東日本高速道路(株)又は中日本高速道路(株)は,当該審決において認定した入札談合により日本道路公団が被った損害に係る賠償請求権をそれぞれが日本道路公団から承継したとして,三井造船(株)ほか29名に対し,独占禁止法第25条の規定に基づく損害賠償請求訴訟35件をそれぞれ東京高等裁判所に提起した。

(3) 訴訟手続の経過

本件については,東京高等裁判所から,平成21年1月15日から29日,独占禁止法第84条第1項の規定に基づき,同法違反行為によって生じた損害額についての求意見がなされている。

平成21年2月9日から同年3月25日にかけて,計7件の訴えの取下げ(うち1件は被告の一部について訴えの取下げのあったもの。)があり,平成20年度末現在,三井造船(株)ほか28名に対する29件が東京高等裁判所に係属中である。